令和6年(わ)第166号判決 主文 被告人を懲役18年に処する。 未決勾留日数中370日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は第1 Gと共謀の上、令和6年2月5日午前3時30分頃から同日午前4時4分頃までの間に、浜松市(住所省略)のD方において、H(当時17歳。以下「H」と いう。)に対し、被告人及びGがHの頭部、顔面及び体等を多数回にわたって拳で殴るとともに足で蹴り、被告人がHの頭部付近をガラス製の空の酒瓶で2回殴るなどの暴行を加え、引き続き、その頃、前記D方付近及び同駐車場において、Hに対し、被告人及びGがHの頭部、顔面及び体等を多数回にわたって拳等で殴るとともに足で蹴り、被告人がHの後頭部を地面に打ち付け、Gが仰向けに倒れていたHの 髪の毛を手でつかんで引きずり、被告人がHの体を数回にわたって十字レンチで殴るとともに足で蹴り、Hの後頭部をコンクリート製の輪留めに打ち当てるなどの暴行を加え、よって、前記一連の暴行により、同人に全治まで約2週間を要する右上眼瞼打撲傷、左眉毛部打撲傷、前額部皮膚擦過傷及び皮膚剥脱創、腰背部擦過創及び皮膚剥脱創、全治不詳の意識障害の傷害を負わせ 第2 G、A、B及びCと共謀の上、同日午前4時4分頃、A、B及びCらがHの体を持ち上げて前記駐車場に駐車中の被告人が使用する普通乗用自動車の後部トランク内に押し込み、被告人が同車の助手席に乗車し、Gが同車を運転して発進させ、その頃から同日午前4時51分頃までの間、静岡県湖西市(住所省略)所在の公園付近路上まで同車を走行させ、Hを前記トランク内から脱出することを不能にし、 もって同人を不法に監禁し 第3 Gと共謀の上、同日午前4時51分頃から同日午前 湖西市(住所省略)所在の公園付近路上まで同車を走行させ、Hを前記トランク内から脱出することを不能にし、 もって同人を不法に監禁し 第3 Gと共謀の上、同日午前4時51分頃から同日午前4時58分頃までの間に、前記公園及び同付近路上において、前記第1の暴行により意識障害等の傷害を負っていたHに対し、殺意をもって、被告人及びGがHの体を前記自動車の後部トランク内から引きずり出して地面に落下させ、GがHの上衣を両手でつかんで引きずり、被告人がHの顔面等を足で数回蹴るとともに、その髪の毛等を両手でつかんで引き ずり、GがHの体を足で蹴るなどし、その頃、同公園内2級河川都田川水系準用河川浜名川付近の岸壁において、被告人がHの髪の毛を両手でつかんでその頭部を地面に3回打ち付け、被告人がほぼ全裸のHの両手を、GがHの両足を、それぞれ両手で持ち上げ、前記浜名川に向けてその体を左右に振るなどして同人を同川に落とそうとした上、被告人がHの背中を手で押して同人を同川に転落させて水没させ、 よって、その頃、同川又はその付近において、同人を溺死させて殺害したものである。 (事実認定の補足説明)第1 本件の争点検察官は、判示第3の行為は、被害者を死亡させる危険性が極めて高い行為であ り、被告人もその危険性を十分わかっていたこと、被告人は被害者を殺害する動機があることなどから、被告人に殺意が認められると主張する。他方、弁護人は、被告人が被害者を湖面に落とした時点では被害者の意識状態は相当程度回復しており、被害者が死亡する危険性は高くなく、少なくとも被告人は行為の危険性を認識していなかったこと、殺害の動機がなかったことなどの事情からすれば、被告人に殺意 があったとはいえないと主張する。 第2 当裁判所の判断 1 浜 なく、少なくとも被告人は行為の危険性を認識していなかったこと、殺害の動機がなかったことなどの事情からすれば、被告人に殺意 があったとはいえないと主張する。 第2 当裁判所の判断 1 浜名湖に突き落とす行為が、被害者を死亡させる危険性が極めて高い行為であること⑴ 浜名湖に転落した時点における被害者の意識状態 被告人は、自ら、あるいはGと共に、被害者に意識障害を生じさせる原因となっ た多数回かつ強度の暴行を被害者の頭部や顔面に加えている。すなわち、被告人及びG(以下「被告人ら」という。)は、D方及びその周辺において、被害者の頭部や顔部を拳で殴ったり足で蹴ったりした。被告人は、ガラス製の酒瓶が割れるほどの力で被害者の頭部を殴ったほか、被害者の後頭部に対し、コンクリートの地面や輪留めによる打撃も加えていた(甲85)。そして、被害者を浜名湖に運んだ後も、 被告人らは被害者の頭部や顔面を蹴ったほか、被告人は、被害者の顔面を地面に3回勢いよく打ち付けた(甲87)。このような一連の暴行によって、被害者は、その顔面に多数の表皮剥奪や打撲、後頭部に挫裂創を負ったほか、頭部内部においては、皮下全体にわたる程度が強い出血がみられ、頭部左右側面の筋肉に血腫が付着し挫滅状になるなどの外傷を負った(甲88)。 また、被告人らが各暴行時に撮影した動画によると、被害者は、D方玄関付近では痛みや刺激に反応できない状態にあったし(甲85)、浜名湖では、手足を曲げる、発語するなどの反応を示すようになってはいるものの、発語の中身は、うめき声や泣き叫ぶ声だったり、その場にいないF(被害者の友人)の名前を呼んだり、Fに手を出すなよなどというその場の状況に全くそぐわない内容に過ぎず、被告人 らに引きずられ、何度も暴行を加えられても、 や泣き叫ぶ声だったり、その場にいないF(被害者の友人)の名前を呼んだり、Fに手を出すなよなどというその場の状況に全くそぐわない内容に過ぎず、被告人 らに引きずられ、何度も暴行を加えられても、手を払いのけたり、逃げるなどという有効な抵抗はできておらず、被告人が最終的に被害者の背部を押し、斜面を転がして浜名湖に突き落とした際は、されるがままになっていて全く抵抗ができていない(甲87)。 以上からすると、被告人が被害者を浜名湖に突き落とした時点において、被害者 は、自分が置かれた状況を理解し、その状況に即して適切に対応することが不可能ないし著しく困難な状態にあったと認められるから、溺水を回避できるような意識状態にはなかったこと、すなわち意識障害の状態にあり、その程度は、トランクに押し込まれた時点より若干回復がみられるものの、依然として相当重いものであったといえる。 この点、被害者の意識状態について、I医師は、被告人らによる一連の暴行を録 画した動画の全過程において、被害者は、頭部に複数回加えられた打撃により脳に強い動きが加わり一時的に脳神経細胞が機能障害に陥った結果として生じた重症意識障害の状態にあり、落水後、5分程度で救命困難・救命不可能となり溺水死したものと推察される旨供述する。同供述は、上記被告人らの暴行の内容と被害者の傷害結果を前提に、被告人らによる犯行状況の動画を見た上でされた医師による専門 的知見であって信用できるものであり、被害者の意識状態に関する前記認定を医学的な観点から支える意味を持つといえる。 ⑵ 被害者が転落した周辺の浜名湖の状況等被告人が被害者を浜名湖に突き落としたのは2月の深夜から早朝にかけての時刻であり、気温は約6.6度、水温は約11.7度であって、被害者はほぼ全裸の状 ⑵ 被害者が転落した周辺の浜名湖の状況等被告人が被害者を浜名湖に突き落としたのは2月の深夜から早朝にかけての時刻であり、気温は約6.6度、水温は約11.7度であって、被害者はほぼ全裸の状 態だった。被害者が落水した周辺の水底は岸から1メートル以内の部分は岩が敷き詰められているものの、1ないし3メートルの部分は小石、砂利及び砂となっており、3ないし5メートルの部分はヘドロ状のものが堆積又は混じっており、歩行が困難又はやや困難な状態になっていた。周囲に照明等はなく、星明り程度で人通りもなかった。また、被害者が突き落とされた岸壁は、高さ2.68メートル、傾斜 角度39.4度の急斜面であって、その水深も、岸からの距離1メートル以内の場所では10ないし28センチメートル程度であるが、徐々に深まり、岸から5メートルの場所では40ないし72センチメートルであった(甲84)。 ⑶ 被害者の意識状態及び被害者が突き落とされた周辺の状況を踏まえた危険性の評価 被害者は、前記のとおり相当重い意識障害下にあり、このような状況で急斜面を転がすようにして真冬の浜名湖に突き落とされたのであるから、たとえ岸からの距離が5メートルの範囲では大人が立ち上がれば膝下以下の水深でも、周囲は暗く、岸から離れるにつれて水深が深くなるとともに足場も悪くなるという状況であったことも踏まえると、自らの生命を守るための適切な行動がとれず、体勢すら整えら れずに顔部が水に沈むなどして呼吸が困難となるなど、程なくして被害者の生命に 対する高度の危険が生じ得ることは十分に考えられる。したがって、このような状況の下においては、浜名湖に突き落とす行為は、被害者を死亡させる危険性が極めて高い行為であると認められる。 ⑷ 弁護人の指摘及びこれに対する検 得ることは十分に考えられる。したがって、このような状況の下においては、浜名湖に突き落とす行為は、被害者を死亡させる危険性が極めて高い行為であると認められる。 ⑷ 弁護人の指摘及びこれに対する検討弁護人は、浜名湖に到着した時点において、被害者は手足を屈曲させる、声を出 すなどしており、膝上あたりで丸まっていたパンツが、被害者の遺体が浜名湖内で発見された時点ではほぼ穿かれた状態になっていたことからすれば、被害者の意識状態はパンツを自らの意思で引き上げることができる程度には回復しており、浜名湖に突き落とす行為は被害者を死亡させる危険性が高い行為ではない旨主張する。 しかし、被害者は、被告人らの暴行から逃げ出すとか防御するといった行動はと れていないし、発声の内容も泣き叫ぶ声やうめき声のほか、その場にいないFの名前を呼ぶなど、その場の状況を適切に把握しているとは言い難く、落水した後適切に行動をとることは不可能ないし著しく困難な状況下にあったものと認められる。 また、仮に落水後に被害者がパンツを自ら上げたことがあったとしても、実際にどのような状況や体勢でパンツを引き上げたかは不明であるし、溺れないようにする ことが最優先の状況下で、パンツを上げるという選択をとるということ自体、適切な状況把握能力を欠く程度に意識障害があったと評価できる一事情ともいえるから、この点をもって、被害者の意識障害の回復が著しかったとはいえない。 したがって、弁護人の指摘を踏まえ、被害者の意識状態が一定程度改善した可能性を勘案しても、被害者を浜名湖に突き落とす行為が被害者を死亡させる危険性が 極めて高い行為であったとの前記認定は左右されない。 2 被告人は、被害者を浜名湖に突き落とす行為が、被害者を死亡させる危険性が極めて高い行為である 落とす行為が被害者を死亡させる危険性が 極めて高い行為であったとの前記認定は左右されない。 2 被告人は、被害者を浜名湖に突き落とす行為が、被害者を死亡させる危険性が極めて高い行為であると認識していたこと⑴ 被告人が行為の危険性を認識していたこと被告人は、被告人らがD方ないし浜名湖で被害者に対して行った暴行の内容を認 識しているし、そのような暴行によって、被害者はD方において自力で動くことが できず、被告人らに無抵抗な状況にあったことも認識していた。そして、被告人は、浜名湖においても、被害者が適切に状況を把握できず、抵抗や逃避行動はおろか、助けを求めることもできない状況であることを認識していた。そうすると、このような状況それ自体から、被告人は、被害者を浜名湖に突き落とせば溺死により死亡する危険性が高いことを認識していたと認められる。 ⑵ 弁護人の指摘及びこれに対する検討弁護人は、被告人の供述に基づき、被告人は被害者を水につければ覚醒すると思ったこと、水深が浅く、溺れるような場所ではないと思っていたこと、被告人としてはあまり寒さを感じていなかったことなどを主張して、被害者の死亡の危険性に対する認識を争っている。 しかし、被害者は、前記のとおり相当重い意識障害下にあり、浜名湖で被告人らが被害者に対して暴行を加えるといった刺激を与えても意識が回復しないことは、被告人も認識していた。わずかな水深であっても、体勢を整えられず呼吸を確保できない状態で水に浸かれば、死亡の危険性があることは明白である。被告人が過去に視聴したという映像や自身の経験等も、本件とは状況が異なるから、被告人の供 述を裏付けるものとはいえない。被害者が死亡する危険性を認識していなかったとする被告人の供述は信用できない 人が過去に視聴したという映像や自身の経験等も、本件とは状況が異なるから、被告人の供 述を裏付けるものとはいえない。被害者が死亡する危険性を認識していなかったとする被告人の供述は信用できない。 3 被告人が被害者を浜名湖に突き落とした動機は、被害者を死亡させるためであったこと被告人は、被害者を浜名湖に突き落とした目的は、被害者を水に濡らして被告人 らの指紋を消すことであった、被害者についた指紋を消し、D方にいた者らに口止めをすれば、被害者に対して行った暴行は発覚しないと思っていた旨供述する。しかし、被告人もGも、浜名湖でも被害者に素手で直接触れているところ、どちらも被害者の身体が着実に水に浸かっているかを確認することなく現場を離れている。 しかも、Gにおいては、被害者を岸壁に置いたままにしようとすら提案しているほ か、自ら湖面に投げたという衣服が着水していないのを認識しながらその場を離れ ている。被告人においても、Gから衣服の存在について指摘されたのに、意に介さずにその場を離れようと提案し(甲87)、衣服がその後どうなったのかについては関心を示していない。このような被告人らの言動は、被害者の身体や衣服に付着した指紋を気にする者の行動として不自然で、むしろ指紋に特段注意を払っていないとすらみられるものである。また、指紋を消したとしても、被害者は被告人らか らD方で暴行を受けたことを認識しているのであるから、被害者が存命する限り、被告人らの暴行に関する証拠が隠滅されることにはならないから、その内容自体も不自然である。したがって、前記被告人供述は信用できない。 そして、被告人らがD方に戻ってから関係者と口裏合せをしていること(甲83、87)も考慮すると、本件において被告人が被害者を浜名湖に突き落とした目的は 。したがって、前記被告人供述は信用できない。 そして、被告人らがD方に戻ってから関係者と口裏合せをしていること(甲83、87)も考慮すると、本件において被告人が被害者を浜名湖に突き落とした目的は、 被害者を死亡させて口封じをするためであるとしか考えられず、被告人に被害者を殺害する動機があったものと認められる。 4 結論以上のとおりであるから、弁護人のその余の主張を踏まえて検討しても、判示第3の行為について被告人に殺意があったと認められる。 (処遇選択及び量刑の理由)第1 少年法55条に基づく家庭裁判所への移送の主張に対する判断 1 弁護人は、本件を少年法55条に基づき家庭裁判所へ移送すべきである旨主張するため、この点について検討する。 2 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯す とき16歳以上の少年に係る事件については、少年法62条2項1号により原則として検察官に送致して刑罰を科すこととされており、保護許容性が狭いものとしていることからすると、これに該当する本件について家庭裁判所への移送を定める同法55条の保護処分相当性の当否を判断するに当たっては、当該事件の犯情において保護処分を許容し得る特段の事情が認められることが必要である。 ⑴ 保護処分を許容し得る特段の事情の検討 ア被告人らは、2人がかりで、無抵抗の被害者に対し、一方的に強度な暴行を加えた。被害者の顔面や胸腹部等を多数回殴る蹴るなどしたほか、酒の空瓶で頭部を殴る、自転車のタイヤを腹部に叩きつける、十字レンチやワイヤー錠で殴る、コンクリート製の輪留めに後頭部を打ち当てるなど、手当たり次第に道具等も用いている。その後は、被害者を自動車の狭いトランク内に押し込んで物のような扱いを し、自 、十字レンチやワイヤー錠で殴る、コンクリート製の輪留めに後頭部を打ち当てるなど、手当たり次第に道具等も用いている。その後は、被害者を自動車の狭いトランク内に押し込んで物のような扱いを し、自動車を走行させ、約50分間の監禁に及んだ。しかも、浜名湖到着後は、被告人らの暴行により意識障害等の傷害を負っていた被害者に対し、更に暴行を加えた上、ほぼ全裸の状態で2メートルを超える岸壁から真冬の浜名湖へ突き落として溺死させた。このような強度かつ執拗な暴行、危険な態様による監禁及び冷酷な殺害方法に鑑みれば、各犯行態様はかなり悪質なものである。 イ被告人らが被害者を殺害した動機についても、前記のとおり被害者を殺害して口封じをして自己の保身を図るという身勝手なものであり、およそ同情の余地はない。 ウ本件の発端となった暴行は被告人によるものであり、前記のとおり道具等を用いた暴行に及んでいるのも被告人であって、共犯者であるGと比べて、より強度 の暴行を行っている。また、被告人は、被害者を自動車のトランクに監禁するに当たってはA、B及びCに対して指示を出す役割を担っていた。さらに、被告人は、浜名湖に到着してからも、Gと協力し、被害者をトランクから引きずり出して暴行を加え、最終的にGが被害者を岸壁に置き去りにすれば足りると提案したにもかかわらず、それに異を唱え、自ら被害者を岸壁から突き落として落水させている。こ のように、被告人は、本件各犯行全体を通じて、主体的かつ積極的に行動しているのであるから、その果たした役割や関与の度合いは大きい。 ⑵ 弁護人の指摘及びこれに対する検討この点、弁護人は、犯情の点につき、被告人の被害者に対する暴行のきっかけは被害者側にあり、傷害の結果自体はそれほど重いものではないし、Gの具体的な犯 い。 ⑵ 弁護人の指摘及びこれに対する検討この点、弁護人は、犯情の点につき、被告人の被害者に対する暴行のきっかけは被害者側にあり、傷害の結果自体はそれほど重いものではないし、Gの具体的な犯 行の提案や暴行への加勢もあって、暴行が過激化したり、被害者の殺害が容易にな ったりした経緯がある旨を指摘する。 確かに、D方において、被害者が被告人や周囲の人物に配慮を欠く振る舞いをした上、Dを倒すという暴行をしたことが、被告人の被害者に対する暴行のきっかけとなった面は否定し難い。しかし、被告人が不満や怒りを感じた被害者の言動は、被告人らが行った強度の暴行等とはおよそ釣り合わないから、この点については考 慮に値しない。また、被害者が負った外傷はそれ自体としては全治約2週間程度であったものの、被告人らが行った前記の暴行により被害者は重度の意識障害に陥り、その状態で殺害されているのであるから、外傷のみを取り上げて犯情を論じる意味はない。なお、被害者の言動やGが暴行に及んだ契機に関する被告人の供述は、必ずしも不自然であるとして排斥はできないし、最終的に被害者を浜名湖に落水させ ると決めた経緯についても、被告人及びGの各供述がいずれも信用できないため、判然としない部分はある。もっとも、被告人が被害者に対して暴行を加え始めたのは、被害者の言動に腹を立てたという被告人自身の感情に基づく行動であったこと、被害者を殺害して口止めをするという動機は、被告人とGに共通するものであること、被告人はGに従属するといった関係にあるわけではなく、自らの意思で犯行を 行うことを決めていることなどからすれば、仮に弁護人の主張や被告人の供述のとおり、暴行が過激化した理由はGの加勢による側面もあり、また、最初に被害者を海に捨てようと提案したのはG 思で犯行を 行うことを決めていることなどからすれば、仮に弁護人の主張や被告人の供述のとおり、暴行が過激化した理由はGの加勢による側面もあり、また、最初に被害者を海に捨てようと提案したのはGであるとしても、被告人が主体的かつ積極的に本件各犯行を遂行したとの前記判断は揺るがない。 ⑶ 55条移送に関する結論 以上のとおり、本件については、弁護人の前記主張を踏まえてもなお、その犯情はかなり重いから、後記第3で指摘する一般情状を踏まえても、保護処分を許容し得る特段の事情は認められない。したがって、少年法55条による家庭裁判所移送が相当であるとはいえない。 第2 犯情の評価 前記の各犯情を踏まえれば、本件は同種の殺人(共犯関係:共犯、被害者の立 場:知人・友人・勤務先関係、処断罪と同一又は同種の罪の件数:1件、被害者の落ち度:あり以外、示談又は宥恕:すべてなし、前科等:すべてなし)のうち中程度の事案の中では、重い部類に属する。 第3 一般情状及び処断刑の決定その上で、一般情状についてみると、当時17歳であった被害者が、被告人らか ら前記のような激しい暴行を受け、真冬の浜名湖に突き落とされて殺害されたばかりか、被告人は不合理な弁解をして殺意を否認していることからすると、被害者の遺族である両親が被告人に対して厳しい処罰感情を有していることは当然で、このことは量刑上考慮すべき事情である。他方、被告人は犯行当時18歳であり、現在も20歳未満であって、被告人の成育歴等も踏まえれば人格や論理的な思考力が未 発達な面があり、そのことが本件各犯行の意思決定につながった面も否定できないこと、少年審判や本件裁判を通じて、被告人やその家族が被告人の問題性について理解を深め、社会復帰に際しては家族の支えが期待でき 達な面があり、そのことが本件各犯行の意思決定につながった面も否定できないこと、少年審判や本件裁判を通じて、被告人やその家族が被告人の問題性について理解を深め、社会復帰に際しては家族の支えが期待できること、被告人の両親が100万円を工面して被害弁償の申出をしていること、被害者を死亡させたことについては被告人なりに反省の弁を述べていること、粗暴犯の非行歴等はないことは、 被告人に有利な事情として考慮できる。 そこで、前記第1及び第2で検討した犯情を前提に、以上の一般情状を考慮して被告人を主文のとおりの刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑-懲役19年弁護人の科刑意見-保護処分ないし懲役8年)令和7年7月18日 静岡地方裁判所浜松支部刑事部 裁判長裁判官來司直美 裁判官肥田薫 裁判官志村敬一
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