令和7年4月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第2829号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和7年2月28日判決原告森産業株式会社 同訴訟代理人弁護士緒方延泰同飯野毅一同落合祐一被告千葉泉産業株式会社(以下「被告千葉泉」という。) 被告株式会社東陽物産(以下「被告東陽物産」という。)上記両名訴訟代理人弁護士菅原清暁上記両名訴訟復代理人弁護士野澤正充同小野渡 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 被告らは、原告に対し、連帯して、5548万5724円及びこれに対する令和4年1月1日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は、しいたけ(登録番号第17039号)の育成者権を有し、他方、被告東陽物産は、しいたけの菌床を輸入して被告千葉泉に譲渡し、被告千葉泉は、 しいたけを生産、譲渡している。 本件は、原告が、被告らに対し、上記の被告らの行為が原告の上記育成者 方、被告東陽物産は、しいたけの菌床を輸入して被告千葉泉に譲渡し、被告千葉泉は、 しいたけを生産、譲渡している。 本件は、原告が、被告らに対し、上記の被告らの行為が原告の上記育成者権を侵害すると主張して、民法709条及び719条1項に基づき、連帯して、損害賠償金5548万5724円及びこれに対する不法行為の日の後である令和4年1月1日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実をいう〔証拠等の記載のないものは当事者間に争いがなく、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。〕。)⑴ 当事者ア原告は、しいたけ等のきのこ種菌、菌床の製造、販売等を業とする株式 会社である。 イ被告千葉泉は、きのこ栽培、加工、販売等を業とする株式会社であり、被告東陽物産が輸入した菌床を譲り受け、しいたけを生産、販売していた。 (弁論の全趣旨)ウ被告東陽物産は、農産、水産、畜産品の輸入加工及び販売等を業とする 株式会社であり、しいたけの菌床を輸入して、被告千葉泉に譲渡していた。 なお、被告千葉泉と被告東陽物産の代表者及び株主は同一である。(弁論の全趣旨)⑵ 原告の育成者権原告は、以下のしいたけの育成者権を有している(以下、当該登録品種を 「原告品種」という。)。 登録番号第17039号品種登録の年月日平成20年6月3日農林水産植物の種類しいたけ登録品種の名称森XR1号 ⑶ 原告によるサンプル採取 ア令和2年6月19日の調査(甲5ないし8、56、57、弁論の全趣旨)原告の社員は、令和2年6 しいたけ登録品種の名称森XR1号 ⑶ 原告によるサンプル採取 ア令和2年6月19日の調査(甲5ないし8、56、57、弁論の全趣旨)原告の社員は、令和2年6月19日、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構種苗管理センター(以下「種苗管理センター」という。)職員立会いの下、オオゼキ大森駅前店において、被告千葉泉が生産した「千葉県産いずみ椎茸菌床生(7個入り)」(以下「被告商 品A」という。)を1パック購入した。 原告の社員は、同日、種苗管理センター職員立会いの下、ライフ西蒲田店において、被告千葉泉が生産した「千葉県産いずみ椎茸菌床生(6個入り)」(以下「被告商品B」という。)及び「千葉県産生椎茸適量(3個入り)」(以下「被告商品C」という。)をそれぞれ1パ ック購入した。 種苗管理センター職員は、同日、被告商品AないしCを袋に封印の上、クーラーボックスに入れて持ち帰り、種苗管理センター内の冷蔵庫に保管した。 種苗管理センター職員は、同月22日、被告商品AないしCを、クー ラーボックスに入れて原告に持参した。原告の社員は、被告商品AないしCからそれぞれ3個のしいたけ子実体を選び、1個当たり4本の組織(子実体の一部)を分離した(以下「本件分離行為1」という。)。分離した組織の半分は種苗管理センターに寄託されて培養され、残りの半分は原告において保管されて培養された。 種苗管理センター職員は、同年7月13日、本件分離行為1の後に種苗管理センターにおいて培養された組織の入った試験管18本を原告に持参した。原告の社員は、子実体ごとに2本ある試験管のうち1本を選び、子実体から発菌した菌糸を分離し、それぞれ試験管2本に植え継いだ(以下「本件植継行為1」と された組織の入った試験管18本を原告に持参した。原告の社員は、子実体ごとに2本ある試験管のうち1本を選び、子実体から発菌した菌糸を分離し、それぞれ試験管2本に植え継いだ(以下「本件植継行為1」という。)。本件植継行為1により菌糸 を植え継いだ試験管は、種苗管理センターに寄託され、保管された。 イ令和3年4月21日の調査(甲15ないし18、56、58、弁論の全趣旨)原告の社員は、令和3年4月21日、種苗管理センター職員立会いの下、オオゼキ大森駅前店において、被告千葉泉が生産した「千葉県産いずみ椎茸菌床生」(以下「被告商品D」という。)を1パック購入した。 原告の社員は、同日、種苗管理センター職員立会いの下、ライフ西蒲田店において、被告千葉泉が生産した「千葉県産いずみ椎茸菌床生」(以下「被告商品E」といい、被告商品AないしEを併せて「被告各商品」という。)を1パック購入した。 種苗管理センター職員は、同日、被告商品D及びEを袋に封印の上、 クーラーボックスに入れて持ち帰り、種苗管理センター内の冷蔵庫に保管した。 種苗管理センター職員は、同月23日、被告商品D及びEを、クーラーボックスに入れて原告に持参した。原告の社員は、被告商品D及びEからそれぞれ3個のしいたけ子実体を選び、1個当たり4本の試験管に 組織(子実体の一部)を分離した(以下「本件分離行為2」といい、本件分離行為1と合わせて「本件各分離行為」という。)。本件分離行為2により分離した組織の半分は種苗管理センターに寄託されて、同センターにより培養が行われ、残りの半分は原告において保管され、培養が行われた。 種苗管理センター職員は、同年5月13日、本件分離行為2の後に種苗管理センターにおいて培養された組織の入った試 ターにより培養が行われ、残りの半分は原告において保管され、培養が行われた。 種苗管理センター職員は、同年5月13日、本件分離行為2の後に種苗管理センターにおいて培養された組織の入った試験管12本を原告に持参した。原告の社員は、子実体ごとに2本ある試験管のうち1本を選び、子実体から発菌した菌糸を分離し、それぞれ試験管2本に植え継いだ(以下「本件植継行為2」といい、本件植継行為1と併せて「本件 各植継行為」という。)。本件植継行為2により菌糸を植え継いだ試験 管は、種苗管理センターに寄託され、保管された。 ウ本件各植継行為後の植継行為(甲78ないし82、弁論の全趣旨)本件各植継行為後、種苗管理センターに寄託された試験管内の菌糸については、その後繰り返し同様に菌糸の植継ぎが行われた。 ⑷ 鑑定の実施 ア当裁判所は、令和5年3月13日、原告による以下の内容の鑑定嘱託の申出を採用した(以下、当該鑑定を「本件鑑定」という。)。 鑑定嘱託先種苗管理センター試験・検査部品種保護対策課 鑑定事項 下記①ないし④の各種菌(以下「種菌①」ないし「種菌④」という。)の比較栽培試験の結果、種菌①の特性と種菌②ないし④の各種菌の各特性が異なるか否か、異なる場合にはその異なる程度(明確に区別できるか否か)の判定① 原告品種の種菌 ② 被告商品Aとして種苗管理センターに寄託された種菌(菌糸)③ 被告商品Dとして種苗管理センターに寄託された種菌(菌糸)④ 被告らが提供する品種(型番:L9)の種菌イ本件鑑定の結果、種菌①と種菌②については類似性が高くなく、種菌①と種菌③については非常に類似性が高く、種菌①と種菌④については類似 性が高く 告らが提供する品種(型番:L9)の種菌イ本件鑑定の結果、種菌①と種菌②については類似性が高くなく、種菌①と種菌③については非常に類似性が高く、種菌①と種菌④については類似 性が高くないとの結論が出た。 なお、本件鑑定のうち、種菌④に係る鑑定においては、鑑定事項記載の審査基準における調査方法に記載された個体数である子実体60個体を得ることができなかったため、子実体50個体を調査対象としたものである。 2 争点 ⑴ 侵害行為の有無(争点1)ア本件各分離行為及び本件各植継行為の信用性(争点1-1)イ本件鑑定の信用性(争点1-2)⑵ 共同不法行為の成否(争点2)⑶ 損害額(争点3) ア種苗法34条1項により推定される損害額(争点3-1)イ種苗法34条2項により推定される損害額(争点3-2)ウ譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を育成者権者又は専用利用権者が販売することができないとする事情の存否(争点3-3)エカスケイド原則が適用されるか否か(争点3-4) 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(本件各分離行為及び本件各植継行為の信用性)について(原告の主張)⑴ 本件鑑定における種菌②及び③の採取過程種苗管理センター職員は、令和2年6月19日に原告が購入した被告商品 AないしCを種苗管理センターに持ち帰り(甲5)、同月22日の本件分離行為1及び同年7月13日の本件植継行為1に立ち会い、その上で種苗管理センター所長名による寄託開始通知書が発行され、被告商品AないしCについてそれぞれ菌糸6本が保管されていることが示されている(甲7)。このことから、種苗管理センターに寄託され、本件鑑定に供された種菌②が、被 告 寄託開始通知書が発行され、被告商品AないしCについてそれぞれ菌糸6本が保管されていることが示されている(甲7)。このことから、種苗管理センターに寄託され、本件鑑定に供された種菌②が、被 告商品Aの子実体から分離した種菌(菌糸)であることは明らかである。 また、種苗管理センター職員は、令和3年4月21日、原告が購入した被告商品D及びEを種苗管理センターに持ち帰り(甲15)、同月23日には本件分離行為2に、同年5月13日には本件植継行為2に、それぞれ立ち会い、その上で種苗管理センター所長名による寄託開始通知書が発行され、被 告商品D及びEそれぞれについて菌糸6本を保管していることが示されて いる(甲18)。このことから、種苗管理センターに寄託され、本件鑑定に供された種菌③が、被告商品Dの子実体から分離した種菌(菌糸)であることは明らかである。 もっとも、原告は、種苗管理センターがしいたけ子実体から菌糸を分離する技術・設備を有していないため、やむを得ず、これらの作業を原告社内で 実施したが、種苗管理センター職員2名が菌糸分離過程の全てに立ち会い、各作業工程について写真撮影を行っている(甲57、58)。 ⑵ 原告が用意した試験管培地に原告品種の菌糸を混入させていないことア菌糸は酸素のない培地中で伸長することはないから、現在保管されている菌糸が、原告が本件各分離行為及び本件各植継行為に当たり準備した試 験管の培地内に混入させた菌糸が伸長したものであるということはあり得ない。 イ仮に培地が固化する前に菌糸を混入させていたとしても、液体の寒天は60℃以下になると固まるところ(甲71)、菌糸は40〜45℃で死滅するから(甲72)、原告において、培地が固化する前の液体状態で原告 品種の る前に菌糸を混入させていたとしても、液体の寒天は60℃以下になると固まるところ(甲71)、菌糸は40〜45℃で死滅するから(甲72)、原告において、培地が固化する前の液体状態で原告 品種の菌糸を混入させることはあり得ない。 また、仮に培地の固化後に菌糸を混入させようとすれば、培地に目に見える痕跡が残る。さらに、培地内に原告品種の菌糸が混入していれば、PDA培地(ポテトデキストロース寒天培地)が半透明である以上、目視確認が可能である。 ウまた、原告が目に見えない大きさの菌糸を意図的に試験管培地上に付着させることは困難であるし、仮に付着させることができたとしても、品種によって菌糸の伸長速度が極端に変わることはなく、目に見えない大きさの菌糸が付着した培地上に目視可能な大きさの菌糸を植えれば、それから伸長する菌糸が圧倒的になることは明らかである。 ⑶ サンプルの差し替えが不可能であること 原告における作業部屋は2部屋しかなく、1部屋で子実体の組織分離が行われた後、隣接する部屋に試験管立てごと運び込まれ、種苗管理センター職員が試験管を持ち帰っている。事前に原告が原告品種子実体の小片が培地に植えられた別の試験管を用意し、種苗管理センター職員の面前で、組織分離した試験管とすり替えることは不可能であり、原告がこのような行為をする はずがない。 ⑷ 被告らの主張に対する反論ア被告らは、原告が本件各分離行為や本件各植継行為について第三者機関を利用しないことが不合理であると主張する。しかしながら、原告は、種苗管理センターにおいて菌糸分離を行うことができなかったから、やむを 得ず種苗管理センター職員が作業の全行程に立ち会い、写真撮影して記録を残す方法で菌糸分離を実施した。菌糸分離 ら、原告は、種苗管理センターにおいて菌糸分離を行うことができなかったから、やむを 得ず種苗管理センター職員が作業の全行程に立ち会い、写真撮影して記録を残す方法で菌糸分離を実施した。菌糸分離を種苗管理センター以外の第三者に依頼した場合、被告らから、原告と当該第三者との利害関係を指摘され、原告品種の菌糸を混入させたのではないかとの指摘をされたであろうことが容易に想定されたのであるから、客観的に中立な立場にある種苗 管理センター職員立会いの下での菌糸分離作業が適切な方法であったことは明らかである。 イ被告らは、サンプルの差し替えの可能性を主張するが、原告が行った作業のどの過程でどのような態様の差し替えがされた可能性があるのかを具体的に主張していないし、そもそも種苗管理センター職員が立ち会う中 で試験管をすり替えることは不可能である。 ウ被告らは、サンプルが劣化した可能性を主張するが、当該主張はサンプル採取過程の信用性の問題とは無関係である。なお、種苗管理センターにおける試験管等の保管状況は適切である。 エ被告らは、原告が親株を廃棄したことを指摘する。しかしながら、子実 体からの組織分離、菌糸の植継ぎという手順を踏むのは、子実体組織のま ま保管することによる雑菌汚染リスクを排除するためであり、一般的な手法である。そして、菌糸の植継ぎによって親株は不要となったから廃棄したにすぎず、親株を廃棄したことに何ら問題はない。 オ被告らは、本件各植継行為において、原告が良好な1本の菌糸を選定したことを指摘するが、サンプル採取過程の信用性の問題とは無関係である。 (被告らの主張)以下で述べるとおり、本件鑑定の前提となる本件各分離行為及び本件各植継行為は、信用することができない。 ⑴ 原告に ンプル採取過程の信用性の問題とは無関係である。 (被告らの主張)以下で述べるとおり、本件鑑定の前提となる本件各分離行為及び本件各植継行為は、信用することができない。 ⑴ 原告において本件各分離行為等が行われたことが不適切であること原告は、本件各分離行為に当たり、種苗管理センター職員が被告各商品を クーラーボックスに入れて原告に持参した旨主張するが、原告に持参することは、サンプルの差し替えのおそれがあるから不適切である。 また、原告は、種苗管理センターが本件各分離行為等を実施するための技術・設備を有していなかったから、原告において実施したものであり、種苗管理センター以外の第三者に依頼したとしても、原告と当該第三者との利害 関係が問題とされたことが想定されるから、種苗管理センター以外の第三者を利用しなかったことは不合理ではない旨主張する。しかしながら、複数の第三者機関を利用するなど、利害関係を問題視されない方法があったはずである。そもそも、原告本社内で組織分離の作業を行うに当たっては、原告品種の菌糸が器具等に混入しているおそれや、室内に浮遊しているおそれがあ り、正確な鑑定結果が得られなくなるおそれがあるから、原告が種苗管理センター以外の第三者を利用しなかったことは、不合理といわざるを得ない。 ⑵ 原告自身が本件各分離行為及び本件各植継行為をしたことが不適切であることア本件各分離行為及び本件各植継行為は原告の社員が行ったものである から、種菌②及び③について、捏造やすり替えがされた可能性がある。原 告は、「全国食用きのこ種菌協会」に所属しており、同協会を通じて上記作業を行う企業や研究機関を容易に紹介してもらうことが可能であったにもかかわらず、第三者機関を利用しなか 能性がある。原 告は、「全国食用きのこ種菌協会」に所属しており、同協会を通じて上記作業を行う企業や研究機関を容易に紹介してもらうことが可能であったにもかかわらず、第三者機関を利用しなかったことは不自然である。 イ原告の社員が本件各分離行為及び本件各植継行為における封印作業を行った可能性があるから、サンプルの差し替えの可能性がある。 ウ原告は、本件各分離行為及び本件各植継行為は種苗管理センター職員立会いの下で行われていると主張するが、本件分離行為1については3時間19分、本件植継行為1については1時間22分、本件分離行為2については3時間51分、本件植継行為2については1時間31分、それぞれ掛かっているところ、このような長時間の作業において、種苗管理センター 職員が目を離したときなどに、サンプルの差し替えなどをすることは可能である。 エ原告は、本件各分離行為及び本件各植継行為においてPDA培地を封入した試験管を用いているが、同試験管は原告の担当者が用意しているから、同試験管に原告品種と同じ種菌が混入した可能性が否定できない。 オ種苗管理センター職員は、本件各分離行為及び本件各植継行為において、試験管等に異常がないことを目視で確認しているが、目に見えない菌に関する作業を行っているのであるから、確認方法が目視では不十分である。 カ原告は、本件各植継行為においては、原告の担当者が、同一の子実体から得た親株2本から菌糸の状態がより良好な1本を選定したと主張する が、種苗管理センター職員が立ち会っていたならば同職員が選定すればよく、あえて公平性を担保できない原告の担当者が選定していることは不合理である。 ⑶ その他信用性を否定すべき事情ア被告各商品は、購入後本件各分離行為を行うまで、 ならば同職員が選定すればよく、あえて公平性を担保できない原告の担当者が選定していることは不合理である。 ⑶ その他信用性を否定すべき事情ア被告各商品は、購入後本件各分離行為を行うまで、種苗管理センターに おいて3日間又は4日間保管されていたところ、この際の温度設定は不明 であるから、不適切な温度設定で保管された結果、サンプルが劣化した可能性がある。 イ原告は、本件各分離行為及び本件各植継行為の後に親株を廃棄しているが、菌株保存の手法等の手続の正当性を検証するために重要な試料である親株を廃棄したことには重大な問題があり、親株の廃棄は不適切な措置と いわざるを得ない。 2 争点1-2(本件鑑定の信用性)について(原告の主張)本件鑑定における比較栽培試験は、第三者である種苗管理センターが行ったものであり、信用できる。 (被告らの主張)比較栽培の検査方法について、種苗管理センターの手続方法の定めやマニュアル等はなく、ルールが確立されていない状況である。そのため、本件における比較栽培の妥当性、公平性及び客観性が担保されていないところ、このような確立されていないルールによる比較栽培試験は、信用することができない。 3 争点2(共同不法行為の成否)について(原告の主張)被告千葉泉は、原告品種と同品種の種苗を用いることにより得られる収穫物を生産、譲渡することにより、原告の育成者権を侵害している。また、被告東陽物産は、同種苗を輸入、譲渡することによって原告の育成者権を侵害してい る。 そして、被告らの代表者と株主が同一であること、従業員も共通すること、被告東陽物産が中国から種苗(菌床)を輸入し、被告千葉泉に対し譲渡することになったのは、被告千葉泉 害してい る。 そして、被告らの代表者と株主が同一であること、従業員も共通すること、被告東陽物産が中国から種苗(菌床)を輸入し、被告千葉泉に対し譲渡することになったのは、被告千葉泉に与信上の問題があったことが理由であること、被告千葉泉が被告東陽物産から仕入れた菌床によって生産したしいたけは全 て被告東陽物産を通じて各取引先に販売されていると主張していること、被告 らの代表取締役が、被告東陽物産の社長としてインタビューを受けた際、被告千葉泉を「子会社」と発言していること(甲35)、以上の事実からすると、種苗(菌床)の輸入、譲渡及び収穫物の生産、譲渡という一連の侵害行為について、被告らは、主観的、客観的に共同して侵害行為を行ったものといえるから、共同不法行為が成立する。 (被告らの主張)原告は、被告らの代表者と株主が同一であることから主観的、客観的関連共同性を主張するが、代表者と株主が同一であっても、従業員は異なる上、会社設立時も約20年異なるのであって、被告らは、その性質において異なる会社である。また、被告千葉泉に与信上の問題があるため被告東陽物産が輸入を行 っており、輸入を行うことができる会社は被告東陽物産のみであったから、輸入行為について被告千葉泉は何ら関係していない。このように両社は実質的に異なる会社であり、被告らの行為が客観的に関連し、共同して損害を生じさせているとはいえない。 したがって、本件において客観的関連共同性は存在せず、共同不法行為は成 立しない。 4 争点3(損害額)について⑴ 争点3(損害額)に関する当事者の主張は、調査費用については別紙1のとおりであり、種苗法34条1項により推定される損害額(争点3-1)については別紙2のとおりであり、同条 損害額)について⑴ 争点3(損害額)に関する当事者の主張は、調査費用については別紙1のとおりであり、種苗法34条1項により推定される損害額(争点3-1)については別紙2のとおりであり、同条2項により推定される損害額(争点3 -2)については別紙3のとおりであり、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を育成者権者又は専用利用権者が販売することができないとする事情の存否(争点3-3)及びカスケイド原則が適用されるか否か(争点3-4)については別紙4のとおりである。 ⑵ 別紙1ないし3に基づく、損害額の内訳に関する原告の主張は、以下のと おりである。なお、種苗法34条1項に基づく請求と同条2項に基づく請求 の関係は、高額な方の支払を求める選択的請求である。また、原告は、以下のとおり、弁護士費用相当額として損害額の合計額の1割を加算した金額も、損害として請求している。 ア種苗法34条1項に基づく請求額種苗法34条1項に基づく請求については、被告千葉泉と被告東陽物産 に係る損害額のうち、高額な方について不真正連帯債務として請求するものである。 被告千葉泉についてa 逸失利益(主位的)2231万2953円+210万5427円 =2441万8380円b 逸失利益(予備的)1696万3206円+160万0631円=1856万3837円c 調査費用 30万0485円d 弁護士費用を含めた損害額の合計額(主位的)(2441万8380円〔上記a〕+30万0485円〔上記c〕)×1.1=2719万0751円 弁護士費用を含めた損害額の合計額(主位的)(2441万8380円〔上記a〕+30万0485円〔上記c〕)×1.1=2719万0751円 e 弁護士費用を含めた損害額の合計額(予備的)(1856万3837円〔上記b〕+30万0485円〔上記c〕)×1.1=2075万0754円 被告東陽物産について a 逸失利益 2231万2953円+210万5427円=2441万8380円b 調査費用30万0485円c 弁護士費用を含めた損害額の合計額 (2441万8380円+30万0485円)×1.1=2719万0751円イ種苗法34条2項に基づく請求額種苗法34条2項に基づく請求については、被告千葉泉と被告東陽物産の損害額(利益の額)を合算した損害額について不真正連帯債務として請 求するものである。 被告千葉泉についてa 逸失利益4616万5469円b 調査費用 30万0485円c 弁護士費用を含めた損害額の合計額(4616万5469円+30万0485円)×1.1=5111万2549円 被告東陽物産について a 逸失利益53万4982円+344万0632円=397万5614円b 調査費用30万0485円 c 弁護士費用を含めた損害額の合計額 53万4982円+344万0632円=397万5614円b 調査費用30万0485円 c 弁護士費用を含めた損害額の合計額 (397万5614円+30万0485円)×1.1=470万3708円 まとめ(4616万5469円〔上記a〕+397万5614円〔上記a〕+30万0485円〔上記b又はb〕)×1.1 =5548万5724円第4 当裁判所の判断 1 争点1-1(本件各分離行為及び本件各植継行為の信用性)について⑴ 審理経過本件においては、本件各分離行為及び本件各植継行為の信用性が核心的争 点とされたことから、この点に限り当事者双方において主張立証の2往復をし、裁判所が検討することとされた(令和5年12月21日付け経過表参照)。 その後、裁判所は、その検討結果を踏まえ、更に中核的争点を絞ることとし、①原告自ら用意した試験管の培地上に菌糸を事前に混入させることができるかどうか、②原告が親株を廃棄した理由及びこれが適切であったかどうか につき、更に求釈明し(令和6年5月30日付け経過表参照)、この点につき、原告が専門家意見書を提出するなど当事者双方において十分に主張立証が補充された後、弁論準備手続が終結された(令和6年10月17日付け弁論準備手続調書参照)。 ⑵ 認定事実 前提事実、証拠(甲57、58及び75)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア種苗管理センター職員及び原告の社員は、以下の手順で本件各分離行為を行った。なお、本件分離行為1に当たっては、種苗管理センター職員1名が立ち会った。また、本件分離行為 下の事実が認められる。 ア種苗管理センター職員及び原告の社員は、以下の手順で本件各分離行為を行った。なお、本件分離行為1に当たっては、種苗管理センター職員1名が立ち会った。また、本件分離行為2に当たっては、組織分離作業には 種苗管理センター職員1名のみが立ち会い、封印した子実体の取り出し等 の作業には種苗管理センター職員2名が立ち会った。 種苗管理センター職員は、本件各分離行為に当たり、種苗管理センターに保管されていた被告各商品について、包装に異常がないことを確認した上で、クーラーボックスに封印して、原告に持参した。 種苗管理センター職員は、原告の社内でクーラーボックスを開封し、 被告各商品のパックの外観に異常がないことを確認した。 原告の社員は、被告各商品のパックを開封し、各パックから組織分離に使用する子実体3個を選定した。 原告は、本件各分離行為に当たり、PDA培地を封入した試験管をあらかじめ用意しており、種苗管理センター職員は、置床前の試験管には 培地以外何もないことを目視で確認した。 原告の社員は、子実体1個につき、菌傘の中央部分から2つに裂き分け、裂き分けた子実体の菌傘の組織の一部から4つの小片を切り出し、切り出した4つの小片をPDA培地が封入された試験管に1つずつ、4本の試験管に置床した。なお、当該4本の試験管のうち2本については 原告で保管し、残りの2本については種苗管理センターで保管することとした。 種苗管理センター職員は、子実体の一部をPDA培地に置床した試験管(以下「本件分離用試験管」という。)及び本件各分離行為に用いた子実体(以下「本件子実体」という。)をクーラーボックスに封印後、 種苗管理センターに持ち帰り、同試験管及び同子実体に異常がないことを 「本件分離用試験管」という。)及び本件各分離行為に用いた子実体(以下「本件子実体」という。)をクーラーボックスに封印後、 種苗管理センターに持ち帰り、同試験管及び同子実体に異常がないことを確認した上で、同試験管は23℃に設定したインキュベーターに、同子実体は5℃に設定した保冷庫に保管した。 種苗管理センター職員は、本件分離行為1の後、被告商品Aに係る試験管のうち1本に雑菌が混入していたため、令和2年6月26日に別の 場所に保管した。その他の本件分離行為1に係る本件分離用試験管は、 同年7月6日に培地全体に菌糸が伸長したことを確認し、インキュベーターの設定を6℃に変更して保管した。 種苗管理センター職員は、本件分離行為2に係る本件分離用試験管について、令和3年4月30日に菌糸が伸長したことを確認し、インキュベーターの設定を6℃に変更して保管した。 イ種苗管理センター職員及び原告の社員は、以下の手順で本件各植継行為を行った。なお、本件植継行為1に当たっては、種苗管理センター職員1名が立ち会った。また、本件植継行為2に当たっては、種苗管理センター職員2名が立ち会った。 種苗管理センター職員は、本件各植継行為に当たり、本件分離用試験 管に異常がないことを確認した上で、クーラーボックスに封印して、原告に持参した。また、本件子実体についても、クーラーボックスに封印した上で、原告に持参した。 種苗管理センター職員は、原告の社内でクーラーボックスを開封し、本件分離用試験管に異常がないことをそれぞれ確認した。 原告の社員は、本件分離用試験管の菌糸の状態を確認し、種苗管理センター職員は、上記アにおいて雑菌の混入が確認された1本については、原告に返却し、その他の試験管の菌糸の状態は良好である 原告の社員は、本件分離用試験管の菌糸の状態を確認し、種苗管理センター職員は、上記アにおいて雑菌の混入が確認された1本については、原告に返却し、その他の試験管の菌糸の状態は良好であることを確認した。また、本件子実体についても、種苗管理センター職員から原告に返却された。 原告は、本件各植継行為に当たり、PDA培地を封入した試験管をあらかじめ用意しており、種苗管理センター職員は、置床前の試験管には培地以外何もないことを目視で確認した。 原告の社員は、同一の子実体から得た親株(本件分離用試験管内で培養された親株のことをいい、以下「本件親株」という。)2本から、菌 糸の状態のより良好な1本を選定し、本件親株について、菌糸を含む培 地の小片を2つ切り出し、切り出した2つの小片をPDA培地が封入された試験管に1つずつ置床した。 種苗管理センター職員は、本件親株の菌糸を含む培地切片をPDA培地に置床した試験管(以下「本件植継用試験管」といい、本件分離用試験管と併せて「本件試験管」という。)及び本件分離用試験管を、クー ラーボックスに封印後、種苗管理センターに持ち帰り、本件試験管に異常がないことを確認した上、本件植継用試験管は23℃に設定したインキュベーターに、本件分離用試験管は5℃に設定した保冷庫に、それぞれ保管した。 種苗管理センター職員は、本件植継行為1に係る本件植継用試験管に ついて、令和2年7月28日に培地全体に菌糸が伸長したことを確認し、インキュベーターの設定を6℃に変更して保管した。 種苗管理センター職員は、本件植継行為2に係る本件植継用試験管について、令和3年5月25日に培地全体に菌糸が伸長したことを確認し、インキュベーターの設定を6℃に変更して保管した。 。 種苗管理センター職員は、本件植継行為2に係る本件植継用試験管について、令和3年5月25日に培地全体に菌糸が伸長したことを確認し、インキュベーターの設定を6℃に変更して保管した。 種苗管理センターは、本件植継行為1に係る本件親株を、令和3年3月9日に原告に返却し、その後原告は、本件親株を廃棄した。また、種苗管理センターは、本件植継行為2に係る本件親株については、原告に菌糸の状態を写真で確認させた後、廃棄した。 ⑶ 本件各植継行為等の信用性に対する判断 前記前提事実、前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、本件各分離行為、本件各植継行為及びその後複数回行われた植継行為(以下、併せて「本件各植継行為等」という。)により、被告各商品から分離されて植え継がれた菌糸につき、本件鑑定が行われたことが認められる。そこで、本件鑑定の信用性を判断する前提として、本件各植継行為等の信用性(争点1-1)を検討 する。 ア前記前提事実、前記認定事実及び証拠(甲78ないし82)によれば、本件各植継行為等には、いずれも原告があらかじめ用意していたPDA培地を封入した本件試験管が使用されたところ、本件試験管にはPDA培地以外には何もないことを種苗管理センター職員が目視で確認していたことが認められる。しかしながら、証拠(乙47、51、52、54)及び 弁論の全趣旨によれば、しいたけの菌糸は目視できない程度の大きさでも十分に存在し得るものであり、あらかじめ寒天培地で培養した目視できない程度の大きさの菌糸を試験管の培地上に塗布又は滴下した場合、菌糸を目視できるまで十分に生長させることができることが認められる。そのため、種苗管理センター職員は、原告が本件試験管に原告品種の菌糸を事前 に塗布又は滴下していた場 に塗布又は滴下した場合、菌糸を目視できるまで十分に生長させることができることが認められる。そのため、種苗管理センター職員は、原告が本件試験管に原告品種の菌糸を事前 に塗布又は滴下していた場合であっても、当該菌糸を目視で確認することはできないものといえる。 そうすると、原告は、種苗管理センター等の第三者機関ではなく、原告自らあえて自社内で事前に本件試験管を準備するなど、原告品種の菌糸を混入させるに十分な時間があったことを踏まえると、本件試験管に目視で きない程度の大きさの原告品種の菌糸を事前に混入することが十分可能であったというべきである。のみならず、前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各植継行為等の後、本件親株を自ら又は種苗管理センターをして廃棄し、その合理的な理由を説明していないのであるから、原告は、本件各植継行為等の事後的な検証を自ら不可能にさせていること が認められる。 これらの事情を総合すると、原告が本件試験管に原告品種の菌糸を事前に混入していた可能性を十分に否定することはできず、これを前提とする本件鑑定の結果は、その信用性を欠くものと認めるのが相当である。 イ原告の主張に対する判断 原告は、菌糸は酸素のない培地中で伸長することはないから、現在保 管されている菌糸は、本件試験管の培地内に混入させたものとはいえない旨主張する。しかしながら、本件では、培地中(培地内部)での生長ではなく、培地上(培地表面)での生長が問題とされているところ、試験管の培地上に塗布又は滴下することによって菌糸を十分に生長させることができることは、上記において説示したとおりである。したがっ て、原告の主張は、採用することができない。 原告は、培地が固化する前の液体状態において、原告品種の って菌糸を十分に生長させることができることは、上記において説示したとおりである。したがっ て、原告の主張は、採用することができない。 原告は、培地が固化する前の液体状態において、原告品種の菌糸を混入させることはあり得ないし、仮に培地の固化後に菌糸を混入した場合には、培地に目に見える痕跡が残るから、目視確認が可能である旨主張する。しかしながら、しいたけの菌糸は目視できない程度の大きさでも 十分に存在し得ることは、上記において説示したとおりであり、また、あらかじめ寒天培地で培養した目視できない程度の大きさの菌糸を試験管の培地上に塗布又は滴下した場合であっても菌糸を目視できるまで十分に生長させることができることは、上記において説示したとおりである。したがって、原告の主張は、採用することができない。 原告は、目視できない程度の大きさの菌糸を意図的に試験管の培地上に付着させることは困難であるし、仮に付着させることができたとしても、証拠(甲95、96)によれば、当該培地上に目視可能な大きさの菌糸を植えた場合、それから伸長する菌糸の方が圧倒的になることは明らかである旨主張する。しかしながら、原告は、自社内で事前にPDA 培地を封入した本件試験管を自ら準備していたのであるから、菌糸を目視できない程度に意図的に付着させるのに十分な時間があったといえる。また、証拠(乙47)及び弁論の全趣旨によれば、被告各商品の子実体組織を植えた面積に比べて、あらかじめ液体培地で培養した菌糸の面積の方が大きい場合、そこから伸長した後者の菌糸の方が圧倒的にな ることは、技術常識に照らしても自明である。そうすると、菌糸の生長 は、培養した菌糸の面積、栄養分の箇所その他の条件次第であり、菌糸の植継行為が複数回繰り返されていた前 圧倒的にな ることは、技術常識に照らしても自明である。そうすると、菌糸の生長 は、培養した菌糸の面積、栄養分の箇所その他の条件次第であり、菌糸の植継行為が複数回繰り返されていた前記認定に係る事情を考慮しても、原告の主張は、上記信用性に係る判断を左右するものとはいえない。 したがって、原告の主張は、採用することができない。 原告は、同一培地上で異なる品種を生長させれば帯線(拮抗線)が形 成されるから、仮に原告が原告品種の菌糸を試験管の培地上に塗布又は滴下していれば帯線が形成されるはずであるのに、帯線は確認されていない旨主張する。しかしながら、技術常識によれば、帯線は、離れた領域から異なる種菌を生長させてそれぞれの菌糸の境界が接触したときにできる一方、被告各商品の菌糸と原告品種の菌糸が近接又は重複した 箇所から同時に生長した場合、帯線が確認できることを認めるに足りる的確な証拠はない。そうすると、原告の主張は、本件とは異なる場面を前提とするものであり、少なくとも本件に適切ではない。したがって、原告の主張は、採用することができない。 原告は、仮に原告品種の菌糸を試験管の培地上に塗布又は滴下してい れば、菌糸を含んだ液体が試験管全体に広がり、複数の箇所から菌糸が生長するはずであるのに、本件では、組織分離や植継ぎをした部分を中心に菌糸が生長しているから、原告がそのような不正をしていないことは明らかである旨主張する。しかしながら、証拠(甲51)及び弁論の全趣旨によれば、試験管の培地上に菌糸を付着させた場合、試験管全体 に広がって複数の箇所から菌糸が生長するのではなく、当該付着させた箇所を中心に菌糸が生長することが認められる。そうすると、本件においても組織分離や植継ぎをする中心部付近に菌糸を付着させてお に広がって複数の箇所から菌糸が生長するのではなく、当該付着させた箇所を中心に菌糸が生長することが認められる。そうすると、本件においても組織分離や植継ぎをする中心部付近に菌糸を付着させておけば、本件試験管全体の複数の箇所ではなく、上記中心部付近に菌糸を生長させることは十分に可能であるといえる。したがって、原告の主張は、採 用することができない。 原告は、本件親株の廃棄について、菌糸の植継ぎによって本件親株は不要となったから廃棄したにすぎず、何ら問題がない旨主張する。しかしながら、本件で原告が主張する育成者権侵害を立証するに当たっては、菌の植継ぎが適正になされたことが当然の前提となるから、原告は、本件各植継行為等の信用性の事後的な検証のために本件親株を凍結する などして保存しておくべきであり、その必要性も十分に認識し得たといえる。それにもかかわらず、原告は、本件親株を廃棄したことは、前記認定のとおりである。したがって、原告の主張は、採用することができない。 ウその他 本件各植継行為等は、本来的には、公平中立な第三者機関において実施されるべきものであり、仮に原告の自社内において実施せざるを得ない事情があったとしても、そもそも原告の自社内で実施する以上菌種の混在又は試験管のすり替えなどのおそれがあることは、被告らが主張するとおりである。その他に前記において説示したところを踏まえると、本件各植継 行為等に当たっては、少なくとも、種苗管理センター等の第三者機関に当該試験管を用意させ、その親株も廃棄せずに保管しておくことは、裁判手続における鑑定の公平性、透明性の重要性に鑑み、必要不可欠であったというべきである。 それにもかかわらず、原告は、あえてこれらを怠ったものであり、本件 試験 せずに保管しておくことは、裁判手続における鑑定の公平性、透明性の重要性に鑑み、必要不可欠であったというべきである。 それにもかかわらず、原告は、あえてこれらを怠ったものであり、本件 試験管を原告自ら用意する必要性及び相当性について合理的な説明をするものではなく、また、本件親株の廃棄についても、菌糸の植継ぎによって本件親株は不要となったから廃棄したにすぎず何ら問題がない旨説明するにとどまるのであるから、少なくとも本件各植継行為等は、上記において説示したとおり、信用性を欠くものであり、これを前提とする本件鑑 定も、信用性を欠くというほかない。その他に、原告の主張を改めて検討 しても、本件試験管に目視不能な菌糸が混入する可能性がある以上、原告の主張は、しいたけの菌糸に関する技術常識とは異なる前提に立つもの又は種苗管理センターへの責任のすり替えをいうものに帰し、裁判手続における鑑定の公平性、透明性の重要性に鑑みても、前記判断を左右するものとはいえない。 なお、原告は、主張立証をこれ以上追加しないことを前提として、裁判所から心証開示を受けたところ、既に主張立証を終えていた審理計画に明らかに反するにもかかわらず、原告のみが、弁論準備手続終了後に種苗管理センターに専ら責任がある趣旨をいう主張立証を追加している(第1回口頭弁論調書参照)。 本件審理経過及び本件に現れた諸事情に鑑み、原告においては、農林水産業の発展に寄与することを目的とする種苗法の法意に照らし(種苗法1条参照)、民訴法2条の趣旨目的を踏まえ、公明正大にルールを守る社会的責務があることを、最後に付言する。 2 小括 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。 第5 結論よって、原告の請求はい にルールを守る社会的責務があることを、最後に付言する。 小括 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。 結論 よって、原告の請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 中島基至 裁判官 武富可南 裁判官 古賀千尋 (別紙1ないし4は省略)
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