平成13(ワ)439 明石運輸一時金請求

裁判年月日・裁判所
平成14年10月25日 神戸地方裁判所
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判決文本文27,516 文字)

判決平成14年10月25日神戸地方裁判所平成13年(ワ)第439号給与・一時金格差支払請求事件 主文 1 被告は,原告Aに対し,金169万7234円及びこれに対する平成13年11月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,金102万5852円及びこれに対する平成13年11月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Cに対し,金87万6497円及びこれに対する平成13年11月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Dに対し,金115万9681円及びこれに対する平成13年11月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は,原告Eに対し,金137万0647円及びこれに対する平成13年11月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告は,原告Fに対し,金132万9199円及びこれに対する平成13年11月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被告は,原告Gに対し,金88万1719円及びこれに対する平成13年11月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 訴訟費用は,被告の負担とする。 9 この判決の第1ないし7項は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 原告らの請求主文第1ないし7項同旨第2 事案の概要本件は,被告の従業員として勤務しあるいは勤務していた原告らが,被告に対し,①平成9年年末から同11年年末まで合計5回の一時金支給につき,格差支給を受けたことにより損害を被ったと主張して,不法行為 本件は,被告の従業員として勤務しあるいは勤務していた原告らが,被告に対し,①平成9年年末から同11年年末まで合計5回の一時金支給につき,格差支給を受けたことにより損害を被ったと主張して,不法行為に基づく損害賠償を請求するとともに,②平成12年2月分から同13年10月分まで(ただし,原告Cについては平成13年2月分まで)の支給を受けた各給与につき,被告の支給額は,賃金協定に反してなされた無効の就業規則及び給与規定の改定に基づく支給であり,原告らは賃金協定に基づく賃金請求権を有すると主張して,その受給額と賃金協定に基づく賃金との差額賃金を請求した事案である。 1 争いのない事実等(証拠の記載がないものは当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア被告は,一般区域貨物自動車運送事業等を目的とする株式会社である。 イ原告らはいずれも被告の従業員であり,H労働組合兵庫合同支部(平成11年10月の組織合同前はI労働組合東播支部)の下部組織である分会の分会員である(以下,H労働組合兵庫合同支部,組織合同前のI労働組合東播支部及び分会をいずれも「組合」という。)。 ウ被告の従業員は50名弱であり,そのうち40名弱がトラック及びトレーラーの運転手である。 原告らは,被告においてトラック運転手として勤務しているところ,原告らの入社年月日と乗車するトラックの車種は以下のとおりである。 (ア) 原告B昭和63年5月6日入社 4トンウイング(イ) 原告E昭和61年2月26日入社  4トンユニック(ウ) 原告F平成元年5月8日入社 4トンユニック( イ) 原告E昭和61年2月26日入社  4トンユニック(ウ) 原告F平成元年5月8日入社 4トンユニック(エ) 原告G平成5年1月28日入社 4トンウイング(オ) 原告C昭和37年3月19日入社 10トン平ボデーなお,原告Cは,平成13年2月20日付で被告を定年退職した。 (カ) 原告D平成2年3月5日入社 10トン平ボデー(キ) 原告A昭和60年9月6日入社  25トントレーラーエ被告には,原告ら所属の組合の外に労働組合は存在しない。 (2) 一時金の支給ア被告は,平成9年12月までは,全従業員に対して,夏季及び年末の年2回,年功(勤続年数)を基礎に算定された額の一時金を支給していたが,経営合理化,経費削減を目的として,一時金の計算方法に関して実績報酬配分制度(勤続年数と無関係に,従業員各人の当期〔半期〕の売上から車両にかかった経費を差し引いた残額を利益とし,これを当該従業員の一時金とする制度。)を導入しようとして,組合に対し,平成8年11月27日の団体交渉において,実績報酬配分制度の導入を提案したところ,組合がこれに反対した。 そこで,被告は,平成9年年末一時金から同11年年末一時金までの5回にわたり,実績報酬配分制度の導入に反対した原告らに対しては,従来の年功(勤続年数)を基礎に一人平均20万円で算定した一時金を支給し,実績報酬配分制度に同意した従業員に対しては,実績報酬配分制度により算定した一時金を支給した。 入に反対した原告らに対しては,従来の年功(勤続年数)を基礎に一人平均20万円で算定した一時金を支給し,実績報酬配分制度に同意した従業員に対しては,実績報酬配分制度により算定した一時金を支給した。 被告は,上記5回の一時金支給のすべてにおいて,実績報酬配分制度に同意した従業員のうち,当期利益がマイナスであり,実績報酬配分制度で算定すると一時金が支給されないはずの者に対し,最低保障金として,4トントラック運転手には25万円,10トントラック及び25トントレーラー運転手には30万円の一時金を支給した(以下,これを「最低保障制度」という。)。 イ上記実績報酬配分制度は,平成12年夏季一時金からは廃止された。 (3) 給与の支給ア賃金協定に基づく支給(ア) 被告と組合は,平成8年3月26日,次のとおりの賃金協定(以下「本件賃金協定」という。)を締結し(甲46),被告は,原告らを含む全従業員に対し,平成12年1月分までは,本件賃金協定に従って算定した賃金を支給していた。 (イ) 本件賃金協定の内容(甲46)本件賃金協定では,賃金は,基本給,該当業務に関わる手当,時間外手当,家族手当,その他手当の合計額とするとされ,基本給の算定方法が定められているほか,各種手当及びその手当額の算定については,以下のとおりとするものとされている。 (割増賃金の時間当たり単価)①時間外割増 =(基本給÷176)×1.25②深夜時間外割増 =(基本給÷176)×1.50③法定休日出勤割増  =(基本給÷176)×1.35④法定休日出勤深夜割増=(基本 ②深夜時間外割増 =(基本給÷176)×1.50③法定休日出勤割増  =(基本給÷176)×1.35④法定休日出勤深夜割増=(基本給÷176)×1.60⑤休日出勤割増 =(基本給÷176)×1.25⑥休日出勤深夜割増  =(基本給÷176)×1.50(走行手当)①トレーラー・中央4トン車は,1㎞=10円②10トン車は, 1㎞= 5円③4トン車は, 1㎞= 1円(古車手当)①トレーラー・10トン車3年以上 1日に付き 120円4年以上 1日に付き 240円5年以上 1日に付き 360円6年以上 1日に付き 480円7年以上 1日に付き 600円8年以上 1日に付き 700円9年以上 1日に付き 800円10年以上 1日に付き 900円②4トン車4年以上 1日に付き 100円5年以上 1日に付き 200円6年以上 1日に付き 300円7年以上 1日に付き 400円8年以上 1日に付き 500円(ユニック手当)ユニック車乗務の者に月額1万5000円(基準外)を支給する。 (ヒューム管手当 8年以上 1日に付き 500円(ユニック手当)ユニック車乗務の者に月額1万5000円(基準外)を支給する。 (ヒューム管手当)ヒューム管,ユニホールを積んだ場合1トンにつき100円を支給する。 ただし,労使指定重量を越える重量は1トンにつき200円を支給する。 (作業手当)中央4トン車は,1回900円とする。 中央4トン車は,4か所以上配達の場合は,4ヶ所目より1か所につき100円とする。 本社4トンウイング車は,作業日数×本人の定額分(別途定め)とする。 加古川タンク車は,1回800円とする。 トレーラーの幅出し,高さは別途定める。 その他労使合意で決定した特殊作業手当は,地回り1回につき1400円加算する。 低床指定輸送に対する加算給については,労使協議し合意してから実施する。 (家族手当)1人目 5000円2人目以上4人まで 2000円(通勤手当)ガソリン代として1㎞につき17円とする。 イ被告の就業規則,給与規定の定め(ア) 平成8年4月1日施行の給与規定(以下「旧給与規定」という。)被告が定めた旧給与規定には,次のような規定がある(乙3)。 a 基本給・本人給第3条基本給( (以下「旧給与規定」という。)被告が定めた旧給与規定には,次のような規定がある(乙3)。 a 基本給・本人給第3条基本給(本人給)は,本人の勤続年齢,職掌区分により,月額で定める。 b 諸手当第4条諸手当の支給基準は下記の通りとする。但し,支給手当の内,計算式のない定額分(単価を含む)については,労使協定書で明確化するものとする。なお,諸手当は割増給与に反映しない。 ①時間外労働手当(時間単価計算式)普通超勤手当基本給/所定労働時間×1.25深夜超勤手当基本給/所定労働時間×1.50休日出勤手当基本給/所定労働時間×1.25休日深夜手当基本給/所定労働時間×1.50法定休日出勤手当基本給/所定労働時間×1.35法定休日深夜手当基本給/所定労働時間×1.60②普通業務手当走行手当の支給基準車種,職務別単価×月間走行距離古車手当車種,初年登録後経年別単価×月間稼働日数③特別業務手当ユニック作業手当一定月額をユニック作業車両に支 車種,初年登録後経年別単価×月間稼働日数③特別業務手当ユニック作業手当一定月額をユニック作業車両に支給ヒューム管業務手当一定トン単価(2種類)×積載ヒューム管,ユニホール各種作業手当業務,車種別一定単価×月内作業回数④家族手当一定単価(2種類)×扶養家族数で支給⑤通勤手当一定単価(所属営業所,居宅間距離×2)×月間実出勤日数ただし,当日運行外乗務については,一定日数を控除するものとする。 (イ) 平成8年7月1日施行の就業規則(以下「旧就業規則」という。)被告が定めた旧就業規則には,給与について,以下の定めがある(甲71)。 第63条従業員の給与及び退職金については,別に定める給与規定及び退職金規定による。 (ウ) 平成12年1月21日変更の就業規則及び給与規定(以下,これらを併せて「改正就業規則等」という。また,これらを個別に表示するときは「改正就業規則」,「改正給与規定」という。)a 改正経過被告は,従業員に対し,平成11年12月18日,給与制度を改正するとして,その説明を行い,これに対し,被告の従業員33名が,同日,「賃金規定」の改訂による賃金切り下げに同意して就労することを確認する旨の同意書を提出した(乙 11年12月18日,給与制度を改正するとして,その説明を行い,これに対し,被告の従業員33名が,同日,「賃金規定」の改訂による賃金切り下げに同意して就労することを確認する旨の同意書を提出した(乙7の1~33)。 組合は,被告に対し,給与制度の改正を議題とする団体交渉を申し入れ,同月20日,団体交渉が開催された。その席上で組合は,給与制度の改正の必要性を示す資料の提示を求めたが,被告は,組合に対する説明会を開く約束をするにとどまった。 被告は,組合に対し,平成12年1月7日及び同月14日の2回にわたり,組合員を対象とした給与制度改正に関する説明会を開催し,給与制度改正の必要性と改正規定の骨子について説明をした。 被告は,同月20日,労働規則変更届を加古川労働基準監督署長に提出し,同月21日,就業規則,給与規定を改正就業規則等のとおりに変更した(以下「本件就業規則変更」という。)。 b 改正内容改正就業規則等の内容は,以下(抜粋)のとおりである。 (改正就業規則)第63条従業員の給与及び退職金については,別に定める給与規定及び退職金規定による。 (改正給与規定)① 本人給第4条本人給は,下記により作成した本人給表で,次の基準により月給で支給する。 25才未満12万円基準満年令及び勤続年各1年につき各500円加算。 加算限界は満年令45才超,勤続年数30年超とする。 才未満12万円基準満年令及び勤続年各1年につき各500円加算。 加算限界は満年令45才超,勤続年数30年超とする。 ② 職能給第5条職能給は運転者給与として,乗務車両別に次の定額を月額で支払う。 10トン車 2万5000円4トン車 1万円トレラー 5万円③ 勤務給第6条勤務給は各単位月間走行距離に応じて,次の単価で支払う。 全10トン車 10円/㎞4トン車(単車中央) 12円/㎞4トン車(常傭エアテック等) 10円/㎞4トン車(ユニック) 1円/㎞4トン車(その他) 1円/㎞トレラー 12円/㎞④ 超勤給第7条超勤手当単価計算式は,(基準内賃金/172×各割増率)とし,各手当別割増率は,次の通りとする。 超勤手当 1.25深夜超勤 /172×各割増率)とし,各手当別割増率は,次の通りとする。 超勤手当 1.25深夜超勤手当 1.50休日出勤手当 1.25休日深夜手当 1.50法定休日手当 1.35法定休日深夜手当 1.60超勤給の超勤時間計算式及び各運行時間は,現行基準で計算して支払う。なお,超勤時間計算式及び各運行時間については,労使協定で明確化し,その協定書を行政当局に届け出るものとする。 ⑤ 家族手当第8条家族手当は基準内賃金に算入,次の金額を月額で支払うものとし,その合計上限は7500円とする。 配偶者 3000円扶養家族 @1500円(3人目まで)⑥ 作業手当第9条作業手当は,次の職種,作業数に対して各単価で支払う。 4トン車(単車中央) 900円(3カ所内/日)100円(4カ所以上/日)4トン車(エアテック) 4000円/回数 100円(4カ所以上/日)4トン車(エアテック) 4000円/回数4トン車(ジェット)  3000円/回数10トン車(ヒューム管)100円/トン(定量内)200円/トン(超過量)10トン車(単車倉入横持) 2300円/運行数ウ平成12年1月当時の,原告らの本件賃金協定に基づく基本給,家族手当の額,それ以外の各手当,時間外等の割増賃金の各賃金単価は,別紙1の1~7の各原告らの「本件賃金協定に基づく賃金の内訳表」のとおりであった(甲58,弁論の全趣旨)。 エ被告は,平成12年2月分からは,本件就業規則変更後の改正就業規則等に基づき給与を算定・支給することとした。 改正就業規則等に基づく原告らの本人給,職能給,家族手当の額,それ以外の各手当,時間外等の割増賃金の各賃金単価は,別紙2の1~7の各原告らの「改正就業規則に基づく賃金の内訳表」のとおりであり(甲58,弁論の全趣旨),被告は,原告らに対し,平成12年2月分から同13年10月分まで,別紙3の1~7の各原告らの「毎月の給与差額計算表」の「改正就業規則に基づいて支給された給与(円)」欄記載のとおり,改正就業規則等に基づいて算出された給与を毎月支給した(甲59~66,75,弁論の全趣旨)。 オ原告らの平成12年2月分から同13年10月分までの各給与につき,本件賃金協定に基づいて算出した給与額は,別紙3の1~7の各原告らの「毎月の給与差額計算表」の「本件賃金協 全趣旨)。 オ原告らの平成12年2月分から同13年10月分までの各給与につき,本件賃金協定に基づいて算出した給与額は,別紙3の1~7の各原告らの「毎月の給与差額計算表」の「本件賃金協定に基づいて算出された給与(円)」欄記載の金額となる(甲59,75,弁論の全趣旨)。 したがって,原告らが被告から支給を受けた平成12年2月分から同13年10月分までの各給与は,別紙3の1~7の各原告らの「毎月の給与差額計算表」の「差額合計」欄記載のとおり,本件賃金協定に基づく給与額より少ないものであった(甲59,75,弁論の全趣旨)。 カ被告は,組合に対し,平成13年4月12日到達の同月11日付け「ご通知」と題する書面により,同通知到達から90日後をもって本件賃金協定を解約する旨の予告をした。 2 原告らの主張(1) 一時金格差支給の不法行為に基づく損害賠償請求ア格差支給の違法性(ア) 経営の合理化,経費削減を目的として導入した実績報酬配分制度に最低保障制度を付加すること自体が矛盾であり,また,実績報酬配分制度に同意しなかった従業員に対しても一時金について25万円ないし30万円の最低保障を認めることには何ら支障がないにもかかわらず,被告が,実績報酬配分制度に同意した従業員にのみ最低保障を行い,実績報酬配分制度に同意しなかった原告らには最低保障に満たない一時金を支給したのは,実績報酬配分制度の導入に反対した組合を嫌悪し,その弱体化を企図してのことであって,一時金における格差支給は労働組合法(以下「労組法」という)7条1号,3号の不当労働行為を構成し,私法上も違法である。 (イ) 上記の点を措いても,最低保障制度が実績報酬配分制度導入に不可欠の制度ではな は労働組合法(以下「労組法」という)7条1号,3号の不当労働行為を構成し,私法上も違法である。 (イ) 上記の点を措いても,最低保障制度が実績報酬配分制度導入に不可欠の制度ではなく,むしろ制度導入の目的と矛盾するものである以上,同じトラック運転手の業務に従事している従業員について,合理的な理由もなく一時金において著しい格差支給を行うこと自体,同一(価値)労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念によって形成される公序(民法90条)に反するものとして違法である。 イ原告らの損害原告らは,上記違法な格差支給により,平成9年年末から同11年年末までの5回の一時金につき,いずれも実績報酬配分制度に基づく最低保障額をも下回る金額しか支給を受けられず,少なくともその受給額と最低保障額との差額分相当額の損害を被ったものであり,原告ら各自の損害額は,別紙4の1~7の各原告らの「一時金格差支給額計算表」に各記載のとおりである。 ウよって,原告らは,被告の行った一時金の格差支給の不法行為により被った別紙4の1~7記載の各自の損害とこれに対する不法行為後であることが明らかな平成13年11月23日(訴変更の申立書(2)の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める。 (2) 差額賃金請求ア改正就業規則等に基づく給与の支給による受給額の減少(ア) 被告が,原告らに対し,平成12年2月分から同13年10月分までの各給与につき,本件就業規則変更後の改正就業規則等に基づいて算出してこれを支給し,そのため,原告らの受給額が,本件賃金協定に基づいて算出される給与額に比して減少したことは,前記争いのない事実等(3)のウないしオに記 件就業規則変更後の改正就業規則等に基づいて算出してこれを支給し,そのため,原告らの受給額が,本件賃金協定に基づいて算出される給与額に比して減少したことは,前記争いのない事実等(3)のウないしオに記載のとおりである。 (イ) 上記受給額減少の原因は,改正就業規則等が,本件賃金協定の内容を,以下のとおり,原告らに不利益に変更したからである。 ① 改正就業規則等では本人給と職能給の合計が本件賃金協定における基本給に該当するが,本人給が基本給を大幅に切り下げるものであったため,職能給の導入にもかかわらず,本件賃金協定による基本給と改正就業規則等による本人給と職能給の合計を比較すると,原告A2万7500円,同B1万5500円,同C4万6500円,同D2万8500円,同E1万4500円,同F1万5500円,同G1万0500円と,全員が減収になった。 ② また,家族手当についても減額され,更に改正就業規則等においては7500円が上限とされた結果,家族手当の支給を受けていた原告Aは3500円,同Bは2500円,同Cは2000円,同Fは3500円,同Gは3000円の減収となった。 ③ 本件貸金協定では,稼働日1日当たりの単価が決められていた古車手当,月額1万5000円のユニック手当,作業手当が支給されていたが,改正就業規則等では古車手当もユニック手当も廃止され,作業手当も減額されたため,これらの手当の支給を受けていた原告らの月収は減収した。 ④ 原告全員について,時間外,深夜,休日労働等すべての残業単価が,改正就業規則等によって,本件貸金協定の単価の約10パーセント切り下げられた。 ⑤ 改正就業規則等により唯一改善されたのは,勤務給(本件賃金協 深夜,休日労働等すべての残業単価が,改正就業規則等によって,本件貸金協定の単価の約10パーセント切り下げられた。 ⑤ 改正就業規則等により唯一改善されたのは,勤務給(本件賃金協定における走行距離手当)の1キロメートル当たりの単価であるが(ただし,4トンユニック,4トン平ボデーには変更がない。),単価自体が安いため,これによって,基本給,家族手当,残業代等の減収分を恒常的に補うことはできず,原告らは,少ない者で年間約26万円(月約2万2000円),多い者で年間約69万円(月約5万7500円)の減収となった。 イ本件賃金協定の有効性と改正就業規則等の効力(ア) 解約予告期間満了前の本件賃金協定の有効性本件賃金協定は,期間の定めのない労働協約であって,本件賃金協定の解約は,文書による解約の意思表示,90日前の予告の要式・形式が必要である(労組法15条3項,4項)ところ,被告が,組合に対して,本件賃金協定の解約予告を行ったのは前記争いのない事実等(3)カ記載のとおり平成13年4月12日であるから,解約予告期間が満了する平成13年7月11日までは,本件賃金協定は有効に存在していたものである。 そして,本件においては,被告は,本件賃金協定が有効に存在していた平成12年1月に,本件就業規則変更を行い,本件賃金協定によって規律されていた原告らの賃金を著しく切り下げる内容の改正就業規則等を定めたものであるところ,労働基準法(以下「労基法」という。)92条1項は,就業規則が労働協約に反してはならないと定めており,同条項は,労働協約が労働契約又は就業規則による別個の(より有利な)定めを許容する趣旨でない限りは,文字通り有利にも不利にも異なる定めをしてはならない 規則が労働協約に反してはならないと定めており,同条項は,労働協約が労働契約又は就業規則による別個の(より有利な)定めを許容する趣旨でない限りは,文字通り有利にも不利にも異なる定めをしてはならない旨を定めたものと解されるから,本件では,改正就業規則等の内容の合理性を問うまでもなく,本件就業規則変更自体が許されず,改正就業規則等は無効である。 (イ) 解約予告期間満了後の本件賃金協定,改正就業規則等の効力被告のした前記解約予告の予告期間満了により,本件賃金協定が失効した後も,改正就業規則等の合理性の如何を問わず,原告らの給与は本件賃金協定によって規律される。 すなわち,本件では,本件賃金協定の効力存続中に同協定を下回る就業規則等の改正が行われたものであるから,改正就業規則等は,作成の時点で直ちに本件賃金協定に反する部分が労基法92条1項によって無効となるのであり,その後に本件賃金協定が失効したとしても無効となった改正就業規則等が効力を復活するという余地はない。そして,空白となった労働関係を補充する規範が存在しない以上,労働協約の余後効により,労働協約失効後も,失効した労働協約が協約締結組合の組合員の労働条件を規律することになる。 なお,仮に労働協約の余後効を否定し,本件賃金協定失効後の給与が従前の就業規則及び給与規定によって規律される立場に立ったとしても,従前の就業規則に基づく給与規定の算定基準は,本件賃金協定によって補充せざるを得ない。 したがって,本件においては,本件賃金協定が失効した後も,原告らの賃金は本件賃金協定によって規律される。 ウ以上のとおり,本件賃金協定の解約の前後を問わず,本件就業規則変更は無効であ したがって,本件においては,本件賃金協定が失効した後も,原告らの賃金は本件賃金協定によって規律される。 ウ以上のとおり,本件賃金協定の解約の前後を問わず,本件就業規則変更は無効であり,原告らの賃金は,本件解約前は本件賃金協定によって,本件解約後は本件賃金協定の余後効によって,本件賃金協定に基づき算定されるべきである。 エよって,原告らは,被告に対し,平成12年2月分から同13年10月分までの各給与につき,別紙3の1~7の各原告らの「毎月の給与差額計算表」の「差額合計」欄記載のとおりの差額賃金が未払であるので,それぞれ,それら各金員及びそれらに対する弁済期後であることが明らかな平成13年11月23日(訴変更の申立書(2)の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める。 3 被告の主張(1) 一時金格差支給の不法行為に基づく損害賠償請求についてア格差支給の違法性について(ア) 実績報酬配分制度の必要性・合理性実績報酬配分制度は,平成9年年末一時金から同11年年末一時金の支給に当たり,被告において従来の年功(勤続年数)を基礎とした計算方法に加え,併存かつ選択的に採用したものである。 従来の年功方式に加え,実績報酬配分制度の導入を図ったのは,被告において平成8年年末一時金の支給原資を旧さくら銀行から借り入れるためには,約4000万円の経営損失解消のため経営改善策を提示する必要があったからで,被告は,個々の従業員の雇用を確保しつつ,実績を反映させ,意識改善と実行を促すことにより経費削減を図ることのできる実績報酬配分制度を,経営改善策として取り入れたのである。 組合は は,個々の従業員の雇用を確保しつつ,実績を反映させ,意識改善と実行を促すことにより経費削減を図ることのできる実績報酬配分制度を,経営改善策として取り入れたのである。 組合は,経費削減の必要性については認めつつも,実績報酬配分制度の導入については断固反対であると主張するのみで,具体的な対案は一切示さなかったが,単に同制度の導入に反対するのみでは,平成8年年末一時金を受給することすら不可能であった。 以上の経緯によれば,実績報酬配分制度の導入及びその内容には合理性がある。 なお,平成12年夏季一時金から実績報酬配分制度を廃止したのは,同一時金から,従来の売上高のみをベースに算定する方法に走行距離を加味することによってさらに公平化を推進するよう改めた結果であり,実績報酬配分制度自体が不合理であったからではない。 (イ) 最低保障制度の必要性・合理性最低保障制度は,実績報酬配分制度の下,実績が伴わないために本来の計算によれば一時金が支給されない場合でも,当面の間一定額を最低保障額として支給し,本来の計算上の額を上回って支給がなされた分については,将来,計算上一定の一時金の支給を受けられる実績を上げた段階で,過去の計算上の過払いを考慮して一時金額を決定する計算方法である。 この最低保障制度の実施は,実績報酬配分制度に移行するための一種のインセンティブであり,かつ従業員の生活保障を目的とした激変緩和措置として合理性を有する。 なお,被告における一時金は,旧給与規定(乙3,第10条)において,会社業績等により支給を中止する場合がある旨定めていること,また,その支給の運用実態も,支給時期及び算定方 なお,被告における一時金は,旧給与規定(乙3,第10条)において,会社業績等により支給を中止する場合がある旨定めていること,また,その支給の運用実態も,支給時期及び算定方法が一定していなかったことからすれば,労基法にいう賃金ではないというべきであること,また,仮に一時金を賃金と解する余地があるとしても,上記最低保障の後日の清算は,貸付とその後の賃金との相殺ではなく,計算上の一時金額が少ない段階で手厚い処遇をしたことを計算上の一時金額が多くなったときに減額査定要因とするものでり,何ら労基法17条,24条1項に違反するものではない。また,上記の趣旨での清算(後日の一時金の減額査定)は,実績報酬配分制度に基づく一時金支給を行っていた平成11年年末一時金支給時まで現にこれを行っており,後日の清算をしていなかったようなことはない。 (ウ) 実績報酬配分制度及び最低保障制度の導入に至る経緯被告は,平成8年年末に最低保障制度を含む実績報酬配分制度の導入を従業員に対して提案し,平成9年初めに一時金算定方法についてのアンケートをとり,各従業員による選択結果が出た上で,制度実施まで1年間かけて粘り強く組合との間で説明,交渉を続け,従業員説明会の開催,上部団体への説明など努力を尽くしてきた。 もっとも,最低保障金の具体的な金額については,事前に確定できていなかったが,これは,平成9年年末一時金の支給日まで交渉が継続していたため,確定させることができなかったためであり,平成9年年末一時金支給直後にはこれを開示している。また,一旦年功方式での一時金算定方法を選択した者につき,その後,実績報酬配分制度に変更することも受けつけていた。 (エ) 不当労働行為,公序 末一時金支給直後にはこれを開示している。また,一旦年功方式での一時金算定方法を選択した者につき,その後,実績報酬配分制度に変更することも受けつけていた。 (エ) 不当労働行為,公序違反の主張について上記のとおり,最低保障制度を含む実績報酬配分制度の導入には,必要性・合理性があるところ,被告は,従来の年功(勤続年数)を基礎とする算定方式と並列的選択的にこれを導入し,その説明を十分に行ったうえで,その選択は個々の従業員に行わせたものである。その結果,被告の従業員40名のうち19名が実績報酬配分制度に反対の意向を示したため,19名に対しては年功(勤続年数)を基礎とする算定方式により一時金を支給したところ,その反対者のうち11名は非組合員であった。そして,それらの者に対しては当然最低保障はなされていない。すなわち,最低保障の有無は,組合員か否かとはまったく無関係であり,かつ,原告らを含む従業員らは,最低保障制度がある実績報酬配分制度と最低保障制度のない年功(勤続年数)を基礎とする算定方式を選択するかにつき,それぞれ自らの意思によってこれを選択したのである。また,最低保障額は,遅くとも平成9年年末一時金支給直後には開示されており,一旦年功方式での一時金算定方法を選択したとしても,その後,実績報酬配分制度に変更することも可能であった。それにもかかわらず,原告らは,その自由な意思で年功方式を選択したのである。そうとすれば,最低保障を含む実績報酬配分制度の実施は,何ら組合に対する支配介入でもなければ,組合員に対する不利益取扱いでもないことは明らかであり,不当労働行為には当たらない。 また,被告における一時金は,そもそも労基法上の賃金ではなく,仮に賃金であると解する余地があるとしても,使用 益取扱いでもないことは明らかであり,不当労働行為には当たらない。 また,被告における一時金は,そもそも労基法上の賃金ではなく,仮に賃金であると解する余地があるとしても,使用者は,賃金の計算方法について一定の裁量を有するから,一時金の計算において,将来の一時金額激減の可能性を加味した厚めの処遇をすること,及び制度移行のためのインセンティブを与えることは,使用者の当然の裁量の範囲内とされるものである。したがって,最低保障制度の実施が,同一(価値)労働同一賃金の原則,ひいては公序に反することはない。 イ損害について原告らは,最低保障額相当額の一時金の支給がなかったことをもって損害を被ったと主張するが,これは一律に最低保障額相当額の一時金を受領すべき権利があると主張するに等しい。すなわち,年功方式においても最低保障を実施すべきであった,または,年功方式における平均額を,一時金の現実の受領額が全て最低保障額を上回るような金額に設定すべきであったと主張すると考えるほかない。 しかし,会社の業績によっては支給の中止も認められる(旧給与規定〔乙3〕第10条)など,被告の裁量が認められる一時金支給において,被告に,最低保障額を支給すべき義務はないし,また,原告らが最低保障制度を含まない年功方式を選択している以上,原告らの一時金が最低保障額と無関係に決められることは当然である。さらに,被告においては,実績報酬配分制度を導入しない限り,被告従業員は一時金を受け取ることすらできなかったのであり,年功方式の上に立って最低保障額を上回る一時金を現実に支給することは不可能である。 したがって,原告らが最低保障額相当額を受領し得ないことが損害とは言えない。 ウ ,年功方式の上に立って最低保障額を上回る一時金を現実に支給することは不可能である。 したがって,原告らが最低保障額相当額を受領し得ないことが損害とは言えない。 ウ以上のとおりで,一時金格差支給が被告の不法行為であるとする原告らの損害賠償請求は理由がない。 (2) 差額賃金請求についてア本件就業規則変更による不利益性そもそも,改正就業規則等は,本件賃金協定の内容を不利に変更したものではない。改正就業規則等は,各従業員の実績次第で本件賃金協定に基づいて算定される以上の給与を受け取ることを可能とするものであり,現に給与額が増加した従業員もいる。 イ本件賃金協定の効力(ア) 本件賃金協定の効力の喪失本件賃金協定は,平成8年3月26日の同協定締結当時の就業規則及び給与規定を前提とし,その細目を定めるものであり,独立した労働協約ではない。そして,被告は,平成12年1月21日,本件就業規則変更により,就業規則及び給与規定(改正就業規則等)を有効に改定した。 したがって,本件就業規則変更前の就業規則及び給与規定を前提とし,その細目を定める本件賃金協定は,改正就業規則等のもとでは適用される場面がない。すなわち,本件就業規則変更に伴い,本件賃金協定はその意味を失って,当然に無効となったものである。 なお,仮に,上記主張が認められないとしても,被告は,平成13年4月12日到達の同月11日付け「ご通知」と題する書面により,同通知到達から90日後をもって本件賃金協定を解約する旨予告した。したがって,本件賃金協定は,同年7月11日の経過により解約されたものであり,以後はその効力を持ち得な 「ご通知」と題する書面により,同通知到達から90日後をもって本件賃金協定を解約する旨予告した。したがって,本件賃金協定は,同年7月11日の経過により解約されたものであり,以後はその効力を持ち得ない。 (イ) 余後効の主張について原告らは,本件賃金協定失効後もその余後効により,原告らの給与が本件賃金協定により規律される旨主張する。 しかし,賃金協定の規範的効力は,賃金協定の有効期間中に限って労働契約を規律する特別の効力であるので,協定が終了すれば労働契約は自己を規律していた規範を失う。そして,本件では,大多数の被告従業員に有効に適用される改正就業規則等が存在するのであるから,賃金協定の終了により労働契約の内容に空白が生じることもない。また,仮に原告らに対しては改正就業規則等の適用がないとしても,被告には,昭和36年以来制定・改正されてきた就業規則・賃金規定が存在していたのであるから,継続的契約関係の合理的処理方法として本件賃金協定の余後効を認める必要などない。 さらに,原告らのみが本件賃金協定に規律されるとした場合,就業規則の改正に同意した従業員と同意しなかった従業員で組合員である者との間で賃金体系が異なり,不合理が生じ,同一(価値)労働同一賃金の原則(労基法3条)が崩れ,不当であるから,これを否定する形であくまで解釈論に過ぎない余後効を認めることは許されない。 ウ以上のとおりで,本件賃金協定に基づく賃金請求権を有することを前提とする原告らの差額賃金請求は理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 一時金格差支給の不法行為に基づく損害賠償請求について(1) 前記争いのない事実等,証拠(甲1~6,9~13,15~25,26の1~5, 賃金請求は理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 一時金格差支給の不法行為に基づく損害賠償請求について(1) 前記争いのない事実等,証拠(甲1~6,9~13,15~25,26の1~5,27の1・2,28,29の1~3,30,37~41,57,乙4~6,被告代表者〔ただし,以下の認定に反する部分を除く。〕)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 ア実績報酬配分制度の導入以前の一時金支給の実態(甲24,30,38)被告は,少なくとも平成元年ころから平成9年12月に至るまでは,全従業員に対して,夏季及び年末の年2回,年功(勤続年数)を基礎に算定された額の一時金を支給していた。 組合は,平成7年4月の組合(分会)結成以降,被告と一時金についての団体交渉を行い,平成7年夏季一時金は平均36万円,同年年末一時金は平均50万円で妥結した。 しかし,平成8年夏季一時金については,団体交渉が行われなかったため,組合は,平成8年7月18日,兵庫県地方労働委員会(以下,「地労委」という。)に,同年夏季一時金について,あっせん申請を行った(兵庫県地労委平成8年(調)第6号)。その結果,組合と被告は,同月30日,1人平均37万円の一時金の仮払いを行うこと,及び,「労使双方は,全体的な解決のため,交渉ルールを確認し,互いに誠意をもって話し合いを行うこと」を内容とするあっせん案を受諾し,これにより平成8年夏季一時金については,解決をみた。 イ実績報酬配分制度の導入に至る経緯(甲1~6,9~13,25,37~42,乙5,6,被告代表者)被告は,平成8年ころには,約4000万円程度の経常損失を計上するに至り,取引銀行であった旧さくら銀行 入に至る経緯(甲1~6,9~13,25,37~42,乙5,6,被告代表者)被告は,平成8年ころには,約4000万円程度の経常損失を計上するに至り,取引銀行であった旧さくら銀行大久保支店に同年年末一時金の原資の融資を申し入れたところ,同行から経常損失を解消するための改善策の提示と,その実効及び実績の報告を求められた。 被告は,平成8年11月当時,従業員に対し,有料道路を使用しないこと,担当車両以外にも乗務し,固定費比率を低下させること,燃料は自社インタンク以外で給油しないこと等の経費削減のための協力を求め,従業員はこれに応じ努力したものの,効を奏さず,従業員の大半について,毎月の収支が赤字であった。 そこで,被告は,平成8年11月27日の団体交渉において,組合に対し,経営合理化及び経費削減を目的として,平成8年年末一時金から実績報酬配分制度を導入する旨の提案をした。同団体交渉において,組合は,平成8年年末一時金の支給額の提示がない限り実績報酬配分制度の導入に同意できない旨主張し,合意に至らなかった。 被告は,同年12月4日付け「回答書」と題する書面において,組合に対し,平成9年1月以降の一時金の支給について実績報酬配分制度を導入すること,及び同制度下での一時金の計算期間,基準運賃,基準経費,基準管理費,計算例等の概要を示して説明したが,その詳細な計算単価等が定まっていなかったため,一時金の額を原告らが具体的に知ることはできないものであった。なお,同回答書には,注意事項として,「赤字乗務員も給料は法律上,保障されるが,事後処理の検討を要する。」との記載があるところ,被告によれば,同記載は,最低保障制度の実施に関する記載であるとのことであるが,その文言からも明らか として,「赤字乗務員も給料は法律上,保障されるが,事後処理の検討を要する。」との記載があるところ,被告によれば,同記載は,最低保障制度の実施に関する記載であるとのことであるが,その文言からも明らかなとおり,その内容は,後日の清算も含め,あいまいで,判然としないものであった。 組合と被告は,同年12月10日及び同月12日に団体交渉を持ったが,実績報酬配分制度の実施につき,進展はなかった。 被告は,平成9年初めころ,被告各従業員に対し,実績報酬配分制度の概要の説明及び同制度に対する協力の可否についてのアンケートを実施した。しかし,同アンケートには,最低保障制度についての明確な言及はなかった。 組合は,平成9年1月18日付けで被告に対し,実績報酬配分制度の実施に対する反対の意思表示をするとともに,過去3ないし5年間の貸借対照表,損益計算書の開示要求,団体交渉の申し入れ等を行った。被告は,これに対し,実績報酬配分制度を必ず実行すること,非組合員に対する同制度の実行のための方策は,別途検討すること,貸借対照表,損益計算書の開示についてはその必要性を示してもらいたいこと等を記載した回答書を提出した。なお,被告は,組合に対し,平成9年11月分までの各月の損益計算書を提出したが,貸借対照表及び平成9年12月分以降の各月の損益計算書については提出しなかった。 被告は,平成9年1月29日,被告従業員に対し,実績報酬配分制度についての説明会を催した。同説明会に出席した従業員は20名強であり,組合員としては,原告A及び同Bが出席した。 組合は,平成9年2月27日に被告に意見書を提出し,実績報酬配分制度は労働条件の向上に反するものであって撤回すべきであること等を訴えた。 合員としては,原告A及び同Bが出席した。 組合は,平成9年2月27日に被告に意見書を提出し,実績報酬配分制度は労働条件の向上に反するものであって撤回すべきであること等を訴えた。 その後も,組合は,同年3月1日及び18日の団体交渉において実績報酬配分制度の撤回等を要求したが,合意に至らなかった。 組合は,同年10月20日,平成9年年末一時金について1人平均50万円を要求し,これに対して,被告は,同年11月28日,1人平均20万円を支払うとの回答をした。 同年12月4日,平成9年年末一時金を議題とする団体交渉(第1回団交)が開催され,組合は,一時金支給額の上積みを求めたが,被告は,業績からして不可能である旨回答し,合意には至らなかった。 組合は,同月11日の団体交渉(第2回団交)において,その要求額を30万円まで引き下げたが,被告は,経営状況からして20万円を超える支給は無理である,実績報酬配分制度に同意した者については同制度に基づく金額を支給すると回答したため,妥結には至らなかった。 平成9年12月12日の平成9年年末一時金の支給までに,被告から組合に対して,実績報酬配分制度に同意した者に対する具体的な支給額についての説明はなされなかったし,最低保障額についても具体的には明らかにされなかった。 ウ実績報酬配分制度及び最低保障制度に基づく平成9年年末一時金の支給(甲25,26の1~5,27の1・2,28,29の1~3,38,41,57,乙4,被告代表者)被告の乗務員40人のうち,19人が実績報酬配分制度の導入に反対の意向を示し,従来の年功(勤続年数)を基礎とする算定方式による一時金の支給を希望 41,57,乙4,被告代表者)被告の乗務員40人のうち,19人が実績報酬配分制度の導入に反対の意向を示し,従来の年功(勤続年数)を基礎とする算定方式による一時金の支給を希望した。これら反対者のうち8人は非組合員であった。 なお,平成9年12月時点において,被告内の組合員は11人であったが,現在は原告らのみである。 被告は,同月12日,実績報酬配分制度に同意した者に対しては,それぞれ同制度に基づく一時金を支給し,実績報酬配分制度に同意した従業員のうち,当期損益がマイナスであり,同制度で算定すると一時金が支給されないはずの者に対し,最低保障金として,4トントラック運転手には25万円の,10トントラック及び25トントレーラー運転手には30万円の一時金を支給した。 一方,原告らを含む同制度への不同意者には,従来の年功方式によって平均20万円を支給した。原告らは,これを仮受領した。原告らが現実に受領した平成9年年末一時金の額は,別紙4の1~7の原告ら一時金格差支給額計算表の平成9年年末一時金の欄記載の金額である。 エ実績報酬配分制度実施から同制度撤廃に至るまでの経緯(甲15~23,25,38,39,被告代表者)一旦実績報酬配分制度に反対した従業員で,非組合員であった者の中には,後に,同制度への変更を申し出て,これが認められ,同制度による一時の支給を受けるに至った者も存在した(なお,その人数は,証拠上は明らかではない。)。しかし,被告は,組合に対し,平成9年年末一時金支給の前後を通じて,実績報酬配分制度に変更が可能であって,同制度に変更すれば,最低保障金を支払う用意があるとの説明はしなかった。 組合は,平成9年12月 対し,平成9年年末一時金支給の前後を通じて,実績報酬配分制度に変更が可能であって,同制度に変更すれば,最低保障金を支払う用意があるとの説明はしなかった。 組合は,平成9年12月17日の団体交渉(第3回団交)において,被告に対し,実績報酬配分制度に同意した者には,利益を上げていない場合でも,組合員を上回る額(最低保障額)が支給されていることを指摘し,これについて説明を求めた。被告は,最低保障金は,赤字の者が将来,業績が好転した時に清算するもので,貸付金であること,同最低保障金は,訴外J株式会社のK社長の協力を得て調達したものであること等を説明した。 平成9年年末一時金につき,最低保障額を支給された非組合員の中には,同一時金支給時に,被告代表者から,組合員には金額を言わないようにとの指示を受けた者もいた。 組合は,同月23日,被告に対し,平成9年年末一時金について団体交渉を申し入れたが,被告はこれに応じなかった。 組合は,被告に対し,その後も,平成10年1月8日から同年4月17日ころまで,約10回にわたり団体交渉を申し入れたが,被告はこれをいずれも拒絶した。 被告は,組合に対し,平成12年7月18日,平成12年夏季一時金から実績報酬配分制度及びこれに付随する最低保障制度を取りやめることを発表した。 オ実績報酬配分制度及び最低保障制度の下において原告ら及び他の従業員に対し支払われた平成9年年末から同11年年末までの一時金の支給額(甲57,弁論の全趣旨)原告らが平成9年年末一時金から同11年年末一時金までの計5回,現実に受領した一時金の額は,別紙4の1~7の原告らの一時金格差支給額計算表の各原告らが「現実に受領し 論の全趣旨)原告らが平成9年年末一時金から同11年年末一時金までの計5回,現実に受領した一時金の額は,別紙4の1~7の原告らの一時金格差支給額計算表の各原告らが「現実に受領した一時金」の欄記載の金額である。 被告は,実績報酬配分制度が存続していた間の,平成9年年末から同11年年末までの一時金については,実績報酬配分制度に同意した従業員に対しては,実績報酬配分制度に基づいて算定された一時金を支給し,実績報酬配分制度に反対した原告らに対しては,従前通り年功(勤続年数)を基礎に算定された1人平均20万円の一時金を支給した。 また,被告は,前記最低保障制度に従い,実績報酬配分制度に同意した従業員のうち,当期利益がマイナスの者に対しては,最低保障金として,4トントラック運転手には25万円の,10トントラック及び25トントレーラー運転手には30万円の一時金を支給したが,原告らに対しては,上記最低保障金に達する一時金は支給しなかった。 その結果,原告らの平成9年年末から同11年年末までの一時金は,実績報酬配分制度に同意した従業員に適用された最低保障制度が原告らに対しても適用された場合と比較して,別紙4の1~7の原告ら一時金格差支給額計算表の各欄記載のとおり少ないものであった。 (2) 原告らは,被告が,一時金の支給につき,実績報酬配分制度に同意した従業員に対してのみ最低保障を行い,実績報酬配分制度に同意しなかった原告らには最低保障に満たない一時金を支給したのは,不当労働行為による格差支給として私法的にも違法であり,また,同一(価値)労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念によって形成される公序(民法90条)に反するものとして違法であり,原告らに対する不法行為で による格差支給として私法的にも違法であり,また,同一(価値)労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念によって形成される公序(民法90条)に反するものとして違法であり,原告らに対する不法行為であると主張するものである。 そこで,上記(1)で認定の事実に基づき,以下検討する。 ア一時金支給について被告が有する裁量について証拠(乙3)によれば,被告は,平成8年4月1日から施行の旧給与規定において,一時金(賞与)を臨時給与として明確に位置づけ(旧給与規定2条),かつ,その支給につき「賞与は,毎年2回,会社業績等により原則,7月及び12月に支給し,その支給対象従業員は,支払当日の在籍者とする。但し,会社業績,社会状況の変化等,やむを得ない事情発生の場合は,支給の延期又は中止の場合がある。賞与の額は,会社業績,各従業員の稼働成績等公平に考慮して行う。」(同10条)と規定していたことが認められる。 したがって,本件で問題となっている平成9年年末から平成11年年末までの5回の一時金支給にあたっても,被告は,その自ら規定した前記旧給与規定に従ってその支給を行うべき義務があり,これに違反して恣意的な差別支給をすることは許されないものと認められる。 この点につき,被告は,被告における一時金は,そもそも労基法上の賃金ではなく,仮に賃金であると解する余地があるとしても,使用者は,賃金の計算方法について一定の裁量を有するから,実績報酬配分制度に同意した従業員に対してのみ最低保障を行うことも,使用者の当然の裁量の範囲内の行為として許容された行為であるかのように主張するが,この被告の主張は,上記したところから,採用の限りではない。 イ被告が,実績報酬配分制度に同意 うことも,使用者の当然の裁量の範囲内の行為として許容された行為であるかのように主張するが,この被告の主張は,上記したところから,採用の限りではない。 イ被告が,実績報酬配分制度に同意した従業員に対してのみ最低保障を行い,実績報酬配分制度に同意しなかった原告らには最低保障に満たない一時金を支給したのは,違法な差別支給として不法行為にあたるか。 (ア) この点,被告は,実績報酬配分制度は,旧さくら銀行から融資を受けるためには,経費削減案を提示する必要があったことから,個々の従業員の雇用を確保しつつ,実績を反映させ,意識改善と実行を促すことにより経費削減を図るために導入したものであり,また,最低保障制度は,従業員の生活保障及びインセンティブのために設けたものであるから,いずれも必要性及び合理性があると主張し,さらに,同制度導入に至る経過においては,被告従業員,組合に対し,1年間もかけて説明・説得を繰り返し,収支計算書等も開示し,団体交渉も誠実に行った上で,一時金の選択は従業員各自に委ねたものであり,交渉経緯に何ら問題はないと主張するところ,たしかに,前記(1)で認定の事実によれば,実績報酬配分制度による一時金と年功方式による一時金とのどちらを選択するかは従業員に委ねられていたこと,そして実績報酬配分制度に反対して年功方式を選択したのは,組合員である原告らに限られていたわけではなく,平成9年年末一時金に関しては8名の非組合員が最低保障のない年功方式を選択したことが認められる。 (イ) しかし,そうとしても,そもそも,実績報酬配分制度を実施するに際し,そのインセンティブないし激減緩和措置としての生活保障といった観点から最低保障制度を設けること自体は合理性を有するとしても,そうであれば,その額は,従来の もそも,実績報酬配分制度を実施するに際し,そのインセンティブないし激減緩和措置としての生活保障といった観点から最低保障制度を設けること自体は合理性を有するとしても,そうであれば,その額は,従来の年功方式による一時金の平均支給額20万円ともバランスの取れた額が支給されて然るべきであって,これを上回る25万円ないし30万円もの金額を最低保障として支給する合理性は見いだしがたい(経費節減のための導入とはいうものの,実際には,年功方式による支給より多額の一時金を支給することとなるもので,経費の増大をもたらすことが明らかであり,その不合理性は明らかというほかない。もっとも,実績報酬配分制度導入当時は,大半の従業員の収支が赤字であったところ,これが,実績報酬配分制度の導入によって,その収支が劇的に改善すれば,合理性も見いだせるかもしれないが,同制度導入によりそのような改善がなし得るものとはにわかに認めがたいし,そのような劇的な改善があったことを認めるに足りる証拠はない。被告が主張する後日収支が向上した時点での清算も,実績報酬配分制度の導入によって直ちに従業員らの収支の改善ができるのならばともかく,そうでない以上,いわば絵に描いた餅であって,実効性を有するものとは認めがたい。被告は,この点につき,後日の清算を行った証拠として,乙9の1~4を提出するが,これも,収支が向上して後日の清算ができた者は少数でしかないことをむしろ推認させるものというべきである。また,以上からすれば,被告が,平成12年夏季一時金から実績報酬配分制度を廃止した理由は,実績報酬配分制度が不合理であったからではなく,売上高に走行距離を加味して,より公平な制度に移行させた結果であると主張している点も,はなはだ疑わしい。)。これに,前記(1)で認定のとおり,組合は,被告が実績報酬配分 不合理であったからではなく,売上高に走行距離を加味して,より公平な制度に移行させた結果であると主張している点も,はなはだ疑わしい。)。これに,前記(1)で認定のとおり,組合は,被告が実績報酬配分制度の導入を提案した当初からその導入に強く反対してきたもので,原告ら組合員がその実施に応じないであろうことは,被告にとって容易に予測し得たものであること,被告は,組合との交渉の中で,実績報酬配分制度の説明を行ってはいたが,その具体的な算定額は,その計算単価等の詳細が明らかでなかったため,原告らにおいてこれを知ることができなかったばかりか,最低保障の実施に関しても,後日の清算も含めあいまいなものであったし,最低保障として支給する額についても被告は明らかにしなかったこと,被告は,平成9年年末一時金支給後の同年12月17日の組合との団体交渉の中で,最低保障金の具体額,その資金原資等を組合に説明したが,これは,組合が同団体交渉の中でその点を追及したからであったし,その後,被告は,平成12年7月18日に実績報酬配分制度及び最低保障制度の廃止を発表するに至るまで,組合からの団体交渉申し入れに応じず,そのため,上記の期間中,一時金についての団体交渉は行われなかったこと,実績報酬配分制度に反対して年功方式の一時金の支給を受けた非組合員の従業員の中には,実績報酬配分制度への変更を申し入れ,これを認められて,最低保障金を受領した者もいること,しかし,被告は,組合に対しては,平成9年年末一時金支給の前後を通じて,年功方式から実績報酬配分制度に変更することが可能であって,同制度に変更すれば,最低保障金を支払う用意があるとの説明をしたことはなかったことが認められること等を総合考慮すると,被告は,これまでの経緯から,原告ら組合員が,実績報酬配分制度を選択せず,年功方式 制度に変更すれば,最低保障金を支払う用意があるとの説明をしたことはなかったことが認められること等を総合考慮すると,被告は,これまでの経緯から,原告ら組合員が,実績報酬配分制度を選択せず,年功方式を選択するであろうことを十分知悉したうえで,実績報酬配分制度に同意した者だけに年功方式による平均支給額を上回る金額を最低保障金として支払うことを企図し,原告ら組合員に対しては,事前にはその最低保障額等を開示せず,年功方式を選択した場合に生ずる不利益を十分に明らかにしないまま,これを実行したものと認められる。 (ウ) そうすると,被告の上記行為は,実績報酬配分制度に反対する原告ら組合員を,組合員であることの故にこれを差別し,よって組合の内部に動揺を生じさせ,組合の組織の弱体化を図る意思に基づいてなされた労組法7条1号及び3号の不当労働行為に該当する行為であって,恣意的な差別支給であるといわざるを得ない。また,被告の上記差別支給は,被告の旧給与規定の「賞与の額は,会社業績,各従業員の稼働成績等公平に考慮して行う。」(同10条)との規定に違反する何ら合理的な理由がない差別支給でもあると認められる。 以上からすれば,被告の上記行為は,不当労働行為であると同時に民法上も違法な差別支給であって,不法行為に該当するものと認められる。 (3) 原告らの損害原告らは,年功方式による一時金を選択したために,実績報酬配分制度を選択した場合に受けられる最低保障を受けられず,これを下回る一時金の支給しか受けられなかったものであるが,被告の旧給与規定には「賞与の額は,会社業績,各従業員の稼働成績等公平に考慮して行う。」(同10条)と規定されているところ,年功方式を選択した場合には実績報酬配分制度を選択した場合の たものであるが,被告の旧給与規定には「賞与の額は,会社業績,各従業員の稼働成績等公平に考慮して行う。」(同10条)と規定されているところ,年功方式を選択した場合には実績報酬配分制度を選択した場合の最低保障額にも満たない支給しか受けられないとする合理的理由を見いだせないことは既に認定したとおりであるし,むしろ,実績報酬配分制度に対して最低保障を実施するのであれば,年功方式による一時金に関しても,同様の最低保障を行うことこそ,前記旧給与規定によって要請されていたところであると解されることからすれば,実績報酬配分制度による最低保障額と,原告らが実際に支給を受けた一時金との差額をもって,原告らが被った損害と認めるのが相当である。 (4) そうすると,原告らは,被告に対し,それぞれ,不法行為に基づく損害賠償として,別紙4の1~7の各原告らの一時金格差支給額計算表の「差額合計」欄記載の金額の支払とそれらに対する不法行為後であることが明らかな平成13年11月23日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の各支払を求めることができるものと認められる。 2 差額賃金請求について(1) 原告らは,平成12年2月分から同13年10月分までの各給与につき,改正就業規則等ではなく,本件賃金協定に基づいて算出される給与の支給を受ける権利を有すると主張するものである。 そこで,以下,その当否を検討する。 (2) 本件賃金協定の法的性格被告は,本件賃金協定は,平成8年3月26日の同協定締結当時の就業規則及び給与規定を前提とし,その細目を定めるものであり,独立した労働協約ではない旨主張するところ,たしかに,証拠(乙8,被告代表者)によれば,被告には,本件賃金協定締結以前から,既に就業規則が定められて び給与規定を前提とし,その細目を定めるものであり,独立した労働協約ではない旨主張するところ,たしかに,証拠(乙8,被告代表者)によれば,被告には,本件賃金協定締結以前から,既に就業規則が定められていたことが認められる。そして,被告が提出する昭和50年10月25日実施の就業規則(乙8)の賃金についての定めによれば,その具体的な賃金額や諸手当の額については何ら定められておらず,第47条で賃金の細部については別に定めるとするのみであるし,その他全証拠によっても,本件賃金協定締結当時,同協定以外に賃金に関する具体的内容を定めた規定等が存在したものとは窺えない。 しかし,そうとしても,本件賃金協定(甲46)中には,これが被告の就業規則に基づきその賃金の細目を定める規定であることを示す記載はまったく存しないし,かえって,その冒頭に「被告と組合は,次の賃金に関する規程の事項を合意し協定する。」との記載がなされ,末尾において,前記各当事者が記名捺印していることからして,これが賃金に関する被告と組合との間で締結された独立の労働協約であることは明らかである。 したがって,本件賃金協定が労働協約ではないことを前提として,本件就業規則変更により本件賃金協定は当然に無効となったものであるとする被告主張は採用できない。 (3) 改正就業規則等の効力労基法92条1項は,就業規則は,法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない旨を定めているところ,本件就業規則変更は,独立の労働協約である本件賃金協定の存続中になされたものであるので,改正就業規則等の規定が本件賃金協定に反しないかが検討されなければならない。 労基法92条1項が,就業規則は労働協約に反してはならないとしているのは,就 続中になされたものであるので,改正就業規則等の規定が本件賃金協定に反しないかが検討されなければならない。 労基法92条1項が,就業規則は労働協約に反してはならないとしているのは,就業規則の内容が,労働協約中の労働条件その他労働者の待遇に関する基準,すなわちいわゆる労働協約の規範的部分に反してはならないとの趣旨であり,かつ,有利にも不利にも異なる定めをしてはならない趣旨と解される。したがって,就業規則の内容が労働協約の基準を下回る場合はもとより,就業規則の内容が労働協約の基準を上回る場合であっても,当該労働協約が就業規則によってより有利な定めをすることを許容する趣旨でない限りは許されず,それら労働協約に抵触する就業規則の規定は無効である。 そこで,これを本件についてみるに,改正就業規則等が本件賃金協定で定められた賃金に関する基準を変更するものであること,すなわち,本件賃金協定の規範的部分を変更するものであること,及びその変更内容が本件賃金協定の基準を下回るものであることは,前記争いのない事実等によって明らかであると認められる(被告は,改正就業規則等は,従業員の実績次第で本件賃金協定に基づいて算定される以上の給与を受け取ることを可能とするものであるから,本件賃金協定の内容を不利に変更したものではないと主張し,被告代表者の地労委における証言記録〔甲40~42〕及び同代表者本人の供述は一応これに沿うが,これを具体的に示す証拠は何ら存在せず,これを採用することはできない。)。 そうすると,改正就業規則等が,本件賃金協定に反することは明らかであるから,改正就業規則等中,本件賃金協定に抵触する賃金に関する部分の規定は無効である。 (4) 本件賃金協定の解約による失効後(平成13年7月12日以降)の 件賃金協定に反することは明らかであるから,改正就業規則等中,本件賃金協定に抵触する賃金に関する部分の規定は無効である。 (4) 本件賃金協定の解約による失効後(平成13年7月12日以降)の賃金上記(3)で認定のとおり,本件賃金協定の効力存続中に,新たに就業規則を制定して労働者に不利益な条件を一方的に課することは許されず,改正就業規則等中の賃金に関する部分は無効であり,したがって,原告らの賃金は,平成12年2月以降も,本件賃金協定によって算定されなければならない。 しかし,本件では,被告が平成13年4月12日にした本件賃金協定の解約予告(争いのない事実等(3)カ参照)により,同年7月12日,本件賃金協定は労働協約としての効力を失ったことが認められるので,それ以後の賃金については,何を基準に算定すべきかがさらに問題になる。 そこで検討するに,無効であった改正就業規則等が,本件賃金協定の失効によって当然に復活するとは考えられず,したがって,改正就業規則等によって原告らの賃金を算定することはできない。 ところで,本件においては,前記争いない事実等(3)の事実,前記(2)で認定の事実,証拠(甲47,76,77,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,改正就業規則等以前の被告の就業規則及び給与規定中には,基本給や諸手当等の賃金額を具体的に算定するに足りる定めはなされておらず,本件賃金協定締結以降は,組合員である原告らはもとより組合員以外の従業員についても一律に同協定によって賃金が算定されてきたこと,したがって,本件賃金規定の内容が,賃金に関する労働条件として,被告とその従業員間の労働契約内容の一部となっていたものと認められる。 そうとすれば,本件賃金協定は解約予告期 きたこと,したがって,本件賃金規定の内容が,賃金に関する労働条件として,被告とその従業員間の労働契約内容の一部となっていたものと認められる。 そうとすれば,本件賃金協定は解約予告期間の満了により失効するに至ったとしても,それに代わる新たな賃金協定の締結や就業規則ないし給与規定等の制定があったとは認められない本件では,原告らは,従前と同様に,本件賃金協定の基準によって算定される賃金の支払を受けることができるものと認められる。 (5) 以上のとおりで,原告らの平成12年2月分以降同13年10月分までの各月の賃金は,本件賃金協定の失効の前後を問わず,本件賃金協定によって算定されるべきである。したがって,原告らは,いずれも,別紙3の1~7の各原告らの「毎月の給与差額計算表」の「差額合計」欄記載の賃金請求権及びこれらに対する賃金の支給日後である平成13年11月23日から支払済みまで民法所定年5分の割合による各遅延損害金債権を有するものと認められる。 第4 結論以上によれば,原告らの請求はいずれも理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第4民事部裁判長裁判官上田昭典裁判官太田敬司裁判官島田環

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