【DRY-RUN】主 文 原判決中「原告その余の請求を棄却する。」とある部分を除き、その余 を取り消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は、第一、二審分とも被控訴人の負担とする
主文 原判決中「原告その余の請求を棄却する。」とある部分を除き、その余を取り消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は、第一、二審分とも被控訴人の負担とする。 事実 控訴人代理人は、主文同旨の判決を、被控訴人代理人は、本件控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の事実の主張、証拠の提出、援用、認否は、左に記するほかは、原判決事実摘示と同一(但し、原判決二枚目裏終から五行目冒頭に「同年四月二一日」とあるを「同年四月三日」とし)、同五枚目裏六行目に「A」とあるを削り、同七行目に「鑑定人Aの鑑定の結果」とある次に「(書面及び口頭による意見)を加える。)であるから、ここにこれを引用する。 被控訴人代理人は、「訴外松山信用金庫の被担保債権は、次のとおりである。即ち、被控訴人は、右金庫より昭和三一年一二月二八日極度額満額の金二、〇〇〇、〇〇〇円を借り入れ、昭和三二年七月五日までの利息(日歩金三銭五厘)を支払い、昭和三二年九月五日現在元金二、〇〇〇、〇〇〇円、利息金四六、三六〇円、同年一〇月一七日現在元金二、〇〇〇、〇〇〇円、利息金七八、二八〇円、昭和三三年一〇月一四日現在元金二、〇〇〇、〇〇〇円、利息金二八四、八〇〇円であつた。 又訴外株式会社高知相互銀行の被担保債権は、次のとおりである。即ち、債務者訴外Bは、右銀行より昭和三二年八月五日金一五〇、〇〇〇円を借り人れ、同年一〇月四日同日までのこれが利息及び元金内入として金一二、七八九円計金一五、〇〇〇円を支払い、昭和三二年一〇月一七日現在残金は金一三七、二一一円であつた。 被控訴人従来主張の損害額が不当であつても、不動産強制競売手続において、最低競売価額をもつて差押債権者の債権に先だつ不動産上の総ての負担及び手続の費用を弁 現在残金は金一三七、二一一円であつた。 被控訴人従来主張の損害額が不当であつても、不動産強制競売手続において、最低競売価額をもつて差押債権者の債権に先だつ不動産上の総ての負担及び手続の費用を弁済して剰余のある見込のない場合、民訴法第六五六条により手続が適法に行われるならば、債務者は、その不動産をそのまま保有しえるか、もしくは差押債権者か競買人かが、少なくとも右総ての負担及び費用を弁済して剰余あるべき価額で不動産を買い受け、その代金によつて右負担等を弁済して債務者は、これを免れえられるかの何れかであり、同条によつて処理されずに競売手続が進められ、不動産の時価と右総ての負担、費用を弁済しらべき価額の何れよりも低額の代金額で競落されるときは、債務者は、損害を蒙むるもので、前者の場合(不動産を保有しらる場合)は、不動産の所有権を侵害されることによる損害で、その額は、右違法の競売手続のなされた当時の不動産の価額と競落価額との差額相当額であり、後者の場合(差押債権者もしくは競買人が買い受ける場合)は、少なくとも免れえたであろう総ての負担及び費用を免れえなかつた損害で、その額は、該総ての負担及び費用と現実に競落代金によつて免れえた負担及び費用との差額相当額であるが、その何れかが不明の場合は、少なくとも少額の方の損害はあつたといらべきである。いま本件についてこれをみるに、前記の如く原判決別紙目録記載の物作(以下本件不動産と称する。)につき、違法の競売手続のなされたことは明らかで(原判決事実摘示引用)、そのため被控訴人は前記何れかの損害を蒙つたものであるところ、本件不動産の右違法競売手続当時の価額は、少なくとも最初の最低競売価額である金二、四六六、六四〇円であり、又差押債権者である訴外株式会社西日本相互銀行の債権に先だつ本件不動産上の総ての負担及び ろ、本件不動産の右違法競売手続当時の価額は、少なくとも最初の最低競売価額である金二、四六六、六四〇円であり、又差押債権者である訴外株式会社西日本相互銀行の債権に先だつ本件不動産上の総ての負担及び手続費用は、訴外松山信用金庫の昭和三二年一〇月一七日(第二回の競売公告日時)現在の債権、元本金二、〇〇〇、〇〇〇円、利息金七八、二八〇円、訴外株式会社高知相互銀行の同日現在の債権金一三七、二一一円および公課金、手続費用合計金二二、二四〇円、総計金二、二三七、七一三円であつて、被控訴人の蒙つた損害は、前記何れの損害かは不明であるが、前述するとおり、少なくとも少額の方、即ち、右負担及び手続費用の合計金二、三二七、七三一円と競落代金金九二六、〇〇〇円との差額として算出される金一、三一一、七三一円相当の損害は、被控訴人の蒙つた損害として確定さるべきものである。」と述べ、控訴人代理人は、「民訴法第六五六条等の諸規定は、無益な執行を避けるという訴訟経済上の理由、つまり公益保護の規定であつて、優先権を有する債権者ないし差押債権者を保護する結果にはなつても、物上保証人ないし債務者を保護するものではないから、単に債務者に過さない被控訴人は、右諸規定の違反があつたからといつて、これを理由に権利侵害を主張できない。 そうでなくでも、民訴法は、競落許可決定について異議、即時抗告等の不服申立方法を規定しているのであつて、競落許可決定の違法は、専ら訴訟法の定める不服申立方法によりこれが是正を求めるべきであり、右許可決定が確定した後は、担当裁判官の行為が違法であるとして国家賠償法に基づく損害賠償を請求することはできないものと解すべきである。 民訴法第六五六条等の規定が、利益のない競売手続をなせば、債務者も亦費用につき損失を蒙るから、債務者に損失を蒙らせること て国家賠償法に基づく損害賠償を請求することはできないものと解すべきである。 民訴法第六五六条等の規定が、利益のない競売手続をなせば、債務者も亦費用につき損失を蒙るから、債務者に損失を蒙らせることを許さない趣旨のものであるとすれば、被控訴人の蒙つた損害は、本件不動産を喪失したことによる損害ではなく(被控訴人は、債務者として債務を履行すべき義務があつたのであり、被控訴人主張の競売手続は、まさに債務履行の強制方法としてなされたものだからである。)、右競売手続に要した費用のみといわなければならない。 民訴法第六五六条は、競売法において準用されないものとされているが、このことは、同条の立法趣旨を考慮するうえにおいて参考になるものと考える。 なお、被控訴人の訴外松山信用金庫、同株式会社高知相互銀行の各債権に関する主張事実は認める。」と述べた。 理由 本件不動産が、もと被控訴人の所有に属していたこと、本件不動産につき、被控訴人主張のような経過で強制競売手続がなされたこと、本件不動産上に、被控訴人主張のような根抵当権が設定され、その旨登記されていたことは何れも当事者間に争いがない。 ところで、我が民訴法は、金銭債権による不動産に対する強制執行については、不動産上の負担につき消除主義の原則を余剰主義によつて制限しているものであるが、被控訴人は、松山地方法務局法務事務官或は執行裁判所(松山地方裁判所裁判官)の過失により該余剰主義についての民訴法第六四九条第一項、第六五六条、第六五七条の規定に反して被控訴人所有の本件不動産が競売され、損害を蒙つたと主張するので考えてみるに、右法条は、差押債権者にとつて、配当を受けらる剰余がないのに無益な手続が遂行され、又優先権を有する債権者にとつてもその意に反した時期に、しかも不充分に 、損害を蒙つたと主張するので考えてみるに、右法条は、差押債権者にとつて、配当を受けらる剰余がないのに無益な手続が遂行され、又優先権を有する債権者にとつてもその意に反した時期に、しかも不充分にその投資の回収を強いられる不当な結果を避けるために設けられたものであつて、差押債権者、優先権を有する債権者を保護する趣旨の規定であり(勿論執行機関も無意味な執行手続から解放される。)、債務者(所有者)を保護するための規定ではないと解される。 <要旨>ただ、右法条が遵守ざれる場合、債務者(所有者)にとつて、当該不動産の所有権を保持しうるか、又は差押</要旨>債権者の定めるその債権に先だつ不動産上の総ての負担及び手続の費用を弁済して剰余あるべき価額以上に該不動産が売却され、右負担等を弁済してこれを免れ、稀有ではあるが、場合によつては、なお剰余金を取得しうる利益はあるが、これは同法条の反射的利益というべきである。 債務者の所有財産は、もともと責任財産として債権者らの一般担保であり、その債権の満足に供せらるへき運命にあるのであつて、右法条により不動産の所有権を保持しえ、又は差押債権者の定める差押債権に先だつ不動産上の負担等を弁済して剰余あるべき価額以上に売却ざれうるのは、たまたま右負担等が存するというだけの理由であり、これがなければ、債務弁済のため該不動産は、競売ざれて当然のことなのであつて、強制手段によつて弁済を強要せられる状況下においては、該不動産は、も早競落代価相当の価値しかない(該代価は、競売の特質から該不動産の時価(通常の取引価格)以下であるのが普通である。)。そうすると、債務者が不動産の所有権を保持しえ、又は不動産が差押債権者の定める差押債権に先だつ不動産上の負担等を弁済して剰余あるべき価額以上に売却されうるのは、全く差押債権者、優先権 通である。)。そうすると、債務者が不動産の所有権を保持しえ、又は不動産が差押債権者の定める差押債権に先だつ不動産上の負担等を弁済して剰余あるべき価額以上に売却されうるのは、全く差押債権者、優先権を有する債権者等債権者側のみの事情によるものであつて、債務者(所有者)は、債権者側のみの事情によつていわば漁夫の利をうるたぐいである。かかる者に対してまで国家賠償を認めれば、不動産の時価に比し、不動産上の負担額を高くなるようにしさえすれば、強制執行を受けても、常に不動産所有権を保持しうるか、又はこれを失つでもその時価以下で失うことはないことになろう。かかる結果は前記説示するところに照らし、容認し難いところである。 右法案による手続の要件が満たされたのに、該手続をとらずしてなされた競売は、差押債権者及び優先権を有する債権者の前示利益を害する点においては、勿論許すべからざるものであるが、しかし、右競売によつて害される債務者(所有者)の利益は、右述の如きものであつて、本来右法条により保護を受けうべきものではないから、右法条に違反した競売によつて右利益を害されても、債務者(所有者)は、違法に損害を加えられたということはできない。そして、右競売によつて生じた違法状態は、勿論現状に回復しうべくもないが、損害を蒙つた債権者において損害賠償を請求し、その補填を受ければ解消されるのであつて(尤も、不服申立が許される裁判については、違法性がないとして国家賠償を否定する説もある。)、強いて債務者(所有者)に国家賠償を認める必要はさらさらない。 そうだとすると、本件においでも、前記競売が、被控訴人主張の如く右法条に反するものであり、その主張のようた損害が生じたとしても、右説示するところがら明らかなように、被控訴人は、右競売により違法に損害を加えられたものとはいいえ も、前記競売が、被控訴人主張の如く右法条に反するものであり、その主張のようた損害が生じたとしても、右説示するところがら明らかなように、被控訴人は、右競売により違法に損害を加えられたものとはいいえないのであつて、従つて被控訴人主張の如き国に対する損害賠償請求権の成立は、これを肯認するに由がない。 なお、本判決は、債務者(所有者)の右利益が侵害された場合常に右請求権が成立しないという趣旨ではないのであつて、債務者(所有者)に対し、損害を蒙らしめる目的で、右法条に反して競売が遂行ざれたような場合を論外において説示したものであり、本件が右の如き場合でなく、公務員の過失による場合の問題であることは弁論の全趣旨から明らかである。 そうすると、被控訴人の本訴請求は、進んでその余の点につき判断を加えるまでもなく失当として棄却を免れず、本訴請求の一部を認容した原判決部分は、取り消されるべきものである。 よつて、民訴法第九六条第八九条に従い、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官呉屋愛永裁判官杉田洋一裁判官鈴木弘)
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