令和6年10月4日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第650号国家賠償請求事件口頭弁論終結日令和6年3月1日判決主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は、原告に対し、500万円及びこれに対する平成28年3月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、防衛省に勤務する自衛官である原告が、陸上自衛隊中央警務隊による違法捜査、上司によるパワーハラスメント及び違法な異動命令等により精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき慰謝料500万円及びこれに対する平成28年3月23日(上記異動命令の日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いがないか、後掲各書証及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 原告の経歴等ア原告は、平成9年3月に一般幹部候補生として陸上自衛隊に入隊した自衛官である。 イ原告は、平成26年8月1日、陸上自衛隊から防衛省情報本部に派遣されて統合情報部統合情報第1課勤務を命じられ、同課第1班の担当幹部として、情報調整及び当年度予算執行の業務に従事した。 ウ原告は、平成27年10月1日、業務支援のため計画部情報調整課への臨時勤務を命じられ、情報官に係る連絡・調整等の業務を補佐した。 エ原告は、平成27年12月1日、臨時勤務終了に伴い、統合情報第1課に復帰し、統合情報部長であるA1等海佐(以下「A部長」という。)のスケジュール管理等の業務に従事した(以下「本件業務変更」という。)。 オ原告は、平 日、臨時勤務終了に伴い、統合情報第1課に復帰し、統合情報部長であるA1等海佐(以下「A部長」という。)のスケジュール管理等の業務に従事した(以下「本件業務変更」という。)。 オ原告は、平成28年3月23日、総務部総務課への異動を命じられた(甲11。以下「本件異動命令」という。)。 ⑵ 本件の関係部署の防衛省内における組織的位置付けア情報本部情報本部は、防衛及び警備、自衛隊の行動、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊の組織、定員、編成、装備及び配置に関する事務に必要な情報の収集整理一般に関する事務を行う、防衛省に設置された特別の機関である(防衛省設置法19条、28条)。 統合情報部は、情報本部に設置された部であり、緊急に処理を要する情報及び外国軍隊等の動態に関する情報の収集整理並びに統合幕僚監部に対する自衛隊の運用に必要な情報の提供等に関する事務を行う。 総務部は、情報本部に設置された部であり、情報本部職員の人事及び給与、教育訓練、福利厚生、情報本部の文書管理、経費及び収入の予算、決算及び会計、物品の取得並びに行政財産及び物品の管理に関する事務を行う。 イ統合幕僚監部統合幕僚監部は、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊について、統合運用による円滑な任務遂行を図る見地からの防衛及び警備に関する計画の立案、行動計画の立案及び訓練計画の立案等に関する事務を行う、防衛省に設置された特別の機関である(防衛省設置法19条、22条)。 ウ陸上自衛隊における警務隊(乙41) 陸上自衛隊における警務隊は、主として犯罪の捜査及び被疑者の逮捕を行い、あわせて部隊等の長の行う交通統制、警護、犯罪の予防、規律違反の防止等に協力してこれらの職務を行うことを任務とする、陸上自衛隊の 陸上自衛隊における警務隊は、主として犯罪の捜査及び被疑者の逮捕を行い、あわせて部隊等の長の行う交通統制、警護、犯罪の予防、規律違反の防止等に協力してこれらの職務を行うことを任務とする、陸上自衛隊の部隊である。 陸上自衛隊における警務隊は、警務隊本部、中央警務隊及び方面警務隊からなり、中央警務隊の担当区域は、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地(東京都新宿区(住所省略))の所在する区域である。 エなお、情報本部及び統合幕僚監部は、全て市ヶ谷地区(東京都新宿区(住所省略)に所在する防衛省の施設をいう。)に所在する。 ⑶ B3等空佐(当時。以下「B3佐」という。)による「統幕長訪米時のおける会議の結果概要について」という件名の文書の作成B3佐は、平成26年12月24日当時、統合幕僚監部防衛計画部に配属されていた者であり、同日、自己が使用する防衛省OAネットワーク・システム(以下「省OA」という。)端末で、マイクロソフト・ワード(以下「ワード」という。)を用いて、「統幕長訪米時のおける会議の結果概要について」という件名の文書を作成した(以下「B3佐作成文書」という。)。 ⑷ S参議院議員(以下「S議員」という。)による国会における「統幕長訪米時のおける会議の結果概要について」という件名の文書の提示ア日本共産党(以下「共産党」という。)のS議員は、平成27年9月2日、第189回国会の参議院における「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」において、中谷元げん防衛大臣(当時。以下「中谷大臣」という。)に対し、B3佐作成文書と同じ件名の23頁からなる文書(以下「本件提示文書」という。)を示し、中谷大臣はどのような報告を受けているのか質問した。 イ中谷大臣は、本件提示文書について確認できていないので、 作成文書と同じ件名の23頁からなる文書(以下「本件提示文書」という。)を示し、中谷大臣はどのような報告を受けているのか質問した。 イ中谷大臣は、本件提示文書について確認できていないので、この時点での言及は控えさせていただく旨答弁した。 ⑸ 中央警務隊の原告に対する窃盗被疑事件(後に自衛隊法違反(秘密漏えい罪)被疑事件に罪名変更。以下、罪名変更の前後を通じて「本件被疑事件」という。)の捜査ア中央警務隊は、本件提示文書とB3佐作成文書が類似しており、情報流出が疑われたとして、平成27年9月3日、窃盗被疑事件として捜査に着手した(乙42)。 イ中央警務隊は、平成27年9月14日及び同月16日、原告に対する取調べを実施した(乙14)。 ウ中央警務隊は、平成27年11月18日、原告に対するポリグラフ検査及び取調べを実施した(乙27の1、乙28、30)。また、中央警務隊は、同日、原告からスマートフォン1台の任意提出を受けた(乙20、21)。 エ中央警務隊は、平成27年11月30日、本件被疑事件の罪名を、窃盗被疑事件から自衛隊法違反(秘密漏えい罪)被疑事件に変更した(乙42)。 オ中央警務隊は、平成28年1月26日、東京簡易裁判所に対し、原告の自宅官舎、職場執務室及び実家に対する捜索差押許可状の発付を請求し、同日発付を受け、同月30日、これらの場所に対する捜索を行い、原告の自宅官舎において、原告所有パソコン等の差押えを実施した(甲8、9、乙18、19、40各枝番)。 カ中央警務隊は、平成28年1月30日から同年2月16日にかけて、原告に対する取調べを行った(乙27の2ないし14、乙28)。 キ中央警務隊は、平成28年6月27日、原告に対し、原告の自宅から押収した原 、平成28年1月30日から同年2月16日にかけて、原告に対する取調べを行った(乙27の2ないし14、乙28)。 キ中央警務隊は、平成28年6月27日、原告に対し、原告の自宅から押収した原告所有パソコン等を還付した。 ⑹ 中央警務隊の原告に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ禁止法」という。)違反被疑事件の捜査ア情報本部総務部C総務課長(当時。以下「C課長」という。)は、平成2 8年6月27日、原告が勤務先で作成又は使用する業務用データを原告所有パソコンに保存していた疑いがあるとして、原告から、中央警務隊が原告に還付した原告所有パソコン、CD-R25枚及びUSBフラッシュメモリー1本の提出を受けた。 イ C課長は、原告が提出した原告所有パソコン及びCD-R1枚に、児童ポルノと思われる画像が保存されていたとして、平成28年9月2日、中央警務隊に対し、情報提供を行った。中央警務隊は、同日、C課長から、上記原告所有パソコン内に保存されていた全ての画像が印刷された資料1冊の任意提出を受け領置した。 ウ C課長は、平成28年9月12日、中央警務隊に対し、原告を児童ポルノ禁止法違反事件で告発し、中央警務隊はこれを受理した。 エ中央警務隊は、平成28年9月15日、C課長から上記CD-Rに保存されていた画像を印刷した資料4冊の任意提出を受け領置した。また、中央警務隊は、東京簡易裁判所裁判官から差押許可状の発付を受け、同月20日、原告立会いの下、原告所有パソコン及び上記CD-Rを差し押さえた(甲10)。 オ中央警務隊は、平成28年9月20日及び同年10月11日、原告の取調べを行った。 ⑺ 不起訴処分ア中央警務隊は 告所有パソコン及び上記CD-Rを差し押さえた(甲10)。 オ中央警務隊は、平成28年9月20日及び同年10月11日、原告の取調べを行った。 ⑺ 不起訴処分ア中央警務隊は、平成29年8月30日、以下の被疑事実の要旨により、原告に対する本件被疑事件及び児童ポルノ禁止法違反被疑事件を東京地方検察庁に送致した。 本件被疑事件被疑者(原告)は、自衛隊員であるが、平成27年7月31日から同年8月17日までの間、東京都新宿区(住所省略)所在の情報本部において、統合幕僚監部所属のB3佐が作成し、取扱厳重注意とされたB3 佐作成文書を踏まえて被疑者(原告)作成文書を作成して印刷した上、埼玉県内又はその周辺から、氏名不詳者に対し、前記印刷した文書を郵送又は電子メールに添付する方法で送付し、もって職務上知ることのできた秘密を漏らした。 児童ポルノ禁止法違反被疑事件被疑者(原告)は、自己の性的好奇心を満たす目的で、平成28年1月30日、埼玉県●●●内の被疑者方において、児童ポルノである、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部分(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激する画像データ3点が保存されたパーソナルコンピュータ1台を所持した。 イ東京地方検察庁検察官は、平成29年9月22日、原告に対する本件被疑事件及び児童ポルノ禁止法違反被疑事件について、いずれも嫌疑不十分を理由に不起訴処分とした(甲24各枝番)。 2 争点⑴ 捜査全般の違法性の有無(原告による文書流出の嫌疑の存否及び自衛隊法59条1項所定の「秘密」該当性)(争点1)⑵ 中央警務隊 を理由に不起訴処分とした(甲24各枝番)。 2 争点⑴ 捜査全般の違法性の有無(原告による文書流出の嫌疑の存否及び自衛隊法59条1項所定の「秘密」該当性)(争点1)⑵ 中央警務隊による個々の捜査の違法性の有無(争点2)⑶ 本件業務変更及び本件人事異動の違法性の有無(争点3)⑷ A部長によるパワーハラスメントの有無(争点4)⑸ 損害(争点5) 3 当事者の主張⑴ 争点1(捜査全般の違法性の有無)【原告の主張】ア原告による文書流出の嫌疑が存在しないこと 中央警務隊は、原告が本件提示文書を流出させたとして、当初窃盗の、 後に自衛隊法59条、同法118条1項違反の嫌疑をかけた。しかし、以下のとおり、被告が提出した証拠によっても、原告の嫌疑を根拠づけることはできない。 被告が原告使用端末の実況見分調書であると主張する書面(乙3)の写真を見ても、当該パソコンの押収経過は不明であり、対象が原告使用端末か確認できない。また、原告使用端末の解析結果であると主張する各報告書(乙4、5)の解析対象が何であるかも一切分からない。被告は、原告が平成27年7月31日にB3佐作成文書を加工して印刷したと主張するが、解析結果報告書(乙5)の別紙3は元データではなく捜査官が作成した資料であって、客観的な裏付けは確認できない。被告は、原告がB3佐作成文書に変更を加えて「予防接種調査.docx」のファイル名を付けて保存し、印刷した蓋然性が高いと主張するが、同ファイルの内容は不明であり、捜査官の憶測にすぎない。 被告は、平成28年1月30日に原告所有パソコンの解析を行ったと主張するが、実況見分調書(乙8)及び解析結果報告書(乙9)を見ても、対象が原告所有パソコンか否かは 官の憶測にすぎない。 被告は、平成28年1月30日に原告所有パソコンの解析を行ったと主張するが、実況見分調書(乙8)及び解析結果報告書(乙9)を見ても、対象が原告所有パソコンか否かは判然とせず、作成されたデータが原告所有パソコンのデータなのか確認し得ない。サムネイル画像も非常に小さく、内容は確認できない。スマートフォンの解析(乙6、7)についても対象が原告所有のスマートフォンであるか確認できない。 このように、被告が提出した証拠は、捜査の基本となる証拠品の特定すらなされておらず、原告に対する嫌疑の根拠となり得ない。 安倍晋三首相(当時。以下「安倍首相」という。)、中谷大臣、D統合幕僚長(当時。以下「D統幕長」という。)及び防衛省は、本件提示文書の原本の存在を否定しており、存在しない文書の流出については、そもそも嫌疑が存在しない。 被告は、原告がB3佐作成文書を改変した原告作成文書を作成して秘 密を漏えいしたと主張するが、B3佐作成文書のどこを改変したのか、内容が同一なのか否かなど、原告作成文書の内容は全く不明であり、原告作成文書に被告が主張するような内容が記載されていたのかも不明である。 イ自衛隊法59条1項所定の「秘密」に該当しないこと B3佐は、平成26年12月24日当時、B3佐作成文書を法令上の根拠のない「取扱厳重注意」文書と標記して、防衛省内のOA機器で複数の職員に配布しており、秘密保全に関する訓令(甲13。以下「訓令」という。)上の手続を踏んでいない。また、D統幕長らもB3佐作成文書を「取扱厳重注意」文書として決裁するなどしており、訓令上の手続を踏んでいない。にもかかわらず、D統幕長ら決裁者及びB3佐は一切懲戒処分を受けていないことからすれば、B3佐作成文書の内容は「秘密」 を「取扱厳重注意」文書として決裁するなどしており、訓令上の手続を踏んでいない。にもかかわらず、D統幕長ら決裁者及びB3佐は一切懲戒処分を受けていないことからすれば、B3佐作成文書の内容は「秘密」に該当しない。 本件提示文書に記載されたD統幕長と米軍高官とのやり取りの内容は、既に防衛省のホームページ等で公表されている事実や、米軍と自衛隊の連携についての概括的、抽象的なやり取りであり、儀礼的な側面が強く、最高裁昭和53年5月31日第1小法廷判決(刑集32巻3号457頁)が予定するような「条約や協定の締結を目的とする」交渉とは異なるものであるから、実質的に「秘密」に該当しない。 本件提示文書には、D統幕長が、米軍高官に対し、安倍首相よりも半年近くも前に(安倍首相は平成27年4月29日に米軍連邦議会で同年夏までに安保法制を成就させると約束している。)、平成27年の夏までに安保法制を成立させる見込みであると述べ、安保法制の成立を約束したことや、オスプレイに反対、慎重意見を述べる自治体の長や多くの市民がいることに対し、オスプレイの不安全性を煽るのは一部の活動家だけであるなどと発言した旨が記載されている。 安保法制は、圧倒的多数の憲法学者が憲法9条違反であると反対意見を述べただけでなく、歴代の内閣法制局長官の同条の政府解釈に反するものだと批判を繰り返しており、集団的自衛権の行使を認める自衛隊法等の規定には、同条に違反する内容が含まれており、同条の存在を前提とした専守防衛政策を、主権者である国民の意思を問うことなく、抜本的に転換することにより、憲法秩序を破壊する実質的な憲法改変であることは明らかである。そのような安保法制の成立を、実力組織のトップであるD統幕長が、安倍首相よりも先に米軍高官に約束するこ なく、抜本的に転換することにより、憲法秩序を破壊する実質的な憲法改変であることは明らかである。そのような安保法制の成立を、実力組織のトップであるD統幕長が、安倍首相よりも先に米軍高官に約束することは、シビリアンコントロールに反するだけでなく、時の政府の統制能力を疑わせるものであり、政府、防衛省、自衛隊が本件提示文書の存在を認めることは、世論、マスコミ、学者、弁護士会を含めた法律家団体、市民団体などから、安保法案の内容や国会での強引な審議の進め方だけでなく、政府、防衛省、自衛隊への更なる批判を招くことは必至であった。政府、防衛省、自衛隊としては、米国との関係で、安保法制を平成27年夏までに成立させるという思惑があり、国会での安保法制の審議を遅滞させることはできなかったため、口裏を合わせて本件提示文書の存在を認めることはできなかった。そこで、安倍首相、中谷大臣及びD統幕長が口裏を合わせて国民の目から隠すために、防衛省内で本件提示文書と同一のものは確認できなかったと虚偽の答弁をしたのである。 その一方で、防衛省は、平成27年9月3日には、B3佐作成文書を秘密指定し、犯人捜しを始めたが、その内容は、文民統制下にあるD統幕長が憲法秩序を破壊する違憲立法である安保法制の成立予定時期を明示し、その成立を約束しただけでなく、国民を敵視する発言を平然と行っているなどの異常事態も含まれており、これらの情報が、主権者である国民に知らされなければならないものであることは疑いがなく、まさに「違法秘密」というべきであり、そもそも自衛隊法59条による保 護に値しないものである。 ウ捜査全般の違法性の有無以上によれば、中央警務隊の警務官は、安倍首相、中谷大臣及びD統幕長が口裏を合わせて訪米議事録の存在を否定する虚偽答弁をしていることを認識し、かつ、 ないものである。 ウ捜査全般の違法性の有無以上によれば、中央警務隊の警務官は、安倍首相、中谷大臣及びD統幕長が口裏を合わせて訪米議事録の存在を否定する虚偽答弁をしていることを認識し、かつ、原告に対する秘密漏えい罪の嫌疑が存在しないこと又は起訴できないことを認識し、または容易に認識できたにもかかわらず、秘密漏えい罪の捜査を行っており、捜査を実施したこと自体が、国賠法上違法である。 【被告の認否・反論】ア原告による文書流出の嫌疑が存在すること原告は、防衛省等が本件提示文書と同一文書の存在が確認できなかったと報告したことなどをもって、存在しない文書の漏えいは不可能であるなどと主張するが、本件で漏えいの疑われる情報が記載されている文書として防衛省が保存している文書は、B3佐作成文書(作成途中ないし決裁前のものであった。)が完成し決裁を経た後の文書(甲16の2。以下「本件決裁後文書」という。)であって、本件提示文書ではない。原告の主張は、本件提示文書と本件決裁後文書が同一の文書であることを前提とした主張であり、前提に事実誤認がある。 中央警務隊が原告に対して嫌疑を抱くに至った経緯は、以下のとおりである。 本件提示文書とB3佐作成文書は同一の文書ではないが、その共通点から、B3佐作成文書が加工されて流出したことにより本件提示文書がS議員の手元にあった可能性が認められた。 B3佐作成文書のデータは、メールで、原告を含む73名の省OA端末に送信又は転送された。 省OA端末にインストールされているワードには、加工したワードフ ァイルを「上書き保存」又は「名前を付けて保存」をせずに閉じようとした場合、「〇〇(ファイル名)に対する変更を保存しますか?」というアラート(以下「保存ア されているワードには、加工したワードフ ァイルを「上書き保存」又は「名前を付けて保存」をせずに閉じようとした場合、「〇〇(ファイル名)に対する変更を保存しますか?」というアラート(以下「保存アラート」という。)が表示され、その表示時刻等が自動的にウィンドウズのイベントログとして記録される機能がある。 上記の73名の省ОA端末のイベントログを収集・分析したところ、原告が使用する省OA端末(以下「原告使用端末」という。)から、平成27年7月31日午後7時32分に、「261217 訪米概要(定稿).docx に対する変更を保存しますか?」との保存アラートのイベントログが発見された。 なお、原告は、実況見分調書(乙3)記載のパソコンについて、原告使用端末との同一性を争うが、中央警務隊は、同端末を防衛省整備計画局情報通信課情報システム室長の代理人から原告使用端末として任意提出を受け、任意提出書を受領して領置調書を作成しており、そのサービスタグ(端末毎の識別番号)「1BFXVBX」が、実況見分調書(乙3)記載のパソコンと一致していることを確認している。 その後、原告使用端末からは、本件提示文書と同じページ数のワード文書の印刷履歴が確認された。 中央警務隊が差し押さえた原告所有パソコンを解析した結果、平成27年8月2日午前1時10分、原告所有パソコンに原告所有のスキャナが接続され、同日午前1時53分49秒以降画像データが取り込まれたことが判明した。 上記ないしのとおり、原告が原告使用端末を用いてB3佐作成文書を加工して原告作成文書を作成し、これを自宅に持ち帰ってスキャナを用いて原告所有パソコンに取り込んでデータ化したことは明らかであって、原告作成文書には、「秘密」に当たる非公表を前提 B3佐作成文書を加工して原告作成文書を作成し、これを自宅に持ち帰ってスキャナを用いて原告所有パソコンに取り込んでデータ化したことは明らかであって、原告作成文書には、「秘密」に当たる非公表を前提とする統幕長と米国側との会談の概要が記載されていたと推認される。これらの事実に加え、B3 佐作成文書を加工した原告作成文書と同一のものと推認される本件提示文書を第三者が入手しており、原告作成文書が第三者に漏えいされた事実が認められることも併せて考慮すれば、原告が「秘密」に当たる内容が記載されていたと推認される原告作成文書を漏えいした事実が疑われるから、本件被疑事件の嫌疑があることは明らかである。 以上のとおり、被告は、「秘密」とされる情報の内容をそのまま明らかにするのではなく、原告が漏えいしたと疑われる原告作成文書に、非公表を前提とした統幕長と米国側との会談の概要が記載されているB3佐作成文書の内容が記載されていたと推認できることを立証することにより、原告に「秘密」を漏えいした嫌疑があったことを立証している。 イ自衛隊法59条1項所定の「秘密」に該当すること 実質秘に当たること自衛隊法59条1項の「秘密」とは、一般に知られていない事実であって、それを一般に知られることが一定の利益の侵害になると客観的に考えられるものをいう。 B3佐作成文書の内容は、非公表を前提とした統幕長と米国側との会議の概要である。 外交事務における信頼関係の重要性と外交に係る情報の取扱いに関する国際的外交慣行からすると、非公表を前提とするのは条約や協定締結を目的とする外交交渉に限られない。 国際社会において、他国等から任意の手段によって外交事務の適正な遂行に必要な情報を入手するとともに外交工作のため必要な協力等を得るためには、相手方との 協定締結を目的とする外交交渉に限られない。 国際社会において、他国等から任意の手段によって外交事務の適正な遂行に必要な情報を入手するとともに外交工作のため必要な協力等を得るためには、相手方との間に緊密かつ強固な信頼関係が必要である。 このような信頼関係は、担当者間の意見交換や折衝を通じて徐々に構築されるものであり、公開を前提としない意見交換等については、国際的外交慣行として、その内容のみならず意見交換等を行った事実自体も 秘密にすることが求められる。 そして、このような意見交換等を重ねるとともに相手方の信頼に即して意見交換に関する秘密を厳守することによって、初めて他国等との間で緊密かつ強固な信頼関係が構築され、双方の意思疎通が円滑に行われるのみならず、非公式の情報等の有用な情報を入手し、あるいは、我が国に有利な交渉結果を導くことが可能となる。このような非公式の情報等が我が国に提供されるのは、我が国にそれを伝えても、当該情報の提供元及びその内容等が公にされることがないという信頼に基づくものであり、このような情報については公開しないことが国際的外交慣行となっているのである。 我が国が上記国際的外交慣行に反する取扱いをした場合、我が国と他国等との信頼関係が損なわれるとともに、我が国が他国等との交渉上不利益を被ることが十分に考えられる。 したがって、B3佐作成文書の内容が「秘密」に該当することは明らかである。 形式秘に当たること「取扱い上の注意を要する文書等及び注意電子計算機情報の取扱いについて(通達)」(平成19年防防調第4608号)(以下「取扱注意文書通達」という。)は、第2の1において、取扱い上の注意を要する文書等(文書、図画又は物件)のうち、防衛省の職員以外の者にみだりに知られることが業務の遂行に支障を与 第4608号)(以下「取扱注意文書通達」という。)は、第2の1において、取扱い上の注意を要する文書等(文書、図画又は物件)のうち、防衛省の職員以外の者にみだりに知られることが業務の遂行に支障を与えるおそれのあるものについては「部内限り」、当該事務に関与しない職員にみだりに知られることが業務の遂行に支障を与えるおそれのあるものについては「注意」と表示することと定めている。 そして、防衛省においては、不用意に関係者以外に流出することがないよう、関係者以外への電子メールやFAXでの送信等は認めず、情報 公開請求においても全て開示されることのない資料として取り扱うべき文書については、「取扱厳重注意」と表示する取扱いをしており、「取扱厳重注意」も上記「注意」に該当するものとして整理されている。 B3佐作成文書には、このような観点から「取扱厳重注意」との表示がされていたのであり、文書の形式面から見ても「秘密」に該当することは明らかである。 本件被疑事件は、B3佐作成文書の内容の漏えいが被疑事実となっているのであって、本件提示文書を公開した事実を被疑事実としているものではないから、本件提示文書の内容は、「秘密」の該当性には影響しない。また、仮にB3佐作成文書の内容に「違法秘密」が含まれていたとしても、有罪認定における違法性阻却事由に当たり得るに止まり、当該被疑事件に対する捜査が全て違法になるわけではない。原告の主張は、「犯罪の証明があったとき」(刑事訴訟法333条1項)と、「犯罪があると思料するとき」(同法189条2項)を混同するものであり、失当である。 ウ捜査全般の違法性の有無安倍首相、中谷大臣及びD統幕長が虚偽答弁を行ったことは否認する。 安倍首相らは、訪米議事録の存在を否定したわけではなく、本件提示文書と のであり、失当である。 ウ捜査全般の違法性の有無安倍首相、中谷大臣及びD統幕長が虚偽答弁を行ったことは否認する。 安倍首相らは、訪米議事録の存在を否定したわけではなく、本件提示文書と同一の文書の存在を否定したのであり、虚偽答弁はしていない。 中央警務隊の警務官が、原告に対する秘密漏えい罪の嫌疑が存在しないこと又は起訴できないことを認識し又は容易に認識できたとの点は否認する。上記のとおり、原告に対する本件被疑事件の嫌疑は存在した。 ⑵ 争点2(中央警務隊による個々の捜査の違法性の有無)【原告の主張】ア平成27年9月の最初の取調べ原告に対し、具体的な被疑事実の告知や黙秘権の告知をすることなく、 原告の取調べを実施し、原告の防御権や黙秘権を侵害した。 イポリグラフ検査原告は、上記のとおり、嫌疑がないにもかかわらず、平成27年11月18日午後2時から午後5時まで3時間、中央警務隊により市ヶ谷駐屯地●●●●●の一室でポリグラフ検査を受けた。 中央警務隊は、誓約書の存在を根拠に、原告に対し被疑事実を告知することなく、改めてポリグラフ検査に対する個別の同意を取ることもなく、ポリグラフ検査を実施した。原告は、検査を受けていた約3時間、質問のたびに不自然な前傾姿勢を取らされ続け、疲労を訴えても休憩を取ることも水を飲むこともできないまま、全く身に覚えのない質問に答え続けることを強いられ、黙秘権や人格権を侵害された。 ウポリグラフ検査後の自白強要原告は、同日午後5時頃ポリグラフ検査が終了した後、別の警務官から事情を聴きたいと求められた。原告は、疲れていたことと業務があることから断ったが、すぐに終わると虚偽の説明をされ、夕食を摂ることも許されないまま、引 5時頃ポリグラフ検査が終了した後、別の警務官から事情を聴きたいと求められた。原告は、疲れていたことと業務があることから断ったが、すぐに終わると虚偽の説明をされ、夕食を摂ることも許されないまま、引き続き午後10時まで5時間もの長時間にわたり取調べを強要された。警務官は、原告が取調室に入ると、内側からドアをガチャンと閉めて原告を閉じ込め、原告に対し、「ポリグラフ検査の結果から、お前が犯人なのは間違いない」、「国会に流出した文書を印刷したのはお前だ」、「印刷した日に統合情報部の部屋にいたのはお前しかいない」などと断言し、偽計を用いて原告を犯人であると決め付け、自白を強要し、原告の防御権や黙秘権を侵害した。 エスマートフォンの実質的な差押え中央警務隊の警務官は、捜索差押許可状がないにもかかわらず、原告に対し、1時間ほど執拗にスマートフォンを見せるように求め、最終的に、原告の意に反してスマートフォンを提出させただけでなく、約20分のう ちに、原告の同意を得ることなく、探索的かつ包括的に原告のスマートフォンの内容を調査し、情報を収集して、原告の防御権、人格権及びプライバシー権を侵害した。 オ捜索差押え原告は、嫌疑がないにもかかわらず、中央警務隊から東京簡易裁判所裁判官が発付した捜索差押許可状を提示され、平成28年1月30日午前7時頃から、原告が居住する埼玉県●●●内の官舎、市ヶ谷駐屯地●●●●●及び●●●●●●●の勤務場所の捜索を受け、私有パソコン等9点を押収された。その際、警務官から、身に覚えのない共産党との関係について尋問された。 また、原告は、嫌疑がないにもかかわらず、同日、両親の立会いの下、●●●の実家についても捜索を受けた。実家への捜索差押えは、押収されたものが何もないこと 党との関係について尋問された。 また、原告は、嫌疑がないにもかかわらず、同日、両親の立会いの下、●●●の実家についても捜索を受けた。実家への捜索差押えは、押収されたものが何もないことからしても、原告と親子関係にあることのみを理由に、犯人捜しのために包括的、探索的に実施されたものといえ、原告の防御権や名誉権を侵害したものである。 カ連日の取調べ原告は、嫌疑がないにもかかわらず、平成28年2月から、市ヶ谷駐屯地●●●の中央警務隊の取調室において、ほぼ毎日、国会に流出した文書の印刷、持ち出し及び埼玉県●●●内の官舎でのスキャナによる取込みを行ったのではないかと、執拗に取調べを受けた。 原告が出勤して午前9時頃になると、上司が原告に対し中央警務隊に行くよう指示した。原告は、午前中の取調べが終了すると職場に戻って昼食を食べ、午後も中央警務隊に出向き、午後3時か4時頃まで取調べを受けた。そのうち、原告は、警務官から、明日も取調べのために来てくださいと指示されるようになった。原告は、平成28年2月に少なくとも15日程度取調べを受け、7~8通の供述調書に署名及び押印又は指印をした。 原告は、警務官から、官舎に共産党員を連れ込んでいるのではないか、休日に乗降する駅で共産党員と接触しているのではないかなど、全く身に覚えのない共産党との関係について尋問された。 キプライバシー侵害原告は、嫌疑がないにもかかわらず、中央警務隊に原告のIC乗車券(パスモ)から日常の乗降駅等の情報を包括的に収集され、プライバシー権を侵害された。 【被告の認否・反論】ア最初の取調べ警務官が、平成27年9月に実施した原告に対する最初の取調べの際、原告に具体的な被疑事実及び黙秘 、プライバシー権を侵害された。 【被告の認否・反論】ア最初の取調べ警務官が、平成27年9月に実施した原告に対する最初の取調べの際、原告に具体的な被疑事実及び黙秘権を告知しなかったことは認める。警務官は、この時点で原告を被疑者として特定できておらず、参考人として取り調べたのであるから、具体的な被疑事実及び黙秘権を告知しなくても適法である。 イポリグラフ検査中央警務隊は、ポリグラフ検査を行うに当たって、原告に対し、個別に被疑事実を告知し、十分な説明を行った上で、ポリグラフ検査承諾書を徴した。 警務官が、原告が述べるような前傾姿勢を取らせたこと及び原告が休憩を取ることや水を飲むことを求めたにもかかわらず警務官が認めなかったことは、否認する。警務官は、原告に対し、必要があれば休憩を申し出るよう伝えたが、原告は休憩を申し出なかった。 ウポリグラフ検査後の取調べポリグラフ検査が終了し、器具の取り外し及び検査終了後の説明等を終えたのが午後4時58分頃であったこと、原告が、当初業務が忙しいことを理由に取調べを拒んだことは認める。警務官は、確認したい事項につい て聴取が済めば終わると述べたが、「どうしても今日中に話を聞きたい」、「すぐに終わる」とは述べていない。 取調べを行った部屋は取調室ではなく鑑定室である。原告の主張が、警務官が鑑定室のドアを施錠したという趣旨であれば否認する。鍵はかけていない。 警務官が、「ポリグラフ検査の結果から、お前が犯人なのは間違いない」旨の発言をしたことは否認する。警務官は、取調べの際、原告に対し、ポリグラフ検査の結果について言及しなかった。 取調べは、午後5時17分頃から午後7時32分頃までで 犯人なのは間違いない」旨の発言をしたことは否認する。警務官は、取調べの際、原告に対し、ポリグラフ検査の結果について言及しなかった。 取調べは、午後5時17分頃から午後7時32分頃までであり、午後5時57分頃から午後6時7分頃まで約10分間の休憩を挟んでいる。 警務官は、取調べ終了後、原告にスマートフォンの任意提出を求め、原告がこれに応じ、中央警務隊が午後9時55分頃にスマートフォンを原告に還付したが、その間警務官は同席しておらず、取調べは行われていない。 エスマートフォンの任意提出警務官は、平成27年11月18日、原告に対し、スマートフォンの任意提出を求めた際、原告が拒んだため、約40分にわたり説得を行った。 その結果、原告は、任意にスマートフォンを提出し、任意提出書を作成した。原告は、任意提出の前に写真データの一部を削除したいと述べ、削除した上で任意提出を行った。警務官は、原告の意思に反してスマートフォンの提出を受けたのではなく、任意提出を受けた。 オ実家に対する捜索原告は単身であり、立寄り先と認められる実家に原告使用パソコンや記憶媒体等が存在する蓋然性があったから、実家への捜索の必要性は認められる。結果として差し押さえるべきものがなかったからといって、捜索の必要性が否定されるべきではない。 カ連日の取調べ 平成28年2月中ほぼ毎日取調べを行ったとの点は否認する。同月の取調べ日は、同月1日ないし5日、15日及び16日の合計7日間であり、作成された供述調書は合計6通である。同月2日ないし5日及び16日については、午前及び午後に取調べが行われたことを認める。 警務官が翌日も来るように指示をしたとの点は否認する。警務官は、翌日も話を聞きたいが都 計6通である。同月2日ないし5日及び16日については、午前及び午後に取調べが行われたことを認める。 警務官が翌日も来るように指示をしたとの点は否認する。警務官は、翌日も話を聞きたいが都合はどうかと尋ね、原告が、都合が悪いと述べた際は、日時の調整を図っていた。 警務官が、原告に対する取調べにおいて、共産党員との連絡状況等を聴取し、官舎内や休日に乗降する駅で会っていたかなどを質問したことは認める。本件は、共産党議員であるS議員の下に本件提示文書が存在した事件である上、原告のスマートフォンの解析から共産党とのつながりが推定されたことから上記質問をしたものであり、被疑事実と無関係に原告のプライベートについて質問したものではない。したがって、当該取調べは必要かつ相当である。 キ乗降履歴の収集警務官が、原告のパスモから乗降履歴等の情報を収集したことは認める。 原告が第三者に情報を漏えいした犯行状況を特定するため、原告の行動を明らかにする必要があったのであり、被疑事実と無関係に包括的・探索的に乗降履歴を収集したものではない。 ⑶ 争点3(本件業務変更及び本件人事異動の違法性の有無)【原告の主張】ア本件業務変更と仕事の取上げ 原告は、平成27年12月1日付けで情報本部情報官室の臨時勤務を終了し、情報本部統合情報部に復帰した。 原告は、当時、自衛隊において3等陸佐として幹部の階級にあったにもかかわらず、上記復帰後は、元の部署である統合情報部第1課第1班 の総括幹部ではなく、庶務係として、それまでE陸曹長が担当していたA統合情報部長のスケジュール管理・調整等を行うことになった。しかし、同業務は幹部が担当する業務ではない。 原告は、防衛省から上 部ではなく、庶務係として、それまでE陸曹長が担当していたA統合情報部長のスケジュール管理・調整等を行うことになった。しかし、同業務は幹部が担当する業務ではない。 原告は、防衛省から上記の業務変更の理由について特に示されておらず、統合情報部第1課第1班のF班長(1等海佐)から、平成27年12月3日頃に実施される米軍との会議の準備のためであるとの説明を受けただけであった。しかし、原告が庶務係に配属された同月1日の時点で同会議の準備はほとんど終わっていた。 原告は、週に1回、朝のミーティングでA部長の1週間のスケジュールを報告すると、その他はほとんど仕事がなく、A部長のスケジュールの追加・変更があると、パソコンに入力して反映させるだけであった。 朝のミーティングがある日は1時間ほど稼働するが、その他の日はスケジュールの追加・変更がなければ業務はなく、変更作業があっても、長くて30分程度で終了した。原告の1日の所定労働時間は7時間45分であり、原告はその時間のほとんどを自席に座って過ごしていたが、上記業務以外に仕事はなかった。 イ本件異動命令原告は、平成28年3月23日付けで情報本部総務部総務課管理班に異動となり(本件異動命令)、現在まで同班に所属している。 原告は、同月中旬頃、本件異動命令の内示を受けたが、異動の理由について何も説明されなかった。 管理班は、情報本部の物品管理等を所掌する部署であるが、原告はそれまで物品管理等の職務経験がなく、通常では考えられない異動であった。管理班のG班長(3等陸佐)からは、「急な話だけど、お前、何かやったのか」などと質問を受けた。 原告は、G管理班長の下の係長(当時はH3等空佐、現在はI1等空 尉)の下の班員の下に、他の班員と異なり、役割も与えら は、「急な話だけど、お前、何かやったのか」などと質問を受けた。 原告は、G管理班長の下の係長(当時はH3等空佐、現在はI1等空 尉)の下の班員の下に、他の班員と異なり、役割も与えられず、「係」も付されない形で席の配置をされた。 このような配置は、定年前の付配置や精神的な疾患を発症した職員に対する処遇であり、そのような事情のない原告に対する配置としては異例であり、原告は、仕事の取上げだけでなく、防衛省が原告を孤立させて精神的に追い詰めて退職するよう圧力をかけていると感じた。 原告が総務部に異動してから従事した業務は、C課長から指示された平成29年3月15日の情報本部20周年行事の構想資料の作成であった。しかし、同業務は管理班の業務ではなく、班員の中で同業務を命じられたのは原告だけであった。 しかも、原告が資料作成に費やした時間はわずか2日程度で、それ以降は、週1回の総務課の朝のミーティングの際、C課長の指示を仰ぎ、行事のタイムスケジュール、式典の人の配置、準備機材の列挙、人員の動線等に関する資料の修正を行っていたが、それも30分程度で対応できる業務でしかなく、C課長の指示すらない場合もあった。 その後の平成28年11月末頃、管理班管理係のE1尉が病気で入院したため、原告は、G班長に命じられてE1尉が担当していた予算要求資料の作成業務を行うようになったが、あくまで病気のE1尉に代わって応援に入るというものであり、作成した資料を平成29年3月にI1尉に提出した後は、予算要求に関わる業務は一切行っていない。 そのほかには仕事はほとんどなく、G班長が不在の時に、月に1回の頻度で総務課のミーティングに代理で参加する程度の業務にしか携わっていない。 ウ以上 る業務は一切行っていない。 そのほかには仕事はほとんどなく、G班長が不在の時に、月に1回の頻度で総務課のミーティングに代理で参加する程度の業務にしか携わっていない。 ウ以上のとおり、原告は、業務上の必要性も相当性もないにもかかわらず、違法に統合情報部の情報を扱う業務から外され、上司のスケジュール管理や行事の準備等の業務に従事させられ、自己の自衛官としての経歴を踏ま えた能力を発揮する機会を奪われ、孤立させられた。 【被告の認否・反論】ア統合情報第1課における業務等について統合情報部は、緊急に処理を要する情報及び外国軍隊等の動態に関する情報の収集整理並びに統合幕僚監部に対する自衛隊の運用に必要な情報の提供等に関する事務を行う部署であるから、その長であるA部長のスケジュールは変更が頻繁にあり、予定が重複してしまう場合もある。そのため、その管理・調整に当たっては、関係部局の業務の相関を理解した上で、優先順位を適時適切に判断する必要があり、決して単純かつ短時間で終わるような業務ではない。そして、統合情報部における関係部局との連絡調整の総括は、第1班のF班長の業務であり、A部長のスケジュール管理・調整といった関係部局との連絡調整の一部を3等陸佐である原告に分掌させることは、何ら異例なことではない。 また、庶務幹部である原告は、A部長のスケジュール管理・調整とともに、その内容を配下の庶務係員と共有し、庶務係員らの業務を監督する職責も求められており、確実な確認が要求される極めて重要な業務である。 したがって、原告の主張には理由がない。 イ総務課における業務等について総務課への補職替え(本件異動命令)について原告が統合情報第1課から総務課に補職替えされたのは、幹部自衛官であ したがって、原告の主張には理由がない。 イ総務課における業務等について総務課への補職替え(本件異動命令)について原告が統合情報第1課から総務課に補職替えされたのは、幹部自衛官である原告の人事管理上、管理部門の部署における勤務が有効であって最も適任と認めたからである。また、異動のタイミングも、平成26年8月1日付けで統合情報部勤務となったのち、約1年8か月を経過した平成28年3月23日付けであり、通常の定期異動である。 原告の主張は、原告の勝手な想像にすぎず、理由がない。 席の配置について 原告が総務課に補職替えとなった平成28年3月23日当時、G班長とH係長の階級はともに3佐であり、原告は、管理係員としてH係長の指揮監督を受けていた。その後、同年11月25日付けの人事異動により、管理係長がH3佐からI1尉に交代したことに伴い、原告の役職は管理係員から管理班員に変更され、原告はG班長から直接指揮監督を受けるようになった。 このように、原告が管理班において役割を与えられなかった事実はないし、係長の下の係員の下に配置された事実もない。 ⑷ 争点4(A部長によるパワーハラスメントの有無)【原告の主張】前記⑶のとおり防衛省が原告から仕事を取り上げたにもかかわらず、A部長は、自席で時間を費やしている原告の様子を見て、2日に1回の頻度で、「お前、仕事しているのか」とからかった。 また、A部長は、1週間に2、3回の頻度で、原告に対し、自分の肩を揉むよう指示した。原告は、自分のことを軽く見られているという屈辱を感じながらも、A部長の指示に従い、同人の肩を5~10分程度揉んだ。 【被告の認否・反論】A部長が、原告に対し、「お前、仕事しているのか」とからかった 軽く見られているという屈辱を感じながらも、A部長の指示に従い、同人の肩を5~10分程度揉んだ。 【被告の認否・反論】A部長が、原告に対し、「お前、仕事しているのか」とからかったことは否認する。 A部長が原告に肩を押してもらったことはあるが、平成27年12月1日から平成28年3月22日までの約4か月間に数回、1回当たり数秒間、肩を強く押してもらったという程度にすぎない。A部長は、原告と良好な人間関係が構築されていると認識しており、世間話をしながらコミュニケーションの一環として、原告に肩を押してもらったにすぎず、その状況に照らせば、これがパワーハラスメントに当たるとは到底いえない。 ⑸ 争点5(損害) 【原告の主張】原告は、違法な捜査や異動命令等により、肉体的・精神的苦痛を受けた。 これを慰謝するに足りる金額は、500万円を下らない。 【被告の認否・反論】争う。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前提事実に加え、証拠(後掲各書証、甲89、94、乙42ないし47、52、証人J、同K、同L、同M、同A、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ B3佐作成文書ア B3佐は、前提事実のとおり、平成26年12月24日、B3佐作成文書を作成した。B3佐作成文書は、「件名」欄に「統幕長訪米時のおける会談の結果概要について」、「提出年月日」欄に「26.12.24(水)」、「担当者」欄に「防衛計画部防衛課防衛班 B3空佐」とそれぞれ記載され、各頁の右上には、囲い文字で「取扱厳重注意」と記載されていた。 イ B3佐は、省OA端末を用いて、B3佐作成文書のデータを添付した電子メールを、原告を含む13名に送信した。 B3 記載され、各頁の右上には、囲い文字で「取扱厳重注意」と記載されていた。 イ B3佐は、省OA端末を用いて、B3佐作成文書のデータを添付した電子メールを、原告を含む13名に送信した。 B3佐作成文書のデータは、受信者から更に転送されるなどして、合計73名が使用する省OA端末に送信された。 ウ B3佐作成文書は作成途上の文書であり、完成後決裁を経た本件決裁後文書(甲16の2)が防衛省内で保管されている。 ⑵ 本件提示文書(甲1又は乙11)ア S議員は、前提事実⑷のとおり、平成27年9月2日、参議院の委員会において、本件提示文書を示して中谷大臣に対する質問を行った。 イ本件提示文書として、原告は甲第1号証を、被告は乙第11号証をそれ ぞれ証拠提出している。乙第11号証は、「件名」欄、「提出年月日」欄及び「担当者」欄の各記載並びに各頁の右上に囲い文字で「取扱厳重注意」と記載されている点は、本件決裁後文書と同じであるが、頁数は23頁(本件決裁後文書は22頁)である。また、決裁欄の「了」の文字の大きさが一部異なっている。甲第1号証は、これに加え、「担当者」欄が空欄になっている点も本件決裁後文書と異なっている。 ⑶ 中央警務隊による本件被疑事件の捜査の着手ア警務隊長は、平成27年9月2日、S議員による本件提示文書の国会への提示を受けて、中央警務隊のK3等陸尉(以下「K3尉」という。)に対し、内部資料とみられる議事録が流出した疑いがある旨の情報提供を行った。 イ K3尉は、直属の上司である中央警務隊長に、警務隊長からの情報提供の内容を報告した。 ウ中央警務隊長は、防衛省内部資料の窃盗疑い事案として捜査に着手することとし、K3尉に対し、捜査主任として捜査を実施するよう指示した。 エ K3尉は、捜 務隊長からの情報提供の内容を報告した。 ウ中央警務隊長は、防衛省内部資料の窃盗疑い事案として捜査に着手することとし、K3尉に対し、捜査主任として捜査を実施するよう指示した。 エ K3尉は、捜査員を集め、同月3日、捜査に着手した。 ⑷ 本件決裁後文書の「秘」指定ア取扱注意文書通達は、第2の1において、取扱い上の注意を要する文書等(文書、図画又は物件)のうち、防衛省の職員以外の者にみだりに知られることが業務の遂行に支障を与えるおそれのあるものについては「部内限り」、当該事務に関与しない職員にみだりに知られることが業務の遂行に支障を与えるおそれのあるものについては「注意」と表示することと定めている。 イ防衛省では、平成26、27年当時、関係者以外への電子メールやFAXでの送信等は認めず、情報公開請求においても全て開示されることのない資料として取り扱うべき文書について、「取扱厳重注意」と標記する取扱 いが行われており、B3佐作成文書にも「取扱厳重注意」と標記されていた。 ウ防衛大臣は、平成27年8月17日、海上自衛隊幹部学校及び統合幕僚監部が作成した資料の外部流出が明らかになったこと(本件とは別の案件)を契機として、「文書の取扱いに係る規則の遵守と情報の保全の徹底に関する防衛大臣指示」を発出した(乙53)。 エ本件決裁後文書には、B3佐作成文書と同様、「取扱厳重注意」と標記されていたが、平成27年9月3日、「省秘」に指定された(甲23)。 なお、防衛省防衛政策局調査課に所属していたNは、平成27年9月4日、同課の職員らに対し、「注意:「取扱厳重注意」標記の不使用について」と題する電子メールを送信し、同メールは、原告を含む同省の職員らに転送された。同メールは、本来「省秘」に該 は、平成27年9月4日、同課の職員らに対し、「注意:「取扱厳重注意」標記の不使用について」と題する電子メールを送信し、同メールは、原告を含む同省の職員らに転送された。同メールは、本来「省秘」に該当する文書について、「取扱厳重注意」との標記を付して作成、配布している疑いがあること、「取扱厳重注意」という標記は規則上存在せず、本来「注意」とすべきであることを指摘した上で、「取扱厳重注意」という標記の文書を作成、配布しないことを徹底するよう指示するものである。(乙36)⑸ 中央警務隊による被疑者の絞り込みア中央警務隊は、B3佐に対する取調べ等を行い、前記⑴イのとおり、B3佐作成文書のデータが73名の省OA端末に送信又は転送されたことを把握した。 イ中央警務隊は、平成27年9月末頃にかけて、原告を含め、B3佐作成文書のデータを受領した職員に対する取調べを行った(原告に対する最初の取調べ)。これらの取調べは、参考人に対する取調べであり、黙秘権の告知はなかった。(乙14)ウ中央警務隊は、平成27年10月13日から同年11月5日までの間、上記73名が使用する省OA端末のイベントログを収集し、分析した。ワ ードには、加工したワードファイルを「上書き保存」又は「名前を付けて保存」をせずに閉じようとした場合、保存アラートが表示され、その表示時刻等が自動的にウィンドウズのイベントログとして記録される機能があり、原告使用端末からは、平成27年7月31日午後7時32分に、B3佐作成文書のデータと思料される「261217 訪米概要(定稿).docx」について、保存アラートのイベントログが発見された。(乙22)エ中央警務隊は、平成27年11月6日、防衛省整備計画局情報通信課情報システム室長O(以下「O室長」という。 概要(定稿).docx」について、保存アラートのイベントログが発見された。(乙22)エ中央警務隊は、平成27年11月6日、防衛省整備計画局情報通信課情報システム室長O(以下「O室長」という。)から、原告使用端末一式の任意提出を受けて、内蔵ハードディスクのデータを複写した。その後、中央警務隊は、同日から平成28年1月22日までの間、削除データの復元処理及び解析を実施した。(乙3ないし5、15、16)中央警務隊のP2等陸曹(以下「P2曹」という。)は、平成27年11月17日付けで、中央警務隊長宛ての捜査報告書を提出した。同報告書には、原告使用端末について、平成27年7月31日午後7時32分に「261217 訪米概要(定稿).docx」というファイル名の文書ファイルについて保存アラートが表示されたこと及び同日午後7時33分に「予防接種調査.docx」というファイル名の文書ファイルがワードで開かれ、合計23頁の文書が印刷されたこと及び「261217 訪米概要(定稿).docx」の文書ファイルが削除済みであることなどが記載されている。P2曹は、同報告書内において、上記解析結果について、原告使用端末において、B3佐作成文書に何らかの変更を加えた上で「予防接種調査.docx」というファイル名を付けて保存し印刷した可能性が高いと結論付けている。(乙4)さらに、P2曹は、平成28年1月22日付けで解析結果報告書を中央警務隊長宛てに改めて提出した。同報告書には、原告使用端末について、平成27年7月31日午後7時28分にOSが起動されたこと、同日午後 7時31分に「261217 訪米概要(定稿).docx」がワードで開かれ、同日午後7時33分に閉じられたこと、同日午後7時33分に「予防接種調査.docx」のファイルが開かれ、印刷されている 7時31分に「261217 訪米概要(定稿).docx」がワードで開かれ、同日午後7時33分に閉じられたこと、同日午後7時33分に「予防接種調査.docx」のファイルが開かれ、印刷されていること、同ファイルが開かれた約1秒後に「261217 訪米概要(定稿).docx」のバックアップファイルが削除されていること、同日午後7時34分に「予防接種調査.docx」の文書ファイルが閉じられ、削除されたこと、両ファイルの保存場所が同じフォルダであったこと及び同日午後7時35分にOSがシャットダウンされたことなどが記載されている。P2曹は、同報告書内において、上記解析結果について、「予防接種調査. docx」は、「261217 訪米概要(定稿).docx」に何らかの変更を加えた上で、ファイル名を変更して保存したものである可能性が極めて高いと結論付けている。(乙5)オまた、中央警務隊は、平成27年12月14日までに、原告が同年7月31日午後7時19分に原告使用端末の置かれている執務室に入室し、同日午後7時35分に退室したことも確認した(乙26)。 ⑹ 平成27年11月18日の捜査アポリグラフ検査(乙23、30、37,38)中央警務隊のQ陸曹長は、平成27年11月18日の午後1時8分から午後4時58分までの間、中央警務隊の取調室において原告に対するポリグラフ検査を実施した。 原告は、上記検査に先立ち、中央警務隊長に対し、「私は、統幕内部資料流出事案のことについて、ポリグラフ検査を受けることに、私の自由の意思において承諾します」との記載のあるポリグラフ検査承諾書を提出した。 ポリグラフ検査の結果は、以下のとおりであった。 流出させた議事録の入手時期について、「昨年(平成26年)12月頃から1月頃ですか」という質問に対 との記載のあるポリグラフ検査承諾書を提出した。 ポリグラフ検査の結果は、以下のとおりであった。 流出させた議事録の入手時期について、「昨年(平成26年)12月頃から1月頃ですか」という質問に対して他の質問と異なる反応が認めら れた。 流出させた議事録の入手方法について、「紙媒体を入手しましたか」との質問に対して他の質問と異なる反応が認められた。 入手した議事録の枚数について、「23枚ですか」という質問に対して他の質問と異なる反応が認められた。 議事録を入手後に実施した作業について、「文字を入力しましたか」という質問に対して他の質問と異なる反応が認められた。 作業をした時期について、「今年(平成27年)の夏7月から8月頃ですか」という質問に対して他の質問と異なる反応が認められた。 議事録を持ち出した手段について、「紙媒体で持ち出しましたか」という質問に対して他の質問と異なる反応が認められた。 イ取調べ中央警務隊のL3等陸尉(以下「L3尉」という。)は、ポリグラフ検査終了後の午後5時23分から午後7時32分までの間、中央警務隊の鑑定室において、原告に対する取調べを行った(乙27の1、乙28)。 ウスマートフォンの任意提出L3尉は、上記取調べの終了後、原告に対し、スマートフォンの任意提出を求めたが、原告が当初拒否したことから、K3尉が引き続き原告に対する説得を行った。 その後、原告は、更衣室にスマートフォンを取りに行き、スマートフォンを操作してデータを一部削除した上で任意提出し、中央警務隊のR2等陸曹(以下「R2曹」という。)がこれを領置した(乙20、21)。 その後、中央警務隊のP2曹が、約90分かけてスマートフォン内のデータを抽出し、R2曹が原告にスマートフォ 警務隊のR2等陸曹(以下「R2曹」という。)がこれを領置した(乙20、21)。 その後、中央警務隊のP2曹が、約90分かけてスマートフォン内のデータを抽出し、R2曹が原告にスマートフォンを返却した。 原告は、同日午後9時55分頃、中央警務隊の施設から退出した(乙28)。 ⑺ スマートフォンの解析中央警務隊は、原告のスマートフォンから取得したデータを解析し、原告が、検索エンジンであるグーグルで、平成27年8月8日に「赤旗情報提供」、同月17日に「日本共産党情報」、「日本共産党情報提供」、「日本共産党所在地」等のキーワードによる検索を行った履歴を発見した(乙7)。 ⑻ 罪名変更中央警務隊は、ここまでの捜査で窃盗事件を裏付ける証拠が得られなかった反面、B3佐作成文書が「取扱厳重注意」の文書として管理されていたことから形式秘に該当し、その内容が、公開を前提としない統幕長と米国高官の会談の内容であることから実質秘に該当すると判断して、平成27年11月30日、罪名を自衛隊法違反(秘密漏えい罪)に変更した。 ⑼ 本件業務変更原告は、平成27年10月1日から業務支援のため計画部情報調整課への臨時勤務を命じられていたが、同年12月1日、臨時勤務終了に伴い統合情報第1課に復帰し、A部長のスケジュール管理等の業務に従事するようになった(前提事実⑴ウエ)。 ⑽ 原告の自宅官舎、実家及び勤務先に対する捜索差押えア中央警務隊は、平成28年1月26日、東京簡易裁判所から捜索差押許可状の発付を受け、同月30日、原告の自宅官舎、職場執務室及び実家に対する捜索を行い、自宅官舎において原告所有パソコン等の差押えを行った(前提事実⑸オ)。 イ中央警務隊は、平成28年2月1日から同 付を受け、同月30日、原告の自宅官舎、職場執務室及び実家に対する捜索を行い、自宅官舎において原告所有パソコン等の差押えを行った(前提事実⑸オ)。 イ中央警務隊は、平成28年2月1日から同年3月10日までの間、原告所有パソコンの解析を行い、以下の事実を確認した(乙9)。 平成27年8月2日午前1時10分に原告所有のスキャナを接続したことB3佐作成文書と類似する文書のサムネイル画像データ20件(うち 表紙と思われる2件は重複)が保存されていたこと 平成27年8月8日、使い捨てメールアドレス「ゲリラメール」の使用方法等が記載されたサイトを閲覧したこと、ブラウザ履歴等を削除したこと、ブラウザの操作履歴等を残さないインプライベートブラウズ機能を使用したこと 平成27年9月5日、削除したデータの復元を困難にする2種類のプログラムを実行したこと⑾ 原告に対する取調べア L3尉は、平成28年1月30日、同年2月1日ないし5日、同月15日及び同月16日、原告に対する取調べを行った。このうち、同月2日ないし5日及び同月16日の取調べは、昼休憩を挟んで終日行われた。(乙27の2ないし14、乙28)イ L3尉は、上記各取調べにおいて、原告に対し、平成27年7月31日の行動について質問した。これに対し、原告は、当日は会議室にいたので原告使用端末は操作していない、他にも職員がいたので誰かが原告使用端末を操作したのではないかと述べた。L3尉は、原告使用端末の操作には、原告の身分証とパスワードが必要である点を指摘したが、原告は、身分証は机上に置きっぱなしにしており、パスワードは付箋に書いたものをデスクマットに置いていたのでそれを見れば誰でも分かると述べた。 また、L3尉は、原告に対 ある点を指摘したが、原告は、身分証は机上に置きっぱなしにしており、パスワードは付箋に書いたものをデスクマットに置いていたのでそれを見れば誰でも分かると述べた。 また、L3尉は、原告に対し、平成27年8月1日ないし同月2日に原告所有パソコンにスキャナを接続したか否かについても質問したが、原告は、そのようなことはしていないと述べた。 ⑿ 本件異動命令ア原告は、平成28年3月23日、情報本部総務部総務課への異動を命じられ、C課長から平成29年3月15日に実施される情報本部20周年行事の構想資料の作成業務に従事するよう指示された(前提事実⑴オ)。 イその後、管理班管理係のE1尉が病気で入院することとなったため、原告は、平成28年11月頃から平成29年3月まで、G班長に命じられてE1尉が担当していた予算要求資料の作成業務に従事した。 2 争点1(捜査全般の違法性の有無)について⑴ 原告による文書流出の嫌疑の存否についてア前記1の認定事実のとおり、中央警務隊の捜査の結果、遅くともポリグラフ検査が行われた平成27年11月18日の時点では、本件提示文書とB3佐作成文書(及び本件決裁後文書)の内容には類似性が認められること、原告がB3佐作成文書のデータを原告使用端末で受信したこと、同年7月31日午後7時32分に「261217 訪米概要(定稿).docx」というファイル名の文書ファイルについて、ワードの保存アラート(加工したワードファイルを「上書き保存」又は「名前を付けて保存」をせずに閉じようとした場合に表示されるもの)が表示されたこと、同日午後7時33分に「予防接種調査.docx」というファイル名の文書ファイルがワードで開かれ、合計23頁の文書が印刷されたこと、本件提示文書の頁数も23頁であった 示されるもの)が表示されたこと、同日午後7時33分に「予防接種調査.docx」というファイル名の文書ファイルがワードで開かれ、合計23頁の文書が印刷されたこと、本件提示文書の頁数も23頁であったことが判明していたことが認められる。 これらの事実に照らせば、中央警務隊が、原告に対しポリグラフ検査を行った時点で、原告がB3佐作成文書のデータを加工してファイル名を「予防接種調査.docx」に変更し、これを印刷して原告作成文書を作成し、紙媒体で省外に持ち出したと疑っていたことには合理的な理由があり、原告に対する本件被疑事件の嫌疑はあったというべきである。 そして、原告使用端末で上記の各操作が行われた時間帯に原告が原告使用端末の置かれている執務室にいたことが平成27年12月14日までに判明したこと、平成28年1月22日付けの解析結果報告書(乙5)によって、原告使用端末の操作履歴がより詳細に明らかになったことなどから、捜索差押えや原告に対する連日の取調べが始まった同月末頃までに、原告 の本件被疑事件の嫌疑は強まっていたと認められる。 イこれに対し、原告は、各実況見分調書及び報告書の信用性を争い、中央警務隊が省OA端末のイベントログの収集を行った事実自体疑問であるとか、乙第5号証で解析されたデータが原告使用端末のデータを解析した資料か不明であるなどと主張する。 しかし、証拠(乙3ないし5、22、証人K、同M)によれば、上記認定事実のとおりにイベントログの収集が行われたことは優に認められる。 イベントログの収集及び解析の全過程が記録化されていないからといって、捜査自体が国賠法上違法になるわけではない。 また、中央警務隊は、O室長から原告使用端末の任意提出を受けているところ、任意提出書及び領置調書(乙15、16)に記載されたサービ ていないからといって、捜査自体が国賠法上違法になるわけではない。 また、中央警務隊は、O室長から原告使用端末の任意提出を受けているところ、任意提出書及び領置調書(乙15、16)に記載されたサービスタグ(1BFXVBX)と、実況見分調書(乙3)及び解析結果の報告書(乙4、5)に記載されたパソコンのサービスタグは一致しているから、解析の対象となった省OA端末の取り違えがあったとは認められないし、中央警務隊が、他の職員の使用端末について、あえて原告の使用端末であるとの虚偽の報告を行って、原告に罪を被せなければならない動機も見当たらない。他に、解析結果(乙4、5)が原告使用端末のものであることについて疑いを差し挟むべき事情もない。そして、原告使用端末の解析結果は前記アのとおりであり、原告がその時間帯に原告使用端末の置かれた執務室内に居たこと(このこと自体は原告も積極的に争っていない。)と相まって、原告に対する嫌疑を生じさせているのであって、原告の主張は採用できない。 原告は、原告所有パソコン及びスマートフォンの解析結果の信用性についても争うが、これらの証拠品については取り違えが起こる事態は考え難いし、上記のとおり、中央警務隊があえて虚偽の捜査報告をして原告に罪を被せなければならない動機も見当たらない。 原告は、原告の立会い及び同意がないまま原告使用端末の任意提出が行われたことは違法であるとも主張するが、原告使用端末の管理者は防衛省であり、前記1⑸エのとおりO室長が任意提出を行っているのであるから、原告使用端末の任意提出の過程にも違法性は認められない。 ウまた、原告は、防衛省等が本件提示文書の原本の存在を否定していることを理由に、存在しない文書の窃盗の嫌疑は存在しないと主張する。しかし、前記1⑵イのとおり、本件決裁後文書と本 められない。 ウまた、原告は、防衛省等が本件提示文書の原本の存在を否定していることを理由に、存在しない文書の窃盗の嫌疑は存在しないと主張する。しかし、前記1⑵イのとおり、本件決裁後文書と本件提示文書には相違点が認められ、同一の文書とはいえないところ、本件被疑事件(窃盗)の嫌疑の内容は、B3佐作成文書のデータ(又はこれを一部加工したデータ)を印刷し、紙媒体で持ち出した疑いがあるというものであったから、防衛省内に本件提示文書の原本が存在しないことと、本件被疑事件の嫌疑が認められることは、何ら矛盾しない。 エさらに、原告は、「予防接種調査.docx」のファイルが印刷された時間に執務室内にいたとされることについて、他にも職員がいたことや、自身は会議室で作業をしていたことを理由に、嫌疑を裏付ける事実ではないと主張し、これに沿う供述をする。 しかし、原告使用端末を操作するためには原告の身分証及びパスワードが必要であること(証人L、原告本人)からすれば、原告が操作したと疑うのが最も自然であり、身分証やパスワードを第三者が使用し得る状態で放置していたとの原告の弁解は不自然であって、原告に対する嫌疑を払しょくするに足りるものとはいえない。 ⑵ 自衛隊法59条1項所定の「秘密」該当性についてア自衛隊法59条1項にいう「秘密」とは、国家公務員法100条1項にいう「秘密」と同様に、非公知の事実であって実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいうと解すべきである(最高裁昭和53年5月31日判決・刑集32巻3号457頁参照)。 これを本件についてみると、B3佐作成文書の内容は、非公表を前提とするD統幕長と米国防総省高官との間の会談の概要であり(甲16の2)、出席者の個々の発言内容は、平成27年9月当時 7頁参照)。 これを本件についてみると、B3佐作成文書の内容は、非公表を前提とするD統幕長と米国防総省高官との間の会談の概要であり(甲16の2)、出席者の個々の発言内容は、平成27年9月当時、非公知の事実であったといえる。 そして、非公表を前提とした国防に関する会談の内容がみだりに公開された場合には、国際社会における我が国の信頼が損なわれ、諸外国との交渉上不利益を被るおそれがあるといえるから、B3佐作成文書に記載された出席者の個々の発言内容は、実質的に秘密として保護するに値するものと認められる。 したがって、B3佐作成文書の内容は、自衛隊法59条1項の「秘密」に該当するというべきである。 イこれに対し、原告は、B3佐作成文書(及び本件決裁後文書)について、当初「省秘」ではなく、規則にない「取扱厳重注意」とされて杜撰な取り扱いがされていたにもかかわらず、B3佐や決裁者らが懲戒処分を受けた事実はないことなどから、その内容は「秘密」に当たらないと主張する。 しかし、自衛隊法59条1項にいう「秘密」は、訓令に従い秘として指定されたものに限られず、例えば、取扱注意文書通達に従って「部内限り」又は「注意」の表示がされている文書など、外部にみだりに漏らすことが許されないものとしての外形を備えた文書は、上記「秘密」に該当し得ると解するのが相当である。 これをB3佐作成文書についてみると、その流出が疑われた当時、「取扱厳重注意」の表示がされていたところ(前記1⑴ア)、証拠(乙52、証人J)及び弁論の全趣旨によれば、自衛隊内部では、関係者以外への電子メールやFAXでの送信等を認めず、情報公開請求においても全て開示されることのない資料として取り扱うべき文書について、規則上の定めはないものの取扱注意文書通達の「 自衛隊内部では、関係者以外への電子メールやFAXでの送信等を認めず、情報公開請求においても全て開示されることのない資料として取り扱うべき文書について、規則上の定めはないものの取扱注意文書通達の「注意」より厳格な管理を要するという趣旨で 「取扱厳重注意」と標記する取扱いが慣例的に行われており、B3佐作成文書にもその趣旨で同標記がされていたことが認められる。 そうすると、流出が疑われた当時のB3佐作成文書も、その内容を防衛省の外部に漏らすことが禁じられている外形を備えていたというべきである。 以上によれば、B3佐作成文書が当初「省秘」に指定されていなかったことを理由に、その内容が自衛隊法59条1項の「秘密」に当たらないということはできない。 なお、B3佐作成文書が「取扱厳重注意」とされ、「省秘」に指定されていなかったことについて、B3佐や決裁者らが懲戒処分を受けたか否かは、B3佐作成文書の内容が自衛隊法59条1項の「秘密」に当たるか否かの判断を左右する事情とはいえない。 ウ次に、原告は、本件提示文書の内容から推認されるB3佐作成文書の内容は、条約や協定の締結を目的とする外交交渉の内容などとは異なり、儀礼的なものであり、既に自衛隊のホームページ等で公開されているから、秘密に当たらないと主張する。 この点、原告が公開されていると主張する情報は、TPY-2レーダーの概要(甲34ないし36)、防衛関係費の金額(甲37,38)、V-22オスプレイの配備(甲39)、F-35の整備拠点(甲41)及び中国軍機の異常接近(甲44)などである。原告は、本件提示文書(甲1又は乙11)の「会談概要」の中に、これらの項目に触れた記載があることをもって、B3佐作成文書の内容が既に公開済みであって「秘密」に当たらないと主張するものと などである。原告は、本件提示文書(甲1又は乙11)の「会談概要」の中に、これらの項目に触れた記載があることをもって、B3佐作成文書の内容が既に公開済みであって「秘密」に当たらないと主張するものと解される。 しかし、本件で「秘密」として保護すべきものは、非公表を前提とした会談における出席者の発言内容そのものであり、会談で取り上げられた話題事項に関して公表されている情報があるからといって、B3佐作成文書 に記載された出席者の発言内容の秘密性が失われるわけではない。また、実質的に秘密として保護すべきものの対象が条約や協定の締結を目的とする外交交渉の内容に限られると解すべき理由はなく、国防に関する会談の内容も、秘密として保護するに値するというべきである。 エさらに、原告は、本件提示文書(甲1又は乙11)とB3佐作成文書(及び本件決裁後文書)の内容はほぼ同一であると推測できるから、本件提示文書が公開されている以上、B3佐作成文書(及び本件決裁後文書)の内容は秘密に当たらないとも主張する。 しかし、本件で問題となるのは、本件提示文書(甲1又は乙11)が国会に提示された平成27年9月2日に先立って、その内容と類似するB3佐作成文書の内容を漏えいしたことの嫌疑の有無であるから、その後に本件提示文書が公開されたことを理由に当時のB3佐作成文書の内容が「秘密」に当たらないとする原告の上記主張は失当である。 オ原告は、B3佐作成文書の内容は、「違法秘密」に当たり、保護に値しないとも主張する。 しかし、B3佐作成文書の内容が「違法秘密」に当たると認めるに足りる証拠はないし、仮に「違法秘密」に当たる旨の原告の主張を前提とするとしても、捜査機関が、捜査段階で当該秘密が「違法秘密」に当たるか否かを判断することはできないから、 法秘密」に当たると認めるに足りる証拠はないし、仮に「違法秘密」に当たる旨の原告の主張を前提とするとしても、捜査機関が、捜査段階で当該秘密が「違法秘密」に当たるか否かを判断することはできないから、本件被疑事件の捜査を行ったことが国賠法上違法であったということはできない。 ⑶ 捜査全般の違法性の有無について原告は、安倍首相、中谷大臣及びD統幕長が口裏を合わせて訪米議事録の存在を否定する虚偽答弁をしたなどと主張するが、安倍首相らは、訪米議事録の存在自体を否定したわけではなく、本件提示文書と同一の文書が防衛省内に存在することを否定したにすぎない。そして、本件提示文書と本件決裁後文書の間には、前記1⑵イのような相違点が認められるのであるから、安 倍首相らの答弁が虚偽答弁に当たるとは認められない。 原告は、中央警務隊が、上記虚偽答弁を認識していることから、原告に本件被疑事件の嫌疑がなく、起訴できないことを認識し又は容易に認識し得たにもかかわらず捜査を行ったというべきであり、したがって捜査全般が違法であるとも主張するが、安倍首相らの発言が虚偽答弁に当たらないことは上記のとおりであり、原告には前記⑴のとおり本件被疑事件の嫌疑が認められるのであるから、中央警務隊が本件被疑事件の捜査を行ったことが違法であったとはいえない。 捜査全般の違法性についてのその他の原告の主張を勘案しても、本件被疑事件に係る捜査の違法を認めるに足りない。 3 争点2(個々の捜査の違法性の有無)について⑴ 平成27年9月の最初の取調べ前記1⑸イのとおり、中央警務隊が原告に対して行った平成27年9月の最初の取調べは、B3佐作成文書のデータを受信した73名に対する取調べの一環として行われたものであり、被疑者としてではなく、参考人としての取調べで り、中央警務隊が原告に対して行った平成27年9月の最初の取調べは、B3佐作成文書のデータを受信した73名に対する取調べの一環として行われたものであり、被疑者としてではなく、参考人としての取調べであったと認められるから、黙秘権の告知がなかったとしても違法とはいえない。 ⑵ ポリグラフ検査ア原告は、ポリグラフ検査に対する個別の同意がなかったと主張するが、原告は、ポリグラフ検査承諾書を提出したと認められ(前記1⑹ア)、この点に関する原告の主張は採用できない。 イ次に、原告は、ポリグラフ検査の際、休憩を与えられず、不自然な前傾姿勢を取らされたと主張し、これに沿う供述をするのに対し、被告はこれを否認する。 この点、ポリグラフ検査は、ポリグラフ検査技術認定証を有するQ陸曹長が行ったこと(前記1⑹ア、乙32)、正確な検査結果が得られなければ 意味がないことからすると、あえて原告が主張するような不自然な前傾姿勢を取らせたり、休憩を与えなかったりして、検査結果に疑義を生じさせる理由は見当たらない。原告の供述を裏付ける客観的な証拠もなく、原告の主張は採用できない。 ⑶ ポリグラフ検査後の取調べ原告は、ポリグラフ検査後の取調べで、検査結果を示されて犯人と決め付けられて自白を強要されたと主張し、これに沿う供述をするのに対し、被告はこれを否認する。 取調べを担当したL3尉は、取調べの際にポリグラフ検査の結果を原告に示したことはないと証言しており、取調べにおける原告の供述内容についても証言している。L3尉が証言した原告の供述内容は前記1⑾イのとおりであり、これは本件訴訟における原告の供述とも概ね一致しており、L3尉は、取調べの際、原告の言い分を十分に聴取したと認められる。 したがって、取調べの際 た原告の供述内容は前記1⑾イのとおりであり、これは本件訴訟における原告の供述とも概ね一致しており、L3尉は、取調べの際、原告の言い分を十分に聴取したと認められる。 したがって、取調べの際、犯人と決め付けられて自白を強要されたとの原告の主張は採用できない。 なお、原告は、当日の拘束時間が長かったことについても違法であると主張するところ、確かにポリグラフ検査の開始からスマートフォンの返却までの時間を併せれば相当長時間に及んでいるものの、取調べの時間自体は2時間程度であり(前記1⑹イ)、長時間の違法な取調べが行われたとは評価できない。 また、原告は、取調べの際、L3尉が鑑定室を施錠したと供述するが、L3尉はこれを否定する証言をしており、施錠の事実を認めるに足りる証拠はない。 ⑷ スマートフォンの任意提出原告は、中央警務隊にスマートフォンを提出したことについて、実質的な捜索差押えに当たると主張する。 しかし、スマートフォンの任意提出の経緯は、前記1⑹ウのとおりであり、原告は、任意提出書に署名押印し(乙20)、スマートフォンのデータを一部削除した上で提出したのであって、中央警務隊が強制的にスマートフォンを押収したとはいえず、原告の主張は採用できない。 ⑸ 実家の捜索原告は、実家の捜索は、差し押さえるべき物が発見されなかったことに照らしても探索的なものであり違法であると主張する。 しかし、原告は、単身者であり、官舎に居住していたのであるから、立寄先である実家について、「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合」(刑事訴訟法102条2項)であったといえる。したがって、結果として押収すべき物の発見に至らなかったとしても、実家に対する捜索が違法であったとはいえない。 物の存在を認めるに足りる状況のある場合」(刑事訴訟法102条2項)であったといえる。したがって、結果として押収すべき物の発見に至らなかったとしても、実家に対する捜索が違法であったとはいえない。 ⑹ 平成28年2月以降の取調べ原告は、平成28年2月以降、連日取調べを受けたと主張する。 平成28年2月頃の取調べの実施状況は前記1⑾アのとおりであり、違法と評価されるような日程で取調べが行われたとはいえず、原告の主張は採用できない。 ⑺ プライバシー侵害の主張本件被疑事件の内容や、捜査の端緒が共産党のS議員による本件提示文書の国会への提示だったことに照らせば、行動確認のためにIC乗車券(パスモ)の履歴を調べることや、原告と共産党の関係について捜査することが、違法であったとはいえない。 4 争点3(本件業務変更及び本件人事異動の違法性の有無)について⑴ 本件業務変更ア A部長の証言によれば、原告が、平成27年12月に統合情報第1課に復帰した後、元の部署ではなく庶務係に配属されたのは、原告に本件被疑 事件の嫌疑がかけられていたため、秘密に当たる情報に触れることは不適切であるとA部長が判断したためであったと認められる。当時、原告に本件被疑事件の嫌疑が存在したことは前記2のとおりであるからA部長が上記判断をしたこともやむを得ないといえ、本件業務変更によって原告に経済的な不利益は生じていないことなども併せ考慮すれば、A部長の上記判断に裁量権の逸脱があったとはいえない。 イ原告は、庶務係の業務内容であるA部長のスケジュール管理について、幹部職員である原告が行うには明らかに過小な業務であると主張し、これに沿う供述をする。 これに対し、A部長は、部長のスケジュール管理は重要な業務であり、スケジュールが変 スケジュール管理について、幹部職員である原告が行うには明らかに過小な業務であると主張し、これに沿う供述をする。 これに対し、A部長は、部長のスケジュール管理は重要な業務であり、スケジュールが変更されて予定が重複する場合には、業務内容に応じて優先順位を判断する必要があり、当時、1等空尉が他の業務と並行してこれを行っていたが不十分で、A部長自身が判断を行っていたため、幹部である原告に担当させることにしたもので、他の部でも1尉ないし2佐程度の職員が部長のスケジュール管理をしている例があると証言している。被告は、A部長の上記証言を裏付ける報告書(乙50)も提出しており、原告の庶務係における業務内容が明らかに過小であったとまではいえない。 ウ以上によれば、A部長が原告を庶務係に配置したこと及び庶務係でA部長のスケジュール管理の業務を行わせたことのいずれについても、裁量権の逸脱に当たるとはいえない。 ⑵ 本件異動命令原告は、本件異動命令について、それまで物品管理等の職務経験がなく、通常では考えられない異動であると主張するが、原告が未経験の部署に異動させられたからといって、直ちに人事権の行使について裁量権の逸脱があったとはいえない。 次に、原告は、席の配置について、係長の下の係員の更に下に配置された と主張し、これに沿う供述をするが、被告は、これを否認し、当初はH係長(3佐)が、H係長の異動後はG班長(3佐)が直接、原告を指揮監督していたと主張し、これに沿う内容のC課長の陳述書(乙47)を提出している。 原告が係員の更に下に配置されていたことを裏付ける証拠はなく、原告の主張は採用できない。 さらに、原告は、仕事を取り上げられたとも主張するが、原告の主張を前提にしても、記念行事の資料作成のほか予算要求に関す に配置されていたことを裏付ける証拠はなく、原告の主張は採用できない。 さらに、原告は、仕事を取り上げられたとも主張するが、原告の主張を前提にしても、記念行事の資料作成のほか予算要求に関する業務にも従事していたというのであるから、原告の仕事が取り上げられたとまでは評価できない。 5 争点4(A部長によるパワーハラスメントの有無)について⑴ 原告は、A部長に仕事を取り上げられたにもかかわらず、同人から「お前、仕事しているのか」とからかわれたと主張し、これに沿う供述をするが、A部長は、当該は発言をしたことを否認する証言をしており、原告の供述を裏付ける証拠もなく、当該事実を認めるに足りない。 ⑵ 次に、原告は、1週間に2、3回の頻度でA部長の肩を揉まされたと主張し、合計20回位肩を揉まされたと供述するのに対し、A部長は、2、3度肩を押してもらったことが2回あると証言する。A部長は、「肩を押してもらった」と表現しているが、要するに肩を揉んでもらったという趣旨と解されるので、原告がA部長から肩を揉むよう要求され、これに応じた事実自体は認められる。A部長は、原告との間に良好な人間関係があると思ってお願いしたとも証言しているが、上官と部下の関係にあることからすれば、原告が断りにくい立場にあったことは容易に想像でき、A部長が原告に肩を揉ませたことは不適切であったといわざるを得ない。 もっとも、本件では、肩を揉ませた時間や回数について供述が食い違っており、原告の供述を裏付ける証拠はないことに照らすと、国賠法上違法と評価され慰謝料請求権が発生するほどの行為があったと認めるには足りない。 6 結論以上によれば、争点5(損害)について検討するまでもなく、原告の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 さ が発生するほどの行為があったと認めるには足りない。 結論 以上によれば、争点5(損害)について検討するまでもなく、原告の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官市川多美子 裁判官田中邦治 裁判官瀧田航平
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