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昭和42(ネ)1705 全逓犠牲者補償金返還請求

裁判所

昭和45年4月30日 東京高等裁判所

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15,632 文字

主文 本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。事実 控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり附加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決三枚目裏五行目から六行目にかけて「昭和三九年九月一日到達」とあるを「昭和三八年九月一日到達」と訂正する)。第一、被控訴人の主張一、返戻を請求する金額の算定根拠は次のとおりである。(一) 被控訴人が控訴人に対して返戻を請求する金額は、被控訴人が犠牲者救済規定に基づいて控訴人に支払つた補償金の総額たる金二〇万五八三〇円の二五分の二一に相当する金一七万二八九七円であつてこれを36年改訂の細則第一五条(六)の(ホ)に「返戻の割合は計算基礎となつた支給年数から組合在籍年数又は支給理由が消滅するまでの分(一年未満は一年とする)を差引いた残余の年数による比率とし、六ケ月未満は切捨てる。」と定めてあることに基づく。すなわち、控訴人は昇給を延伸された結果、これに対する補償として二五年の支給年数による補償金を受けており、在籍年数は四年(端数切上)であつたから、二五から四を引いた二一が残余の年数となるところ、右に、「比率」というのは支給年数を分母とし残余年数を分子とする割合という意味であるから、その割合分の返還を被控訴人は求めるのである。(二) 右細則第一五条(六)の(ホ)の規定は、そもそも昇給延伸に対する補償金が35年改訂細則第一五条により一時金となつたことを前提に定められたものである。右35年改訂前においては、補償金はいわば五年分づつ一括前払となつており、五年毎に計算されて支 も昇給延伸に対する補償金が35年改訂細則第一五条により一時金となつたことを前提に定められたものである。 から、その割合分の返還を被控訴人は求めるのである。(二) 右細則第一五条(六)の(ホ)の規定は、そもそも昇給延伸に対する補償金が35年改訂細則第一五条により一時金となつたことを前提に定められたものである。右35年改訂前においては、補償金はいわば五年分づつ一括前払となつており、五年毎に計算されて支 も昇給延伸に対する補償金が35年改訂細則第一五条により一時金となつたことを前提に定められたものである。右35年改訂前においては、補償金はいわば五年分づつ一括前払となつており、五年毎に計算されて支払われていたが、右改訂によりその後は別表が設けられ、これによつて計算して延伸時より組合員が六〇才に達する迄の年数に対して一定額が一時に支払われるようになつた。従つて、右改訂後においては、補償金の性質が若干変り、損失の正確な補償というより、発生した事態に対して総体として一定の金額を支給するというかたちになつたのである。その内容は概していえば、支給年数の増大に伴つて年数当り金額は逓減していくというものであつた。このような性質の一時金であつたから36年の細則改訂で具体的返戻金額の計算方法として計算の困難を慮り前記の計算方法が採用されたのである。かようにして返戻額の計算方法は補償金が一括一時金であること及び一率、単純でなければ計算が余りにも煩雑となることから前記のとおり定められたのであつて、この計算規定は決して不合理なものではない。二、団結権の維持、強化をはかるという犠牲者救済制度の目的上、当然にその制度の設けられている団結体所属の構成員にのみ救済を与えるべきものであつて、この団結体を去り、他の労組に加入した者にまで救済を与えねばならぬ理由は毫もないこと、また、この救済規定が設けられた場合にのみ組合員は規約その他の定めるところによつて初めて補償を受けられるのであつて、組合員であれば常に組合から補償を受ける権利があるなどということの到底あり得ないことは、従来被控訴人主張のとおりであつて、これに反する後記第二の二の控訴人主張はすべて争う。控訴人主張のとおりとすれば、組合員は組合活動の過程において弾圧を受け被害を蒙つた場合、これが回復を使用者に要求すべき 控訴人主張のとおりであつて、これに反する後記第二の二の控訴人主張はすべて争う。控訴人主張のとおりとすれば、組合員は組合活動の過程において弾圧を受け被害を蒙つた場合、これが回復を使用者に要求すべきでなく、その前に先ず組合に対して補償を要求することになつて了い、これこそ、自らが一般的労働条件の維持向上その他経済的利益の拡大のために組合を結成して個人の利己的利益を離れて行動することを約していることを忘れ、労働組合という団体の本質を弁えぬ論である。 第二の二の控訴人主張はすべて争う。控訴人主張のとおりとすれば、組合員は組合活動の過程において弾圧を受け被害を蒙つた場合、これが回復を使用者に要求すべきでなく、その前に先ず組合に対して補償を要求することになつて了い、これこそ、自らが一般的労働条件の維持向上その他経済的利益の拡大のために組合を結成して個人の利己的利益を離れて行動することを約していることを忘れ、労働組合という団体の本質を弁えぬ論である。また組合脱退者についても、補償されるべきだとする控訴人の議論は、被控訴人を脱退してこれと反対の所謂第二組合に走つた控訴人の如き者ですら、一方において被控訴人に対する組合費や救済基金の積立義務を免れながら、他方において被控訴人に対する権利だけは将来とも失わないという、全く公平に反する結論を導くものである。被控訴人の規約その他の定めは、本件犠牲者救済の規定を含めて、全く組合員平等の原則に反するものではない。返戻規定自体は脱退防止を目的としたものではなく、結果として脱退を防止する心理的効果を随伴するかも知れぬが、我が労働法は団結強制を認めており、ユニオンシヨツプ協定の例でも明らかなように、脱退の自由が或る程度制約されるのは当然であつて、何ら違法ではない。三、後記第二の三の控訴人主張はすべて争う。規定第八条第二号にいう「組合員としての資格を有する間」とは、文字どおり、脱退、除名等により被控訴人の組合員としての資格を失わない限りということを意味するのであつて、これに反する控訴人の主張は全く合理的理由がない(被控訴人と郵政省との間にはユニオンシヨツプ協定は締結されていない)。要するに、36年改訂細則第一五条(六)の成立前後に関わらず、規定第八条第二号の解釈上、被控訴人組合に在籍して救済資金を受けていた者は 人と郵政省との間にはユニオンシヨツプ協定は締結されていない)。要するに、36年改訂細則第一五条(六)の成立前後に関わらず、規定第八条第二号の解釈上、被控訴人組合に在籍して救済資金を受けていた者は、脱退と同時に在籍期間の補償となるべき金額の部分を除いてその余を被控訴人に返還すべきであつたのであつて、改訂前に給付を受けたという理由で既得権を主張することは許されず、右改訂細則は規定第八条第二号のこの解釈を具体的に示したにすぎぬものであることは、従来被控訴人が主張したとおりである。四、被控訴人のなした争議行為は、そのいずれもが、憲法第二八条に保障された労働基本権に基づくものであり、それが仮りに形式的に公共企業体等労働関係法に違反するとしても、同法自体右憲法に違反する。 返還すべきであつたのであつて、改訂前に給付を受けたという理由で既得権を主張することは許されず、右改訂細則は規定第八条第二号のこの解釈を具体的に示したにすぎぬものであることは、従来被控訴人が主張したとおりである。四、被控訴人のなした争議行為は、そのいずれもが、憲法第二八条に保障された労働基本権に基づくものであり、それが仮りに形式的に公共企業体等労働関係法に違反するとしても、同法自体右憲法に違反する。そして、右闘争の結果、被控訴人の組合員は勿論のこと郵政労働者の社会的、経済的地位は高められ、かつ、その向上に重大な役割を果して来たことは公知の事実であり、本件補償金支給は右の闘争に加えられた弾圧によつて蒙つた組合員の損害を可及的速やかに補填して、組合員の動揺を防止し、よつてその団結を維持強化するためになされたものであるから、その給付をもつて不法原因給付とする後記第二の四の控訴人主張は理由がない。五、控訴人は、後記第二の五において、控訴人は被控訴人の指令に基づき強制的に別表(一)のとおりの争議行為に加担せしめられたと主張するが、被控訴人はその争議行為に控訴人を強制的に加担させたことはなく、却つて、控訴人は昭和三七年四月二日被控訴人から除名される迄、左のとおり被控訴人組合の指導的地位にあり、右別表(一)の争議行為の闘争を企画立案して、その指導に当つていた。すなわち、控訴人は、昭和二七年八月大阪中郵支部支部執行委員就任同二八年六月中央執行委員就任同三三年七月中央執行委員 、右別表(一)の争議行為の闘争を企画立案して、その指導に当つていた。すなわち、控訴人は、昭和二七年八月大阪中郵支部支部執行委員就任同二八年六月中央執行委員就任同三三年七月中央執行委員解任同三三年八月大阪中郵支部支部長同三六年八月右同を歴任し、その間、三四年七月、三五年七月、三六年六月に開催された各全国大会に代議員として、三四年一一月、三五年二月、同九月、三六年二月、同四月、同一一月、三七年二月に開催された中央委員会に中央執行委員として参加している。このようにして控訴人は自らそのいわゆる「違法争議行為」なるものに参画しているのであつて、争議行為が違法ならば、控訴人自身共同不法行為の主謀者の一人といわねばならぬ筈である。共同不法行為者の一人が当時自己が構成員であつた組合の争議行為が違法であつたからといつて、これに対して損害賠償請求権を有すると主張する如きは、全く支離滅裂の論である。 七年二月に開催された中央委員会に中央執行委員として参加している。このようにして控訴人は自らそのいわゆる「違法争議行為」なるものに参画しているのであつて、争議行為が違法ならば、控訴人自身共同不法行為の主謀者の一人といわねばならぬ筈である。共同不法行為者の一人が当時自己が構成員であつた組合の争議行為が違法であつたからといつて、これに対して損害賠償請求権を有すると主張する如きは、全く支離滅裂の論である。第二、控訴人の主張一、第一の一の被控訴人主張のように36年改訂細則第一五条(六)の(ホ)に基づき支給年数を分母とし残余年数を分子とした単純な比率による計算は不合理である。二、労働組合がその統制権に基づいて、本件におけるように指定した一部の組合員をして部分ストを行わしめ、それによつて当該組合員に対し、他の組合員に比して、特別なる不利益を蒙らせたような場合には、組合員の権利義務はすべて平等でなければならないという原則上、その不利益を補償するのは労働組合の本来的義務であり、そのための規定がなければ事実上も組合としての活動は不可能になるのであつて、しかるが故に、労働組合は、一般に、本件におけるような犠牲者救済規定を設け、全組合員は組合費を納入し、自他の救済資金をプールに蓄積し、損失の平等分担を図る一種の保険行為を行つているわけなのである 、しかるが故に、労働組合は、一般に、本件におけるような犠牲者救済規定を設け、全組合員は組合費を納入し、自他の救済資金をプールに蓄積し、損失の平等分担を図る一種の保険行為を行つているわけなのである。そして、本件控訴人の場合のように、昇給延伸という在職中の全期間に亘つてついて廻る不利益を蒙つた場合については、その補償が分割支給或いは一時金による打切補償のいずれの方法によつてなされるにしても、右のような犠牲者に対しては、その後の組合員の地位の喪失如何に関わらず、補償が行われねばならぬ筈のものであり、そのようにして不公平な犠牲を平等化することこそ公平に合致するものというべきである。しかるに、その者が組合を脱退したからといつて補償をしないとか、或いは、既になした補償の返戻をさせるとかの規定を設け、又はその旨の機関決議をなす如きは、組合員平等の原則に反するものといわねばならず、況してそれが本件のように組合員の脱退を防止する目的のものである場合は、団結権の自由を破るものであり、更に違法であるこというまでもない。 て不公平な犠牲を平等化することこそ公平に合致するものというべきである。しかるに、その者が組合を脱退したからといつて補償をしないとか、或いは、既になした補償の返戻をさせるとかの規定を設け、又はその旨の機関決議をなす如きは、組合員平等の原則に反するものといわねばならず、況してそれが本件のように組合員の脱退を防止する目的のものである場合は、団結権の自由を破るものであり、更に違法であるこというまでもない。三、被控訴人組合の規定第八条第二号によれば、「昇給延伸の補償についてはその理由発生の月より組合員としての資格を有する間、細則第一五条の方法により補償を行う云々」とあるが、右の条項は、制定当時、制定者において、組合員の任意脱退というようなことを予想しなかつたため、「組合員としての資格を有する間」とは、「郵政職員としての資格を有する間」ということと同義異語として表現したものである。それであるから、細則上、以前は五年毎に補償金を支給することとし、34年改訂後は、最初の五年後は、それから定年退職迄の間の全損失を計算してこれを一時に打切り補償することにしたものであるが、これらについては脱退による補償金返戻の規定など全く存在しなかつたことによつて明白で 訂後は、最初の五年後は、それから定年退職迄の間の全損失を計算してこれを一時に打切り補償することにしたものであるが、これらについては脱退による補償金返戻の規定など全く存在しなかつたことによつて明白である。このことは、被控訴人が、その36年改訂細則において初めて返戻規定を設けた理由として、自ら、「従前なかつた補償金受給者の原告脱退等の事態」が発生したためであるといつていることによつてよく裏書きされているものといわねばならない。従つて前記規定第八条第二号を本件返戻請求の根拠とする被控訴人の主張は理由がない。また、右のように脱退等の場合の補償金返戻に関する規定は36年改訂細則で初めて創設されたものであるから、それ以前に、そのようなことを予想もせずに組合の指令に従い犠牲者となり補償を受けた控訴人の如き者にまで右返戻規定が遡及効を有するとなす被控訴人の主張は暴論も甚だしい。右返戻規定が控訴人に効力を有しないことは、例えば保険約款を被保険者の不利益に変更しても、既に成立している個別の保険契約についてはその改正の効力が及ぶ筈のないことと同一である。控訴人が右36年改訂について代議員として出席し、これに賛成の意思表示をしたというようなことは、個人の意思をもつて行動するものではない代議員の性質上からして、右返戻規定の遡及効の存否に関しては全く問題にならないことである。 しい。右返戻規定が控訴人に効力を有しないことは、例えば保険約款を被保険者の不利益に変更しても、既に成立している個別の保険契約についてはその改正の効力が及ぶ筈のないことと同一である。控訴人が右36年改訂について代議員として出席し、これに賛成の意思表示をしたというようなことは、個人の意思をもつて行動するものではない代議員の性質上からして、右返戻規定の遡及効の存否に関しては全く問題にならないことである。況して、この改訂が改訂前に既に補償金を受給した者にまで及ぶか否かは明文もないため判断困難な事実であるから全く法律の門外漢である控訴人に対し、これを判断の上賛否の意思を表明することを要求することはできない。四、本件金員は被控訴人が控訴人らに対して、公共企業体等労働関係法第一七条に違反する争議行為を行わせるため、その結果として行われる懲戒処分により控訴人らの蒙るべき損失を償うとの約定に基づき給 ない。四、本件金員は被控訴人が控訴人らに対して、公共企業体等労働関係法第一七条に違反する争議行為を行わせるため、その結果として行われる懲戒処分により控訴人らの蒙るべき損失を償うとの約定に基づき給付されたものであるから、犯罪の教唆者が犯行により本犯の蒙るべき損失を償う場合と同様、不法原因のため給付されたものであるから、被控訴人がその返還を求めることは許されない。五、控訴人は被控訴人の指令に基づき強制的に別表(一)のとおりの争議行為に加担せしめられ、それによつて本件昇給延伸の処分を受け、よつて別表(二)のとおりの損失を蒙つたので、被控訴人に対してその損害賠償を請求する権利があるから、これをもつて本件請求債権と対等額において相殺する。第三、立証(省略) 理由 一、当事者間に争いのない事実は、原判決事実摘示二の1ないし7に記載のとおりである。二、労働組合は、その組合員が組合活動のために損失を蒙つた場合、これを補償することがあるが、かような場合、組合員が当該労働組合の規約その他の定めをまつまでもなく当然に補償を受ける権利を有するものと考えるべき根拠はない。このことは、労働組合の統制権に基づく指令により、一部の組合員がいわゆる部分ストを行いそのため当該組合員が使用者の処分により他の組合員に比して特別なる不利益を受けたような場合であつても同じであつて、このような一部組合員の不利益を補償することが、組合員平等の原則上、労働組合の本来的義務であるとする控訴人主張は肯認できない。 の定めをまつまでもなく当然に補償を受ける権利を有するものと考えるべき根拠はない。このことは、労働組合の統制権に基づく指令により、一部の組合員がいわゆる部分ストを行いそのため当該組合員が使用者の処分により他の組合員に比して特別なる不利益を受けたような場合であつても同じであつて、このような一部組合員の不利益を補償することが、組合員平等の原則上、労働組合の本来的義務であるとする控訴人主張は肯認できない。しかしながら、組織の大きな労働組合では、組合員が組合活動のために蒙つた損失をできる限り補償することにより、組合員間に統一、連帯の意識を確立するとともに、組合員をして安んじて組合活動ができるようにし、もつて団結の維持強化を図るという趣旨のもとに、いわゆる ために蒙つた損失をできる限り補償することにより、組合員間に統一、連帯の意識を確立するとともに、組合員をして安んじて組合活動ができるようにし、もつて団結の維持強化を図るという趣旨のもとに、いわゆる犠牲者救済制度なるものを設けていることが多く、その補償支給の限度、方法等は当該労働組合の財政その他の事情によつて定めるところに委ねられている。この制度のもとでは、組合員は、補償に充てられる救済資金の積立義務を負い、損失を受けた組合員は右資金から補償を受ける権利を有するわけであつて、その資金は、共済基金の性質を帯有する。以上は弁論の全趣旨から認められるところであり、また、一般に知られているところでもある。尤も、右制度における組合員の権利、義務は、その制度の趣旨からいつて、当該団結体の構成員、すなわち、組合員たる地位に基づくものと解されるから、組合員の地位を失つた後には本来、その者には右の権利、義務はない筈のものである。従つて、組合員が組合活動により昇給延伸というような在職中の全期間に亘つてついて廻る不利益を受けた場合であつても組合員の地位を失つたときは、当然には、右制度による補償を受け得るものといえないこと勿論であつて、これに反する控訴人の主張は理由がない。三、右のような犠牲者救済制度は被控訴人においても設けられている。すなわち、その規約第五八条は犠牲者救済制度を設ける旨定めた上、その運用を規定その他の機関決定に委ね(原判決添付別紙(A)ー以下原判決添付別紙(A)ないし(I)を単に「別紙(A)」というようにいうー及び成立に争いのない甲第一号証)、規定はその運用の大綱を定めるほか、運用の細目を決議機関によつて制定改廃する細則に委ねているのであつて(規定第八条第三〇条等。 者救済制度は被控訴人においても設けられている。すなわち、その規約第五八条は犠牲者救済制度を設ける旨定めた上、その運用を規定その他の機関決定に委ね(原判決添付別紙(A)ー以下原判決添付別紙(A)ないし(I)を単に「別紙(A)」というようにいうー及び成立に争いのない甲第一号証)、規定はその運用の大綱を定めるほか、運用の細目を決議機関によつて制定改廃する細則に委ねているのであつて(規定第八条第三〇条等。別紙(B)、(C)及び前掲甲第一号証)、被控訴人の組合員はこれらの規約、 定はその運用の大綱を定めるほか、運用の細目を決議機関によつて制定改廃する細則に委ねているのであつて(規定第八条第三〇条等。別紙(B)、(C)及び前掲甲第一号証)、被控訴人の組合員はこれらの規約、規定、細則の定めるところによつて権利を得、義務を負うものである。これらの定めのうち、規定第一六条、第一七条は救済資金を全組合員から徴収することにして、右制度が組合員の共済的制度の面を有することを示しているが、このことは、控訴人の主張するように組合員の地位を失つた後にもなお右救済資金から補償を受け得るものとする根拠になるものとは考えられない。そこで進んで、本件に関係のある昇給延伸についての定めを見るに、(一) その36年改訂の前後によつては、規定第八条第二号(別紙(B)、(C))の趣旨に変化があるものとは認められない。「補償」、「立替金」の用語の差も、それ自体では右規定に基づいて支給される金員の返還の要否に意味を有しないものと認められる。ところで、右規定第八条第二号は、昇給延伸に対する「補償」又は「立替金支給」による救済を「組合員としての資格を有する間」行う旨定めており、これは前記二のような犠牲者救済制度の趣旨に基づくものと認められる。換言すれば、その定めは、組合員としての資格を失つたとき以降については右の救済を行わないとする趣旨を当然内包しているものと見るべきである。控訴人は右の「組合員としての資格を有する間」なる文言を「郵政職員としての資格を有する間」ということの同義異語の表現であると主張するが、そのように解すべき合理的根拠はない。36年改訂前の細則(別紙(E)、(F)、(G))に返戻規定の定めがないこと及び当事者間に争いがないように細則上返戻規定が定められた36年改訂の以前には被控訴人の組合員なる地位を離れた者で規定ないし細則に基づい のと見るべきである。控訴人は右の「組合員としての資格を有する間」なる文言を「郵政職員としての資格を有する間」ということの同義異語の表現であると主張するが、そのように解すべき合理的根拠はない。36年改訂前の細則(別紙(E)、(F)、(G))に返戻規定の定めがないこと及び当事者間に争いがないように細則上返戻規定が定められた36年改訂の以前には被控訴人の組合員なる地位を離れた者で規定ないし細則に基づい の細則(別紙(E)、(F)、(G))に返戻規定の定めがないこと及び当事者間に争いがないように細則上返戻規定が定められた36年改訂の以前には被控訴人の組合員なる地位を離れた者で規定ないし細則に基づいて一旦支給を受けた補償金の返還を被控訴人から求められた者がないことも、いまだ以上の判断を左右するに足らない。してみれば、昇給延伸に対して補償金の前渡しを受けた組合員が、その後組合員の地位を失つたため、組合在籍期間に対する補償金相当分を超過する金員すなわち、組合員の地位喪失時以降に対する補償金相当分の支給を受けていることになつたときは、他に特段の定めのない限り、右超過分は保有し得ないものとしてこれを組合に返還すべきであることが、規定第八条第二号の解釈上、導き出せるところと解される。(二) 控訴人が本件で支給を受けた補償金のうち昭和三三年一二月一五日及び昭和三四年七月二〇日の各支給分が34年改訂前の細則第一五条(別紙(E)、成立に争いのない甲第四号証)に基づくものであることは、その支給時期と細則改訂の各経過に照らして明らかであり、また、昭和三五年一〇月七日の支給分が細則の35年改訂(別紙(G)、成立に争いのない甲第五号証)に基づく精算支給であることは当事者間に争いがない。右34年改訂前の細則と35年改訂細則の各一五条を比較すると、34年改訂前細則では五年毎に所定金額を五倍した金額を五年分として前渡しするものとしているのに対し、35年改訂細則では当該組合員が当初の延伸時より六〇才に達する迄の年数(支給年数或いは基礎年数)に対して同条の別表に定められた一定金額を一時金として一括前渡しすることにしている。そして、弁論の全趣旨と前出甲第一号証によると、右35年改訂細則第一五条の別表の定める一定金額は、中間利息控除の関係と考えられるが、支給年数の増大に伴 金額を一時金として一括前渡しすることにしている。 るものとしているのに対し、35年改訂細則では当該組合員が当初の延伸時より六〇才に達する迄の年数(支給年数或いは基礎年数)に対して同条の別表に定められた一定金額を一時金として一括前渡しすることにしている。そして、弁論の全趣旨と前出甲第一号証によると、右35年改訂細則第一五条の別表の定める一定金額は、中間利息控除の関係と考えられるが、支給年数の増大に伴 金額を一時金として一括前渡しすることにしている。そして、弁論の全趣旨と前出甲第一号証によると、右35年改訂細則第一五条の別表の定める一定金額は、中間利息控除の関係と考えられるが、支給年数の増大に伴つて、年度当りの金額が逓減していることが認められる。従つて、このような補償金の支給方法と支給金額、その算出方式の相違の故に、前記の昭和三五年一〇月七日の精算支給がなされたものと認められるわけであるから、これによれば、控訴人が支給を受けた全金額は右の精算支給後はすべて35年改訂細則に基づく一括前渡金の性質を有するに至つたものと認められる。(三) 36年改訂(別紙(H)、成立に争いのない甲第六号証)により、35年改訂細則第一五条について、新らたに、脱退、除名、特別組合員、その他支給の理由が消滅した場合を返戻事由とする同条(六)の返戻規定が設けられたのであるが、その他の補償金の性格、支給方法、支給金額算出方式等の点で変更がなかつたことは右細則上これを認めることができる(前掲甲第五、六号証。36年改訂細則では従前の「補償金」なる語に対して「立替金」なる語を用いているが、趣旨に変更はないものと認められる)。そして、原本の存在とその成立に争いのない乙第一号証と弁論の全趣旨によれば、右の返戻規定が定められたのは、当時、従前なかつた補償金受給者の被控訴人からの脱退等の事実が相次いで起つたので、組合員としての資格を有する間その損失を補償する旨定める規定第八条第二号の趣旨からいえば、このような者に右事実発生時以降に対する補償金相当分を保有させておく理由も必要もないから、これを返還させるべきであるとして、定められたものであることが認められる。これらのことと前記(一)で規定第八条第二号の解釈として示したところによれば、36年改訂細則第一五条(六)の返戻規定は、当時 、これを返還させるべきであるとして、定められたものであることが認められる。これらのことと前記(一)で規定第八条第二号の解釈として示したところによれば、36年改訂細則第一五条(六)の返戻規定は、当時の客観状勢上、規定第八条第二号の趣旨を具体的にその運用細目で示しておく必要から定められたものであり、その旨の明文はないけれども、当時既に35年改訂細則に基づいて一括前渡補償金の支給を受けていた者に対し、脱退等のその所定の返戻事由が発生した場合には、その返戻事由発生時以降に対する補償金相当分について、当然これを適用するとする趣旨で定められたものと認めるのが相当である。 第一五条(六)の返戻規定は、当時の客観状勢上、規定第八条第二号の趣旨を具体的にその運用細目で示しておく必要から定められたものであり、その旨の明文はないけれども、当時既に35年改訂細則に基づいて一括前渡補償金の支給を受けていた者に対し、脱退等のその所定の返戻事由が発生した場合には、その返戻事由発生時以降に対する補償金相当分について、当然これを適用するとする趣旨で定められたものと認めるのが相当である。右返戻規定のこのような適用を認めることは、犠牲者救済制度の本来の趣旨や規定第八条第二号の定めからすれば、右36年改訂前の受給者において予想し得なかつたところであつたなどとは到底いえないのであり、また、右改訂前後の補償金の性格、金額等に変化のないことに照らしても、公平に合致するところと考えられるから、この観点からも肯定することができる。以上の判断に反する控訴人の主張は採用できない。ところで、右返戻規定の定めるところによれば、その所定の返戻事由発生迄の年数を支給年数から差引いた年数(以下、残余年数と称す)と支給年数との比率による割合を返戻すべきものとされているから、支給総額に支給年数を分母とし、残余年数を分子とする分数を乗じて得た金額が残余年数に対する補償金相当分として返戻金額となる。尤も、35年改訂後の細則第一五条の別表に定める一時金としての一括前渡金は、前記のように中間利息を控除していると考えられるから、残余年数に対する補償金相当分の算定に当つては、右の中間利息控除の点を考慮に入れて計算することが、より正確ではあるが、このような困難な計算を返戻事由発生の都度行うことの煩雑である と考えられるから、残余年数に対する補償金相当分の算定に当つては、右の中間利息控除の点を考慮に入れて計算することが、より正確ではあるが、このような困難な計算を返戻事由発生の都度行うことの煩雑であることは明らかである。従つて、右返戻規定では、残余年数に対する補償金相当分を一律、簡単に算出できるように前記のような計算方式を定めたものと解されるのであつて、その計算方式は一概にこれを不合理なものということはできない。(四) 右返戻規定は前記のとおり返戻事由として脱退、除名、その他を挙げている。控訴人が被控訴人の組合員としての資格を失つたのが脱退によるか除名によるかは争いがあるが、そのいずれであるかによつて右返戻規定を控訴人に適用することに支障を生ずるものとは認められない。 律、簡単に算出できるように前記のような計算方式を定めたものと解されるのであつて、その計算方式は一概にこれを不合理なものということはできない。(四) 右返戻規定は前記のとおり返戻事由として脱退、除名、その他を挙げている。控訴人が被控訴人の組合員としての資格を失つたのが脱退によるか除名によるかは争いがあるが、そのいずれであるかによつて右返戻規定を控訴人に適用することに支障を生ずるものとは認められない。この点について、控訴人は、控訴人の組合員資格喪失は脱退によるものであるとの主張の下に、右返戻規定は脱退を返戻事由とする部分において脱退の自由を侵害するものであつて公序良俗に反し無効であると主張するが、その主張は採用できない。すなわち、労働組合からの組合員の脱退は、原則として自由であるべきであつて、脱退に対して特別な制約を設けることは、規約その他の機関決議によるものであつても、許さるべきことではない。しかし、本件返戻規定は脱退自体を制約するものではなく、ただ脱退する者は昇給延伸の補償として支給を受けた一括前渡金のうち脱退時以降に対する補償金相当分を返還する債務を被控訴人に対して負担する旨定めるにすぎない。そして、右補償金支給の根拠たる犠牲者救済制度の趣旨からしても、また、右趣旨に基づくものとしての本件の場合の規定第八条第二号の解釈からしても、組合員たる地位を失つた者は、本来、その失つた時以降については補償を受ける権利を有せず、従つて右時点以降に対する補償金相当分の支給を受けて ものとしての本件の場合の規定第八条第二号の解釈からしても、組合員たる地位を失つた者は、本来、その失つた時以降については補償を受ける権利を有せず、従つて右時点以降に対する補償金相当分の支給を受けているときは、これを保有し得ないものとして、返還すべきものと解されることは曩に説示したところであり、このように解することはその組合員の地位喪失が脱退による場合であつても、脱退の自由に対して特別な制約を認めることにはならない。従つて、本件返戻規定において脱退者が負担すべきものとされる債務は、もともとその支給を受ける権利のない補償金相当分についての返還債務であるということができる。そうであれば、右返戻規定の定めをもつて脱退の自由に対し特別な制約を付したものであるなどというべきものではない。尤も、この場合に返還すべき補償金相当分の算定については、より正確な計算方法が考えられることは前記のとおりであり、その方法によれば、右返戻規定の定める計算方式による算出額より少額になること明らかであるが、このことは、次の事情によれば、すなわち、右返戻規定の計算方式をもつて一概に不合理なものといえないこと前記のとおりである上、このような計算方式が定められたのが特別に脱退を防止する意図のもとになされたものと認めるに足る資料はなく、かつ、その計算方式は前記のようなその他の返戻事由にも共通なものとされていること等によれば、右返戻規定をもつて脱退に対し特別な制約を付したものと認めるに値するものではない。 が、このことは、次の事情によれば、すなわち、右返戻規定の計算方式をもつて一概に不合理なものといえないこと前記のとおりである上、このような計算方式が定められたのが特別に脱退を防止する意図のもとになされたものと認めるに足る資料はなく、かつ、その計算方式は前記のようなその他の返戻事由にも共通なものとされていること等によれば、右返戻規定をもつて脱退に対し特別な制約を付したものと認めるに値するものではない。なお、右返戻規定は、脱退を返戻事由とするに当り退職、死亡の場合(控訴人の場合がこれに当らないこと明らかである)を除いているが(別紙(H))、退職、死亡の結果としての脱退とその後も企業内にとどまる脱退とでは、同じく脱退といつても性質を異にするから、その取扱いを異にしても不合理と に当らないこと明らかである)を除いているが(別紙(H))、退職、死亡の結果としての脱退とその後も企業内にとどまる脱退とでは、同じく脱退といつても性質を異にするから、その取扱いを異にしても不合理とはいえないし、抑々、組合員をして安んじて団結体の一員として行動できるようにさせ、もつて団結の維持、強化を図るという犠牲者救済制度の趣旨からすれば寧ろ当然の措置であると解されるので、上記の判断を左右するに足らない。更に、40年改訂において36年改訂細則による返戻制度が廃止されたことも、それは被控訴人主張のとおりの理由によるものであることが認められるから(別紙(D))、これ亦上記の判断の妨げとはならない。四、以上の二及び三に説示したところを前記一の争いのない事実中原判決事実摘示二の1ないし6に該当する事実に照らせば、36年改訂細則第一五条(六)は控訴人に適用があり、被控訴人の第一次請求で主張のとおり、控訴人は、その支給を受けた補償金のうち金一七万二八九七円及びこれに対する昭和三八年九月二日以降その完済迄年五分の割合による損害金を支払う義務がある。五、控訴人は本件補償金支給は不法原因給付であるから、被控訴人がその返還を求めることは許されない旨主張する。しかし、たとい控訴人の昇給延伸の理由となつた組合活動が公共企業体等労働関係法第一七条に違反するとしても、その組合活動を理由になされた昇給延伸なる処分による損失について、これを補償する趣旨でなされた本件補償金支給は、社会の倫理観念に照らして、民法七〇八条にいわゆる「不法な原因」によるものとは認めるに足らないから、控訴人の前記主張は採用できない。 、被控訴人がその返還を求めることは許されない旨主張する。しかし、たとい控訴人の昇給延伸の理由となつた組合活動が公共企業体等労働関係法第一七条に違反するとしても、その組合活動を理由になされた昇給延伸なる処分による損失について、これを補償する趣旨でなされた本件補償金支給は、社会の倫理観念に照らして、民法七〇八条にいわゆる「不法な原因」によるものとは認めるに足らないから、控訴人の前記主張は採用できない。六、更に、控訴人は被控訴人に対する損害賠償債権による相殺を主張するが、控訴人が本件昇給延伸の理由となつた組合活動としての争議行為に控訴人主張の如く、被控訴人に 、控訴人の前記主張は採用できない。六、更に、控訴人は被控訴人に対する損害賠償債権による相殺を主張するが、控訴人が本件昇給延伸の理由となつた組合活動としての争議行為に控訴人主張の如く、被控訴人により強制的に加担せしめられたと認めるに足る証拠はない。却つて、当時控訴人は、被控訴人組合の中央執行委員として右争議行為の企画指導に当つたものであつて、控訴人が右争議行為に被控訴人により強制的に加担せしめられたというような関係にはなかつたことが控訴人本人の当審供述によつて認められるのであるから、これに反する前提に立つ控訴人の前記主張は採用の限りではない。七、右の次第であるから、被控訴人の本件第一次請求を認容し、これに仮執行宣言を付した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。よつて、民訴法三八四条、九五条、八九条により主文のとおり判決する。(裁判官岸上康夫横地恒夫田中永司)(別紙省略)

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