平成29年3月21日判決言渡平成28年(ワ)第12611号地位確認等請求事件 主文 1 原告Z1の地位確認請求に係る訴えを却下する。 2 被告は,原告Z1に対し,30万円及びこれに対する平成28年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告Z2が,被告に対し,被告戸田分室(埼玉県戸田市α×-13所在の株式会社Z3内)に勤務する義務のない地位にあることを確認する。 4 被告は,原告Z2に対し,30万円及びこれに対する平成28年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は被告の負担とする。 7 この判決は,第2項及び第4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 原告Z1が,被告に対し,被告戸田分室(埼玉県戸田市α×-13所在の株式会社Z3内)に勤務する義務のない地位にあることを確認する。 2 被告は,原告Z1に対し,50万円及びこれに対する平成28年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告Z2が,被告に対し,被告戸田分室に勤務する義務のない地位にあることを確認する。 4 被告は,原告Z2に対し,50万円及びこれに対する平成28年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,東京都文京区β所在の出版社である被告の従業員であり,労働組合の組合員である原告Z1及び原告Z2が,被告から,平成28年2月1日付けで,埼玉 県戸田市α所在の戸田分室で勤務するように命じられたこと(本件配転命令)について,これは就業場所の変更を伴う配転命令であるところ,被告には配転を命じる権限がないので,本件配転命令は法的根拠を欠き違法,無 田市α所在の戸田分室で勤務するように命じられたこと(本件配転命令)について,これは就業場所の変更を伴う配転命令であるところ,被告には配転を命じる権限がないので,本件配転命令は法的根拠を欠き違法,無効である,そうでなくとも,本件配転命令は裁量権の濫用に当たり,又は労働組合法(以下「労組法」という。)7条1号所定の不当労働行為に当たり違法,無効であって,不法行為を構成すると主張して,被告に対し,それぞれ,戸田分室に勤務する義務のない地位にあることの確認と,精神的苦痛の慰謝料50万円及びこれに対する本件配転命令発令の日である平成28年2月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 なお,被告は,原告Z1の地位確認請求に係る訴えについて,同原告は平成29年○月○日をもって定年(満61歳の誕生日の前日)に達し,退職したことから,戸田分室に勤務する義務のない地位にあることの確認を求める利益を喪失した旨を主張している。 1 前提事実以下の事実は,争いがないか,後掲証拠及び弁論の全趣旨から容易に認められる。 (1) 当事者関係ア原告ら原告Z1(昭和31年○月○日生の男性)及び原告Z2(昭和44年○月○日生の女性)は,いずれも,被告の従業員であり,Z4労働組合(以下「Z4労組」という。)及びZ5ユニオンの組合員である。両組合は,Z6労働組合連合会(以下「Z6労連」という。)に加盟している。 原告らは,平成28年2月1日当時,いずれも,営業を担当していた。 イ被告被告は,Z7部門(履歴事項全部証明書によれば「Z8部門」)の大学教科書の出版を主たる業務とする株式会社である。 一般従業員は,平成27年12月現在,組合員従業員3名(なお,このほかに, 継続雇用を求めて労働委員 全部証明書によれば「Z8部門」)の大学教科書の出版を主たる業務とする株式会社である。 一般従業員は,平成27年12月現在,組合員従業員3名(なお,このほかに, 継続雇用を求めて労働委員会において係争中の救済命令対象者である組合員3名がいる。),非組合員従業員2名(そのうち管理職は1名であり,もう1名は元組合員である。),アルバイト3名,嘱託3名であった。一方,役員は,取締役が5名,監査役が1名であった。 被告は,平成6年以降,社員の新規採用をしていない。 (2) 本件配転命令に至る経緯ア被告に対しては,Z4労組から,数次にわたって不当労働行為救済申立てがなされ,本件訴訟提起時点で,既に2件について都労委の救済命令が出ていた。その経緯は概略次のとおりである。 (ア) 協定の締結被告とZ4労組は,昭和52年1月28日,下記事項について合意し,協定を締結した。 記1.被告は従業員の雇用(形態を問わず)に関しては,事前にZ4労組に通知し,説明する。 2.組合員の人事(配置転換,昇降格,解雇,処分等)に関しては,被告は本人及びZ4労組に通知し,協議する。協議中は,被告は途中で協議を打ち切ったり,人事を実施したりしない。 3.被告は事業所の閉鎖,経営内容の改変等を行う場合は,事前にZ4労組に通知し,いずれか一方が必要と認めた場合は,事前に協議する。協議中は,被告は途中で協議を打ち切ったり,事業所の閉鎖,経営内容の改変等を実施したりしない。 (甲1)(イ) 協定の解約被告は,平成10年7月10日,Z4労組に対し,前記協定を同年10月11日をもって解約する旨通知した。 (甲2) (ウ) 訴えの提起Z4労組のZ9組合員は,被告から平成11年7月30日をもって解雇する旨の意思表示を受けたとこ 前記協定を同年10月11日をもって解約する旨通知した。 (甲2) (ウ) 訴えの提起Z4労組のZ9組合員は,被告から平成11年7月30日をもって解雇する旨の意思表示を受けたところ,同解雇は無効であるとして,平成12年4月,被告に対し,労働契約上の権利を有することの確認及び賃金等の支払などを求める訴えを提起した。 被告とZ9組合員は,平成14年1月28日,①被告は,前記解雇の意思表示を撤回し,Z9組合員と被告は,同組合員が平成11年7月30日をもって会社都合により退職したことを確認する。②被告は,Z9組合員に対し,本件解決金として900万円の支払義務があることを認め,平成14年2月15日限り,支払う等の内容の訴訟上の和解をした。 (甲3,4)(エ) 第1次不当労働行為救済申立事件Z4労組及びZ6労連は,平成22年8月20日,東京都労働委員会(以下「都労委」という。)に対し,委任団交拒否,継続雇用についての団交拒否及び非組合員との差別的取扱いの是正等を求めて,不当労働行為救済の申立てをした(平成22年不第80号)。 同事件については,労使双方が都労委によるあっせんを受け入れ(平成23年都労委第128号),平成24年4月13日,大要以下の内容の和解協定が成立した。 1.被告とZ4労組は,誠実に団体交渉を行うことによって健全な労使関係を形成することを相互に確認する。 2.被告は,Z4労組に対し,解決金を平成24年4月25日限り支払う。 3.被告は,Z10組合員及び原告Z2の基本給を平成24年4月支給分から,それぞれ3万8000円昇給する。 (甲5,6,10)(オ) 第2次不当労働行為救済申立事件Z4労組及びZ6労連は,平成24年7月11日,都労委に対し,Z11組合員 の継続雇用に関する非 れ3万8000円昇給する。 (甲5,6,10)(オ) 第2次不当労働行為救済申立事件Z4労組及びZ6労連は,平成24年7月11日,都労委に対し,Z11組合員 の継続雇用に関する非組合員との差別的取扱いについて不当労働行為救済の申立てをした(平成24年不第44号)。 都労委は,平成26年3月19日,Z11組合員の継続雇用に関する被告の措置を組合員であることを理由とする不利益取扱い及び支配介入であるとする救済命令を発した。 (甲7,8)(カ) 第3次不当労働行為救済申立事件Z4労組及びZ6労連は,平成25年12月27日,都労委に対し,被告の団交拒否について不当労働行為救済の申立てをした(平成25年不第117号)。 都労委は,平成27年10月6日,被告の団交拒否には正当な理由がないとする救済命令を発し,同命令は,同月29日,被告に交付された。 (甲9,10)(キ) 第4次不当労働行為救済申立事件Z4労組及びZ6労連は,平成26年12月25日,都労委に対し,Z12組合員の継続雇用に関する非組合員との差別的取扱いについて不当労働行為救済の申立てをした(平成26年不第130号)。 (甲10,11)(ク) 第5次不当労働行為救済申立事件Z4労組及びZ6労連は,平成27年12月25日,都労委に対し,被告の団交拒否と,Z13組合員の継続雇用に関する非組合員との差別的取扱いについて不当労働行為救済の申立てをした(平成27年不第116号)。 (甲12)イ平成28年1月25日には,第4次不当労働行為救済申立事件に関する審問が行われたところ,被告は,翌26日,原告らに対し,営業の分室を埼玉県戸田市に置き,原告らを同年2月1日付けでここに配転する旨の内示を行った。 (甲13の1・2) ウ被告 に関する審問が行われたところ,被告は,翌26日,原告らに対し,営業の分室を埼玉県戸田市に置き,原告らを同年2月1日付けでここに配転する旨の内示を行った。 (甲13の1・2) ウ被告は,同年1月27日と翌28日には,原告らに対し,それぞれ書面で,「本年2月1日より,本社の営業部の業務を埼玉県戸田市α所在の『Z3』の倉庫内に設けた,当社の『戸田分室』にて行います」と通知した。その具体的な勤務の内容は次のとおりであった。 (ア) 分室での業務は,「従前の営業部での業務と同様に,電話や,FAX などによる当社書籍の注文処理や,出庫や返品に関する問い合わせへの対応,書籍のピッキング業務を含む,取次や書店やお客様などへの出庫・発送や返品処理・入庫業務」である。 (イ) 出勤は,被告の営業日に,始業時刻までに東京都文京区β所在の本社に出社し,2階にあるタイムレコーダーにIC カードをタッチしたら,直ちに本社を出発して,午前10時までに戸田分室に到着するように移動する。 (ウ) 退勤は,戸田分室で午後4時まで上記(ア)の業務を遂行し,その後,午後4時に戸田分室を出て,午後5時に,IC カードで本社のタイムレコーダーに退社時間を記録して退社する。 (甲13の1・2)エこれに対し,Z4労組は,同年1月27日,被告に対し配転問題についての団交を同年2月1日より前に行うよう申し入れたが,被告は応じなかった。 (甲25)オ被告は,同年2月1日付けで,原告らに対し,埼玉県戸田市α×-13所在の株式会社Z3(以下「Z3」という。)の倉庫内に設けた営業部の分室(以下「戸田分室」という。)への配転を命じた(以下「本件配転命令」という。)。 (甲25)(3) 原告らの勤務状況東京都文京区β所在の被告本社社屋から埼玉県戸田市α所在の けた営業部の分室(以下「戸田分室」という。)への配転を命じた(以下「本件配転命令」という。)。 (甲25)(3) 原告らの勤務状況東京都文京区β所在の被告本社社屋から埼玉県戸田市α所在の戸田分室までは,公共交通機関を利用して片道約1時間を要する。 戸田分室は,Z3の事務所とは異なり,外気を壁や扉で遮断する措置が講じられ ていない倉庫の一角を作業場としたスペースである。この作業場は,原告らが平成28年3月10日に調査した際には,暖房の近くでも摂氏14度という室温であり,原告らからの申し出を受けて,被告においてヒーターを設置した経緯がある。 (甲14,15,25,26,原告Z1,原告Z2) 2 争点(1) 被告は原告らに戸田分室勤務を命じる権限を有するか【被告の主張】原告らの出退勤は本社で行われ,実質的な職務内容の変更もないことから,本件配転命令は講学上の配置転換(配転)ではないと考えるが,これが勤務地の恒常的変更として配転と評価されるとしても,被告の就業規則には,13条で「会社は,社員の学識・技能・適性・経験・健康・勤怠・希望などを考慮して業務分担を定め資格職および異動の決定を行う」との定めがあり,15条には「他の職場」への応援についての定めも置かれ,従業員の配置変更を予定しているから,本件配転命令は個別的同意がなくても業務指示としてなし得る就業規則上の「異動」に当たる。 したがって,被告は原告らに対し戸田分室での勤務を命じる権限を有している。 【原告らの主張】配転とは従業員の配置換えをいい,職務内容又は就業場所が相当の長期にわたり変更されることをいうところ,本件配転命令において,原告らの就業場所は本社ではなく戸田分室とされているのであるから,これが配転であることは明白である。 ところで,そも 就業場所が相当の長期にわたり変更されることをいうところ,本件配転命令において,原告らの就業場所は本社ではなく戸田分室とされているのであるから,これが配転であることは明白である。 ところで,そもそも,使用者の配転命令権が認められるのは,労働契約上,その権限が使用者に留保されている場合であり,この配転命令権の留保は,通常,就業規則や労働協約に明文の規定が置かれ,ここに根拠が求められる。 しかし,被告とZ4労組の間には,配転命令権を被告に留保する労働協約は存在しない。また,被告の就業規則には,13条で,被告が従業員の業務分担や資格職及び異動の決定を行う旨の定めがあるものの,就業場所の変更を行う配転の権限を被告に留保する旨の規定は存在しない。この点,被告は平成11年にZ14分室を 閉鎖しており,平成18年の就業規則作成当時,本社以外の営業所・就業場所は存在しなかったのであって,就業規則13条の「異動」は本社内での配置や職務内容の変更をいう。また,就業規則15条では「他の職場」への応援について定められているが,これも本社内の別部署のことであり,被告が今般用意した戸田分室のことではない。たとえ労働契約で就業場所を限定していなくとも,本社以外の就業場所は予定されておらず,就業規則の規定も本社内での異動を想定したものでしかあり得ない。被告の就業規則は本件配転命令の根拠とはならない。 したがって,被告は本件配転命令を行う権限を有しておらず,同命令は法的根拠を欠き,違法,無効である。 さらに,判例法理(最高裁昭和61年7月14日第二小法廷判決・裁判集民事148号281頁)によっても,使用者の配転命令権の法的根拠としては,就業規則・労働協約上の定めがあるだけでなく,配転の実態があること,勤務地限定・職種限定合意がないことを要するところ, 裁判集民事148号281頁)によっても,使用者の配転命令権の法的根拠としては,就業規則・労働協約上の定めがあるだけでなく,配転の実態があること,勤務地限定・職種限定合意がないことを要するところ,相当期間にわたる就業場所の変更を伴う配転の実態は存在しないのであるから,被告においては,就業場所の相当期間の変更を命ずる権限,配転命令権自体が発生していない。 したがって,判例法理からみても,本件配転命令は法的根拠を欠き,違法,無効である。 (2) 本件配転命令は裁量権の濫用に当たるか【原告らの主張】使用者の人事権の行使としての配転は恣意的に行われてはならないのであって,業務上の必要性がない場合や,不法な目的に基づく場合,配転により労働者が被る不利益が通常甘受すべき程度を著しく超えているような場合には,権利濫用として無効になるというべきである。 この点,原告らが戸田分室で行う業務は従前と同じであり,本社社屋から片道1時間強かかる戸田分室でわざわざ行う意味はない。むしろ,被告が原告らに命じたのは,毎朝定時(午前9時)に本社社屋に出社して,タイムカードを打刻してから 戸田分室に向かい,同所で作業後,定時(午後5時)には本社社屋に戻る,ということであり,戸田分室への往復の時間(原告らの調査によれば2時間強)は業務が処理できず,停滞することになって,一見して不合理である。戸田分室に原告らを配転する業務上の必要性は全くない。 また,被告は,不当労働行為救済命令が重なる中で,反省することなく,むしろ態度をより硬化させ,本社社屋から組合員がいなくなるように本件配転命令をしたのであって,これは不法な目的に基づく。 そして,原告らは,外気を壁や扉で遮断するような措置が講じられていない倉庫の一角という,およそ事務作業をするには不適切 がいなくなるように本件配転命令をしたのであって,これは不法な目的に基づく。 そして,原告らは,外気を壁や扉で遮断するような措置が講じられていない倉庫の一角という,およそ事務作業をするには不適切な場所に押し込められ,ここに毎日,本社に立ち寄ってから片道1時間強かけて出勤しているのであり,このような扱いは他の誰も受けていない。戸田分室の作業場は冬季には底冷えがし,電源の容量が小さいため十分な暖房器具もなく,原告らが平成28年3月10日に調査した際には,室温は暖房の近くでも摂氏14度しかなかったのであって,このような場所で終日事務作業をさせるのは,意図的に心身の健康を害そうとする人権侵害行為ともいうべきものである。原告らの受けている不利益は,配転により通常甘受すべき程度を著しく超えている。 したがって,本件配転命令は裁量権を濫用したものとして違法,無効である。 【被告の主張】前述の通り,物流を含めた営業部門の統合による業務の効率化という会社の業務上の必要性がある一方で,従業員の業務に具体的な変更はなく,通勤時間自体にも変更はないし,業務に直接従事する労働時間自体はむしろ減ることから,本件配転命令は,労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものではない。就業環境については,今後とも必要な配慮を行う予定である。 したがって,本件配転命令が裁量権を濫用したものとして違法,無効になることはない。 (3) 本件配転命令は不当労働行為に当たるか 【原告らの主張】被告においては,労働組合を嫌忌した労務対策が長年とられており,特に近年,不当労働行為救済の申立てが続いている。被告の態度の特徴は,①一時金や賃上げ要求に対して誠実に回答せず,財務資料も示さず,団交も拒否し続けるという組合拒否の態度を一貫し 長年とられており,特に近年,不当労働行為救済の申立てが続いている。被告の態度の特徴は,①一時金や賃上げ要求に対して誠実に回答せず,財務資料も示さず,団交も拒否し続けるという組合拒否の態度を一貫してとり,②定年に関して,非組合員については,形式上取締役として,従前と同等の労働条件で本社社屋での勤務として再雇用する一方で,組合員については,低劣な労働条件で本社社屋外での勤務となることに応じない限りは継続雇用しない方針をとり,本社に組合員がいないようにしようとしていることである。また,被告は,既に2件の不当労働行為救済命令を受けているところ,そのうちのZ11組合員に対する差別的取扱いの件(第3次不当労働行為救済申立事件)と同種事案であるZ12組合員に対する継続雇用差別の件(第4次不当労働行為救済申立事件)について審問が終了し,近く救済命令が出ることが予想されることから,被告が一層窮地に立たされる前に組合員に自ら退職を選択させようとして本件配転命令を行ったことは容易に推測される。すなわち,本件配転命令は,本社社屋から組合員を追い出し,嫌がらせをする不当な目的で行われたものといえる。 そして,原告らは,組合員であることを理由に,本社社屋から電車とバスを乗り継いで1時間余りかかる戸田分室へと追いやられ,そのため,円滑な業務遂行にも支障を来している。 したがって,本件配転命令は,原告らに対し,組合員であることを理由に不利益取扱いをした不当労働行為(労組法7条1号)である。 これに対し,被告は,これまで本社で行っていた営業部の業務を就業時間が減る戸田分室に敢えて移す合理性や,戸田分室で就業することによる原告らの移動時間の増大,就業環境の劣化,本社と分断されることによる業務遂行上の不具合,その結果としての顧客サービスの低下といった事態を生じさ 田分室に敢えて移す合理性や,戸田分室で就業することによる原告らの移動時間の増大,就業環境の劣化,本社と分断されることによる業務遂行上の不具合,その結果としての顧客サービスの低下といった事態を生じさせてまで戸田分室を設けた理由について説明できていない。 【被告の主張】 本件配転命令には,次のような業務上の必要性があり,不当労働行為ではない。 一般に,書籍の在庫管理の全てを出版社自身が行うことはなく,一部を外部に委託している。 被告では「出版VAN」を採用しており,会社の行う作業としては,取次からの注文を受け付けて,伝票に起票し,これを倉庫会社に送って発送指示を出し,倉庫会社から送られてくる配送伝票を管理する。また,返品書籍については,倉庫会社から送ってもらい,分類・処分する。このほかに,取次や書店,大学からの質問や確認の電話受け等の営業付随業務があり,また,数少ない直接販売に対応することもあった。 Z13組合員の定年退職により,営業部員は2名となったが,被告は人員補充を考えておらず,それに対し,組合からは労働強化であるとの指摘があった。そこで,在庫管理システムの合理化と労働強化との指摘に対応すべく,出版VAN による在庫管理システムを導入し,在庫管理をZ3の外注に一本化し,これによりZ3内に会社の分室を設けて,会社の営業業務の機能を集約すべきであるとの経営判断をした。 この点,営業部員2名のうち,原告Z1が平成29年はじめには定年を迎えることから,出版VAN の導入は必須であり,分室業務に予め慣れてもらうことも考えて,早急に導入することとしたものである。 また,これにより,これまで非常に不合理であった,一度本社に返品させ,返品された書籍を改めて倉庫会社に戻すという,二度手間三度手間を省くことができるという合理 急に導入することとしたものである。 また,これにより,これまで非常に不合理であった,一度本社に返品させ,返品された書籍を改めて倉庫会社に戻すという,二度手間三度手間を省くことができるという合理性もあった。 なお,本社内には,営業部員が営業部から外れても他に従事させる業務がなく,以上は,営業部員には引き続き営業業務に従事させることを前提とした判断である。 (4) 本件配転命令は不法行為を構成するか【原告らの主張】前述したとおり,本件配転命令は不当労働行為(労組法7条1号)であり,その実情はいじめといってもよく,公序良俗に反する不法行為である。 本件配転命令により原告らは日々精神的苦痛を被っている。この状態が続けば,いずれ心身の健康を害するおそれも強い。 原告らの精神的苦痛を慰謝するには,本件訴訟提起時までに限っても,少なくとも各50万円が必要である。 【被告の主張】前述したとおりであるから,原告らの主張は否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 被告は原告らに戸田分室勤務を命じる権限を有するか(争点1)について(1) 配転とは従業員の配置換えのことをいい,職務内容又は就業場所が相当期間にわたり変更されることとして理解されているところ,本件配転命令は,職務内容は基本的に変わらないものの,就業場所を戸田分室に変更した上で,その状態を継続させることを予定したものであり,配転に当たるというべきである。 しかるところ,被告の就業規則(乙3)は,「会社は,社員の学識・技能・適性・経験・健康・勤怠・希望などを考慮して業務分担を定め資格職および異動の決定を行う」との定め(13条)を置いており,「他の職場」への応援についての定め(15条)も置いていることからすれば,被告は,就業規則上,就業場所の変更を伴った して業務分担を定め資格職および異動の決定を行う」との定め(13条)を置いており,「他の職場」への応援についての定め(15条)も置いていることからすれば,被告は,就業規則上,就業場所の変更を伴った従業員の配置変更を予定し,一般的に配転を命じる権限を有しているものと解される。 したがって,被告は原告らに対し戸田分室での勤務を命じる権限を有していると認められる。 (2) これに対し,原告は,被告の就業規則が制定された当時,分室は存在せず,また,分室への配転命令が発せられたことはなかったから,この就業規則上,就業場所の変更を伴った従業員の配置変更は予定されておらず,同就業規則をもって本件配転命令の法的根拠とすることはできない旨主張する。 しかし,そもそも,就業規則とは,効率的な事業経営のため,労働条件を公平・統一的に設定し,かつ職場規律を規則として設定しておくものであり,その制定後 の様々な事態に適時適切に対応できるよう,ある程度一般的抽象的な定めを置く形になるのが通常であって,当該就業規則制定時に分室が存在し,その旨の定めが明記されていたか否か,分室への配転命令が発せられたことがあるか否かといった事情によって分室への配転命令権の有無が直ちに左右されるものと解すべきではない(最高裁昭和61年7月14日第二小法廷判決・裁判集民事148号281頁は,「全国に十数かの営業等を置き,その間において従業員,特に営業担当者の転勤を頻繁に行って」いることを認定した上で配転命令権の存在を認めているが,このような事実が認定できなければ配転命令権の存在を認めない旨判示しているわけではない。)。 したがって,原告の主張は採用することができない。 2 本件配転命令は裁量権の濫用に当たるか(争点2)について(1) はじめに配転は,転 存在を認めない旨判示しているわけではない。)。 したがって,原告の主張は採用することができない。 2 本件配転命令は裁量権の濫用に当たるか(争点2)について(1) はじめに配転は,転居を伴わなくとも,職員の生活に相応の影響を及ぼすことがあるから,被告は前記権限を無制限で行使できるわけではなく,配転命令に業務上の必要性が存在しない場合,あるいは,業務上の必要性が存在するにしても,当該配転命令が不当な動機や目的をもってなされたり,職員に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるなど,特段の事情があり,その権限の行使が権利の濫用に該当する場合には,当該配転命令は無効というべきである(最高裁昭和61年7月14日第二小法廷判決・裁判集民事148号281頁参照)。 そこで,以下,前記前提事実のほかに,甲第25号証,第26号証,第28号証,第29号証,乙第4号証,証人Z15の証言,原告ら各本人尋問の結果及び後掲証拠(一部は認定事実の後に掲記する。)並びに弁論の全趣旨を併せ検討する。 (2) 業務上の必要性等に関する検討ア原告らが戸田分室で行っている業務は,それらが業務の全てであるかどうかは別にして,基本的に従前と同様の内容であるから,それらを敢えて本社社屋から片道約1時間かかる戸田分室まで赴いて行う意味があるのか,大いに疑問がある上, 被告が命じた勤務形態が,午前9時に本社社屋に出社し,タイムカードを打刻してから戸田分室に向かい,同所で作業後,午後5時には本社社屋に戻るということであり,戸田分室への往復に要する2時間程度の間は業務が処理できず,停滞を余儀なくされることも勘案すれば,本件配転命令は明らかに不合理であり,戸田分室に原告らを配転する業務上の必要性があるとは容易に認めることはできず,むしろ,こ 2時間程度の間は業務が処理できず,停滞を余儀なくされることも勘案すれば,本件配転命令は明らかに不合理であり,戸田分室に原告らを配転する業務上の必要性があるとは容易に認めることはできず,むしろ,このような配転には業務上の必要性がないという推定が働くというべきである。 イこれに対し,被告は,業務を合理化する必要性についてるる主張するが,その理由とされる売上の減少傾向というところからして,被告の主張に沿った証拠としては同社取締役Z15の証言があるにとどまり,客観性のある的確な裏付け証拠は見当たらない。最近は書籍の売れ行きが悪いことは広く知られているので,被告も同様の状態にあると一応は推認できるとしても,第3次不当労働行為救済命令申立事件の救済命令で判示されているように,「一般的に,…会社の経営状況の実態を把握し会社回答について検討するためには,営業利益や人件費の比率など,…会社回答の是非を検討するのに必要な経営状況の実態を示す数字等が開示されることが必要であり,売上高の推移を示すだけでは不十分」(甲10〔24頁〕)であって,被告の主張は容易に採用することができない。そして,この点を一旦措くとしても,そのような状況の下でどのように対処するのか,被告のしたように物流倉庫に営業部員を配置転換し,同所において営業部の業務を行わせるべきかどうかは別論であり,前述のとおり,むしろ業務上の必要性がないことが推定される本件配転命令について,その必要性を肯認するには十分な裏付けを要するところ,本件のように,版元の営業部員が倉庫会社に常駐するということが一般的に行われていると認めるに足る的確な証拠はない。被告は,株式会社Z16がそのようなことをしていると主張し,証人Z15も同旨の証言をするが,そのことを裏付ける的確な証拠はなく,かえって,そのようなことはし れていると認めるに足る的確な証拠はない。被告は,株式会社Z16がそのようなことをしていると主張し,証人Z15も同旨の証言をするが,そのことを裏付ける的確な証拠はなく,かえって,そのようなことはしていないし,類例も知らない旨の株式会社Z16営業部Z17作成の陳述書(甲27)が提出されている。 ウ(ア) また,被告は,出版VANを本格導入していることにより営業部の業務 は大きく減少し,受注の受付や問合せへの対応,倉庫会社(Z3)への配送指示と配送伝票の管理,返品書籍の分類等しか残らないから,倉庫会社(Z3)内に設けた戸田分室で業務を行うのが合理的である旨を主張するが,以下のとおり,採用し難く,この認定判断を左右するに足る的確な証拠はない。 (イ) 出版VANは,一般に,「書店から出版社に直接注文されたデータを出版VANを介して取次会社に送信するシステム」であると説明される(甲30,乙1)。 これは,受発注のデータを出版VANにおいて一元的に管理し,電話やFAX等でやり取りしていた注文や問合せに関する情報を集めてコンピュータに入力し,管理する手間を省いたり,共通のデータを閲覧できるようにすることで,出版社と取次会社の間で情報の行き違いが起こらないようにしようとするものである。そして,このシステムによれば,在庫のある書籍で,情報の収集が必要なく,請求日や掛値(取次や書店への卸値)に変更がない場合には,取次や書店との電話やファックスによるやり取りを減らすことができるが,被告の場合には,採用品(教科書)が出庫のほとんどを占めており,請求日が他の出版社より複雑で,取次だけでなく書店への直送出庫等もあるし,株式会社Z4(被告)の伝票ではなくZ4販売株式会社の伝票を作成しなければならない処理もあるので,出版VANによって処理できる注文は限ら 出版社より複雑で,取次だけでなく書店への直送出庫等もあるし,株式会社Z4(被告)の伝票ではなくZ4販売株式会社の伝票を作成しなければならない処理もあるので,出版VANによって処理できる注文は限られている。実際に,出版VANだけで受注を賄っている会社はなく,教科書等はファックス,電話や注文スリップで受注しているといわれている。また,3月は,採用品(教科書)の注文が集中する繁忙期に当たるところ,平成28年3月の一か月間でみると,出版VANで処理した冊数は,出庫全体に対し,精々数パーセントに過ぎなかった。(以上につき,甲26,証人Z15)そうすると,出版VANを本格導入しても,営業部の業務がなくなるということはなく,業務が軽減される割合もごく小さいものといわざるを得ない。 (ウ) 被告がこれらしか残らないという,受注の受付や問合せへの対応,倉庫会社(Z3)への配送指示と配送伝票の管理,返品書籍の分類等は,外注化できず,被告において行っているものであるが,次のとおり,これらの業務は本社で行うの が合理的であり,わざわざ戸田分室で行う意味を認め難い。 a 出版社において,受注の受付や問合せへの対応は,その連絡先を出版社自身の連絡先にしているのが通常であり,これらの業務を敢えて配送を委託している外注先の倉庫内に移す必要性はない。かえって,営業部員が本社の外にいたのでは,問合せを受けて,自らでは分からない,あるいは判断がつかない場合に,他の部署の者や上長に問い合わせるのに時間を要することになり,不合理である。(以上につき,甲26,29,原告Z1,原告Z2)この点,被告は,原告らに電子メールを使用させず,わざわざZ3の従業員に原告らへの連絡を伝達してもらうという措置を講じている(甲16の1~3)が,他社の従業員をこのような態様で Z1,原告Z2)この点,被告は,原告らに電子メールを使用させず,わざわざZ3の従業員に原告らへの連絡を伝達してもらうという措置を講じている(甲16の1~3)が,他社の従業員をこのような態様で利用するのは非常識である(被告の書面(甲13の1・2)には,Z3の従業員らが「分室での業務のサブ担当者」として付く旨の記載があるが,他社の従業員らを自社の業務の担当者とする意味は判然とせず,単に被告が取引先に自社の業務を事実上押し付けている可能性すらうかがえる。)。 b 倉庫会社(Z3)への配送指示と配送伝票の管理は,本件配転命令前は本社内でされており(弁論の全趣旨),伝票管理を関係部署もある本社内で行うという点で適切であるといえるところ,これにより何らかの支障があったという主張立証はされていないから,これらの業務を戸田分室に移す必要があるとは認められない。 c 返品書籍の分類等について,被告は,一度本社に返品させてから改めて倉庫会社に戻す手間を省けるというが,そもそも,被告において,返品書籍の分類業務の手間が問題になるほどの返品があるとは認められず(被告も,この点について特に主張立証をしていない。),従前,返品書籍は教科書が返品される6月と10月に集中し,これらの時期に営業部員が倉庫会社まで赴いて分類していたという(甲26,原告Z2)のに対し,このやり方を変える必要性はうかがわれない。 (エ) しかも,被告の主張は,営業部員の業務の一部を取り上げているに過ぎない。 すなわち,営業部員の業務は,主なものだけでも,薬科大学の前・後期に当たる 春・秋の採用品の出庫及び返品処理(教科書の出庫管理),一般書店と薬科大学に向けた常備出庫及び返品処理,ISBNコードの作成及び管理,書籍マスター登録,書籍入庫時の情報管理,正誤表の管理,書店・ 春・秋の採用品の出庫及び返品処理(教科書の出庫管理),一般書店と薬科大学に向けた常備出庫及び返品処理,ISBNコードの作成及び管理,書籍マスター登録,書籍入庫時の情報管理,正誤表の管理,書店・取次からの出庫や返品に関するトラブルの処理,書籍に関する問合せと多岐にわたっている。より具体的には,被告では2月から3月にかけて採用品注文がピークを迎える繁忙期となるが,その後も,採用品の追加や発注漏れ等による書店への直送手配,後にできてくる正誤表を採用学校に配る手配,追加献本発送,教科書台帳付けなど採用品注文に付随する細かな業務があり,5月後半からは採用品の返品処理と7月末の棚卸しに向けての準備,7月終わりからは10月入替えの一般書店向け常備(書店の店頭に置くための書籍,請求は1年後)出庫の準備と後記の採用品の注文が始まるため,8月,9月は常備手配と後記の採用品出庫に追われる。そして,9月終わりから10月は後記の採用品注文に付随する直送などの細かな業務,11月は採用品と常備品の返品処理,12月からは翌年1月に出庫する薬科大学内書店向けの常備出庫の準備にとりかかり,2月からは春の採用品の注文が始まり,再びピークを迎える。このように,一年を通して各時期に特徴的な業務があり,それ以外にも随時一般品の出庫,返品,乱丁交換等のトラブル処理,ISBNコードの作成,書籍マスター登録,入庫データの管理,取次や書店等の顧客からの問合せ対応などの業務もある。(以上につき,甲25,26)そうすると,被告の前記主張は,営業部員の業務全体の一部のことに過ぎず,当該一部の業務を行うために敢えて戸田分室に行くことに業務上の必要性があるとは認め難いし,例えば,棚卸や常備スリップの作成など本社で行う業務については,帰社してからやらざるを得ない(原告Z2)など,非効率で の業務を行うために敢えて戸田分室に行くことに業務上の必要性があるとは認め難いし,例えば,棚卸や常備スリップの作成など本社で行う業務については,帰社してからやらざるを得ない(原告Z2)など,非効率でもある。 (オ) このように,営業部員の業務内容との関係からみても,本件配転命令に合理性があるとは認められない。 エ加えて,原告らは,外気を壁や扉で遮断する措置が講じられていない倉庫の一角という,およそ事務作業をするのに適さないと思われる作業場におり,同所は, 原告らが平成28年3月10日に調査した際には,暖房の近くでも摂氏14度しかなく,そのことを伝えられた被告がヒーターを設置した経緯があること(前記前提事実)からしても,本件配転命令に当たっての被告の準備等はいかにも場当たり的であって,この点も,本件配転命令の不合理性を示すものといえる。 オしかも,本件配転命令には,前記前提事実のとおり,他の組合員の継続雇用に関する非組合員との差別的取扱いや団交拒否について,被告に対し,複数の不当労働行為救済命令が出されている中で発せられたという経緯があり,この経緯からは,被告が労働組合を嫌悪し,本社社屋から組合員を排除するという不当な目的をもって本件配転命令を発したことが推認されるというべきところ,第2次不当労働行為救済命令申立事件の救済命令においても,この点は「組合ら(裁判所注,Z4労組及びZ6労連)と会社(裁判所注,被告)との間では,…24年(裁判所注,平成24年)4月13日に,当委員会(裁判所注,都労委)のあっせん手続の中で前件申立て(裁判所注,第1次不当労働行為救済命令申立事件)が和解で終結したのであるが,…この和解には継続雇用制度の改定について,会社と組合らとが誠実に団体交渉を行うことが含まれていたものと解すべきであるにもかかわ 所注,第1次不当労働行為救済命令申立事件)が和解で終結したのであるが,…この和解には継続雇用制度の改定について,会社と組合らとが誠実に団体交渉を行うことが含まれていたものと解すべきであるにもかかわらず,和解後に行われた団体交渉では,会社は,その合意に背き,この点に関する交渉を実質的に拒否している。このような会社の対応と過去における組合(裁判所注,Z4労組)と会社との間の紛争の経緯…を併せて考えれば,会社は,前件申立ての和解の前後を通じて一貫して,組合を嫌悪していたものといえ」ると判断されている(甲8〔24頁~〕)。この推認を覆すような証拠は見当たらず,前述のとおり,業務上の必要性が認められないことも,この推認を支えるものといえる。 カこのほかに,被告は,本件配転命令の前後を通じて,原告らは時間外労働を必要としない状況にあり,このことも本件配転命令の合理性を裏付けるなどと主張するが,従前時間外労働を必要とせず,時間に余裕があれば,その時間を利用する形で合理性のないことを命じても合理的な措置であることになるわけではないから,被告の主張は採用の限りではない。 (3) 小括以上を総合考慮すると,本件配転命令は業務上の必要性がないといえ,同命令は裁量権を濫用したものとして違法,無効である。なお,仮に業務上の必要性がないとはいえないとしても,被告における不当な目的があると認められるので,いずれにしても,本件配転命令は違法,無効である(そして,かかる理由により本件配転命令が違法,無効であると判断される以上,その効力との関係で,同命令が労組法7条1号所定の不当労働行為に当たるか否かについて更に検討する必要はない。)。 3 本件配転命令は不法行為を構成するか(争点4)について前述のとおり,本件配転命令は違法,無効であり,不法行 組法7条1号所定の不当労働行為に当たるか否かについて更に検討する必要はない。)。 3 本件配転命令は不法行為を構成するか(争点4)について前述のとおり,本件配転命令は違法,無効であり,不法行為を構成するところ,原告らは,平成28年2月から長期間にわたって,一旦本社社屋に出勤し,タイムカードを打刻してから戸田分室まで移動して業務を行った後,本社社屋に移動し,タイムカードを打刻して退勤するという,明らかに不合理であって業務上の必要性がなく,むしろ組合員を本社社屋から排除するという不当な目的に基づく勤務形態を余儀なくされ,外気を壁や扉で遮断する措置が講じられていない倉庫の一角での作業を強いられた上,被告からは,本件訴訟における主張と同様に,合理性の認められない説明等を繰り返すという対応を受け(乙2の1~2の3),相当の精神的苦痛を受けたことが認められる。以上のほかに本件記録に顕れている諸事情も併せ考慮すると,この精神的苦痛に対する慰謝料としては,原告らそれぞれについて30万円を認めるのが相当である(なお,本件配転命令が労組法7条1号所定の不当労働行為に当たるか否かによって慰謝料額に関する判断が直ちに左右されるものとは解されないので,ここで,不当労働行為性について更に検討する必要はない。)。 4 原告Z1の地位確認請求について原告Z1は,平成29年○月○日をもって定年により退職しており(弁論の全趣旨),戸田分室に勤務する義務のない地位にあることの確認を求める利益を喪失したものと解される。 この点,原告Z1は,定年退職後の継続雇用(再雇用)を求めているというが, 実際に契約を締結するには至っていない(原告Z1,弁論の全趣旨)から,現時点において,戸田分室に勤務する義務のない地位にあることを確認する法的な利益があるとは認 )を求めているというが, 実際に契約を締結するには至っていない(原告Z1,弁論の全趣旨)から,現時点において,戸田分室に勤務する義務のない地位にあることを確認する法的な利益があるとは認められない。 したがって,原告Z1の地位確認請求に係る訴えは,確認の利益を欠き,却下を免れない。 5 結論よって,原告らの本件請求のうち,原告Z1の地位確認請求に係る訴えは,確認の利益を欠くからこれを却下し,原告Z2の地位確認請求は,理由があるからこれを認容し,原告らの不法行為に基づく損害賠償請求は,それぞれ30万円及びこれに対する平成28年2月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の限度で理由があるから,この範囲でこれを認容し,訴訟費用の負担については,本件事案に鑑み,民事訴訟法64条ただし書を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第11部 裁判官湯川克彦
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