令和6(わ)219 金融商品取引法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和6年7月16日 福岡地方裁判所
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判決文本文4,340 文字)

令和6年7月16日宣告令和6年(わ)第219号被告人ら4名に対する金融商品取引法違反被告事件 主文 被告人Aを懲役3年及び罰金500万円に、被告人B、被告人Cび被告人Dをいずれも懲役1年6月及び罰金500万円に処する。 被告人らに対し、未決勾留日数中各50日を、それぞれの懲役刑に算入する。 被告人らにおいてその罰金を完納することができないときは、それぞれ1万円を1日に換算した期間、その被告人を労役場に留置する。 この裁判が確定した日から被告人Aに対し5年間、被告人B、被告人C及び被告人Dに対し3年間、それぞれの懲役刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは、シンガポール共和国に法人登記を置き、投資運用業を行うP社との間の外国為替証拠金取引に関する投資一任契約の締結を内容とする「甲」と称する金融商品を含む会員制福利厚生サービスの提供を行う乙社の最高経営責任者として、同社の業務全般を統括管理していたもの、被告人Bは、同社の営業統括責任者兼スーパーバイザーとして、同社の営業活動全般を統括管理するとともに同社代理店の営業活動を統括管理していたもの、被告人C及び被告人Dは、同社のスーパーバイザーとして、同社代理店の営業活動を統括管理していたものであるが 1 被告人A及び被告人Bは、業として⑴ E及びFらと共謀の上、いずれも内閣総理大臣の登録を受けないで、令和2年3月30日、千葉県市川市a町b丁目c番d号の株式会社Qにおいて、V1に対し、前記Fが、前記甲の特徴や利点を説明するなどして前記投資一任契約の申込みの勧誘をするとともに、同契約の締結に必要な申請書を交付し、同月31日頃から 同年4月7日頃までの間に、千葉県内又はその周辺において、前記V1が署名した申請 などして前記投資一任契約の申込みの勧誘をするとともに、同契約の締結に必要な申請書を交付し、同月31日頃から 同年4月7日頃までの間に、千葉県内又はその周辺において、前記V1が署名した申請書のデータを同人からアプリケーションソフト「LINE」を利用して受領するなどして前記投資一任契約の締結を媒介し⑵ G及びHと共謀の上、いずれも内閣総理大臣の登録を受けないで、同年7月30日及び同月31日頃、大分県内又はその周辺において、V2及びV3に対し、前記Hが、Web会議システム「Zoom」及び前記「LINE」を利用して、前記甲の特徴や利点を説明するなどして前記投資一任契約の申込みの勧誘をするとともに、同年8月15日頃から同月28日頃までの間に、同所において、前記V2及びV3が署名するなどした申請書を前記「LINE」を利用して受領するなどして前記投資一任契約の締結を媒介し 2 被告人A及び被告人Cは、I及びJと共謀の上、いずれも内閣総理大臣の登録を受けないで、業として、令和元年12月27日、広島県東広島市ef丁目g番h号R店において、V4に対し、前記Jが、前記甲の特徴や利点を説明するなどして前記投資一任契約の申込みの勧誘をするとともに、令和2年3月上旬頃、前記R店において、前記V4が記載して郵送した申請書を受領するなどして前記投資一任契約の締結を媒介し 3 被告人A及び被告人Dは、業として⑴ K及びLと共謀の上、いずれも内閣総理大臣の登録を受けないで、令和3年3月6日、大阪市i区jk丁目l番m号S店において、V5に対し、前記Lが、前記甲の特徴や利点を説明するなどして前記投資一任契約の申込みの勧誘をするとともに、同月28日頃から同年4月1日頃までの間に、兵庫県尼崎市n町o丁目p番q号の前記L方において、前記V5が署名して郵送した 甲の特徴や利点を説明するなどして前記投資一任契約の申込みの勧誘をするとともに、同月28日頃から同年4月1日頃までの間に、兵庫県尼崎市n町o丁目p番q号の前記L方において、前記V5が署名して郵送した申請書を受領するなどして前記投資一任契約の締結を媒介し⑵ M及びNらと共謀の上、いずれも内閣総理大臣の登録を受けないで、同年6月8日、大阪市r区s町t丁目u番v号Tビル2階において、V6に対し、前記Nが、前記甲の特徴や利点を説明するなどして前記投資一任契約の申込みの勧誘をす るとともに、申請書を交付し、同月30日頃、大阪府内又はその周辺において、前記V6が署名するなどした申請書を前記「LINE」を利用して受領するなどして前記投資一任契約の締結を媒介しもって、無登録で金融商品取引業を行った。 (証拠の標目)(省略)(法令の適用)(省略)(量刑の理由)本件は、被告人Aが、被告人B、被告人C及び被告人Dとそれぞれ共謀して、様々な分野の割引等を提供する会員制の福利厚生サービス事業の一環として、業として、無登録で、FX取引による投資一任契約の媒介行為を行ったというものであり、その手法は、被告人らの傘下の営業員が、本件FX取引による投資一任契約が優れた金融商品であると勧誘し、投資一任契約締結に関わる事務手続きの少なくとも一部を代行していたというものである。被告人らは、最高責任者及びそれに次ぐ立場として、各営業員らに、本件FX取引の運用が安全かつ高利であると説明させ、投資者らの投資の決断に大きな影響を与え、さらには、投資者らが自ら行うのが困難な契約手続に係る事務手続きについて、必要書類を教え、申請書等の作成を補助し、それらを代わりに受領して不備を点検するなどさせて、実質的に契約締結上重要な役割を担っていた。これらは が自ら行うのが困難な契約手続に係る事務手続きについて、必要書類を教え、申請書等の作成を補助し、それらを代わりに受領して不備を点検するなどさせて、実質的に契約締結上重要な役割を担っていた。これらは、被告人らが、本件FX取引の投資一任契約の受任者である証券会社や実際に投資運用を行う会社の実態など、投資一任契約の安全性に関わる重大な事実について十分な調査を行わないまま行われ、その勧誘文言の一部は事実に反するものとなっていた。その結果、いつでも出金できると信じて預けた多額の金銭の全部又は一部が出金できなくなった投資者が多数いる状況からすれば、被告人らは、まさしく、本来受けるべき規制を受けずに金融商品取引業を行うことにより、投資家を危険にさらすという、登録制の目的に真正面から反する行為を行 っていたというべきである。さらに、本件は、平成25年から構築された手法と、代理店などの形で組織化された多数の営業員により、一般の投資知識のない者を対象にして、極めて大規模に行われた無登録の金融商品取引業の一環であり、投資家保護という法の趣旨に照らし、極めて危険で悪質な犯行であったといえる。なお、被告人らは、当時、弁護士に相談したことなどから本件が金融商品取引法違反であったとの認識がなかった、または、そもそも同法による規制を知らなかったなどと弁解するが、仮にそうであったとしても、被告人らが行っていたことは弁護士が許容した範囲を出るものであったといえ、実態を正確に把握していない投機性の高い金融商品を優れた商品として勧誘し、多額の投資が行われていたのであるから、その自らの行為の社会的な危険性を認識していなかったなどというのは被告人らの立場に照らして無責任極まりない。したがって、被告人らの上記弁解を踏まえても、被告人らの刑事責任が軽くなるものではなく、傘下 の自らの行為の社会的な危険性を認識していなかったなどというのは被告人らの立場に照らして無責任極まりない。したがって、被告人らの上記弁解を踏まえても、被告人らの刑事責任が軽くなるものではなく、傘下の営業員らの営業活動を管理し積極的に本件犯行に関与していた被告人らは、強く非難されるべきである。 以上の共通の事情を前提にして、さらに検討する。 被告人Aは、本件福利厚生サービス事業を提供する乙社の最高責任者として、乙社を設立し、代理店制度の下で同事業の一環としてFX取引に係る投資一任契約を媒介するという本件の手法を構築し、他の被告人らを誘い入れて事業を開始したもので、本件媒介行為に関しても最終的な意思決定を行う立場にあって、その存在は本件犯行に必要不可欠であった。また、被告人Aは、本件犯行に係る投資金から直接の報酬こそ得ていないものの、本件に係る投資を行うためには乙社の会員となる必要があるところ、その会費から多額の報酬を得ていたから、被告人Aの責任は非常に重大である。 被告人B、被告人C及び被告人Dは、日本国内の代理店や営業員を取り仕切る幹部であり、被告人Aとともに、本件媒介行為に関する事項の協議や決定に参加していた。それぞれ100名を超える営業員を統括しており、自らの傘下の営業員に指示を出したり相談に乗ったりしていたほか、被告人Bや被告人Cは、営業員を集め たセミナーで講演を行い、被告人Dは、勧誘で多く利用されたウェブサイトの作成に関与するなど、それぞれの形で本件犯行に大きく寄与していた。さらに、上記3名は、自らの傘下の営業員が獲得した投資者の出資した金額が運用されるにつき報酬を得ており、本件犯行に係る頃にはそれぞれ月額2000万円程度の報酬を得ていたのであるから、その責任はいずれも重大である。 以上のとおり、同種事案の中 した投資者の出資した金額が運用されるにつき報酬を得ており、本件犯行に係る頃にはそれぞれ月額2000万円程度の報酬を得ていたのであるから、その責任はいずれも重大である。 以上のとおり、同種事案の中で、被告人Aの刑事責任は極めて重く、被告人B、被告人C及び被告人Dの刑事責任も相当に重い。しかし、そもそもの本件事案の罪質や、被告人らにいずれも前科がないこと、本件の各投資者とは民事裁判において直接の営業員等の出資により和解が成立していること、いずれも監督能力に疑問はあるもののそれぞれの家族が出廷して監督を誓約していることなど、各被告人において有利に考慮できる事情も踏まえれば、被告人らについては、いずれも相応の懲役刑を科した上で、その執行を猶予するのが相当である。他方、本件犯行が経済的に割に合わないことを示すため、本件事案の規模や被告人らが本件に関連して得た利得の大きさ等の各事情に鑑み、それぞれ求刑通りの罰金刑を併科することとする。 (求刑被告人Aにつき懲役3年及び罰金500万円、被告人B、被告人C及び被告人Dにつき懲役1年6月及び罰金500万円)令和6年7月24日福岡地方裁判所第2刑事部裁判官武田夕子

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