令和5(ネ)641 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年8月23日 東京高等裁判所 東京地方裁判所 令和3(ワ)33428
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判決文本文3,699 文字)

主文 1 原判決を取り消す。 2 本件を東京地方裁判所に差し戻す。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 主文同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要(1) 控訴人らは、被控訴人らとの間で、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)の選手村(宿泊施設)を改 修してできる施設建築物A内の分譲マンション(以下「本件マンション」という。)の各物件(個々の控訴人らとの対応関係は原判決別紙「原告ら物件等目録」記載のとおり。以下「本件各物件」という。)につき、被控訴人らから購入する旨の売買契約をそれぞれ締結した。本件各物件の引渡予定日は令和5年3月27日とされていたが、被控訴人らは、東京2020大会の開催延期を理由 に、令和2年10月7日、控訴人らに対し、本件各物件の引渡予定日を令和6年3月25日に変更する旨通知した。 本件は、控訴人らが、本件各物件が引き渡されないまま令和5年3月27日が経過すると、被控訴人らの引渡債務は履行遅滞となり、被控訴人らに債務不履行責任が生ずるなどと主張して、被控訴人らに対し、債務不履行に基づき、 原判決別紙請求目録記載のとおり、同月28日から本件各物件の引渡済みまでの損害金(うち一部の控訴人らは、これに加え、同日より後の特定の日を経過した場合の損害金)の連帯支払を求める事案である。 (2) 原審は、控訴人らの各請求権は、その性質上「将来の給付を求める訴え」(民事訴訟法135条)を提起することのできる請求としての適格を有しないから、 本件訴えは不適法であるなどとして、本件訴えをいずれも却下した。 これに対し、控訴人らが本件控訴を提起した上、当審において、本件訴えは令和5年3月 ての適格を有しないから、 本件訴えは不適法であるなどとして、本件訴えをいずれも却下した。 これに対し、控訴人らが本件控訴を提起した上、当審において、本件訴えは令和5年3月27日の経過をもって現在の給付の訴えとなるなどとして、原判決を取り消して本件を東京地方裁判所に差し戻すとの判決を求め、被控訴人らも答弁書においてこれと同旨の判決を求めた。 2 前提事実並びに本案前の争点及びこれに関する当事者の主張 前提事実並びに本案前の争点及びこれに関する当事者の主張は、次のとおり付加訂正するほか、原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要等」の2及び3に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決6頁13行目末尾の次で改行し、以下のとおり加える。 「(5) 引渡日についての連絡 被控訴人らは、令和4年12月、控訴人らに対し、東京2020大会の選手村の利用が終了し、工事も順調に進捗していることなどから、本件各物件を令和6年1月下旬より引き渡せる見込みとなった旨を伝えた。 そして、被控訴人らは、令和5年2月17日、控訴人らに対し、①本件各物件を令和6年1月19日に引き渡す予定である、②控訴人らから個別に同日以 降の引渡しの強い希望があり、かつ、少なくとも同日以降の責任は問わないことを確認できるのであれば、引渡日の調整を検討することは可能である旨を伝えた。(甲30、乙31)」第3 当裁判所の判断 1 「将来の給付を求める訴え」は、あらかじめその請求をする必要がある場合に 限り、提起することができるところ(民事訴訟法135条)、将来発生すべき債権については、その基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、上記債権の発生・消滅及びその内容 、提起することができるところ(民事訴訟法135条)、将来発生すべき債権については、その基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、上記債権の発生・消滅及びその内容につき債務者に有利な将来における事情の変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限られ、しかもこれについて請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ強制執行を阻止し 得るという負担を債務者に課しても、当事者間の衡平を害することがなく、格別 不当とはいえない場合には、これにつき「将来の給付を求める訴え」を提起することができるものと解される(最高裁昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁参照)。 2 本件についてこれをみるに、控訴人らは、令和5年3月27日の経過をもって被控訴人らの引渡債務は履行遅滞となるなどと主張して、被控訴人らに対し、債 務不履行に基づき、同月28日以降に生ずる損害金の支払を求めている。そして、原審の口頭弁論終結日は令和4年11月10日であったから、確かに同日時点においては、控訴人らの主張する債権は将来発生すべき債権であり、本件訴えはその全部が「将来の給付を求める訴え」に該当していたものである。 しかし、現在、令和5年3月27日は既に経過しており、本件訴えのうち少な くとも同月28日から当審の口頭弁論終結日である同年6月12日までに生じた損害金の支払を求める部分については、現在の給付を求める訴えとなっているのであって、もはや「将来の給付を求める訴え」ではなくなっている。 また、本件訴えのうち、同月13日から本件各物件の引渡済みまでに生ずる損害金の支払を求める部分については、現在もなお「将来の給付を求める訴え」に 該当するものの、①上記のとおり同年3月27日が既に経過 件訴えのうち、同月13日から本件各物件の引渡済みまでに生ずる損害金の支払を求める部分については、現在もなお「将来の給付を求める訴え」に 該当するものの、①上記のとおり同年3月27日が既に経過している以上、被控訴人らの引渡債務が履行遅滞となっているか否か自体は、現時点で判断し得ること、②控訴人らの主張する損害金は、現住居の賃料・借地料相当額、逸失賃料収入相当額、慰謝料などおおむね予測可能なものに限られていること、③被控訴人らの連絡(前提事実(5))によれば、本件各物件は当審の口頭弁論終結日(令和5 年6月12日)から約7か月後の令和6年1月19日に引き渡される予定であり、控訴人らの主張する損害金の発生も同日までとなるものと見込まれること、④本件各物件について当初の引渡予定日を延期することにつき帰責性がない旨の被控訴人らの主張に関しても、上記のとおり、引渡しを令和6年1月19日とする予定であると連絡している以上、現時点においては上記主張を基礎付ける事実の 主張立証に特段の支障があるとは考え難いことなどからすると、控訴人らの主張 する債権につき、その基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、上記債権の発生・消滅及びその内容につき債務者に有利な将来における事情の変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限られ、請求異議の訴えにより強制執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても格別不当とはいえないのであって、これにつき「将来の給付を求める訴え」を提起す ることができるものというべきである。 なお、控訴人らのうち一部は、これらに加え、令和5年3月27日より後の特定の日を経過した場合の損害金の支払も求めているが(例えば、控訴人Bは、被控訴人らに対し、同年10月31日を経過したと なお、控訴人らのうち一部は、これらに加え、令和5年3月27日より後の特定の日を経過した場合の損害金の支払も求めているが(例えば、控訴人Bは、被控訴人らに対し、同年10月31日を経過したときは慰謝料214万円を支払うよう求めている。)、これらも同年3月27日に本件各物件が引き渡されなかった ことによる債務不履行(履行遅滞)に基づく損害賠償請求であることに変わりはなく、ただその損害が現時点では発生していない(特定の日の経過によって発生する)というにとどまるのであって、先に説示したところに照らせば、これらについても「将来の給付を求める訴え」を提起することができるものというべきである。 したがって、本件訴えのうち一部は「将来の給付を求める訴え」に該当せず、その余の部分は「将来の給付を求める訴え」として許されるものというべきである(なお、上記のとおり、被控訴人らは本件各物件を令和6年1月19日に引き渡す旨連絡しているのであって、原判決を取り消して本件を東京地方裁判所に差し戻した場合、差戻審の係属中に本件各物件の全てが引き渡され、もって本件訴 えの全てが現在の給付を求める訴えに変わることが想定し得るところである。)。 3 よって、本件訴えが「将来の給付を求める訴え」として不適法であるとの理由でこれを却下した原判決は、もはや相当ではないからこれを取り消し、本件を東京地方裁判所に差し戻すこととして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第9民事部 裁判長裁判官相澤眞木 裁判官佐 々 木健二 裁判官瀬孝 澤眞木 裁判官 佐々木健二 裁判官 瀬孝

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