平成20(わ)448 強盗殺人,死体遺棄,詐欺被告事件

裁判年月日・裁判所
平成21年2月13日 さいたま地方裁判所
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判決文本文18,014 文字)

主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中250日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,分離前の相被告人Aと共謀の上,第1B(当時66歳)を殺害して金品を強取しようと企て,平成20年3月1日午前9時45分過ぎころ,a県b市内のCビル2階所在の雑貨店「D」入口前を通りかかった同人を同店内に連れ込み,そのころから同日午後1時ころまでの間に,同店内において,同人に対し,椅子に座らせて紐様のもので手足を緊縛し,頭にナイロン製エコバッグをかぶせて頭部・顔面を覆い,出刃包丁を頭頂部に突き立てながら,「通帳はどこ」と申し向けるなどの暴行,脅迫を加え,さらに,殺意をもって,三尺帯等を巻き付けて首を絞め,上記エコバッグの上から頭部,顔面にビニールテープを多数回巻き付けて鼻口部を閉塞するなどし,よって,そのころ,同所において,同人を窒息死させた上,同人が所持していた現金約3万円,同人名義の預金通帳1通,同人方玄関の鍵1本ほか11点(時価合計1万2000円相当)を強取すると共に,同ビル3階同人方から,E所有又は管理に係る同人名義のクレジットカード機能付きキャッシュカード1枚ほか9点在中の財布1個(時価1000円相当)を持ち出して強取し,第2同月2日午前3時50分ころ,前記「D」において,前記Bの死体をこたつ上掛けで包み,同所から普通乗用自動車で同市内の荒川左岸まで搬送した上,同日未明ころ,同所において,同死体を荒川に投棄し,もって死体を遺棄し,第3前記第1の強取に係るE名義キャッシュカードのQ株式会社によるクレジットカード機能を使用して商品を詐取しようと企て,同日午後5時48分ころ,同市内のスーパーマーケット地下1階食料品売場において,同店従業員Fに対し,上記カードの正当な使用権限も同カードシステム所定の方法により 機能を使用して商品を詐取しようと企て,同日午後5時48分ころ,同市内のスーパーマーケット地下1階食料品売場において,同店従業員Fに対し,上記カードの正当な使用権限も同カードシステム所定の方法により代金を 支払う意思もないのに,これあるように装い,同カードを呈示して食料品等の購入を申し込み,同人をしてその旨誤信させ,よって,そのころ,同所において,同人からウィスキー6本ほか80点(販売価格合計3万8807円)の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させたものである。 (証拠の標目)〔省略〕(争点に対する判断) 本件の争点等弁護人は,本件詐欺の事実については争わないものの,強盗殺人及び死体遺棄(以下,強盗殺人及び死体遺棄を合わせて「本件各犯行」ともいう)については,Aの単独犯行で,被告人はいずれも無罪である旨主張し,被告人もこれに沿う供述をしている。 ところで,本件ではAが判示各罪についていずれも被告人との共謀による共同実行を証言しているから,このAの証言が信用できるか否かが問題である。 この点について,検察官は,被告人が本件各犯行に関与したことを補強する状況証拠として,①従前の被告人とBとの間にトラブルが存したから被告人には犯行動機があったことや,②被告人が本件強盗殺人の被害品の使用や保管等に関わっていることなどの犯行前後の事情をも指摘している。 ところで,Aは,被告人と利害が対立する関係にあるから,その証言を慎重に吟味する必要がある。そこで,まずは,A証言以外の関係証拠により,被告人と被害者との人間関係や本件直前及び本件後の被告人らの行動,その他被害者及び関係者らに生じた出来事を前提となる事実関係として認定し,次にA証言の信用性の検討を行うこととする。 前提となる事実関係(1)被告人とBらとの関係 アBは,夫婦 の行動,その他被害者及び関係者らに生じた出来事を前提となる事実関係として認定し,次にA証言の信用性の検討を行うこととする。 前提となる事実関係(1)被告人とBらとの関係 アBは,夫婦協力して働き,a県b市内にある判示第1の被害場所であるCビルのオーナーとなり,同ビルの3階で妻Eと共に生活していた。被告人は同ビル2階部分を借り受け,平成17年12月ころから,同所で雑貨店「D」を経営していた。なお,同ビルには他に,1階部分にラーメン屋「G」及び不動産業を営む株式会社「H」がそれぞれテナントとして入居している。 イ被告人がCビル2階に入居してしばらく経過したころから,H従業員やEを中傷する内容のビラがB宅やHに投函されるようになった。中には,Eが「やくざの男」と不倫しているなどと記載されたものもあった。 ウ平成19年9月13日ころ,Cビル3階のB宅から同ビル2階のD店内に水漏れがあり,同店の商品が水に濡れるなどの被害が生じた。これを知ったBは同月15日ころに業者に依頼をして応急措置を講じた上,同年11月27日及び28日にかけて,水漏れの原因となったB方ユニットバスの水栓の取替工事を行った。被告人は,この水漏れが原因で損害が生じたとしてBに被害弁償を請求すると共に,賃料との相殺を主張して,同年11月1日にB名義の口座に13万円を振り込んだ他は,賃料の支払を行わなくなった。 エこのような被告人の対応を受けて,Bは,同年12月13日に,I弁護士に依頼して平成20年2月13日,さいたま地方裁判所に,原告をB,被告を有限会社D及びその代表取締役で被告人の夫でもあるJとする建物明渡等請求事件を提起し,同月26日,被告人が同訴状を受領した。 (2)本件直前に生じた出来事アEは,当公判廷において,平成20年2月28日午後1時頃及び午後8 役で被告人の夫でもあるJとする建物明渡等請求事件を提起し,同月26日,被告人が同訴状を受領した。 (2)本件直前に生じた出来事アEは,当公判廷において,平成20年2月28日午後1時頃及び午後8時頃,BからEの携帯電話に電話があり,前者の電話では,DでBあるいはE宛ての宅配便を被告人が預かっている旨の張り紙が玄関にあったこと,後者の電話では,Cビル2階で,被告人とホームレスっぽい男にD店内に引きずり込まれそうになったから気を付けるように言われた旨証言している。 この点,弁護人は,Eが当公判廷において,被告人とAの関係について知 らないと述べたが,捜査段階での供述では具体的に知っている内容で説明するなど意図的に虚偽供述をしていること,被告人がCビルに入居してから猫がイカを食べたから100万円払えとの張り紙がなされたり,郵便ポストの郵便物が無くなるなどのトラブルの犯人がいずれも被告人であると確たる証拠もなく決め付けて判断していることからすると,Eはそもそも事件前から被告人に対して強い嫌悪感,悪感情を抱いており,Bが被告人らに引きずり込まれそうになったと聞かされた旨の上記E証言の信用性には疑問がある旨指摘している。 しかしながら,仮にEに弁護人の指摘するような感情があったとしても,その感情はCビルに入居していた他の入居者にも一部窺えるなどの程度のものであり,その一事をもってE証言の信用性が全部否定されるべきものではない。そして,上記E証言は,B名義の携帯電話のうちの1つであるau機種携帯(以下,単に「au携帯」という)に平成20年2月28日の午後1時37分から3秒,同1時41分から16秒,同8時8分から58秒の合計3回にかけて,Eの携帯電話への通話記録があることと符合していること,証言内容自体も具体的であり,特段不合理な点は認められず 後1時37分から3秒,同1時41分から16秒,同8時8分から58秒の合計3回にかけて,Eの携帯電話への通話記録があることと符合していること,証言内容自体も具体的であり,特段不合理な点は認められず,また,D店内に引きずり込まれそうになったという話はそれ自体印象的なものであり,これを聞いたEがその内容を聞き間違えたということも考え難いことなどの事情にかんがみれば,その信用性を認めることができる。 以上によれば,少なくともEが証言するとおり,上記のような電話のやりとりが,BとEとの間で行われたという事実を認めることができる。 イ同月29日の午前3時半ころ,Bが出勤しようとすると,同人の自動車のタイヤが4本ともパンクさせられていた(E証言)。 ウ同日午前9時45分ころ,前記Gの経営者が,Cビルの階段の上の方向から,Bの叫び声や「何すんだよ」などの怒鳴り声を聞いた。 (3)本件後の出来事について ア被告人とAの行動について(ア) 平成20年3月1日午後1時32分,被告人は,Cビル近くのコンビニエンスストアのATMを操作し,カードローンの借入金のうち3万2000円を返済した。その後,被告人はAと共に消費者金融に赴き,B名義で新規借り入れを試みたり,携帯電話販売店に赴き,B名義の携帯電話の使用料金を支払うと共に,充電器を購入するなどした後,同日午後7時45分ころ,居酒屋で夕食を食べた。なお,途中の午後4時53分ころから56分ころまでの間,被告人は,銀行のATMコーナーにおいて,自己名義の口座と次女名義の口座の通帳記入を行っている。 (イ) 翌2日午後4時10分ころ,被告人及びAはCビル近くのコンビニエンスストアに赴き,同所において,被告人がATMを操作し,E名義のクレジットカード機能付きキャッシュカードを挿入し,預金の引き出しを試みるも 午後4時10分ころ,被告人及びAはCビル近くのコンビニエンスストアに赴き,同所において,被告人がATMを操作し,E名義のクレジットカード機能付きキャッシュカードを挿入し,預金の引き出しを試みるも,残高不足で失敗した。 (ウ) 同日午後5時48分ころ,被告人及びAは,スーパーマーケットに赴き,同所でE名義のクレジットカード機能付きキャッシュカードを用いて食料品等を購入した(判示第3の事実)。 イR自動車への電話平成20年3月1日午後1時ないし1時30分ころ,「Bの家内」と名乗る女性からR自動車に,早急にBの自動車のタイヤを交換して欲しい旨の電話があった(K証言)。 ウ平成20年3月2日未明におけるCビル階段入り口前での出来事(ア) H従業員であるLは,当公判廷において,平成20年3月2日午前3時40分ないし50分ころ,Cビル階段入口前で自動車に荷物を積み込む男性と,被告人がその男性の横に立ってのぞき込むような形でその様子を見ていた場面,同自動車の運転席側に被告人が,助手席側に同男性がそれぞれ座っていた場面をそれぞれ目撃した旨証言している。そして,これら場 面を目撃した状況について,前者はCビル前の道路反対車線側に停車した自動車の助手席側から一,二分程度及び車を降りてH事務所まで歩いていく途中で5秒から10秒程度,後者は,自動車で同ビル階段入り口前を通過した際,助手席から5秒程度目撃したとも証言している。 (イ) この点,弁護人は,①Lがもともと被告人に対して悪感情を持っていたため,視認条件が悪い中で目撃した人物を被告人と断定してしまった疑いがあること,②視認状況の明るさについて事実とは異なることを証言している旨指摘して,被告人を目撃したとするL証言は信用できないと主張する。 しかしながら,①まず,客観的視認状況については,関係証 いがあること,②視認状況の明るさについて事実とは異なることを証言している旨指摘して,被告人を目撃したとするL証言は信用できないと主張する。 しかしながら,①まず,客観的視認状況については,関係証拠によれば,Lが前記道路反対側車線に停車した自動車内から被告人らを目撃した際の距離は約11メートル,H事務所に歩いていく途中に目撃した際の距離は約8メートル,同ビル階段入り口前を通過する自動車内から目撃した際の距離は約3メートルであり,いずれもそれほど遠くない距離であり,Lが被告人らを目撃した時間は深夜ではあるものの,同ビル周辺には街灯やHの蛍光灯看板が設置されており,人の顔を識別するには十分な程度の明るさであったと認められる。その他,Lの矯正視力は0.7から1.0であるということも併せ考慮すると,当時の視認状況としては良好であったと認められ,視認条件が悪いとする弁護人の主張はその前提を欠く。また,仮にLが被告人に対して悪感情を抱いていたとしても,B失踪について被告人に捜査の目を向けさせるような出来事を軽々しく警察官に話をすることは考え難く,むしろ,Lとしては,自分が目撃した人物が被告人であると確信していたからこそ,B失踪に関係する出来事としてこれを警察官に話をしたと考えるのが自然である。 ②の点についても,前記のとおり夜間であっても,Cビル周辺は街灯等で相当程度の明るさがあったものと認められることからすれば,Lは,当 時の視認状況について自らの記憶に基づいて証言したと認められ,この点に関して殊更に事実と異なる証言をしたとする弁護人の主張は採用できない。 (ウ) 以上の事情に加え,Lは普段被告人とは会話をすることはないものの,DがCビルに移転する前から被告人のことを知っており,普段も被告人のことを見知っているというのであるから,被告人と きない。 (ウ) 以上の事情に加え,Lは普段被告人とは会話をすることはないものの,DがCビルに移転する前から被告人のことを知っており,普段も被告人のことを見知っているというのであるから,被告人と別人とを見間違えるということも考え難い。そして,目撃した時間が深夜であり,かつ,Lは,被告人がかねてから盗みをはたらいている旨の噂を聞いていたという事情から,その様子を注意深く見ていたものということができる。さらに,Lは,H事務所内において,被告人を目撃したことを前提とした会話を,H社長であるMとしていることが認められる(この事実は,Mによっても裏付けられる)。 (エ) 以上によれば,上記L証言の信用性を肯定することができ,同人の証言するとおり,その時間帯に被告人がCビル階段入口前で男性と自動車に荷物を積み込み,その男性と共に同車に乗り込んだことが認められる。 エBの「おば」を名乗る女性からの電話について平成20年3月3日午後5時ころ及び同5時11分ころの2回にわたり,B名義のソフトバンク機種携帯(以下,単に「ソフトバンク携帯」という)からB宅に「おば」と名乗る女性から,Bが現在自分の所にいること,Bが月末になると自分の所に金を借りに来ること,BがEを怖がっており家に帰ったら殺されるかもしれないなどと言っていることなどを内容とする電話があった。また,上記女性は,電話に出たBの次男に対して,Eにはやくざの男がいることや,Bがこの男に包丁で脅されたりしたこともあるなどという話もしていた。 オEを名乗る女性からI法律事務所への電話について平成20年3月4日午前9時15分にau携帯で,同日午前9時36分に ソフトバンク携帯で,いずれもEを名乗る女性からI法律事務所に電話があり,その内容は,自分が知り合いの「やくざの男」と一緒に保険金目当てで 月4日午前9時15分にau携帯で,同日午前9時36分に ソフトバンク携帯で,いずれもEを名乗る女性からI法律事務所に電話があり,その内容は,自分が知り合いの「やくざの男」と一緒に保険金目当てでBの首を絞めて殺害したことや,I弁護士を通じて警察に連絡をして欲しいというものであった(N証言)。 (4)Bの死体の状況等ア平成20年3月8日荒川に水没したBの死体が発見された。また,同月9日には,Bの死体発見地点に近接する川底から水没したこたつ上掛けも発見されている。 イBの頭部にはナイロン製のエコバッグが被され,さらに,その上には,4本のビニールテープが巻かれている。ビニールテープの全長はそれぞれ,約617センチメートル,約418センチメートル,約175センチメートル及び約965センチメートルである。また,同人の頚部にはベルト及び三尺帯が巻かれている。さらにその頭頂部及び右大腿部にはそれぞれ刺創が認められる。 (5)B及びEの所持品等の発見状況ア平成20年3月3日,Cビル近くにあるコンビニエンスストアに設置されたゴミ箱から,Bのウエストポーチや財布等と共に被告人が服用している薬と一致する薬の空きパッケージの入ったゴミ袋及びB名義の会員証やポイントカードと共に被告人あてのカード利用代金明細書や同人あての処方薬の説明書が入ったゴミ袋が発見された。なお,後者のゴミ袋からは,Bが被告人から500万円を借り入れ,これを返済する代わりにCビルを被告人に引き渡す旨の「売買契約書」と題する書面3部,平成18年3月消印のBあての手紙等も発見されている。 イ同月4日,D店内からB契約名義の携帯電話2台が発見された。同日,被告人は上尾警察署に任意同行されたところ,その際,取調室内にB名義のキャッシュカードや運転免許証等,E名義のクレジットカード機 イ同月4日,D店内からB契約名義の携帯電話2台が発見された。同日,被告人は上尾警察署に任意同行されたところ,その際,取調室内にB名義のキャッシュカードや運転免許証等,E名義のクレジットカード機能付きキャッ シュカードや運転免許証等を隠匿し,同月7日,被告人の申告により,これらが発見された。 ウ同月15日,D店内からB所有の自動車の鍵や同人方の自宅の鍵等が発見された。 (6)Dから押収された手袋について平成20年3月15日にDから押収された手袋の片手の人差し指の表面部分,薬指の表面及び裏面部分の3か所に人血痕が付着している。同人血痕のDNA型は,複数人のDNA型が混合したものであるところ,これにはBのDNA型がすべて含まれており,同人のDNA型と一致しないものについてはすべて被告人のDNA型と一致することが認められる。上記人血痕のDNA型鑑定を実施したOは,当公判廷における証言で,同人血痕のDNA型は被告人とBのDNA型が混合したものと考えて矛盾はないとの見解を示している。 A証言についての検討(1)本件各犯行状況等に関するA証言の概要は次のとおりである。なお,Aは,当公判廷において,Dのオーナーで,自身が「先生」と呼んでいた「P」なる女性と被告人は別人であるかのような証言をしている。しかし,その理由は髪型や体型が異なるというものであって,本件当時の被告人の写真等と見比べれば,Aがそのように認識するのにもそれなりの理由があるものといえるし,また,関係証拠から,Dのオーナーである「P」が被告人と同一であることは明らかであるので,以下,Aの証言する「先生」とは被告人であることを前提として検討を加えることとする。 アかねてより,被告人から,Cビルの大家であるBから嫌がらせを受けている旨聞かされていたところ,Bを殺害して同人 以下,Aの証言する「先生」とは被告人であることを前提として検討を加えることとする。 アかねてより,被告人から,Cビルの大家であるBから嫌がらせを受けている旨聞かされていたところ,Bを殺害して同人らの預金通帳を奪い,現金を引き出すので,用心棒になってくれという話を持ちかけられた。引き出した現金の一部について,分け前として貰えるという話だったので,自分はこれを喜んで引き受けた。 イその後,出勤するBを足止めするため,被告人と2人でBの自動車のタイヤをパンクさせたり,あるいは,宅配物を預かっていることを装いBをDに呼び寄せようとしたが,失敗した。そして,今度は3階から降りてくる同人を被告人と2人でD店内に引っ張り込もうと試み,1度目は失敗したが,2度目は成功した。 ウD店内に引っ張り込んだBをひじ掛けいすに座らせると,同人の頭部にエコバッグを被らせ,手足はロープを用いていすに縛り付けた。その際,被告人は,Bに対し,預金通帳や印鑑の所在を聞いていた。また,被告人は,出刃包丁でBの頭部や膝の部分を刺したりもしていた。そして,最終的には,Bの頭部に被せられたエコバッグの上から,自分がビニールテープを巻き付けたり,ベルトなどを同人の首に巻き付けたりして,窒息死させた。なお,このビニールテープは被告人が切ったものであった。その後,BのポケットからB宅の鍵を奪い,被告人と2人でB宅に侵入して預金通帳等を奪い取った。 エDに戻ると,Bの死体の処理について被告人と話し合い,Bの車で同人の死体を運んで川に捨てるという話になった。そして,自分たちがパンクさせたBの自動車のタイヤ交換のため,被告人は,Eを装って自動車修理会社に電話を架けた。その後,2人でCビル近くのコンビニエンスストアにゴミを捨てに行ったり,携帯電話販売店,銀行等を回り,居酒屋で させたBの自動車のタイヤ交換のため,被告人は,Eを装って自動車修理会社に電話を架けた。その後,2人でCビル近くのコンビニエンスストアにゴミを捨てに行ったり,携帯電話販売店,銀行等を回り,居酒屋で食事をした。 オ食事を終えて再びDに戻ると,被告人は,Bの着用していた服2枚を一緒に切ったり,こたつ上掛けで同人の死体をくるむなどして,死体運搬の準備を始めた。そして,2人でBの自動車に同人の死体を積み込み,自分は助手席に座って,被告人の運転で荒川まで運び,同所に死体を遺棄した。なお,被告人は,Bの着衣を切断する際,赤い色の手袋を着用していた。 (2)まず,A証言のうち,Bの殺害態様については,同人の頭部にエコバッグを被せたことやその上からビニールテープを巻き付けたこと,さらには,出刃 包丁を同人の頭部等に突き刺したことなど,同人の死体の状況と符合している。 また,Bの死体遺棄の準備状況についても,死体発見現場付近からこたつ上掛けが発見されていることや同人の着衣が切断されていることなどの客観的状況とも符合している。そうすると,Bの殺害態様やその死体遺棄の準備状況については,被告人の関与の有無はともかくとして,Aが証言するとおりのものであったこと及び少なくともAがこれに関与したことを認定することができる。 問題は,これらの行為への被告人の関与の有無ということになるが,Aは,当公判廷において,前記のとおり,いずれも被告人から持ちかけられ,その指示で行ったものであり,また,いずれの行為にも被告人が直接的に関与した旨証言している。この点,A証言のうちBの殺害態様等については,上記のとおり客観的証拠との符合が認められるものの,これだけでは,被告人の主張するAの単独犯行の可能性は排斥しきれず,さらに,先に認定したような本件前後の出来事等との関係で,被 害態様等については,上記のとおり客観的証拠との符合が認められるものの,これだけでは,被告人の主張するAの単独犯行の可能性は排斥しきれず,さらに,先に認定したような本件前後の出来事等との関係で,被告人が本件各犯行に関与したという部分も含めてAの証言の信用性を検討していく必要がある。 (3)本件前後の被告人の行動に関する証言と他の証拠との符合Aは,被告人からB殺害を持ちかけられた経緯として,「大家に嫌がらせを受けている」と言われた旨証言しているところ,前記認定のとおりB宅からD店内に水漏れがあり,これがきっかけとなってBが被告人に対して訴訟を提起するなどした経緯と符合するものといえる。また,Bの自動車のタイヤをパンクさせたことや宅配便を口実にBを呼び出そうとしたこと,さらには,被告人と2人でBをD店内に引っ張り込もうとしたが失敗した旨の証言については,前記認定のとおりのBの自動車のタイヤの状況及び前記E証言に符合する。さらに,B殺害後,パンクしたB車両のタイヤ交換の依頼のため,被告人がEを装って修理会社に電話をかけていた旨の証言についても,前記K証言と符合する。そして,Cビル入口階段前にBの自動車を停車させて2人で同人の死体を同車に積み込み,被告人の運転でAが助手席に座って同死体を運搬したという 部分については,Lが目撃した前記状況に,被告人が赤色手袋をはめてBの着衣を切断するなどして同人の遺体に触れていたという部分については,被告人の手袋からBのDNA型を含む複数人のDNA型が含まれていたことにそれぞれ符合する。 このように,A証言のうち,B殺害前後の被告人の行動等についても,他の客観的な証拠や信用できる他の証言から認定することのできる事実の多くと符合していることが認められる。 (4)証言内容の具体性,迫真性A証言を見ると, ち,B殺害前後の被告人の行動等についても,他の客観的な証拠や信用できる他の証言から認定することのできる事実の多くと符合していることが認められる。 (4)証言内容の具体性,迫真性A証言を見ると,問いと答えがかみ合わない点や内容が不明瞭な点が少なからず認められるものの,被告人から本件各犯行を持ちかけられた経緯や被告人と2人で本件各犯行に及んだ状況等について具体的に証言しており,その内容も,まさに真に体験した者でしか語り得ない迫真性の富んだものであると認められる。問いに対して話が前後したり不明瞭な部分があるのは,A自身の知的水準がさほど高くないこと等に起因するものと判断されるのであって,同人の証言の具体性,迫真性を減殺するものではない。むしろ,その同人の特性を前提とすれば,同人が犯行状況等の核心部分について一貫して上記のような具体的な証言をしていることは,より一層その証言の信用性を高めるものといえる。 (5)被告人を陥れる動機の不存在Aは,逮捕後は一貫して事実関係を認め,自身のBに対する強盗殺人,死体遺棄等被告事件の裁判においても,同様に事実関係を認めた上で無期懲役の有罪判決を受けている。従って,Aが同判決について量刑を不服として上訴をしていることを考慮しても,同人が被告人を陥れるために敢えて虚偽証言を行うような事情は認められない。また,先に指摘したA自身の知的水準の程度等からして,被告人を陥れるために具体的事実をねつ造して,一貫してこれを述べることができるとは想定できない。 (6)以上のように,A証言は,Bの殺害状況の他,その前後の被告人の行動等 について他の客観的証拠や関係者の証言等から認定できる事実の多くと符合していることに加え,その内容が具体的で迫真性が認められること,さらには,Aに被告人を陥れるような動機は認められない 行動等 について他の客観的証拠や関係者の証言等から認定できる事実の多くと符合していることに加え,その内容が具体的で迫真性が認められること,さらには,Aに被告人を陥れるような動機は認められないことなどから,同証言はその全体において信用できるというべきである。 (7)その他にも,次に挙げるように,被告人と本件各犯行との結び付きを示す事情が認められるのであり,これらもまたA証言の信用性を支えるものであると評価することができる。すなわち,①被告人とBとのこれまでのやりとり,殊にDがテナント契約しているCビル2階部分の賃料不払い等を巡って訴えを提起され,近々明け渡しを迫られる状況までに至っていたことなどからすると,被告人には,Bを殺害する動機が認められる一方で,Aには従前Bやその家族との接点が全くないのであって,同人には被告人の関与なく被害者を殺害する動機は認められない。また,②本件強盗殺人の被害品であるB名義の携帯電話やE名義のキャッシュカード等を実際に使用したのは被告人であり,また,被告人がこれらを自身で携帯したりD店内に置くなどして保管しており,Aの関与としては,Bから強取したもののうち,比較的価値の低い物を廃棄したにすぎない。しかも,Aが廃棄した袋の中からは,Bらの被害品と共に被告人が作成した書類等も併せて発見されていることからすると,この廃棄行為についても,当然被告人も関与しているものと認められる。 (8)なお,Bの「おば」を名乗る者からのB宅への電話及びEを名乗る者からのI法律事務所への電話については,いずれもB名義の携帯電話からの架電であり,その当時Bは既に死亡しておりこれら携帯電話は被告人の支配下にあったこと,上記電話はいずれも女性からの電話であること,いずれの電話においてもEが「やくざの男」とつながりがあるかのような 架電であり,その当時Bは既に死亡しておりこれら携帯電話は被告人の支配下にあったこと,上記電話はいずれも女性からの電話であること,いずれの電話においてもEが「やくざの男」とつながりがあるかのような発言があるところ,これは被告人自身も自らが作成したと認める手紙(甲31)の内容とも合致することなどから,上記電話はいずれも被告人が架けたものと推認することができる。 このように,B死亡後に,捜査を撹乱させるかのような虚偽の内容の電話を関 係者に架けていることも,本件各犯行に被告人が関与していることを窺わせる事情であるということができ,同時にA証言を支えるものと評価することができる。 A証言について弁護人の指摘する事情の検討(1)弁護人は,前記A証言について,①Aが証言するところの,事件に関与することとした動機が不自然であること,②B殺害に至る経緯が不自然であること,③同人の証言のうちBの着衣損傷について客観的証拠と齟齬すること,④死体遺棄方法について被告人と事前の話合いがなかったことは不自然であることの4点を指摘し,同証言は信用できない旨主張するので,これらについて検討する。 (2)①の指摘について弁護人は,レトルト食品等の食事をご馳走してくれた恩義のみで強盗殺人という重大事件に手を貸すことは不自然であり,また,分け前欲しさからの犯行だとすれば,事前に具体的な額を聞かないまま強盗殺人に協力することも,これまた不自然であるとする。 しかしながら,A証言によれば,当時同人はいわゆるホームレス生活をしていたもので,自動販売機の釣り銭口に残った小銭を集めるなどして食事代に充てるなど困窮していたものである。そこで,そのような状況下にあれば,レトルト食品等であっても,一般市民の感覚とは異なり,これをご馳走されれば命拾いしたとして強く恩義に感 銭を集めるなどして食事代に充てるなど困窮していたものである。そこで,そのような状況下にあれば,レトルト食品等であっても,一般市民の感覚とは異なり,これをご馳走されれば命拾いしたとして強く恩義に感じることはそれほど不自然なことと言うことはできないと思われる。また,分け前欲しさについてはA自身も認めているところで,具体的な額までは聞いていないとしても,預金通帳を奪うといった被告人の言葉から,Aは,ある程度まとまった現金を受け取ることができると考えたものといえ,これについても,被告人に協力するに至った動機として不合理であるとは言えない。加えて,関係各証拠によれば,被告人はAを完全にその支配下に置いていたと見られることも,Aが被告人から言われるままに犯行に加 担した一事情としてあげられる。 (3)②の指摘について弁護人は,Dの実質的経営者として日常的に経済活動に携わっている被告人が,Bから預金額や銀行印の所在等を聞くことなく,預金通帳の所在を聞いただけで同人を殺害したというのは不自然であるとする。 しかしながら,A証言によると,BをDに引きずり込んだ後,まずは同人に預金通帳と印鑑の所在を聞いており,預金額についても500万円という具体的な数字が出ていたというのであって,これによると,被告人らは,預金額及び印鑑の所在も聞き出した上でBを殺害したということができるのであるから,弁護人の指摘は当たらないというべきである。 (4)③の指摘について弁護人は,Aが,被告人がB着用のセーター及び長袖シャツを2枚まとめて鋏で切断した旨証言している点について,実際の損傷状況からは同一機会に切断したとは考えられず,同証言は虚偽であるとする。 確かに,2枚の衣類の損傷状況を見ると,これらを全くの同一機会に切断したものと見るのは困難である。しかしながら,一 ,実際の損傷状況からは同一機会に切断したとは考えられず,同証言は虚偽であるとする。 確かに,2枚の衣類の損傷状況を見ると,これらを全くの同一機会に切断したものと見るのは困難である。しかしながら,一方で,全くの同一機会に切り始めから終わりまでこの2枚をまとめて切断していたのではないものの,その途中において,2枚を別々にして切断するなどの行為もあった可能性も十分にあり,かつ,客観的な損傷状況にも符合するものといえる。前記A証言における「1回で切った」とは,セーターを切断した後に,今度は長袖シャツを切断するというような2回の切断行為はなかったという趣旨と解するのが相当であり,そうすると,2枚同時に切断する過程において,その途中でセーターと長袖シャツを別々に切断するといった行為を交えることも,同人の言う「1回で切った」というものと矛盾することはないというべきである。 そうすると,この点についてのA証言は虚偽であるということはできない。 (5)④の指摘について 弁護人は,BをD店舗内で殺害する以上,その死体の処理方法について,事前に具体的に計画立案する必要性があるのに,これがなかったというのは不自然であるとする。 しかしながら,本件各犯行の具体的計画の立案者は被告人で,Aは被告人の指示により本件各犯行に関与したということを前提とすれば,死体の処理方法について,B殺害前にAが被告人から具体的な話を聞かされていないということは特段不自然なこととはいえない。また,A証言によると,Dの奧の部屋に隠すあるいは山に埋めるなど,大まかには死体処理方法については事前に被告人の考えが述べられていたというのであるから,いずれにせよ,弁護人の指摘は当たらないというべきである。 その他被告人の主張についての検討被告人は,本件強盗殺人及び死体遺棄については,A 前に被告人の考えが述べられていたというのであるから,いずれにせよ,弁護人の指摘は当たらないというべきである。 その他被告人の主張についての検討被告人は,本件強盗殺人及び死体遺棄については,Aが1人で勝手にやったものであり,自分は,強盗殺人の現場には現在していたものの,Aから脅されていたためにその犯行を止めることはできず,また,B殺害後,Aと行動を共にしたのも,同人から脅されていたためであって,逃げだすこともできず,また警察に通報することもできなかった旨供述している。 しかしながら,被告人は,Aと行動している途中に銀行のATMコーナーに立ち寄り,専ら自分の用事に過ぎない,自分名義の口座及び次女名義の口座の通帳記入を行っていることや,被告人とAが立ち寄った銀行やコンビニエンスストア等の防犯カメラに撮影された映像から見てとれる被告人の行動や表情等からすると,被告人がAから脅されて,おびえながら同人と共に行動していたものではなく,むしろ,被告人が自らの意思で積極的に行動していたと考えるほうが自然である。また,被告人は,Aの前では110番通報することができず,また,Aが立ち去った後も,同人がパトカー等に気が付いて遠くへ逃げられては困るので出来なかった旨供述しているが,殺人という場面を直接目にしていながら,これを警察に通報しなかった理由としては不自然,不合理で無理がある。 その他,被告人は,当公判廷において,Bの妻であるEが本件各犯行に関与していることを窺わせる供述をするも,本件関係各証拠を精査してもそのような事実は無く,到底採用の限りでない。 結語以上,検討したとおり,被告人と共に本件各犯行を敢行した旨のA証言は,十分に信用できる上,犯行前後の状況を見ても,被告人が本件各犯行に関与したことを推認させる事情が多く認められる。 そう 結語以上,検討したとおり,被告人と共に本件各犯行を敢行した旨のA証言は,十分に信用できる上,犯行前後の状況を見ても,被告人が本件各犯行に関与したことを推認させる事情が多く認められる。 そうすると,被告人が本件強盗殺人及び死体遺棄についてもAと共謀したこと及び被告人もAと共に実行行為を分担したことが認められ,被告人には詐欺罪のほかにも,強盗殺人罪及び死体遺棄罪が成立する。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は刑法60条,240条後段に,判示第2の所為は同法60条,190条に,判示第3の所為は同法60条,246条1項にそれぞれ該当するところ,判示第1の罪について所定刑中無期懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるが,同法46条2項本文,10条により最も重い判示第1の罪につき選択した無期懲役刑で処断し他の刑を科さないこととして,被告人を無期懲役に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中250日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 本件は,被告人が,共犯者1名と共謀して,金品強取の目的で被害者を殺害して現金やクレジットカード機能付きキャッシュカード等を強取した上,その死体を遺棄したという強盗殺人及び死体遺棄並びに上記キャッシュカードを用いてスーパーマーケットで食料品等を詐取したという詐欺の事案である。 先に認定した被告人と被害者との関係からすると,被告人が本件強盗殺人に及んだ動機は,被害者から建物明渡請求訴訟を提起されたことで,自らが大切にし てきた雑貨店の立ち退きを余儀なくさせられることをおそれた被告人が,これを防ぐと共に,被害者から金品を奪うというものであったと推認されるところ,その発想は極めて粗暴で短絡的かつ自己中心的というほ てきた雑貨店の立ち退きを余儀なくさせられることをおそれた被告人が,これを防ぐと共に,被害者から金品を奪うというものであったと推認されるところ,その発想は極めて粗暴で短絡的かつ自己中心的というほかなく,酌量の余地は全くない。 被告人は,被害者の殺害を決意するや,かねてより食事をご馳走するなどして手なずけていたいわゆるホームレスである共犯者に対してその具体的な殺害方法を話した上,そのための道具としてビニールテープや紐を準備し,本件各犯行当日以前にも実際に一度被害者を上記雑貨店内に連れ込もうとする行動を起こして失敗し,また,通勤に向かう被害者を足止めにするために被害者運転車両をパンクさせるなどしたがこれも功を奏さなかった。それにもかかわらず,これに懲りることなく,本件各犯行当日にもさらに被害者が上記雑貨店店舗前を通るのを待ちかまえ,通りかかったところ無理矢理共犯者と2人で同店舗内に連れ込んで本件殺害行為を実行している。このように,本件強盗殺人は,入念な準備に基づく計画的な犯行である。 被告人らは,被害者を無理矢理同店舗内に連れ込んで椅子に座らせてその手や足を椅子に縛り付けたり,頭部にエコバッグを被せてその上からビニールテープを巻き付けたり,紐でその首を絞めたりした上,最終的には,鼻や口の辺りにビニールテープを何重にも巻き付けて,被害者を死亡するに至らしめている。途中に被害者の頭部に包丁を突き付けたり,さらには,胸部等を足蹴にするなどしている。このように,その犯行態様は,強固な殺意に基づく,粗暴,執拗,残忍で非情なものである。その後,被告人らは,こたつ上掛けで被害者の死体をくるんで車で運搬し,さらには被告人において足で蹴落として被害者遺体を川に遺棄している。この死体遺棄の態様は,死者に対する畏敬の念が微塵も感じられない非道で悪質なも は,こたつ上掛けで被害者の死体をくるんで車で運搬し,さらには被告人において足で蹴落として被害者遺体を川に遺棄している。この死体遺棄の態様は,死者に対する畏敬の念が微塵も感じられない非道で悪質なものである。 そして,被害者殺害の実行行為の大部分は共犯者において行われたものではあるものの,殺害方法等を具体的に立案したのは被告人であり,まさに本件各犯行 の首謀者として重要な役割を果たしたものということができる。 被害者は本件各犯行によってその尊い生命を奪われ,無惨な姿で発見されるに至った。被害者は,妻と共に縫製業を営みながら2人の子供を育て上げ,その後は,運転手等のアルバイトで生計を立て,妻と2人で日々の生活を慎ましやかに送っていたところ,突然被告人らから前記のような残酷な仕打ちを受け,その生涯を終えることを余儀なくされたのである。予期せぬ非業の死を迎えさせられた被害者自身が受けた苦痛,無念さは筆舌に尽くし難く察するに余りある。被害者の妻が受けた精神的衝撃,経済的損失の大きさはいずれも計り知れない。このように,被害結果は甚大である。にもかかわらず,被告人は遺族に対し何らの慰謝の措置も講じておらず,今後十分にこれが講じられる可能性は認め難い。被害者の妻は,当公判廷において,被告人に対する峻烈な処罰感情を表明しているが,それも当然の感情と理解できる。強盗殺人の被害額も現金約3万円,物品時価合計1万3000円と少額ではない。 また,判示第3の詐欺の犯行についてみるに,被告人らは,失敗に終わったものの,被害者から強取したクレジットカード機能付きキャッシュカードで借財や現金の引き出しを試みたり,判示記載のとおりスーパーマーケットから大量の食料品等を詐取しているところ,このように被害者を殺害して間もない時間帯に何ら躊躇することなく利得獲得の ャッシュカードで借財や現金の引き出しを試みたり,判示記載のとおりスーパーマーケットから大量の食料品等を詐取しているところ,このように被害者を殺害して間もない時間帯に何ら躊躇することなく利得獲得のために走るなど,まさに利欲的な動機に基づく悪質な犯行であり,その被害額も3万8807円と少なくない。 そして,被告人は,犯行後,強取した被害品を廃棄したり,被害者の妻を装うなどして関係者に捜査を撹乱させるかのような虚偽の内容の電話を架けるなどの罪証隠滅行為に及んでいるほか,当公判廷においても,判示第1の強盗殺人及び第2の死体遺棄の犯行について,共犯者が1人で勝手にやったことであるとして自己の関与を否定し,当公判廷において不合理な弁解に終始するばかりか,被害者の妻を侮辱する発言を繰り返し,同人が上記各犯行の真犯人であるかのような供述をするなど強盗殺人及び死体遺棄の各事実に関する反省悔悟の情は皆無であ る。 以上の事情によれば,被告人の刑事責任は誠に重大である。 そこで,被告人が判示第3の詐欺については事実を認め,相手方からは拒否されたものの,弁護人を通じて被害弁償を試みるなどの対応をしていること,身体障害者及び精神障害者としての等級認定を受けており,その健康状態,精神状態が芳しくないこと,夫が当公判廷に情状証人として出廷し,今後も被告人を受け入れ,監督していく旨誓約していること,これまで罰金前科1犯のほかに前科はなく,雑貨店を経営するなどして真面目に稼働し,家庭においても2人の娘を育て上げるなど,通常の社会人としての生活を営んできたことなど被告人に有利に斟酌し得る事情を最大限考慮しても,酌量減軽すべきほどの事情は窺われず,被告人に対しては無期懲役を選択し,その生涯をかけて贖罪させることが相当であると判断した。 (求刑無期懲役)平成 人に有利に斟酌し得る事情を最大限考慮しても,酌量減軽すべきほどの事情は窺われず,被告人に対しては無期懲役を選択し,その生涯をかけて贖罪させることが相当であると判断した。 (求刑無期懲役)平成21年2月13日さいたま地方裁判所第5刑事部(裁判長裁判官大谷吉史裁判官西野牧子裁判官長橋政司)

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