- 1 -平成27年1月15日判決言渡平成26年(行コ)第158号各法人税更正処分等取消請求控訴事件 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 四谷税務署長が控訴人に対して平成23年3月15日付けでした控訴人の平成21年2月2日から平成21年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額マイナス9657万8987円を超える部分,差引納付すべき法人税額マイナス3万8850円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金9657万8987円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 3 四谷税務署長が控訴人に対して平成23年3月15日付けでした控訴人の平成21年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額マイナス4億7304万7649円を超える部分,差引納付すべき法人税額マイナス41万1682円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金5億6962万6636円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 4 四谷税務署長が控訴人に対して平成24年1月27日付けでした控訴人の平成22年4月1日から平成23年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額マイナス8億0262万0219円を超える部分,差引納付すべき法人税額マイナス64万9963円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金13億7224万6855円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 - 2 - 5 四谷税務署長が控訴人に対して平成24年12月21日付けでした控訴人の平成23年4月1日から平成24年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額マイナ 取り消す。 - 2 - 5 四谷税務署長が控訴人に対して平成24年12月21日付けでした控訴人の平成23年4月1日から平成24年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額マイナス6億8703万4706円を超える部分,差引納付すべき法人税額マイナス35万7110円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金20億5928万1561円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要等 1 事案の概要(1) 控訴人は,平成21年2月2日,a株式会社(以下「a」という。)の完全子会社であったb株式会社(同日変更前の商号は「c株式会社」。以下,商号変更の前後を通じて「d」という。)から分社型分割(平成22年法律第6号による改正前の法人税法2条12号の10参照。以下,同改正前の法人税法を単に「法」という。)である新設分割(以下「本件分割」という。)により設立された。 その後,dは,同月20日(契約締結日は前日),e株式会社(以下「e」という。)に対し,控訴人の発行済株式全部の譲渡(以下「本件譲渡1」という。)を行い,aは,同月24日(契約締結日は前日),eに対し,dの発行済株式全部の譲渡(以下「本件譲渡2」という。)を行い,eは,同年3月30日(合併契約締結日は同年2月25日),eを合併法人(同条12号参照),dを被合併法人(同条11号参照)とする吸収合併(以下「本件合併」という。)を行った。 そして,控訴人は,本件分割は適格分割(同条12号の11)に該当しない分割(非適格分割)であり,資産調整勘定の金額(法62条の8第1項参照)が生じたとして,法62条の8第1項,4項及び5項に基づき,控訴人の①平成21年2月2日から同年3月31日までの事業年度,②同年4月1日から平成22年3月31日まで の金額(法62条の8第1項参照)が生じたとして,法62条の8第1項,4項及び5項に基づき,控訴人の①平成21年2月2日から同年3月31日までの事業年度,②同年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度,③同年4月1日から平成23- 3 -年3月31日までの事業年度及び④同年4月1日から平成24年3月31日までの事業年度に係る各法人税の確定申告に当たり,資産調整勘定の金額からそれぞれ所定の金額を減額し,損金の額に算入した。 (2) これに対し,四谷税務署長は,控訴人が,本件分割の時点で本件譲渡1が見込まれていたものとして本件分割を非適格分割とし,これにより資産及び負債等の移転を受けたものとして資産調整勘定の金額を生じさせたことは,法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの。以下「施行令」という。)4条の2第6項1号(法2条12号の11イに規定する「政令で定める関係」を定めたもの)に規定する要件を形式的に満たさないこととすることにより本件分割を非適格分割とし,控訴人に資産調整勘定の金額を生じさせてこれを減額して損金の額に算入することを目的とした異常ないし変則的なものであり,これを容認した場合には,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるとして,法132条の2の規定に基づき,本件分割の時点で本件譲渡1が見込まれることなく,適格分割となる本件分割により控訴人が資産及び負債等の移転を受けたものとし,資産調整勘定の金額は生じなかったこととして,控訴人の所得金額を計算し,上記各事業年度の法人税につき更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下,「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)をした。 (3) 本件は,控訴人が,本件各更正処分 各更正処分」という。)及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下,「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)をした。 (3) 本件は,控訴人が,本件各更正処分等は法132条の2の否認の要件が満たされていなかったにもかかわらずされた違法なものであると主張して,四谷税務署長が所属する被控訴人を被告として,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の取消しを求めた事案である。 (4) 原審は,本件各更正処分等を適法と判断して,控訴人の請求をいずれも棄却した。 そこで,控訴人がこれを不服として控訴した。 - 4 - 2 関係法令の定め,前提事実,被控訴人が主張する本件各更正処分等の根拠及び適法性,争点並びに争点についての当事者の主張原判決の「第2 事案の概要」の2(原判決別紙2を含む。),3,4(原判決別紙3を含む。),5及び6(原判決別紙4を含む。)記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求はいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり補正するほか,原判決の「第3 当裁判所の判断」の1から4まで記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 21頁15・16行目の「甲A3,41,77,80,84」を「甲41,77,80,84,甲A3」に改める。 (2) 29頁25行目の「甲85(f意見書)」の次に「,甲90(g意見書),甲91(同補充意見書),甲92(h意見書)」を加える。 (3) 30頁14行目の「検討するに」の次に次のとおり加える。 「,法132条の2の条番号が枝番とされているのは,法132条の次に一条を加えるに当たり,法133条以下の規定の条番号の変更を避けるために採られた立法技術上の措置であって,それ自体は,法132条に定め ,法132条の2の条番号が枝番とされているのは,法132条の次に一条を加えるに当たり,法133条以下の規定の条番号の変更を避けるために採られた立法技術上の措置であって,それ自体は,法132条に定める否認の要件と法132条の2に定める否認の要件とを同一に解すべき根拠にはならず,また,法132条と法132条の2の条文表現に共通する部分があるとはいっても,「合併等により移転する資産及び負債の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加,法人税の額から控除する金額の増加,第1号又は第2号に掲げる法人の株式(出資を含む。第2号において同じ。)の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加,みなし配当金額(第24条第1項(配当等の額とみなす金額)の規定により第23条第1項第1号(受取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなされる金額をいう。)の減少」との具体的例示をもって否認の要件を定める法132条- 5 -の2とこのような具体的例示を欠く法132条とを同一に解すべき理由はなく,さらに,これらの規定は,いずれも租税回避行為(計算)の否認という共通の趣旨・目的を有するものとはいえ」(4) 30頁20・21行目の「法132条の2とはその基本的な趣旨・目的を異にする。」を次のとおり改める。 「他方で,法132条の2は,組織再編成に関わる当事者として所有と経営とが分離していない会社を想定するものではなく,また,前記アに説示したとおり,組織再編成の形態や方法は複雑かつ多様であり,同じ経済的効果を発生させ得る複数の方法があり得るところ,複数の行為の組合せ,順序等の選択された方法につき,特定の行為や事実の存否を要件として課税上の効果を定める個別規定のとおりに課税上の効果を生じさせた場合に明らかに不当と評価すべき状況が生じ得ることを想定して,このような状況 等の選択された方法につき,特定の行為や事実の存否を要件として課税上の効果を定める個別規定のとおりに課税上の効果を生じさせた場合に明らかに不当と評価すべき状況が生じ得ることを想定して,このような状況の原因となる行為又は計算を否認することができるものとしたものであるから,法132条の規定とはその趣旨・目的において相当異なった側面を有するというべきである。」(5) 32頁8行目末尾に改行の上次のとおり加える。 「 法人税法132条(平成15年法律第8号による改正前のもの)に関する最高裁判所昭和51年(行ツ)第34号昭和53年4月21日第二小法廷判決・訟務月報24巻8号1694頁は,本件とは事案及び適用法条を異にし本件に適切でない。」(6) 33頁5行目の「解される。」の次に「また,法132条の2は,組織再編成税制の趣旨に鑑み,分割に伴う分割承継法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合も対象としていることは明らかであるが,新設分割にあっては,分割承継法人(新設分割設立会社)が設立されるまでは,当該法人は存在せずその行為又は計算を観念することができないから,分割法人(新設分割会社)の分割行為等分割承継法人以外の法人の行為又は計算を否認して- 6 -分割承継法人の法人税につき更正又は決定をすることも予定していると解される(新設合併についても同様である。)。」を加える。 (7) 33頁10・11行目の「その前の「次に掲げる法人」を受けている」を「同条中その直前の「法人」すなわち「次に掲げる法人」を意味する(「法人税につき更正又は決定を受ける法人」の趣旨であれば,例えば「その更正又は決定に係る法人」と表現されるはずである。)」に改める。 (8) 33頁25行目の「規定していた。上記の改正により」を次のとおり改める。 「規定して ける法人」の趣旨であれば,例えば「その更正又は決定に係る法人」と表現されるはずである。)」に改める。 (8) 33頁25行目の「規定していた。上記の改正により」を次のとおり改める。 「規定していたところ,上記改正前の法人税法132条の2が,否認することができる行為又は計算の主体である法人を法人税につき更正又は決定を受ける法人に限定するとの趣旨を含むものとすれば,「これらの法人」との条文表現は採用されなかったものと考えられる。そして,上記改正により」(9) 34頁6行目の「以上の点に加え」の次に次のとおり加える。 「,租税回避行為(計算)の否認という法132条の2と共通の趣旨・目的を有する所得税法157条4項及び相続税法64条4項が,専ら個人が納税義務者となる所得税及び相続税又は贈与税についての更正又は決定に関し,法人の行為又は計算を否認することができる旨を定めていること,法人の組織再編成に係る行為又は計算の否認につき,否認することができる行為又は計算の主体である法人を法人税につき更正又は決定を受ける法人に限定すべき立法事実を認めるに足りず,かえって,前記⑴から⑶までに説示したとおり」(10) 34頁17行目の「また」から22行目末尾までを次のとおり改める。 「また,法132条において,否認の対象となる行為又は計算が,法人税につき更正又は決定を受ける法人のものに限定されるとしても,前記⑶イに説示したとおり,法132条と法132条の2とは,その趣旨・目的にお- 7 -いて相当異なった側面を有すること,前記アに説示したとおり,法132条以外にも,租税回避行為(計算)の否認を認める規定が存在し,その中には,その税について更正又は決定がされる者と否認の対象となる行為又は計算の主体とが異なることを予定しているものがあることからす 条以外にも,租税回避行為(計算)の否認を認める規定が存在し,その中には,その税について更正又は決定がされる者と否認の対象となる行為又は計算の主体とが異なることを予定しているものがあることからすれば,法132条の2について,法132条と同様に解すべき理由はないというべきである。」(11) 40頁11行目の「上記」を「法人税法施行規則27条の16」に改める。 (12) 43頁23行目の「本件提案に」を「,当初,本件提案のようにdの上記事業に関する権利義務の一部のみを新設分割設立株式会社に承継させる新設分割に」に改める。 (13) 45頁23行目の「得ない」を「を得ない(控訴人主張の上記分割型分割を利用した組織再編成についても,その事実関係のいかんによっては,法132条の2の規定による否認等を通じて,適格分割として評価される余地があり,当然に非適格分割とされると断ずることはできない。)」に改める。 (14) 47頁12行目の「認められる」の次に「(本件計画を定めるに当たっては,aとeとの間で協議が繰り返されたものと推認されるから,eが短期間であっても控訴人をdを介した孫会社とすることに事業上の支障があると考えていたなら,aの関係者がその旨を認識していなかったとは考え難い。)。 現に,eの幹部は,税務当局の調査に対し,本件分割後まずdがeに控訴人の株式を譲渡すること(本件譲渡1)に意味があるかないかは気にしていなかったと説明している(乙8)。なお,控訴人は,原審平成23年(行ウ)第698号事件の訴状において,本件分割は,d(分割後の控訴人)が株式の上場を目指していたから本件譲渡1がなくても非適格分割であったが,非適格分割であることをより明確にするために本件譲渡1が行われたにすぎないと主張していたが(原審平成24年(行ウ)第438号 が株式の上場を目指していたから本件譲渡1がなくても非適格分割であったが,非適格分割であることをより明確にするために本件譲渡1が行われたにすぎないと主張していたが(原審平成24年(行ウ)第438号事件及び平成25年(行- 8 -ウ)第311号事件の各訴状も同様であった。),被控訴人から本件譲渡2に先立ち本件譲渡1を行う事業上の必要は認められないと指摘された後,平成24年11月30日付け準備書面において,eが控訴人を孫会社とすることには事業上の不都合があったと主張したところである」を加える。 (15) 48頁4・5行目の「したがって」から7行目末尾までを次のとおり改める。 「 もっとも,被控訴人は,本件分割が,その後に本件譲渡1を行うという計画の下に行われたこと(本件計画を前提とする分割行為)につき,法132条の2により,本件分割が,その後に本件譲渡1を行わないことを前提として行われたもの(本件計画を前提としない分割行為)に引き直し,分割後に分割法人と分割承継法人との間に当事者間の完全支配関係が継続することが見込まれている場合に該当する(適格分割に該当する)と認定して,控訴人に係る法人税の課税標準等を計算することができるところ,私法上,控訴人の分割承継行為を観念することができないとしても,税法上は,控訴人の分割承継行為を観念し得るとの見解に基づき,否認の対象を控訴人の分割承継行為であると主張するものと解される。」(16) 48頁13行目の「したがって」から15行目末尾までを次のとおり改める。 「そして,これまで認定説示したところによれば,本件においては,控訴人に係る法人税につき本件各更正処分等をするに当たり,dの本件計画を前提とする分割行為を否認し,本件計画を前提としない分割行為に引き直すことが許されると解するのが相当であ れば,本件においては,控訴人に係る法人税につき本件各更正処分等をするに当たり,dの本件計画を前提とする分割行為を否認し,本件計画を前提としない分割行為に引き直すことが許されると解するのが相当であり,このように解することは,被控訴人の上記主張の趣旨に反しないというべきである。」(17) 48頁25行目の「しかしながら」の次に次のとおり加える。 「,法132条の2の規定は,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるときは,税務署長が,合併等に係る同条各号に掲げる法人の- 9 -法人税につき更正又は決定をする場合において,同条各号所定の法人の行為又は計算にかかわらず,税務署長の認めるところにより,法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる旨を定めるものであって,これは法人税法その他の税法の諸規定を離れて判断することはできないから,上記「行為又は計算」に該当する事実と税務署長が同条の規定により計算する基礎となる事実との関係を控訴人主張のように解すべき理由はない。また」。 (18) 49頁22行目末尾に改行の上次のとおり加える。 「 なお,以上に説示したとおり,本件は,eがデータセンターを自社保有することを事業上の目的としてdを買収・吸収合併したものであったが,本件分割時において,控訴人がd及びdを吸収合併するe以外の第三者の支配下に置かれることは全く予定されておらず,経済的にみれば控訴人につき当事者間の完全支配関係が継続することが見込まれているとの実態があったと評価される取引であったのに,本件計画は,当事者間の完全支配関係についての法及び施行令の技術的な定めに着目して,本件分割を非適格分割とすることにより法人税の負担を減少させるために,事業上の必要はない本件譲渡1をあえて介在させたものであり, 事者間の完全支配関係についての法及び施行令の技術的な定めに着目して,本件分割を非適格分割とすることにより法人税の負担を減少させるために,事業上の必要はない本件譲渡1をあえて介在させたものであり,このような本件の具体的な事実関係に照らして,法132条の2の規定により,本件分割後にまず本件譲渡1だけを行うという本件計画を前提とした分割行為を否認したものであり,法2条12号の11イ,62条の8第1項,施行令4条の2第6項1号等の個別規定をその文理に反して適用したものではない。」 2 よって,原判決は相当であって本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第7民事部 裁判長裁判官菊池洋一- 10 - 裁判官濱口浩 裁判官菅家忠行
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