- 1 -平成26年8月6日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(行ケ)第10333号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成26年7月16日判決原告三菱電機株式会社 訴訟代理人弁理士小川文男同木挽謙一被告特許庁長官指定代理人林茂樹同伊藤元人同藤原直欣同窪田治彦同山田和彦 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2012-22276号事件について平成25年10月28日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 原告は,発明の名称を「エレベータ装置」とする発明について,国際出願日を2006年(平成18年)11月20日とする特許出願(特願2008-545259号。請求項の数10。以下「本件出願」という。)をした(甲5,6)。 - 2 -特許庁は,平成24年7月31日付けで拒絶査定をしたため,原告は,同年11月12日,これに対する不服の審判を請求した。 特許庁は,これを不服2012-22276号事件として審理し,平成25年10月28日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年11月1 特許庁は,これを不服2012-22276号事件として審理し,平成25年10月28日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年11月12日,原告に送達された。 原告は,平成25年12月11日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件出願の特許請求の範囲の請求項7の記載(平成24年11月12日付け手続補正書(甲6)による補正後のもの。同補正後の請求項の数8。以下,請求項7に記載された発明を「本件発明」という。本件出願に係る明細書を「本件明細書」という。)は,次のとおりである(甲6)。 【請求項7】「昇降路内を昇降されるかご,上記かごの位置を監視するとともに,上記かごの速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する制御装置,複数の乗場ドア,及び上記乗場ドアの開閉状態を検出するドア開閉検出手段を備え,上記制御装置には,通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されており,上記制御装置は,上記かごの位置の情報と,上記かごの走行方向の情報と,上記ドア開閉検出手段からの情報と,上記過速度パターンとに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,上記かごが停止している階以外の上記乗場ドアの開放が上記ドア開閉検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低- 3 -くするエレベータ装置。」 3 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,本件発明は,下記アの刊行物1に記載された発明(以下「甲1発明」という。),下記イの刊行物2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をす 審決書(写し)記載のとおりである。要するに,本件発明は,下記アの刊行物1に記載された発明(以下「甲1発明」という。),下記イの刊行物2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるというものである。 記ア刊行物1:特開昭59-64484号公報(甲1)イ刊行物2:特開2005-206346号公報(甲2) 対比本件審決が認定した甲1発明並びに本件発明と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 ア甲1発明「昇降路内を昇降されるエレベーターかご1,エレベーターかご1の位置を監視するとともに,エレベーターかご1の速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する制御装置,複数の乗場戸を備え,制御装置には,平常運転時の速度制限用ガバナの動作速度曲線と,保守時運転時に動作する速度制限装置の動作速度曲線とが設定されており,制御装置は,エレベーターかご1の位置の情報と,保守時運転の指令と,動作速度曲線とに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,保守時運転の指令が与えられると,過速度の設定値を低くするエレベーター。」イ本件発明と甲1発明との一致点「昇降路内を昇降されるかご,- 4 -かごの位置を監視するとともに,かごの速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する制御装置,複数の乗場ドアを備え,制御装置には,通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されているエレベータ装置。」である点。 ウ本件発明と甲1発明との相違点本件発明においては,「乗場ドアの開閉状態 には,通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されているエレベータ装置。」である点。 ウ本件発明と甲1発明との相違点本件発明においては,「乗場ドアの開閉状態を検出するドア開閉検出手段」を備え,制御装置は,「かごの位置の情報と,かごの走行方向の情報と,ドア開閉検出手段からの情報と,過速度パターンとに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を低くする」のに対し,甲1発明においては,乗場戸(本件発明における「乗場ドア」に相当する。)の開閉状態を検出するドア開閉検出手段を備えているか否か不明であり,制御装置は,「エレベーターかご1の位置の情報と,保守時運転の指令と,動作速度曲線とに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,保守時運転の指令が与えられると,過速度の設定値を低くする」点。 エ取消事由原告は,取消事由として,①甲1発明の認定誤り,②本件発明と甲1発明との対比判断の誤り,③相違点の判断誤りを主張しているところ,これらの主張は,①本件発明の通常運転用の過速度パターンは調速機の動作と関係なく設定されるところ,甲1発明の「平常運転時の速度制限用ガバナの動作速度曲線」は,「平常運転時の調速機の動作速度曲線」といえるから,本件発明の「通常運転用の過速度パターン」と相違するにもかかわらず,本件審決が,「通常運転用の過速度パターン」が設定されている点を- 5 -一致点と認定し,上記相違点を看過したことは誤りである,②相違点の判断において,本件発明は,エレベータの制御装置について,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,設定された現在の過速度を「更に」低くし,低 である,②相違点の判断において,本件発明は,エレベータの制御装置について,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,設定された現在の過速度を「更に」低くし,低くする手段として過速度パターンの切り換えによる方法を含まないという構成を有するにもかかわらず,これらの構成を有さないものとした上で,相違点に係る容易想到性の判断を行ったものであるから,本件審決の相違点の判断は誤りである点に整理されるので,取消事由としては,以下のとおりに整理し,判断する。 一致点の認定誤り及び相違点の看過相違点の判断誤り第3 原告の主張 1 取消事由1(一致点の認定誤り及び相違点の看過)本件審決は,本件発明と甲1発明の一致点として,制御装置には,通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されているエレベータ装置である点を認定したが,以下のとおり,本件発明の通常運転用の過速度パターンは調速機の動作と関係なく設定されるのに対し,甲1発明は平常運転時の調速機の動作速度曲線を有するにすぎず,本件発明の「通常運転用の過速度パターン」を有していないから,両発明は異なるというべきであって,本件審決は,この点について一致点の認定を誤り,相違点を看過した誤りがある。 本件発明の特許請求の範囲の「上記制御装置には,通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されており」との記載からすると,「通常運転用の過速度パターン」は,保守運転用の過速度パターンとは別に設定されていることが分かる。また,本件明細書(甲5)の段落【0020】には「また,かご7の通常運転時と保守運転時とでは,異なる過速度パターンが設定されている。」と記載されていることからも,本件発- 6 -明の「通常運転用の過 本件明細書(甲5)の段落【0020】には「また,かご7の通常運転時と保守運転時とでは,異なる過速度パターンが設定されている。」と記載されていることからも,本件発- 6 -明の「通常運転用の過速度パターン」が保守運転用としては用いられないことは明らかである。さらに,本件明細書(甲5)の段落【0030】には,「また,制御装置11で設定されている過速度は第1の過速度であり,ブレーキ装置4を作動させたにも拘わらずかご7の速度がさらに上昇し第2の過速度(>第1の過速度)に達すると,調速機(図示せず)により非常止め装置15が作動される」と記載されている点からすると,制御装置に設定されている過速度パターンに基づく第1の過速度は,調速機が動作する第2の過速度とは別に設けられていることが分かる。 以上の事実からすると,本件発明の「通常運転用の過速度パターン」は,調速機の動作とは何ら関係ないものである。 なお,本件発明の「通常運転用の過速度パターン」が,甲1発明における機械式ガバナ94の動作速度VHGよりも低い値に設定されているということは,特許請求の範囲には明確に記載されていないが,調速機(機械式ガバナ94)は,異常加速したかごを安全に停止させるために設置が義務づけられた装置の1つであり,確実に動作することを前提とするものであるから,「通常運転用の過速度パターン」を,調速機(機械式ガバナ94)が動作する速度VHGよりも高い速度に設定したとしても,結局は調速機が動作することになってしまうため技術的意義はなく,当業者であれば,特許請求の範囲に記載の「通常運転用の過速度パターン」が機械式ガバナ94の動作速度VHGよりも低い値に設定されているということは容易に把握することができる。 これに対し,刊行物1の記載からすると,甲1発明における「平常運転時 運転用の過速度パターン」が機械式ガバナ94の動作速度VHGよりも低い値に設定されているということは容易に把握することができる。 これに対し,刊行物1の記載からすると,甲1発明における「平常運転時の速度制限用ガバナの動作速度曲線」は,「平常運転時の調速機の動作速度曲線」であると認められる。 したがって,本件発明の通常運転用の過速度パターンは調速機の動作と関係がなく設定されるのに対し,甲1発明の通常運転用の過速度パターンは調速機の動作速度曲線であるという点で異なるものであるから,本件審決は一- 7 -致点の認定を誤り,相違点を看過したものである。 2 取消事由2(相違点の判断誤り)本件審決は,本件発明の制御装置は,「かごの位置の情報と,かごの走行方向の情報と,ドア開閉検出手段からの情報と,過速度パターンとに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を低くする」のに対し,甲1発明の制御装置は,「エレベーターかご1の位置の情報と,保守時運転の指令と,動作速度曲線とに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,保守時運転の指令が与えられると,過速度の設定値を低くする」ものであり,これらの相違点については,甲1発明に刊行物2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと判断した。しかしながら,以下のとおり,本件発明の制御装置は,かごの位置の情報と,かごの走行方向の情報と,ドア開閉検出手段からの情報と,過速度パターン(通常運転用の過速度パターン又は保守運転用の過速度パターン)とに基づいて現在の過速度を設定し,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,設定された現在の過速度を「 常運転用の過速度パターン又は保守運転用の過速度パターン)とに基づいて現在の過速度を設定し,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,設定された現在の過速度を「更に」低くし,その過速度を低くする手段として,過速度の設定値を通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換えることは含んでいないのに対し,甲1発明は,動作速度曲線を用いて一旦設定された過速度の値を,保守時運転の指令が与えられたときに,更に低くするものではなく,過速度を低くする手段として,通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換えることにより低くするものであるから,甲1発明に,刊行物2に記載された技術及び周知技術を用いても,当業者は相違点に係る構成について容易に発明をすることはできず,本件審決の相違点の判断には誤りがある。 本件発明についてア特許請求の範囲の請求項7(本件発明)の記載には,「上記制御装置に- 8 -は,通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されており,」(①),「上記制御装置は,上記かごの位置の情報と,上記かごの走行方向の情報と,上記ドア開閉検出手段からの情報と,上記過速度パターンとに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,」(②),「上記かごが停止している階以外の上記乗場ドアの開放が上記ドア開閉検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くする」(③)と記載されているところ,③の「上記過速度」は,直前の②の「現在の過速度」を引用するものである。また,②の「現在の過速度」は,その直前にある②の「上記過速度パターン」を用いて設定されることが記載され,この「上記過速度パターン」は,①の「通常運転用の過速度パターン」又は「保守運転用の過速度パ また,②の「現在の過速度」は,その直前にある②の「上記過速度パターン」を用いて設定されることが記載され,この「上記過速度パターン」は,①の「通常運転用の過速度パターン」又は「保守運転用の過速度パターン」を引用するものである。 このような記載からすれば,本件発明の「制御装置」は,保守運転時において,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,保守運転用の過速度パターンを用いて設定された現在の過速度の設定値を更に低くするものと解釈すべきである。そして,本件発明は,これによって「昇降路内で保守作業を行っている可能性のあるときに,かごや釣合おもりの速度をより確実に抑えることができるエレベータ装置を得る」(段落【0005】)という目的を達成するものである。 イ被告は,本件明細書の「実施の形態6では・・・制御装置11は,かご7が停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を低くする。他の構成は,実施の形態1~3と同様である。」との記載を前提に,実施の形態1ないし3の記載から,本件発明における「上記かごが停止している階以外の上記乗場ドアの開放が上記ドア開閉検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くする」とは,「かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を通常運転用の過速度パターン- 9 -から保守運転用の過速度パターンに切り換えることによって,過速度の設定値を低くする」ことを含意していると主張する。 しかしながら,本件発明の「上記かごが停止している階以外の上記乗場ドアの開放が上記ドア開閉検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くする」との特徴は,本件明細書の実施の形態6(段落【0058】及び ら,本件発明の「上記かごが停止している階以外の上記乗場ドアの開放が上記ドア開閉検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くする」との特徴は,本件明細書の実施の形態6(段落【0058】及び段落【0059】)にのみ記載されていることから,本件発明は,実施の形態6によりサポートされているといえる。ここで,実施の形態6についてみると,過速度パターンが切り換えられることは一切記載されておらず,過速度パターンが切り換えられることが明記されている実施の形態1ないし3とは明確に区別されているので,他の実施の形態とは異なる構成を抜き出して特記した事項であるといえる。そして,このような実施の形態6の記載に鑑みると,その趣旨は,本件発明の「上記かごが停止している階以外の上記乗場ドアの開放が上記ドア開閉検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くする」という他の実施の形態には説明のない特徴を説明するものであり,「他の構成」が,制御装置の処理のうち,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を低くする処理以外の処理や,制御装置以外の構成を指していることは明らかである。そのため,本件発明の「上記かごが停止している階以外の上記乗場ドアの開放が上記ドア開閉検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くする」ことを解釈するために,実施の形態1ないし3の記載を引用することはできず,被告の主張には前提として誤りがある。 以上によれば,本件発明は,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換えることによって,過速度の設定値を低くすることは含んでいないことは明らかである。 - 10 - により検出されると,過速度の設定値を通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換えることによって,過速度の設定値を低くすることは含んでいないことは明らかである。 - 10 -甲1発明について本件審決は,甲1発明について,エレベーターかご1の位置の情報と,保守時運転の指令と,動作速度曲線とに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,保守時運転の指令が与えられると,過速度の設定値を低くする制御装置を有するものと認定した。 しかしながら,甲1発明は,「通常運転時は速度制限用ガバナの動作速度曲線を用いて過速度を設定し,保守時運転の指令が与えられると,保守時運転時に動作する速度制限装置の動作速度曲線を用いて過速度を設定する」制御装置を有するエレベータ装置であるところ,上記認定は,動作速度曲線を用いて一旦設定した過速度の値を,保守時運転の指令が与えられたときに,更に低くすることを認定するものであって誤りである。 また,上記認定は,甲1発明について,保守時運転の指令が与えられると,動作速度曲線を切り換えること以外の方法で過速度の設定値を低くすることも含んでいると認定するものであって,この点でも誤りである。 以上によれば,本件発明は過速度パターン(通常運転用の過速度パターン又は保守運転用の過速度パターン)に基づいて現在の過速度を設定し,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,設定された現在の過速度を「更に」低くするものであるのに対し,甲1発明は,動作速度曲線を用いて一旦設定された過速度の値を,保守時運転の指令が与えられたときに,更に低くするものではない。そして,甲1発明は,「通常運転時は速度制限用ガバナの動作速度曲線を用いて過速度を設定し,保守時運転の指令が与えられると,保守 の値を,保守時運転の指令が与えられたときに,更に低くするものではない。そして,甲1発明は,「通常運転時は速度制限用ガバナの動作速度曲線を用いて過速度を設定し,保守時運転の指令が与えられると,保守時運転時に動作する速度制限装置の動作速度曲線を用いて過速度を設定する」ものであるから,刊行物2に記載された技術である「保守点検モードに切り換える」条件として「かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出される」ことを適用したとしても,「エレベーターかご1の位置の情報と,保守- 11 -時運転の指令と,動作速度曲線とに基づいて,現在の過速度を設定し,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出された場合は,保守時運転時に動作する速度制限装置の動作速度曲線を用いて現在の過速度を設定する」ものでしかないから,本件発明とは相違する。 したがって,相違点に係る構成については,甲1発明に刊行物2に記載された技術及び周知技術を用いても,当業者が容易に発明をすることができるものではない。 3 以上からすれば,本件審決には,一致点の認定誤り及び相違点の看過並びに相違点の判断誤りがあるから,取り消されるべきである。 第4 被告の主張 1 取消事由1(一致点の認定誤り及び相違点の看過)に対し原告は,本件発明の通常運転用の過速度パターンは調速機の動作と関係なく設定されるのに対し,甲1発明の通常運転用の過速度パターンは平常運転時の調速機の動作速度曲線であるから,両者は異なる旨主張する。 しかしながら,特許請求の範囲の請求項7の記載をみると,本件発明の「通常運転用の過速度パターン」が調速機の動作と関係がないとは特定されておらず,原告の主張は請求項7の記載に基づくものではない。 また,本件発明における「通 範囲の請求項7の記載をみると,本件発明の「通常運転用の過速度パターン」が調速機の動作と関係がないとは特定されておらず,原告の主張は請求項7の記載に基づくものではない。 また,本件発明における「通常運転用の過速度パターン」は,その技術的意義において,通常運転モードにおいて安全を確保することを目的に設定される過速度パターンと捉えることができ,甲1発明の速度制限用ガバナの動作速度曲線についても平常時運転において安全を確保することを目的に設定されたものであるから,技術的意義が本件発明の通常運転用の過速度パターンと共通するものである。 さらに,通常運転時の過速度パターンとして速度制限用ガバナの動作速度曲線を用いることが周知技術(乙1)であることからすると,本件発明における「通常運転用の過速度パターン」は,調速機の動作と関係するものを排- 12 -除しているといえないことは明らかである。 したがって,甲1発明における「平常運転時の速度制限用ガバナの動作速度曲線」が,本件発明における「通常運転用の過速度パターン」に相当するとして一致点を認定した本件審決に誤りはなく,相違点の看過もない。 2 取消事由2(相違点の判断誤り)に対し本件発明についてア原告は,本件発明の制御装置は,かごの位置の情報と,かごの走行方向の情報と,ドア開閉検出手段からの情報と,過速度パターン(通常運転用の過速度パターンまたは保守運転用の過速度パターン)とに基づいて現在の過速度を設定し,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,設定された現在の過速度を「更に」低くするものであると主張する。 イしかしながら,本件明細書(甲5)によれば,本件発明は,昇降路内で保守作業を行っている可能性のあるときに,かごや釣合おもりの速度をよ された現在の過速度を「更に」低くするものであると主張する。 イしかしながら,本件明細書(甲5)によれば,本件発明は,昇降路内で保守作業を行っている可能性のあるときに,かごや釣合おもりの速度をより確実に抑えることができるエレベータ装置を得ることを目的としてなされたもので(段落【0004】及び【0005】),本件明細書及び図面の記載(段落【0058】,【0021】,【0022】,【0038】,【0039】,【0047】及び【0048】。以上につき,後記第5, 参照)を参酌すると,本件発明は,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,昇降路内で保守作業を行っている可能性があるとして,通常運転用に設定された過速度を,保守作業に見合った低い保守運転用の過速度に設定することを特徴とするものであると評価すべきである。 そうすると,本件発明における「上記かごが停止している階以外の上記乗場ドアの開放が上記ドア開閉検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くする」とは,「かごが停止している階以外の乗場ドアの開- 13 -放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換え,過速度の設定値を低くする」ことを意味しており,少なくともこのことを含意していると解釈するのが自然である。 したがって,原告の主張は理由がない。 ウなお,仮に,原告が主張するように,本件発明が「かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,設定された現在の過速度を更に低くするもの」であるとしても,本件発明が,「かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を通常運転用の過速度パ れると,設定された現在の過速度を更に低くするもの」であるとしても,本件発明が,「かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換え,過速度の設定値を低くする」ものを含むものである以上,本件審決が,本件発明について,「かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換え,過速度の設定値を低くする」ものが含まれていると解釈したことに誤りはない。 甲1発明について原告は,甲1発明は,①動作速度曲線を用いて一旦設定した過速度の値を,保守時運転の指令が与えられたときに,更に低くすること,②保守時運転の指令が与えられると,動作速度曲線を切り換えること以外の方法で過速度の設定値を低くすることは含んでいないので,本件審決の認定は誤りである旨主張する。 しかしながら,刊行物1の記載(甲1の3頁左上欄8行~右上欄6行,4頁右上欄4行~左下欄1行,4頁左下欄13~17行,5頁左上欄3行~9行,第4図,7~9図)によれば,甲1発明のエレベータの制御装置は,保守時運転の指令が与えられると,速度制限用ガバナの動作速度曲線を用いて- 14 -設定した過速度よりも低い値を,新たに過速度として設定するものであるから,過速度の設定値を低くするものであるといえる。 したがって,本件審決が,甲1発明について,エレベーターかご1の位置の情報と,保守時運転の指令と,動作速度曲線とに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,保守時運転の指令が与えられると,過速度の設定値を低くするものと認定した点に誤りはない。 したがって,本件審決が,本件発明に 転の指令と,動作速度曲線とに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,保守時運転の指令が与えられると,過速度の設定値を低くするものと認定した点に誤りはない。 したがって,本件審決が,本件発明について,「かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換え,過速度の設定値を低くする」ものが含まれていると解釈し,甲1発明を「甲1発明について,エレベーターかご1の位置の情報と,保守時運転の指令と,動作速度曲線とに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,保守時運転の指令が与えられると,過速度の設定値を低くするもの」と認定した点に誤りはない。 よって,相違点に係る構成は,甲1発明に刊行物2に記載された技術及び周知技術を用いれば,当業者が容易に想到できたものであるから,相違点の判断の誤りはない。 3 以上によれば,原告の主張する取消事由はいずれも理由はなく,本件審決には誤りはない。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(一致点の認定誤り及び相違点の看過)について本件発明についてア本件発明の特許請求の範囲の請求項7の記載は,前記第2の2に記載のとおりであるところ,本件出願の請求項1ないし5の記載は,次のとおりである。 「【請求項1】- 15 -昇降路内を昇降される昇降体,上記昇降体の速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する制御装置,上記昇降路内の下部に設けられている緩衝器,保守作業時に上記緩衝器と上記昇降体との間に介在されることにより,上記昇降体の下降位置を制限するストッパ,及び上記緩衝器及び上記昇降体の少なくともいずれか一方に上記ストッ 衝器,保守作業時に上記緩衝器と上記昇降体との間に介在されることにより,上記昇降体の下降位置を制限するストッパ,及び上記緩衝器及び上記昇降体の少なくともいずれか一方に上記ストッパが設置されたことを検出するストッパ検出手段を備え,上記制御装置には,通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されており,上記制御装置は,上記かごの位置の情報と,上記かごの走行方向の情報と,上記ストッパ検出手段からの情報と,上記過速度パターンとに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,上記緩衝器及び上記昇降体の少なくともいずれか一方に上記ストッパが設置されたことが上記ストッパ検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くするエレベータ装置。 【請求項2】昇降路内を昇降される昇降体,上記昇降体の速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する制御装置,保守作業時に上記昇降体と昇降路天井部との間に介在されることにより,上記昇降体の上昇位置を制限するストッパ,及び上記昇降体及び上記昇降路天井部の少なくともいずれか一方に上記ストッパが設置されたことを検出するストッパ検出手段を備え,上記制御装置には,通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度- 16 -パターンとが設定されており,上記制御装置は,上記かごの位置の情報と,上記かごの走行方向の情報と,上記ストッパ検出手段からの情報と,上記過速度パターンとに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,上記昇降体及び上記昇降路天井部の少なくともいずれか一方に上記ストッパが設置されたことが上記ストッパ検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くするエレベータ装置。 【請求項3】 上記昇降体及び上記昇降路天井部の少なくともいずれか一方に上記ストッパが設置されたことが上記ストッパ検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くするエレベータ装置。 【請求項3】上記ストッパ検出手段は,上記ストッパの設置を機械的に検出するストッパ検出スイッチである請求項1又は請求項2に記載のエレベータ装置。 【請求項4】終端階近傍の領域における上記過速度パターンは,終端階までの距離に応じて徐々に低下するよう設定されている請求項1又は請求項2に記載のエレベータ装置。 【請求項5】上記制御装置には,上記かごの運行を制御する機能を実行する装置と,上記かごが過速度に達するかどうかを監視する機能を実行する装置とが互いに独立した装置として設けられている請求項1又は請求項2に記載のエレベータ装置。」イ本件明細書には,おおむね次の記載がある(図面については,別紙1の本件明細書図面目録を参照。)。 「【技術分野】この発明は,保守作業が昇降路内で実施されるエレベータ装置に関するものである。」(段落【0001】)「【背景技術】従来のエレベータ装置では,保守員がかご上で昇降路頂部の機器の保- 17 -守作業を行う際,釣合おもり緩衝器のプランジャの上部に釣合おもり阻止手段が連結される。そして,釣合おもりを下降させ,釣合おもり阻止手段に当接させ,釣合おもり緩衝器を圧縮させる。これにより,釣合おもりの下降位置は,釣合おもり阻止手段を用いない場合の下降位置よりも高い位置に制限され,かごと昇降路天井部との間の作業空間が十分に確保される。」(段落【0002】) 「【発明が解決しようとする課題】上記のような従来のエレベータ装置においては,釣合おもり阻止手段を用い 降路天井部との間の作業空間が十分に確保される。」(段落【0002】) 「【発明が解決しようとする課題】上記のような従来のエレベータ装置においては,釣合おもり阻止手段を用いない場合に釣合おもり緩衝器に当接する位置よりも高い位置で釣合おもりが釣合おもり阻止手段に当接するので,釣合おもりを釣合おもり阻止手段に当接させる際に保守運転制御部に何等かの異常が生じると,釣合おもり緩衝器の許容衝突速度を超えた速度で釣合おもりが釣合おもり阻止手段に衝突する可能性がある。このとき,釣合おもり阻止手段は釣合おもりに直接連結されているため,衝突の衝撃により釣合おもり緩衝器が破損する恐れがあった。」(段落【0004】)「この発明は,上記のような課題を解決するためになされたものであり,昇降路内で保守作業を行っている可能性のあるときに,かごや釣合おもりの速度をより確実に抑えることができるエレベータ装置を得ることを目的とする。」(段落【0005】) 「【課題を解決するための手段】この発明によるエレベータ装置は,昇降路内を昇降される昇降体,昇降体の速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する制御装置,昇降路内の下部に設けられている緩衝器,保守作業時に緩衝器と昇降体との間に介在されることにより,昇降体の下降位置を制限するストッパ,及び緩衝器及び昇降体の少なくともいずれか一方にストッパが設置されたことを検出するストッパ検出手段を備え,制御装置は,ストッ- 18 -パ検出手段によりストッパが検出されると,過速度の設定値を低くする。 また,この発明によるエレベータ装置は,昇降路内を昇降される昇降体,昇降体の速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する制御装置,保守作業時に昇降体と昇降路天井部との間 定値を低くする。 また,この発明によるエレベータ装置は,昇降路内を昇降される昇降体,昇降体の速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する制御装置,保守作業時に昇降体と昇降路天井部との間に介在されることにより,昇降体の上昇位置を制限するストッパ,及び昇降体及び昇降路天井部の少なくともいずれか一方にストッパが設置されたことを検出するストッパ検出手段を備え,制御装置は,ストッパ検出手段によりストッパが検出されると,過速度の設定値を低くする。 また,この発明によるエレベータ装置は,昇降路内を昇降されるかご,及び通常運転モードと,通常運転モードよりも低速でかごを昇降させる保守運転モードとを含む複数の運転モードによりかごの昇降を制御するとともに,かごの速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する制御装置を備え,制御装置は,運転モードが保守運転モードに切り換えられると,過速度の設定値を低くする。 また,この発明によるエレベータ装置は,かごドアを有し,昇降路内を昇降されるかご,かごの速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する制御装置,複数の乗場ドア,及びかごドア及び乗場ドアの開閉状態を検出するドア開閉検出手段を備え,制御装置は,かごドア及び乗場ドアの少なくともいずれか1つが開放されていることがドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を低くする。 また,この発明によるエレベータ装置は,昇降路内を昇降されるかご,かごの位置を監視するとともに,かごの速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する制御装置,複数の乗場ドア,及び乗場ドアの開閉状態を検出するドア開閉検出手段を備え,制御装置は,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を低くする。 - 数の乗場ドア,及び乗場ドアの開閉状態を検出するドア開閉検出手段を備え,制御装置は,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を低くする。 - 19 -また,この発明によるエレベータ装置は,昇降路内を昇降されるかご,かごの速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する制御装置,及びかご上に人がいるかどうかを検出するかご上検出手段を備え,制御装置は,かご上に人がいることがかご上検出手段により検出されると,過速度の設定値を低くする。」(段落【0006】)「以下,この発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。」a 「実施の形態1.」⒜ 「図1はこの発明の実施の形態1によるエレベータ装置を示す構成図である。図において,昇降路内の上部には,巻上機1が設置されている。巻上機1は,駆動シーブ2と,駆動シーブ2を回転させるモータ3と,駆動シーブ2の回転を制動するブレーキ装置4とを有している。巻上機1の近傍には,そらせ車5が配置されている。」(段落【0008】)「モータ3及びブレーキ装置4は,制御装置11により制御される。即ち,かご7の運行は,制御装置11により制御される。」(段落【0010】)「回転検出器16からの信号は,制御装置11に入力される。制御装置11は,回転検出器16からの信号に基づいて,かご位置及びかご速度を演算する。また,制御装置11は,かご速度が予め設定された過速度(閾値)に達しないかどうかを監視する。」(段落【0013】)「図2は図1の制御装置11に設定された通常運転用の過速度パターンと保守運転用の過速度パターンとを示すグラフである。位置Aは上部終端階,位置Bは上部終端階ス 」(段落【0013】)「図2は図1の制御装置11に設定された通常運転用の過速度パターンと保守運転用の過速度パターンとを示すグラフである。位置Aは上部終端階,位置Bは上部終端階スイッチ17の位置,位置Cは下部終端階スイッチ18の位置,位置Dは下部終端階,位置Eは- 20 -かごストッパ23の位置,位置Fはかご緩衝器21の位置である。」(段落【0019】)「かご速度が異常であると判断するための基準となる過速度は,かご7の走行方向と絶対位置とに応じたパターン,即ち過速度パターンとして設定されている。また,かご7の通常運転時と保守運転時とでは,異なる過速度パターンが設定されている。」(段落【0020】)⒝ 「図2において,最高速度がV1となる実線のパターンP1は,かご7が上部終端階から下部終端階まで通常運転される際の走行速度パターンを示している。最高速度がV2となる破線のパターンP2は,通常運転用の過速度パターンを示している。最高速度がV3となる実線のパターンP3は,かご7が上部終端階から下部終端階まで保守運転される際の走行速度パターンを示している。最高速度がV4となる破線のパターンP4は,保守運転用の過速度パターンを示している。」(段落【0021】)「制御装置11は,かご速度が過速度に達したと判断すると,モータ3への通電を遮断するとともに,ブレーキ装置4を制動動作させ,かご7を非常停止させる。また,制御装置11は,かご緩衝器21にかごストッパ23が設置されたことがかごストッパ検出スイッチ24により検出されると,過速度パターンをP2からP4に切り換え,過速度の設定値を低くする。また,過速度パターンは,かご緩衝器21へのかご7の衝突速度がかご緩衝器21の性能に応じた許容衝突速度以下 24により検出されると,過速度パターンをP2からP4に切り換え,過速度の設定値を低くする。また,過速度パターンは,かご緩衝器21へのかご7の衝突速度がかご緩衝器21の性能に応じた許容衝突速度以下となるように設定されている。」(段落【0022】)⒞ 図3は図1の制御装置11の機能を示すブロック図である。制御装置11は,かご位置検出部31,かご走行方向検出部32,かご- 21 -速度検出部33,過速度設定部34,比較判断部35及びブレーキ作動指令部36を有している。」(段落【0023】)「かご位置検出部31は,回転検出器16及び終端階スイッチ17,18からの情報に基づいて,かご7の位置を検出する。このとき,上部プーリ12と速度検出ロープ14との間の滑り等による回転検出器16の検出誤差が,終端階スイッチ17,18からの情報により補正される。」(段落【0024】)「かご走行方向検出部32は,回転検出器16からの情報に基づいて,かご7の走行方向を検出する。また,かご走行方向検出部32では,信号処理にヒステリシス要素を設けることにより,外乱力によるかご7の走行方向の微小な変化を排除し,走行方向が不要に反転しないようにすることができる。」(段落【0025】)「かご速度検出部33は,回転検出器16で検出された回転量の情報を時間変化の情報に変換することにより,かご7の速度を検出する。」(段落【0026】)「過速度設定部34は,かご位置検出部31で検出されたかご位置と,かご走行方向検出部32で検出された走行方向と,かごストッパ検出スイッチ24からの情報と,図2に示したような過速度パターンとに基づいて,現在の判定基準となる過速度を設定する。」(段落【0027】)「比較判断部35は,か 出された走行方向と,かごストッパ検出スイッチ24からの情報と,図2に示したような過速度パターンとに基づいて,現在の判定基準となる過速度を設定する。」(段落【0027】)「比較判断部35は,かご速度検出部33で検出されたかご速度が過速度設定部34で設定された過速度に達しているかどうかを判断する。比較判断部35により異常が検出されると,ブレーキ作動指令部36からブレーキ装置4に非常制動指令が出力される。」(段落【0028】)「ここで,制御装置11は,演算処理部(CPU),記憶部(R- 22 -OM,RAM及びハードディスク等)及び信号入出力部を持ったコンピュータ(図示せず)を有している。かご位置検出部31,かご走行方向検出部32,かご速度検出部33,過速度設定部34,比較判断部35及びブレーキ作動指令部36の機能は,コンピュータにより実現される。即ち,コンピュータの記憶部には,制御装置11の機能を実現するためのプログラムが格納されている。演算処理部は,プログラムに基づいて,制御装置11の機能に関する演算処理を実行する。」(段落【0029】)「また,制御装置11で設定されている過速度は第1の過速度であり,ブレーキ装置4を作動させたにも拘わらずかご7の速度がさらに上昇し第2の過速度(>第1の過速度)に達すると,調速機(図示せず)により非常止め装置15が作動される。」(段落【0030】)⒟ 「このようなエレベータ装置では,かご緩衝器21にかごストッパ23が設置されたことが検出されると,過速度パターンが切り換えられ,緩衝器衝突速度が自動的に変更されるので,保守運転の制御に異常が発生した場合にも,かご緩衝器21の許容衝突速度を超えた速度でかご7がかごストッパ23に衝突するのを防止することができ,かご えられ,緩衝器衝突速度が自動的に変更されるので,保守運転の制御に異常が発生した場合にも,かご緩衝器21の許容衝突速度を超えた速度でかご7がかごストッパ23に衝突するのを防止することができ,かご緩衝器21及びかごストッパ23の破損を防止することができる。」(段落【0031】)「また,ピット内での保守作業時にかご7がピットに進入するのがかごストッパ23により阻止されるので,保守員の作業スペースを十分に確保することができる。 さらに,下部終端階近傍の領域における過速度の設定値を,下部終端階までの距離に応じて徐々に低下させたので,かご緩衝器21及びかごストッパ23へのかご7の設計上の衝突速度を低く設定す- 23 -ることができ,かご緩衝器21及びかごストッパ23の強度を低下させ,コストを低減することができる。」(段落【0032】)「なお,実施の形態1では,かご緩衝器21上にかごストッパ23を接続したが,かご7の下部に設置してもよい。即ち,かごストッパ23は,保守作業時にかご緩衝器21とかご7との間に介在されるように,かご緩衝器21及びかご7の少なくともいずれか一方に設置すればよい。」(段落【0033】)b 「実施の形態2. 次に,図4はこの発明の実施の形態2によるエレベータ装置を示す構成図である。かご7上での保守作業時には,釣合おもり緩衝器22のプランジャ上に釣合おもりストッパ(スペーサ)25が接続される。 釣合おもりストッパ25は,保守作業時に釣合おもり緩衝器22に接続され,昇降体である釣合おもり8に当接される。これにより,釣合おもり8の下降位置が制限され,かご7の上昇位置が制限される。即ち,釣合おもり緩衝器22に釣合おもりストッパ25が接続されることにより,釣合 ,昇降体である釣合おもり8に当接される。これにより,釣合おもり8の下降位置が制限され,かご7の上昇位置が制限される。即ち,釣合おもり緩衝器22に釣合おもりストッパ25が接続されることにより,釣合おもり8により釣合おもり緩衝器22が圧縮されたときのかご7の上部と昇降路天井部までの距離を確保することができる。 釣合おもりストッパ25は,通常運転時には釣合おもり緩衝器22上から撤去される。」(【段落0034】)「釣合おもり緩衝器22の近傍には,釣合おもり緩衝器22に釣合おもりストッパ25が設置されたことを機械的に検出する釣合おもりストッパ検出手段としての釣合おもりストッパ検出スイッチ26が設けられている。釣合おもりストッパ検出スイッチ26は,制御装置11に接続されている。制御装置11は,釣合おもりストッパ検出スイッチ26により釣合おもりストッパ25が検出されると,かご7の運転モードを強制的に保守運転モードに設定する。他の構成は,実施の- 24 -形態1と同様である。」(【段落0035】)「図5は図4の制御装置11に設定された通常運転用の過速度パターンと保守運転用の過速度パターンとを示すグラフである。位置A~Dは図2と同様である。位置Gは釣合おもりストッパ25の位置,位置Hは釣合おもり緩衝器22の位置である。」(段落【0036】)「かご速度が異常であると判断するための基準となる過速度は,かご7の走行方向と絶対位置とに応じたパターン,即ち過速度パターンとして設定されている。また,かご7の通常運転時と保守運転時とでは,異なる過速度のパターンが設定されている。」(段落【0037】)「図5において,最高速度がV1となる実線のパターンP5は,かご7が下部終端階から上部終端階まで通常運転される際の走行速度パターン なる過速度のパターンが設定されている。」(段落【0037】)「図5において,最高速度がV1となる実線のパターンP5は,かご7が下部終端階から上部終端階まで通常運転される際の走行速度パターンを示している。最高速度がV2となる破線のパターンP6は,通常運転用の過速度パターンを示している。最高速度がV3となる実線のパターンP7は,かご7が下部終端階から上部終端階まで保守運転される際の走行速度パターンを示している。最高速度がV4となる破線のパターンP8は,保守運転用の過速度パターンを示している。」(段落【0038】)「制御装置11は,かご速度が過速度に達したと判断すると,モータ3への通電を遮断するとともに,ブレーキ装置4を制動動作させ,かご7を非常停止させる。また,制御装置11は,釣合おもり緩衝器22に釣合おもりストッパ25が設置されたことが釣合おもりストッパ検出スイッチ26により検出されると,過速度パターンをP6からP8に切り換え,過速度の設定値を低くする。また,過速度パターンは,釣合おもり緩衝器22への釣合おもり8の衝突速度が釣合おもり緩衝器22の性能に応じた許容衝突速度以下となるように設定されて- 25 -いる。」(段落【0039】)「このようなエレベータ装置では,釣合おもり緩衝器22に釣合おもりストッパ25が設置されたことが検出されると,過速度パターンが切り換えられ,緩衝器衝突速度が自動的に変更されるので,保守運転の制御に異常が発生した場合にも,釣合おもり緩衝器22の許容衝突速度を超えた速度で釣合おもり8が釣合おもりストッパ25に衝突するのを防止することができ,釣合おもり緩衝器22及び釣合おもりストッパ25の破損を防止することができる。」(段落【0040】)c 「実施の形態3. 次に,図6 トッパ25に衝突するのを防止することができ,釣合おもり緩衝器22及び釣合おもりストッパ25の破損を防止することができる。」(段落【0040】)c 「実施の形態3. 次に,図6はこの発明の実施の形態3によるエレベータ装置を示す構成図である。図において,かご7上での保守作業時には,かご7上にストッパとしての保守緩衝器27が設置される。保守緩衝器27は,保守作業時にかご7上に設置され,昇降路天井部に当接されることによりかご7の上昇位置を制限する。保守緩衝器27は,通常運転時にはかご7上から撤去される。」(段落【0043】)「かご7上には,かご7上に保守緩衝器27が設置されたことを機械的に検出する保守緩衝器検出手段としての保守緩衝器検出スイッチ28が設けられている。保守緩衝器検出スイッチ28は,制御装置11に接続されている。制御装置11は,保守緩衝器検出スイッチ28により保守緩衝器27が検出されると,かご7の運転モードを強制的に保守運転モードに設定する。他の構成は,実施の形態1と同様である。」(段落【0044】)「かご速度が異常であると判断するための基準となる過速度は,かご7の走行方向と絶対位置とに応じたパターン,即ち過速度パターンとして設定されている。また,かご7の通常運転時と保守運転時とで- 26 -は,異なる過速度のパターンが設定されている。」(段落【0046】)「図7において,最高速度がV1となる実線のパターンP5は,かご7が下部終端階から上部終端階まで通常運転される際の走行速度パターンを示している。最高速度がV2となる破線のパターンP9は,通常運転用の過速度パターンを示している。最高速度がV3となる実線のパターンP7は,かご7が下部終端階から上部終端階まで保守運転される ターンを示している。最高速度がV2となる破線のパターンP9は,通常運転用の過速度パターンを示している。最高速度がV3となる実線のパターンP7は,かご7が下部終端階から上部終端階まで保守運転される際の走行速度パターンを示している。最高速度がV4となる破線のパターンP10は,保守運転用の過速度パターンを示している。」(段落【0047】)「制御装置11は,かご速度が過速度に達したと判断すると,モータ3への通電を遮断するとともに,ブレーキ装置4を制動動作させ,かご7を非常停止させる。また,制御装置11は,かご7上に保守緩衝器27が設置されたことが保守緩衝器検出スイッチ28により検出されると,過速度パターンをP9からP10に切り換え,過速度の設定値を低くする。また,過速度パターンは,釣合おもり緩衝器22への釣合おもり8の衝突速度が釣合おもり緩衝器22の性能に応じた許容衝突速度以下となるように,かつ保守緩衝器27の昇降路天井部への衝突速度が保守緩衝器27の性能に応じた許容衝突速度以下となるように設定されている。」(段落【0048】)「このようなエレベータ装置では,かご7上に保守緩衝器27が設置されたことが検出されると,過速度パターンが切り換えられ,緩衝器衝突速度が自動的に変更されるので,保守運転の制御に異常が発生した場合にも,保守緩衝器27の許容衝突速度を超えた速度で保守緩衝器27が昇降路天井部に衝突するのを防止することができ,保守緩衝器27の破損を防止することができる。」(段落【0049】)- 27 -d 「実施の形態6. 次に,この発明の実施の形態6について説明する。実施の形態6では,制御装置11によりかご7の位置が監視されている。また,乗場ドア(図示せず)の開閉状態がドア開閉検出手段(図示せず)により検 次に,この発明の実施の形態6について説明する。実施の形態6では,制御装置11によりかご7の位置が監視されている。また,乗場ドア(図示せず)の開閉状態がドア開閉検出手段(図示せず)により検出される。また,制御装置11は,かご7が停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を低くする。他の構成は,実施の形態1~3と同様である。」(段落【0058】)「このようなエレベータ装置では,かご7が停止している階以外の乗場ドアが開放されているときには過速度の設定値が自動的に低くされるので,昇降路内で保守作業を行っている可能性のあるときに,かご7や釣合おもり8の速度をより確実に抑えることができる。」(段落【0059】)甲1発明について刊行物1には,おおむね次の記載がある(図面については,別紙2の甲1発明図面目録を参照。ただし,第8図及び第9図は省略する。)。 ア 「特許請求の範囲1.エレベーターの保守時運転時にのみ動作する速度制限装置を設け,保守時運転中に前記エレベーターの速度が上昇して定められた速度制限値に達した場合,前記速度制限装置が動作して前記エレベーターを停止またはエレベーター速度を前記制限値以下にするように構成したことを特徴とするエレベーターの保守時運転装置。」(1頁左下欄3行~10行)イ 「発明の詳細な説明本発明はエレベーターの保守時運転方法に係り,特に,最下階の乗場の戸じめ機構部の点検に好適な運転装置に関する。 エレベーター昇降路内の器具の保守,点検作業は,保守員がエレベータ- 28 -ーのかごの上に乗つて行なうのが普通である。」(1頁左下欄最終行~右下欄6行)「8,9はかご1が最下階5を所定距離だけ行き過ぎるとカム7に押されてかご1を停止させ 員がエレベータ- 28 -ーのかごの上に乗つて行なうのが普通である。」(1頁左下欄最終行~右下欄6行)「8,9はかご1が最下階5を所定距離だけ行き過ぎるとカム7に押されてかご1を停止させる制限スイッチで,昇降路に固定されている。」(1頁右下欄14行~16行)「かご1の上の保守員2は,かご1を低速で下降させながら昇降路内の器具を順次点検する。 しかし,最下階5では制限スイッチ8,9が動作するため,かご1は数cm程度しか下降させられない。その位置では,たとえば乗場の扉の戸じめ機構部6はかご1の上部よりも下方にあるので保守員2の手がとゞかず点検することができない。 このような位置にある器具は,昇降路底部3にはしご等を立てて,それに乗つて点検することが一般に行なわれている。 ところで,速度の速いエレベーターでは緩衝器4の高さが数mにも達するので,昇降路底部3の深さもかなり深いものとなり,はしご等で点検することは容易でなく,危険を伴う場合が多い。 そこで,保守時運転中は制限スイッチ8,9が動作してもエレベーターが下降運転できるようにし,緩衝器が動作している位置までかごを降下させて,かご天井部より保守員が点検できるようにすることが望ましい。 第2図,第3図はこのために発明された従来の方法である。」(2頁左上欄5行~右上欄5行)「21は付勢されるとかご1を上昇運転させるリレー,22は同じく下降運転させるリレーである。」(2頁左下欄4行~6行)「この模様を図示したのが第4図である。図において,H0は最上階の正規の停止位置,H1は最上階の制限リレー12の動作する位置,H2は同じく13の動作する位置,L0は最下階の正規の停止位置,L1は制限スイッ- 29 -チ8の動作する位置,L2は同じく9の動作する位置,L3は緩衝器4が緩 階の制限リレー12の動作する位置,H2は同じく13の動作する位置,L0は最下階の正規の停止位置,L1は制限スイッ- 29 -チ8の動作する位置,L2は同じく9の動作する位置,L3は緩衝器4が緩衝動作を開始する位置,L4は緩衝器4の緩衡作用のなくなる位置,Lfは昇降路底部3の位置,VHは平常運転のときの最大速度,VHGは速度制限用ガバナの動作する速度である。 また,31は最上階より最下階へ正常に運転した場合の速度曲線である。 32は運転途中で制御装置の故障等の何らかの原因により速度が上昇してガバナの動作速度VHGに達し,電磁ブレーキが動作して減速停止した場合の速度曲線であり,33はガバナは動作しなかつたけれども何らかの原因により正規の減速位置で減速せず,制限スイッチ8が動作して電磁ブレーキが作用し,さらに緩衝器も作用して停止した場合の速度曲線を示す。」(3頁左上欄17行~右上欄15行)「第2図及び第3図の方法では制限スイッチ8,9の他に停止スイッチ10,11を設け,最下階保守時運転押ボタンスイッチ16により,8,9が動作しても,さらに,下方へ運転できるようにし,停止スイッチ10,11が動作して初めて下降指令リレー22が消勢される。」(3頁左下欄3行~8行)「51は制限スイツチ8が動作して停止したかごを最下階保守時運転用押ボタンスイツチ16を押し,さらに下降指令を与えることによつてかごを降下させ,L5の位置で停止スイツチ10が動作して停止した場合の速度曲線を示す。この場合は,エレベーターの速度が保守時運転時の場合の許容限界Vm以下で,安全に停止することができる。」(3頁左下欄17行~右下欄3行)「以上のように,正常な動作ではかなり低い位置まで安全に降下して停止できても,何らかの原因でエレベーターの速度が急上昇すると極めて ,安全に停止することができる。」(3頁左下欄17行~右下欄3行)「以上のように,正常な動作ではかなり低い位置まで安全に降下して停止できても,何らかの原因でエレベーターの速度が急上昇すると極めて危険となることがある。 エレベーターの速度が保守時運転時の許容限界Vmを超えて上昇した場合,- 30 -最下階保守時運転押ボタンスイツチ16をたゞちに離す等の対応をすることにより速度の上昇が防げるように思われるが,エレベーターの速度の上昇率は最悪の場合0.2g以上,すなわち1秒間に120m/min以上の速度上昇となる場合があり,一方,保守時運転時の速度の限界は一般に20m/min~40m/minであるから,この許容限界を大きく超えることがありうる。 このため,停止スイツチ10,11を設ける場合は,このことを考慮して十分な余裕をみて上の位置に取り付ける必要があり,この方式では所期の目的を必ずしも満足できない問題の他に,前述のように,保守時運転中にエレベーターの速度が異常に高くなり,かご上の保守員が危険にさらされる間題があった。 本発明の目的は保守時運転中にエレベーターの速度が異常に高くなった場合,それを抑制するとともに,エレべーターのかごを十分下にまで安全に降下させ,最下階の乗場の戸じめ機構部等の点検を可能にする方法を提供するにある。 本発明の要点は保守時運転中にのみ動作する速度制限装置を設け,その制限速度曲線を適正に定めることにある。」(3頁右下欄13行~4頁右上欄1行)ウ 「以下,本発明の一実施例を第7図ないし第9図により説明する。 第7図において,VMHは保守運転中,正常に運転された場合の最高速度,VMGは保守時運転時に動作する速度制限装置の動作速度の最大値で,VMHよりも僅かに大きな値に設定される。」(4頁右上欄2行~ 第7図において,VMHは保守運転中,正常に運転された場合の最高速度,VMGは保守時運転時に動作する速度制限装置の動作速度の最大値で,VMHよりも僅かに大きな値に設定される。」(4頁右上欄2行~7行)「まず,平常運転の場合について説明する。」(5頁左上欄16行)「エレベーターの速度がある制限値すなわち,第4図のVHGに達すると,機械式ガバナ94が動作し,安全回路85に信号が送られ,主回路84を遮断すると同時に,電磁ブレーキ78を動作させてエレベーターを停止さ- 31 -せる。また,その他の異常が発生した場合にも安全回路85に信号が送られ,85が動作してエレベーターを停止させる等の処置がとられる。」(5頁右上欄10行~17行)「93より保守時運転の指令が与えられると運転制御回路82では保守時運転時の速度指令を発生するよう速度指令回路81に指令する。速度制御装置83は保守時運転速度で運転するよう主回路84を制御する。 保守時運転中,何らかの原因で速度が上昇し,保守時運転時の速度制限装置の動作速度曲線,例えば,第7図の61に達すると87より出力がでて,安全回路85が動作してエレベーターは停止する。」(5頁右上欄20行~左下欄9行)「また,保守時運転中,制御装置の異常等によりエレベーター速度が上昇した場合,たゞちに安全回路が作動して,かご上の保守員が危険にさらされることが防げる。」(6頁左上欄2行~5行)一致点の認定誤りに対する判断本件審決は,本件発明と甲1発明の一致点として,通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されているエレベータ装置であると認定したところ,原告は,本件発明の通常運転用の過速度パターンは調速機の動作と関係なく設定されるのに対し,甲1発明の通常運転用の過速度パターンは平 度パターンとが設定されているエレベータ装置であると認定したところ,原告は,本件発明の通常運転用の過速度パターンは調速機の動作と関係なく設定されるのに対し,甲1発明の通常運転用の過速度パターンは平常運転時の調速機の動作速度曲線であるから,両者は異なるというべきであって,本件審決には相違点を看過した誤りがあると主張するので,以下検討する。 ア本件発明についてまず,「通常運転時の過速度パターン」に関する特許請求の範囲の請求項7の記載をみると,「通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されており」,「上記かごの位置の情報と,上記かごの走行方向の情報と,上記ドア開閉検出手段からの情報と,上- 32 -記過速度パターンとに基づいて,現在の過速度を設定する」,「かごの速度が予め設定された過速度に達するかどうかを監視する」ことが特定されている。これより,通常運転時の過速度パターンとは,通常運転時にかごの位置等の他の情報とあわせて,現在の過速度を設定するために用いられるものであるといえる。そして,本件発明では,この設定された過速度にかごの速度が達するかどうかが監視されているといえる。 もっとも,これらの記載には,「通常運転用の過速度パターン」をどのような速度曲線とするかに関する記載が全くないことからすると,「通常運転用の過速度パターン」については,特に限定されることはないものと解される。 そこで,以上を前提として,本件明細書の記載をみると,本件発明の「上記かごが停止している階以外の上記乗場ドアの開放が上記ドア開閉検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くする」ことは,本件明細書の実施の形態6(段落【0058】及び段落【0059】)にのみ記載されている。そして,上記各段落には,「通常運転時の過速 検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くする」ことは,本件明細書の実施の形態6(段落【0058】及び段落【0059】)にのみ記載されている。そして,上記各段落には,「通常運転時の過速度パターン」に関する記載はなく,段落【0058】に,「制御装置11は,かご7が停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を低くする。他の構成は,実施の形態1~3と同様である。」と記載されている。 そこで,実施の形態1の「通常運転時の過速度パターン」に関連する記載をみると,「かご速度が異常であると判断するための基準となる過速度は,かご7の走行方向と絶対位置とに応じたパターン,即ち過速度パターンとして設定されている。また,かご7の通常運転時と保守運転時とでは,異なる過速度パターンが設定されている。」(【0020】)ので,保守運転時と通常運転時には,異なる過速度パターンを用いるものである。 - 33 -そして,「図2において,最高速度がV1となる実線のパターンP1は,かご7が上部終端階から下部終端階まで通常運転される際の走行速度パターンを示している。最高速度がV2となる破線のパターンP2は,通常運転用の過速度パターンを示している。」(【0021】),「制御装置11は,かご速度が過速度に達したと判断すると,モータ3への通電を遮断するとともに,ブレーキ装置4を制動動作させ,かご7を非常停止させる。」(【0022】),「比較判断部35は,かご速度検出部33で検出されたかご速度が過速度設定部34で設定された過速度に達しているかどうかを判断する。比較判断部35により異常が検出されると,ブレーキ作動指令部36からブレーキ装置4に非常制動指令が出力される。」(【0028】),「制御装置11で設定されている過 度に達しているかどうかを判断する。比較判断部35により異常が検出されると,ブレーキ作動指令部36からブレーキ装置4に非常制動指令が出力される。」(【0028】),「制御装置11で設定されている過速度は第1の過速度であり,ブレーキ装置4を作動させたにも拘わらずかご7の速度がさらに上昇し第2の過速度(>第1の過速度)に達すると,調速機(図示せず)により非常止め装置15が作動される。」(段落【0030】)との記載を併せて読めば,実施の形態1においては,通常運転時には,保守運転時の過速度パターンとは異なるパターンが用いられること,通常運転時の走行には,走行パターン(P1)が用いられるが,速度が超過して,過速度パターン(P2)の速度に達するとブレーキ装置が作動して非常停止するものであること,速度が更に上昇して第2の過速度を超えると調速機により非常止め装置が作動することなどが認められる。そして,実施の形態6について,「他の構成は実施の形態1ないし3と同様である。」(段落【0058】)と記載されているから,実施の形態6においても,これらの構成をとっていると認められる。 そうすると,本件発明の実施例としては,通常運転時には,エレベータかごの走行パターンとして上記パターンP1が用いられ,速度が異常- 34 -に上昇して,上記過速度パターンP2の速度に達したときに,ブレーキ装置が作動する仕組みを有し,更に速度が超過して第2の過速度を超過すると調速機により非常止め装置が作動するものが記載されていると認特許請求の範囲の請求項7の記載と併せて考えると,本件発明の「通常運転時の過速度パターン」は,エレベータかごが過速度パターンP2の速度に達したときに調速機により非常止め装置が作動するもの(過速度パターンP2が調速機の動作速度曲線となるもの)を排 本件発明の「通常運転時の過速度パターン」は,エレベータかごが過速度パターンP2の速度に達したときに調速機により非常止め装置が作動するもの(過速度パターンP2が調速機の動作速度曲線となるもの)を排除するものではないと認められる。 イ甲1発明について刊行物1の記載からすると,甲1発明は,平常運転時には,別紙2の第4図の31の走行パターンで運行されるが,エレベータのかごの速度が異常に上昇し,速度VHGに達すると調速機である機械式ガバナが動作し,電磁ブレーキが動作してかごを減速停止させる仕組みとなっていることが認められ,ガバナの動作速度である制限速度VHGは,機械式ガバナの動作速度曲線として設定されているといえる。 そうすると,甲1発明においては,平常運転時には,走行パターンとして上記パターン31が用いられ,速度が異常に上昇して,上記ガバナの動作速度であるVHGに達したときは,機械式ガバナによる非常止め装置が作動する仕組みとなっていると認められる。 ウ以上の検討によれば,本件発明の通常運転時の過速度パターンには,調速機の動作速度曲線が含まれるところ,甲1発明の平常運転時の過速度パターンは,速度制限用のガバナの動作速度曲線であるから,本件発明と甲1発明の一致点の認定に誤りはない。 エ原告の主張について原告は,本件明細書の記載から,本件発明の「通常運転用の過速度パターン」は,調速機の動作とは何ら関係ないものであると主張するが,- 35 -本件発明が,通常運転時の過速度パターンについて,調速機の動作速度曲線とするものを含んでいることは前記アで判示したとおりであるから,原告の上記主張は理由がない。 また, 原告は,本件発明の「通常運転用の過速度パターン」が,甲1発明における機械式ガバナ94の動作速度VHGよりも低い値に設 とは前記アで判示したとおりであるから,原告の上記主張は理由がない。 また, 原告は,本件発明の「通常運転用の過速度パターン」が,甲1発明における機械式ガバナ94の動作速度VHGよりも低い値に設定されているということは,特許請求の範囲には明確に記載されていないが,調速機(機械式ガバナ94)は,異常加速したかごを安全に停止させるために設置が義務づけられた装置の1つであり,確実に動作することを前提とするものであるから,「通常運転用の過速度パターン」を,調速機(機械式ガバナ94)が動作する速度VHGよりも高い速度に設定したとしても,結局は調速機が動作することになってしまうため技術的意義はなく,当業者であれば,特許請求の範囲に記載の「通常運転用の過速度パターン」が機械式ガバナ94の動作速度VHGよりも低い値に設定されているということは容易に把握することができる旨主張する。 しかしながら,通常運転用の過速度パターンを機械式ガバナの動作速度以下に設定することは,機械式ガバナが異常加速したかごを安全に停止させるためのものである以上,当然のことであるが,そのことは,通常運転用の過速度パターンを機械式ガバナの動作速度未満の値に設定しなければならないということを意味するわけではなく,通常運転用の過速度パターンに機械式ガバナの動作速度曲線を用いることを否定するわけではない。 したがって,原告の主張は理由がない。 小括以上によれば,本件審決の一致点についての認定判断に誤りはなく,相違点の看過はないから,取消事由1に関する原告の主張は理由がない。 2 取消事由2(相違点の判断誤り)について- 36 -原告は,本件発明の制御装置は,かごの位置の情報と,かごの走行方向の情報と,ドア開閉検出手段からの情報と,過速度パターン(通常運転用の過速度パ 取消事由2(相違点の判断誤り)について- 36 -原告は,本件発明の制御装置は,かごの位置の情報と,かごの走行方向の情報と,ドア開閉検出手段からの情報と,過速度パターン(通常運転用の過速度パターン又は保守運転用の過速度パターン)とに基づいて現在の過速度を設定し,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,設定された現在の過速度を「更に」低くするものであり,本件発明は,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換えることによって,過速度の設定値を低くすることは含んでいないのであって,甲1発明に,刊行物2に記載された技術及び周知技術を用いても,当業者はこのような相違点に係る構成について容易に発明をすることはできず,本件審決の相違点の判断には誤りがあるなどと主張するので,以下検討する。 本件発明についてア特許請求の範囲の請求項7まず,過速度の設定に関する特許請求の範囲の請求項7の記載をみると,過速度は「上記かごの位置の情報と,上記かごの走行方向の情報と,上記ドア開閉検出手段からの情報と,上記過速度パターンとに基づいて」設定されるところ,ここで用いられる過速度パターンとしては,「通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されており」,「上記かごが停止している階以外の上記乗場ドアの開放が上記ドア開閉検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くする」ことが特定されているが,これらの記載のみでは,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,設定された現在の過速度を「更に」低くするものであるか否かなどについては明らかではな されているが,これらの記載のみでは,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,設定された現在の過速度を「更に」低くするものであるか否かなどについては明らかではない。 イ本件明細書の記載実施の形態6そこで,本件明細書の記載をみると,本件発明についての実施例であ- 37 -る実施の形態6については,過速度の設定値を低くする具体的な手段及び過速度パターンの切り換えに関する記載はなく,「他の構成は,実施の形態1~3と同様である。」と記載されている。 そこで,実施の形態1ないし3の記載内容について検討する。 実施の形態1ないし3a まず実施の形態1についてみると,「過速度の設定値を低くする」ことは,「制御装置11は,かご緩衝器21にかごストッパ23が設置されたことがかごストッパ検出スイッチ24により検出されると,過速度パターンをP2からP4に切り換え,過速度の設定値を低くする。」(段落【0022】)と記載されている。ここで,過速度パターンであるP2とP4については,「最高速度がV2となる破線のパターンP2は,通常運転用の過速度パターンを示している」,「最高速度がV4となる破線のパターンP4は,保守運転用の過速度パターンを示している」(段落【0021】)と記載されていることからすると,パターンP2は,通常運転用の過速度パターンであり,パターンP4は保守運転用の過速度パターンであると認められる。また,これらのパターンは別紙1の図2に図示されているところ,かごの全ての位置において保守運転用の過速度パターンP4は通常運転用の過速度パターンP2より速度が低く設定されていることが認められる。 そうすると,実施の形態1は,通常運転用の過速度パターンP2から保守運転用の過速度パターンP4に切 パターンP4は通常運転用の過速度パターンP2より速度が低く設定されていることが認められる。 そうすると,実施の形態1は,通常運転用の過速度パターンP2から保守運転用の過速度パターンP4に切り換えることにより,過速度の設定値を低くするものといえる。 b 次に,実施の形態2についてみると,「最高速度がV2となる破線のパターンP6は,通常運転用の過速度パターンを示している。」(段落【0038】),「最高速度がV4となる破線のパターンP8は,保守運転用の過速度パターンを示している。」,「過速度パターンを- 38 -P6からP8に切り換え,過速度の設定値を低くする。」(【段落0039】)等の記載があり,別紙1の図5において,かごの全ての位置において保守運転用の過速度パターンP8は通常運転用の過速度パターンP6より速度が低く設定されていることからすると,実施の形態1と同様に,通常運転用の過速度パターンP6から保守運転用の過速度パターンP8に切り換えることにより,過速度の設定値を低くするものといえる。 c さらに,実施の形態3についてみると,「最高速度がV2となる破線のパターンP9は,通常運転用の過速度パターンを示している。」,「最高速度がV4となる破線のパターンP10は,保守運転用の過速度パターンを示している。」(以上につき【段落0047】),「過速度パターンをP9からP10に切り換え,過速度の設定値を低くする。」(【段落0048】)等の記載からすると,実施の形態1と同様に,通常運転用の過速度パターンP6から保守運転用の過速度パターンP8に切り換えることにより,過速度の設定値を低くするものといえる。 d 以上によれば,実施の形態1ないし3はいずれも,「過速度の設定値を低くする」具体的な手段として,通常運転用の過速度パターンか P8に切り換えることにより,過速度の設定値を低くするものといえる。 d 以上によれば,実施の形態1ないし3はいずれも,「過速度の設定値を低くする」具体的な手段として,通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換える手段を用いるものであって,これにより,過速度の設定値が低くするものであると認められる。 ウ他の請求項の記載次に,請求項1ないし5の記載をみると,請求項1においては,「・・・上記昇降路内の下部に設けられている緩衝器,保守作業時に上記緩衝器と上記昇降体との間に介在されることにより,上記昇降体の下降位置を制限するストッパ,及び上記緩衝器及び上記昇降体の少なくともいずれか一方に上記ストッパが設置されたことを検出するストッパ検出手段を備え,- 39 -上記制御装置には,通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されており,上記制御装置は,上記かごの位置の情報と,上記かごの走行方向の情報と,上記ストッパ検出手段からの情報と,上記過速度パターンとに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,上記緩衝器及び上記昇降体の少なくともいずれか一方に上記ストッパが設置されたことが上記ストッパ検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くするエレベータ装置。」とされている。 また,請求項2においては,「・・・保守作業時に上記昇降体と昇降路天井部との間に介在されることにより,上記昇降体の上昇位置を制限するストッパ,及び上記昇降体及び上記昇降路天井部の少なくともいずれか一方に上記ストッパが設置されたことを検出するストッパ検出手段を備え,上記制御装置には,通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されており,上記制御装置は,上記かごの位置の情報と,上記かごの走行方向の たことを検出するストッパ検出手段を備え,上記制御装置には,通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されており,上記制御装置は,上記かごの位置の情報と,上記かごの走行方向の情報と,上記ストッパ検出手段からの情報と,上記過速度パターンとに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,上記昇降体及び上記昇降路天井部の少なくともいずれか一方に上記ストッパが設置されたことが上記ストッパ検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くするエレベータ装置。」と記載されている。 さらに,請求項3ないし5は,請求項1又は2の従属項である。 以上によれば,これらの発明の制御装置については,「通常運転用の過速度パターンと,保守運転用の過速度パターンとが設定されて」おり,「上記かごの位置の情報と,上記かごの走行方向の情報と,」「検出手段からの情報と,上記過速度パターンとに基づいて,現在の過速度を設定する」とともに,「検出手段により検出されると,上記過速度の設定値を低くするエレベータ装置」と表現されているといえ,「ドア開閉検出手段」と「ストッパ検出手段」との違いがあるほかは,請求項7と全く同じ表現- 40 -が用いられているものである。 そして,本件明細書の記載からすれば,これらの請求項については,いずれも実施の形態1ないし3によりサポートされていると認められるところ,前記イのとおり,いずれも「過速度の設定値を低くする」具体的な手段として,通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換える手段を用いるものであって,これにより,過速度の設定値が低くなるものである。 そうすると,本件発明の制御装置についてのみ,他の請求項と区別して,「過速度の設定値を低くする」という表現の意味を,通常運転用の過速度パターン ,これにより,過速度の設定値が低くなるものである。 そうすると,本件発明の制御装置についてのみ,他の請求項と区別して,「過速度の設定値を低くする」という表現の意味を,通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換える手段を用いないもので,設定された現在の過速度を「更に」低くするものに限られる,という意味に解釈することは極めて不合理である。 エ以上を総合して検討すると,本件発明は,「過速度の設定値を低くする」具体的な手段として,通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換える手段を用いるものであって,これにより,過速度の設定値が低くするものであると認められ,設定された現在の過速度を「更に」低くするものが含まれるとしても,それに限られるわけではないというべきである。したがって,本件発明がこれらの構成を有するものとした上で,相違点に係る容易想到性の判断を行った本件審決の判断に誤りはない。 オ原告の主張について原告は,請求項7の記載から,本件発明の「制御装置」は,保守運転時において,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,保守運転用の過速度パターンを用いて設定された現在の過速度の設定値を更に低くするものと解釈すべきであると主張する。 - 41 -しかしながら,前記アないしエで判示したとおり,上記記載のみでは,保守運転用の過速度パターンを用いて設定された現在の過速度の設定値を更に低くするものと一義的に解釈することはできず,むしろ,本件明細書の記載からすれば,本件発明の「過速度の設定値を低くする」具体的な手段としては,通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換える手段を用いるものであって,これにより,過速度の設定値が低くする ば,本件発明の「過速度の設定値を低くする」具体的な手段としては,通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換える手段を用いるものであって,これにより,過速度の設定値が低くするものである。したがって,現在の過速度の設定値を更に低くするものだけが記載されていると解釈することはできない。 また,原告は,実施の形態6についてみると,過速度パターンが切り換えられることは一切記載されておらず,過速度パターンが切り換えられることが明記されている実施の形態1ないし3とは明確に区別されていることからすれば,本件発明は,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換えることによって,過速度の設定値を低くすることは含んでいないと主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件発明の特許請求の範囲である請求項7の「上記過速度の設定値を低くする」は,請求項1ないし5と全く同じ文言で記載されている上,本件明細書においては,実施の形態6について,何ら限定することなく「他の構成は,実施の形態1~3と同様である。」旨記載されているのであって,「過速度パターンを切り換える」という部分だけ,「他の構成」に含まれないと解することは不合理であり,到底採用することはできない。 したがって,原告の主張は理由がない。 甲1発明についてア刊行物1の記載からすると,甲1発明は,平常運転時にエレベータのか- 42 -ごの速度が速度VHGに達すると機械式のガバナが動作し,電磁ブレーキが動作してかごを減速停止させるエレベータ装置であって,保守時運転時には,エレベータのかごの速度が速度VMGに達すると,エレベータのかごを停止させることにより,保 械式のガバナが動作し,電磁ブレーキが動作してかごを減速停止させるエレベータ装置であって,保守時運転時には,エレベータのかごの速度が速度VMGに達すると,エレベータのかごを停止させることにより,保守時運転中,制御装置の異常等によりエレベーター速度が上昇した場合,安全回路が作動して,かご上の保守員が危険にさらされることが防げたエレベータ装置が記載されているといえる。 イまた,刊行物1の図7の記載等からすると,平常運転時のかごの制限速度VHGより保守時運転時の制限速度VMGは低く設定されており,平常運転時の制限速度VHGと保守時運転時の制限速度VMGは,動作速度曲線として設定されているといえる。 したがって,甲1発明は,エレベータかご1の位置情報と,保守時運転の指令と,動作速度曲線とに基づいて過速度を設定するとともに,保守時運転の指令が与えられると,過速度の設定値を低くするものであるから,本件審決の甲1発明の認定に誤りはない。 ウ原告の主張について原告は,本件審決の認定は,甲1発明の制御装置について,動作速度曲線を用いて一旦設定した過速度の値を,保守時運転の指令が与えられたときに,更に低くすることを認定するものであって誤りであると主張する。 しかしながら,本件審決は,甲1発明を「制御装置には,平常運転時の速度制限用ガバナの動作速度曲線と,保守時運転時に動作する速度制限装置の動作速度曲線とが設定されており,制御装置は,エレベーターかご1の位置の情報と,保守時運転の指令と,動作速度曲線とに基づいて,現在の過速度を設定するとともに,保守時運転の指令が与えられると,過速度の設定値を低くするエレベーター。」と認定したのであって,動作速度曲線を用いて一旦設定した過速度の値を,保守時運転の指令が与えられたときに,「更に」低くするものである 転の指令が与えられると,過速度の設定値を低くするエレベーター。」と認定したのであって,動作速度曲線を用いて一旦設定した過速度の値を,保守時運転の指令が与えられたときに,「更に」低くするものであると認定したわけではない。そして,上- 43 -記判示したとおり,甲1発明は,保守時運転時に用いられる動作速度曲線を平常運転時の動作速度曲線より制限速度の設定値が低くなるように設定することにより,保守時運転時の過速度の設定値を低くするもので,過速度パターンの切り換えによって過速度の設定値を低くするものである。 したがって,原告の主張は理由がない。 小括以上によれば,本件発明も甲1発明も,「かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を通常運転用の過速度パターンから保守運転用の過速度パターンに切り換えることによって過速度の設定値を低くする(過速度の設定値を「更に」低くするものに限られない。)」ものを含んでいるから,これらの構成を前提として,本件発明は,甲1発明,刊行物2に記載された技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとした本件審決の相違点についての判断に誤りはない。 3 なお,原告は,本件審理において,第3「原告の主張」を前提として,「本件発明は,かごの位置の情報と,かごの走行方向の情報と,ドア開閉検出手段からの情報と,過速度パターンとに基づいて現在の過速度を設定するとともに,かごが停止している階以外の乗場ドアの開放がドア開閉検出手段により検出されると,過速度の設定値を更に低くする。そのため,乗場ドアの開放が検出され保守員が昇降路内に入り込んだ可能性が高い場合に,より早い段階でかごを停止することができ,また,急激な減速停止を防止できるのであって,甲 速度の設定値を更に低くする。そのため,乗場ドアの開放が検出され保守員が昇降路内に入り込んだ可能性が高い場合に,より早い段階でかごを停止することができ,また,急激な減速停止を防止できるのであって,甲1発明,甲2に記載された技術及び周知技術からは予測できない格別な効果がある。」などと主張し,その趣旨は必ずしも明らかではないが,仮に,これらの主張が顕著な作用効果に関する主張であったとしても,前記1及び2で判示したとおり,そもそもその前提を欠き,理由がないことは明らかである。 4 以上によれば,原告主張の取消事由1,2はいずれも理由がなく,本件審決- 44 -にこれを取り消すべき違法は認められない。 第6 結論以上の次第であるから,本件審決の結論は相当であって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官富田善範 裁判官大鷹一郎 裁判官平田晃史- 45 -(別紙1)本件明細書図面目録 [図1] - 46 -[図2] - 47 -[図3] - 48 -[図4] - 49 - [図5] [図6] - 50 -[図7] - 51 -(別紙2)甲1発明図面目録 - 52 -[第7図]
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