平成19(わ)868 建造物侵入,窃盗

裁判年月日・裁判所
平成19年12月17日 神戸地方裁判所
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判決文本文5,586 文字)

平成19年12月17日宣告平成19年(わ)第868号建造物侵入,窃盗被告事件主文被告人を懲役1年4月に処する。 未決勾留日数中110日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,金員窃取の目的で,平成19年5月29日午前4時40分ころ,店長Aが看守する,神戸市a区bc丁目d番e号所在のBビル地下1階の飲食店Cに,同店の出入口ドアの施錠を外して侵入し,そのころから同日午前5時58分ころまでの間に,同所において,設置されていた金庫内からAが管理する現金約2万4500円を窃取したものである。 (証拠の標目)(省略)(事実認定の補足説明) 被告人は,捜査及び公判の各段階を通じ,一貫して,本件窃盗をしていない旨を述べ,弁護人も,被告人の供述に依拠して,被告人は無罪である旨主張しているので,以下検討する。 関係証拠によれば,次の事実が認められる。 (1)本件店舗内のレジスターの下に設置されていた据置き金庫内に入れられていた100円,50円及び10円の硬貨で合計約2万4500円が窃取されるという本件被害は,店長のAが店を閉めて出入口に鍵をかけて同店を出た平成19年5月29日午前1時30分ころから開店準備のため従業員が本件店舗に出勤した同日午後零時45分ころまでの間に発生した。 (2)被告人は,本件店舗に勤務しており,同日午前4時40分ころ,本件被害店舗がある,神戸市a区bc丁目d番e号所在のBビルに同ビルの歩道側出入口から入り,同日午前5時58分ころ,同出入口から同ビルを出た。 (3)被告人は,被害店舗出入口の合鍵は持っているが,店舗内の据置き金庫の合鍵は持っていなかった。 (4)被害店舗出入口の扉の鍵部分は壊されておらず,扉がこじ開けられた形跡もなかったが,金庫の鍵部分は壊されて,金庫はこじ開けられていた。 (5)被害 ,店舗内の据置き金庫の合鍵は持っていなかった。 (4)被害店舗出入口の扉の鍵部分は壊されておらず,扉がこじ開けられた形跡もなかったが,金庫の鍵部分は壊されて,金庫はこじ開けられていた。 (5)被害店舗では,店長Aが,閉店時にレジスターを空にして閉じ,翌日分の釣り銭用の100円,50円及び10円の各硬貨をレジスターの下にある据置き金庫に保管するようにしていた。 (6)被害店舗内のレジスターの引出し,カウンター内の棚,引出し付きの台などが物色された形跡はなく,金庫だけが壊されており,金庫の前の床に金庫の耐火材料のコンクリートの破片や粉が飛び散っていたが,犯人がほうきやちり取りで掃除した形跡があった。 (7)被告人は,同日午後2時57分ころ,神戸市f区内のD銀行E支店のATM16号機で,硬貨ばかり多数枚を同支店の被告人名義口座にキャッシュカードを使って入金しようとしたが,機械のトラブルが発生し,銀行員から横のATM14号機を使用するように言われ,同日午後3時3分ころから同日午後3時11分ころの間に,同支店のATM14号機で,前記キャッシュカードを使って,合計2万0959円を硬貨ばかり(百円玉157枚,五十円玉77枚,十円玉140枚,一円玉9枚)で入金し,その後すぐに同キャッシュカードを使い,暗証番号を入力して,2万1000円を引き出した。 (8)被告人は,本件被害当日の午前1時43分にFに電話して,1万円の借用を申し込み,これを断られると二,三千円でもいいから貸してほしいと頼んだが断られ,本件被害発生の翌日である平成19年5月30日昼前にGに2万円の借用を申し入れて同金額を同人から借り,また,Hからも同月31日にいくらかの金員を借りた。 なお,弁護人は,被告人が金員を借りたというこれらの事実の存在は疑わしいと主張するが,Fは,携帯電話の通話料 用を申し入れて同金額を同人から借り,また,Hからも同月31日にいくらかの金員を借りた。 なお,弁護人は,被告人が金員を借りたというこれらの事実の存在は疑わしいと主張するが,Fは,携帯電話の通話料金明細内訳票を示された上で具体的に述べており(甲23 ,Gは,携帯電話に残っていたメールに基づいて具体的に述べており)(甲24,25 ,Hは,携帯電話の通話料金明細内訳票を示された上,被告人から本)件被害に遇ったので釣り銭をみんなで補充しないといけないと聞いたことなどを根拠にして金員を貸した日を特定して具体的に述べており(証人Hの公判供述,被)告人に金員を貸した3名の各供述の信用性に疑問を入れる点はなく,弁護人の主張は失当である。 被告人は,公判廷において,前記2(2)で認定した時間帯に本件店舗内にいたことを認めているが,同時間帯は本件被害発生の時間帯に含まれていること,前記2(7)によれば,被告人は,本件被害後,それに近接した時間帯に硬貨ばかりで合計2万0959円を所持していたこと,前記2(4)によれば,本件の犯人は本件店舗出入口の合鍵を所持していた可能性が高いところ,被告人はこれを所持していたこと,Aの警察官調書(甲4[不同意部分を除く)によれば,ほうきやちり]取りは,出入口外の空きスペースに置いてあり,営業時間以外は照明がなく真っ暗であり,カーテンで仕切られているので,掃除用具をそこに置いてあることは,従業員以外は知らないと思う旨を述べているところ,前記2(6)によれば,犯人は,金庫以外の箇所を物色していない上,ほうきやちり取りの置いてあった場所を知っていた人物であり,本件店舗の従業員である可能性が高いと考えられること,前記2(8)によれば,被告人は,本件被害前後ころ,知人から金員の借入を必要とする経済状況にあったことの 置いてあった場所を知っていた人物であり,本件店舗の従業員である可能性が高いと考えられること,前記2(8)によれば,被告人は,本件被害前後ころ,知人から金員の借入を必要とする経済状況にあったことの各事情を指摘することができ,これらの事情からすれば,被告人において,前記被害時間帯に本件店舗内にいたこと,本件被害後に硬貨ばかりで前記金員を所持していたことについて,合理的な説明ができなければ,被告人が本件の犯人であると十分推認することができる。 被告人は,捜査段階では,前記2(2)や同(7)の事実を否定していたが,公判段階では,これらを認めるに至り,前記2(2)の事実に関し,①その前に知人のHがgまで送ってほしいと頼んできたので,本件事件当日の午前2時半ないし午前3時ころに同人とI付近で待ち合わせ,同人とともに付近の居酒屋に行って午前4時半ころまで一緒にいて,同人をgまで送るということで,被告人使用車両の中で同人に待っていてもらい,被告人は,本件店舗に行って,翌週のメニュー表の仕上げを書くなどして,1時間ほどで車に戻り,Hをgまで送って行った旨を,前記2(7)の事実に関し,②以前から硬貨で貯金しており,その硬貨をATM機を利用して両替しただけである旨を述べるに至り,捜査段階でそれらの事実を述べなかったのは,取調官が自分の言うことをまったく信用してくれなかったからであると供述している。 しかし,①の点は,Hが同日被告人と会ったことを明確に否定している(証人Hの公判供述)上,同人の公判供述,警察官調書(甲17[不同意部分を除く,Jの])警察官調書(甲19)及び写真撮影報告書(甲20)によれば,Hは,同日午前1時過ぎころ,Jに同人運転の車でg市の元妻の実家まで送ってもらい,同所には同日午前2時過ぎころに到着し,その後は,同所で寝たことが明ら (甲19)及び写真撮影報告書(甲20)によれば,Hは,同日午前1時過ぎころ,Jに同人運転の車でg市の元妻の実家まで送ってもらい,同所には同日午前2時過ぎころに到着し,その後は,同所で寝たことが明らかに認められ,これに反する被告人の公判供述はまったく信用することができず,被告人が翌週のメニュー表の仕上げを書いたかどうかの点はともかく,その余の点については,被告人は,公判廷において,虚偽の事実を述べているものと認められる。弁護人は,Hは,本件当日に被告人と飲みに行ったこと,及び,gまで送ってもらったことについて,別の日と誤解している可能性があると主張しているが,HやJは,携帯電話によるメール履歴などを示されて日時を特定して供述しており,HがJにgまで送ってもらったことを別の日と誤解している可能性はないというべきである。次に,②の点は,仮にそういう事実があったのであれば,被告人は,捜査段階において当然供述するはずであると思われるのに,取調官が言うことを聞いてくれないからとして供述しなかったというのはいかにも不合理であって,この点も到底信用することができない。なお,Aの供述によれば,窃取された硬貨には一円硬貨はなかったことが認められるところ,被告人が入金した金額は合計2万0959円であって,一円硬貨が9枚含まれていた(甲31)が,これは,被告人が窃取した金員に自己が所持していた一円硬貨を混ぜて入金したものと考えられ,被告人を本件の犯人とすることと矛盾するものではない。 弁護人は,①被害届(甲1)では,A以外の従業員が,開店準備に来てすぐに金庫がこじ開けられているのを発見したように記載されているが,Aは,公判廷では,自分が発見した旨述べており矛盾している,②出入りの酒屋が酒瓶などを置いておく場所について,従業員が足を引っかけて割らないように じ開けられているのを発見したように記載されているが,Aは,公判廷では,自分が発見した旨述べており矛盾している,②出入りの酒屋が酒瓶などを置いておく場所について,従業員が足を引っかけて割らないように,写真撮影報告書(甲3)の写真10のように,瓶はレジカウンターの上に置いておくべきものであるが,Aは,公判廷で,出入りの酒屋は,酒瓶などをレジカウンターにかけてある商い中という札の前の床に置く旨を述べており,事実と異なる証言をしている,③本件被害当日の午前9時30分ころに被害店舗に酒瓶等を配達した出入りの酒屋が金庫が見える位置まで入ったことを前提にして,金庫の前には金庫を壊す際に出た破片が散乱しているから,酒屋はそれに気付いたはずであり,被害届(甲1)では,午前9時半ころに被害店舗に来た酒屋によれば,店の鍵はかかっており,荒らされた様子はなかったというのであるから,本件犯行は,午前9時30分から午後零時45分の間に被告人以外の第三者によって行われた可能性が高いと主張している。 しかし,①の点については,Aは,自宅に持って帰っていた釣り銭を金庫に入れようとした際に,金庫が少しだけ開いているのに気付いたと具体的に述べており,被害届の記載は,被害に遇った時間帯を特定するために記載されたものと考えられ,それがAの公判供述と異なっている点は,同人の公判供述の信用性を左右するものとは考えられない。②の点については,Aは,写真撮影報告書(甲3)の写真10の位置に酒屋が置くときもあるかもしれないが,写真に写っているジュースの瓶は自分が置いたと思う旨,酒瓶は大体レジカウンターにかけてある商い中という札の前の床に置く旨を明確に述べており,出入りの酒屋が酒瓶等を置く位置としては,出入口扉のすぐ前であるAのいう場所が不自然であるとは思われず,この点はAの公判供述の信 ンターにかけてある商い中という札の前の床に置く旨を明確に述べており,出入りの酒屋が酒瓶等を置く位置としては,出入口扉のすぐ前であるAのいう場所が不自然であるとは思われず,この点はAの公判供述の信用性に疑問を差し挟むようなものではない。さらに,③の点は,信用できるAの公判供述によれば,酒屋は金庫の前が見えるような店の奥までは入らないと認められる上,Aは,店に入ってから30分ほどは被害に気付かなかったと述べており,酒屋が店に酒瓶等を配達した際に本件被害に気付かなかったとしても何ら不合理ではない。弁護人の主張はいずれも採用できない。 以上のとおりであって,被告人が公判廷で述べる弁解は到底信用することができず,前記2の事実関係から被告人が本件の犯人であるとする推認を左右するような事情はない。 (法令の適用)罰条判示所為中,建造物侵入の点は刑法130条前段,窃盗の点は刑法235条科刑上一罪の処理刑法54条1項後段,10条(一罪として重い窃盗罪の刑で処断)刑種の選択懲役刑未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)被告人は,勤務していた被害店舗出入口の合鍵を所持していたことを奇貨として,経営者や店長等従業員の信頼を裏切り,金員欲しさに安易に本件犯行に及んだものであって,動機に酌むべき点はなく,態様は大胆で狡猾であり,被害額も少額とはいえないこと,平成14年2月にパチンコ店での置引き窃盗の事案で懲役1年6月に処せられ,3年間その刑の執行を猶予されたことがあるのにまたもや本件犯行に及んでおり,規範意識が鈍麻していること,不合理な弁解に終始し,反省の態度がまったくみられないことなどに照らすと,その刑事責任は相当重いというべきであり,主文の刑に処するのが相当である。 (求刑懲役2年6月) 規範意識が鈍麻していること,不合理な弁解に終始し,反省の態度がまったくみられないことなどに照らすと,その刑事責任は相当重いというべきであり,主文の刑に処するのが相当である。 (求刑懲役2年6月)(国選弁護人井上篤)平成19年12月17日神戸地方裁判所第2刑事部裁判官佐野哲生

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