令和6年11月7日宣告令和5年(わ)第282号、第608号、第640号、第1062号、第1189号、第1355号住居侵入、強盗致死、強盗予備、窃盗未遂、強盗傷人、建造物侵入、強盗殺人未遂、窃盗被告事件判決 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中300日をその刑に算入する。 押収してあるモンキーレンチ1本(令和6年押第3号符号1)及びバール1本(同号符号2)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1 a、b及び氏名不詳者らと共謀の上、金品窃取の目的で、令和4年11月14日午前11時30分頃から同日午後1時40分頃までの間に、神奈川県秦野市(住所省略)甲方に、1階勝手口から侵入し、その頃、同所において、同人ほか1名所有又は管理の腕時計等64点(時価合計約878万4000円相当)を窃取した第2 金品を強奪しようと考え、c、d、e、b、f、g、a及び氏名不詳者らと共謀の上、令和4年12月5日午前10時47分頃、被告人及びeが、東京都中野区(住所省略)乙方に、宅配業者を装って乙に玄関ドアを開けさせた上、同人(当時49歳)に対し、その顔面を拳で殴るなどの暴行を加えて玄関から侵入し、同玄関内において、同人に対し、その顔面を拳で殴るなどの暴行を加え、さらに、同日午前10時54分頃、被告人が、c、d、e、b及びfと共に、乙方に、無施錠の玄関から再度侵入し、その頃から同日午前10時57分頃までの間、同人方において、同人に対し、その顔面を拳で殴るなどの暴行を 加え、その反抗を抑圧し、同人所有の現金約3200万円を奪い、その際、前記一連の暴行により、同人に全治まで約14日間を要する前額部挫創等の傷害を負わせた(以下「中野事件」ともいう。)第3 時計等販 え、その反抗を抑圧し、同人所有の現金約3200万円を奪い、その際、前記一連の暴行により、同人に全治まで約14日間を要する前額部挫創等の傷害を負わせた(以下「中野事件」ともいう。)第3 時計等販売買取専門店の店舗兼居宅に押し入って金品を強奪しようと考え、a、e、g、h、i、j、k及び氏名不詳者らと住居侵入、強盗傷人の限度で共謀の上、令和4年12月21日午後7時28分頃、広島市(住所省略)時計販売買取専門店丙店舗兼丁ほか2名方居宅に、宅配業者を装って戊に同居宅玄関ドアを開けさせた上、同人(当時75歳)に対し、その右足を踏みながら、その身体をあお向けに押し倒す暴行を加えて、同玄関から侵入し、その頃から同日午後7時54分頃までの間、同玄関内において、同人に対し、その口及び鼻を手で押さえ付けるなどの暴行を加え、また、同居宅内において、己(当時49歳)に対し、その顔面を拳で殴るなどの暴行を加え、さらに、同居宅内において、丁(当時81歳)に対し、その顔面を拳で殴るなどの暴行を加えたほか、その間に、被告人が殺意をもって、己の後頭部をモンキーレンチ(令和6年押第3号符号1)で強打し、戊、己及び丁の反抗をそれぞれ抑圧した上、同店舗及び同居宅内において、同人ら管理の現金合計約250万円及び腕時計等約137点(時価合計約2439万1785円相当)を強取し、その際、戊に対する一連の暴行により、同人に加療約2週間を要する顔面打撲及び右足打撲・捻挫の傷害を、丁に対する一連の暴行により、同人に加療約2週間を要する顔面打撲、頚椎捻挫等の傷害をそれぞれ負わせたほか、己に対しては被告人の前記モンキーレンチを用いた後頭部強打により、高次脳機能障害等の後遺症が見込まれる加療日数不明の意識障害を伴う脳挫傷、外傷性脳内血腫、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血及び頭部挫創の傷 ては被告人の前記モンキーレンチを用いた後頭部強打により、高次脳機能障害等の後遺症が見込まれる加療日数不明の意識障害を伴う脳挫傷、外傷性脳内血腫、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血及び頭部挫創の傷害を負わせたにとどまり、被告人において殺害の目的を遂げなかった(以下「広島事件」ともいう。)第4 l、m及び氏名不詳者らと共謀の上、金品を強奪しようと考え、令和5年1月12日午後7時25分頃、千葉県大網白里市(住所省略)の有限会社庚店長 辛が看守する同店舗に、出入口ドアから侵入し、その頃から同日午後7時28分頃までの間、同店内において、同人(当時76歳)に対し、その顔面を拳で複数回殴った上、「金庫はどこだ。」と言い、さらに、同人の顔面を拳で複数回殴るなどの暴行脅迫を加え、その反抗を抑圧して金品を強奪しようとしたが、同人がこれに応じなかったため、その目的を遂げず、その際、同人に加療約2週間の両側頰骨骨折、鼻骨骨折、顔面挫創等の傷害を負わせた(以下「東金事件」ともいう。)第5 金品を強奪しようと考え、n、i、o及び氏名不詳者らと共謀の上、令和5年1月19日午前11時31分頃、東京都狛江市内にあるA方に、宅配業者を装って玄関ドアから侵入し、その頃から同日午後1時12分頃までの間、同所において、A(当時90歳)に対し、その両手を結束バンドで緊縛し、その背部等を足で蹴り、その腹部及び背部等を持っていたバール(令和6年押第3号符号2)で多数回殴るなどの暴行を加え、その反抗を抑圧した上、同人管理の腕時計3個等4点(時価合計約59万円相当)を奪い、その際、前記一連の暴行により、同人に多発肋骨骨折等の傷害を負わせ、その頃、同所において、同人を前記傷害に基づく外傷性ショックにより死亡させた(以下「狛江事件」ともいう。)第6 i、p、o及び氏名不詳 前記一連の暴行により、同人に多発肋骨骨折等の傷害を負わせ、その頃、同所において、同人を前記傷害に基づく外傷性ショックにより死亡させた(以下「狛江事件」ともいう。)第6 i、p、o及び氏名不詳者らと共謀の上、宅配業者を装ってB方に押し入り金品を強奪する目的で、令和5年1月20日午前10時54分頃、埼玉県草加市(住所省略)壬店駐車場において、前記バール、宅配用段ボール箱、結束バンド等を積載した普通乗用自動車に乗車して同所から東京都足立区内にあるB方付近に向けて出発し、同日午前11時18分頃から同日午前11時35分頃までの間、同人方付近において、前記バール、宅配用段ボール箱、結束バンド等を携えて同車を降車し、同人方の人の出入りの状況を確認するとともに、同人方のインターホンを押すなどして犯行の機会をうかがうなどし、もって強盗の予備をした 第7 i、p、o及び氏名不詳者らと共謀の上、金品窃取の目的で、令和5年1月20日午後1時15分頃から同日午後1時48分頃までの間に、前記バールを用いて前記B方1階食堂南側掃き出し窓の施錠を外して侵入し、その頃、同所において、押し入れを開けるなどして物色したが、金品を発見することができなかったため、その目的を遂げなかったものである。 (証拠の標目)省略なお、判示第1の事実のうち被害者方1階勝手口の施錠状況については、被害者方の家人は、外出する際には内側から1階勝手口の扉を施錠した旨供述をしているところ、被告人は、同扉は施錠されていなかった旨供述している。この被告人の供述を虚偽と断じ切るに足りるまでの証拠はない一方で、被害者方の家人が勘違いをしている可能性も完全には排斥できないことから、判示の限度の事実を認定した。 (法令の適用)省略(量刑の理由) 1 本件は、指示役において、多額の での証拠はない一方で、被害者方の家人が勘違いをしている可能性も完全には排斥できないことから、判示の限度の事実を認定した。 (法令の適用)省略(量刑の理由) 1 本件は、指示役において、多額の現金が保管されているとされる民家等の情報を入手した上で、このような民家等に押し入り、居合わせた家人等に暴行を加えて現金等のありかを聞き出してこれを強奪する犯行を計画し、SNSを通じて実行役を募り、犯行実行に当たっては、実行役のほか、犯行現場への運転手役、犯行用具等の調達役等、役割を分担させた上で、犯行前後を通じ、秘匿性の高いメッセージアプリを利用して指示役と実行役等との緊密な連絡を維持するなどしながら敢行された連続強盗(家人が不在であったことなどから空き巣窃盗等にとどまったものを含む。)の事案である。 実行役を募るに当たっては、女性や子どもを殴ることができるか、バールで人を殴ることができるかなどが確認された上、犯行の実行前には、指示役から実行役全員に対して、殴ったり蹴ったりしなければ報酬は支払わない旨伝えるなど、家人等に躊躇なく暴行を加えるよう指示が徹底されていたほか、強盗に入る民家 等の情報に応じ、実行役の間で誰がどのような役割を担うかを事前に決めて犯行に臨んだり、民家への強盗に当たっては、あらかじめ用意した作業着に着替え、伝票を貼付した段ボールを持つなどした実行役が宅配業者を装って家人に玄関ドアを開けさせるなど、各犯行は、計画的で組織立ったもので、このような点のみでも本件の犯情は相当悪い。 2⑴ 各犯行をみると、強盗殺人未遂を含むなど結果の相当重い広島事件では、被告人らは、時計販売買取店を営んでいた被害者家族3名のうち高齢の2名に躊躇なく暴行を加え、さらに、被害者家族の長男の抵抗が強いとみるや、実行役の中で家人の制圧を担当する 果の相当重い広島事件では、被告人らは、時計販売買取店を営んでいた被害者家族3名のうち高齢の2名に躊躇なく暴行を加え、さらに、被害者家族の長男の抵抗が強いとみるや、実行役の中で家人の制圧を担当する班のリーダーとされていた被告人において、長男の背後からその後頭部をモンキーレンチで強打するという強烈な暴行を加えてその抵抗を排除し、現金、腕時計等を強奪している。長男は一命をとりとめたものの高次脳機能障害等の後遺症が残り、生涯介護が必要な状態となっているほか、長年営業してきた店舗も閉店を余儀なくされたというのであり、その生活をまさしく一変させられた被害者家族らが極刑を求めるほど厳しい処罰感情を抱くのは当然である。 ⑵ 次いで、Aを死亡させた狛江事件についてみると、被告人らは、高齢のAの両手を結束バンドで緊縛した上で、Aから現金等のありかを聞き出すべく、Aの身体をバールで多数回殴るなどしたほか、被告人は、現金のありかを話さなければ「娘や息子を殺す」「家燃やすぞ」などと言って更にAを足で蹴るなどの暴行を加えている。このような暴行により、Aはその身体に20か所以上の骨折を負わせられるなどして、外傷性ショックにより死亡したのであり、その犯行態様は拷問ともいうべき、執拗で極めて残忍なものである。突然、自宅に押し入った被告人らに緊縛され、苛烈な暴行を受けながら詰問され続けたAの恐怖、苦痛がいかほどかは想像を絶するというほかなく、Aの平穏な余生を奪った被告人について、極刑を求める遺族の心情は十分に理解できる。 ⑶ そのほか、中野事件及び東金事件においても、各被害者の顔面を複数回殴る などの強度の暴行を加え、それぞれ相応に重い傷害結果を生じさせていること、本件一連の犯行による被害総額は6800万円余りと相当高額に上ることなどにも照らせば、事件全体を通 者の顔面を複数回殴る などの強度の暴行を加え、それぞれ相応に重い傷害結果を生じさせていること、本件一連の犯行による被害総額は6800万円余りと相当高額に上ることなどにも照らせば、事件全体を通じた犯情の悪さも顕著である。なお、被害品の一部については、警察官に追跡される過程で被告人らが遺留したり、捜査の結果、被害品が発見されて被害者に還付されたことがうかがわれるものの、これが本件の量刑を左右するものとはいえない。 3 このような犯行の中で被告人が果たした役割等をみると、被告人は、中野事件以降、実行役の中でリーダー格を務め、必要に応じ、指示役の指示がなくとも自らの判断で他の実行役に指示するなどの役割を担うようになり、広島事件では、中野事件で家人の制圧に手間取ったことを踏まえ、制圧道具としてモンキーレンチの追加を要望し、前記のとおり、このモンキーレンチを用い、被害者家族の長男に瀕死の重傷を負わせている。 その後、被告人は、金に困って指示役に新たな強盗の紹介を自ら求めるなどするようになり、東金事件では、他の実行役が直ちに見つからなかったことなどから、自身の友人を共犯者に引き入れるなどしてもいる。 さらに、狛江事件では、まず犯行の前日には、指示役からA方の空き巣窃盗を実行するよう指示されたにもかかわらず、被告人が、金庫を開ける道具が用意されていないなどと言ってこれを拒んだことなどから、犯行が延期されている。翌日に決行された犯行では、被告人は、Aの死に相当程度寄与したものと考えられるバールを用いた殴打を共犯者に指示し、途中、共犯者から、これ以上やればAが死ぬ旨言われても殴打の続行を指示し、自身でも更に暴行を加えている。その後、指示役からA方からの退去を指示された際には、被告人の判断でA方の物色を継続し、A方から退去した後、結局断念した やればAが死ぬ旨言われても殴打の続行を指示し、自身でも更に暴行を加えている。その後、指示役からA方からの退去を指示された際には、被告人の判断でA方の物色を継続し、A方から退去した後、結局断念したものの、A方への再侵入の機会をうかがうなどもしている。 以上のような被告人の本件への関与を踏まえると、被告人が広島事件及び狛江事件で行われた致命的な暴行を自ら行い又は主導している点のみでも、本件の実 行役の中で被告人の責任が際立って重いといえる上、被告人は、指示役の指示に唯々諾々と従っていたわけではなく、必ずしも事前に想定したとおりに犯行を行えるわけではない強盗現場において、犯行を成功させるために状況に応じて臨機応変に自らの判断で、ときには指示役の指示に従わずに他の実行役を指揮していた面があったというべきであり、本件一連の事件において被告人が果たした役割は相当大きい。被告人は金目当てで積極的に本件に加担し、本件により得た報酬及び指示役に秘して得た利益は合計650万円と相当額に上っている。 これらを踏まえると、被告人の責任は他の実行役のそれを大きく超えるものというべきである。 4 以上によれば、被告人の刑事責任は重大である。もっとも、強盗致死罪を処断罪とする事案の量刑傾向、広島事件における前記被害者家族の長男の受傷結果は誠に重篤なものではあるものの、なお未遂にとどまっていることなどを踏まえると、本件については無期懲役刑を選択するのが相当である。 弁護人は、共犯者の公判において被告人が真実を証言するなどして本件の全容解明に協力し、今後もそれを継続するつもりであること、被告人が深く反省していることなどを量刑上考慮すべきと主張する。確かに、被告人は、当公判廷においても、各犯行への関与の状況のみならず、本件当時、自身に根深い犯罪傾向 もそれを継続するつもりであること、被告人が深く反省していることなどを量刑上考慮すべきと主張する。確かに、被告人は、当公判廷においても、各犯行への関与の状況のみならず、本件当時、自身に根深い犯罪傾向があって、そのような考えに基づいて各犯行に積極的に加担していたことなど、被告人に相当不利益な内容を含め、本件について詳細に供述している。また、本件の被害の深刻さを被告人なりに理解しようと努め、本件を悔い、反省の弁を述べてもいる。これらは被告人に有利な情状ではあるが、本件の重大性に照らすと、酌量減軽の上で有期懲役刑を選択すべきほどのものとはいえない。 よって、主文のとおり判決する。 (検察官の求刑・無期懲役、主文同旨の没収、弁護人の科刑意見・有期懲役)令和6年11月8日東京地方裁判所立川支部刑事第3部 裁判長裁判官菅原暁 裁判官長橋政司 裁判官瀧田慎太郎
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