主文 1 被告は,原告に対し,1440万3287円及びこれに対する平成12年5月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを10分し,その9を原告の,その余を被告の負担とする。 4 この判決は1項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告は,原告に対し,1億3982万5149円及びこれに対する平成12年5月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 (3) (1)について仮執行宣言 2 被告(1) 原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨原告は,その雇用主であった被告に対し,原告が脳梗塞を発症したのは被告において過重な業務に従事させるなどの安全配慮義務違反があったためである旨主張して,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,損害のうち1億3982万5149円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成12年5月23日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めた。 これに対し,被告は,被告が過重な業務に従事させたことはなく,原告の発症は原告の既往症とその生活・診療態度等が原因であると主張して,債務不履行を否認するとともに,過失相殺を主張して争っている。 2 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠(甲1,5,15,乙7の5,15。書証については各枝番を含み,以下も同様に特に断らない限り各枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。 (1) 当事者ア被告は,建設工事及び軌道工事の の5,15。書証については各枝番を含み,以下も同様に特に断らない限り各枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。 (1) 当事者ア被告は,建設工事及び軌道工事の請負を主に目的とする株式会社である。 イ原告(昭和27年2月3日生)は,平成5年6月1日から平成9年2月28日までの間,被告の従業員(基幹要員)であった者で,被告和歌山営業所(以下「和歌山営業所」という。)において,線路工事の現場監督を担当していた。 (2) 原告の発症等ア原告は,平成7年3月4日,左足関節,左肩の脱力発作を起こしたが,言語障害も伴っており,これらの症状は,TIA(一過性脳虚血発作)によるものであった。 イ原告は,平成8年1月5日,TIA発作を起こし,A脳神経外科からB労災病院(以下「労災病院」という。)へ紹介され,同病院の医師により,脳梗塞(左内頸動脈閉塞症)と診断され,同日から入院し治療を受けたが,同年2月7日に無断外出し,妻に伴われて帰院したものの,自殺企図があり精神症状が強かったことから,一度家で落ち着いてゆっくりするようにということで,同日退院し,同年3月1日,左手足の麻痺等を訴えて労災病院へ再入院し,同年7月21日までの間同病院に入院し治療を受けた。 原告は,上記入院中付添が必要であり,原告の妻が付き添って看護した(入院日数合計177日)。 ウ原告は,第1回目の入院から第2回目の入院までの間に4日間,平成8年7月21日の第2回目の退院後から平成11年4月30日の前までの間に約45日間,労災病院に通院した(通院実日数約49日)が,平成11年4月30日,同病院の医師により,左上下肢麻痺とそれに伴う拘縮(左上肢機能は全廃し,裸足にての立位保持,自力で坐位より立位をとることは困難で 間,労災病院に通院した(通院実日数約49日)が,平成11年4月30日,同病院の医師により,左上下肢麻痺とそれに伴う拘縮(左上肢機能は全廃し,裸足にての立位保持,自力で坐位より立位をとることは困難で,短下肢装具及び4点杖を併用し,一度立位をとらせれば,介護歩行は可能という状態である。),視覚的認知機能障害,左半身知覚異常(とくに左足のしびれ)の障害を残して,症状固定と診断された。その障害の原因は,左内頸動脈閉塞(平成8年1月10日より生じた。),右内頸動脈2カ所狭窄,左基底核部等の多発性小梗塞,右頭頂・後頭葉の脳梗塞あり,両側大脳の脳血流低下,予備能の低下が認められることであった。 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 原告の業務と発症との間の相当因果関係の有無及び被告の安全配慮義務違反の有無(原告の主張)ア業務の過重性(ア) 通常の勤務状態原告の勤務には通常勤務(午前8時30分から午後5時15分まで。以下「日勤」という。)と夜間勤務(午後10時から午前5時まで。但し,実際の勤務時間は別である。以下「夜勤」という。)があった。 原告の日勤日数・夜勤日数は,被告の主張を前提としても,平成6年7月1日から平成7年12月28日までの間,日勤のみの日数が250日,日勤に加え夜勤もした日は172日,夜勤のみした日は10日間であった。 被告の主張を前提としても,その労働時間は標準労働時間(週40時間)と比較して異常に長時間である上,夜勤の占める割合が高く,その時間は,平成6年7月から同年12月までの間合計259時間,平成7年度1年間で約553時間で,労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(1か月45時間,1か年360時間《平成10年12月28日労 年12月までの間合計259時間,平成7年度1年間で約553時間で,労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(1か月45時間,1か年360時間《平成10年12月28日労働省告示第154号》)に鑑みて,いかにも異常である。しかも,被告の主張する夜勤時間は,線路閉鎖工事記録簿の着手通告と終了通告の時間を基礎に算定しているところ,原告は,同記録簿の「現場打ち合わせ・打合完了欄」記載の時間(着手通告の時刻より約1時間前である。)には現場にいたはずであること,原告は,工事監督者として,工事終了後最初の列車の通過を確認しなければ帰宅できなかったところ,列車の通過は同記録簿記載の終了通告の時刻より少なくとも20分後であったこと,夜勤の前後に通勤に要する時間が約1時間あったこと,線路閉鎖工事記録簿の「現場打ち合わせ・打合完了欄」記載の時間には原告は現場にいたはずであることなどからみて,過少であり,以上の諸事情を考慮すると,被告の線路閉鎖記録簿により判明した平成6年7月1日から平成7年12月28日の夜勤日数182日のうち57日分について被告の主張する夜勤時間を大幅に上回り,原告の夜勤時間は被告の主張より約178時間多く,182日分全部についてみると被告の主張の約3.5倍(約623時間多い)になる。 夜勤の勤務内容は,軌道工事管理者線(原文では「線」を○で囲む。以下同じ)として,軌道工事の指揮指導を行うことであった。被告会社では,軌道工事を行う際,列車運行の安全のため,軌道工事管理者線の資格を有する者1名が立ち会わねばならず,原告も平成5年7月に上記資格を取得した後,月間作業計画に組み込まれ,欠勤すると他の社員の負担が増えるため欠勤できず、日勤を行いながら夜勤勤務を行うなどの加重労働を強いられた。上記月間作業計画 ず,原告も平成5年7月に上記資格を取得した後,月間作業計画に組み込まれ,欠勤すると他の社員の負担が増えるため欠勤できず、日勤を行いながら夜勤勤務を行うなどの加重労働を強いられた。上記月間作業計画(各社員等の割当)は,主任であったCが決めており,原告に裁量可能性はなかった。しかも,工事時間中は補修作業の状況等についてJR西日本への報告書を作成するために作業状況の管理や写真撮影等のために現場を離れることはできない上,上記のとおり,列車を止めた場合には始発列車の通過まで現場を離れることができなかった。 原告は,日勤として枕木の交換や線路の整正とを行っていたが,これについてはJR西日本の指示を優先せざるをえなかったし,夏期枕木の交換を控える場合でも,交換に備えて枕木のサイズをチェックしたり線路の除草をするなどの業務がありデスクワークにとどまるものではなかった。なお,原告の通常の勤務はこの日勤であり,これについて原告自身で調整のしようがなく,夜勤明けの日勤の場合に遅刻が許されたとしても30分ないし1時間程度であった。 (イ) 阪神淡路大震災の際の応援上記の通常の勤務状態でも過重である上,原告は,阪神淡路大震災の発生により,以下のとおりa・b付近の保線に従事した。 平成7年1月26日午後10時ころから29日午前10時ころまで同年2月2日午前7時ころから4日午前9時ころまでその間,車中で仮眠しながら不規則に移動,待機,作業をしており,同年2月2日から行った応援の際は純粋な作業時間だけでも26時間中18時間であった。 しかも,その後特別の休暇が付与されることもなかった。 イ因果関係昼夜逆転現象を生じる夜勤は生体リズムに重大な影響をもたらすものであり,疲労・ 間中18時間であった。 しかも,その後特別の休暇が付与されることもなかった。 イ因果関係昼夜逆転現象を生じる夜勤は生体リズムに重大な影響をもたらすものであり,疲労・ストレスの蓄積は,脳血管疾患や虚血性心疾患等の疾病状態を発生させ,さらに,高血圧状態が長期間継続すると、血管の動脈壁のアテローム性硬化を促進し,主に動脈の壁に脂肪(コレステロール)が付着して硬化が進行し,TIA・脳梗塞の原因となる。 本件では,原告が,平成5年7月に軌道工事管理者線の資格を取得した後,責任の重さとともに,打ち合わせ等多様な業務負担が増し,前記のような過重労働を強いられたことが,脳梗塞を発生させた原因である。 なお,原告がパチンコ等に連日興じていた事実はないし,入院後は,禁煙し,療養に努めていた。仮に何度かパチンコ店に行ったことがあったとしても,労働による疲労回復の方法のひとつであり,原告の個別的事情に何ら該当するものではない。 ウ安全配慮義務違反の有無使用者は,労働者に対し,その労働が過重とならないように配慮する義務があるとともに,常時使用する労働者について,定期健康診断を実施するなどして労働者の健康状態を把握し,その結果労働者の健康を保持するため必要があると認める時は,当該労働者の実情を考慮して,就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮等の措置を講じるなどして,脳心臓疾患等の過労性疾病(脳出血,脳梗塞,狭心症,心筋梗塞等)の発生防止に努めるべき義務を負っている。 本件の場合,被告は,健康診断を通じて,原告が完全右足ブロックであり,高血圧症で中性脂肪の数値が異常に高い状態であったことを把握していた上,平成7年3月ころから,左足関節・左肩の脱力感、軽度の言語障害があったため,週2回の割 を通じて,原告が完全右足ブロックであり,高血圧症で中性脂肪の数値が異常に高い状態であったことを把握していた上,平成7年3月ころから,左足関節・左肩の脱力感、軽度の言語障害があったため,週2回の割合で通院していたことを知っていたのであるから,適切な健康診断を実施するなどして脳心臓疾患等の早期発見につとめるとともに,軌道工事等の業務に従事する人員を増員するなどして原告の業務を軽減すべき義務があったにもかかわらず,これを怠ったのであるから,被告が安全配慮義務に違反していたことは明らかである。 (被告の主張)ア業務の過重性以下述べるとおり,原告の業務は過重なものではなかった。 (ア) 通常の勤務状態平成6年7月から平成7年12月までの間の,原告の被告における勤務日数及び勤務時間は,別紙「日勤数等集計表」のとおりである。夜勤については,月間・週間スケジュール作成の段階で,原告を含め各従業員の都合を配慮されていた上,原告は,入社の際,正社員では給与が安いので,基幹要員として日給月給にして欲しい旨希望したもので,勤務状況について自己決定できる立場にあり,自ら土日に出勤するなどして日当を稼いだほか,単価が高く超勤割増と深夜割増が加算され,線閉手当が別途支給される夜勤についても,自分の判断で当初の計画より回数を増やすこともあった。 また,原告が夜勤で軌道工事管理者線として担当していたのは監督業務であって肉体労働でなく,しかも軌道工事管理者としての業務を兼務していない場合には,工事着手及び終了の際JR西日本に連絡することが主な業務で,工事時間中現場に拘束されていたわけではなかった。なお,原告は,始発列車の通過確認を行う必要はなく,実際に行っていなかった。 日勤においては,線路閉鎖工事記録 に連絡することが主な業務で,工事時間中現場に拘束されていたわけではなかった。なお,原告は,始発列車の通過確認を行う必要はなく,実際に行っていなかった。 日勤においては,線路閉鎖工事記録簿等の作成が主な業務で,以上は通常一晩分約1時間あれば終わる業務である。夏期(5月20日ころから9月20日ころまで)は,暑さのため線路が伸張し、工事が物理的に不可能であるため,昼間の現場作業は午前11時までとなっており,この間の通常業務は,週間作業計画の作成等のデスクワークがほとんどであった。また,日中の現場作業においては,原告は,軌道工事管理者線としての資格を用いてなかったので,JR西日本との打ち合わせ(移動は車を用い,30分程度である。),現場作業実施時の工程管理と品質管理,現場作業のための事前調査などを行う程度で,その現場に工事中終始拘束されていたわけではなかった。 なお,夜勤明けでも必ず午前8時30分に出社するという体制ではなく,原告も午前10時や11時過ぎに出社することがしばしばあり,しかも,原告は,勤務時間にパチンコにいくなどしていた。 (イ) 阪神大震災の際の応援原告の稼働状況は別紙「平成7年阪神地区震災に伴う復旧作業について」と題する書面のとおりであるが,その際原告自らはワゴン車でエアコンをかけ熟睡していただけである。また,原告自身休暇の申請をしなかった。 イ因果関係上記のとおり原告の業務は過重ではなかった上,原告が現在の病状(脳梗塞)に到ったのは平成8年3月1日であって,労働による負荷は全く考えられない時点であるし,仮に原告が同年1月5日に脳梗塞を発症したと認められるとしても,平成7年12月末日以降は冬休みで労働による負荷のない状態であって,いずれについても労働が原因とする 荷は全く考えられない時点であるし,仮に原告が同年1月5日に脳梗塞を発症したと認められるとしても,平成7年12月末日以降は冬休みで労働による負荷のない状態であって,いずれについても労働が原因とするのは不合理である。原告の現在の症状は,以下述べるとおり,原告の体質,日常生活,脳梗塞と診断された後の不養生,第1回入院時の療養態度,第2回入院の契機等いずれも原告の責に帰すべき事由によるものである。 すなわち,原告は,健康診断の際,高脂血症,中性脂肪の高度上昇,γ-GTPの上昇が指摘され,基本的に脳梗塞になりやすい体質で,断酒と食事療法をし,減量をすることを指示されていたが,飲酒1,2日で1升,喫煙1日80本,時間に余裕があればパチンコをし,子供の関係で少年野球の手伝いをし,日当ほしさに夜勤をするという不健康な生活を続け,平成7年3月ころTIAを発症した後も,上記の生活習慣を変えず,適切な治療を受けなかった。その後,原告は,平成7年10月12日にD病院で脳梗塞と診断され,同月13日ころにはA脳神経外科において脳梗塞,TIA,頸動脈に雑音ありと診断されており,これは頸動脈に強い狭窄があることを示し,脳梗塞が今にも発症する危険性があり,速やかに入院し検査を受ける必要があったにもかかわらず,上記のような生活を続けた。そのため,原告は,同年12月21日にTIAを起こし,その治療の際に禁煙と減酒を指示されたにもかからわず,上記診断内容を被告に伝えたり,勤務状況の変更を申し出たりしたこともなかった。 そして,労災病院における第1回入院時(平成8年1月5日)には,左内頸動脈が閉塞し,新たに右内頸動脈に2カ所狭窄が生じ,右頭頂から後頭領域に梗塞が発生し,「動脈硬化が強いと思われ,脱水」「喫煙することで梗塞へとなる恐れあり」といわれていたに 年1月5日)には,左内頸動脈が閉塞し,新たに右内頸動脈に2カ所狭窄が生じ,右頭頂から後頭領域に梗塞が発生し,「動脈硬化が強いと思われ,脱水」「喫煙することで梗塞へとなる恐れあり」といわれていたにもかかわらず,原告は入院時も禁煙できず,疾病についての理解度が低く安静が守れなかった上,病院関係者と対立し,主治医の許可なしに退院した。その後,同年3月1日に,現在の病状に到って再入院したが,その原因は,禁煙ができていなかったこと,入院前日に水分をとらずのどの乾いた状態でシャワーを浴びて,そのまま寝てしまったこと(原告は動脈硬化が強いので,脱水,喫煙により梗塞となる恐れがある。)であった。 ウ安全配慮義務違反以上のとおりであるから,被告に安全配慮義務違反はない。 (2) 損害額(原告の主張)ア入院雑費 26万5500円日額1500円×177日(労災病院に入院)イ付添看護費 115万0500円上記入院期間中常時看護が必要であり,妻が付き添った。 日額6500円×177日ウ逸失利益 8787万8285円原告は,身体障害者等2級の認定を受けたが,これは自動車損害賠償保障法施行令2条別表(等級表)2級3号(労働能力喪失率100パーセント)に該当する。 原告は,症状固定時47歳の男性であり,平成10年度男子労働者学歴計・年齢別平均賃金年収705万1700円を基礎とし,年5分の割合による中間利息をライプニッツ方式により控除すると,以下のとおり算出される。 705万1700円×12.462エ将来の介護費用 1730万4285円原告は,随時介護が必要であり,平均余命までの年5分の割合による中間利息をライプニッツ方式により控除する。 日額3000円×365日× エ将来の介護費用 1730万4285円原告は,随時介護が必要であり,平均余命までの年5分の割合による中間利息をライプニッツ方式により控除する。 日額3000円×365日×15.803オ入通院慰謝料 500万円原告は,労災病院に177日間入院したほか,症状固定日まで約3年間週2回の割合で通院していた。 カ後遺障害慰謝料 2500万円キ弁護士費用 1000万円ク合計 1億4659万8570円ケ請求うち1億3982万5149円(被告の主張)争点1に関する被告の主張に述べたとおり原告の疾病は原告に責任があるのであって,仮に被告に賠償責任が認められるとしても応分の過失相殺をなすべきである。その他各損害及び損害のてん補に関する主張は以下のとおりである。 ア入院雑費日額1300円が限度である。 イ付添看護費日額5500円が限度である。 ウ損害のてん補原告は,療養給付,療養の費用の給付,休業補償給付,障害補償年金,介護補償給付の労働者災害補償保険給付を受領し,もって損害のてん補を受けた。 第3 争点に対する判断 1 判断の前提となる事実関係証拠(甲1,2,5,15,16,乙1ないし9,15,16,19,20ないし22,証人C,同E,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,この認定を覆すに足る証拠はない。 (1) 原告の業務内容,稼働状況等ア原告は,平成2年11月ころから,被告の下請会社であったF組の下請会社であったG組において,平成5年1月ころからは上記F組において,線路工事の作業員として稼働していた。 原告は,同年5月に軌道工事管理者の資格を取得した後,同年6月から被告において勤務す 社であったG組において,平成5年1月ころからは上記F組において,線路工事の作業員として稼働していた。 原告は,同年5月に軌道工事管理者の資格を取得した後,同年6月から被告において勤務するようになり,同年7月,被告から指示されて,軌道工事管理者線の資格を取得した。工事の計画及び施工管理業務は軌道工事管理者の資格を有するものが行うが,下記線路閉鎖業務の監督は,軌道工事管理者線の資格を有するものが行わなければならなかった。 イ原告を含む被告従業員の勤務には,日勤(時間帯は午前8時30分から午後5時15分まで)と夜勤(時間帯は午後10時から午前5時まで)とがあった。平成7年当時,被告和歌山営業所には,軌道工事管理者の資格を有するものが8人,軌道工事管理者線の資格を有する者が7人おり(いずれも所長を含む。),各従業員の担当工事の割当は,Cが、月間作業計画の作成と共に行い,原告は,これを受けて週間作業計画を作成していた。夜間作業の回数は,従業員によって差があり,所長は月1回あるかないかといった程度で,原告は回数が多い方であった。 ウ原告は,日勤においては,夜勤をした際の,線路閉鎖工事記録簿,施工打合せ票,仕上がり状態検査記録,施工数量表等の書類を作成したり,工事現場で撮影した写真を整理したり,現場作業をする当日のダイヤを確認すること等が主な業務であり,以上の書類作成作業には約2,3時間を要した。毎年5月20日ないし9月20日までの間は日中の現場作業(線路補修作業)は午前11時以降しないこととなっており,現場作業を行った際も,その監督は下請業者であったF組が行っており,原告が軌道工事管理者として現場監督を行うことはなく,原告は,上記書類作成業務に加えて,JR西日本との打ち合わせ,現場作業実施時の工程管理と品質管理,現場作 監督は下請業者であったF組が行っており,原告が軌道工事管理者として現場監督を行うことはなく,原告は,上記書類作成業務に加えて,JR西日本との打ち合わせ,現場作業実施時の工程管理と品質管理,現場作業のための事前調査(現場の状態を把握したり,必要な材料・器具を判断するために行う。更換すべき枕木の確認等も行う。)を行う程度であり,当該現場に工事中終始拘束されていたわけではなかった。 エ原告は,夜勤においては,軌道工事管理者としての現場監督は下請業者に任せていたが,軌道工事管理者線の資格取得者として,現場工事施工監督及び現場工事の前後に行う線路閉鎖業務の監督を兼務していた。 オ原告の勤務日数,勤務時間,夜勤の回数等は,賃金台帳や線路閉鎖工事記録簿が残存し,勤務状況が判明する平成6年7月以降について,被告が認めている限りでも,別紙「勤務日数・時間等一覧表」記載のとおりであった。 カ原告は,和歌山営業所における業務のほか,平成7年1月26日から同月29日までの間及び同年2月2日から同月4日までの間,阪神大震災発生に伴う線路の復旧作業に従事したが,その際の勤務状況は,別紙「平成7年阪神地区震災に伴う復旧作業について」と題する書面記載のとおりである。 原告は,上記復旧作業の際,自ら現場作業は行わず,軌道工事管理者としての仕事も下請業者に任せていた。上記復旧作業の際の移動や仮眠は全てワゴン車で行われ,暖房もワゴン車のヒーターだけであった。 キ平成7年の仕事納めは同年12月28日で(同月22日以降夜勤はなかった。),その後平成8年1月3日までの正月休みの間,原告は自宅で過ごした。 平成8年1月4日の仕事始めの日は,原告は,日勤のみで,書類作成を行い,同月5日は午前8時30分ころ出勤し,JR紀伊駅においてJR西 成8年1月3日までの正月休みの間,原告は自宅で過ごした。 平成8年1月4日の仕事始めの日は,原告は,日勤のみで,書類作成を行い,同月5日は午前8時30分ころ出勤し,JR紀伊駅においてJR西日本との打ち合わせ等を行って和歌山営業所の事務所に帰った後,午後1時ころ,事務所において書類作成を行っていた最中に眩暈を起こし,妻に連絡して従前治療を受けていたA脳神経外科に連絡をとってもらい,同病院の紹介で労災病院を受診し,脳梗塞と診断された。 (2) 原告の健康状態,発症と治療経過ア被告では,年1回従業員について健康診断を実施し,その結果は各営業所長に知らされていた。原告についての健康診断の結果は以下のとおりである。 (ア) 平成5年10月13日血圧は最高143,最低89。医師より高脂血症とγーGTPの上昇を指摘され,アルコール禁止と食事療法が指示された。 (イ) 平成6年9月14日血圧は最高146,最低88。医師より高脂血症,中性脂肪の高度上昇,γーGTPの軽度上昇を指摘され,食事療法と治療が必要との指示を受けた。 (ウ) 平成7年9月13日血圧は最高155,最低93。医師より高血圧症を指摘され,減量と食事療法の継続を指示された。 イ原告は,上記のとおり医師から断酒と食事療法を指示され,治療を受けるよう促されたが,以下記載した以外は医師による治療を受けず,自分で購入した漢方薬(漢方の専門医による処方を受けたものではなかった。)を飲んだ程度で,それも中断したりしており,飲酒も喫煙も継続し,格別の食事療法も行わず,以下のような経過をたどった。 (ア) 平成7年3月4日,前記前提事実(2)のとおり,TIA発作を起こした。 程度で,それも中断したりしており,飲酒も喫煙も継続し,格別の食事療法も行わず,以下のような経過をたどった。 (ア) 平成7年3月4日,前記前提事実(2)のとおり,TIA発作を起こした。 (イ) 同年4月23日に,H生協病院を受診し,手足のしびれ,頭重感,肩こり等を訴えた。同病院には,同年9月ころまでにかけて,肩こり,不安神経症(同年9月からは咽頭神経症)で通院し,投薬治療を受けた。 同年7月12日の同病院での診察の際,原告は脳血管障害を気にしていたが,医師は心配ない旨話した。 (ウ) 上記通院の傍ら,原告は,同年10月までの間,肩関節周囲炎,高脂血症,高血圧,B型肝炎,C型肝炎,糖尿病,大腸がんの疑いで,I医院(胃腸科・内科)へ通院し,投薬治療を受けた。 (エ) 同年10月3日,原告は,上記I医院の紹介を受けて,向陽病院(脳神経外科)を受診した。その紹介状には,原告が最近口語障害,右腕・右手のしびれ,時に左足指先のしびれ等を訴える旨記載されていた。 (オ) 同月12日,原告は,D病院でMRI検査を受けたが,その所見は,2か所梗塞あり,左頸動脈分子枝部で内頸動脈が閉塞かというもので,同病院の医師は,脳梗塞と診断し,しばらく外来で経過をみて,発作が起こるなら一度DSA(臨床検査方法のひとつ)をすることとし,以後投薬治療を行った。同月26日には左半身のしびれを訴えたが,神経学的には異常はなかった。 (カ) 同月9日,原告は,A脳神経外科を受診し,左足関節,右肩の脱力,言語障害を訴え,以後同年12月まで,脳梗塞,高血圧症,高脂血症,一過性脳虚血発作,左腓骨神経麻痺で通院加療を受けた。その間,脱力は一時軽快したが,同年11月6日,数分で治癒したものの下肢のしびれを生じた。同年12月21日には まで,脳梗塞,高血圧症,高脂血症,一過性脳虚血発作,左腓骨神経麻痺で通院加療を受けた。その間,脱力は一時軽快したが,同年11月6日,数分で治癒したものの下肢のしびれを生じた。同年12月21日には,左上下肢の脱力を生じ,左半身麻痺の症状がみられたが,原告は,その前日に5合ほど飲酒していた。また,同月22日にはその前日から禁煙した旨述べた。 同年12月24日,D病院を受診時に右肩に悪寒生じ,不安になったとして救急車でA脳神経外科に搬送されたが,神経学的には異常がなかった。 (キ) 平成8年1月5日,原告は,TIAを起こし,前記前提事実(2)のとおり,労災病院で脳梗塞と診断されて入院し,以後抗血小板剤,脳循環代謝改善剤の投与を受けつつ経過観察が行われた。同月10日の血管造影で,左内頸閉塞,右内頸動脈に2カ所狭窄がみられ,同月17日の脳血流シンチグラムでは,両大脳半球(特に右側)に著名な血流低下が認められ,TIA症状がときどきみられた。また,同月24日のMRI検査では,右頭頂後頭に梗塞(新しい病変部)が見られた。 入院当時,原告は1日10本喫煙していたということで,禁煙指示を受けたが,入院中も原告には病識がなく,禁煙ができていない様子が窺われた。 (ク) 同年2月7日,脳血流シンチグラムでは同年1月17日に比べて血流が改善していたが,原告は,無断外出し,妻に伴われて帰院したものの,自殺企図があり精神症状が強かったことから,一度家で落ち着いてゆっくりするようにということで,同日退院した。 (ケ) 同年3月1日,原告は,左手足の麻痺等を訴えて再入院し,同年7月21日までの間労災病院に入院した。前回の退院後再入院までの間,飲酒はしなかったが,喫煙は10日間に20本ほどしていた。 (コ) 原告は,退 ,原告は,左手足の麻痺等を訴えて再入院し,同年7月21日までの間労災病院に入院した。前回の退院後再入院までの間,飲酒はしなかったが,喫煙は10日間に20本ほどしていた。 (コ) 原告は,退院後,労災病院に通院して投薬治療とリハビリテーションを続けた後,前記前提事実(2)のとおり,症状固定と診断された。 (3) 一般的な医学的知見TIAとは,脳循環障害によって局所神経症状が一過性に現れるが,短時間のうちに完全に回復してしまう発作である。一般にTIAとは反復性局所性脳虚血発作を指し(狭義のTIA),切迫脳卒中とも呼ばれ,重症な脳血管障害発作の前駆症状(警告発作)として重視されている。 狭義のTIAの成因は,頭蓋外(頚部)脳血管(内頸動脈)内腔が動脈硬化性病変(アテローム性動脈硬化)によって著しく狭窄していることに関連して形成された血小板フィブリン血栓,ないしはこれに赤血球を含んだ凝集物が微小塞栓子として遊離し,それが末梢の分岐部に定着し,断片化して流れ去るまでに脳血流を遮断するために発症するという考え方が支配的である。 TIAのうち頸動脈系のものは,運動障害(一肢または同側上下肢の麻痺等),感覚障害,失語等の症状がみられ,脳梗塞へ移行することが多い。 (4) 医師の意見ア J医師作成の意見書(甲15)原告は,血圧値からは軽症高血圧の分類に入る。平成7年9月13日の血圧上昇はTIA発症後の血圧で,脳血管障害が引き金となって血圧が上昇した可能性がある。中性脂肪は極めて高値で,動脈硬化性病変を誘発する危険分子になりえ,その上昇は飲酒を中心とした食餌内容に原因がある。喫煙量も非常に多く脳・心臓血管の病変を誘発するリスクが高い。飲酒や喫煙量が増加する背景には,勤務状態や仕事上のストレスなどが存在することが になりえ,その上昇は飲酒を中心とした食餌内容に原因がある。喫煙量も非常に多く脳・心臓血管の病変を誘発するリスクが高い。飲酒や喫煙量が増加する背景には,勤務状態や仕事上のストレスなどが存在することが多く,これらを改善するには規則正しい生活状態をつくり,ストレスを回避し,定期的に専門的な医療機関で診察や指導を受ける必要がある。 平成7年3月の症状は左頸動脈系のTIAであり,それ以降の症状は右頸動脈系のTIAで,TIAは,発症以前の過重で不規則な労働により生じた疲労・ストレスが原因となりうるもので,疲労・ストレスにより喫煙量が増え,不規則な食餌により高脂血症が出現したことが脳血管の動脈硬化性病変を誘発したことが十分考えられ,労働時間と飲酒・喫煙とは,どちらがTIAに影響を与えたかを別々に検討すべきものではなく,労働状況が飲酒・喫煙を増やす悪循環に陥っていたと考えるべきである。 後記K医師の意見は,平成7年3月のTIA発症に到るまでの間約45時間以上の夜勤が疲労やストレスを蓄積し,TIAに強い影響を与えたという点が看過され,過重な労働条件下で受けたストレスが飲酒・喫煙に与えた影響が強調されていないし,労災病院に入院中の原告の病識のなさについては,当時原告は脳血流が著明に低下し,脳波所見でも脳機能の低下が示され,既に高次脳機能障害として認知障害があったことが疑われ,そのような認識で患者に対処して細やかな指導をすることが必要で,一方的に原告を非難してはならない。 イ K医師による原告の病状に関する回答(乙15)原告の健康診断結果には,脳梗塞の危険因子である高脂血症と高血圧がみられ,不整脈も指摘されており,特に不整脈がある場合,心臓内で大きな血栓が形成され,主要脳血管を閉塞し,急性脳塞栓症に到り致命的な脳障害を引き起こす危険 ,脳梗塞の危険因子である高脂血症と高血圧がみられ,不整脈も指摘されており,特に不整脈がある場合,心臓内で大きな血栓が形成され,主要脳血管を閉塞し,急性脳塞栓症に到り致命的な脳障害を引き起こす危険性が高い。したがって,原告は,健康診断より,健康状態の異常を認識し,専門医受診を行い,生活指導や薬物治療を受けるとともに,総勤務時間や夜勤時間を減らし,肉体的・精神的ストレスを軽減させ,食事療法を行い,過度の飲酒を止め,禁煙すべきであったが,自己健康管理を怠っていたと考えられる。 原告の平成7年3月ころの症状から見て,原告は,平成7年3月ころ,TIAないし脳梗塞を発症していたといえる。このような場合,MRIやMRAによる非侵襲的画像検査を行い,血管病変と病態を把握し,脳梗塞の危険因子である疾患群があれば,生活習慣を改め,薬物治療が必要なレベルであれば内服治療を始めなければならないし,脳血流をよくするため,抗血小板剤の継続服用などの内科的治療を始めなければならない。上記平成7年10月ころの所見からみて,当時,抗血小板剤を服用するだけの内科的治療では脳梗塞の予防効果は不十分であり,脳神経外科診療科のある専門病院に入院し,脳血管撮影検査を行い,脳血流動態を把握し血管狭窄度を測定して,頭蓋内外の脳血管バイパス術や狭窄部を取り除く頚動脈内膜剥離術の外科的治療適応を考慮しなければならず,この段階で外科的治療を行えば,平成8年の脳梗塞は防げたはずである。 労災病院への第1回目の入院時の所見からは,脳神経外科の専門医ならば上記のような外科的治療を考慮したはずであるが,原告の病識の乏しさから,積極的な外科的治療に対する同意が得られなかったものと推測される。また,同病院の診療録から推察される原告の治療態度からみて,同病院での治療が十分な効果 考慮したはずであるが,原告の病識の乏しさから,積極的な外科的治療に対する同意が得られなかったものと推測される。また,同病院の診療録から推察される原告の治療態度からみて,同病院での治療が十分な効果を上げ得ていたものとは考えがたい。また,原告は,2度目の入院前夜,のどが渇いた状態でシャワーを浴び,そのまま就寝したというが,脳梗塞になる原因の一つは脱水状態であり,原告は,十分な水分摂取をしなければならなかった。 2 争点1(原告の業務と発症との相当因果関係の有無及び被告の安全配慮義務違反の有無)について(1) 原告の業務と発症との相当因果関係の有無について前記認定事実によれば,原告の業務のうち特に夜勤は,線路の保守という公共の安全に関わる工事の監督業務であるから,相当程度の緊張を伴うものであったということができる。また,夜勤が多く,月平均9ないし10回あって,勤務日数の約4割を夜勤をした日が占めていた上,夜勤をした日のほとんどは日勤に引き続き夜勤を行っており,夜勤をした日の8割強は,日勤に引き続き夜勤をし引き続き日勤を行っており,その中には日勤に続き夜勤をした日が2日以上(最多で4日)続くこともあるという,拘束時間が長く,極めて不規則な勤務状態であった。被告は,原告の業務は拘束性の強いものではなかったとか密度が低かった旨主張するが,夜勤の際は,線路閉鎖業務を終了するまでの間工事現場を離れられなかったことは被告も認めているし,日中の業務についても,原告が業務時間中にしばしば業務場所を離れていたとも認められず,被告の主張は採用できない。そして,平成5年7月以降上記のような勤務状態が続いていたものと推認され,脳梗塞の前駆症状たるTIAを発症したと認められる平成7年3月まで上記のような業務に継続して従事してきたことが,原告にとって 。そして,平成5年7月以降上記のような勤務状態が続いていたものと推認され,脳梗塞の前駆症状たるTIAを発症したと認められる平成7年3月まで上記のような業務に継続して従事してきたことが,原告にとって精神的,身体的にかなりの負荷となり慢性的な疲労をもたらしたことは否定できない。しかも,TIA発症の前月(同年2月)の夜勤時間数は51時間にのぼる上,上記発症の約1か月前には,前記のとおり3日間おいて2回,1回につき3ないし4日を費やして,a市もしくはb市付近へ,阪神大震災に伴う復旧工事の応援に赴いており,その際も,仮眠時間を挟んでとはいえ日中の作業に続き深夜の作業を行うことを繰り返し,夜間作業終了後仮眠等とることなくcに戻ったりしていたこと,仮眠や休憩は移動に用いた車両内や駐車場で行っていたことにその時季も考え併せると,その業務は原告の従前の業務と比較して決して負担の軽いものであったとはいえず,それまでの長期間にわたる過重な業務の継続と相まって,原告にかなりの精神的,身体的負荷を与えたものとみるべきである。 他方,原告は,前記被告入社の約5か月後の健康診断結果からみて,被告入社当時からTIAひいては脳梗塞の発症の危険因子となる高血圧症・高脂血症を患っていたと推認されるが,その血圧値からみて軽症の部類であった。 以上,被告入社当時から基礎疾患を有していた上,後記のとおり,原告は業務による持続的な精神的緊張以外にも高血圧・高脂血症の危険因子を有していたといえるから,被告における過重な業務が原告を発症に至らせた唯一の原因であるということまではできないが,上記の原告の基礎疾患の内容,程度,TIA発症前に従事していた業務の内容,態様,遂行状況等に加えて,慢性の疲労や過度のストレスの持続が慢性の高血圧症の原因の一つとなりうるものであり,原告 できないが,上記の原告の基礎疾患の内容,程度,TIA発症前に従事していた業務の内容,態様,遂行状況等に加えて,慢性の疲労や過度のストレスの持続が慢性の高血圧症の原因の一つとなりうるものであり,原告側から提出された医師の意見(甲15)も被告側から提出された医師の意見(乙15)も原告の業務を軽減すべきであったとする点は一致していることをも併せ考えれば,原告が上記発症前に従事した業務が少なくとも上記基礎疾患をその自然の経過を超えて増悪させ,平成7年3月のTIA発症に至らせた一つの原因であるとみるのが相当である。そして,TIAは,脳梗塞の前駆症状であって,脳梗塞に移行することが多いことに,上記TIA発症後平成8年の脳梗塞の発症に到るまで,前記のとおり,原告の業務内容は従前と変わらず,夜勤が多く不規則な勤務状態が継続したことなどに鑑みれば,原告の業務と平成8年の脳梗塞の発症との間にも相当因果関係があるというべきである。なお,上記被告提出の医師の意見(乙15)は,原告の生活,診療態度の問題を指摘するものであるが,同意見書には,原告の業務の過重性についての考察はされていないから,上記判断を左右するものではない。 (2) 被告の安全配慮義務違反の有無について被告は,原告との間の雇用契約上の信義則に基づき,使用者として,原告の生命,身体及び健康を危険から保護するように配慮すべき安全配慮義務を負うものであり,具体的には,労働時間等について適正な労働条件を確保し,さらに,健康診断を実施し,原告の健康状態等に応じて従事する勤務時間等を軽減するなど適切な措置を執るべき義務を負う。 そして,上記のとおり高血圧や高脂血症を患っている者は,脳梗塞等を発生する可能性が高く,持続的な精神的緊張を伴う過重な業務は上記基礎疾患の増悪に影響を与えるもので 措置を執るべき義務を負う。 そして,上記のとおり高血圧や高脂血症を患っている者は,脳梗塞等を発生する可能性が高く,持続的な精神的緊張を伴う過重な業務は上記基礎疾患の増悪に影響を与えるものであるところ,被告は,原告の入社後,定期健康診断の結果により原告の基礎疾患の存在とその程度を認識していたものであるから,被告としては,原告の業務を軽減するなどの配慮をすべき義務があったというべきである。ところが,被告は,原告の業務を軽減することなく、上記のような過重な業務を継続して行わせたものであるから,被告は,上記安全配慮義務に違反したものであり,これによる損害について民法415条に基づき賠償する責任を負うというべきである。 なお,原告は業務を軽減してほしい旨申し出たことはなかったが,被告の上記義務は,本人の申出の有無によって左右されるものではない。また,被告は,原告の業務について原告の裁量可能性があり,原告はあえて土日出勤や夜勤を行っていた旨主張するが,上記のとおり,週間作業計画の作成は原告が行っていたものの,その前提となる和歌山営業所における月間作業計画の作成と各従業員の担当工事の割当はCが行っていたものであるから,原告の業務が全く原告の裁量によるものとはいえず,被告の上記主張は採用できない。 3 争点2(損害額)について(1) 各項目別の損害額(過失相殺及び損害てん補前)ア入院雑費 23万0100円日額1300円が相当であり,前記のとおり入院日数は合計177日である。 1300円×177日=23万0100円イ付添看護費 97万3500円親族の付き添いとして日額5500円が相当である。 5500円×177日=97万3500円ウ逸失利益 7651万6680円 イ付添看護費 97万3500円親族の付き添いとして日額5500円が相当である。 5500円×177日=97万3500円ウ逸失利益 7651万6680円前記前提事実(2)ウの原告(前記のとおり,昭和27年2月3日生で,平成11年4月30日の症状固定時当時47歳)の後遺障害の内容,程度等からみて,原告はその労働能力の100パーセントを喪失したものと認められるところ,証拠(甲4)によれば,原告の平成7年中の勤務に対する被告からの給料収入は年収614万円であったと認められるから,原告は,前記脳梗塞の発症がなければ67歳に達する20年間この収入を得ることができたはずであり,以上を基礎として年5分の割合による中間利息をライプニッツ方式により控除すると,後遺障害による逸失利益は以下のとおり算定される。 614万円×12.462=7651万6680円エ将来の介護費用 1730万3190円原告の後遺障害の内容,程度等に鑑みれば,原告は,生涯にわたり,日常の起居歩行等に介助が必要であり,その費用は日額3000円が相当と認められるので,平成11年簡易生命表による47歳男子の平均余命(32年)に至るまでの年5分の割合による中間利息をライプニッツ方式により控除すると,以下のとおり算定される。 3000円×365日×15.802=1730万3190円オ入通院慰謝料 210万円原告の入通院期間及びその間の診療経過等に鑑みれば,上記の額が相当である。 カ後遺障害慰謝料 2500万円原告の後遺障害の内容,程度等に鑑みれば,上記の額が相当である。 (2) 過失相殺及び損害てん補ア前記1に認定判断したとおり被告には安全配慮義務違反が認められるもの 謝料 2500万円原告の後遺障害の内容,程度等に鑑みれば,上記の額が相当である。 (2) 過失相殺及び損害てん補ア前記1に認定判断したとおり被告には安全配慮義務違反が認められるものの,原告は,被告入社当時既に基礎疾患を有していたと推認される上,原告が平成7年3月にTIAを起こし,その後脳梗塞を起こし,後遺障害を残すに到ったについては,原告が健康診断の都度高血圧等を指摘され,医師から禁酒,禁煙,食事療法を行ったり治療を受けることを指示されたにもかかわらず,指示を守らず,平成7年3月に到るまで医師の診察すら受けなかったこと,その後も飲酒喫煙を止めず,平成8年1月5日に入院した後も禁煙が守られなかったことなど,原告の生活,診療態度に大きな原因があるといわざるをえない。したがって,原告の損害を算定するに当たっては,民法418条の過失相殺ないし同類似の法理により,原告に生じた損害の7割を減額するのが相当である。 イ証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,大阪南労働基準監督署に対し,平成8年1月5日に脳梗塞を発症したとして,労働者災害補償保険法に基づく休業補償給付請求をし,同監督署は,原告には高血圧,高脂血症の私病があるものの,平成7年1,2月に阪神・淡路大震災の軌道復旧工事の応援のため業務が過重になり,平成7年3月からTIAを発症し,平成8年1月5日に脳梗塞を発病するに至ったもので,原告の平成7年1,2月の業務は日常業務に比較して特に過重な業務と認められ,業務による明らかな加重負荷を発症前に受けたと判断されるとして,業務起因性を認めたことが認められ,その結果,原告は,労働者災害保険給付を以下のとおり受領した。 (ア) 療養給付 908万7586円(イ) 療養の費用の給付 起因性を認めたことが認められ,その結果,原告は,労働者災害保険給付を以下のとおり受領した。 (ア) 療養給付 908万7586円(イ) 療養の費用の給付 1万2000円(ウ) 休業補償給付 1054万2555円証拠(甲18,13,乙23)及び弁論の全趣旨によれば,原告が上記(ア)ないし(ウ)の各給付を受領したことを認めることができる。 (エ) 障害補償年金 1152万7099円証拠(甲13,14の1ないし5,18の2,乙23)によれば,原告は,平成11年6月24日に年額354万6800円の障害補償年金が支給される旨の決定を得,平成11年分として,同年8月に88万6699円,10月,12月,翌平成12年2月,4月に各月59万1132円ずつ,6月に残額を受領し,同様にして,平成14年6月までに,平成11年ないし13年までの3年分合計1064万0400円を受領したこと,原告は平成14年6月1日に年金額を358万1543円に増額する旨の決定を得,その支払方法は前同様の分割払いであることを認めることができる。そうとすると,原告は,本件口頭弁論終結の日である平成14年9月24日までの同年8月に平成14年分の年金の分割金として,少なくとも88万6699円を受領したと推認することができる。以上によれば,原告は,本件口頭弁論終結の日までに上記1064万0400円と88万6699円の合計1152万7099円を下回らない障害補償年金を受領したものと推認することができる。 (オ) 介護補償給付 111万3020円証拠(甲12の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,介護補償給付として平成11年5月分から月額2万9290円が支給さ (オ) 介護補償給付 111万3020円証拠(甲12の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,介護補償給付として平成11年5月分から月額2万9290円が支給される旨の決定を得,7月,10月,翌年1月,4月に前々々月,前々月,前月までの3か月分(但し,平成1年7月については前々月,前月の2か月分)を一括して受領していたことを認めることができる。そうとすると,原告は,本件口頭弁論終結の日である平成14年9月24日までの同年7月に平成11年5月から平成14年6月までの38か月分合計111万3020円の介護補償給付を受領したものといわなければならない。 上記各給付は,その趣旨目的が合致し,対象となる損害が同質である損害,すなわち,療養給付金及び療養の費用の給付金は,治療費及びこれに準じる損害である入院雑費や付添看護費等の医療費関係損害を,休業補償給付及び障害補償年金は,逸失利益を,介護補償給付は,将来の介護費を,それぞれてん補するものというべきである。なお,原告は,休業特別支給金及び障害特別支給金も受領しているが,これらは損害のてん補を目的とするものではないから控除の対象としない。 ウ以上に基づき(1)の各項目別の損害に過失相殺及び損害てん補を行うと,以下のとおりとなる。 (ア) 入院雑費及び付添看護費 0円上記各損害の過失相殺後の合計は,以下のとおり36万1080円であるところ,原告は,前記療養給付金908万7586円及び療養の費用の給付金1万2000円の合計909万9586円を受領したものである。そして,上記各給付金は,原告の医療費関係の損害にてん補されるべきところ,原告において,上記各損害以外の治療費等の医療費関係損害を主張立証しないので,この給付金を上記入院雑費及 受領したものである。そして,上記各給付金は,原告の医療費関係の損害にてん補されるべきところ,原告において,上記各損害以外の治療費等の医療費関係損害を主張立証しないので,この給付金を上記入院雑費及び付添看護費による損害にてん補せざるを得ず,そうすると,上記各損害は,全額てん補されたといわざるを得ない。 (23万0100円+97万3500円)×(1-0.7)=36万1080円(イ) 逸失利益 88万5350円過失相殺後の逸失利益は,以下のとおり2295万5004円である。 7651万6680円×(1-0.7)=2295万5004円原告は,前記休業補償給付1054万2555円及び障害補償年金1152万7099円の合計2206万9654円を受領したものである。そして,上記各給付は,原告の休業損害,(後遺障害による)逸失利益等にてん補されるべきところ,原告において逸失利益のみしか主張立証しないので,この給付金を逸失利益にてん補せざるを得ず,そうすると,残額は,以下のとおり88万5350円である。 2295万5004円-2206万9654円=88万5350円(ウ) 将来の介護費用 407万7937円過失相殺後の上記損害は,以下のとおり519万0957円である。 1730万3190円×(1-0.7)=519万0957円原告は,前記介護補償給付111万3020円を受領したから,これを上記損害にてん補すると,残額は,以下のとおり407万7939円である。 519万0957円-111万3020円=407万7937円(エ) 入通院慰謝料及び後遺障害慰謝料合計813万円過失相殺後の上記損害の合計は,以下のとおり813万円である(2 。 519万0957円-111万3020円=407万7937円(エ) 入通院慰謝料及び後遺障害慰謝料合計813万円過失相殺後の上記損害の合計は,以下のとおり813万円である(210万円+2500万円)×(1-0.7)=813万円(オ) 合計 1309万3287円エ弁護士費用 131万円本件事案の内容,審理経過,上記認容額等に鑑みれば,上記の額が相当である。 オまとめよって,被告には,原告に対し,ウ(オ)の各項目合計にエの弁護士費用を加算した損害額1440万3287円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが本件記録上明らかな平成12年5月23日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。 4 結論以上の次第で,原告の請求は上記の限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 和歌山地方裁判所第二民事部裁判長裁判官礒尾正 裁判官間史恵裁判官成田晋司 (別紙)勤務日数・時間等一覧表平成年月通常勤務(日勤)夜間勤務(夜勤)日勤に続き夜勤をした日数日勤のみの日数夜勤のみの日数勤務合計日数時間日数時間日数時間H6.7 27 209時間15分 11 50時間20分 28 259時間35H6.8193時間45分 9 45時間00分 238時間45H6.9 23 178時間15分 8 38時間05分 24 216時間20H6. 9時間35H6.8193時間45分 238時間45H6.9 178時間15分 38時間05分 216時間20H6.10 201時間30分 45時間00分 246時間30H6.11 186時間00分 49時間30分 235時間30H6.12 162時間45分 35時間40分 198時間25以上合計 1131時間30分 263時間35分 1395時間5月平均24.3 平成年月通常勤務(日勤) 夜間勤務(夜勤) 日勤に続き夜勤をした日数 日勤のみの日数 夜勤のみの日数 勤務合計日数 時間日数 時間日数 時間H7.1 178時間15分 40時間00分 218時間15H7.2 178時間15分 51時間00分 229時間15H7.3 209時間15分 49時間55分 259時間10H7.4 179時間15分 41時間25分 220時間40H7.5 155時間00分 52時間30分 207時間30H7.6 201時間30分 68時間20分 269時間50H7.7 201時間30分 40時間55分 242時間25H7.8 124時間00分 15時間35分 139時間35H7.9 186時間00分 38時間25分 間55分 主文 理由 事実 争点 判断 224時間25H7.10193時間45分50時間15分 244時間00H7.11 178時間15分 53時間30分 231時間45H7.12150時間45分47時間35分 198時間20以上合計 2135時間45分 549時間25分 2685時間1月平均 9.69.313.80.323.3
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