令和4(行コ)15 不当利得返還請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和4年7月1日 大阪高等裁判所
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判決文本文8,117 文字)

令和4年7月1日判決言渡し同日原本交付令和4年(行コ)第15号不当利得返還請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所令和2年(行ウ)第77号(第1事件)、同年(行ウ)第78号(第2事件)) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は、控訴人に対し、1411万4611円並びにうち1342万0 943円に対する令和2年2月14日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち69万3668円に対する同月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 被控訴人は、平成▲年▲月▲日に行われた大阪市会の議員の選挙(以下「本 件選挙」という。)に当選(再選)したが、令和元年9月6日、大阪地方裁判所において、公職選挙法違反(公職の候補者による買収)の罪により有罪判決(以下「本件有罪判決」という。)を受けた。本件選挙における被控訴人の当選は、本件有罪判決が令和2年2月13日に確定したことに伴い、公職選挙法251条により無効とされた。 本件の第1事件は、控訴人が、被控訴人は本件選挙における当選の無効により遡って大阪市会議員の職を失ったから、被控訴人に支給した議員報酬及び期末手当の合計1191万1200円(以下「本件報酬等」という。)は被控訴人の不当利得に当たるなどと主張して、被控訴人に対し、不当利得に基づき、上記の額から源泉徴収された所得税額190万0589円を控除した残額(利 得金)1001万0611円及びうち931万6943円(令和2年2月分の 議員報酬の所得税控除後の額を除いたもの)に対する本件有罪判決の確定の日の翌日である同月14日から、うち69 (利 得金)1001万0611円及びうち931万6943円(令和2年2月分の 議員報酬の所得税控除後の額を除いたもの)に対する本件有罪判決の確定の日の翌日である同月14日から、うち69万3668円(同月分の議員報酬の所得税控除後の額)に対するその支給日である同月17日から、各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による法定利息の支払を求める事案である。 本件の第2事件は、控訴人が、被控訴人は本件選挙における当選の無効により遡って大阪市会議員の職を失ったから、被控訴人の所属していた会派であるA大阪市会議員団(法人ではなく、構成員は被控訴人のみである。以下「本件会派」という。)に交付した政務活動費の合計410万4000円(以下「本件政務活動費」という。)は被控訴人の不当利得に当たるなどと主張して、被 控訴人に対し、不当利得に基づき、利得金410万4000円及びこれに対する本件有罪判決の確定の日の翌日である令和2年2月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息の支払を求める事案である。 原審は、控訴人の第1事件に係る請求については、不当利得に基づき利得金75万6139円及びこれに対する令和2年2月17日から支払済みまで民法 所定の年5分の割合による法定利息の支払を求める限度で認容し、控訴人の第2事件に係る請求については、不当利得に基づき利得金84万9796円及びこれに対する同月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息の支払を求める限度で認容した。 控訴人は、控訴人の敗訴部分を不服として控訴した。 2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記3のとおり当審における控訴人の補充主張を付加する 度で認容した。 控訴人は、控訴人の敗訴部分を不服として控訴した。 2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記3のとおり当審における控訴人の補充主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の1から3まで(別紙1及び2を含む。原判決3頁6行目~11頁4行目、28頁、29頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決3頁22行目の「上告棄却判決」を「上告棄却決定」に改める。 ⑵ 原判決5頁1行目の「5条」の次に「2項、別表第1及び第2」を加える。 ⑶ 原判決5頁14行目の「9月19日」を「9月18日」に改める。 ⑷ 原判決7頁5行目の「大阪市会議員の」の次に「選挙の」を加える。 ⑸ 原判決7頁8行目の「公職選挙法違反の」を「本件」に改める。 ⑹ 原判決7頁15行目の「罪の」を削る。 3 当審における控訴人の補充主張公職選挙法251条により当選が無効とされた議員選挙の当選人が行ってきた議員活動ないし調査研究等は、適法に議員の職にある者が行う議員活動ないし調査研究等と同等の価値を有するものではなく、それらにより、普通地方公共団体に議員報酬及び期末手当ないし政務活動費と等価の利得が生じたとは到 底いえないから、被控訴人は本件報酬等及び本件政務活動費を全額返還すべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人の第1事件に係る請求については、不当利得に基づき利得金75万6139円及びこれに対する令和2年2月17日から支払済みまで 民法所定の年5分の割合による法定利息の支払を求める限度で理由があり、控訴人の第2事件に係る請求については、不当利得に基づき利得金84万9796円及びこれに対する同月14日から支払済みまで民法所定の年 法所定の年5分の割合による法定利息の支払を求める限度で理由があり、控訴人の第2事件に係る請求については、不当利得に基づき利得金84万9796円及びこれに対する同月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息の支払を求める限度で理由があるものと判断する。その理由は、次のとおり補正し、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判 断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」(原判決11頁6行目~27頁11行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決11頁18行目から19行目にかけて及び21行目から22行目にかけての各「の判決が確定した時」をそれぞれ「についての原告敗訴の判決 が確定した時等」に改める。 ⑵ 原判決11頁26行目の「選挙無効の」から「訴訟」までを「選挙の効力に関する異議の申出、審査の申立て又は訴訟の提起に対する決定、裁決又は判決」に改める。 ⑶ 原判決12頁1行目の「当選無効の」から2行目の「訴訟、」までを「当選の効力に関する異議の申出、審査の申立て又は訴訟の提起に対する決定、 裁決又は判決」に改める。 ⑷ 原判決12頁3行目の「選挙無効の訴訟が確定する」を「当選無効の訴訟の提起に対する判決が確定する」に改める。 ⑸ 原判決12行4行目の「当選人」から7行目末尾までを「当選人が選挙犯罪(公職選挙法第16章に掲げる罪。ただし、一部の罪を除く。)を犯し、 刑に処せられたときの失職の時期について何ら定めを置いておらず、他にそれを定めた法令の規定は見当たらない。」に改める。 ⑹ 原判決12頁8行目の「規定の内容」の次に「及び「無効」の本来の意味」を加える。 ⑺ 原判決12頁9行目から10行目にかけて及び19行目の各「議員として 規定は見当たらない。」に改める。 ⑹ 原判決12頁8行目の「規定の内容」の次に「及び「無効」の本来の意味」を加える。 ⑺ 原判決12頁9行目から10行目にかけて及び19行目の各「議員として の地位を取得しなかった」をいずれも「議員の職に就いていなかった」に改める。 ⑻ 原判決12頁23行目の「大阪市会議員の」の次に「選挙の」を加える。 ⑼ 原判決13頁8行目の「5条」を「5条1項」に、9行目から10行目の「旨規定する。」を「旨規定し、同条2項は、期末手当の額は、それぞれの 基準日現在において議員が受けるべき報酬月額及びその報酬月額に100分の20を乗じて得た額の合計額に、一定の割合を乗じて得た額とする旨規定する。」にそれぞれ改める。 ⑽ 原判決13頁11行目冒頭から15行目末尾までを次のとおり改める。 「一般に「報酬」とは、労務、仕事の完成、事務の処理等の対価として支払 われる金銭等を意味するところ、このことと上記各規定の内容に照らせば、 大阪市会議員の議員報酬は、大阪市会議員の職にある者が行う議員活動の対価として支給されるものということができる。 そして、一般に「手当」とは、労務等の報酬として支払われる金銭を意味し、また、基本的な報酬等のほかに支払われる金銭を意味するところ、このことと上記各規定の内容、特に期末手当の額は議員報酬の月額に一定の割合 を乗じて得た額とされているといえることに照らせば、大阪市会議員の期末手当も、大阪市会議員の職にある者が行う議員活動の対価として支給されるものということができる。」⑾ 原判決13頁26行目の「義務を負う。」の次に「なお、源泉徴収された所得税の帰趨については、被控訴人と国との間で解決されるべき問題であり、 被控訴人が控訴人に対して負う上記不当利得返還 ⑾ 原判決13頁26行目の「義務を負う。」の次に「なお、源泉徴収された所得税の帰趨については、被控訴人と国との間で解決されるべき問題であり、 被控訴人が控訴人に対して負う上記不当利得返還義務の額を左右しないと解される。」を加える。 ⑿ 原判決14頁5行目の「1113万7200円」の次に「(本件報酬等から令和2年2月分の議員報酬を控除した額)」を、6行目の「77万4000円」の次に「(同月分の議員報酬の額)」をそれぞれ加え、7行目の「報酬」 を「議員報酬」に改める。 ⒀ 原判決14頁15行目の「議員活動に対する」から18行目の「当選人が」までを「大阪市会議員の職にある者が行う議員活動の対価として支給されるものであるから、大阪市会議員の選挙の当選人が、公職選挙法251条による当選無効により遡って議員の職を失った場合、その支給を受ける法的根拠 を欠くことになり、」に改める。 ⒁ 原判決15頁2行目の「大阪市会議員の身分を」を「遡って大阪市会議員の職を」に改める。 ⒂ 原判決15頁12行目の「1113万7200円」の次に「(本件報酬等から令和2年2月分の議員報酬を控除した額)」を、13行目の「77万4 000円」の次に「(同月分の議員報酬の額)」をそれぞれ加え、14行目の 「報酬」を「議員報酬」に改める。 ⒃ 原判決15頁19行目から20行目にかけての「議員活動に対する対価の性質をも」を「議員活動の対価の性質を」に、21行目の「当選人」を「議員選挙の当選人」にそれぞれ改める。 ⒄ 原判決16頁7行目の「また、」から22行目の「相当である」までを次 のとおり改める。 「したがって、公職選挙法251条により当選が無効とされた議員選挙の当選人が、相応の議員活動を行ったことを主張立証した場合には、特段の事 から22行目の「相当である」までを次 のとおり改める。 「したがって、公職選挙法251条により当選が無効とされた議員選挙の当選人が、相応の議員活動を行ったことを主張立証した場合には、特段の事情がない限り、普通地方公共団体は、当該議員活動により当該当選人に支給された議員報酬及び期末手当相当額の利益を受けたと認めることができ、当該 当選人に対し、同額の不当利得返還義務を負うと解するのが相当である」⒅ 原判決17頁14行目の「出席等の議員活動」を「出席等の相応の議員活動」に改め、14行目の「被告が」から15行目の「などの」までを削る。 ⒆ 原判決18頁12行目の「身分を有する」を「職にある」に、15行目の「身分が失われた」を「職を失った」に、16行目の「当選人」を「議員選 挙の当選人」にそれぞれ改める。 ⒇ 原判決18頁16行目から17行目にかけての「わけではなく、」から22行目の「さらに、」までを次のとおり改める。 「わけではない。そして、上記⑴で説示したとおり、議員活動は、その性質上、その成果の金銭的な評価が極めて困難なものであることを考慮すれば、 当該当選人が相応の議員活動を行ったと認められる場合には、特段の事情がない限り、普通地方公共団体が、事実として、当該議員活動によって、適法に議員の職にある者が議員活動を行った場合と同様の利益を受けたことを否定することはできない。」原判決19頁19行目の「地位を取得しなかった」を「職に就いていなか った」に改める。 原判決20頁7行目の「法律上議員の身分を有する者」を「議員の職にある者」に、10行目の「当選人」を「議員選挙の当選人」に、18行目の「身分」を「職」にそれぞれ改める。 原判決21頁7行目の「上記⑵ア」を「上記⑴及び⑵」に、8行目の を有する者」を「議員の職にある者」に、10行目の「当選人」を「議員選挙の当選人」に、18行目の「身分」を「職」にそれぞれ改める。 原判決21頁7行目の「上記⑵ア」を「上記⑴及び⑵」に、8行目の「当選人」を「議員選挙の当選人」にそれぞれ改める。 原判決22頁10行目冒頭から23頁10行目末尾までを次のとおり改める。 「地方自治法100条14項は、普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動(調査研究等)に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活 動費を交付することができる旨規定する。そして、本件政務活動費条例5条2項、別表第1及び第2は、政務活動費を充てることができる経費の費目及び内容を定めている。この政務活動費の制度は、議会の審議能力を強化し、議員の調査研究活動の基盤の充実を図るため、議会における会派又は議員に対する調査研究の費用等の助成を制度化し、併せてその使途の透明性を確保 しようとしたものである(最高裁判所第一小法廷平成17年11月10日民集59巻9号2503頁参照)。 上記各規定の内容及び趣旨に照らせば、政務活動費は、議会の審議能力を強化し、議員の調査研究活動の基盤の充実を図るための調査研究等に必要な経費の一部として交付されるものであって、その使途の費目及び内容が定め られたものということができる。そうすると、公職選挙法251条により当選が無効とされた議員選挙の当選人が、当選が無効とされるまでに、普通地方公共団体から交付された政務活動費を所定の費目及び内容の範囲で使用して一定の調査研究等を行った場合には、当該調査研究等ないしそれを活用して行われた議員活動を金銭的に評価した額が、使用された政務活動費の額を 下回る 政務活動費を所定の費目及び内容の範囲で使用して一定の調査研究等を行った場合には、当該調査研究等ないしそれを活用して行われた議員活動を金銭的に評価した額が、使用された政務活動費の額を 下回るといえない限り、普通地方公共団体は、当該政務活動費相当額の利益 を受けたものとして、当該当選人に対し、同額の不当利得返還義務を負うというべきである。 もっとも、前記のとおり、議員活動についてはその性質上その成果を金銭的に評価することが極めて困難であり、それと同様に、議員の調査研究等についてもその性質上その成果を金銭的に評価することが極めて困難であると いうことができる。したがって、公職選挙法251条により当選が無効とされた議員選挙の当選人が、交付された政務活動費を定められた費目及び内容の範囲で使用して相応の調査研究等ないしそれを活用した議員活動を行ったことを主張立証した場合には、特段の事情がない限り、普通地方公共団体は、当該調査研究等ないし議員活動により当該政務活動費相当額の利益を受けた と認めることができ、当該当選人に対し、同額の不当利得返還義務を負うと解するのが相当である。」原判決23頁12行目冒頭から16行目の「といえる」までを次のとおり改め、24行目冒頭から25行目末尾までを削る。 「前記前提事実⑸によれば、被控訴人は、本件政務活動費を本件政務活動費 条例5条2項及び別表第1で定められた費目及び内容の範囲で使用したと認められ、また、前記前提事実⑹によれば、被控訴人は、それにより相応の調査研究等ないしそれを活用した議員活動を行ったと認められ、上記特段の事情があると認めることはできない。したがって、控訴人は、被控訴人の行った調査研究等ないし議員活動により、被控訴人が使用した本件政務活動費相 当額の利益を 員活動を行ったと認められ、上記特段の事情があると認めることはできない。したがって、控訴人は、被控訴人の行った調査研究等ないし議員活動により、被控訴人が使用した本件政務活動費相 当額の利益を受けたということができる。」原判決23頁21行目の「上記⑵ア」を「上記⑴」に改める。 原判決24頁2行目、11行目及び23行目の各「調査研究等」の次にそれぞれ「ないし議員活動」を加え、21行目の「調査研究活動等」を「調査研究等ないし議員活動」と改める。 2 当審における控訴人の補充主張に対する判断 控訴人は、公職選挙法251条により当選が無効とされた議員選挙の当選人が行ってきた調査研究等ないし議員活動は、適法に議員の職にある者が行う調査研究等ないし議員活動と同等の価値を有するものではなく、それらにより、普通地方公共団体に議員報酬及び期末手当ないし政務活動費と等価の利得が生じたとは到底いえないから、被控訴人は本件報酬等及び本件政務活動費を全額 返還すべきであると主張する。 しかし、原判決を補正・引用して判示したとおり、公職選挙法251条により議員選挙の当選が無効となった場合であっても、その一事をもって、当該議員選挙の当選人が行ってきた調査研究等ないし議員活動が全て無価値であったことになるということはできない。調査研究等ないし議員活動は、政策形成の ための調査・研究や住民の意思を把握するための活動等、広範にわたるものであり、公益の実現を目的としたものであるなどの性質を有しているのであって、その成果の金銭的な評価が極めて困難なものであることを考慮すれば、当該当選人が上記の当選無効が確定するまでに相応の調査研究等ないし議員活動を行っていたと認められる場合には、特段の事情がない限り、普通地方公共団体が、 事実と 難なものであることを考慮すれば、当該当選人が上記の当選無効が確定するまでに相応の調査研究等ないし議員活動を行っていたと認められる場合には、特段の事情がない限り、普通地方公共団体が、 事実として、当該調査研究等ないし上記議員活動によって、適法に議員の職にある者が調査活動等ないし議員活動を行った場合と同様の利益を受けたことを否定することはできないというべきである。そして、前記のとおり、本件報酬等については被控訴人が身柄拘束を受けていた21日間に関する部分を除いて、また、本件政務活動費については使用されなかった84万9796円に関する 部分を除いて、被控訴人の行った調査研究等ないし議員活動によって、控訴人に各残額相当の利得が生じたものと認められる。 よって、控訴人の上記主張は採用することができない。 第4 結論以上によれば、控訴人の各請求を前記第3の1の限度で認容した原判決は相 当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとお り判決する。 大阪高等裁判所第12民事部 裁判長裁判官牧賢二 裁判官和久田斉 裁判官宮 﨑 朋紀

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