平成27(行ウ)513 税理士懲戒処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年8月2日 大阪地方裁判所 その他
ファイル
hanrei-pdf-88355.txt

判決文本文36,413 文字)

- 1 - 平成30年8月2日判決言渡平成27年(行ウ)第513号税理士懲戒処分取消請求事件(第一事件)平成28年(行ウ)第124号損害賠償請求事件(第二事件) 主文 1 第一事件に係る訴えを却下する。 2 第二事件に係る原告の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 第一事件 財務大臣が原告に対し平成27年6月9日付けでした税理士懲戒処分を取り消す。 2 第二事件被告は,原告に対し,220万円及びこれに対する平成27年6月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要第一事件は,税理士業を営んでいた原告が,自己の所有する神戸市α区β所在のマンションの一室(以下「本件マンション」という。)及びその敷地利用権(所有権)の売却(以下「本件譲渡」という。)をしたことについて,租税特別措置法(平成25年法律第5号による改正前のもの。以下同じ。)35条に基づく居住用 財産の譲渡所得の特別控除の適用があることを前提に,課税長期譲渡所得金額を0円として平成23年分の所得税の確定申告(以下「本件確定申告」という。)をしたところ,財務大臣から,原告は本件マンションを主としてその居住の用に供していないにもかかわらず上記所得金額を不正に1511万0114円圧縮したなどとして,平成27年6月9日付けで業務停止3月の懲戒処分(以下「本件 処分」という。)を受けたため,被告を相手に,本件処分の取消しを求める事案で- 2 - ある。 第二事件は,原告が,違法な本件処分により原告の名誉等が侵害されたなどとして,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として,被告に対し,慰謝料等220万円及びこれに対す - 2 - ある。 第二事件は,原告が,違法な本件処分により原告の名誉等が侵害されたなどとして,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として,被告に対し,慰謝料等220万円及びこれに対する本件処分の日である平成27年6月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 これに対し,被告は,第一事件に係る訴えは訴えの利益を欠き不適法であるとして,これを却下する旨の裁判を求めるとともに,第二事件に係る原告の請求を棄却する旨の裁判を求めた。 1 法令の定め等⑴ 税理士法(平成26年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)の定 め等ア信用失墜行為の禁止税理士法37条は,税理士は税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない旨規定する。 イ税理士に対する懲戒処分 税理士法44条は,税理士に対する懲戒処分は,戒告(1号),1年以内の税理士業務の停止(2号)及び税理士業務の禁止(3号)の三種とする旨規定し,同法46条は,財務大臣は税理士が同法又は国税若しくは地方税に関する法令の規定に違反したときは,同法44条に規定する懲戒処分をすることができる旨規定する。 同法47条4項は,財務大臣は同法46条の規定により税理士の懲戒処分をしようとするときは国税審議会に諮り,その議決に基づいてしなければならない旨規定する。 ウ税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方(平成27年財務省告示第35号による改正前の平成20年同省告示第104号。以下「本件告 示」という。甲3)- 3 - 本件告示は,「Ⅰ 総則」「第1 量定の判断要素及び範囲」において,税理士に対する懲戒処分の量定の判断に当たっては,「Ⅱ」に定める違反行為ごとの量定の考え方を基 」という。甲3)- 3 - 本件告示は,「Ⅰ 総則」「第1 量定の判断要素及び範囲」において,税理士に対する懲戒処分の量定の判断に当たっては,「Ⅱ」に定める違反行為ごとの量定の考え方を基本としつつ,①行為の性質,態様,効果等,②税理士の行為の前後の態度,③懲戒処分等の処分歴,④選択する処分が他の税理士及び社会に与える影響及び⑤その他の個別事情を総合的に勘案し, 決定するものとする旨定め,「Ⅱ 量定の考え方」「第1 税理士に対する量定」「2」において,税理士が税理士法46条の規定に該当する行為をしたときの量定の判断要素及び量定の範囲について定め,その「⑵イ」では,税理士法37条の規定に違反する行為のうち,自己脱税(自己の申告について,不正所得金額等(国税通則法68条に規定する国税の課税標準等又 は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装したところの事実に基づく所得金額,課税価格その他これらに類するものをいう。以下同じ。)があるとき)について,不正所得金額等に応じて,1年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止を掲げる。 ⑵ 公認会計士法の定め等 ア信用失墜行為の禁止公認会計士法26条は,公認会計士は公認会計士の信用を傷つけ,又は公認会計士全体の不名誉となるような行為をしてはならない旨規定する。 イ公認会計士に対する懲戒処分公認会計士法29条は,公認会計士に対する懲戒処分は,戒告(1号), 2年以内の業務の停止(2号)及び登録の抹消(3号)の三種とする旨規定し,同法31条は,公認会計士が同法又は同法に基づく命令に違反した場合には,内閣総理大臣は,同法29条各号に掲げる懲戒の処分をすることができる旨規定する。 なお,懲戒の処分に係る内閣総理大臣の権限は,金融庁長官 は,公認会計士が同法又は同法に基づく命令に違反した場合には,内閣総理大臣は,同法29条各号に掲げる懲戒の処分をすることができる旨規定する。 なお,懲戒の処分に係る内閣総理大臣の権限は,金融庁長官に委任され ている(同法49条の4,公認会計士法施行令32条参照)。 - 4 - ウ金融庁が公表している処分基準金融庁が平成20年6月23日付けで公表している「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)について」(平成25年4月12日改訂前のもの。以下「金融庁基準」という。乙3)は,「基本的な考え方」として,公認会計士に対する懲戒処分等について,①虚偽証明・不 当証明に対する懲戒処分等,②法令違反に対する懲戒処分等の二つに分け,それぞれの事由ごとに「基本となる処分の量定」を定め,個別事情・周辺事情等により基本となる処分を加重又は軽減することとし,具体的な違反行為の態様とそれに応じた処分の量定及び加重・軽減事由については別紙に掲げることとしているところ,同別紙は,懲戒根拠を「公認会計士法違 反(信用失墜行為違反)」,懲戒事由を「自己脱税刑事訴追の対象となった場合や税理士法違反による業務停止処分が行われた場合等重大な場合」「不正所得少額(1億円未満)」として懲戒処分をする場合の基本となる処分の量定を,業務停止1月と定めている。 ⑶ 租税特別措置法等の定め 租税特別措置法35条1項1号は,個人がその居住の用に供している家屋で政令で定めるものの譲渡又は当該家屋と共にするその敷地の用に供されている土地の譲渡をした場合には,一定の場合を除き,同法31条1項の「課税長期譲渡所得金額」から最高3000万円まで控除することができる特例(居住用財産の譲渡所得の特別控除)について定めるところ,租税特別措置 譲渡をした場合には,一定の場合を除き,同法31条1項の「課税長期譲渡所得金額」から最高3000万円まで控除することができる特例(居住用財産の譲渡所得の特別控除)について定めるところ,租税特別措置 法施行令(平成28年政令第159号による改正前のもの。以下同じ。)23条1項は,同令20条の3第2項の規定は同法35条1項に規定する政令で定める家屋について準用する旨規定し,同令20条の3第2項は,同法31条の3第2項第1号に規定する政令で定める家屋は個人がその居住の用に供している家屋(当該家屋のうちにその居住の用以外の用に供している部分 があるときは,その居住の用に供している部分に限る。以下同じ。)とし,そ- 5 - の者がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には,これらの家屋のうち,その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋(以下「主たる住居」という。)に限るものとする旨規定する。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠等により容易に認定することができる事実。以下,書証番号は特記しない限り各枝番を含む。) ⑴ 原告等ア原告(昭和17年▲月▲日生まれ)は,公認会計士資格を有する者であるところ,昭和49年6月25日に税理士名簿に登録され,それ以降,税理士業を営んでいたが,後記⑸オの経緯により,現在,その税理士登録は抹消されている。 また,原告は,税理士業と共に公認会計士業も営んできたものであり,現在も公認会計士名簿には登録されている(弁論の全趣旨)。 イ原告は,昭和55年6月13日,神戸市α区γ(住所省略)の戸建住宅(以下「本件戸建」という。)を購入し(甲20),同月16日,妻B(以下,単に「妻」といい,原告と併せて「原告夫妻」という。),長女C及び 次 年6月13日,神戸市α区γ(住所省略)の戸建住宅(以下「本件戸建」という。)を購入し(甲20),同月16日,妻B(以下,単に「妻」といい,原告と併せて「原告夫妻」という。),長女C及び 次女Dと共に同所での生活を始め,その後,長男Eが出生した(甲7)。 本件戸建は,昭和55年5月30日に新築され,昭和62年8月1日に増築された木造瓦葺2階建ての居宅であり,その床面積は1階が80.60㎡,2階が94.80㎡である(甲20の2,乙8)。本件戸建は,六甲山の中腹(海抜約240m)の高台にある(甲38)。 ⑵ 本件マンションの購入及びその後の住民票の異動ア原告は,その子らがいずれも成人するなどして独立した後は,本件戸建において妻と共に生活していたところ,平成15年11月18日,本件マンション及びその敷地利用権(以下,両者を併せて「本件マンション」ということがある。)を代金6970万円で購入した。その際,原告は,F銀 行から3700万円を,H公庫から3070万円を借り入れた。(以上につ- 6 - き,甲7,8,13,21,34)本件マンションは,同年9月4日に新築された,神戸市α区β(住所省略)所在の〇階建てのマンション・Iの〇階の一室(部屋番号省略)であり,床面積は122.07㎡である。上記IからK駅へは2階エントランスから屋根付きのペデストリアンデッキで接続されている。(以上につき, 甲21,35)イ原告夫妻は,本件マンションを購入した平成15年11月18日付けで住民票を本件戸建から本件マンションに異動したところ,それ以後の原告夫妻の住民票の異動の経緯は,別紙1のとおりである(甲7,18,乙18・添付書面⑫⑬)。 ⑶ 原告による住宅借入金等特別控除の申告等ア原告は,平成22年3月 したところ,それ以後の原告夫妻の住民票の異動の経緯は,別紙1のとおりである(甲7,18,乙18・添付書面⑫⑬)。 ⑶ 原告による住宅借入金等特別控除の申告等ア原告は,平成22年3月12日付けで,神戸税務署長に対し,平成21年分の所得税の確定申告書を提出したところ,同申告においては,上記⑵アの借入金のうちF銀行からのものにつき,租税特別措置法41条1項に基づき住宅借入金等特別控除の申告をした(甲23,24,乙37)。併せ て,原告は,同日付けで,同税務署長に対し,平成20年分の所得税について,上記借入金に係る住宅借入金等特別控除の控除漏れがあったとして,更正の請求をしたところ,同税務署長は,上記特別控除を認め,平成22年4月14日付けで本税の額を28万0400円減額する旨の更正(以下「平成22年更正」という。)をした(甲14,15,53)。 イ原告は,その後,平成22年分の所得税の確定申告においても,上記借入金に係る住宅借入金等特別控除の申告をした(甲25,乙38)。 ウ他方で,原告は,上記⑵アの借入金のうちH公庫からのものについては,住宅借入金等特別控除の申告等をしたことがなかった。 ⑷ 本件譲渡及び本件確定申告等 ア原告は,平成23年8月16日,L及びM(以下「L夫妻」という。)に- 7 - 対し,本件マンションを代金8200万円で売り渡した(乙18・添付書面⑲。本件譲渡)。 イ原告は,平成24年3月8日,神戸税務署長に対し,平成23年分の所得税の確定申告(本件確定申告)をしたところ,本件確定申告においては,本件譲渡につき租税特別措置法35条に基づく居住用財産の譲渡所得の 特別控除が適用されるとして,課税長期譲渡所得金額を0円とした。 ウ原告は,神戸税務署長からの指摘を 本件確定申告においては,本件譲渡につき租税特別措置法35条に基づく居住用財産の譲渡所得の 特別控除が適用されるとして,課税長期譲渡所得金額を0円とした。 ウ原告は,神戸税務署長からの指摘を受け,平成26年3月7日,本件譲渡につき上記特別控除は適用されないとして,課税長期譲渡所得金額を1511万0114円とする平成23年分の所得税の修正申告をした。 なお,これによる増差税額は226万6500円であった(乙11)。 エ神戸税務署長は,平成26年3月28日付けで,原告に対し,原告は本件譲渡に租税特別措置法35条を適用することができないことを知っていたにもかかわらず意図的に同条を適用して確定申告を行ったなどとして,79万1000円の重加算税賦課決定処分(乙11)をしたが,原告は,同処分に対し異議申立てをしなかった。 ⑸ 本件処分に至る経緯等ア財務大臣は,原告に対し,平成27年2月24日付け税理士懲戒処分予告通知書(乙17)をもって,行政手続法30条に規定する弁明の機会の付与の通知をしたところ,原告は,同年4月3日,弁明書及び証拠書類等(乙9,18)を提出した。 イ財務大臣は,平成27年4月20日,原告に対する税理士懲戒処分について,国税審議会に諮問した(乙19)。 ウ原告は,平成27年5月1日,大阪地方裁判所に対し,本件処分の差止めの訴えを提起するとともに(同裁判所同年(行ウ)第122号事件),仮の差止めの申立てをした(同裁判所同年(行ク)第90号事件)ところ, 同裁判所は,同年6月5日,上記仮の差止めの申立てを却下する旨の決定- 8 - をした。 エ財務大臣は,国税審議会の答申を受けて,平成27年6月9日付けで,原告に対し,3月の税理士業務の停止の懲戒処分(本件処分)をし,原告 差止めの申立てを却下する旨の決定- 8 - をした。 エ財務大臣は,国税審議会の答申を受けて,平成27年6月9日付けで,原告に対し,3月の税理士業務の停止の懲戒処分(本件処分)をし,原告は,同月17日,本件処分に係る通知書(甲1)を受領した。同通知書に記載された本件処分の理由は,要旨,原告が,自己の平成23年分の所得 税の確定申告に当たり,その所有する本件マンションを主としてその居住の用に供していないにもかかわらず,本件マンションを譲渡する直前に住民基本台帳に係る住所を本件マンションの所在地に異動し,当該所在地が記載された住民票の写しを確定申告書に添付することにより,租税特別措置法35条の規定の適用を受け,所得金額を不正に1511万0114円 圧縮して申告したのは,税理士法37条に違反し,同法46条に該当するというものであり,本件処分は,原告による上記過少申告行為が,前記法令の定め等⑴ウの「自己脱税」に該当するとしてされたものである(弁論の全趣旨)。 本件処分による業務停止期間は,平成27年6月17日から3月である (乙1)。 オ原告は,平成27年2月25日に税理士業務を廃止するとして,近畿税理士会に対し同会宛て退会届(乙15)及び日本税理士会連合会宛て税理士登録抹消届出書(乙16)を提出し,同日,これらの書面は近畿税理士会に受理されたが,原告については税理士法47条の2に規定する税理士 が懲戒の手続に付された場合に該当することから,同条の規定により,同手続が完了するまで税理士登録は抹消されず,同年6月30日,原告の税理士登録が抹消された(乙20)。 ⑹ 本件訴えの提起等ア原告は,平成27年7月22日,神戸地方裁判所に対し,第一事件に係 る訴えを提起したが,同裁判所は,同年11月2 30日,原告の税理士登録が抹消された(乙20)。 ⑹ 本件訴えの提起等ア原告は,平成27年7月22日,神戸地方裁判所に対し,第一事件に係 る訴えを提起したが,同裁判所は,同年11月27日付けで,第一事件を- 9 - 大阪地方裁判所に移送した(顕著な事実)。 イ原告は,平成28年4月14日,行政事件訴訟法19条に基づき,第二事件に係る訴えを第一事件に併合して提起した(顕著な事実)。 3 争点⑴ 本件処分の取消しを求める訴えの利益の有無(本案前の争点) ⑵ 本件処分について裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか(具体的には,本件マンションが主たる住居に該当するか,原告に仮装行為(国税通則法68条に規定する国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を仮装する行為をいう。以下同じ。)その他の信用失墜行為があったか) ⑶ 財務大臣その他の公務員の過失の有無⑷ 損害の発生及びその額 4 争点に対する当事者の主張⑴ 争点⑴(本件処分の取消しを求める訴えの利益の有無)について(原告の主張) ア原告の名誉及び信用は本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益に該当すること原告が本件処分を受けたことが官報によって公告されたことにより原告が受けた名誉及び信用の侵害の程度は著しい。税理士及び公認会計士に対する評価は,一般的な職業に比較して信用が重要視されている。そして, 税理士や公認会計士にとっての信用は,単に人の社会的な評価という側面にとどまらず,経済的な意味においても価値を有するものである。したがって,本件における信用は,単に原告の名誉感情というだけでなく,経済的な側面も考慮されなければならない。 本件処分は懲戒処分であり,その目的及び機能の本質的部分が ても価値を有するものである。したがって,本件における信用は,単に原告の名誉感情というだけでなく,経済的な側面も考慮されなければならない。 本件処分は懲戒処分であり,その目的及び機能の本質的部分が原告に対 する制裁・懲罰であることからすれば,名誉及び信用の回復のための救済- 10 - の必要性は大きいというべきであり,本件処分の取消しを求める訴えの利益が認められなければならない。 この点については,訴えの利益が否定されたとしても,国家賠償請求によって救済され得るという指摘もあり得るが,権利侵害の回復を求めている者にとっては,違法な処分の取消しこそが正面かつ直截的な救済である。 また,取消訴訟と国家賠償請求訴訟では,要件事実及び立証責任に大きな差異があり,国家賠償請求訴訟は必ずしも取消訴訟に代わり得る制度ではない。したがって,上記指摘は失当である。 イ本件処分が取り消されなければ原告に対して公認会計士法に基づく懲戒処分がされること 前記法令の定め等のとおり,金融庁基準別紙は,懲戒根拠を「公認会計士法違反(信用失墜行為違反)」,懲戒事由を「自己脱税刑事訴追の対象となった場合や税理士法違反による業務停止処分が行われた場合等重大な場合」「不正所得少額(1億円未満)」とする場合の基本となる処分の量定を,業務停止1月と定めている。すなわち,原告は,税理士として本件処 分を受けたことにより,将来,公認会計士としても懲戒処分を受ける仕組みとなっている。 そうすると,公認会計士としての懲戒処分を受けることを避けるためには本件処分が取り消される必要があるのであって,原告には,本件処分の取消しを求める訴えの利益がある。 ウ本件処分が取り消されなければ原告が受勲対象者から除外されること原告のこれまでの公 は本件処分が取り消される必要があるのであって,原告には,本件処分の取消しを求める訴えの利益がある。 ウ本件処分が取り消されなければ原告が受勲対象者から除外されること原告のこれまでの公職の経歴等からして,原告が受勲対象者であることは疑いようもないところ,本件処分を受けたことによって,受勲対象者から除外されることは明らかである。したがって,本件処分の取消しを求める訴えの利益があるというべきである。 (被告の主張)- 11 - ア処分の取消しの訴えは,取消しを求める処分が有効なものとして存在することから生じている法的効果を除去する法律上の利益を現に有していない限り,訴えの利益を欠き,不適法というべきである。そして,処分に期間が定められている場合には,期間の経過により処分の法的効果が失われるため,通常は,取消判決によって除去すべき対象がなくなるといえる から,期間の経過後においてもなお処分の取消しによって回復すべき法律上の利益がない限り,訴えの利益は否定される。 イ本件処分は平成27年6月17日から3月の税理士業務の停止処分であって,既に当該期間は経過し,その法的効果は失われている。そして,税理士法において,税理士業務の停止処分を受けたことは,欠格事由とは されておらず,他に,同法上,本件処分の前歴があることにより原告を不利益に扱う規定はない。 原告は,金融庁基準を理由に,税理士として本件処分を受けたことにより,将来,公認会計士としても懲戒処分を受ける仕組みとなっている旨主張する。しかし,原告が指摘する金融庁基準の定めは,公認会計士の懲戒 事由である信用失墜行為の一つの態様として自己脱税行為を定めるものであるが,その範囲が必ずしも明確でないことから,いかなる場合に懲戒処分の対象となり得 る金融庁基準の定めは,公認会計士の懲戒 事由である信用失墜行為の一つの態様として自己脱税行為を定めるものであるが,その範囲が必ずしも明確でないことから,いかなる場合に懲戒処分の対象となり得るかを明確にするために「刑事訴追の対象となった場合や税理士法違反による業務停止処分が行われた場合等重大な場合」を懲戒処分の対象とすることを定め,さらに,その基本となる処分の量定を定め たものにすぎない。そして,基本となる処分の量定が示されていても,処分の要否及びその量定を検討するに当たっては,事案ごとに,内容,背景等が異なることから,金融庁基準を機械的に当てはめるということでなく,的確に事実関係を把握し,個々の事案に応じた適切な懲戒処分等が行われるよう努めることとされている。そうすると,公認会計士法に基づく懲戒 処分をするためには当該公認会計士に懲戒事由たる自己脱税行為の存在が- 12 - 認められることが必要であって,当該公認会計士が税理士法違反による業務停止処分を受けていたとしても,当該公認会計士による自己脱税行為が認定されなければ,総理大臣から権限の委任を受けた金融庁長官は,懲戒処分をすることはできない。 以上のとおり,金融庁基準によっても,公認会計士が税理士として懲戒 処分を受けたことは,公認会計士に対する懲戒事由とはされていないのであって,原告の上記主張は理由がない。 ウまた,原告は,その名誉及び信用は本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益に該当する旨主張する。しかし,本件処分により原告の名誉及び信用が損なわれることとなったとしても,それは,本件処分がもた らす事実上の効果にすぎないのであって,これをもって,原告が訴えの利益を有することの根拠とはならない。 原告は,本件処分を受けたことによ なわれることとなったとしても,それは,本件処分がもた らす事実上の効果にすぎないのであって,これをもって,原告が訴えの利益を有することの根拠とはならない。 原告は,本件処分を受けたことによって受勲対象者から除外されることを理由に,本件処分の取消しを求める訴えの利益があるとも主張するが,勲章を授与されること自体は名誉にほかならず,名誉が損なわれたことが 本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益に該当しないことは,上記のとおりである。 エよって,原告は本件処分の取消しを求める訴えの利益を有しない。 ⑵ 争点⑵(本件処分について裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか)について (原告の主張)ア本件マンションが主たる住居に該当すること(ア) 以下の事情を総合し,社会通念に即して判定すれば,本件マンションは,主たる住居に該当するというべきである。 a 本件マンション購入の目的,経緯 本件戸建は,高台にあって,最寄りの駅から歩くのが実際上不可能- 13 - である上,道路から玄関まで23段の階段を上らなければならないなど,今後高齢期を迎える原告夫妻にとっては,不便な家であった。そこで,原告夫妻は,老後を安全に暮らせる住宅として本件マンションを購入したものである。 b 本件マンションの設備,構造等 原告は,本件マンションに入居するに際し,夫婦の生活に必要な家具や生活用品を買いそろえ,自治会にも加入し,原告夫妻が各自自動車を使用できるように2台分の駐車場を借り,トランクルームも賃借した。また,衛星放送も契約し,固定電話の契約もしていた。 本件マンションは,バリアフリー構造で家の中に段差はなく,緊急 の場合には24時間対応の管理室直通ベルも備わっており,体調に不安を抱えていた原 ,衛星放送も契約し,固定電話の契約もしていた。 本件マンションは,バリアフリー構造で家の中に段差はなく,緊急 の場合には24時間対応の管理室直通ベルも備わっており,体調に不安を抱えていた原告にとって,安心して住める場所であった。 c 本件マンションの希少性本件マンションは,K駅に接続する高層マンションの最上階の2戸のうちの1戸であり,居住の場所としては神戸市内においても数える ほどしかない希少な物件である。しかも,新築マンションであり,当時の住居としては最高水準のものである。このような本件マンションと高台にある築25年の本件戸建とを社会通念に従って比較したときに,本件マンションが従たる住居やセカンドハウスであるなどとは考えられない。 d 居住の実態原告は,東京などへ出張する機会も多かったが,外泊する日以外はほとんど本件マンションで寝泊まりをしていた。妻も,就寝の際に本件戸建に戻ることはあっても,原告の身の回りの世話のため昼間は本件マンションで過ごすことが多かった。原告は,本件マンションをそ の居住の場所として本件戸建より頻繁に利用していた。 - 14 - e 自用念書等の提出原告は,本件マンションの購入資金をF銀行から借り入れるに当たり,保証会社宛てに,自己居住用として本件マンションを購入する予定であり,本件戸建については「セカンドハウス」として利用する予定で賃貸はしない旨を記載した「自用念書」と題する書面(以下,単 に「自用念書」という。)を提出したところ,原告は,借入金の一括返済を迫られるような事態にならないよう自用念書の内容を遵守しなければならないと常々考えていた。 また,原告は,本件マンションを購入するに当たり,N株式会社宛てに,本件マンションの所在地を住所地とする住民票 れるような事態にならないよう自用念書の内容を遵守しなければならないと常々考えていた。 また,原告は,本件マンションを購入するに当たり,N株式会社宛てに,本件マンションの所在地を住所地とする住民票の謄本を遅滞な く送付すること,有効期限切れ等の理由により再提出を求められたときは遅滞なく再提出することを確約する旨の確約書(甲16)を提出したところ,原告は,現に,住民票の住所を本件マンションの所在地に異動し,新しい住民票の謄本を上記会社に提出した。 このような事情からすれば,原告自身の主観面においても,主たる 住居は本件マンションであったということができる。 f 神戸税務署長による平成22年更正神戸税務署長は,原告からの聞き取り調査も行った上で,前記前提事実⑶アのとおり,本件マンションの購入のための借入金について,住宅借入金等特別控除を認めて平成22年更正をしたのであり,この ことからも,本件マンションが主たる住居に該当するということができる。 (イ) 被告の主張に対する反論a 起臥寝食に関する被告の主張について被告は,主たる住居に該当するかの判断に当たっては,起臥寝食が どこで行われていたかが決定的に重要であるかのような主張をするが,- 15 - 説得的な理由は示されておらず,妥当でない。一般的にも,上記判断に当たって起臥寝食の場所が決定的に重要であるとは考え難いが,特に,原告のような公認会計士・税理士であって,東京に本店機能を有するO事務所所長等の役職を持つ極めて多忙な人間にとって,起臥寝食をどこで行っているかということを考えること自体が無意味である。 原告が寝起きをする場所はホテルがかなり大きな比重を占めるし,食事は外食が多かった。原告は本件マンションを所有していた期間,宿泊を伴う で行っているかということを考えること自体が無意味である。 原告が寝起きをする場所はホテルがかなり大きな比重を占めるし,食事は外食が多かった。原告は本件マンションを所有していた期間,宿泊を伴う東京出張を頻繁にしていたのであり,このような生活を送る者にとっては,起臥寝食の場所と住居との結び付きは希薄である。 b 妻の生活の場所に関する被告の主張について 被告は,当該家屋の所有者と社会通念上同居することが通常であると認められる配偶者その他の者(以下「同居配偶者等」という。)に係る事情を極めて重視するが,主たる住居に該当するかどうかは,主に所有者の事情から判断されるべきである。また,原告と妻の起臥寝食の場所については,原告の仕事の都合,妻の交友関係のため,不一致 が生じていた。このような原告夫妻の生活実態にもかかわらず,無理に夫婦の生活の場所を一致させるような解釈をすることは,今日の健全な社会通念に反し,時代錯誤との批判を免れない。 c 電気・ガス・水道の使用状況に関する被告の主張について本件戸建と本件マンションとでは,建築時期,床面積,建物の構造, 庭の有無,室内設備等が大きく異なっている。特に,本件マンションは,省エネルギー性能を備えており,本件戸建に対して大きな優位性がある。また,本件戸建では妻が主に生活をし,本件マンションでは原告が主に生活をしていたところ,専業主婦である妻のいる本件戸建の方が日中仕事に出掛けている原告がいる本件マンションに比べ,電 気等の使用量が多くなるのは当然である。したがって,被告が主張す- 16 - るように,本件マンションと本件戸建の電気使用量等を単純に比較して本件戸建が主たる住居であるということはできない。 むしろ,本件マンションにおける電気使用量は,単身世帯と 主張す- 16 - るように,本件マンションと本件戸建の電気使用量等を単純に比較して本件戸建が主たる住居であるということはできない。 むしろ,本件マンションにおける電気使用量は,単身世帯と比較すると少ないものの,正常なばらつきの範囲に収まるものであり,平均値と比べて単身世帯としての利用実態に欠けることはないと評価すべ きものである。また,本件マンションにおける電気使用量は,冬,夏に多く,春,秋には少ないという傾向を示しており,これは原告が本件マンションで生活していたこと(起臥寝食の実態があったこと)を証するものである。 d 調査の際の原告の供述について 被告は,本件処分に先立つ税理士法に基づく調査の際の原告の供述内容を根拠として,本件戸建が主たる住居である旨主張するが,そもそも,同調査の際に作成された質問応答記録書(乙10,12~14)は信用性を欠くものであり,採用することができない。また,これらの記録書によるとしても,原告は,本件マンションが「セカンドハウ ス」であると認識していたことに反する趣旨の供述もしていたのであり,記載の一部のみを引用してそれが真実であると認定することは許されない。 イ本件マンションが主たる住居に該当しないとしても,原告は仮装行為をしていないこと (ア) 原告に自己脱税の故意も動機もないことa 神戸税務署長から住宅借入金等特別控除を認められて平成22年更正を受けていたなどの上記ア(ア)の諸事情のほか,本件確定申告までに神戸税務署から平成22年更正が誤りであったなどの連絡を一切受けていないことからすれば,原告が本件マンションが主たる住居 に該当すると考えて本件確定申告をしたのは当然である。 - 17 - b 被告の主張によれば,原告は,平成22年更正 を一切受けていないことからすれば,原告が本件マンションが主たる住居 に該当すると考えて本件確定申告をしたのは当然である。 - 17 - b 被告の主張によれば,原告は,平成22年更正により,不正に住宅借入金等特別控除の適用を受けたことになるところ,原告の平成20年,平成21年の収入金額は1億円を超えており,28万0400円という僅かな金額の脱税をする動機がない。 なお,動機については,質問応答記録書(乙14)に「P監査法人 が解散し,Q監査法人の代表社員を務めた平成20年から平成22年の間は給与収入がほとんど無く」などと記載されているが,これは客観的事実に反するものである。被告は,平成20年から平成22年までの原告の借入れが1億円以上あるのに対し,総所得が低額であることから,原告に資金的余裕がなかったといえるなどと主張するが,当 時の原告に資金的余裕があったことは明らかである。個人の返済能力(資金的余裕)は,単年ないし3年程度の所得だけで決定されるものではなく,被告の上記主張は,経営理論を無視したものである。 本件マンションを売却したのは,資金繰りを目的としたものではなく,知り合いであったL夫妻の困難を救うためであった。 c 被告が主張するように「経験豊かな税理士」である原告が脱税を企てるとき,わざわざ税務当局の目を引く,更正の請求という方法を用いるはずがないし,その直前に本件戸建の所在地に住民票を異動するようなことをするはずもない。 本件確定申告の前に住民票上の住所を本件マンションの所在地に異 動させたのも,本件マンションの登記手続のためであり,仮装する意図で異動させたのではない。原告は頻繁に住民票を異動させているが,そこに特段の作為性も規則性も見いだせない。原告は,税務申告等と住民票 動させたのも,本件マンションの登記手続のためであり,仮装する意図で異動させたのではない。原告は頻繁に住民票を異動させているが,そこに特段の作為性も規則性も見いだせない。原告は,税務申告等と住民票との間に何らの関連性も意識していなかったのである。 また,本件確定申告に当たり本件マンションの所在地を住所とする 住民票の写しを添付したのも,これが居住用財産の譲渡所得の特別控- 18 - 除の適用を受けるための必要書類であったからにすぎないのであって,そこに仮装する意図はない。 (イ) 原告は仮装と評価されるような行為をしていないこと仮装行為の存在は,自己脱税と過少申告とを区別する重大な要件である。したがって,仮装行為というためには,少なくとも税務当局を誤解 させるだけの実態を有していることが必要である。 被告は,本件確定申告をするに当たり本件マンションの所在地を住所地とする住民票の写しを添付した行為をもって仮装行為であると主張するところ,添付された住民票には,転居の日が平成23年8月2日であること等が記載されているのであるから,神戸税務署長としては,こ の住民票の記載自体から,住民票上の住所が本件マンションにあったのが1か月足らずであり,その前までは本件戸建に住民票上の住所があったことを容易に知ることができたものである。また,原告は,毎年神戸税務署に提出する確定申告書に本件戸建の所在地を住所として記載していたのであり,このことからしても,税務当局を誤解させるような実 質的な危険は全く存在しなかったというべきである。 ウ仮装行為以外の信用失墜行為をいう被告の主張について被告は,仮に仮装行為が認められないとしても,原告が過少申告行為をしたことが信用失墜行為に該当する旨主張するが,このような主張は,事後 。 ウ仮装行為以外の信用失墜行為をいう被告の主張について被告は,仮に仮装行為が認められないとしても,原告が過少申告行為をしたことが信用失墜行為に該当する旨主張するが,このような主張は,事後的に懲戒事由を追加するものであって,主張自体として許されないとい うべきである。この点を措くとしても,上記主張のとおり,原告は,本件譲渡に租税特別措置法35条の適用がないことを認識していなかったのであるから,信用失墜行為に該当するということはできない。 エ小括以上によれば,本件処分は,原告が本件マンションを主としてその居住 の用に供していなかったこと,原告が仮装行為による自己脱税をしたこと- 19 - を前提とする点で事実誤認があるから,違法である。 また,神戸税務署長が住宅借入金等特別控除を認めて平成22年更正をしていたにもかかわらず,本件マンションが主たる住居に該当しないとして本件処分をすることは,禁反言の原則に反するものであり,手続上,重大な瑕疵があるというべきであるから,この点においても,本件処分は違 法である。 (被告の主張)ア本件マンションは主たる住居に該当しないこと(ア) 主たる住居に該当するか否かについての判断枠組みまず,租税特別措置法35条にいう「居住の用に供している」とは, 真に居住の意思をもって客観的にも相当期間生活の拠点として利用していることを要し,これに該当するか否かについては,当該家屋の所有者及び同居配偶者等の日常生活の状況やその家屋の利用の実態,その家屋の入居目的,その家屋の構造及び設備の状況等の諸事情を総合的に考慮し,社会通念に従って判断されるべきである。 次に,個人が居住の用に供している家屋を複数有する場合に,そのいずれが主たる住居に当たるかは,各家屋 の構造及び設備の状況等の諸事情を総合的に考慮し,社会通念に従って判断されるべきである。 次に,個人が居住の用に供している家屋を複数有する場合に,そのいずれが主たる住居に当たるかは,各家屋相互間の比較によって相対的に定まるものであるから,上記の「居住の用に供している家屋」に当たるか否かを判断する場合と同様の諸事情を比較検討し,いずれの家屋が主たる生活の拠点として利用されているかによって判断すべきであり,こ の判断においては,当該家屋の所有者及び同居配偶者等の日常生活の状況が最も重要な判断要素となるというべきである。そして,当該家屋を日常生活の拠点として利用していれば,当該家屋において起臥寝食を行っているのが通常であるから,当該家屋の所有者及び同居配偶者等が起臥寝食をしていたこと及びその状況が,同人らが当該家屋を日常生活の 拠点として利用していたことを示す重大な要素の一つであることは明- 20 - らかである。 当該家屋が「居住の用に供している家屋」であるか否か,主たる住居であるか否かを判断するに当たっては,当該家屋の所有者に係る事情のみならず,当該家屋の所有者の同居配偶者等に係る事情を総合勘案しなければならない。そして,同居すべき者の間において,ある家屋につい て,「居住の用に供している」か否か,主たる住居であるか否かの判断が異なることはないから,同居すべき者に係る事情は一体として総合的に勘案されるべきである。そうであるところ,原告夫妻は,原告が本件マンションを購入した日以降,別居をする特段の事情もなく,同居を継続していたと認められるから,本件マンション及び本件戸建のいずれが主 たる住居に該当するかの判断に当たっては,原告に係る事情と妻に係る事情を一体として総合考慮しなければならない。 (イ を継続していたと認められるから,本件マンション及び本件戸建のいずれが主 たる住居に該当するかの判断に当たっては,原告に係る事情と妻に係る事情を一体として総合考慮しなければならない。 (イ) 本件マンションと本件戸建の比較検討a 電気・ガス・水道の使用状況は,当該家屋の客観的な使用状況を示すものとして,主たる住居であるか否かを判断する重要な資料となる ところ,平成18年1月から本件譲渡がされた平成23年9月頃までの本件マンション及び本件戸建に係る電気・ガス・水道の使用状況によると,電気・ガス・水道のいずれについても,上記期間中,本件戸建に係る各使用量が本件マンションに係る各使用量を大幅に上回っており,両家屋の使用量が逆転している時期はない。また,平成18 年から平成23年までの期間中,年単位の使用量で比較すると,本件戸建では本件マンションよりも,電気を3.99倍から5.49倍,ガスを57.90倍から174.14倍,水道を42.43倍から80.80倍の量を使用している。以上のような電気・ガス・水道の使用状況の比較からすれば,原告夫妻が主として本件戸建において起臥 寝食をしていたことが強く推認され,特段の事情のない限り,本件戸- 21 - 建が主たる住居と認められるというべきである。そうであるところ,本件において上記推認を覆すに足りるような事情は認められない。 また,本件マンションにおける電気・ガス・水道の各月の平均使用量はいずれも,単身世帯における使用量を下回っている一方で,本件戸建における使用量はいずれも,二人以上世帯における使用量を上回 っているのであり,このことからも,原告夫妻は本件戸建で主として居住していたというべきである。 b 原告は,本件マンションの購入後も,税理士や公認会計士の登 ,二人以上世帯における使用量を上回 っているのであり,このことからも,原告夫妻は本件戸建で主として居住していたというべきである。 b 原告は,本件マンションの購入後も,税理士や公認会計士の登録住所を本件戸建から本件マンションに変更していないこと,年賀状の差出人住所は本件戸建か事務所所在地を記載し,本件マンションの住所 を記載した年賀状を送ったことはないこと,運転免許証等の一般的な身分証明書の住所地も本件戸建から本件マンションに変更したことがないこと,妻もクレジットカードや趣味の会に本件戸建を住所地として届け出ていたことからすれば,原告夫妻は,本件マンションではなく,本件戸建を対外的に住所地としており,このことは,原告夫妻 が本件マンションを主たる住居としていなかったことを推認させるものである。 c 原告は,本件処分に先立つ税理士法に基づく調査の際にも,「マンションを購入後,売却するまで,仕事で遅くなったりした場合によく,寝泊まりするなどセカンドハウスとして使用していました。」,「平成 20年頃には,私と妻の名義で,δにリゾートマンションを購入し,これまでβのマンションで過ごしていた週末が,γの戸建てから,車で1時間弱で行けるδのリゾートマンションに移り変わり,そういうこともあり,βのマンションを使用する機会は徐々に減っていきました。」などと供述し,日常的に本件マンションで起臥寝食をしていなか ったことを認めるところ,この供述からしても,本件マンションは主- 22 - たる住居には当たらないというべきである。 (ウ) 原告の主張に対する反論a 原告は,本件マンションを所有していた平成18年から平成23年までの原告夫妻の生活について,原告は本件マンションでは一人の時は風呂に入らないがシャワー ある。 (ウ) 原告の主張に対する反論a 原告は,本件マンションを所有していた平成18年から平成23年までの原告夫妻の生活について,原告は本件マンションでは一人の時は風呂に入らないがシャワーは浴びていた,原告夫妻は1週間に2回 くらいの頻度で本件マンションで調理した夕食をとり,また,原告は,本件マンションで就寝した翌日は,本件マンションで調理した朝食をとっていたと供述する。しかし,シャワーや食器洗いに通常使用する水の量を考えれば,原告の上記供述を前提とすると,本件マンションでは2か月間で少なくとも2.3㎥の水道水を使用するはずであると ころ,本件マンションにおける実際の2か月の水道使用量は,35回の検針のうち,13回が1㎥未満,14回が1㎥以上2㎥未満であったのであるから,原告の上記供述は,本件マンションの実際の水道使用量という客観的事実に反するものであって,信用することができない。 b 原告は,上記(イ)の被告の主張に対し,①本件マンションは本件戸建に比べて省エネルギー性能に優れている,②原告は,本件マンションに主として居住していたが,妻は本件戸建で過ごすことが多かった,③本件マンションの電気使用量は空室の最低使用量とは比較できないほどの使用量があり,そこでの生活実態を肯定することができるな どと主張する。しかし,①については,本件マンションが本件戸建に比べて省エネルギー性能に優れているというだけで実際の電気等の使用量の差を説明することはできないというべきである。また,②については,主たる住居の判断に当たっては,上記(ア)の主張のとおり,当該所有者に係る事情のみならず,同居配偶者等に係る事情も勘案さ れるべきところ,妻が本件戸建で多く生活した結果,本件戸建と本件- 23 - マンショ っては,上記(ア)の主張のとおり,当該所有者に係る事情のみならず,同居配偶者等に係る事情も勘案さ れるべきところ,妻が本件戸建で多く生活した結果,本件戸建と本件- 23 - マンションとの電気・ガス・水道の使用量の差が生じたのであれば,それは,原告夫妻が主として本件戸建で生活していたからにほかならないというべきである。さらに,上記③の主張は,本件マンションが居住の用に供している家屋であると主張しているにすぎず,本件戸建との比較において本件マンションが主たる住居に該当することを基 礎付けるものではない。 (エ) 小括以上のとおり,電気・ガス・水道の使用量という客観的事実を基本として,原告の供述等を考慮すれば,原告夫妻の主たる住居は本件マンションではなく,本件戸建である。 したがって,本件譲渡に租税特別措置法35条は適用されない。 イ本件処分の適法性(ア) 原告の行為が仮装行為による自己脱税に該当すること本件告示が信用失墜行為の一つの類型として定める自己脱税とは,国税通則法68条により重加算税が課されるような場合を想定したもの であるところ,重加算税を課すためには,納税者が過少申告行為をしただけでは足りず,過少申告行為そのものとは別に,隠ぺい,仮装と評価すべき行為が存在し,これに基づき過少申告行為がされたことが必要とされている。 上記アのとおり,原告夫妻が本件マンションを主たる住居として使用 していなかったことは明らかであるところ,原告は,居住者本人として,自ら本件戸建及び本件マンションを使用していたのであるから,その居住状況は当然に認識していたと認められ,したがって,本件マンションが租税特別措置法35条の適用対象とならないことを認識していたものと認められる。そうすると,原告は,本 用していたのであるから,その居住状況は当然に認識していたと認められ,したがって,本件マンションが租税特別措置法35条の適用対象とならないことを認識していたものと認められる。そうすると,原告は,本件マンションを主たる住居と して使用する意図がないのに,他に合理的な理由もなく,本件譲渡の直- 24 - 前である平成23年8月2日に住民票を本件マンションの所在地に異動したのであるから,この住民票の異動は,上記規定の適用を受けることを意図してされたものというべきである。 仮に,上記住民票の異動の時点で,原告に上記規定の適用を受ける意図が認められなかったとしても,その後,原告は,平成23年分の所得 税の確定申告(本件確定申告)において同条の適用を求め,その疎明資料として確定申告書に本件マンションの所在地を住所地とする住民票の写しを添付しているのであり,本件譲渡に同条が適用されないことを認識しながら,本件マンションの所在地を住所地とする住民登録があるという状況を奇貨として,その住民票の写しを確定申告書に添付し,あ たかも本件マンションが原告の主たる住居であるかのように装ったというべきである。 以上によれば,少なくとも,上記住民票の添付行為は仮装行為に当たるから,原告の行為は仮装行為による自己脱税に該当するというべきである。 (イ) 仮に原告が仮装行為をしていなかったとしても,信用失墜行為が認められること税理士法37条の禁ずる信用失墜行為とは,税理士の職責に反し,あるいはその職責の遂行に著しく悪影響を及ぼすような行為のうち,税理士としての職業倫理に反するような行為であるから,重加算税の賦課の 要件が充足される場合に限られるものではない。原告による過少申告行為は,自らの確定申告に当たり,本件譲渡に租税 為のうち,税理士としての職業倫理に反するような行為であるから,重加算税の賦課の 要件が充足される場合に限られるものではない。原告による過少申告行為は,自らの確定申告に当たり,本件譲渡に租税特別措置法35条を適用することが,誤った租税法規の適用であると認識しながら行った行為であり,かかる行為は納税義務を免れるためのものというほかない。そうすると,上記過少申告行為は申告納税制度の理念に沿って,租税に関 する法令に規定された納税義務の適正な実現を図るという税理士とし- 25 - ての公共的使命に反するものであって,税理士の職業倫理に反する信用失墜行為に該当することは明らかである。 したがって,仮に原告が仮装行為をしていなかったとしても,原告には信用失墜行為が認められるというべきである。 ウ結論 以上のとおり,原告による過少申告行為は,信用失墜行為の禁止を定めた税理士法37条に違反し,同法46条に該当する。したがって,本件処分につき裁量権の範囲の逸脱又はその濫用は認められず,本件処分は適法である。 そして,本件処分が適法である以上,国家賠償法1条1項の適用上違法 となる余地もないというべきである。 ⑶ 争点⑶(財務大臣その他の公務員の過失の有無)について(原告の主張)原告は,前記前提事実⑸ア及びウのとおり,本件処分に先立ち,弁明書の提出や差止めの訴えの提起等をしていたところ,財務大臣その他の公務員が, これらを真面目に検討していれば,本件処分に根拠がないことを容易に認識することができたはずである。それにもかかわらず,財務大臣その他の公務員は,違法に本件処分をしたのであるから,これらの者には,少なくとも,過失があるというべきである。 (被告の主張) 争う。 ⑷ 争点⑷(損害の それにもかかわらず,財務大臣その他の公務員は,違法に本件処分をしたのであるから,これらの者には,少なくとも,過失があるというべきである。 (被告の主張) 争う。 ⑷ 争点⑷(損害の発生及びその額)について(原告の主張)原告は,税理士及び公認会計士として,職業倫理に則って誠実に業務を行い,社会的な信用を確立するなどしてきたにもかかわらず,違法な本件処分 によって自己脱税の汚名を着せられ,それまでに築き上げてきた信用も名誉- 26 - も一気に失った。これにより原告が受けた精神的苦痛を慰謝するのに相当な金額は,200万円を下らない。 また,本件訴訟の弁護士費用は,20万円が相当である。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(本件処分の取消しを求める訴えの利益の有無)について⑴ 処分の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった場合には,当該処分を受けた者がその取消しを求める訴えの利益は失われるのが原則であるが,当該処分を受けた者がなお処分の取消しによって回復すべき法律上の利 益を有するときは,その取消しを求める訴えの利益は失われない(行政事件訴訟法9条1項括弧書き参照)。具体的には,処分を受けたことを理由とする不利益な取扱い(例えば将来の処分を加重するなどの取扱い)を定める法令の規定がある場合(行政手続法12条1項により定められ公にされた処分基準に不利益な取扱いが定められている場合を含む。)に,当該処分を受けた者 が将来において上記の不利益な取扱いの対象となり得るときは,上記規定等により上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益があり,訴えの利益が認められるものと解するのが相当である。他方で,処分を受けたことを は,上記規定等により上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益があり,訴えの利益が認められるものと解するのが相当である。他方で,処分を受けたことを理由とする将来の不利益な取扱いを定めた法令等の規定がなく,処分を受けたことが将来の処分にお ける情状として事実上考慮される可能性があり得るにとどまる場合には,それは処分の法的効果ではなく処分がもたらす事実上の影響にすぎないといわざるを得ず,また,当該処分が取り消されないことにより当該処分を受けた者の名誉,感情,信用等が損なわれる可能性があるとしても,それも処分の法的効果ではなく処分がもたらす事実上の影響にすぎないといわざるを 得ないから,このような事実上の影響の除去を図ることをもって,処分の取- 27 - 消しによって回復すべき法律上の利益があるとはいえず,そのことを理由として訴えの利益を認めることはできないものと解するのが相当である(最高裁判所昭和55年11月25日第三小法廷判決・民集34巻6号781頁,同裁判所平成27年3月3日第三小法廷判決・民集69巻2号143頁等参照)。 ⑵アこの点について,原告は,原告の名誉及び信用は本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益に該当する旨主張するが,上記のとおり,処分により当該処分を受けた者の名誉や信用等が損なわれる可能性があるとしても,それは,当該処分の法的効果ではなく,事実上の影響にすぎないというべきであり,この理は,本件処分のような懲戒処分についても同様 に妥当するから,原告の上記主張は採用することができない(最高裁判所昭和56年12月18日第二小法廷判決・集民134号599頁参照)。 原告は,本件処分が取り消されなければ原告が受勲対象者から除外される するから,原告の上記主張は採用することができない(最高裁判所昭和56年12月18日第二小法廷判決・集民134号599頁参照)。 原告は,本件処分が取り消されなければ原告が受勲対象者から除外されるとも主張するが,受勲自体いかなる特権も伴わないものである上(憲法14条3項),原告の上記主張は,結局,本件処分を受けたことが将来勲章 を受けられるかどうかの決定において事情として考慮される可能性があるというにすぎないから,いずれにせよ,これを採用することはできない。 イまた,原告は,金融庁基準を理由に,税理士として本件処分を受けたことにより,将来,公認会計士としても懲戒処分を受ける仕組みとなっているとして,本件処分の取消しを求める訴えの利益を有する旨主張するとこ ろ,確かに,前記法令の定め等⑵ウのとおり,公認会計士に対する懲戒処分等について定める金融庁基準別紙は,懲戒根拠を「公認会計士法違反(信用失墜行為違反)」,懲戒事由を「自己脱税刑事訴追の対象となった場合や税理士法違反による業務停止処分が行われた場合等重大な場合」「不正所得少額(1億円未満)」として懲戒処分をする場合の基本となる処分の量 定を業務停止1月と定めているから,原告が,今後,金融庁長官から,懲- 28 - 戒事由を自己脱税とする公認会計士業務の停止処分を受ける可能性があることは否定することができない。 しかしながら,公認会計士に対する懲戒処分は,総理大臣から権限の委任を受けた金融庁長官が公認会計士法に基づいて行う処分であって,財務大臣が税理士法に基づいて行う税理士に対する懲戒処分とは,その処分庁 も根拠法規も異なるのであって,金融庁長官は,その独自の調査に基づき,公認会計士としての懲戒事由の有無を判断し,その合理的裁量に基づき公認会計士法に基 う税理士に対する懲戒処分とは,その処分庁 も根拠法規も異なるのであって,金融庁長官は,その独自の調査に基づき,公認会計士としての懲戒事由の有無を判断し,その合理的裁量に基づき公認会計士法に基づく懲戒処分を行うべきものである。原告が将来受ける可能性があるという公認会計士業務の停止処分は,仮にその懲戒事由が本件処分と同じく自己脱税であるとしても,飽くまで公認会計士法26条に違 反する信用失墜行為に該当するものとして懲戒処分がされるものである。 金融庁基準も,冒頭で,「なお,懲戒処分等の決定に当たっては,個々の事案により,内容,背景等が異なり,様々な特性,特徴を有していることから,的確に事実関係等を把握し,個々の事案に応じた適切な懲戒処分等が行われるよう努めることとします。」としているほか,同別紙の上記定 めについても,「税理士法違反による業務停止処分が行われた場合」を「重大な場合」の例示として挙げているものと解されるところである。以上に述べたところからすれば,金融庁基準は,自己脱税を理由に税理士業務の停止処分を受けたこと自体を公認会計士業務の停止処分の根拠事由としているものではなく,税理士業務の停止処分を受けた事実をもって,自己脱 税として重大な場合に該当するかを判断するに当たって考慮すべき一事情としているにすぎないものと解するのが相当である。 そうすると,金融庁基準があることをもって,処分基準に処分を受けたことを理由とする不利益な取扱いが定められているということはできず,原告が自己脱税を理由に税理士業務の停止処分(本件処分)を受けたこと は,将来,公認会計士業務の停止処分を受ける場合の情状として事実上考- 29 - 慮される可能性があるにとどまると解するのが相当である。原告の上記主張は,採用すること 分)を受けたこと は,将来,公認会計士業務の停止処分を受ける場合の情状として事実上考- 29 - 慮される可能性があるにとどまると解するのが相当である。原告の上記主張は,採用することができない。 ウ本件告示においては,前記法令の定め等⑴ウのとおり,懲戒処分の量定の判断に当たって総合的に勘案すべき事情の一つとして,懲戒処分等の処分歴を掲げているが,これは処分を受けたことが将来の処分における情状 として事実上考慮される可能性があり得ることを示すにとどまるものと解されるし,他に,税理士業務の停止処分につき,その業務停止期間の経過後も,同処分を受けたことを理由とする不利益な取扱いを定める法令等の規定は見当たらない。 ⑶ 以上のとおり,税理士業務の停止処分につき,その業務停止期間経過後に おいてもなお同処分の取消しによって回復すべき法律上の利益があるとは認められないところ,前記前提事実によれば,本件処分の業務停止期間は既に経過しているから,原告には本件処分の取消しを求める訴えの利益は認められない。 したがって,第一事件に係る訴えは,訴えの利益を欠く不適法なものとい うべきである。 2 争点⑵(本件処分について裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか)について⑴ 認定事実前記前提事実に加え,証拠(甲2,5,8~15,22~27,30,3 4~46,51~53,乙10,12~14,18,23~28,32~34,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件マンションの購入前記前提事実⑵アのとおり,原告(当時61歳)は,子らの独立後,妻と共に本件戸建で生活をしていたところ,平成15年11月18日,本件 マンションを購入した。原告は,その際,F銀行及びH公庫から借入れを 事実⑵アのとおり,原告(当時61歳)は,子らの独立後,妻と共に本件戸建で生活をしていたところ,平成15年11月18日,本件 マンションを購入した。原告は,その際,F銀行及びH公庫から借入れを- 30 - したところ,F銀行からの借入れに関し,保証会社宛てに,自己居住用として本件マンションを購入する予定であり,本件戸建については「セカンドハウス」として利用する予定で賃貸はしない旨を記載した自用念書を提出した。 原告は,本件マンションを購入するに当たり,駐車場2台分及びトラン クルームを借り受けたほか,自治会にも加入して自治会費を支払った。また,原告は,同年12月中に約580万円を出費して,本件マンションに夫妻二人分の家具・家電等を買いそろえるとともに,衛星放送の契約をし,固定電話も設置した。 原告夫妻は,前記前提事実⑵イのとおり,住民票を本件戸建から本件マ ンションに異動したが,3か月足らずで,再び本件戸建へ異動した。その後も本件戸建と本件マンションとの間で複数回の住民票の異動がある。原告夫妻の住民票の異動の経緯は,別紙1のとおりである。 イ原告夫妻の生活状況等(ア) 原告は,平成15年頃から平成23年頃までの当時,神戸市(住所省 略)のTにおいて税理士業を営むとともに,東京に主たる事務所のあるO事務所所長などとして公認会計士業を営んでおり,上記期間の当時,平均すると,1か月に七,八日は東京に出張していた。 (イ) 原告は,上記期間の当時,仕事からの帰りが遅くなったときなどに本件マンションに帰宅して就寝したり,休日に本件マンションで休養や仕 事をしたりしていた。原告は,心房細動等の持病があることなどから,本件マンションではシャワーを浴びることはあっても入浴をすることはほとんどなく,入浴は本 たり,休日に本件マンションで休養や仕 事をしたりしていた。原告は,心房細動等の持病があることなどから,本件マンションではシャワーを浴びることはあっても入浴をすることはほとんどなく,入浴は本件戸建でしていた。また,原告が本件マンションで自ら炊事・洗濯をすることもほとんどなかった。 専業主婦である妻は,本件戸建を主たる生活の拠点としており,本件 マンションを訪れて掃除をしたり原告と共に時間を過ごしたりしても,- 31 - 午後10時頃には本件戸建に戻って就寝することが多かった。また,妻が本件マンションで入浴したり洗濯したりすることはほとんどなく,本件マンションから本件戸建に洗濯物を持ち帰って洗濯するなどしていた。 (ウ) 原告は,税理士及び公認会計士の登録上の住所を本件戸建の所在地と しており,これを本件マンションに変更したことはなく,毎年の確定申告書にも本件戸建の所在地を記載していた。また,原告は,年賀状の差出人の住所を本件戸建の所在地としており,運転免許証の住所も本件戸建の所在地としたままであった。 (エ) 原告夫妻は,平成20年頃,δのリゾートマンションを約5000万 円で購入し,その後は,同リゾートマンションで週末を過ごすことがあり,本件マンションで週末を過ごす機会は減少した。 (オ) 原告がした確定申告によれば,平成20年から平成23年までの原告の収入金額等は,以下のとおりであった。 平成20年 1億1171万6105円 平成21年 1億2696万6766円平成22年 8549万9502円平成23年 6972万8228円ウ本件戸建及び本件マンションの電気・ガス・水道の使用量等平成18年1月から平成23年9月までの間の本件戸建及び本件マン ションにおける電気 2円平成23年 6972万8228円ウ本件戸建及び本件マンションの電気・ガス・水道の使用量等平成18年1月から平成23年9月までの間の本件戸建及び本件マン ションにおける電気・ガス・水道の使用量(ただし,水道については同年8月まで)は,別紙2記載のとおりである。ただし,ガス・水道の使用量については,1㎥未満が切り捨てられている可能性があるため,「0」と記載されているからといって,全くガスや水道を使用していないということではない。これによると,本件戸建における電気使用量は,本件マンショ ンにおける電気使用量の4倍から5.5倍程度である。 - 32 - 本件マンションにおけるガス・水道の使用量は,単身世帯の平均の使用量よりも相当に少なく,電気の使用量も,単身世帯の平均の使用量の65%程度である(本件マンションにおける平成18年から平成22年までの1年間の平均の電気使用量は1666.8kWhであるのに対し,平成28年の単身世帯の推計使用量は2604kWhである。)。 エ本件マンション及び本件戸建の所在・設備等(ア) 本件戸建の所在・構造等は,前記前提事実⑴イのとおりであり,六甲山の中腹の高台にあるところ,本件戸建から最寄り駅までの間は急傾斜地が多く,交通手段は,実際上,自動車(自家用車又はタクシー)によるほかない(原告夫妻はそれぞれ自家用車を保有しており,原告は本件 戸建からその自家用車で通勤し,妻もその自家用車で買い物に行くなどしていた。)。本件戸建は,公道から建物敷地までに高低差があり,門扉から玄関まで23段の階段を上らなければならない。 (イ) 本件マンションの所在・構造等は,前記前提事実⑵アのとおりであって,交通の便は良く,バリアフリー構造で家の中に段差はなく,緊急の 場 から玄関まで23段の階段を上らなければならない。 (イ) 本件マンションの所在・構造等は,前記前提事実⑵アのとおりであって,交通の便は良く,バリアフリー構造で家の中に段差はなく,緊急の 場合には24時間対応の管理室直通ベルも備わっていた。 (ウ) 本件戸建も本件マンションも,同じ神戸市α区内にあり,その間の距離は約3kmであり,所要時間は自動車で10分程度である。 オ平成22年更正の経緯等(ア) 原告には,本件マンションの購入以降,F銀行及びH公庫から,租税 特別措置法41条1項に基づく住宅借入金等特別控除の申告に当たって必要となる,住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書が送付されてきていたが,平成19年分以前の所得税については,原告の合計所得金額が3000万円を超えていたため,上記特別控除の対象とならず,現に,原告は,上記アの各借入金について,上記特別控除の申告をした ことはなかった。 - 33 - (イ) 原告は,平成22年3月頃,当時原告の事務所の職員であったUから指摘を受けたため,平成20年分及び平成21年分の所得税につき,上記特別控除の適用を受けようと考え,前記前提事実⑶アのとおり,平成20年分の所得税について更正の請求をするとともに,平成21年の所得税の確定申告において上記特別控除の申告をした。もっとも,上記確 定申告等の事務の補助作業をした上記Uの手元にH公庫からの借入金に係る上記証明書がなかったため,F銀行からの借入金についてのみ更正の請求及び確定申告をすることとなった。 (ウ) 神戸税務署長は,原告の上記更正の請求により,原告の平成20年分の所得税について,原告の上記アのF銀行からの借入金に係る住宅借入 金等特別控除を認め,平成22年更正をしたところ,平成22年更正を 戸税務署長は,原告の上記更正の請求により,原告の平成20年分の所得税について,原告の上記アのF銀行からの借入金に係る住宅借入 金等特別控除を認め,平成22年更正をしたところ,平成22年更正をするに先立ち,神戸税務署担当者は原告から聞き取り調査を行い,本件マンションの購入の経緯等について事情を確認した。なお,上記借入金につき住宅借入金等特別控除が認められるためにも,本件マンションが主たる住居である必要があったものである(租税特別措置法施行令26 条1項参照)。 (エ) 原告は,平成22年分の所得税の確定申告においても,上記F銀行からの借入金についてのみ住宅借入金等特別控除の申告をし,H公庫からの借入金については同特別控除の申告をしなかった。 カ本件譲渡及び本件確定申告 (ア) L夫妻は,原告夫妻と旧知の間柄であったところ,その子の就学の都合等から本件マンションの購入を強く希望し,平成23年4月頃,原告に対し,その旨の申出をした。原告(当時68歳)は,同年6月頃,この申出に応じることとし,前記前提事実⑷アのとおり,同年8月16日,本件マンションをL夫妻に売り渡した(このように,本件譲渡は,L夫 妻の強い希望によるものであり,原告の資金繰りのために売却したもの- 34 - ではなかった。)。なお,原告は,別紙1記載⑪のとおり,本件譲渡の2週間前である同月2日に住民票を本件戸建の所在地から本件マンションの所在地に異動していた。 (イ) 前記前提事実⑷イのとおり,原告は,平成24年3月8日にした本件確定申告において,本件譲渡につき租税特別措置法35条に基づく居住 用財産の譲渡所得の特別控除が適用されるとして,課税長期譲渡所得金額を0円とした。その際,原告は,本件マンションの所在地を住所とする住民票 いて,本件譲渡につき租税特別措置法35条に基づく居住 用財産の譲渡所得の特別控除が適用されるとして,課税長期譲渡所得金額を0円とした。その際,原告は,本件マンションの所在地を住所とする住民票の写しを確定申告書に添付して神戸税務署長に提出した。 (ウ) 前記前提事実⑷ウのとおり,原告は,神戸税務署長からの指摘を受けて,平成26年3月7日,本件譲渡につき上記特別控除は適用されない として修正申告をし,これに基づき,増差税額226万6500円を納付した。神戸税務署長は,前記前提事実⑷エのとおり,同月28日付けで原告に対し重加算税賦課決定処分をしたが,原告はこれに対し異議申立てをしなかった。 キ本件処分に至る経緯 財務大臣は,前記前提事実⑸アからウまでの経緯を経て,同エのとおり,原告に対し本件処分をした。 ⑵ 本件マンションが主たる住居に該当するかについてア判断枠組み租税特別措置法35条1項の定める居住用財産の譲渡所得の特別控除 は,個人が自ら居住の用に供している家屋及びその敷地等を譲渡するような場合には,これに代わる居住用財産を取得するのが通常であるなど,一般の資産の譲渡に比して特殊な事情があり,担税力も高くない例が多いことを考慮して設けられたものである。このような上記規定が設けられた趣旨に照らすと,同項に規定する「居住の用に供している家屋」とは,個人 が生活の拠点として利用している家屋をいうものと解すべきであり,当該- 35 - 家屋が生活の拠点として利用されているか否かは,当該個人及び社会通念上その者と同居することが通常であると認められる配偶者その他の者(同居配偶者等)の日常生活の状況,当該家屋の入居目的,当該家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して判断すべきものと解される 上その者と同居することが通常であると認められる配偶者その他の者(同居配偶者等)の日常生活の状況,当該家屋の入居目的,当該家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して判断すべきものと解される。 そして,上記の「居住の用に供している家屋」を当該個人が複数有する 場合には,これらの家屋のうち,「主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋」の譲渡についてのみ本件特例の適用が認められるのであるが(租税特別措置法施行令23条1項の準用する同令20条の3第2項),上記の「主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋」に当たるか否かは,各家屋相互間の比較によって相対的に定まるもの であるから,上記の「居住の用に供している家屋」に当たるか否かを判断する場合と同様の諸事情を比較検討し,いずれの家屋が当該個人の主たる生活の拠点として利用されているかによって判断すべきものである。 イ本件マンションと本件戸建について(ア) 上記認定事実によれば,原告は,本件マンションを購入した後,速や かに原告夫妻が日常的に生活し得る環境を整えた上で,現に,原告自身は仕事からの帰りが遅くなったときなどに,定期的に,本件マンションを利用して日常生活を送っていたということができ,一定の居住実態があったものと認められる。 しかしながら,他方で,原告が本件マンションを日常的に利用してい たとまで認めるに足りる的確な証拠は見当たらず,むしろ,上記認定事実によれば,妻は本件戸建を主たる生活の拠点とし,妻が本件マンションで寝起きすることは少なく,洗濯は本件戸建に洗濯物を持ち帰ってしていたというのであり,このような妻の生活実態からすれば,原告が本件マンションを定期的に利用していたといっても,その頻度や滞在時間 は,おのずから一 なく,洗濯は本件戸建に洗濯物を持ち帰ってしていたというのであり,このような妻の生活実態からすれば,原告が本件マンションを定期的に利用していたといっても,その頻度や滞在時間 は,おのずから一定の範囲に限られていたものと考えるのが,社会通念- 36 - に照らして,自然かつ合理的であり,このことは,上記認定事実ウの電気・ガス・水道の使用量からも裏付けられるということができる。 また,原告夫妻は,本件マンションを所有していた8年弱の間に,別紙1のとおり,本件戸建と本件マンションとの間で複数回にわたり,住民票上の住所を異動させているところ,これによれば,原告夫妻の住民 票上の住所が本件マンションの所在地とされていたのは,平成16年10月12日から平成17年5月24日までの間を除き,いずれも1か月から3か月程度であり,上記8年弱のうちの約6年半は本件戸建の所在地に原告夫妻の住民票上の住所が置かれていたこととなる。この点につき,原告は各異動の理由や経緯等を主張・立証するが,これらを踏まえ て,上記住民票の異動の状況の全体を客観的にみれば,原告夫妻は,普段は本件戸建に住民票を置いておき,特段の事情があるときに,本件マンションに住民票を異動させていたというのが相当である。しかも,原告は,税理士及び公認会計士の登録上の住所を本件戸建の所在地とし,年賀状の差出人の住所も運転免許証の住所も,本件戸建の住所としてい たのであり,これらの事情からすれば,原告自身,本件戸建が自らの主たる生活の拠点であることを,社会的・対外的に明らかにしていたのであって,このことからも,原告が本件戸建を主たる生活の拠点としていたことが合理的に推認されるというべきである。 以上によれば,妻が本件戸建を主たる生活の拠点としていたというの みな いたのであって,このことからも,原告が本件戸建を主たる生活の拠点としていたことが合理的に推認されるというべきである。 以上によれば,妻が本件戸建を主たる生活の拠点としていたというの みならず,原告自身も,本件戸建を自らの主たる生活の拠点と認識し,本件戸建を日常的に利用して日常生活を送っていたものと認めるのが相当である。 そうすると,原告が相応の頻度で本件マンションを利用し,一定の居住実態があったものと認められることを踏まえても,本件戸建と本件マ ンションとを社会通念に照らして比較検討した場合に,本件マンション- 37 - が原告の主たる生活の拠点として利用されていたと認めるのは困難であるといわざるを得ない。 (イ) これに対し,原告は,原告自身は外泊する日以外はほとんど本件マンションで寝泊まりしており,妻も昼間は本件マンションで過ごすことが多かったなどと主張し,原告本人尋問において,原告は平均すると1週 間のうち3日は本件マンションで就寝していたと供述するほか,妻が本件マンションで調理をすることも少なくなかったといった趣旨の供述をする。しかしながら,本件マンションの水道の使用量が単身世帯の平均と比較しても相当に少ないこと等,上記認定事実ウの,本件戸建及び本件マンションの電気・ガス・水道の使用量に照らせば,本件マンショ ンが本件戸建に比べて省エネルギー性能の点で優れていることなど,原告の主張する事情を踏まえても,妻が昼間に本件マンションにおいて日常的に家事や炊事をしていたなどとはにわかに考え難いのであって,原告の上記主張ないし供述を採用することはできない。 原告は,本件戸建が不便な立地にある築25年の戸建住宅であったの に対し,本件マンションは利便性・希少性を有する新築のマンションであったな 告の上記主張ないし供述を採用することはできない。 原告は,本件戸建が不便な立地にある築25年の戸建住宅であったの に対し,本件マンションは利便性・希少性を有する新築のマンションであったなどとして,本件マンションが従たる住居・セカンドハウスであるなどとは常識的に考えられないなどと主張する。しかしながら,原告の主張によっても,本件マンションは,老齢期に差し掛かった原告夫妻が老後を安全に暮らせる住居として購入したというのであり,各自自家 用車で移動することのできる原告夫妻が,平成15年から平成23年までの当時に,本件戸建で生活をするに当たって,現実的かつ具体的な支障が生じていたことをうかがわせる事情は見当たらない。むしろ,原告自身が,本件戸建が自らの主たる生活の本拠であることを,社会的・対外的に明らかにしていたことは上記認定・説示のとおりであるところ, 弁明書(乙18)添付の妻の陳述書(添付書面④)の記載によれば,原- 38 - 告夫妻は長年にわたり家族5人で暮らした居宅として本件戸建に相応の愛着を有していたというのであるから,原告夫妻が,本件マンションを所有しつつ,本件戸建を主たる生活の拠点としていたとしても,何ら不自然・不合理ではないというべきである。現に,原告夫妻がL夫妻から本件マンションの譲渡を求められて,特に本件マンションを所有する ことに固執することなく,短期間のうちに本件譲渡に至ったのも,本件戸建のみで生活することに現実的な不都合を感じなかったことの表れであるということができる。そうすると,原告が主張するような上記事情をもって,原告が本件マンションを主たる生活の拠点としていたと認めるべき合理的な根拠になるとはいえず,また,本件戸建を原告の主た る住居であると認定・判断することが社会通念 するような上記事情をもって,原告が本件マンションを主たる生活の拠点としていたと認めるべき合理的な根拠になるとはいえず,また,本件戸建を原告の主た る住居であると認定・判断することが社会通念に合致しないなどということもできない。よって,原告の上記主張は,採用することができない。 原告は,自用念書を提出していたことなどを根拠に,本件マンションを主たる住居としておくよう意識していたといった趣旨の主張をする。 しかしながら,本件全証拠によっても,原告が保証会社に対し自用念書 を提出した目的等は必ずしも明らかではなく,少なくとも,原告自身は上記目的等を正確に理解していなかったことがうかがわれるところ,そのような書面を殊更に重視して,生活の拠点を決していたということ自体がいささか不自然である。この点を措くとしても,上記認定・説示のとおり,原告は本件戸建が自らの主たる生活の拠点であることを社会 的・対外的に明らかにしていたのであるから,原告の上記主張は,原告の当時の言動と整合しないものであって,採用することができない。 原告は,妻が本件戸建を主たる生活の拠点としていたとしても,そのことを重視して原告の主たる生活の拠点を認定するのは相当でないといった趣旨の主張をするところ,確かに,夫妻の関係性や生活実態等に よっては,上記アで説示した判断枠組みの下において,夫と妻とで主た- 39 - る住居が異なると判断されることもあり得るところである。しかしながら,原告の主張によっても,原告は税理士・公認会計士として多忙で自ら炊事洗濯等をせず,専業主婦であった妻がその身の回りの世話をしていたというのであって,原告と妻とが主たる生活の拠点を異にしていたと認めるに足りる的確な証拠も見当たらない。むしろ,原告夫妻自身, 住民票を異 せず,専業主婦であった妻がその身の回りの世話をしていたというのであって,原告と妻とが主たる生活の拠点を異にしていたと認めるに足りる的確な証拠も見当たらない。むしろ,原告夫妻自身, 住民票を異動させるに当たって,二人の住民票を常に同時に異動させていること等,本件記録からうかがわれる原告夫妻の関係性からすれば,原告夫妻が世帯を同一にする夫妻として同一の場所を主たる生活の拠点としていたと考えるのが自然であって,それが社会通念に照らして不合理であるなどとは到底いえない。そして,上記事実関係の下において, 本件マンションが原告の主たる生活の拠点として利用されていたと認めるのが困難であることは上記説示のとおりである。よって,原告の上記主張は採用することができない。 ウ小括以上のとおり,本件マンションが主たる住居に該当するとは認められず, この点についての事実誤認を理由に本件処分の違法をいう原告の主張は採用することができない。 ⑶ 原告による仮装行為の有無についてア上記⑵で認定・説示したところによれば,原告は,本件戸建を自らの主たる住居と認識し,本件戸建を日常的に利用して日常生活を送っていたも のと認められる。そして,原告本人尋問の結果によれば,原告は,本件譲渡につき居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けるためには,本件マンションが主たる住居に該当しなければならないことを認識していたというのであるから,原告は,上記特別控除の適用を受けるための事実がないことを認識しながら,本件確定申告をしたものと認められる。 そうすると,原告が,本件確定申告をするに当たって,本件マンション- 40 - の所在地を住所とする住民票の写しを添付した行為は,仮装行為に該当するというべきである。 イこれに対し,原 そうすると,原告が,本件確定申告をするに当たって,本件マンション- 40 - の所在地を住所とする住民票の写しを添付した行為は,仮装行為に該当するというべきである。 イこれに対し,原告は,仮装行為というためには少なくとも税務当局を誤解させるだけの実態を有していることが必要であると主張するが,仮装行為に当たるかどうかは,税務当局による発見の難易の程度にかかわらない ものと解するのが相当であるのみならず,住民票の写しは当該住民票に係る住所が主たる住居であることを証明する有力な資料であるからこれを添付する行為は税務当局を誤解させるに足り得る行為であることからしても,原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,原告には脱税の動機がないなどと主張するほか,本件譲 渡に先立ち住民票上の住所を異動させたのは本件マンションの登記手続のためであり,仮装の意図で異動させたものではなく,本件確定申告に当たり本件マンションの所在地を住所とする住民票の写しを添付したのも,これが上記特別控除の適用を受けるための必要書類だったからにすぎない旨主張する。確かに,上記認定の平成20年から平成23年までの原告の収 入金額等,本件でうかがわれる原告の当時の経済状況からすれば,原告に自己脱税をすべき強い動機があったとは考え難い。しかしながら,自己脱税をすべき強い動機がなかったからといって,仮装行為の存在を認定することができないということにはならない。原告が本件確定申告に及んだ背景には,本件マンションにも一定の居住実態があったことや平成22年更 正等により本件マンションについて住宅借入金等特別控除が認められていたことがあったものと考えられる。また,本件譲渡に先立ち住民票上の住所を異動させたことについても,本件マンションの登記 年更 正等により本件マンションについて住宅借入金等特別控除が認められていたことがあったものと考えられる。また,本件譲渡に先立ち住民票上の住所を異動させたことについても,本件マンションの登記記録上,所有者である原告の住所地として本件マンションの所在地が記載されていたことから,登記記録上の住所と住民票上の住所を一致させるために便宜的に行わ れたものであったと理解することもできる。しかしながら,仮に,そうで- 41 - あるとしても,そのような居住の実態を反映しない住民票の写しを添付して本件確定申告を行うことは別論である。上記認定のとおり,原告は,本件マンションが主たる住居に該当しないことを認識していたものであって,少なくとも本件確定申告を行うに当たり居住の実態を反映しない住民票の写しを添付した原告の行為は,仮装行為を行ったと評価せざるを得ないも のである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ウ以上のとおり,本件確定申告をするに当たって,本件マンションの所在地を住所とする住民票の写しを添付して神戸税務署長に提出した原告の行為は,仮装行為に該当するというべきであるから,この点についての事実誤認を理由に本件処分の違法をいう原告の主張は採用することができ ない。 ⑷ 手続上の違法をいう原告の主張について原告は,神戸税務署長が住宅借入金等特別控除を認めて平成22年更正をしていたにもかかわらず,本件マンションが主たる住居に該当しないとして本件処分をすることは,禁反言の原則に反するなどと主張する。しかしなが ら,原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,原告は上記特別控除を受けるためには本件マンションが主たる住居に該当しなければならないことを認識していたものと認められるところ,このことに が ら,原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,原告は上記特別控除を受けるためには本件マンションが主たる住居に該当しなければならないことを認識していたものと認められるところ,このことに加え,既に認定・説示したところからすれば,平成22年更正自体が原告の虚偽の更正の請求により法令の適用を誤ってされたものであったといわざるを得ない。そうする と,神戸税務署長が上記特別控除を認めて平成22年更正をしていたからといって,本件処分が違法になるということはできない。したがって,本件処分の手続上の違法をいう原告の主張は採用することができない。 ⑸ 本件処分の適法性について以上によれば,本件マンションの所在地を住所とする住民票の写しを添付 して神戸税務署長に提出し,本件確定申告を行った原告の行為は,信用失墜- 42 - 行為の一類型としての仮装行為による自己脱税と評価すべきものであって,本件処分について,原告の主張する事実誤認があったとも,手続上の重大な瑕疵があったともいえないから,本件処分について裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできず,国家賠償法上違法ということはできない。 3 結論よって,第一事件に係る訴えは不適法であるから却下することとし,第二事件に係る原告の請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官松永栄治 裁判官森田亮 裁判官石川舞子 田亮 裁判官石川舞子

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る