平成26(行コ)10006 決定処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成26年11月26日 知的財産高等裁判所 2部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成25(行ウ)612
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平成26年11月26日判決言渡 平成26年(行コ)第10006号決定処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成25年(行ウ)第612号) 口頭弁論終結日平成26年10月1日判決 控訴人 アドバンストフュージョンシステムズエルエルシー 特許管理人 弁理士新井信昭 訴訟代理人弁護士井浦謙二 被控訴人 国代表者法務大臣 処分行政庁特許庁長官 指定代理人長谷川武 久浅原陽子 駒﨑利徳 平川千鶴子 古閑裕人 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 特許庁長官が平成24年7月3日付けでした控訴人に対する特願2012-507190号についての国内書面に係る手続の却下処分を取り消す。 3 特許庁長官が平成24年7月3日付けでした控訴人に対する特願2012-507190号についての国際出願翻訳文提出書に係る手続の却下処分を取り消す。 4 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 訴訟の概要本件は,千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約に基づいて外国語でされた国際特許出願(国際出願番号 ,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 訴訟の概要本件は,千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約に基づいて外国語でされた国際特許出願(国際出願番号PCT/US2009/044410〈本件国際出願〉。特願2012-507190号〈本件国際特許出願〉)の出願人である控訴人が,特許法184条の5第1項各号に掲げる事項を記載した国内書面及び平成23年法律第63号による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)184条の4第1項本文に規定する明細書,請求の範囲等の日本語による翻訳文を特許庁長官に提出したところ,特許庁長官から,国際出願翻訳文提出書に係る手続については前記翻訳文が翻訳文提出期間経過後に提出されたことを理由に,前記国内書面に係る手続については翻訳文提出期間内に前記翻訳文の提出がないため同法184条の4第3項により前記国際特許出願が取り下げられたものとみなされたことを理由に,それぞれ却下処分を受けたので,被控訴人に対し,これらの却下処分 - 3 -の取消しを求めた事案である。 原判決は,上記の却下処分にはいずれも違法がないとして控訴人の請求をいずれも棄却したので,控訴人は,原判決を不服として,控訴を提起した。 2 前提となる事実以下のとおり付加訂正するほか,原判決の「事実及び理由」「第2 事案の概要」「1 前提となる事実」記載のとおりである。 (1) 原判決2頁26行目「特許法」を「旧特許法」と改める。 (2) 原判決4頁11,12行目「翻訳文」を「国際特許出願についての明細書,請求の範囲,図面(図面の中の説明に限る。以下,同じ。)及び要約の日本語による翻訳文(以下,単に『翻訳文』ということがある。)」と改める。 (3) 原判決4頁17行目「特許法」を「 ての明細書,請求の範囲,図面(図面の中の説明に限る。以下,同じ。)及び要約の日本語による翻訳文(以下,単に『翻訳文』ということがある。)」と改める。 (3) 原判決4頁17行目「特許法」を「旧特許法」と改める。 3 争点及び当事者の主張以下の(1)のとおり付加訂正し,(2)のとおり当審における当事者の主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」「第2 事案の概要」「2 争点及び争点に対する当事者の主張」記載のとおりである。 (1) 原判決の付加訂正ア原判決7頁12行目「特許協力条約8条」を「特許協力条約2条」と改める。 イ原判決10頁6行目「同条(2)」を「同条約23条(2)」と改める。 (2) 当審における当事者の主張ア控訴人の主張(ア) 特許協力条約2条(xi)の「第8条の規定による優先権の主張」の解釈について原判決は,特許協力条約2条(xi)にいう「優先日」について,①当該優先権 - 4 -の主張が有効であるか否かといった,指定官庁における国際出願の実体審査の結果によって左右される性質のものではないとし,②同条約8条(2)(a)の規定は,期間の計算に影響を及ぼすような規定とは解されないと判断し,③本件における国内書面提出期間を優先日から2年6か月後であると認定している。これらの①から③の記述からすれば,原判決は,同条約2条(xi)の「優先日」は,特許協力条約8条(1)に基づく優先権の主張を指すとの解釈,すなわち,同条約8条(2)(a)に効果を与えることなく,無力化する解釈をとったものといえる。 このような解釈は,同条約2条(xi)の「第8条の規定による優先権の主張」との文言を「第8条(1)の規定による優先権の主張」へ変更したことになるが,これは,同 力化する解釈をとったものといえる。 このような解釈は,同条約2条(xi)の「第8条の規定による優先権の主張」との文言を「第8条(1)の規定による優先権の主張」へ変更したことになるが,これは,同条約の起草者が意図しない新たな概念を導入するものであり,許されるものではない。また,上記解釈は,「条約は,文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従い,誠実に解釈するものとする」と規定するウィーン条約31条に反し,かつ,世界貿易機関(WTO)の上級委員会が,同条の定める一般的規則について,「解釈する者は,条約の条項又は段落全体を重複又は無用なものに還元する結果になる読み方を採用することはできない」と繰り返し言明するところにも反するものである。さらに,このような原判決の解釈は,国内書面提出期限を,優先権の主張が実体的に無効であるのに,形式的な優先日から計算されねばならないという正当化されない仮定を基礎とする循環論法に陥っている点においても誤っている。 特許協力条約2条(xi)の「第8条の規定による優先権の主張」との文言に平易で明白な意味を与えるには,「第8条」とは,特許協力条約8条の全体を指すものと解するべきである。そして,そのように捉えて初めて,同条(2)(a)が無用のものとならない解釈が導かれることとなる。 (イ) 日本等の特許協力条約締約国による救済の提供の必要性について上記のように解釈した場合,WIPO は,優先権の主張の有効性を判断しないため,救済を提供することができないのであるから,日本を含む条約の締約国は,特許出 - 5 -願人から具体的に請求された場合,特許協力条約2条(xi)の「第8条の規定による優先権の主張」は,特許協力条約8条のすべての段落において言及された「優先権の主張」と 締約国は,特許出 - 5 -願人から具体的に請求された場合,特許協力条約2条(xi)の「第8条の規定による優先権の主張」は,特許協力条約8条のすべての段落において言及された「優先権の主張」と解釈することが義務付けられることになる。 そうすると,特許庁は,上記条約の解釈に従い,形式的に表明された優先権の主張が,特許協力条約8条(2)(a)に照らして実体的に有効であるための要件を満たしているかどうかを評価することによって,期間を計算するために用いられる特許協力条約2条(xi)に基づく「優先日」を繰り下げるよう再検討することが義務付けられ,優先権の主張が実体的に無効であった場合,特許庁は,同条約2条(xi)(c)の「優先権の主張を伴わない場合」に基づく期限を設定すべきである。 イ被控訴人の主張控訴人は,特許協力条約2条(xi)に規定する「第8条の規定による優先権の主張」とは,同条約8条(1)に基づく形式的要件のみならず,同条(2)(a)に規定する実体的要件を含めたものでなければならないと主張するようである。 しかし,特許協力条約2条(xi)に規定する「優先日」は,期間の計算のためにのみ定義されたものであって,優先権の主張に係る実体的審査の結果に左右されるものではないから,控訴人の主張は失当である。また,国際出願の翻訳文提出期間の満了前に,当該国際出願について実体審査を行うことを禁じられていることからしても,実体審査によって優先権主張が有効か否かを確定しなければ,国際出願の翻訳文提出期間の起算点である優先権が確定しないことを理由に,特許協力条約8条(2)(a)の規定に基づく実体的要件が優先日の計算に影響を及ぼすものとする控訴人の主張は失当である。 さらに,特許協力条約に基づく国際出願は,特許を取得したいすべての国に対 に,特許協力条約8条(2)(a)の規定に基づく実体的要件が優先日の計算に影響を及ぼすものとする控訴人の主張は失当である。 さらに,特許協力条約に基づく国際出願は,特許を取得したいすべての国に対して,同日に,それぞれ異なる言語を用いて異なる出願書類を提出するといった出願手続の煩雑さ・非効率さを解消すべく,一つの出願書類を条約に従って提出することによって,同条約加盟国のすべての国に同時に「国内出願」をしたのと同じ効果を得られる出願制度であるところ,国際段階において優先日が統一的に定められず, - 6 -指定国により各々定められるのであれば,かかる制度趣旨を没却することになりかねないから,優先日は,国際段階において,統一的に確定される必要がある。 以上によれば,控訴人の解釈は,独自の解釈であり,とり得ないものである。 第3 当裁判所の判断当裁判所も,本件各却下処分に違法な点はなく,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおり付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」「第3 当裁判所の判断」1~3項記載のとおりである。 1 原判決12頁4行目「1 原告は,特許法」を「1(1) 原告は,旧特許法」と改める。 2 原判決12頁9行目「しかし,特許法」を「アしかし,旧特許法」と改める。 3 原判決12頁9,10行目の「『優先日』とは,」の次に,「同条約2条(xi)が『優先日』の定義について,わざわざ『期間の計算上』と断った上で,優先権主張の基礎となる出願の日をいう旨規定していることからも明らかなように」を加える。 4 原判決12頁17行目,25行目,13頁5行目,12,13行目,25行目,14頁1行目の各「特許法」をそれぞれ「旧特許法」と改める。 5 原判決12頁19行目「同法」を うに」を加える。 4 原判決12頁17行目,25行目,13頁5行目,12,13行目,25行目,14頁1行目の各「特許法」をそれぞれ「旧特許法」と改める。 5 原判決12頁19行目「同法」を「特許法」と改める。 6 原判決12頁23行目末尾に改行して,次を加える。 「イ控訴人は,当審において,上記の解釈について,特許協力条約2条(xi)の『第8条の規定による優先権の主張』との文言を『第8条(1)の規定による優先権の主張』と読み替えるのも同然であると解し,条約解釈上の問題や起草者の意図しない新概念を導入することになるなどと論難する。 しかし,控訴人の上記主張は,前提において誤っており,採用することはできない。すなわち,特許協力条約8条(1)にいう『優先権の主張」も,同条(2)(a), - 7 -(b)にいう『優先権の主張』も,当該文言の意味としては,『パリ条約の締結国において又は同条約の締結国についてされた先の出願に基づく優先権を主張する申立て』をいうものであって,同条全体を通じて同一の意味で用いられているものである。同条(2)(a)は,『優先権の主張』の『条件及び効果』について規定しているにすぎず,『優先権の主張』を同条(1)と異なる意味に用いるものではない。 にもかかわらず,控訴人は,同条(2)(a)における『優先権の主張』は,パリ条約4条の定めるところによる効果を伴ったものをいうとの誤った理解を前提とした上で,優先権主張の効果の如何を問わず,期間の計算上,優先権の主張の基礎となる出願日を特許協力条約2条(xi)の『優先日』と解釈することは,特許協力条約2条(xi)の『第8条の規定による優先権の主張』との文言を『第8条(1)の規定による優先権の主張』と読み替えることになるなどと主張するが,合理的根拠のない独自の解釈で 解釈することは,特許協力条約2条(xi)の『第8条の規定による優先権の主張』との文言を『第8条(1)の規定による優先権の主張』と読み替えることになるなどと主張するが,合理的根拠のない独自の解釈であって,採用の限りではない。 また,控訴人主張のように解した場合,特許協力条約2条(xi)に規定する『優先日』は,指定官庁における国際出願に係る実体審査の結果に左右されることになり,国際段階における優先権の主張の基礎となる出願日を起算日とした場合には,期間を徒過しているのに,後の国際出願日を起算日とした場合には期間を徒過しないという事態があり得ることになる。 しかし,同条約8条(1)に基づいてした優先権主張の取下げについて,特許協力条約規則90の2.3(d)は,『優先権の主張の取下げが優先日について変更が生じる場合には,もとの優先日から起算した場合にまだ満了してない期間は,(e)の規定に従うことを条件として,変更の後の優先日から起算する。』と定め,法的安定の観点から,既に期間が満了したものについて,新しい優先日に基づいて期間計算をすることを許容していないことに照らすと,特許協力条約2条(xi)の解釈としても,控訴人主張のような解釈はとり得ないものと考える。 したがって,控訴人が,このような独自の解釈を前提として,特許協力条約締約国による救済の提供の必要性について主張する部分にも理由がない。」 - 8 - 7 原判決12頁24行目冒頭に「(2)」を加える。 8 原判決13頁7行目冒頭に「(3)」を加える。 9 原判決13頁15行目末尾に改行して,次を加える。 「(4) そもそも,控訴人の主張は,自らが行った,本件国際出願の国際段階における特許協力条約19条に基づく補正が,本件仮出願に含まれない構成要件を追加するものであり 尾に改行して,次を加える。 「(4) そもそも,控訴人の主張は,自らが行った,本件国際出願の国際段階における特許協力条約19条に基づく補正が,本件仮出願に含まれない構成要件を追加するものであり,その結果,控訴人による本件仮出願を基礎とする本件優先権主張が無効とされることを前提として,本件翻訳文提出書が法定の提出期間経過後に提出されたことを理由とする本件各却下処分が違法であるとするものであるところ,このように自らが行った法的瑕疵のある手続を理由として書面の提出期間を徒過した行為の救済を求めることを,法が許容するものとは解し難い。」 第4 結論以上によれば,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官清水 節 裁判官中村 恭 - 9 - 裁判官中武由紀

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