平成19(行コ)17 消費税決定処分等取消請求控訴事件(原審・福井地方裁判所平成17年(行ウ)第5号)

裁判年月日・裁判所
平成20年6月16日 名古屋高等裁判所 金沢支部 租税
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判決文本文45,213 文字)

- 1 -主文 原判決を取り消す。 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じて,被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 控訴人主文同旨 被控訴人本件控訴を棄却する。 第2事案の概要 本件は,福井税務署長が平成16年2月2日付けで破産者株式会社a(代表者破産管財人b)に宛てて行った同社の破産宣告後の平成14年2月21日から平成15年2月20日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)中に被控訴人が国内において行った課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消費税額の決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分につき,被控訴人が,①これらの処分は被控訴人に対してなされたものであるところ,破産者株式会社aの破産財団(以下「本件破産財団」という。)は,破産者株式会社aとは別の法的主体であるので,本件破産財団は,本件課税期間に係る基準期間(平成12年2月21日から平成13年2月20日,以下「平成13年2月期」という。)における破産者株式会社aの課税売上高を引き継がず,本件破産財団は,破産宣告後に生じた新規の法人となり,少なくとも破産宣告後2年間は基準期間がないので納税義務を負わないし,②仮にこの主張が認められないとしても消費税法39条1項(課税資産の譲渡先の破産等により領収ができなくなった税込譲渡価額の消費税額からの控除)が適用されるため,本件課税期間中の課税資産の譲渡による消費税の申告及び納付の義務を負わないとして,上- 2 -記各処分の取消しを求めた事案の控訴審である。 原審が,本件破産財団は,破産者株式会社aとは別個の社会的実体を有する「人格のない財団」であるので,本件破産財団に属する財産の換価については,本件破産財団自身が「事業者」として本来的な納税義務者となり 審が,本件破産財団は,破産者株式会社aとは別個の社会的実体を有する「人格のない財団」であるので,本件破産財団に属する財産の換価については,本件破産財団自身が「事業者」として本来的な納税義務者となり,この限りにおいて本件破産財団は,破産者株式会社aの基準期間における課税売上高を引き継がない別の法的主体であり,本件課税期間に係る基準期間がないから,本件課税期間中の譲渡等につき納税義務を負わず,破産管財人である被控訴人もまた申告納税義務を負うことはないとして,被控訴人の請求を認容したところ,控訴人が本件控訴を提起した。 なお,略語は,特に断らない限り,原判決に準ずるものとする。 当事者間に争いのない事実及び関係法令原判決の「事実及び理由」欄の第2の1「当事者間に争いのない事実」及び第2の2「関係法令」に各記載のとおりであるから,これを引用する。 争点 次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2の3「争点」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)原判決4頁3行目「法2条14号」を「法2条1項14号」と改める。 争点に関する当事者の主張次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2の4「争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1)原判決4頁10行目「法2条14号」を「法2条1項14号」と改める。 (2)原判決6頁2行目「2条7号」を「2条1項7号」と改める。 (3)原判決9頁8行目と9行目の間に以下のとおり加える。 「以上のような矛盾は,法人破産,個人破産を問わず,破産者が自由財産- 3 -・新得財産を換価した場合の消費税は破産者が,破産管財人が破産財団に属する財産を換価した場合の消費税は破産管財人が,それぞれ申告納付義務を負うと考え ,個人破産を問わず,破産者が自由財産- 3 -・新得財産を換価した場合の消費税は破産者が,破産管財人が破産財団に属する財産を換価した場合の消費税は破産管財人が,それぞれ申告納付義務を負うと考えれば解消できるから,そのように考えるべきであり,そのために,破産財団に一種の法人格を認める破産財団代表説を採用すべきである。仮に破産財団代表説を採用できないとしても,破産財団に属する財産は実質的には破産財団に属しているから,破産財団は,権利能力なき財団に該当し,消費税法3条,2条1項7号にいう「人格なき財団」に該当する。このように考えると,破産法人と破産財団との法律関係及び申告納税関係は,本判決別紙のようになる。」(4)原判決16頁23行目と24行目の間に以下のとおり加える。 「カ被控訴人は,破産財団は,権利能力なき財団に該当し,消費税法3条,2条1項7号にいう「人格なき財団」に該当する旨主張する。しかしながら,破産財団は,これを構成する財産が依然として破産者に帰属しており,目的財産の出捐者からの分離独立という権利能力なき財団の成立要件を満たしていない。しかも,法3条が「人格なき財団」を消費税法上の法人とみなした趣旨は,一定の目的のために拠出された財産の集合体として社会的活動に着目したものであるところ,破産財団は,管理処分の客体にすぎないものであり,上記のような社会的活動があるとはいえないから,財団法人と同様の社会的実体があるとは認められず,権利能力なき財団として財団法人と同様に取り扱うべき必要性がない。また,破産財団に属する資産の譲渡等の対価は,破産者が享受し,破産財団に帰属することはないから,破産者が「事業者」として消費税の納税義務者になるのであり,破産財団が納税義務者となることはない。破産財団を権利能力なき財団とすると,税法上の は,破産者が享受し,破産財団に帰属することはないから,破産者が「事業者」として消費税の納税義務者になるのであり,破産財団が納税義務者となることはない。破産財団を権利能力なき財団とすると,税法上の各種の規定と矛盾する上,破産宣告による破産財団への財産の移転について課税関係が生じることになったり,課税資産の譲受人から取得した消費税を破産債権者への配当原- 4 -資にすることになるなど,不当・不合理な結果を導くことになる。」(5)原判決16頁24行目の「カ」を「キ」と改める。 第3当裁判所の判断 争点(1)(破産管財人の管理処分権に専属する破産財団は,破産法人の基準期間(法2条1項14号)における課税売上高を引き継がない別の法的主体であるといえるか)について(1)破産者が破産宣告を受けると,破産管財人が選任されるとともに(旧破産法142条1項,157条),破産者が破産宣告時において有する一切の財産の集合体は破産財団を構成し(同法6条),その管理処分権は破産管財人に専属することとなり(同法7条),破産者は破産財団の管理処分権を喪失する。しかしながら,破産者は,あくまで破産財団の管理処分権を喪失するにすぎず,その財産の帰属主体たる地位や所有権を喪失するものではなく,破産手続終了後に残余財産が存在すれば,その管理処分権を回復するし,破産管財人の行った換価処分の効果は,すべて破産者に帰属するというべきである。 上記のとおり破産者が破産手続中も破産財団の帰属主体たる地位や所有権を喪失するものではないと解すべきことは,①旧破産法4条は,解散した法人は破産の目的の範囲内で存続したものとみなす旨規定している(新破産法35条も同旨)ところ,これは,法人が破産すると解散となり(民法68条1項3号,会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 法人は破産の目的の範囲内で存続したものとみなす旨規定している(新破産法35条も同旨)ところ,これは,法人が破産すると解散となり(民法68条1項3号,会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「会社法関係法整備法」という。)による改正前の商法(以下「旧商法」という。)94条5号,404条1号,会社法関係法整備法による廃止前の有限会社法69条1項6号),清算が行われることとなるが(民法73条参照),解散と同時に法人格が消滅すると,清算手続中の権利義務の帰属主体が欠けてしまうため,解散した法人も,破産の目的の範囲内でその存続を認めたものであり,破産者が破産手続中も破産財団の帰属主体たる地位や所有権を喪- 5 -失するものでないことを前提とした規定と考えられること,②法45条4項は,「清算中の法人」の残余財産が確定した場合には当該法人に消費税を課す旨を規定しているところ,破産は一種の清算手続であるから(民法68条1項3号,73条参照),破産法人が「清算中の法人」に該当し,消費税の納税義務者は,破産財団ではなく破産法人であると考えられること,③最高裁昭和43年判決は,破産宣告後に破産財団に属する財産が別除権の行使により競売され,その譲渡所得に課せられた所得税について,この所得が破産者の所得であることを前提に,所得税が一暦年内の個人の総所得金額について個人的事由に基づく諸控除を行う人的税であることを根拠に,破産財団に関して生じたる請求権にあたらない旨判示したものであり,その納税義務者を,破産財団ではなく破産者としていること,④所得税法9条1項10号は,「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における国税通則法第2条第10号(定義)に規定する強制換価手続による資産の譲渡による所得」を非課税所得と規定し,国税通則 9条1項10号は,「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における国税通則法第2条第10号(定義)に規定する強制換価手続による資産の譲渡による所得」を非課税所得と規定し,国税通則法2条10号は,強制換価手続を「滞納処分(その例による処分を含む。),強制執行,担保権の実行としての競売,企業担保権の実行手続及び破産手続をいう。」と規定しているから,所得税法は,破産手続による資産の譲渡による所得は,当該破産者の所得であることを前提として,その担税能力に鑑み,これを非課税所得とする旨規定していると考えられること,⑤法人は,上記のとおり,破産すると解散となって清算が行われることとなり,破産は一種の清算手続であるところ,法人税法は,解散の場合の清算所得に対する法人税を規定し(同法5条及び2編3章1節),破産清算の場合につき適用除外とする規定を設けていないから,破産法人を納税義務者としているものと解されること,⑥現に,最高裁昭和62年判決は,破産法人に法人税法102条,105条(清算中の所得に係る予納法人税の予納申告,納付義務規定)の適用があることを前提とするものであるし,最高裁平成4年判決は,破産法人にこれ- 6 -らの規定の適用がある旨判示していること,以上の諸点からも裏付けられる。 また,仮に,破産財団は破産法人とは別の権利主体であり「事業者」にあたると解すると,破産宣告から2年間は消費税の基準期間がないため,消費税の納税義務を負わないことになる(法9条1項,2条1項14号)。そうすると,破産管財人が破産財団に属する財産を換価した際に譲受人から受領したものと取り扱われる消費税額分(法28条1項参照)は,破産債権者に対する配当原資に充てられることになるが,上記の消費税額分は,破産財団に属する財産の譲受人からの預り金にす した際に譲受人から受領したものと取り扱われる消費税額分(法28条1項参照)は,破産債権者に対する配当原資に充てられることになるが,上記の消費税額分は,破産財団に属する財産の譲受人からの預り金にすぎず,本来,国に納付すべきものであるから,これが破産債権者への配当に充てられる結果となるのは,消費税法の趣旨・目的に反し相当でないことが明らかである。 したがって,破産財団は,破産法人の基準期間(法2条1項14号)における課税売上高を引き継がない別の法的主体と解することはできず,破産法人が「事業者」として消費税の納税義務を負うと解するのが相当である。 (2)これに対して,被控訴人は,新破産法42条2項,238条1項,148条1項5号,6号,50条2項等は破産財団が一種の法人であることを前提とした規定であるなどとして,破産財団は破産者とは別個独立の法人である旨主張する。しかしながら,同法42条2項が,破産財団に属する財産に対する強制執行等が「破産財団に対してはその効力を失う。」旨規定している(旧破産法70条1項も同旨)のは,この強制執行等が絶対的に効力を失うものではなく,破産手続との関係のみで効力を失い,破産管財人は,強制執行等がなかったものとして破産財団に属する財産を自由に管理処分できることを意味するものにすぎず,破産財団を一種の法人と認めたものではないというべきである。また,同法238条1項が,破産手続開始後に破産者がした単純承認及び相続放棄の効力を「破産財団に対しては,」限定承認の効力を有するとした(旧破産法8条,9条も同旨)のは,破産手続開始決定後は破産財団に属する財産の管理処分権が破産管財人に専属するところ(同法7- 7 -8条1項,旧破産法7条も同旨),相続財産が債務超過状態のときに破産者がする単純承認,及び,相続財産が資産超過 定後は破産財団に属する財産の管理処分権が破産管財人に専属するところ(同法7- 7 -8条1項,旧破産法7条も同旨),相続財産が債務超過状態のときに破産者がする単純承認,及び,相続財産が資産超過状態のときに破産者がする相続放棄は,その効力を無条件に認めると破産債権者を害することになるため,破産手続との関係において,限定承認がなされたのと同様の効力を有すると定めたものにすぎず,やはり破産財団を法人と認めたものではないというべきである。そして,同法50条2項が,破産手続開始後にその事実を知って破産者にした弁済を「破産財団が受けた利益の限度」においてのみ有効とした(旧破産法56条2項も同旨)のは,上記のとおり,破産手続開始決定後は破産財団の管理処分権が破産管財人に専属するため,破産者に対する弁済は,本来,弁済者が善意の場合にのみ有効であるが(同法50条1項,旧破産法56条1項も同旨),破産者が弁済として受領したものが破産管財人の手に渡って破産財団の維持が図られている場合には,その効力を否定する理由がないとの趣旨に基づくものであり,破産財団を法人と認めるものではないというべきである。同法148条1項5号,6号の規定も,破産財団の法主体性に関する規定とは認められないから,被控訴人が主張する新破産法の規定は,いずれも破産財団が一種の法人であることを前提とした規定であると解することはできない。そして,法人は,法律の規定によらなければ成立しないところ(民法33条),破産法,消費税法及びその他の法律上,破産財団を法人とする規定は存在しないから,被控訴人の上記主張には理由がない。 また,被控訴人は,破産財団は,権利能力なき財団に該当し,消費税法3条,2条1項7号にいう「人格のない財団」として「事業者」に該当する旨主張する。しかしながら,権利能力なき 記主張には理由がない。 また,被控訴人は,破産財団は,権利能力なき財団に該当し,消費税法3条,2条1項7号にいう「人格のない財団」として「事業者」に該当する旨主張する。しかしながら,権利能力なき財団の成立要件は,①目的財産の分離独立と,②当該財産の管理運営体制の確立,すなわち,その財産の管理人・管理機関への帰属であると解されるところ(最一小判昭和44年6月26日民集第23巻第7号1175頁,最三小判昭和44年11月4日民集- 8 -第23巻第11号1951頁),前記判示のとおり,破産者は,その財産の帰属主体たる地位や破産財団の所有権を喪失するものではなく,破産管財人は単にその管理処分権を有するにすぎないし,その行為の効果も,すべて破産者に帰属し,破産財団自体に帰属するものではないから,破産財団は,権利能力なき財団の成立要件を満たさないものである。したがって,被控訴人の上記主張には理由がない。 (3)以上によれば,破産財団は,破産法人の基準期間(法2条1項14号)における課税売上高を引き継がない別の法的主体であるということはできず,破産者株式会社aが「事業者」として消費税の納税義務を負うことになる。 そして,本件破産財団に属する財産の管理処分権は破産管財人である被控訴人に専属するから,被控訴人が本件課税期間中に国内において行った本件破産財団に属する課税資産の譲渡等に係る消費税及び地方消費税の申告及び納付の義務は,被控訴人が負うことになる。 争点(2)(破産者株式会社aの破産者株式会社c及び破産者株式会社dに対する売掛債権(税込譲渡額)について,本件課税期間中に法39条1項(貸倒金の税額控除)を適用できる要件が存在したか)について(1)消費税法が採用する申告納税方式は,納税義務者のする申告が事実に基づいて適正に行われること )について,本件課税期間中に法39条1項(貸倒金の税額控除)を適用できる要件が存在したか)について(1)消費税法が採用する申告納税方式は,納税義務者のする申告が事実に基づいて適正に行われることが肝要であり,必要に応じて税務署長等がこの点を確認することができなければならない。そのため,同法は,事業者に対して,帳簿を備え付けてこれにその行った資産の譲渡等に関する事項を記録した上,当該帳簿を保存することを義務付け(法58条),税務職員は,必要があるときは,事業者の帳簿書類を検査して申告が適正に行われたか否かを調査することができるものとし(法62条),税務職員の検査を拒んだ者に対しては罰則を定め(法68条1号),税務職員が必要なときに事業者が保存する帳簿等を検査することができるようにしている。そして,法39条2項が規定する同条1項に規定する債権につき同項に規定する事実が生じたことを証- 9 -する書類の「保存」も,税務職員が必要なときに検査することができてはじめて意義を有するものであるから,ここにいう「保存」も,上記と同様,税務職員の質問検査権に基づく適法な提示要請があれば提示できる態勢で保存することを要するというべきである。したがって,事業者が,平成15年3月31日財務省令第32号による改正前の消費税法施行規則19条の定めるとおり,法39条1項に規定する債権につき同項(及び同法施行令59条)に規定する事実が生じたことを証する書類を整理し,これらを税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように所定の期間及び場所において態勢を整えて保存していなかった場合には,同条2項にいう「書類を保存しない場合」に該当すると解するのが相当である(最一小判平成16年12月16日民集58巻9号2458頁参照)。 (2)そこで,本件において, て保存していなかった場合には,同条2項にいう「書類を保存しない場合」に該当すると解するのが相当である(最一小判平成16年12月16日民集58巻9号2458頁参照)。 (2)そこで,本件において,法39条2項にいう「書類を保存しない場合」に該当するかについて検討するに,証拠(甲2,乙18ないし23)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被控訴人は,平成15年11月25日に実施された本件調査の際,税務職員から,破産者株式会社a及び破産者株式会社cに係る消費税課税売上高が確認できる帳簿等の提示を求められたにもかかわらず,「破産手続きに関する証票綴り」と題するファイル1冊並びに「破産者株式会社a破産管財人b」名義,「破産者株式会社c破産管財人b」名義及び「破産者株式会社d破産管財人b」名義の各預金通帳を提示したのみで,総勘定元帳を始め帳簿書類の提示を行わなかった。 イ被控訴人は,本件異議調査の際,税務職員から,破産者株式会社aの破産者株式会社c及び破産者株式会社dに対する売掛債権について,法39条2項の適用についての説明を受け,貸倒れの事実が生じたことを証する書類及びその保存について確認の質問を受けたにもかかわらず,「帳簿が揃っておらず,貸倒れに係る正確な金額は分からない」旨回答し,上記書- 10 -類の提示に応じなかった。 (3)以上で認定した事実によれば,被控訴人は,法39条2項が規定する同条1項に規定する債権につき同項に規定する事実が生じたことを証する書類を整理し,これらを税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように所定の期間及び場所において態勢を整えて保存していなかったものというべきであるから,破産者株式会社aの破産者株式会社c及び破産者株式会社dに対する売掛債権(税込譲渡額)について,法39 可能なように所定の期間及び場所において態勢を整えて保存していなかったものというべきであるから,破産者株式会社aの破産者株式会社c及び破産者株式会社dに対する売掛債権(税込譲渡額)について,法39条1項の規定(貸倒金の税額控除)は適用されないものというべきである。 本件課税期間中に被控訴人が国内において行った課税資産の譲渡等に係る消費税及び地方消費税の課税標準額が2005万8000円であることは被控訴人においても積極的に争わないところ,この課税標準額に対する消費税額は,80万2320円(2005万8000円×0.04)であり,上記2判示のとおり,本件に法39条1項の規定(貸倒金の税額控除)は適用されず,控除税額は0円であるから,納付すべき消費税額及び地方消費税の課税標準となる消費税額は80万2300円(国税通則法119条1項に基づいて100円未満の端数を切り捨てした後の金額)となり,地方消費税の譲渡割額は20万0500円(80万2300円×0.25,同様に100円未満の端数切捨て後の金額)となる。 したがって,被控訴人が本件課税期間に係る納付すべき税額は,消費税額80万2300円,地方消費税額20万0500円,合計額100万2800円となるところ,これらの額は本決定処分における納付すべき消費税額77万2000円,地方消費税額19万3000円,合計額96万5000円を上回っているから,本件決定処分は適法である。 また,無申告加算税は,期限内申告書の提出がない場合に期限後国税通則法25条の規定による決定があった場合に課されるところ(平成15年法律第8号による改正前の国税通則法66条1項1号),被控訴人は,前記当事者間に- 11 -争いのない事実判示のとおり,本件課税期間に係る消費税の確定申告を行わずに本件決定処分を受けているから,無 律第8号による改正前の国税通則法66条1項1号),被控訴人は,前記当事者間に- 11 -争いのない事実判示のとおり,本件課税期間に係る消費税の確定申告を行わずに本件決定処分を受けているから,無申告加算税の課税要件を満たすものである。そして,無申告加算税の税額は15万円(100万円(上記納付すべき税額100万2800円から国税通則法118条3項に基づき1万円未満の端数を切り捨てした後の金額)×0.15)となるところ,この額は本件賦課決定処分における被控訴人の納付すべき無申告加算税額14万4000円を上回っているから,本件賦課決定処分は適法である。 したがって,被控訴人に対し,本件課税期間分の消費税及び地方消費税について行った本件決定処分及び本件賦課決定処分はいずれも適法である。 以上によれば,本件処分等はいずれも適法であり,被控訴人の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却すべきである。したがって,これらを認容した原判決を取り消して被控訴人の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部裁判長裁判官渡辺修明裁判官沖中康人裁判官桃崎剛(原裁判等の表示)主文 福井税務署長が,原告に対し,平成16年2月2日付けで行った,平成14年2月21日から平成15年2月20日までの期間の消費税及び地方消費- 12 -税の決定処分並びに加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求主文同旨第2事案の概要本件は,福井税務署長が平成16年2月2日付けで破産者株式会社a(代表者破産管財人b。)に宛てて行った平成14年2月21日から平成15年2月20日までの課税期間(同社が破産宣告を受けた後の期間である。以下「本件課税期 が平成16年2月2日付けで破産者株式会社a(代表者破産管財人b。)に宛てて行った平成14年2月21日から平成15年2月20日までの課税期間(同社が破産宣告を受けた後の期間である。以下「本件課税期間」という。)中に原告が国内において行った課税資産の譲渡等に係る消費税及び地方消費税の決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分につき,原告が,これらの処分は原告に対してなされたものであることを認めた上,破産者株式会社aの破産に係る破産財団(以下「本件破産財団」という。)は,破産者株式会社aとは別の法的主体であるので,本件破産財団は,本件課税期間に係る基準期間(平成12年2月21日から平成13年2月20日。以下「平成13年2月期」という。)における破産者株式会社aの課税売上高を引き継がず,本件破産財団は,破産宣告後に生じた新規の法人となり,少なくとも破産宣告後二年間は基準期間がないので納税義務を負わないと主張し,仮にこの主張が認められないとしても消費税法39条1項(課税資産の譲渡先の破産等により領収ができなくなった税込譲渡価額の消費税額からの控除)が適用されるため,本件課税期間中の課税資産の譲渡による消費税の申告及び納付の義務を負わないとして,上記各処分の取消しを求める事案である。 当事者間に争いのない事実(1)破産者株式会社aは,平成14年1月28日,福井地方裁判所から破産宣告を受け,その破産管財人に選任されたのが原告である。 (2)破産者株式会社aの関係会社である破産者株式会社cは平成14年1月2- 13 -8日に,破産者株式会社dは,同年2月4日に,それぞれ福井地方裁判所から破産宣告を受けた。 (3)破産者株式会社aは,平成13年4月23日,課税標準額5億2487万5000円,控除対象仕入額1699万9831円,消費税の差引税額 2月4日に,それぞれ福井地方裁判所から破産宣告を受けた。 (3)破産者株式会社aは,平成13年4月23日,課税標準額5億2487万5000円,控除対象仕入額1699万9831円,消費税の差引税額399万5100円,地方消費税の差引税額99万8700円とする平成13年2月期に係る消費税等の確定申告書を福井税務署長に提出しており,同期における破産会社aの課税売上高は少なくとも3000万円を超えていた(甲2)。 原告が本件課税期間に国内において行った課税資産の譲渡等に係る課税売上高は2106万1913円(別表3のとおり)であったが,原告は消費税の確定申告をしなかった。 (4)福井税務署長eは,平成16年2月2日付け「消費税及び地方消費税の決定通知書並びに加算税の賦課決定通知書」をもって,原告に対し,本件課税期間分の消費税及び地方消費税について,課税標準額を1930万2000円,消費税額を77万2000円,地方消費税額を19万3000円とする決定処分(以下「本件決定処分」という。),無申告加算税の額を14万4000円とする賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件決定処分と併せて「本件処分等」という。)を行った。本件処分等に関する経緯は別表1「決定処分等の経緯」記載のとおりであり,本件決定処分において被告が行った計算経過は別表2「消費税額等の計算」のとおりである。 (5)本件決定処分に関する通知書は平成16年2月3日に原告に到達し,原告は同年3月3日に納税額全額を納付した上,同月12日に異議申立てをしたが,同年6月9日付けで異議申立ては棄却された。 (6)原告は平成16年7月9日付けで審査請求をしたが,平成17年5月16日付けで審査請求は棄却された。 関係法令- 14 -(1)消費税法については,平成15年法律第8号に 棄却された。 (6)原告は平成16年7月9日付けで審査請求をしたが,平成17年5月16日付けで審査請求は棄却された。 関係法令- 14 -(1)消費税法については,平成15年法律第8号による改正前のものを,以下「法」という(2)消費税法施行令については,平成15年政令第135号による改正前のものを,以下「法施行令」という。 (3)破産法については,平成16年法律第75号による廃止前のものを,以下「旧破産法」といい,同法律による改正後のものを,以下「新破産法」という。 争点 (1)破産管財人の管理処分権に専属する破産財団は,破産宣告を受けた法人(以下「破産法人」という。)の基準期間(法2条14号)における課税売上高を引き継がない別の法的主体であるといえるか。 (2)破産者株式会社aの破産者株式会社c及び破産者株式会社dに対する売掛債権(税込譲渡額)について,本件課税期間中に法39条1項(貸倒金の税額控除)を適用できる要件が存在したか。 争点に関する当事者の主張(1)争点(1)(破産管財人の管理処分権に専属する破産財団は,破産法人の基準期間(法2条14号)における課税売上高を引き継がない別の法的主体であるといえるか)について(原告の主張)ア問題の所在(ア)破産財団は,破産宣告により,破産者が有していた財産によって構成されるものの,破産債権者への配当を目的として存在するため,破産者の有していたすべての財産が破産財団となるわけではない。当該財産が配当財源として寄与するか否かの判断には,法的評価あるいは経済的評価が必要となるため,新破産法は,すべての財産をいったん破産財団に帰属させた上で(34条1項),配当財源として寄与しないと見込ま- 15 -れる財産は,権利の放棄(78条2項12号)によって,破産財団 必要となるため,新破産法は,すべての財産をいったん破産財団に帰属させた上で(34条1項),配当財源として寄与しないと見込ま- 15 -れる財産は,権利の放棄(78条2項12号)によって,破産財団から除外され,破産者の自由財産になり,管理処分権が破産者に帰属することになると解される。 (イ)破産財団に属する財産の処分は破産管財人が行うのに対し,自由財産になった財産の処分は,個人の場合は破産者個人であり,法人の場合は破産法人である。もっとも,法人の場合,従前の代表者は,破産宣告によってその権限を失うと解され,自由財産となった不動産を換価して弁済を得ようとする別除権者などの利害関係人は,裁判所に清算人の選任を申し立て,清算人が破産法人の代表者として自由財産となった財産の処分を行うのが実務の扱いである。別除権者は,清算人が当該不動産を任意売却した際に,別除権債権としての弁済を受けるか,清算人を破産法人の代表者として,別除権の実行としての競売を申し立て,配当として弁済を受けるかのどちらかとなる(競売の場合,特別代理人が選任される場合もある。)。 (ウ)このように,破産者が所有していた財産が,破産財団と自由財産にそれぞれ分けられ,個人の場合は破産管財人と破産者個人によって,法人の場合は破産管財人と破産法人の代表者である清算人によって,それぞれ別個独立に処分されることになり,この場合に課税関係をどのように解すべきかが問題となる。 イ破産財団法人説(破産管財人の地位からみると破産財団代表説)(ア)そもそも,破産財団は,法律の規定によって法人格を与えられた法人ではないが,破産法の解釈として,破産宣告により,破産的清算という目的のために,法律上当然に成立し,破産手続の終了によって消滅する一時的な法人であり,破産者とは別個独立の法人ないし法人 えられた法人ではないが,破産法の解釈として,破産宣告により,破産的清算という目的のために,法律上当然に成立し,破産手続の終了によって消滅する一時的な法人であり,破産者とは別個独立の法人ないし法人に準ずるものであると解され,破産管財人は,この破産財団という法人の代表機関としての地位及び権限を有するというべきである(破産財団代表説)。 - 16 -新破産法42条2項,238条1項,148条1項5号,6号,50条2項等の表現は,破産財団が一種の法人であることを前提にしている。 また,破産者と第三者との法律関係(民法94条2項,96条3項,177条,467条,545条1項ただし書等)につき,破産管財人は,破産財団が破産者とは別個の第三者的地位にあるものとして破産財団の拡充を図ることが可能であること,破産財団が破産者に対して損害賠償請求権を持ち得ること,法人税法や消費税法が法人格のない社団や財団を当該税法の適用場面においてのみ法人として扱うみなし規定(法3条,2条7号,法人税法3条,2条8号)を置いていることなども,破産財団が破産者の権利の客体ではなく,独立の法人格を有することの根拠であると考えられる。 破産宣告によって破産財団という法人が成立し,破産者が有していた財産は,破産法の規定により当然に破産財団に帰属し,破産財団からの放棄によって再び破産法人自身に復帰するところ,この帰属・復帰の内容は所有権の移転であると解すべきである。破産手続が終了すると,その時点で破産財団は役割を終えて消滅し,残余財産が存在する場合,残余財産が破産法人に復帰し,改めて清算手続が進められる。 (イ)破産財団を一種の法人であると考え,破産管財人をその代表者であると考える立場によると,破産財団は,税法上の課税関係においても,破産者とは別個独立の納税主体であると理解 清算手続が進められる。 (イ)破産財団を一種の法人であると考え,破産管財人をその代表者であると考える立場によると,破産財団は,税法上の課税関係においても,破産者とは別個独立の納税主体であると理解すべきであり,破産法人と破産財団との法律関係並びに消費税,法人税,法人住民税及び固定資産税の申告納税関係は,別紙のようになると考えられる。 破産管財人が管理処分権の一環として破産財団に属する財産を換価した場合の消費税の申告納付義務は破産財団が負い,破産管財人が破産財団の代表者として申告納税を行う義務を負う。 破産管財人が破産財団から放棄して破産法人に管理処分権が復帰した- 17 -自由財産につき,清算人が清算事務の一環として換価処分を行った場合の消費税の課税関係は,破産者が当該資産をいくらで換価処分したかを職務上知り得る立場にない破産管財人に申告納税の義務があると解することは困難であり,破産法人の代表者である清算人に申告納税義務があると解すべきである。清算人は,消費税の申告をし,換価処分して得た金額の中から別除権者への支払などに優先して納税をすべきであって,任意売却の場合,清算人が買主から消費税分を付加した代金を受け取って申告納税すればよく,競売による売却の場合,売却金額を消費税込みの金額として,消費税を控除した後の金額を配当する取扱いにすればよく,消費税相当分は特別代理人に配当し,特別代理人において申告納税することになると考えられる。 個人破産の場合も同様であり,破産者個人が破産者個人の自由財産に属する財産を処分したことによる消費税は,破産者個人に申告納税義務がある。 ウ被告の主張の検討被告の主張によれば,個人破産についても法人破産と同様に,破産管財人が破産財団に属する課税資産の換価処分を行った場合は,破産者に対して消費税が課税され に申告納税義務がある。 ウ被告の主張の検討被告の主張によれば,個人破産についても法人破産と同様に,破産管財人が破産財団に属する課税資産の換価処分を行った場合は,破産者に対して消費税が課税されるが,破産者には破産財団に属する財産の管理処分権がなく,その管理処分権は破産管財人に専属することから,この破産者に課せられる消費税の申告納税は,破産財団の管理処分権の一環と解すべきであり,破産管財人に破産者の消費税の申告納税義務があるということになると考えられる。にもかかわらず,被告は,個人破産の場合の消費税の課税に関して,破産管財人がその管理処分権に基づいて行った課税資産の譲渡の効果は破産者に帰属することから,破産財団に帰属する課税資産の譲渡についても破産者自身に消費税の納税義務があると主張しており,個人破産の場合と法人破産の場合で結論が異なることになる。 - 18 -また,被告の主張のように,消費税法上,事業者である個人が行った課税資産の譲渡について,破産財団に属するものと自由財産に属するものを区別する規定がないことを理由として,個人破産の場合につき,破産財団に属する財産の換価によるものであろうと,自由財産に属する財産の換価によるものであろうと,消費税の納税義務者は破産者であって,破産財団ではないとすると,法人破産の場合も,消費税法上,事業者である法人が行った課税資産の譲渡について,破産財団に属するものと自由財産に属するものとを区別する規定はなく,破産財団に属する財産の換価によるものであろうと,自由財産に属する財産の換価によるものであろうと,消費税の納税義務者は破産法人であって,破産財団ではないことになるはずである。にもかかわらず,被告は,法人破産の場合に破産管財人が申告納税の義務を負うと主張しており,個人破産の場合と法人破産の場合で 費税の納税義務者は破産法人であって,破産財団ではないことになるはずである。にもかかわらず,被告は,法人破産の場合に破産管財人が申告納税の義務を負うと主張しており,個人破産の場合と法人破産の場合で結論が異なることになる。 さらに,被告の主張では,個人破産の場合,徴収可能な破産財団からは消費税を全く徴収せずに徴収困難な破産者個人からすべての消費税を徴収することになり,破産管財人が破産財団に属する財産を換価して買主から預かった消費税を納付する必要がなく,破産者は,預かってもいない消費税を納付しなければならないことになる。例えば,個人事業者Aが,基準期間の課税売上高が3000万円を超える課税事業者であったが,平成16年12月31日破産宣告を受け,破産管財人(破産財団)が,平成17年に,破産財団に帰属する商品等を換価して,5000万円の課税売上を上げた一方で,Aも,新たに事業を開始し,同年に5000万円の課税売上を上げたとする。破産管財人は,商品等を5000万円で売却した場合,外税として250万円の消費税を買主から受け取り,破産財団に属する課税資産の換価処分に係る消費税については,破産管財人が当然に破産財団の代表者として申告納税を行い,これに対し,自由財産に属する課税資産- 19 -の譲渡による消費税は,破産者個人が申告納税義務を負うと考えるべきである。消費税は,本来,買主が負担すべき消費税をいったん売主が預かって後日納付するもので,預かり金の性質を有するにもかかわらず,被告の主張によると,破産管財人が預かり金を納付せずに,破産配当等に自由に費消してよく,破産者個人が,預かってもいない消費税を自由財産から納付する義務を負うことになり,不合理である。 他方,被告の主張によれば,法人の破産の場合,徴収可能な破産法人からは全く徴収せず,すべて 消してよく,破産者個人が,預かってもいない消費税を自由財産から納付する義務を負うことになり,不合理である。 他方,被告の主張によれば,法人の破産の場合,徴収可能な破産法人からは全く徴収せず,すべての消費税を破産財団から徴収することになる。 そうすると,清算人が破産会社の自由財産に属する財産を換価して買主から預かった消費税を納付する必要はなく,破産管財人(破産財団)は,預かってもいない消費税を納付しなければならなくなる。例えば,破産管財人が破産財団から放棄したことにより破産法人に復帰した建物を,破産法人が後日に換価した場合,当該建物が破産財団から放棄されたにもかかわらず,破産財団が消費税を負担するのは不当であるとともに,放棄によって固定資産税の負担を免れることと整合性が保てない。 エ最高裁判決の検討(ア)最高裁昭和39年(行ツ)第6号同43年10月8日第三小法廷判決・民集22巻10号2093頁(以下「最高裁昭和43年判決」という。)は,課税当局が,総所得金額に対する税額のうち破産財団に属する財産の譲渡所得に対応する所得税額を区分して確定することが可能であり,その分のみを区分して財団債権とすべきであると主張したのに対し,そもそも所得税は総所得金額の所得源に応じて課税するようなことは予定していないとして課税当局の主張を斥けたにすぎず,同判決が総所得金額に対して累進税率により課税される所得税の財団債権性を否定した理由は,総所得金額はその算定に破産者の個人的要素が影響し,破産財団のみでは算定不可能な性質のものだからである。同判決も,上記- 20 -総所得金額以外の所得で個人的要素が影響しない所得(例外的に分離課税の認められる特殊な所得等)につき,破産財団に属する財産によるものと自由財産に属する財産によるものとを区別しないなどとは判示して -総所得金額以外の所得で個人的要素が影響しない所得(例外的に分離課税の認められる特殊な所得等)につき,破産財団に属する財産によるものと自由財産に属する財産によるものとを区別しないなどとは判示しておらず,再評価税等個人的要素が影響しない課税債権が財団債権となることを否定していない。消費税は,個人に対する課税であっても課税売上に対して定率で課税されるものであり,各種所得金額や所得控除等の個人的要素は全く影響しないから,同判決の考え方によれば,破産財団に属する課税資産の譲渡により発生する消費税は,破産財団に関して生じたものとして財団債権に当たると解されるし,自由財産に属する課税資産の譲渡により発生する消費税は,破産財団に関して生じたものとはいえないから,財団債権に当たらないと解されることになり,財団債権に当たらないと解される消費税は,破産者個人が申告納税義務を負うというべきである。 (イ)最高裁昭和59年(行ツ)第333号同62年4月21日第三小法廷判決・民集41巻3号329頁(以下「最高裁昭和62年判決」という。)は,予納法人税の債権のうち,土地重課による加算部分以外は財団債権に当たらない旨を判示した。同判決によれば,破産法人にも自由財産が存在し,租税債権の中に,自由財産から徴収すべきものと破産財団から徴収すべきものが存在することは明らかであり,破産法人がその自由財産に属する不動産を売却した場合,当該不動産は形式的にも実質的にも破産財団に属さない不動産であり,予納法人税の申告納税について,少なくとも破産管財人(破産財団)に納税義務がないことは明らかであって,破産法人が納税義務を負うべきである。 (ウ)最高裁平成2年(行ツ)第98号同4年10月20日第三小法廷判決・集民166号105頁(以下「最高裁平成4年判決」という。)は,破 とは明らかであって,破産法人が納税義務を負うべきである。 (ウ)最高裁平成2年(行ツ)第98号同4年10月20日第三小法廷判決・集民166号105頁(以下「最高裁平成4年判決」という。)は,破産管財人が,重課による納税額が存在するにもかかわらず,申告納税- 21 -せず,課税当局の課税処分につき,そもそも破産管財人に法人税の申告義務がないとして処分の取消しを求めたのに対し,一般論として申告義務がある旨を判示したものである。 同判決が,破産法人にも清算法人に関する法人税法102条及び同法105条の適用があること,破産管財人に破産法人の予納法人税の申告義務があることを認めたのは,破産財団を一種の清算法人として課税関係を処理すべきものと考えて,破産財団の申告義務について判断したからであると解される。同判決は,重課に係る部分を除いた一般所得の部分は財団債権に該当せず,破産債権に優先してこれを徴収することはできないとしているので,重課に係る部分の納税義務は格別,一般所得部分については,破産管財人に納税義務がないことが明確にされたと考えられる。 同判決の事案においては,破産会社に自由財産が存しなかったのであり,破産管財人が処分した破産財団に属する不動産に関する予納法人税の申告義務が争われたのであって,破産法人が処分した自由財産に属する不動産に関する予納法人税の申告義務については,判例の射程外である。 そして,同判決が財団債権に当たらない予納法人税について,破産管財人が申告義務を負うと判断した根拠は,破産財団に属する不動産を破産管財人がその管理処分権に基づいて行った処分であり,それに関する申告も破産財団の管理処分の一環とみることができるという点にあった。 そうすると,破産管財人が行う破産事務と清算人が行う清算事務は別個独立に行われ,破産管財 権に基づいて行った処分であり,それに関する申告も破産財団の管理処分の一環とみることができるという点にあった。 そうすると,破産管財人が行う破産事務と清算人が行う清算事務は別個独立に行われ,破産管財人は,清算人の行った処分の内容を知り得ないから,破産法人が,破産管財人の管理処分権と全く関係のない自由財産に属する不動産を処分したことに関する申告義務を破産管財人が負う理由はなく,その場合,破産会社(清算人)が申告義務を負うべきであっ- 22 -て,理論上は,破産管財人(破産財団)が申告納税すべきものと清算人(破産会社)が申告納税すべきものが存在するというべきである。 オ基準期間との関係基準期間(個人の場合は前々年,法人の場合は前々事業年度)の課税売上高が3000万円を超えない事業者は,その課税期間の課税売上高に関係なく消費税が免除される(法9条1項)。個人事業者は,新規開業年及びその翌年について,法人は,設立事業年度及び翌事業年度について,いずれも基準期間の課税売上高がないため,免税事業者となる。 消費税法では,納税主体が何らかの事情で二つに分かれた場合について,特別の規定がある場合を除いて,基準期間を両方に引き継がせることはせず,分割前に母体であった方のみが基準期間を引き継ぎ,もう一方は引き継がないのが原則である。例えば,個人事業者が法人成りして新法人を設立した場合(新しく設立された法人が個人として行っていた事業を引き継ぐ場合)であっても,課税事業者である個人の方に従前の基準期間が引き継がれ,新しく設立された法人は,基準期間の課税売上高のない事業者として少なくとも設立事業年度及び翌事業年度は免税事業者として扱われる。 法人の場合でも,B法人の設立に際し,A法人が資産の全部を現物出資し,B法人がA法人の事業を引き継ぎ,A法人が持ち株会社 事業者として少なくとも設立事業年度及び翌事業年度は免税事業者として扱われる。 法人の場合でも,B法人の設立に際し,A法人が資産の全部を現物出資し,B法人がA法人の事業を引き継ぎ,A法人が持ち株会社となった場合,A法人がB法人の発行済み株式の総数を所有するなどの特別なケースを除き,A法人の基準期間がB法人に引き継がれることはない。 本件において,1930万2000円の課税標準額に対して発生する消費税の納税主体は破産財団であり,破産宣告により,破産者とは独立した法人として破産財団が成立すると解する以上,破産法人の基準期間が破産財団に引き継がれることはなく,破産財団については,少なくとも当初2年間は,基準期間の課税売上高がなく,当然に免税事業者となり,破産管財人に破産財団の換価に係る消費税についての申告納税義務はないという- 23 -べきである。 (被告の主張)ア破産者が破産宣告時に有する一切の財産が破産財団となり(旧破産法6条1項),破産財団の管理処分権が破産管財人に専属するところ(旧破産法7条),破産法は,破産者について破産財団に属する財産の管理処分権を失わせただけであり,所有権まで失わせたものではないから,破産財団に属する財産の所有権は破産宣告後も依然として破産者に帰属し,その管理処分権を有する破産管財人が行った破産財団の換価処分の効果は破産者に帰属する。そして,事業者である法人が行う課税資産の譲渡等には当然に消費税等が課税され,破産管財人が破産財団に属する財産の換価処分を行った場合,その換価処分が消費税法上の課税資産の譲渡等に該当するときは,当該課税資産の譲渡等に対して消費税等が課される。破産財団に属する財産について破産者に納税義務があるとしても,破産法の規定に基づき,破産財団に属する財産に対する管理処分権が破産管財人に専属 ときは,当該課税資産の譲渡等に対して消費税等が課される。破産財団に属する財産について破産者に納税義務があるとしても,破産法の規定に基づき,破産財団に属する財産に対する管理処分権が破産管財人に専属し,申告納税義務の履行は破産財団の管理処分の一環と解されるから,破産管財人に破産者の納税申告及び納付の義務があるというべきである。 イ原告は,破産財団が破産者とは別個独立の法人である旨主張する。 しかし,法人は,法の規定によらずには成立せず,消費税法及び破産法において破産財団を法人とする旨の規定は存しない。消費税法においても,法人税法と同様,破産清算の場合を適用除外とする明文の規定がなく,消費税法の適用に関して,特段異なる取扱いをする規定が存せず,破産財団が納税主体であることを認め,あるいはこれを前提とする実体規定や手続規定は存在しない。かえって消費税法45条4項に「清算中の法人」につき消費税を課す旨の規定があることなどから,消費税の納税主体は破産財団ではなく,破産法人に消費税の申告納税義務があるというべきである。 このように,破産財団が破産者とは別個独立の法人とはなり得ないことは,- 24 -破産法及び消費税法の関係規定の構造,規定の文言及び趣旨などから明らかであり,破産財団に属する財産の換価処分の効果は破産者に帰属するというべきである。 ウ最高裁判決の検討(ア)最高裁昭和43年判決は,「納税者が破産宣告を受け,その総所得金額が破産財団に属する財産によるものと自由財産によるものとに基づいて算定されるような場合においても,その課税の対象は,それらとは別個の破産者個人について存する前叙の総所得金額という抽象的な金額なのである」と判示している。所得税法は,課税に当たり,その個人が破産宣告を受けているかどうかを区別しないから,破産者の総所得 らとは別個の破産者個人について存する前叙の総所得金額という抽象的な金額なのである」と判示している。所得税法は,課税に当たり,その個人が破産宣告を受けているかどうかを区別しないから,破産者の総所得金額が破産財団に属する財産によるものと自由財産によるものとから算定されるような場合でも,これをその所得源に応じて区分して課税するようなことは認められない。同判決は,破産財団に属する財産を換価した結果生じた譲渡所得に対する所得税債権が財団債権に該当するか否かが争点となった事案であるところ,原告の主張のように,もし破産財団が税法上破産者とは別個の法人とされるならば,破産財団に属する財産を換価した結果生じた譲渡所得は,法人である破産財団に帰属するはずである。にもかかわらず,同判決は,同譲渡所得も破産者個人の総所得に含まれる旨を判示した。破産管財人がその管理処分権に基づいて行った課税資産の譲渡等について,消費税法上それを自由財産に属する課税資産の譲渡と区別するような特段の規定も存在しない。したがって,破産財団に属する財産から生じた所得と自由財産に属する財産から生じた所得のいずれも破産者に属するのと同様に,消費税の納税義務についても,破産財団に属する課税資産の譲渡等に係る消費税の納税義務は,自由財産に属する課税資産の譲渡等による消費税の納税義務と同様に,破産者が負うというべきである。 - 25 -(イ)最高裁平成4年判決は,「破産会社にも法人税法(昭和56年法律第12号による改正前のもの)102条(清算中の所得に係る予納申告)及び105条(清算中の所得に係る予納申告による納付)の規定の適用があるものと解すべきであるから,破産会社の破産管財人には,予納法人税が旧破産法47条2号但書にいう『破産財団ニ関シテ生シタルモノ』に当たるか否かを問わず,そ に係る予納申告による納付)の規定の適用があるものと解すべきであるから,破産会社の破産管財人には,予納法人税が旧破産法47条2号但書にいう『破産財団ニ関シテ生シタルモノ』に当たるか否かを問わず,その予納申告等の義務があるものというべきである」旨判示した。また,破産清算も解散による清算手続の一つであり,法人税法も破産清算の場合を同法二編三章一節の適用除外とする明文の規定を設けていないこと,破産法人は,破産手続中も破産手続終了後も同一法人格であるところ,破産清算後に清算所得が残るということもあり得ないわけではないことなどから,破産法人に法人税法92条,102条,104条等の規定の適用がないとすることはできない(前掲最高裁昭和62年判決参照)。これらの点からすれば,破産管財人に破産会社の法人税の予納申告,納付の義務があることは明らかである。 最高裁平成4年判決の上記判示は,破産財団の申告義務を認めたと解することはできず,破産法人における予納法人税の申告納付義務が,破産法人の財産的活動の処理権限を専有することとされている破産管財人に帰属するとしたものと解される。 エ実務上の運用破産実務上も,東京地方裁判所民事第20部(破産部)が破産管財人となった者に対して管財手続の留意点等を説明するために交付する「破産管財人となられた方へ」(乙1)のうち「付破産管財人の税務の手引」において,破産管財人が法6条所定の非課税資産以外のものを売却する場合には,破産管財人に破産会社の消費税の申告義務が生ずるものとされ,課税実務上も,破産財団に属する財産の譲渡所得は,破産者本人に帰属する- 26 -ものとされるなどとしている(乙11)。 オ原告が仮定した事案の検討原告が仮定した事案,すなわち,個人事業者Aが,基準期間の課税売上高が3000万円を超える課税 破産者本人に帰属する- 26 -ものとされるなどとしている(乙11)。 オ原告が仮定した事案の検討原告が仮定した事案,すなわち,個人事業者Aが,基準期間の課税売上高が3000万円を超える課税事業者であったが,平成16年12月31日破産宣告を受け,破産管財人(破産財団)が,平成17年に,破産財団に帰属する商品等を換価して,5000万円の課税売上を上げた一方で,Aも,新たに事業を開始し,同年に5000万円の課税売上を上げたという事案について検討する。 原告が仮定した事案では,破産者は自然人であり,自由財産が存在し得るが,本件の破産者は法人であり,自由財産が存しない上(最高裁昭和62年判決参照),自由財産に属する財産の譲渡が行われておらず,事案が異なるため,原告が仮定した事案における消費税の納税義務についての解釈は,本件とは無関係である。 破産財団は破産者とは別個独立の納税主体とはなり得ず,破産管財人がその管理処分権に基づいて行った課税資産の譲渡等の効果は破産者に帰属するため,破産財団に属する課税資産の譲渡等についても破産者自身に消費税の納税義務があることは明らかであり,原告の仮定した事案のように,破産者が破産財団に属さない課税資産の譲渡等を行った場合には,当然に破産者に消費税の納税義務があることも明らかである。 原告の仮定した事案は,破産財団に属する課税資産の譲渡等と破産財団に属さない課税資産の譲渡等が同一年分にあるというものであるが,消費税法上,事業者である個人が行った課税資産の譲渡等につき,破産財団に属するものと自由財産に属するものとを区別する規定はなく,その消費税額の計算に当たって,破産財団に属する課税資産の譲渡等とそれ以外の課税資産の譲渡等が区分されることはなく,いずれも破産者が納税義務を負う。 - 27 -したがって, 区別する規定はなく,その消費税額の計算に当たって,破産財団に属する課税資産の譲渡等とそれ以外の課税資産の譲渡等が区分されることはなく,いずれも破産者が納税義務を負う。 - 27 -したがって,基準期間の課税売上高が3000万円を超えている課税事業者である個人事業者Aについては,平成17年課税期間の消費税については,破産財団に帰属する商品等の換価に係る5000万円の課税売上と,新たな事業に係る5000万円の課税売上を合計して消費税額を計算し,それについて破産者が納税義務を負うことになる。 カ以上によれば,本件課税期間に課税資産の譲渡等を行った原告は,申告納税義務を負う。 (2)争点(2)(法39条1項を適用できる要件の存否)について(原告の主張)ア「債務の全額を弁済できないこと」(法施行令59条5号)の意義法施行令59条5号は,債務者の支払不能ないし無資力の事実を貸倒れの事実の一つとして規定しており,「債務の全額を弁済できないこと」とは,債務の一部でも弁済可能であれば貸倒れとならないことを意味する。 そのため,貸倒れとなった金額を確定させる必要はあるものの,「債務の全額」との文言のみから,貸倒れの事実が認められるために実際に発生した貸倒れ損失の金額を確定させなければならないということにはならない。 貸倒れとなった金額の確定とは合理的に推認できるという意味であり,貸倒れの事実の認定に必要となる貸倒れとなるべき債権の金額は合理的な推計をもって足りるというべきであり,本件では,1930万2000円を超える貸倒れ損失が合理的に推認できれば足りる。 イ「証する書類」(法39条2項)の意義「証する書類」(法39条2項)とは,法施行令59条所定の貸倒れと認められる事実の発生を証明する書類を意味する。同条5号では,財産の状況,支払能力等から 。 イ「証する書類」(法39条2項)の意義「証する書類」(法39条2項)とは,法施行令59条所定の貸倒れと認められる事実の発生を証明する書類を意味する。同条5号では,財産の状況,支払能力等からみて,当該債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかであることとされており,売掛金等の債務者が破産宣告を受けた場合は,破産事件が終了したことの証明のほか,配当の見込みがない旨の- 28 -破産管財人作成の証明書が「証する書類」に該当する。 法が貸倒れに係る消費税額の控除を請求する事業者に,貸倒れを証する書類の保存を義務付けているのは,事業者に貸倒れの事実の立証責任を負わせる趣旨であって,特定の書類の保存が控除の要件とされるわけではないというべきである。 ウ「保存」(法39条2項)の意義証する書類は合理的な推定のための立証手段であるから,①貸倒れ損失を立証できる書類(本件では,破産宣告時に1930万2000円を超える金額の売掛金が存在し,その全額が貸倒れになっている事実が認められる書類)を,②税務職員に適時に提示できる態勢を整えておけば,「証する書類」が「保存」されているといえる。 エ本件における「証する書類」について(ア)破産者株式会社aは平成14年1月15日に自己破産の申立てをし,同月28日に破産宣告を受けたところ,破産者株式会社aの会計帳簿(総勘定元帳)上は,平成13年10月21日から破産宣告に至るまでの3か月間が未記帳であり,破産宣告時点の売掛金の会計帳簿上の正確な金額は不明であるが,1930万2000円を超える売掛金の存在を合理的に推認できる会社資料等が保存されていれば,「証する書類」としては必要十分である。 (イ)破産者株式会社aは,平成13年2月20日の時点において,破産者株式会社cに対して2億9429万2788円, に推認できる会社資料等が保存されていれば,「証する書類」としては必要十分である。 (イ)破産者株式会社aは,平成13年2月20日の時点において,破産者株式会社cに対して2億9429万2788円,破産者株式会社dに対して9643万6624円,合計3億9072万9412円の売掛金を有し,破産者株式会社cに対して4億1221万4852円の未収入金及び2億9631万2621円の仮払金を有していた。これらの債権は,本支店会計(破産者株式会社aが本店,その余の2社が支店)で処理され,破産者株式会社aの会計処理上,これらの合計額が支店勘定と- 29 -して計上され,決算時にこの金額を売掛金,未収入金,仮払金の勘定科目に分割していた。総勘定元帳によれば,同日の時点における支店勘定残高は10億9925万6885円であったのに対し,同年10月20日の時点における支店勘定残高は10億7707万5091円であり,2218万1794円減少した。平成14年1月28日の破産宣告時点における支店勘定の正確な残高は不明であるが,期首から平成13年10月20日までの8か月間で2218万1794円(期首残高の2%)減少しただけで,ほとんど変動しておらず,破産宣告までの3か月間に債権回収等によって急激に減少することはあり得ない。 また,破産者株式会社dの買掛金残高(本店勘定の貸方残)は,平成13年3月20日時点で9643万6624円であったところ,同年9月20日時点で9893万7526円,同年10月20日時点で1億0742万4381円となっており,このように増加傾向にあった破産者株式会社dの買掛金が,破産者株式会社dから破産者株式会社aへ支払がなされるなどして,破産宣告までの3か月間で急激に減少することはあり得ない。破産者株式会社dの支払資金は商品の売上金であって, 産者株式会社dの買掛金が,破産者株式会社dから破産者株式会社aへ支払がなされるなどして,破産宣告までの3か月間で急激に減少することはあり得ない。破産者株式会社dの支払資金は商品の売上金であって,それ以外の支払資金が存しないところ,売上金が毎月破産者株式会社aに振り替えられ,買掛金の支払に不足する状態であった。3か月間に,毎月平均1200万円前後の破産者株式会社dの売上金が買掛金の支払に充てられたとしても,なお6000万円を超える買掛金残高が存することになる。したがって,破産者株式会社aの破産者株式会社dに対する売掛金だけであっても,1903万2000円を超えていたことになる。 さらに,破産者株式会社c及び破産者株式会社dの破産事件において,平成13年2月20日の決算時の金額に基づいて,債権届出がなされ,平成15年2月20日の時点においては,破産者株式会社dは既に破産廃止が決定し,破産者株式会社cも同年1月22日にすべての換価手続- 30 -が終了した時点で,破産財団の保管金158万7158円に対して公租公課の財団債権額だけでも301万4836円が存在し,届出債権に対する配当が皆無であることが確定していた。したがって,破産者株式会社c及び破産者株式会社dに関する破産事件記録から,前記の売掛金の全額が同年2月20日までに回収不能(貸倒れ)となったことは明らかである。 このように,破産者株式会社aの会計帳簿等から推測すると,破産宣告時点において,少なくとも3億数千万円の売掛金残高があり,1930万2000円を超える売掛金残高があったことは明らかである。 (ウ)なお,破産者株式会社dが負担すべき人件費,通信費,光熱費等の経費は,すべて破産者株式会社aが立て替えて支払い,破産者株式会社dとの本支店勘定によって処理されていた。立替金の未収 かである。 (ウ)なお,破産者株式会社dが負担すべき人件費,通信費,光熱費等の経費は,すべて破産者株式会社aが立て替えて支払い,破産者株式会社dとの本支店勘定によって処理されていた。立替金の未収債権中には,課税売上に該当しない債権も存在するが,売掛金以外の本支店勘定処理分については,毎月20日締め日の会計処理において清算されており,締め日現在の本支店勘定中にこの種の債権が含まれていることはない。 破産者株式会社aが破産者株式会社dの経費を支払う一方,破産者株式会社dの商品売上金(現金)は,全額破産者株式会社aに送金され,本支店勘定の中で清算されている。破産者株式会社aと破産者株式会社dとの間では,立替金を毎月清算し,清算不足分を売掛金(破産者株式会社dの買掛金)として残すようにしており,破産者株式会社aの決算書上,破産者株式会社cに対する未収金は存在するものの,破産者株式会社dに対する未収金が存在しないことになり,同様に,破産者株式会社dの決算書において,破産者株式会社aに対する未収金及び未収費用は存在しない。 オ本件における証する書類の「保存」について本件において,「証する書類」とは,破産者株式会社a,破産者株式会- 31 -社c及び破産者株式会社dの各社の平成13年2月21日から同年10月20日までの各総勘定元帳及び各破産事件記録一式であり,原告は,税務職員による適法な提示要求があれば,適時にこれらを提示できる状態で保存していた。原告は,平成15年11月25日午後4時ころに実施された原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)において,可能な限り調査に協力し,税務職員の求めに応じ,破産者株式会社a,破産者株式会社c及び破産者株式会社dの破産事件の記録各1冊及び預金通帳各1冊を原処分調査担当者に提示し,それらのうち公開して いて,可能な限り調査に協力し,税務職員の求めに応じ,破産者株式会社a,破産者株式会社c及び破産者株式会社dの破産事件の記録各1冊及び預金通帳各1冊を原処分調査担当者に提示し,それらのうち公開しても差し支えないものについては,写しを提出した。 本件調査は,破産宣告後に発生した課税売上に関する調査であり,破産宣告前の総勘定元帳などは必要とされず,貸倒れの事実は調査の対象となっておらず,原処分調査担当者が総勘定元帳の提示を求めなかったため,原告は総勘定元帳を提示しなかった。 原告は,異議調査担当者の要請を受け,平成16年3月26日及び同年4月2日の2回にわたり異議申立てに係る調査(以下「本件異議調査」という。)に応じた。異議調査担当者は,原告に対し,本件調査において既に提示していた破産事件記録等を再度提示するよう求め,売掛金の貸倒れ損失の金額が判明すれば消費税から控除できる旨を説明した上で,破産宣告前の総勘定元帳の提示を求めた。原告は,これに応じ,同日から同年6月1日までの間,異議調査担当者に対して破産者株式会社aの総勘定元帳を貸し出した。異議調査担当者が,2か月間,総勘定元帳を調査すれば,破産宣告時の売掛金の金額が合理的に推計できる旨が分かったはずである。 したがって,原告は,証する書類を「保存」していたというべきである。 カ以上によれば,本件課税期間の消費税及び地方消費税については,貸倒れに係る消費税額を控除(法39条)することができ,課税標準額が零になるというべきである。 - 32 -(被告の主張)ア「債務の全額を弁済できないこと」(法施行令59条5号)の意義法39条1項は,課税売上に係る売掛金等の債権が貸倒れになったからといって,無償取引となるわけではなく,課税売上の金額に影響を及ぼすものではないものの,実質的には無償取引と 施行令59条5号)の意義法39条1項は,課税売上に係る売掛金等の債権が貸倒れになったからといって,無償取引となるわけではなく,課税売上の金額に影響を及ぼすものではないものの,実質的には無償取引と変わらず,貸倒れとなった売上についてまで消費税の納税を強いるのが酷であると考えられるため,特例として,貸倒れに係る消費税額の控除を認め,救済措置を講じたものである。 同条は,法第3章の「税額控除等」の規定の一部をなし,当該課税期間の納付すべき消費税額を計算する場合において,課税標準額に対する消費税額から控除する消費税額を計算するための規定であり,貸倒れとなった課税資産である当該債権の額が明らかでなければ,控除すべき消費税額が明らかとならず,控除対象となる金額を算出することはできない。そのため,同条を適用するためには,法施行令59条若しくは施行規則18条に規定される貸倒れの事実,貸倒れが生じた日はもとより,貸倒れとなった課税資産の譲渡等の税込価額を含め,当該規定を適用して控除をする消費税額の合計金額が明らかであることが必要である。 もちろん,控除対象となる税額算出の基礎となる課税資産の譲渡等に係る売掛金等の額は,必ずしも真の金額と一致しなければならないものではないが,その場合であっても,当該課税資産の譲渡等に係る売掛金等の額は確定的なものでなければならない。そして,貸倒れの事実についての主張は,納税者が,債権の発生原因,内容,帰属及び回収不能の事実等について,積極的に具体的な内容及び証拠を示して行うべきであると解される。 イ「証する書類」(法39条2項)の意義法39条2項は,税務職員が「証する書類」を検査することにより,同項所定の貸倒れの事実を調査することが可能であるときに限り,同条1項- 33 -を適用することができることを明らかにした 項)の意義法39条2項は,税務職員が「証する書類」を検査することにより,同項所定の貸倒れの事実を調査することが可能であるときに限り,同条1項- 33 -を適用することができることを明らかにしたものと解される。このような趣旨からすれば,「証する書類」とは,税務職員が当該「証する書類」を検査することにより,法施行令所定の貸倒れの事実を調査することが可能となるような書類でなければならない。 そうすると,法39条2項所定の事実を「証する書類」は,債権の回収をすることができなくなったことについて,その原因となった事実はもとより,同条1項に基づいた控除を行うために必要な事項が記載されている書類を意味し,本件の場合,消費税法施行令59条5号所定の「債権に係る債務者の財産の状況,支払能力等からみて当該債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかであること」を「証する書類」であると解される。 同号は「債務の全額」と明確に規定しているから,「証する書類」(法39条2項)は「債務の全額」(法施行令59条5号)を明らかにし,その全額を「弁済できないことが明らかであること」を証する書類でなければならず,債務の一部について「弁済できないことが明らかであること」を「証する書類」を保存していたとしても,同号の要件はみたされない。 ウ「保存」(法39条2項)の意義貸倒れに係る消費税額の控除の適用を受けるために貸倒れの事実及びその内容等を証する書類を「保存」(法39条2項)していなければならないのは,当該貸倒れが生じた課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額を控除する計算の際に,課税資産の譲渡等に係る売掛金等の債権が当該課税期間において貸倒れとなったこと及び当該貸倒れとなった債権中の課税資産の譲渡等に係る売掛金等の額を明らかにする必要があるためであるから,貸倒れ の際に,課税資産の譲渡等に係る売掛金等の債権が当該課税期間において貸倒れとなったこと及び当該貸倒れとなった債権中の課税資産の譲渡等に係る売掛金等の額を明らかにする必要があるためであるから,貸倒れに係る消費税額の控除の適用を受けるためには,当該売掛金等が貸倒れとなった事実を証する資料及びその税込価額を明らかにする資料を保存しておく必要があり,税務調査に当たっては,課税庁の調査担当者の求めに応じて提示する必要がある。 - 34 -よって,「証する書類」(法39条2項)は,物理的に存在するだけでは足りず,法62条に基づく検査の際,納税者において税務職員による適法な提示要求があれば適時に提示できるように態勢を整えて保存しておく必要があり,そのような状態にない場合には,法39条1項に「規定する債権につき同項に規定する事実が生じたことを証する書類を保存しない場合」(法39条2項)に該当すると解すべきである。すなわち,税法上の「保存」が必要な書類は,納税義務の確定の段階までには(申告により確定する場合には申告時,処分により確定する場合には処分時まで),それにより証明しようとする事実が認定できるような状態で「保存」されていなければならず,事後的に収集,作成,整理検討しなければかかる状態とはならないような場合には,「保存」があったとはいえないというべきである。 「事業者が財務省令で定めるところにより同項に規定する債権につき同項に規定する事実が生じたことを証する書類を保存しない場合」(法39条2項)には同条1項が適用されないことは明らかであり,同項が定める貸倒れに係る消費税額の控除は,その限度で制限を受けるというべきであり,そのような場合に当たるにもかかわらず,他の資料で課税資産の譲渡等に係る売掛金等の貸倒れ額を認定したり,推計したりすることは,同 貸倒れに係る消費税額の控除は,その限度で制限を受けるというべきであり,そのような場合に当たるにもかかわらず,他の資料で課税資産の譲渡等に係る売掛金等の貸倒れ額を認定したり,推計したりすることは,同条2項に反して許されないというべきである。 そして,税務職員から税務調査において適法に帳簿等の提示を求められたにもかかわらず,納税者がこれを拒み続けたような場合には,税務調査が行われた時点で「証する書類」を保管していたとしても,また,訴訟段階において帳簿書類の保管を立証したとしても,同項にいう「証する書類を保存しない場合」に当たると解される。 エ本件における「証する書類」の検討(ア)本件では,法39条2項所定の事実を「証する書類」は,税務職員- 35 -が検査することにより法施行令59条5号所定の貸倒れの事実を調査できる書類でなければならない。にもかかわらず,原告が主張する書類は,本件課税期間に係るものではないから,税務職員が当該総勘定元帳等を検査することによって本件課税期間における破産者株式会社aの売掛金債権の存否又はその金額を調査することは不可能であり,「債務の全額」(法施行令59条5号)は不明であり,その債務全額を「弁済できないことが明らか」ともいえない。 具体的には,破産者株式会社aの事業年度は,毎年2月21日から翌年の2月20日までの1年間であるところ,原告が主張する総勘定元帳は平成13年2月21日から同年10月20日までの8か月分しかなく,帳簿等の整理が不十分であり,公正妥当な会計処理の基準に従って整然かつ明瞭に記載されているとはいえない。破産者株式会社aにおいて同月21日以降の会計資料が保存されておらず,破産者株式会社c及び破産者株式会社dにおいても,帳簿の整理が不十分であり,破産宣告を受けた平成14年1月28日時点の いえない。破産者株式会社aにおいて同月21日以降の会計資料が保存されておらず,破産者株式会社c及び破産者株式会社dにおいても,帳簿の整理が不十分であり,破産宣告を受けた平成14年1月28日時点の買掛金等の実額は不明であり,破産者株式会社aの破産者株式会社c及び破産者株式会社dに対する債権の発生日,債権の具体的内容,金額等が明らかでない。 しかも,そもそも,原告の破産者株式会社cに対する債権については,本件課税期間中において,同破産者の破産手続が終了していなかったのであるから,同債権について配当を受ける可能性はないとはいえず,法施行令59条5号所定の「債務の全額を弁済できないことが明らか」に該当し得ないものである。 (イ)また,破産者株式会社a等の総勘定元帳の売掛金(買掛金)勘定に,消費税の課税対象外である取引に係る債権が売掛金として混入されており,原告が主張する書類は,本件課税期間における破産者株式会社aの債務者の「債務の全額」を特定し,確定させることができるものではな- 36 -く,当該「債務の全額」につき,法施行令59条5号所定の貸倒れの事実が明らかとなる債務を特定させ,その金額を確定させることができない。 具体的には,破産者株式会社a等の福井地方裁判所における破産事件の記録によれば,破産者株式会社dの帳簿上の平成13年2月20日現在の買掛金中には,課税仕入れとならない取引に係る債権が計上されており,破産者株式会社aにはそれと同額の売掛金が計上されているため,貸倒れ損失の基となる破産者株式会社aの売掛金勘定には,消費税の課税対象外,すなわち課税売上に該当しない売掛金が混入されていることが認められる。そうすると,本件課税期間における課税資産の譲渡等に係る税込価額は不明であり,確定した金額の算出は不可能である。 なお,原告の主 ,すなわち課税売上に該当しない売掛金が混入されていることが認められる。そうすると,本件課税期間における課税資産の譲渡等に係る税込価額は不明であり,確定した金額の算出は不可能である。 なお,原告の主張する破産者株式会社dに対する立替金の「清算」が,何の勘定科目と何の勘定科目をどの範囲の金額でどのように清算したものであるかは明らかではなく,また,「清算不足分」が,何の勘定科目の債務がいくらの金額において残存することを意味するのかも不明であり,さらに,なぜ締日現在の破産者株式会社aの本支店勘定中に売掛金以外の債権が含まれていないといえるのかも全く不明であって,原告は,法的に具体性のない漠たる主張をしているにすぎない。しかも,原告は,そのような立替金の清算が実際に行われたことを裏付ける根拠を何ら示していない。仮に,破産者株式会社aと破産者株式会社dとの間で,毎月20日に清算を行っていた旨の原告の主張を前提とした場合でも,その際に,破産者株式会社dが破産者株式会社aからの商品仕入以外の債務,すなわち,破産者株式会社aに対する立替金等の債務を,破産者株式会社aに対する買掛金債務に優先して弁済し,締日現在においてのみ,破産者株式会社aに対する買掛金債務だけを本支店勘定中に残さなければならない理由はなく,むしろ,資金繰り等の関係で適宜選択された一- 37 -部の債権を弁済したにすぎないとみられるものである。 (ウ)破産管財人は,債務の弁済のため,破産法上配当表を作成することとされているが(旧破産法258条),破産管財人は最終配当までのすべてを独自に行えるわけではなく,配当表を閲覧に供するため裁判所に提出し(同法259条),公告することとされ(同法260条),債権者が配当表に対して裁判所に異議を申し立てることができるとされており(同法264条) るわけではなく,配当表を閲覧に供するため裁判所に提出し(同法259条),公告することとされ(同法260条),債権者が配当表に対して裁判所に異議を申し立てることができるとされており(同法264条),破産管財人が最後の配当を為す場合は裁判所の許可を要する(同法272条)。すなわち,破産処理中の破産管財人が債権者に対して「配当の見込みがない旨の証明」を行っても,破産法上の根拠規定があるわけではなく,裁判所が上記手続等において公証しているものではない。仮に,原告主張の「配当の見込みがない旨の破産管財人作成の証明書」にある程度の信用性を認め得るとしても,それは,あくまで,配当の「見込みがない」ことを示すにすぎず,法施行令59条5号所定の,債務の全額を弁済できないことが「明らかである」ことまでを証明し得るものではない。そうすると,原告主張の「配当の見込みがない旨の破産管財人作成の証明書」は,単なる参考資料にすぎず,法施行令59条5号に係る法39条2項所定の「証する書類」に該当するということはできない。 (エ)したがって,本件では,仮に本件課税期間に破産者株式会社aの破産者株式会社c及び破産者株式会社dに対する売掛金が貸倒れになっていたとしても,貸倒れに係る消費税額を確認できないから,貸倒れの事実が証明されているとはいえず,原告が主張する書類は,法39条2項,法施行令59条5号所定の「当該債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかであること」を「証する書類」であるとはいえない。 オ本件における証する書類の「保存」の検討(ア)本件課税期間は平成14年2月21日から平成15年2月20日ま- 38 -でであるから,原告が書類を保存しなければならない期間は,本件課税期間の末日である同日の翌日から2月を経過した同年4月21日から7年間,具体的 4年2月21日から平成15年2月20日ま- 38 -でであるから,原告が書類を保存しなければならない期間は,本件課税期間の末日である同日の翌日から2月を経過した同年4月21日から7年間,具体的は平成22年4月21日までである。 本件において,処分行政庁が,本件調査以前から自主的な期限後申告のしょうよう(慫慂)を行ったにもかかわらず,原告は,破産者株式会社aの破産宣告後の課税期間分について,申告義務が存しない旨主張し,消費税の申告書を提出しなかった。 本件調査において,税務職員が原告に対して貸倒れの事実を証する書類の提示を求めなかったのは,原告が申告義務の有無の主張に終始し,貸倒れの事実及び消費税額の控除について主張しなかったためである。 原処分調査担当者は,消費税の税務調査のため,破産者株式会社a等に係る消費税課税売上高が確認できる帳簿等の提示を実際に求めたが,その求めに対して原告が提示した資料は,「破産手続きに関する証票綴り」と題するファイル1冊,破産者株式会社a,破産者株式会社c及び破産者株式会社dの各普通預金通帳3冊のみであった。原告は,平成13年2月21日から同年10月20日までの総勘定元帳も含め,破産者株式会社a等の帳簿書類を提示せず,調査の時間を約1時間に限定した。 このように,原告は,原処分調査担当者から適法に帳簿の提示を求められたにもかかわらず,原告が「証する書類」であると主張する総勘定元帳等はもとより,その他の帳簿書類も提示せず,消費税の納税義務がないので納税しない旨を主張したことから,本件は,法39条1項に規定する債権について同項に規定する事実が生じたことを証する書類を「保存しない場合」に該当する。 (イ)また,本件異議調査において,税務職員が,原告に対し,破産者株式会社c及び破産者株式会社dに対する貸倒れの有 ついて同項に規定する事実が生じたことを証する書類を「保存しない場合」に該当する。 (イ)また,本件異議調査において,税務職員が,原告に対し,破産者株式会社c及び破産者株式会社dに対する貸倒れの有無,内容等について,資料の提示及び説明を求めるとともに,資料等の提示がなければ貸倒れ- 39 -に係る消費税額の控除が認められない旨を説明したにもかかわらず,原告は,具体的な内容の説明も資料の提示もせず,貸倒れとなった金額が不明である旨を回答するにとどまった。このことは,原告が,貸倒れに係る事実を証する書類について,仮に適切な時期に提示を求められたとしても提示できるような状態に整えていなかったことを意味する。加えて,破産者株式会社c及び破産者株式会社dにおいても帳簿の整理が不十分であり,破産宣告を受けた平成14年1月28日時点の買掛金等の実額が不明であったから,貸倒れの事実を証する書類が提示に耐え得るような状態で整えられていたとは考え難い。 (ウ)このように,原告は,貸倒れに係る消費税額の控除の前提となる消費税の申告納税義務がないとの態度を確定的に示し続けるとともに,原処分担当者から適法に帳簿等の提示を求められたにもかかわらず,何らこれに協力しようとせず,これを拒み続けた。また,原告は,本件処分等の時点においても,法39条2項所定の事実を証する書類が存在するとの認識を有していなかったと認められる。原告は,その行動面,認識面のいずれからみても,税務職員による検査に当たって,同項所定の事実を証する書類を適時に提示することが可能なように態勢を整えていたとはいえず,本件は,同項所定の事実を証する書類を「保存しない場合」に該当する。 カ原告は,法45条1項に基づいて,本件課税期間に係る確定申告をしなければならないところ,貸倒れに係る控除につい たとはいえず,本件は,同項所定の事実を証する書類を「保存しない場合」に該当する。 カ原告は,法45条1項に基づいて,本件課税期間に係る確定申告をしなければならないところ,貸倒れに係る控除については,「証する書類」及び「保存」の要件を欠き,法39条1項の適用はない。 したがって,仮に本件課税期間において破産者株式会社c及び破産者株式会社dに対する売掛金等が貸倒れになったとしても,原告が税額控除を受けることはできない。 原告の納付すべき金額は,消費税80万2300円及び地方消費税20- 40 -万0500円の合計100万2800円となるところ,この金額は,本件決定処分において納付すべきとされた消費税77万2000円と地方消費税19万3000円を合計した96万5000円を上回る。したがって,本件決定処分は適法である。 無申告加算税の課税要件は,期限内申告書の提出がない場合に期限後申告書の提出若しくは決定があったとき,又は,期限後申告書の提出若しくは決定があった後に修正申告若しくは更正があった場合に,その申告又は決定等により納付すべき税額(増差税額)があることとされる。本件において,原告が本件課税期間に係る消費税等について納付すべき税額が100万2800円であるところ,無申告加算税は15万円である。そして,この金額は,本件賦課決定処分により,原告が納付すべきとされた無申告加算税額14万4000円を上回る。原告が本件課税期間の消費税等の確定申告書を提出しなかったことについて,国税通則法66条1項に規定する正当な理由があるとも認められないから,同項に基づいて計算された本件賦課決定処分は適法である。 第3争点に対する判断 争点(1)〔破産管財人の管理処分権に専属する破産財団は,破産法人の基準期間(法2条14号)における課税売上高を引き継 に基づいて計算された本件賦課決定処分は適法である。 第3争点に対する判断 争点(1)〔破産管財人の管理処分権に専属する破産財団は,破産法人の基準期間(法2条14号)における課税売上高を引き継がない別の法的主体であるといえるか〕について(1)各当事者の理論構成の検討と問題の所在ア本件においては,破産手続の内部的法律関係ではなく破産財団に属する財産の換価に係る課税関係につき問題となっているところ,この問題については破産法のみならず租税法と破産手続とをいかに調和させるべきかという見地から検討すべきである。 イ(ア)これを踏まえた上で破産財団の法的性質ないし破産管財人の法律上の地位に係る当事者双方の主張を比較検討すると,次のとおりとなる。 - 41 -すなわち,いずれの主張を前提としても,破産管財人が破産財団に属する財産の換価を行い当該換価が消費税法の課税要件をみたす場合,その消費税は「破産財団ニ関シテ生シタルモノ」にあたり,財団債権(旧破産法47条2号但書)となるので,結論として,破産管財人が,その申告納税義務を負うことになる(旧破産法49条)。(なお,消費税は物税であるところ,一般論として破産財団の換価に係る消費税が財団債権に当たること自体は,講学上及び当事者間で格別の争いがないものと思料する。)。 ただし,原告の主張によれば,破産財団は,破産者とは別の法人格を有する法的主体となるので,破産管財人が破産財団に属する財産を換価した場合,当該破産財団自体が,消費税法上の「事業者」(法5条1項。 以下「事業者」とは,同法の事業者を指すものとする。)として本来的に納税義務を負うこととなる。 これに対し被告の主張によれば,破産財団は,破産者とは別の法的主体とはならずあくまで破産者自身が法的主体となるので,当該破産者自身が消費税法上の とする。)として本来的に納税義務を負うこととなる。 これに対し被告の主張によれば,破産財団は,破産者とは別の法的主体とはならずあくまで破産者自身が法的主体となるので,当該破産者自身が消費税法上の「事業者」となり,当該破産者が,本来的に納税義務を負うが,破産管財人も,破産財団の管理処分の一環として,消費税の申告納税義務を負うとする(破産財団の換価に係る消費税は財団債権に当たるから,破産管財人が申告納税義務を負うのは当然のことであるが,破産者に本来的な納税義務があるとすると,被告主張のような理論構成をしなければならないものである。)。 (イ)ところで,消費税法によれば,課税期間(法人については事業年度。)に係る基準期間(法人については当該事業年度の前々年度。法2条14号参照)における課税売上高が3000万円以下の「事業者」は,納税義務が免除されることとなっている(法9条1項)。 このことからすれば,新規に設立された法人はその設立後二年間は基- 42 -準期間がないことになるので,その期間中に行った課税資産の譲渡等につき上記法人は納税義務がなく免税事業者となる。 例えば,個人事業者が法人成りして新法人が個人事業を引き継いだ場合には,個人が従前の基準期間を引き継ぎ,新法人は基準期間がない事業者とされ,設立事業年度及び翌事業年度は免税事業者として扱われることとなる(なお,この旨の原告の主張に対し,被告は,格別争う姿勢を見せていない。)。 これらを踏まえて上記原告の主張を前提として本件について検討すると,破産宣告により,破産者株式会社aと本件破産財団とは別の法的主体となるので,原告が本件破産財団の代表として行った本件破産財団に属する財産の換価は本件破産財団自身の行為となり,本件破産財団は破産者株式会社aに係る破産宣告(旧破産法6条1項参照) とは別の法的主体となるので,原告が本件破産財団の代表として行った本件破産財団に属する財産の換価は本件破産財団自身の行為となり,本件破産財団は破産者株式会社aに係る破産宣告(旧破産法6条1項参照)から二年間は基準期間がないことになり,本件課税期間に係る課税資産の譲渡につき,「事業者」たる本件破産財団は納税義務を負わないことになるので,その破産管財人たる原告もまた申告納税義務を負わないことになる。 他方,上記被告の主張を前提として本件について検討すると,本件破産財団自体は何ら法的主体とはならず,破産法人である破産者株式会社a自身が「事業者」となるところ,本件課税期間に係る基準期間である平成13年2月期における破産者株式会社aの課税売上高は3000万円を超えており(第2の1(3)),消費税法9条1項の適用を受けることはできないので,破産法人たる破産者株式会社aは,納税義務の免除を受けることができず,その破産管財人たる原告は,その申告納税義務を負うこととなる。 ウ以上のとおり,各当事者の主張を,破産法のみならず消費税法の見地をも併せて検討すると,本件では,破産財団に属する財産の換価について,破産者又は破産財団のいずれが「事業者」として本来的な納税義務を負う- 43 -べきかが問題であるものといえる。 (2)破産財団は「事業者」といえるかア破産者又は破産財団のいずれが「事業者」であるのかについては,上記のとおり破産財団の法的性質ないし破産管財人の法的地位についていかに解すべきかが関連して問題となる。 原告は,この問題につき,破産財団自体に法人格があり破産管財人はその代表者であると主張するところ,この見解は,破産管財人の法律上の地位という視点からみると講学上にいう破産財団代表説を指すものと解される。 破産財団代表説は,原告の主張すると 格があり破産管財人はその代表者であると主張するところ,この見解は,破産管財人の法律上の地位という視点からみると講学上にいう破産財団代表説を指すものと解される。 破産財団代表説は,原告の主張するとおり各種の法律関係を矛盾なく説明することができるという利点を持つものの,他方で被告の主張するとおり,少なくとも破産実体法との関係においては,破産財団に法人格を認める明示の規定は存在しないので,破産財団に法主体性を認めることができるか疑問があるところであり(民法33条参照),学説上も従来の通説という立場にとどまっている。 ところで法は,「事業者」とは個人事業者及び「法人」をいうと規定する一方で(法2条4号),「人格のない財団」(法2条7号。法人でない財団で代表者又は管理人の定めがあるものをいう。以下「人格のない財団」とは同号の規定するものを指すものとする。)を「法人」とみなして消費税法の規定を適用するとしている(法3条。ただし法12条の2及び別表第三を除く)。 このことからすれば,破産手続の内部関係において破産財団に法人格を認めることは理論上困難な課題が残されているものの,少なくとも消費税法との関係においては,破産財団が「人格のない財団」であるとして「事業者」に当たるものと解する余地があるというべきである。 そこで,以下,破産財団が「人格のない財団」か否か検討する。 - 44 -イ「人格のない財団」という概念自体は,民事実体法上にいう権利能力なき財団を借用したものと解されるところ,税法における借用概念は,法的安定性の要請から,原則として本来の法分野におけるものと同意義に解すべきである(最高裁昭和35年10月7日第二小法廷判決,民集第14巻12号2420頁。最高裁昭和36年10月27日第二小法廷判決,民集第15巻9号2357頁。福岡高裁平成2 おけるものと同意義に解すべきである(最高裁昭和35年10月7日第二小法廷判決,民集第14巻12号2420頁。最高裁昭和36年10月27日第二小法廷判決,民集第15巻9号2357頁。福岡高裁平成2年7月18日判決,判例時報1395号34頁参照。)。 そして,消費税法が,「人格のない財団」を法人として扱う趣旨は,「人格のない財団」も実質的に法人と異ならない活動をしていることに鑑み,これを法人として扱うことが実体に合致するのみでなく,公平に税負担を配分できることにある。 このことからすれば,民事実体法と消費税法の概念を区別して論ずる必要はないので,原則どおり,民事実体法のものと同義に解釈すべきである。 したがって,破産財団が,「人格のない財団」か否かは,最高裁昭和44年6月26日第一小法廷判決(民集第23巻7号1175頁)及び最高裁昭和44年11月4日第三小法廷判決(民集第23巻11号1951頁)に照らして判断すべきである。 ウ(ア)債務者に対し,破産宣告がなされると,破産宣告時の総財産について破産者の管理処分権が剥奪され,その総財産が清算目的のために破産管財人の管理下に置かれ,破産債権者の共同の満足に充てるために換価されることとなり,この財産の集合体を破産財団と呼ぶ。 この破産財団は,講学上,法定財団,現有財団及び配当財団とに区別されるところ,破産管財人は,否認権の行使又は第三者による取戻権の行使への対応等により,適宜,現有財団を増殖又は縮小しつつ,現有財団を法定財団に一致させ,これを換価し破産債権者への配当原資たる配当財団を構成することとなる。 - 45 -(イ)ここで消費税の課税対象となりうるのは,現有財団としての破産財団に属する財産の換価行為であると考えられるところ,現有財団は上記のとおりその構成内容が流動的ではあるものの,現 。 - 45 -(イ)ここで消費税の課税対象となりうるのは,現有財団としての破産財団に属する財産の換価行為であると考えられるところ,現有財団は上記のとおりその構成内容が流動的ではあるものの,現実に破産管財人の管理下に置かれているのであるからその範囲は明確であり,破産者の管理処分権が及ばない破産者から独立した財産の集合体であるといえる。 また,破産財団の管理処分権は破産管財人に存するのであるから,その管理体制は破産者を離れて確立されているといえる。 さらに,破産管財人は,破産債権者の公平な利益を追求することを最大の使命としつつ,破産者の再生や公益的な見地に立って活動することをも期待されているのであり,破産財団は,このような破産管財人に管理処分権を掌握されているのであるから,破産財団は,破産者自身の利害得失を超えた複合的な目的を持って活動する社会的実体をそなえたものといえる。 (ウ)したがって破産財団の実体を,前掲最高裁昭和44年6月2日第一小法廷判決及び最高裁昭和44年11月4日第三小法廷判決に照らして検討すると,破産財団は,権利能力なき財団に当たるといえるので,消費税法上もまた「人格のない財団」に当たるというべきである。 エまた,「事業者」とは,資産の譲渡等に係る対価を実質的に享受しているものとされているところ,現有財団としての破産財団に属する財産は,破産者の関与なく破産管財人により換価されて最終的には配当財団を構成することとなり,その多くは破産債権者に配当される一方,破産者は配当により債務が減少するとはいえ,破産者に残余財産の交付がなされることは極めて少ないという実情からすると,破産者自身を「事業者」と解するのは相当でなく,破産財団を「事業者」とみるのが相当である。 オここで,当裁判所のような解釈を前提とすると,破産管財人の されることは極めて少ないという実情からすると,破産者自身を「事業者」と解するのは相当でなく,破産財団を「事業者」とみるのが相当である。 オここで,当裁判所のような解釈を前提とすると,破産管財人の行う破産財団に属する財産の換価に係る消費税は,常に破産宣告から二年間は免税- 46 -されることとなり妥当でないとの批判が考えられる。 しかしながら,上記のとおり,個人事業者の法人成りの場合,当該法人は,設立当初の二年間は免税事業者として扱われるところ,個人事業者が法人成りした場合も自然人又は法人が破産した場合も,いずれも後続の法人又は破産財団は,個人事業者又は自然人若しくは法人の財産を引き継いで社会活動を営んでいるという点で同様であることからすれば,自然人又は法人の破産の場合を個人事業者の法人成りの場合と同様に扱っても均衡を害することはない。 また,免税事業者制度は,小規模零細事業者の事務負担を軽減するためのものであり,破産財団に同制度が適用されることは想定されていないものと思えるので,破産財団に,この恩恵を受けさせるべきか否かが問題になりうる。 確かに法によれば,新規の事業者であっても,資本金の額又は出資の金額が1000万円以上の新設法人は,設立当初の二年間においても納税義務を免除されないとされているところ(法12条の2),このような新規事業者には上記免税制度の恩恵を受けさせない趣旨であると思われる。 しかしながら,破産者はその資本金の額又は出資の金額がいかに多額であろうとも,債務超過に陥っているからこそ破産宣告を受けているのであるから,資本金の額又は出資の金額が1000万円以上の新設法人と同様に論ずることは相当でない。 また,破産財団は,法3条により「人格のない財団」として,納税義務を負うこととなるが,「人格のない財団」には法12条の の額又は出資の金額が1000万円以上の新設法人と同様に論ずることは相当でない。 また,破産財団は,法3条により「人格のない財団」として,納税義務を負うこととなるが,「人格のない財団」には法12条の2の適用はないのであるから,文理上も,法12条の2の趣旨との矛盾抵触は生じない。 したがって,破産管財人の行う破産財団に属する財産の換価に係る消費税は,常に破産宣告から二年間は免税されることとなるので妥当でないとの批判は当たらない。 - 47 -(3)被告の主張についてア最高裁判例との関係について(ア)被告は,租税債権が財団債権に当たるか否かに係る最高裁判例を引用して破産財団の法的主体性ないし納税主体性を否定する旨の主張をするが,そもそも納税義務の主体が誰であるかと,ある租税債権が財団債権に当たるか否かとは別個の問題であり,これらは必ずしも論理的に結びつく関係にない。 以下,被告引用に係る最高裁判例等を検討する。 (イ)被告は,最高裁平成4年判決及び最高裁昭和62年判決をそれぞれ引用するところ,これらの判決は,予納法人税につき,本来の清算所得は破産手続終了後の破産法人について生ずるものであるが,これを破産手続中の破産法人から徴収することができることを前提として,この予納申告等の義務を破産管財人が負うと判断したものである。 同各最高裁判決は,予納法人税が,財団債権に当たる場合はもちろん,そうでないとしても,破産法人が納税義務を負う場合には破産管財人は管理処分権の内容として破産法人の申告納税義務を負うべきであるという趣旨の判断をしたことに第一次的な意義がある。 そして,同各最高裁判決が破産管財人の申告納税義務を是認した予納法人税は,清算が結了して所得(株主に分配すべき財産)が存する場合の例ではなく,土地重課税や地方税均等割額のように,最 的な意義がある。 そして,同各最高裁判決が破産管財人の申告納税義務を是認した予納法人税は,清算が結了して所得(株主に分配すべき財産)が存する場合の例ではなく,土地重課税や地方税均等割額のように,最終的な清算所得の有無に関わりなく納め切になるものについて,破産管財人に予納申告等の義務を是認したにすぎないものであって,破産手続中の破産財団と破産終結後の破産法人との人格の同一性を前提としなければ導けない結論ではない。 また破産に係る清算所得(すなわち破産手続終了後の残余財産)については,破産手続が終了し破産管財人の管理処分権が失われた後,又は,- 48 -破産財団から財産が放棄され破産者に財産の管理処分権が復活したとき,初めて破産者がこれを得るという性質のものであり,破産財団が存続するか,財産がこれに含まれている限りは生じるはずのない所得であるので,破産財団自身がこの納税主体となることは考えられないことから,将来,残余財産の帰属主体となるべき破産法人を納税主体としたものと解しうるのであり,破産財団自体の納税主体性を一般的に否定したものとはいえない。 (ウ)被告は,福岡高裁昭和38年9月30日判決(行裁集14巻9号1513頁)が,破産財団を法人格とする実体法上の根拠(所得税法1条6項はその根拠とならない)はないとして破産財団は法人である旨の主張を退けており,その上告審である最高裁昭和43年判決も,同福岡高裁判決を維持していると主張する。 しかしながら,前掲最高裁昭和43年判決は,所得税の課税関係においては,別段の定めのない限り,その所得源に応じて課税することはないということを前提に,納税者が破産宣告を受け,その総所得金額が破産財団に属する財産によるものと自由財産によるものとに基づいて算出されるような場合であっても,その課税の対象は,こ て課税することはないということを前提に,納税者が破産宣告を受け,その総所得金額が破産財団に属する財産によるものと自由財産によるものとに基づいて算出されるような場合であっても,その課税の対象は,これらとは別個の破産者個人について存する総所得金額という抽象的な金額であるとした上で,破産財団に属する財産の譲渡所得に対応する所得税額を区分して,その区分された所得税を財団債権として徴収することができるという主張は採用できないと判断した上で,原審の判断中,所得税債権は財団債権に該当しないと判断した点を正当としているのである。 すなわち,前掲最高裁昭和43年判決は,破産財団に属する財産を換価した結果生じた譲渡所得につき,所得税は人的要素を重視した課税であるので財団債権にならないと判断したものであり,原審の判断中,破産財団が法人か否かの点につき最高裁としての判断を明示したものでは- 49 -ないし,少なくとも,同判決は,破産財団が「人格のない財団」として納税義務を負うか否かについての判断を明示していない。 また,人税である所得税と物税である消費税とは,おのずとその法的性質が異なるのであるから,所得税における納税主体の議論は,必ずしも破産財団の法主体性の議論とは結びつかないので,所得税の納税主体を破産者個人とする同最高裁昭和43年判決と当裁判所の判断とが矛盾抵触するものとはいえない。 イ実務の運用との関係(ア)被告は,破産実務上も,破産管財人が法6条所定の非課税資産以外のものを売却する場合には,破産管財人に破産会社の消費税の申告義務が生ずるものとされ(乙1),課税実務上も,破産財団に属する財産の譲渡所得は,破産者本人に帰属するものとされている(乙11)などと縷々主張する。 しかし,本件ではそのような実務の在り方が問われているのであるから,実 (乙1),課税実務上も,破産財団に属する財産の譲渡所得は,破産者本人に帰属するものとされている(乙11)などと縷々主張する。 しかし,本件ではそのような実務の在り方が問われているのであるから,実務の実態を正当化の根拠とすることはできない。 また,その実務の在り方の前提となる論拠自体も,次のとおり当裁判所の判断を左右することはない。 (イ)被告は,乙第1号証を引用して,裁判所としても,法45条4項に清算中の法人につき消費税を課す趣旨の規定があり,破産の場合であっても,法人税法第二編三章一節の規定の適用があることから,破産会社に消費税の納税義務があり,この場合の消費税は財団債権になると解した上で破産手続を運用しているのであるから,本件においても破産法人が本来的な納税主体となるというべきであると主張する。 しかしながら,乙第1号証は,破産会社が「事業として」の反復継続性を有しないことを理由に納税義務は生じないものとする見解に対する東京地方裁判所民事第20部の見解を示したものにすぎない。 - 50 -したがって,一般論として破産会社が事業者であるとしても,それだけでは破産財団が本来的な納税義務者であることを否定することはできないし,乙第1号証の記載内容からも,破産財団自体が納税主体となる場合があることをことさら否定する趣旨であるとは読みとれない。 なお,被告は,法45条4項が「清算中の法人」につき消費税を課す旨の規定があることなどから,消費税の納税主体は破産財団ではなく,破産法人であると主張する。 しかし,清算中の法人が破産法人である場合の納税義務者を,破産法人とするか破産財団とするかについて,同条項が明示的に定めているものではないし,旧破産法47条は破産宣告後に破産財団に関して生ずる債務を財団債権としているものであり(破産宣告前の公租公課 を,破産法人とするか破産財団とするかについて,同条項が明示的に定めているものではないし,旧破産法47条は破産宣告後に破産財団に関して生ずる債務を財団債権としているものであり(破産宣告前の公租公課は例外である。),破産財団の管理処分権限を有する破産管財人が破産者の代理人であることを当然の前提としているものではない。とりわけ同条9号の破産者に対する扶助料は,破産管財人が破産者を代理して負担することと明らかに矛盾する。 (ウ)また,被告は,乙第9号証を引用し,大阪地方裁判所及びf弁護士会による破産管財手続の運用の検討結果からしても,破産財団に属する財産の換価処分については破産者が申告納税義務を負うと主張するが,同検討結果も,破産管財人の換価行為の事業性を肯定するにとどまり,破産財団が本来的な納税義務を負うかにつき具体的に検討したものではないので,これは破産財団の納税義務を否定する論拠たり得ない。 (4)小括以上によれば,破産財団は,破産者(破産法人)とは別個の社会的実体を有する「人格のない財団」であるので,破産財団に属する財産の換価については,破産財団自身が「事業者」として本来的な納税義務者となり,この限りにおいて破産財団は,破産法人の基準期間における課税売上高を引き継が- 51 -ない別の法的主体といえる。 したがって,本件破産財団は,破産者株式会社aとは別の新規の「事業者」であり,本件破産財団には本件課税期間に係る基準期間がないのであるから,本件破産財団は,本件課税期間中の譲渡等につき納税義務を負うことはなく,破産管財人である原告もまた申告納税義務を負うことはない。 そうすると,争点(2)について判断するまでもなく,本件処分等は違法であって取り消すべきであるから,原告の請求を認容することとし,訴訟費用の負担について行政事件 た申告納税義務を負うことはない。 そうすると,争点(2)について判断するまでもなく,本件処分等は違法であって取り消すべきであるから,原告の請求を認容することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 福井地方裁判所民事第2部裁判長裁判官小林克美裁判官池上尚子裁判官中嶋万紀子

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