平成23年10月13日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成23年(行ケ)第10058号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成23年9月29日判決原告株式会社マルモ印刷同訴訟代理人弁理士須藤阿佐子須藤晃伸佐藤勉植野浩志岩瀬眞紀子被告特許庁長官同指定代理人千馬隆之田口傑新海岳板谷玲子 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2010-9789号事件について平成23年1月7日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,特許請求の範囲の記載を下記2とする本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が,本件補正を却下した上,同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その 理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 1 特許庁における手続の経緯(1) 原告は,平成16年4月21日,発明の名称を「封筒および封筒の製造方法」とする特許を出願したが(甲6。特願2004-125369(特開2005-306431),請求項の数は7),平成22年2月2日付けで拒絶査定を受けたので(甲8),同年5月7日,これに対する不服の審判を請求する(甲9)と同時に,手続補正を行った 25369(特開2005-306431),請求項の数は7),平成22年2月2日付けで拒絶査定を受けたので(甲8),同年5月7日,これに対する不服の審判を請求する(甲9)と同時に,手続補正を行った(甲10。以下,同日付け手続補正書による補正を「本件補正」という。)。 (2) 特許庁は,前記請求を不服2010-9789号事件として審理し,平成23年1月7日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,その謄本は,同月20日,原告に送達された。 2 本件補正前後の特許請求の範囲の記載本件審決が判断の対象とした特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである。以下,本件補正前の請求項1に記載された発明を「本願発明」,本件補正後の請求項1に記載された発明を「本件補正発明」という(下線部は,補正箇所を示す。)。また,本願発明に係る明細書(甲6)を「本願明細書」といい,本件補正発明に係る明細書(甲6,10)を「本件補正明細書」という。 (1) 本願発明表裏一対のシートを有し,該表裏一対のシートにおいて,その左側端縁同士を連結する左側端部と,その右側端縁同士を連結する右側端部と,その下端縁同士を連結する下端部と,その上端縁間に開口部とを有する封筒であって,前記開口部の内方に上下分離線が形成されており,該上下分離線と前記下端部との間において,該上下分離線と前記下端部を結ぶように側方分離線が形成されていることを特徴とする封筒(2) 本件補正発明 表裏一対の樹脂材料のシート2,3を有し,該表裏一対の樹脂材料のシートにおいて,その左側端縁同士を連結する左側端部10aと,その右側端縁同士を連結する右側端部10bと,その下端縁同士を連結する下端部10dと,その上端縁間に開口部とを有する樹脂材料の封筒であ のシートにおいて,その左側端縁同士を連結する左側端部10aと,その右側端縁同士を連結する右側端部10bと,その下端縁同士を連結する下端部10dと,その上端縁間に開口部とを有する樹脂材料の封筒であって,前記開口部の内方に上下分離線21a,21bが,上下分離線21aとシート2の上端縁10cとの間の距離と上下分離線21bとシート3の上端縁10cとの間の距離が同じになり,上下分離線21a,21b同士が重なり合うように形成されており,該上下分離線と前記下端部との間において,該上下分離線21a,21bと前記下端部を結ぶように側方分離線22a,22bが,側方分離線22aとシート2の右側端部10bとの間の距離と側方分離線22bとシート3の右側端部10bとの間の距離が同じになり,側方分離線22a,22b同士が重なり合うように形成されており,かつ,該側方分離線22aが下端部10d近傍で,市販されている2辺が開口部となった樹脂材料の書類ホルダが有する右下の三角形の切込みとなるように,形成されており,ならびに,上下分離線21a,21bおよび前記側方分離線22a,22bが分離する場合に市販されている樹脂材料の書類ホルダと実質同様の切り口となるミシン目あるいは該シートの表面から凹んだ溝によって形成されたものであることを特徴とする,シートの上端縁を上下分離線21a,21bにおいて他の部分から分離する場合に,開封することができ,次いで右側端部10bを側方分離線22a,22bおいて封筒の他の部分から分離する場合に,下端部と左側端部だけで表裏一対のシートが連結された形状となり,市販されている2辺が開口部となった右下に三角形の切込みを有する樹脂材料の書類ホルダと実質同様の形状となる,樹脂材料の封筒 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,要するに,本件補 ,市販されている2辺が開口部となった右下に三角形の切込みを有する樹脂材料の書類ホルダと実質同様の形状となる,樹脂材料の封筒 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,要するに,本件補正発明は,下記アの引用例1に記載の発明,下記イの引用例2に記載の周知技術及び下記ウないしオの周知例に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,独立特許要件を満たさないとして本件補正を却下した上,本願発明は引用発明に基 づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 ア引用例1:特開2003-191962号公報(甲1)イ引用例2:登録実用新案第3070390号公報(甲2。平成12年7月28日発行)ウ周知例1:登録実用新案第3020269号公報(甲3。平成8年1月23日発行)エ周知例2:特開平7-16958号公報(甲4)オ周知例3:特開平1-254552号公報(甲5)(2) なお,本件審決が認定した引用例1に記載の発明(以下「引用発明」という。)並びに本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア引用発明:裏部2aと表部2bとから矩形袋状に構成され上側に開口部4を有する本体2と,封かん用のフラップ3とを備えた封筒であって,本体2の上側及び右側の2側辺には,裏部2aと表部2bのそれぞれに重ねて外形ミシン目5,6が設けられ,上側の外形ミシン目5は,開口部4側の側辺から所定間隔内側において左右に横断して直線状に設けられたものであり,また,右側の外形ミシン目6は,右側辺の端縁部から所定間隔内側において外形ミシン目5から本体2の底部までの間を上下に横断して直線状に設けられた 側において左右に横断して直線状に設けられたものであり,また,右側の外形ミシン目6は,右側辺の端縁部から所定間隔内側において外形ミシン目5から本体2の底部までの間を上下に横断して直線状に設けられたものであり,この封筒の受取人が,上側の外形ミシン目5に沿って裏部2aと表部2bを同時に切り取った後,右側の外形ミシン目6に沿って裏部2aと表部2bを同時に切り取ることにより,上側及び右側の2側辺が開口したフォルダとして再利用することができるようにした封筒イ一致点:表裏一対のシート2,3を有し,該表裏一対のシートにおいて,その左側端縁同士を連結する左側端部10aと,その右側端縁同士を連結する右側端部10bと,その下端縁同士を連結する下端部10dと,その上端縁間に開口部とを有する封筒であって,前記開口部の内方に上下分離線21a,21bが,上下分 離線21aとシート2の上端縁10cとの間の距離と上下分離線21bとシート3の上端縁10cとの間の距離が同じになり,上下分離線21a,21b同士が重なり合うように形成されており,該上下分離線と前記下端部との間において,該上下分離線21a,21bと前記下端部を結ぶように側方分離線22a,22bが,側方分離線22aとシート2の右側端部10bとの間の距離と側方分離線22bとシート3の右側端部10bとの間の距離が同じになり,側方分離線22a,22b同士が重なり合うように形成されており,上下分離線21a,21bおよび前記側方分離線22a,22bがミシン目あるいは該シートの表面から凹んだ溝によって形成されたものであり,シートの上端縁を上下分離線21a,21bにおいて他の部分から分離する場合に,開封することができ,次いで右側端部10bを側方分離線22a,22bおいて封筒の他の部分から分離する場合に,下端部と左側 ,シートの上端縁を上下分離線21a,21bにおいて他の部分から分離する場合に,開封することができ,次いで右側端部10bを側方分離線22a,22bおいて封筒の他の部分から分離する場合に,下端部と左側端部だけで表裏一対のシートが連結された形状となる封筒ウ相違点1:本件補正発明の封筒は,樹脂材料のシートから構成されるのに対して,引用発明の封筒は,その材質が明らかでない点エ相違点2:本件補正発明では,側方分離線22aが,下端部10d近傍で,市販されている2辺が開口部となった樹脂材料の書類ホルダが有する右下の三角形の切込みとなるように形成されており,上下分離線21a,21bおよび側方分離線22a,22bが分離する場合に,市販されている2辺が開口部となった右下に三角形の切込みを有する樹脂材料の書類ホルダと実質同様の形状となるのに対して,引用発明では,上側の外形ミシン目5及び右側の外形ミシン目6は,上側及び右側の2側辺が開口したフォルダとして再利用できるようにするためのものであるが,右側の外形ミシン目6は三角形の切込みを備えず,上側の外形ミシン目5及び右側の外形ミシン目6で分離した場合,市販されている2辺が開口部となった右下に三角形の切込みを有する樹脂材料の書類ホルダと実質同様の形状となるとはいえない点 4 取消事由 (1) 相違点を看過した誤り(取消事由1)(2) 本件補正発明の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由2)ア相違点1の認定・判断の誤りイ相違点2に係る判断の誤りウ作用効果に係る判断の誤り(3) 本件補正を却下した手続の違法(取消事由3)(4) 本願発明の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由4)第3 当事者の主張 1 取消事由1(相違点を看過した誤り)について〔原告の主張〕(1) 本 を却下した手続の違法(取消事由3)(4) 本願発明の容易想到性に係る判断の誤り(取消事由4)第3 当事者の主張 1 取消事由1(相違点を看過した誤り)について〔原告の主張〕(1) 本件審決は,引用発明について「上側の外形ミシン目5は,開口部4側の側辺から所定間隔内側において左右に横断して直線状に設けられたものであり」と認定した。 しかしながら,引用例1には,「外形ミシン目5は,開口部4側の端部を本体2から切り離す為の切り取りミシン目であり,その開口部4側の側辺から所定間隔内側において,本体2の一端から他端までの間を左右に横断して直線状に設けられている。」(【0023】)との記載があり,このうち「本体2の一端から他端までの間を」との構成には,互いに独立する切り取りミシン目を設け,各切り取りミシン目に対応する数字や矢印を標記し,切り取り順を利用者に示すという技術的意義が認められる(【0031】)。 したがって,引用発明の外形ミシン目5は,本体2の他端まで到達していると認定されるべきである。 (2) 本件審決は,一致点として,「該上下分離線と前記下端部との間において,該上下分離線21a,21bと前記下端部を結ぶように」との構成を認定している。 しかしながら,引用発明の特許請求の範囲には,「互いに交差する前記2側辺」との記載があり,引用例1にも,「本体2(封筒1)は,図2に示すように,互い に交差する2側辺(図2上側及び右側)が開口した状態に構成され」(【0035】)との記載がある一方,本件補正発明のように,上下分離線(外形ミシン目5)と左右分離線(外形ミシン目6)とを「結ぶ」(外形ミシン目5の一方の端部と外形ミシン目6の一方の端部が当接すること)ことにより,1本の分離線を構成するという技術的思想を,開示も示唆もしてい ン目5)と左右分離線(外形ミシン目6)とを「結ぶ」(外形ミシン目5の一方の端部と外形ミシン目6の一方の端部が当接すること)ことにより,1本の分離線を構成するという技術的思想を,開示も示唆もしていない。 なお,特許請求の範囲の記載にある「結ぶ」との文言は,出願時の技術常識を考慮して認定されるべきところ,シート状物品に複数設けたミシン目又は該シートの表面から凹んだ溝を「結ぶ」とは,「しっかりまとまった形のあるものにする意」であるから,特段の技術的理由がない限り,あるミシン目(凹溝)の端部同士を結ぶ意味に解釈されるべきであって,まとまった形からは遠ざかる「交差」とは異なる。また,本件補正明細書の中の「結ぶ」との記載(【0010】)を参酌しても,当該記載部分は,【図1】を例示しているところ,【図1】は,上下分離線の端部と側方分離線の端部とを結んで1本の分離線とする態様を開示しているから,本件補正発明の「結ぶ」とは,2つの線の端部同士をつなぐという意味に理解されるべきであって,ミシン目が交差する態様が含まれると解釈することはできない。この点で,引用発明は,外形ミシン目5が本体2の一端から他端まで設けられているので,外形ミシン目6を分離しなくても再利用が可能であるが,本件補正発明では開封部が一体的に形成されているから,再利用するためには側方分離線を切り離す必要があり,分離線をL字型に結ばない限り,その目的を達成できない。 したがって,引用発明の外形ミシン目6は,外形ミシン目5と下端部を「結ぶ」ものではなく,「交差する」ものと認定されるべきである。 (3) 以上によれば,本件補正発明と引用発明とでは,次の点で相違するというべきである(以下「相違点3」という。)。 「本件補正発明の上下分離線は,右側端部まででなく,右側端部と距離をもって形成され 3) 以上によれば,本件補正発明と引用発明とでは,次の点で相違するというべきである(以下「相違点3」という。)。 「本件補正発明の上下分離線は,右側端部まででなく,右側端部と距離をもって形成された側方分離線の端部までしか設けられておらず,しかも上下分離線と側方分離線が1点で結ばれているのに対し,引用発明の外形ミシン目5は本体2の一端 から他端までの間を左右に横断して直線状に設けられており,外形ミシン目5と外形ミシン目6とはT字型に交差して形成されている点」そして,切取線(ミシン目)が「交差する」構成を有する引用発明では,複数回の分離作業を行うことが不可欠であり,そのため,引用例1は,切取線(ミシン目)に対応する数字を設ける構成を提案しているが(【請求項4】【0027】等),このような開示は,本件補正発明のように1回の分離作業で完成したフォルダを得ることへの到達を遠ざける教示であるから,本件補正発明は,相違点3により,ファイル部と開封部とを一気に分離することができるという有利な効果を奏するものである。 (4) しかるところ,本件審決は,相違点3を看過した誤りがあり,これが本件補正発明の容易想到性の判断の結論に影響することが明らかである。 〔被告の主張〕(1) 本件補正発明の「該上下分離線と前記下端部との間において,該上下分離線21a,21bと前記下端部を結ぶように側方分離線22a,22bが…形成されており」との記載のうち,「結ぶ」との文言を,上下分離線と側方分離線の端部同士をつなぐという意味に限定解釈すべき理由はないから,上記記載は,上下分離線と下端部との間が側方分離線によってつながっていることを意味するにすぎず,上下分離線の右端部以外の箇所と下端部との間が側方分離線によってつながる形態を含むというべきである。 (2) は,上下分離線と下端部との間が側方分離線によってつながっていることを意味するにすぎず,上下分離線の右端部以外の箇所と下端部との間が側方分離線によってつながる形態を含むというべきである。 (2) 本件補正明細書には,ファイル部と開封部とを一気に分離することができるようにするという技術思想は開示されておらず,現に,上下分離線と側方分離線の各切離しは,一つの連続した動作ではなく,側方分離線の切離しをするかしないかは任意に選択しうるものとして説明されている(【0011】)。すなわち,本件補正発明において,上下分離線は,封筒を開封するために,側方分離線は,書類ホルダを完成するために,それぞれ設けられるものであって,両者を実施例に示されるような1本の分離線の形態のものに限定解釈すべき理由はない。 (3) 以上のとおり,本件補正発明は,上下分離線の右端部以外の箇所と下端部との間が側方分離線によってつながる形態を含む以上,相違点3は存在せず,本件審決による一致点の認定に誤りはない。 2 取消事由2(本件補正発明の容易想到性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 相違点1の認定・判断の誤りについてア本件審決は,引用発明の封筒の材質が明らかでないことを相違点1として認定した上で,これを樹脂製とすることが,当業者が容易に想到し得たことである旨を説示する。 イしかしながら,引用例1には,引用発明について「紙面」と記載し(【0021】【0027】【0044】),図面に樹脂製材料の封筒に見られる熱圧着などによる連結部も認められず,フラップ又は本体に「再湿糊(アラビア糊)」が用いられる記載がある(【0029】)ばかりか,「紙の再利用」を解決課題に設定している(【0003】)から,引用発明の封筒の材料は,紙であると認定されるべきであ プ又は本体に「再湿糊(アラビア糊)」が用いられる記載がある(【0029】)ばかりか,「紙の再利用」を解決課題に設定している(【0003】)から,引用発明の封筒の材料は,紙であると認定されるべきである。 ウ本件審決は,引用発明の解決課題を「紙の再利用」から「封筒の再利用」に拡張した上で,前記アの判断をしているものと理解される。しかしながら,引用発明は,「紙の再利用」という課題を解決しようとしているのであるから,「紙を利用しないこと」を実現するための技術手段である樹脂製の封筒の利用(周知例1ないし3)について,動機付けはない。 エ以上のとおり,本件審決による相違点1の認定及び判断には誤りがある。 (2) 相違点2に係る判断の誤りについてア本件審決は,相違点2について,引用例2にはこのような三角形状の切欠部が開示されているから,当業者がこれを適用することを容易に想到し得たことである旨を説示する。 イしかしながら,前記のとおり,引用発明は,紙の封筒に関するものであるか らその素材の性質上,下端部(接着部ないし溶着部)にかかる力を緩和する必要がなく,したがって,引用例2に開示される三角形状の切込みを適用することの動機付けはない。むしろ,紙製のホルダに三角形状の切欠部を設けた場合には,当該切欠部から裂けるという阻害要因があるから,樹脂製の封筒で用いられるこの技術を紙製の封筒に適用することが容易に想到できるというためには,特別の技術的理由が必要であるが,そのような技術的理由はない。 ウしたがって,本件審決による相違点2に係る判断には誤りがある。 (3) 作用効果に係る判断の誤りについてア引用発明は,開封率の向上を全く問題としてない(引用例1【0030】【0070】)。他方,樹脂材料の封筒の内容物は,紙の封筒と異なり書 は誤りがある。 (3) 作用効果に係る判断の誤りについてア引用発明は,開封率の向上を全く問題としてない(引用例1【0030】【0070】)。他方,樹脂材料の封筒の内容物は,紙の封筒と異なり書類を取り扱うあらゆる業種で利用できるので再利用の動機付けが強いばかりか,開封して分別しなくては新聞等の回収袋に投入することができないことから,本件補正発明は,相違点1の構成により,ダイレクトメール等の開封率の向上という格別の効果を奏する(本件明細書【0006】)。 イ樹脂材料の封筒は,紙の封筒に比較してファイル部と開封部を分離する際に,連結部を破壊するために,非連結部を切り離す力と比べてより大きな力が必要となる(相違点1)。そして,本件補正発明では,開封部を引っ張るだけでその速度が加速され,下端部の連結部が容易に破壊されるように,その近傍に三角形の切込みを設ける構成を採用したものであり(相違点2),このような開封部を切り離す際に奏する有利な効果については,引用例1及び2並びに周知例1ないし3のいずれにも記載がない。 ウさらに,本件補正発明は,前記「結ぶ」の文言によりL字型の開封部を規定しているから,切離し作業が1回で済むことが当然想定されているところ,郵送されてきた樹脂製の封筒から,上方部分及び右方部分を1回の切離し作業で一気に分離することで,市販されている2辺が開口部になった三角形の切れ込みを有する書類ホルダと実質同様の形状となり,書類ホルダとして使用することに可能となると いう格別の効果を奏する。この点,引用発明は,3回ないし少なくとも複数回の分離作業を経なければ完成したフォルダを得ることができず(引用例1【0037】【0038】),だからこそ,切取線(ミシン目)に対応する数字を設けているのである(引用例1【請求項4】【0 とも複数回の分離作業を経なければ完成したフォルダを得ることができず(引用例1【0037】【0038】),だからこそ,切取線(ミシン目)に対応する数字を設けているのである(引用例1【請求項4】【0027】等)。 エ本件補正発明の実施品を用いた実験結果によれば,切離し作業を簡易かつ容易になし得ることが明らかである(甲14)。 オ引用発明に引用例1及び2並びに周知例1ないし3に開示される技術を適用しても,これらの格別の作用効果を得ることはできないところ,本件審決は,この点の判断を誤っている。 〔被告の主張〕(1) 相違点1の認定・判断の誤りについて引用例1にいう「紙面」との表現は,図面の記載内容を説明する都合上使われているにすぎず,封筒が紙製であることを意味するとは限らないし(【0021】【0027】【0044】),再湿糊(アラビア糊)やゴム系接着剤(【0029】)が使用される材料として,紙以外のものが排除されているわけではない。 仮に,引用発明の材質が紙であると認定したとしても,樹脂製の封筒は,従来からよく知られている。そして,引用発明は,エンドユーザーによる再利用に関する技術であって,樹脂製の封筒の場合にもこの再利用の技術を用いるのが有益であることは,明らかであるから,引用発明の封筒を樹脂製とすること(相違点1)について当業者が容易に想到し得たとする本件審決の判断に誤りはない。また,引用発明の封筒は,受取人にフォルダとして再利用させようとするものであるから,紙製であろうと樹脂製であろうと,ダイレクトメールとして使われた場合に開封率の向上に寄与することに変わりはない。 (2) 相違点2に係る判断の誤りについて上辺と右辺に開口部を有する書類ホルダの右下に三角形状の切欠部を設けるのは,書類ホルダを大きく開くとき,書類ホルダ の向上に寄与することに変わりはない。 (2) 相違点2に係る判断の誤りについて上辺と右辺に開口部を有する書類ホルダの右下に三角形状の切欠部を設けるのは,書類ホルダを大きく開くとき,書類ホルダの下辺右側端部における接合部に無理な 力がかからないようにするためのものであって,周知の技術である(引用例2)。 引用発明の封筒においても,それが紙製であろうと樹脂製であろうと,この周知技術を用いるのが有益であることは,明らかであって,引用発明にこの周知技術を用いることについて動機付けがないとはいえない。 (3) 作用効果に係る判断の誤りについてア引用発明の封筒は,受取人にフォルダとして再利用させようとするものであるから,紙製であろうと樹脂製であろうと,本願補正発明と同様に,開封率の向上に寄与する。 イ原告は,開封部を引っ張るだけでファイル部と開封部との分離の速度が加速され,下端部の連結部が容易に破壊されるように,その近傍に三角形の切込みを設ける構成を採用したものであると主張するが,そのような技術的思想は,本件補正明細書に記載も示唆もされていない。そもそも,三角形の切込み自体,本願の願書に最初に添付した図面においてかろうじて看取できる程度のもので,当該切込みが何のために設けられるのか,本願明細書には何ら記載がない。なお,樹脂には様々な種類があり,本件補正発明の樹脂材料は,引裂き強度において紙製の封筒と同程度の性質を有する材料となり得るものである。 ウ上方部分及び右方部分を1回の切離し作業で一気に分離するとの作用は,本件補正発明の発明特定事項により奏されるものではないし,引用発明において見出しミシン目は,不可欠な構成とはいえないし,引用発明を認定する際に,見出しミシン目には触れていないから,引用発明において3回の分離作業が必要 特定事項により奏されるものではないし,引用発明において見出しミシン目は,不可欠な構成とはいえないし,引用発明を認定する際に,見出しミシン目には触れていないから,引用発明において3回の分離作業が必要であるとの原告の主張は,失当である。むしろ,本件補正発明は,前記のとおり分離線が1本である形態のものに限定解釈されるべき理由がない。 エ原告が行った実験(甲14)に用いられた封筒の分離線の形状は,本件補正発明の発明特定事項に基づくものではないから,当該実験結果は,本件補正発明自体が奏する特有の効果として評価できない。 3 取消事由3(本件補正を却下した手続の違法)について 〔原告の主張〕(1) 特許法159条2項において準用される同50条の趣旨は,審判官が新たな事由により出願を拒絶すべき旨を判断しようとするときは,出願人に対してその理由を通知することによって意見書の提出及び補正の機会を与えることにある。したがって,拒絶査定不服審判において拒絶理由を通知しないことが手続上違法となるか否かは,手続の過程,拒絶の理由の内容等に照らして拒絶理由の通知をしなかったことが出願人(審判請求人)の上記機会を奪う結果となるか否かの観点から判断すべきである。そして,拒絶理由通知書で通知された引用文献との相違点に係る構成が,請求項に記載された発明の重要な部分である場合や,周知技術を引用例として用いる場合には,新たな拒絶理由通知を発し,出願人たる原告に意見を述べる機会を与えることが必要であり,相違点に係る周知技術につき拒絶理由通知が不要とされるためには,当該周知技術が重要な部分でなく,かつ,補助的に用いられることも要件とされるべきである。 (2) 相違点1及び2に係る構成は,前記のとおり,引用例1及び2並びに周知例1ないし3に開示がなく,本件補正 該周知技術が重要な部分でなく,かつ,補助的に用いられることも要件とされるべきである。 (2) 相違点1及び2に係る構成は,前記のとおり,引用例1及び2並びに周知例1ないし3に開示がなく,本件補正発明の重要な部分であり,かつ,ことに引用例2(甲2)が補助的なものでないことは,明らかである。 (3) 他方,被告は,前置報告書(甲11)で引用例2を挙示し,審尋(甲12)により原告による回答書(甲13)を提出する機会を与えたものの,これは,提出をしないと確実に拒絶査定の結果を来す「意見書」とは法的性質が異なるし,補正の機会が与えられる(特許法17条の2)ものでもない。また,被告は,周知例1ないし3を本件審決で初めて挙示したものである。 しかも,被告は,引用例2(甲2)を,「引用例2」とした上で,「相違点2は,この周知技術を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである」と結論づけているから,拒絶理由通知で引用されていない特定の周知技術を実質的に引用例として用いている。 (4) このように,本件審判手続には,特許法159条2項において準用する同 法50条に基づき,引用例2及び周知例1ないし3を引用した拒絶理由の通知をする必要があったにもかかわらず,これをせず,拒絶理由通知で引用されていない特定の周知技術を実質的に引用例として用いるという重大な手続違背があったから,本件審決には,同法50条の趣旨に反した違法がある。 〔被告の主張〕周知例1ないし3は,樹脂製の封筒が周知であることを示すための例にすぎないから,審判手続において,当該刊行物を提示するための拒絶理由を通知する必要はない。 引用例2(甲2)は,書類ホルダの右下に三角形状の切欠部を設けることが周知であることを示すための例であるところ,審査官は,前置報告書(甲11) 刊行物を提示するための拒絶理由を通知する必要はない。 引用例2(甲2)は,書類ホルダの右下に三角形状の切欠部を設けることが周知であることを示すための例であるところ,審査官は,前置報告書(甲11)で当該切欠部が容易に想到し得るとしており,その内容を通知した審尋(甲12)に対して,原告は,回答書において,市販されている樹脂製の書類ホルダにこのような切欠部があることを自認しつつ,これが容易に想到されるものではない旨を詳細に述べている(甲13)。したがって,原告は,右下に三角形の切込みを設けた書類ホルダが周知技術であることを十分認識しており,かつ,この点について実質的に反論の機会を与えられていた。 加えて,審判請求時にされた補正を却下する場合,審判合議体は,その理由を事前に審判請求人(原告)に通知することを要しない。 したがって,審決に重大な手続違反があったとの原告の主張は,失当である。 4 取消事由4(本願発明の容易想到性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕本件審決は,本願発明も本件補正発明と同様の理由で当業者が容易に発明をすることができた旨を説示している。 しかしながら,本願発明の容易想到性の判断に当たって,引用発明に周知技術を適用することの論理付けをする必要があるところ,本願発明と引用発明との間には相違点1及び2が存在しないし,他の相違点の存在やそれにどのような周知技術が 適用されたかも不明である。 したがって,本件審決は,本願発明について何ら理由を説明することなく容易想到性に係る判断を下しており,理由不備及び審理不尽の違法があるから,取り消されるべきである。 なお,原告は,本願発明が特許法29条2項により特許を受けることができないことについて争わない旨の発言をしたことは一度もない。むしろ,拒絶理由通知後に代 違法があるから,取り消されるべきである。 なお,原告は,本願発明が特許法29条2項により特許を受けることができないことについて争わない旨の発言をしたことは一度もない。むしろ,拒絶理由通知後に代理人を変えて審判請求をしていることに照らせば,出願経過の全趣旨により,上記の点を争っていると見るのが相当である。そして,原告は,拒絶査定(甲8)により審判請求費用の負担(特許法169条3項)及び補正の制限(同法17条の2第4項)という不利益を被っているのであり,それ以外の法定されない不利益を被る理由はなく,また,出願人の態度いかんによって審決書の理由付記義務が軽減されることにもならない。 さらに,審決に付された理由が「同様の理由」との記載のみである場合に,引用例から認定する発明が若干変更されることがあるとすれば,引用例を恣意的に操作することが可能となり,審判請求人も,引用例から認定される発明がどのように変更されたかを把握することが不可能となり,著しく不公平であって,最高裁昭和54年(行ツ)第134号同59年3月13日第三小法廷判決の趣旨も没却されることになる。そして,本件審決は,同判決が求める判断の根拠を示していない。 〔被告の主張〕拒絶理由通知書(甲7)及び拒絶査定(甲8)は,本願発明が引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた旨を記載しており,原告は,この拒絶理由に対して何ら応答せず,むしろ,審判請求書(甲9)及び回答書(甲13)において,本件補正発明についてのみ引用発明との相違を主張している。してみると,原告は,本願発明が特許法29条2項により特許を受けることができないことについて争わないとの姿勢を示したと見るのが相当である。 なお,本件審決における「同様の理由」は,必ずしも「同一の理由」と同じ意味 ではない 法29条2項により特許を受けることができないことについて争わないとの姿勢を示したと見るのが相当である。 なお,本件審決における「同様の理由」は,必ずしも「同一の理由」と同じ意味 ではない。例えば,引用発明を若干変更する(認定事項を減らす等)ことによって本願発明との相違点を生じさせることも,可能である。また,本件補正発明が進歩性を欠くのであれば,その上位概念である本願発明が進歩性を有しないことは,明らかである。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(相違点を看過した誤り)について(1) 本件補正明細書及び本願明細書の記載について本件補正発明は,前記第2の2(2)に記載のとおりであるが,本件補正明細書には,本件補正発明についておおむね次の記載がある。なお,その内容は,特に断らない限り本願明細書と同じである。 ア使用済み封筒を書類等の保管に使用する際,開封された一端は,開口面積が小さいため,封筒内部への書類等の収容取出しがやりにくく,また,封筒本体の2辺が開口した書類ホルダのような形状に封筒を加工すれば書類等の収容取出しが容易になるが,封筒の加工に手間がかかり面倒である(【0003】)。また,商品等の広告宣伝のために送付されるダイレクトメールは,開封すれば封筒及び収容されていた書類が廃棄物となりかさばるため開封されずにそのまま廃棄されることも多く,期待される宣伝広告効果が十分に得られないという問題があった(【0004】)。 イ本件補正発明等は,書類の郵送等に使用された封筒を効果的に再利用することができ,廃棄物の減量化が期待でき,しかも,ダイレクトメール等の開封率を向上させることができ,その宣伝広告効果を高くすることができる封筒等を提供することを目的とする(【0006】)。 ウ本件補正発明においては,「上下分離線に き,しかも,ダイレクトメール等の開封率を向上させることができ,その宣伝広告効果を高くすることができる封筒等を提供することを目的とする(【0006】)。 ウ本件補正発明においては,「上下分離線において,開口部,つまりシートの上端縁を他の部分から分離すれば,封筒を開封することができる。しかも,側方分離線において右側端部を封筒の他の部分から分離すれば,封筒が,下端部と左側端部だけで表裏一対のシートが連結された形状となり,市販されている2辺が開口部 となった樹脂材料の書類ホルダ(以下,単に書類ホルダという)と実質同様の形状となる。」(【0008】。なお,本願明細書には,上記のうち「樹脂材料の」との部分がない。)エ封筒の素材は,特に限定されず,どのような素材を使用してもよいが,特に,ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート,プラスチック等の光透過性を有する樹脂材料とすれば,いわゆるクリアファイルとして使用できる(【0015】)。 オなお,本件補正明細書中には,本件補正発明の特許請求の範囲の記載中における側方分離線が上下分離線と下端部とを「結ぶように」形成されているとの文言に関する具体的な説明はないが,【図1】及び【図2】では,上下分離線と側方分離線とは,L字型を形成しており,例えば上下分離線が封筒の一端から他端まで横断している実施例については図示がない。 (2) 引用例1の記載について引用発明は,前記第2の3(2)アに記載のとおりであるが,引用例1には,引用発明についておおむね次の記載がある。 ア封筒には様々な形状のものがあるが,環境保護を考慮した封筒としては,構成素材に再生紙が使用されるにとどまり,使用済み封筒自体の再利用を十分に促進することができる技術は,提供されていなかった(【0003】【0004】)。そこで るが,環境保護を考慮した封筒としては,構成素材に再生紙が使用されるにとどまり,使用済み封筒自体の再利用を十分に促進することができる技術は,提供されていなかった(【0003】【0004】)。そこで,引用発明は,使用済み封筒の再利用を促進することができる封筒を提供することを目的としており(【0001】【0005】),その本体の互いに交差する2側辺の端縁部又はその2側辺の端縁部から所定間隔内側に第1の切り取り予定線が設けられており,これに沿って本体を切り取ることにより,本体は,互いに交差する前記2側辺が開口したフォルダ状に形成され,その内面間に書類等を収納することができる(【0006】【0007】)。 イ 【図1】及び【図2】の実施例では,本体の上側のミシン目は,本体の開口部の側辺から所定間隔内側において,本体の一端から他端までの間を左右に横断して直線状に設けられており,また,右側のミシン目は,本体の右側から所定間隔内 側において,上記上側のミシン目から本体の底部(下側)までの間を上下に横断して直線状に設けられている(【0023】)。 ウ封筒のフラップの貼付けを容易とするために,封筒を口糊付きタイプに構成してもよい。例えば,フラップ又はフラップが被さる部分に,再湿糊(アラビア糊)や加圧接着性のゴム系接着剤の塗布面を設けておいたり,剥離紙付きのテープタックやファインタックを設けておいてもよい(【0029】)。 エ 【図5】の実施例では,右側のミシン目を本体の側辺の端縁部(右側)に設けることで,フォルダにより多くの書類等を収容することができるが(【0055】),上側及び右側のミシン目から所定間隔内側にも,本体の2側辺に平行な直線状に設けられた切り取りミシン目があり,これは,より小さなフォルダを作成する際に使用されるものである(【0 るが(【0055】),上側及び右側のミシン目から所定間隔内側にも,本体の2側辺に平行な直線状に設けられた切り取りミシン目があり,これは,より小さなフォルダを作成する際に使用されるものである(【0057】【0058】。【図5】では,内側の上側のミシン目と右側のミシン目とは,L字型を形成しており,上側のミシン目は,封筒の一端から他端まで横断していない。)。 オなお,引用例1には,そこに記載の発明の部材を説明するに当たり,「紙面」との文言を使用している部分がある(【0021】【0027】【0044】)。 (3) 相違点の看過についてア原告は,引用発明の上側のミシン目が,本体の他端まで到達している一方で,本件補正発明の特許請求の範囲の記載における「結ぶ」との文言が,上下分離線と左右分離線とが1本の分離線を構成することを意味しているから,本件審決が,この点を相違点3として認定すべきであった旨を主張する。 しかし,「結ぶ」との文言は,「しっかりとまとまった形のあるものにする意。」であるが,「②離れているものをつなぎとめる。二つ以上のものをつなぐ。」との意味のほかに,「①糸や紐などの端を組んで,ゆわえる。また,結び目をつくる。」,(広辞苑第5版)との意味も有するから,上下分離線が側方分離線との接点で終了し,両者がL字型を形成しているのか,あるいは上下分離線が封筒の一端から他端まで横断して側方分離線とT字型を形成しているのかについては,「結ぶ」との文 言のみからは明らかであるとはいえない。 イしかるところ,前記(1)オに認定のとおり,本件補正明細書の【図1】及び【図2】では,上下分離線と側方分離線とがL字型を形成しており,例えば上下分離線が封筒の一端から他端まで横断している実施例については図示がない。しかも,本件補正発明の特許請 補正明細書の【図1】及び【図2】では,上下分離線と側方分離線とがL字型を形成しており,例えば上下分離線が封筒の一端から他端まで横断している実施例については図示がない。しかも,本件補正発明の特許請求の範囲も,上記【図1】及び【図2】の番号をもってその構成部分を特定しているから,本件補正発明は,上下分離線と側方分離線とがL字型を形成する場合を含むことが明らかである。 しかしながら,本件補正発明の特許請求の範囲の記載は,封筒本体を左右に走る線を「上下分離線」と命名して,封筒本体を上下に分離することを明確にしている。 しかも,そこでは,「シートの上端部を上下分離線21a,21bにおいて他の部分から分離する場合に,開封することができ,」として,シートの上端部が上下分離線から分離することで封筒が開封される旨が記載されており,その上で,「ついで右側端部10bを側方分離線22a,22bにおいて封筒の他の部分から分離する場合に…」として,右側端部の分離については,上下分離線による開封とは別のこととして記載されている。したがって,本件補正発明は,その特許請求の範囲の記載の文言に照らすと,上下分離線が封筒の一端から他端まで横断し,上下分離線と側方分離線とがT字型を形成する場合を排除するものとは解されない。そして,前記(1)ウに認定のとおり,本件補正明細書が,「上下分離線において,開口部,つまりシートの上端縁を他の部分から分離すれば,封筒を開封することができる。」と記載した上で,このこととは別に,「しかも,側方分離線において右側端部を封筒の他の部分から分離すれば…」(【0008】)と記載していることは,上下分離線と側方分離線とがT字型を形成する場合を排除しないとの上記解釈を裏付けるものである。 ウ以上によれば,本件補正発明の上下分離線は,側方分離線との関 (【0008】)と記載していることは,上下分離線と側方分離線とがT字型を形成する場合を排除しないとの上記解釈を裏付けるものである。 ウ以上によれば,本件補正発明の上下分離線は,側方分離線との関係でL字型を形成する場合と,T字型を形成する場合と,その双方を含むものと解するのが相当である。 また,本願明細書は,【図1】及び【図2】では,上下分離線と側方分離線とがL字型を形成しており,例えば上下分離線が封筒の一端から他端まで横断している実施例については図示がない一方で,本願発明の特許請求の範囲の記載においては,封筒本体を左右に走る線を「上下分離線」と命名して,封筒本体を上下に分離することを明確にしており,かつ,本願明細書には「上下分離線において,開口部,つまりシートの上端縁を他の部分から分離すれば,封筒を開封することができる。」と記載した上で,このこととは別に,「しかも,側方分離線において右側端部を封筒の他の部分から分離すれば…」(【0008】)と記載していることに照らすと,本願発明においても,その上下分離線は,側方分離線との関係でL字型を形成する場合とT字型を形成する場合の双方を含むものと解するのが相当である。 エ次に,引用例1には,前記(2)イに認定のとおり,上下分離線が本体の一端から他端までの間を左右に横断して直線状に設けられており,また,側方分離線が上下分離線から本体の底部までの間を上下に横断して直線状に設けられている旨の記載があり,現に,上下分離線と側方分離線がT字型を形成する実施例の図示がある。 しかしながら,引用例1には,前記(2)エに認定のとおり,上下分離線と側方分離線とがL字型を形成しており,上下分離線が封筒の右端部にまで達していない場合を含む実施例についても図示がある。 したがって,引用例1に記載の 1には,前記(2)エに認定のとおり,上下分離線と側方分離線とがL字型を形成しており,上下分離線が封筒の右端部にまで達していない場合を含む実施例についても図示がある。 したがって,引用例1に記載の上下分離線は,側方分離線との関係でL字型を形成する場合と,T字型を形成する場合と,その双方を含むものと解するのが相当である。 オよって,引用例1に記載の発明について,その上下分離線(上側の外形ミシン目)が「左右に横断して」設けられたもの(T字型)と限定した本件審決の認定には,誤りがあるとはいえるものの,引用例1の記載によれば,そこに記載の発明における上下分離線は,「左右に横断して」設けられたものに限られないから,結局,引用例1に記載の発明と本件補正発明及び本願発明との間には,上下分離線の 右端の位置について相違点がないことに帰する。 したがって,原告の主張に係る相違点3は,これを認めることができないばかりか,当該相違点3を前提とする原告の主張も,失当であることを免れないから,原告の前記主張は,作用できない。 2 取消事由2(本件補正発明の容易想到性に係る判断の誤り)について(1) 相違点1に係る認定判断の誤りについてア引用例1には,前記1(2)ア,ウ及びオに認定のとおり,課題解決のための従来技術の例として構成素材に再生紙が使用される場合に言及し,フラップ又はフラップが被さる部分に,再湿糊(アラビア糊)の塗布面を設けておいてもよい旨の記載があるほか,部材を説明するに当たり「紙面」との文言を使用している部分があるから,そこに記載の封筒が専ら紙製のものであるとみる余地もないではない。 他方で,引用例1には,その他に封筒の材質について明確に言及した部分がなく,むしろ,前記1(2)ウに認定のとおり,フラップ又はフラップが被さる部分に 筒が専ら紙製のものであるとみる余地もないではない。 他方で,引用例1には,その他に封筒の材質について明確に言及した部分がなく,むしろ,前記1(2)ウに認定のとおり,フラップ又はフラップが被さる部分に加圧接着性のゴム系接着剤の塗布面を設けておいたり,剥離紙付きのテープタックやファインタックを設けておいてもよい旨の記載がある。そして,これらの接着手段が使用される封筒は,紙製のものに限られないことに鑑みると,引用例1に記載の発明が紙以外の材質によることは,何ら排除されていないとみるのが自然である。 したがって,引用例1の記載によれば,そこに記載の発明の材質について,紙であると限定するのは困難であって,むしろ明らかではない(本件審決の認定に係る相違点1)というのが相当である。 イそして,引用例1には,前記1(2)ウに認定のとおり,紙製ではない封筒にも使用できるフラップの接着手段の使用についての記載があるから,そこに開示された技術的思想を紙製ではない封筒に用いることについて動機付けがある。しかも,紙製ではない封筒(例えば樹脂製)が存在することは,周知例1ないし3を待つまでもなく当業者に顕著に周知であるから,引用例1に接した当業者は,そこに記載の封筒の材質を紙以外のもの(例えば樹脂製)とすることについて容易に想到する ことができたというべきである。 ウ以上に対して,原告は,引用例1に記載の発明が,「紙の再利用」という課題を解決しようとしているのだから,「紙を利用しないこと」を実現する樹脂製の封筒の利用について動機付けがない旨を主張する。 しかしながら,前記1(2)アに認定のとおり,引用例1に記載の発明は,使用済み封筒自体の再利用の促進を目的としており,引用例1は,あくまでも課題解決のための従来技術の例として構成素材に再生紙が使用され かしながら,前記1(2)アに認定のとおり,引用例1に記載の発明は,使用済み封筒自体の再利用の促進を目的としており,引用例1は,あくまでも課題解決のための従来技術の例として構成素材に再生紙が使用される場合に言及しているにすぎないのであるから,紙の再利用自体を解決課題としたものでないことは,明らかである。 よって,原告の上記主張は,その前提を誤るものであり,採用できない。 (2) 相違点2に係る判断の誤りについてア本件補正発明の側方分離線下端部近傍には,三角形の切欠部が存在するところ,当該切欠部については,本件補正明細書及び本願明細書の【図1】及び【図2】に図示されているほか,本件補正発明の特許請求の範囲の記載並びに本件補正明細書及び本願明細書(前記1(1)イ)中に,いずれも「市販されている2辺が開口部となった樹脂材料の書類ホルダが有する右下の三角形の切込みとなるように形成されており」と記載されているのみである。 しかし,樹脂製の封筒についてこのような切欠部を設けることが当業者に顕著に周知であることは,そのような切欠部を有する樹脂製封筒(そこに記載の考案及び先行技術を含む。)について記載している引用例2を待つまでもなく,上記本件補正発明の特許請求の範囲の記載等に照らしても明らかである。 イそして,前記(1)イに認定のとおり,引用例1に接した当業者は,そこに記載の封筒の材質を紙以外のもの(例えば樹脂製)とすることについて容易に想到することができた以上,こうして想到された樹脂製の封筒について上記切欠部を設けることについても,やはり容易に想到することができたというべきである。 ウ以上に対して,原告は,引用例1に記載の発明が紙製であることを前提に, 紙製のホルダに切込部を設けると,そこから裂けるという阻害要因がある旨を主張す することができたというべきである。 ウ以上に対して,原告は,引用例1に記載の発明が紙製であることを前提に, 紙製のホルダに切込部を設けると,そこから裂けるという阻害要因がある旨を主張する。 しかしながら,前記(1)アに認定のとおり,引用例1に記載の発明が紙以外の材質によることは,何ら排除されていないとみるのが自然であることに加えて,これが紙製であるとしても,引用例1に接した当業者がそこに記載の封筒の材質を紙以外の物(例えば樹脂製)とすることについて容易に想到することができた以上,引用例1に記載の発明が紙製であることは,本件補正発明に切欠部を設けるに当たって阻害事由となるものではない。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 (3) 作用効果に係る判断の誤りについてア原告は,本件補正発明には,引用例1に記載の発明で問題とされていなかった開封率の向上という格別の効果を奏する旨を主張する。 しかしながら,前記1(3)に認定のとおり,本件補正発明と引用例1に記載の発明とでは,その材質及び切欠部の存否のみが相違点であるところ,前記(1)イ及び(2)イに認定のとおり,当業者は,これらの相違点をいずれも容易に想到することができたものである。そして,これらの相違点によって,開封率が向上するという格別の効果が奏すると認めるに足りる証拠はないばかりか,前記1(2)アに認定のとおり,引用例1に記載の発明は,使用済み封筒の再利用を促進することを目的としており,そのためには使用された封筒を開封しなければならないから,自ずと開封率を向上させるものであることが明らかである。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 イ次に,原告は,本件補正発明には,切欠部を設けることによって開封部の分離に際して下端部の連結部が容易に破壊されるという有利な あることが明らかである。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 イ次に,原告は,本件補正発明には,切欠部を設けることによって開封部の分離に際して下端部の連結部が容易に破壊されるという有利な効果があるが,引用例1等にはその記載がない旨を主張する。 しかしながら,原告の主張に係る上記有利な効果については,本件補正明細書に何ら記載がなく,当該効果は,上記切欠部を有する周知の樹脂製の封筒の全てにつ いて妥当する作用効果であって,本件補正発明に固有の効果ではない。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 ウさらに,原告は,本件補正発明の上下分離線と側方分離線とがL字型を形成していることから,1回の切離し作業で一気に分離できるという格別の効果があり,このことは,甲14により裏付けられる旨を主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,引用例1に記載の発明は,上下分離線と側方分離線とがL字型を形成する形態を含むものであるから,原告の上記主張は,その前提を欠く。 よって,原告の上記主張は,採用できない。 (4) 小括以上のとおり,本件補正発明は,引用例1に記載の発明から容易に想到することができたものと認められ,これに反する原告の主張には,いずれも理由がない。 3 取消事由3(本件補正を却下した手続の違法)について(1) 原告は,相違点1及び2に係る構成が本件補正発明の重要な部分であることを前提として,本件補正に対して意見書を提出する機会を与えることなく引用例2及び周知例1ないし3を引用して本件審決をしたことが重大な手続違背に当たる旨を主張する。 (2) 証拠によると,本件審決に至る手続の経過は,以下のとおりと認められる。 ア原告は,平成16年4月21日,本願明細書(甲6)を添付して本件出願をしたが,平成21年8月26 旨を主張する。 (2) 証拠によると,本件審決に至る手続の経過は,以下のとおりと認められる。 ア原告は,平成16年4月21日,本願明細書(甲6)を添付して本件出願をしたが,平成21年8月26日付けで,引用例1には「本願の請求項1~7に係る発明の基本的な構成を有する発明が記載されている。そして,封筒を光透過性を有する部材で製造することは,本願の出願前において周知である。」などと記載した拒絶理由通知書を受け(甲7),何らの応答をしなかったところ,平成22年2月2日付けで,上記拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶すべきものである旨の拒絶査定を受けた(甲8)。 イ原告は,平成22年5月7日,前記拒絶査定に対する審判請求(甲9)及び 本件補正(甲10)を行った。特許庁審査官は,これを受けて,同年6月22日付けで,特許庁長官に対して前置報告をしたが,その中で,本件補正発明の三角形状の切欠部について引用例2を挙げて,本願の出願前における周知技術である旨を記載した(甲11)。そして,原告は,上記前置報告書を引用した同年9月3日付けの審尋(甲12)に対し,同年10月22日,上記切欠部について,「その切れ込みが無いと開いた時の力が端部の一点にのみ集中するので,クリアファイルがすぐ痛むため,切れ込みを設けて,切れ込みの下付近にかかった力を分散し,痛みにくくすることは出願前の周知の事実である。」などと記載した回答書を提出した(甲13)。 ウ本件審決は,平成23年1月7日付けでされたが,その中で,相違点1について,樹脂製の封筒が,例えば周知例1ないし3に示されるように,従来からよく知られている旨を説示し,また,相違点2について,「上辺と右辺に開口部を有する書類ホルダの右下に3角形状の切欠部を設けることは,例えば,引用例2に示されるよう ないし3に示されるように,従来からよく知られている旨を説示し,また,相違点2について,「上辺と右辺に開口部を有する書類ホルダの右下に3角形状の切欠部を設けることは,例えば,引用例2に示されるように,従来からよく知られている。相違点2は,この周知技術を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。」旨を説示した。 (3) 前記認定のとおり,引用例1は,本願発明及び本件補正発明が特許要件を充足しない根拠として拒絶理由通知の段階から引き続き主たる引用例とされているところ,引用例2は,審尋において原告に対して示されているばかりか,原告も,これに対する回答書において引用例2に示された技術が周知であることを自認した上で意見を述べており,本件審決においても,引用例2及び周知例1ないし3は,いずれも本件出願当時の周知技術を示す例として挙げられていることが明らかである。しかも,そこで示されている周知技術は,前記2(1)イ及び2(2)アに認定のとおり,いずれもこれらの文献を待つまでもなく当業者に顕著なものである。したがって,本件において,周知技術を示すに当たって「引用例2」との文言を使用したことは,措辞不適切であったとみる余地もないではないが,本件審決がこれらの文献を挙示するに当たり,特許法159条2項において準用する同法50条に基づく 拒絶理由通知をしなかったからといって,本件審決の結論に影響を及ぼすような手続上の瑕疵があったとまでいうことはできない。 よって,原告の前記主張は,採用できない。 4 取消事由4(本願発明の容易想到性に係る判断の誤り)について(1) 本件審決は,「引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものである。 の誤り)について(1) 本件審決は,「引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものである。」旨を説示しているところ,原告は,本件補正を却下した上で,本願発明について何ら理由を説明することなく容易想到性に係る判断を下すという理由不備及び審理不尽の違法がある旨を主張する。 (2) ところで,前記1(3)イに認定のとおり,本願発明と引用例1に記載の発明との間には原告主張に係る相違点3が存在せず,また,本件補正発明と引用例1に記載の発明との相違点2は,本件補正により三角形状の切欠部が特許請求の範囲の記載に明示されることにより生じたものであるから,本願発明と引用例1に記載の発明との間には存在しないことが明らかである。 次に,本願発明は,その材質が明示されておらず,本願明細書を参酌しても,前記1(1)エに認定のとおり,光透過性を有する樹脂材料としてもよいがその材質が特に限定されない旨の記載がある一方,前記2(1)アに認定のとおり,引用例1の記載によれば,そこに記載の発明の材質は,明らかではない(本件審決の認定に係る相違点1)というのが相当であるから,本件審決の認定に係る相違点1も,本願発明と引用例1に記載の発明との間には存在しないことになる。 そして,このように解する場合には,本願発明には,結局のところ,引用発明との間に相違点が存在しないことになるので,容易想到性を云々する以前に,新規性それ自体がないといえなくもない。 (3) しかしながら,前記2(1)アに認定のとおり,引用例1に記載の発明の材質は,なお,紙であると認める余地もないではなく,このように解した場合には,それ以外の材質からなる本願発明との間に相違点がないとはいえない。 (1)アに認定のとおり,引用例1に記載の発明の材質は,なお,紙であると認める余地もないではなく,このように解した場合には,それ以外の材質からなる本願発明との間に相違点がないとはいえない。 そして,この相違点について検討すると,前記相違点1について判示したとおり(前記2(1)イ),引用例1には,前記1(2)ウに認定のとおり,紙製ではない封筒にも使用できるフラップの接着手段の使用についての記載があるから,そこに開示された技術的思想を紙製ではない封筒に用いることについて動機付けがある。しかも,紙製ではない封筒が存在することは,周知例1ないし3を待つまでもなく当業者に顕著に周知であるから,引用例1に接した当業者は,そこに記載の封筒の材質を紙以外のものとすることについて容易に想到することができたというべきである。 したがって,本件審決の上記説示は,本件補正発明と本願発明との違いに十分考慮しないで,本願発明の容易想到性を否定した点において,簡略にすぎ,措辞不適切のそしりを免れないが,相違点1に関する説示から本願発明の容易想到性を否定した判断も容易に理解可能であるから,本件審決を取り消すべき違法があるとはいえない。 (4) よって,原告の前記主張は,採用できない。 5 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官滝澤孝臣 裁判官井上泰人 裁判官荒井章光 井章光
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