主文 原判決を破棄する。本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。理由 上告代理人水野祐一の上告理由について。原審は、(一)上告人A1は、昭和三九年四月一三日ごろ金融業を営む被上告人との間で金融取引契約を締結し、同上告人が被上告人に対して負担する金融取引上の債務担保のため原判決添付別紙物件目録記載の不動産(以下「本件不動産」という。)につき、(1)同上告人が所定期日に右債務の全部または一部の支払いを怠り、もしくは他から差押、仮差押、仮処分、破産の申立を受けた場合には、被上告人は何時でも代金二五八万円をもつて一方的に売買を完結しうること、(2)本件不動産のうち同上告人が占有中の家屋(前記物件目録第三の建物)は、右売買予約完結権行使の時から一か月内に無条件で被上告人に明け渡すこと、(3)売買完結の場合には、同上告人が被上告人に対して負担する一切の債務と売買代金債権とはその対当額において当然相殺決済するものとし、その結果過不足が生ずれば速やかに清算すること、ただし、同上告人の受取分勘定があるときは、本件不動産の本登記手続をし、かつ、家屋明渡完了後に右受取分の支払いを受けること等の条件のもとに売買一方の予約をし、名古屋法務局古沢出張所前同日受付第一〇七三号をもつて本件不動産につき右予約に基づく所有権移転仮登記を経由したこと、(二)同上告人は、右金融取引契約に基づき被上告人から金員の貸与を受けていたところ、三回にわたり借受元金および遅延損害金を目的とする準消費貸借契約を締結し、最終的に(第四回目)、昭和四一年九月一九日元本一六〇万円およびこれに対する遅延損害金六五万円の合計二二五万円を目的とし弁済期を同年一〇月一八日とする準消費貸借契約を締結したこと、(三)被上告人は、同上告人に対する右契約上 和四一年九月一九日元本一六〇万円およびこれに対する遅延損害金六五万円の合計二二五万円を目的とし弁済期を同年一〇月一八日とする準消費貸借契約を締結したこと、(三)被上告人は、同上告人に対する右契約上の債権が遅滞に陥つているこ- 1 -とを理由として昭和四二年二月一〇日到達の書面をもつて同上告人に対し右売買予約完結権の行使をしたこと、(四)しかし、同上告人は、前記消費貸借ないし準消費貸借契約上の利息および遅延損害金の一部を弁済しているほか、右契約には利息制限法所定の率を超過する利息および遅延損害金の定めがあつて、右弁済金のうちこの超過分にあたる部分を元本に充当すると、右予約完結時における残存元本は二九万〇七九二円、遅延損害金は二万七六八九円であること、(五)本件不動産の時価は、三四四万円であること、(六)なお、本件不動産には、上告人A2のための所有権移転請求権保全仮登記および抵当権設定登記が、上告人A3のための抵当権設定登記が、いずれも前記仮登記に後れてされていること、以上の事実を認定したうえ、被上告人の、上告人A1に対する本件不動産の所有権確認、仮登記に基づく所有権移転本登記手続、明渡および明渡までの損害金の支払の各請求、ならびに、上告人A2および同A3に対する右本登記手続に対する承諾の請求につき、いずれもこれを認容したものである。 の所有権移転請求権保全仮登記および抵当権設定登記が、上告人A3のための抵当権設定登記が、いずれも前記仮登記に後れてされていること、以上の事実を認定したうえ、被上告人の、上告人A1に対する本件不動産の所有権確認、仮登記に基づく所有権移転本登記手続、明渡および明渡までの損害金の支払の各請求、ならびに、上告人A2および同A3に対する右本登記手続に対する承諾の請求につき、いずれもこれを認容したものである。しかし、原審の右認定事実によれば、本件売買予約が金銭債権の満足を確保することを目的とするいわゆる仮登記担保契約であることが明らかであるところ、債権者債務者間でこのような契約が締結される趣旨は、債権者が目的不動産の所有権を取得すること自体にあるのではなく、当該不動産の有する金銭的価値に着目し、その価値の実現によつて自己の債権の排他的満足を得ることにあるのであつて、右仮登記担保契約により債権者が有する権利の 所有権を取得すること自体にあるのではなく、当該不動産の有する金銭的価値に着目し、その価値の実現によつて自己の債権の排他的満足を得ることにあるのであつて、右仮登記担保契約により債権者が有する権利の内容は、原則としては、債務者の履行遅滞のため債権者が予約完結の意思を表示したとき、債権者は、目的不動産を処分する権能を取得し当該不動産を適正に評価された価額で確定的に自己の所有に帰せしめるという換価方法により、その評価額から自己の債権の弁済を得ることにあるのであつて、債権者は換価手続の一環として、債務者に対しては仮登記の本登記手続ないし目的不動産の引渡を、後順位の抵当権者らに対しては本登記の承諾請求を求- 2 -めうるが、評価額が債権者の債権額および換価に要した相当費用の合計を超えるときは、超過分を清算金として債務者に交付すべきであり、他方、債務者は清算金の支払を受けるまで本登記手続義務の履行ないし引渡を拒むことができるのであつて、このように、清算金の支払と仮登記の本登記手続とが同時履行の関係に立つ場合には、本登記手続の承諾を求められた後順位の抵当権者らは、自己固有の抗弁として債務者に対する清算金の支払との引換給付の主張をすることができるものと解すべきであり、債権者債務者間において清算金後払の特約がされているというだけでは、叙上の同時履行の関係を否定することができないことは当裁判所の判例(最高裁昭和四六年(オ)第五〇三号同四九年一〇月二三日大法廷判決・民集二八巻七号一四七三頁)の趣旨とするところである。 登記手続の承諾を求められた後順位の抵当権者らは、自己固有の抗弁として債務者に対する清算金の支払との引換給付の主張をすることができるものと解すべきであり、債権者債務者間において清算金後払の特約がされているというだけでは、叙上の同時履行の関係を否定することができないことは当裁判所の判例(最高裁昭和四六年(オ)第五〇三号同四九年一〇月二三日大法廷判決・民集二八巻七号一四七三頁)の趣旨とするところである。そして、債権者において清算金を支払う必要があり、その支払に関し叙上の同時履行関係が認められるべき所有権移転予約形式の仮登記担保契約において、債権者が債務者の履行遅滞を理由として単に予約完結の意思を表示したというだけでは目的不動産の所有権が債権 、その支払に関し叙上の同時履行関係が認められるべき所有権移転予約形式の仮登記担保契約において、債権者が債務者の履行遅滞を理由として単に予約完結の意思を表示したというだけでは目的不動産の所有権が債権者に移転するものではないと解するのが、前記のような仮登記担保契約締結の趣旨に照らし、当事者の意思の合理的解釈として、相当である。本件についてみるに、原審認定の前記事実によれば、上告人A1と被上告人間の本件売買予約においては、清算金のいわゆる後払特約がされているというにすぎないから、叙上同時履行関係を否定することはできないにもかかわらず、債権者が予約完結の意思を表示したということだけで本件不動産が被上告人の所有に帰したとして、被上告人の同上告人に対する本件不動産所有権確認請求を認容した原判決には、法令解釈の違法があるといわなければならない。また、被上告人の上告人A1に対するその余の請求ならびに上告人A2および同A3に対する請求についてみるに、本件不動産の時価が被上告人の債権額を著しくこえることを理由に売買予約の効力を争う上告人らの主張は、被上告人の有する権利の実体がいわゆる仮登記担保- 3 -権にすぎないものとして、その請求を争う趣旨と解しうるから、適切な釈明いかんによつては上告人らにおいて叙上の引換給付の主張をなす余地があるにもかかわらず、原審は、この点の配慮をすることなく、無条件に被上告人の前記請求を認容しているのであつて、原判決は、法令の解釈を誤り、ひいて審理不尽の違法をおかしたものといわなければならない。そして、これらの違法は、原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨中その余の点について判断を示すまでもなく、原判決は破棄を免れず、本件は、叙上の見地からなお審理をつくす必要があるからこれを原審に差し戻すこととし、民訴法 、この点の配慮をすることなく、無条件に被上告人の前記請求を認容しているのであつて、原判決は、法令の解釈を誤り、ひいて審理不尽の違法をおかしたものといわなければならない。そして、これらの違法は、原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨中その余の点について判断を示すまでもなく、原判決は破棄を免れず、本件は、叙上の見地からなお審理をつくす必要があるからこれを原審に差し戻すこととし、民訴法 に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨中その余の点について判断を示すまでもなく、原判決は破棄を免れず、本件は、叙上の見地からなお審理をつくす必要があるからこれを原審に差し戻すこととし、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。裁判官大隅健一郎は退官につき評議に関与しない。最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官岸盛一裁判官藤林益三裁判官下田武三裁判官岸上康夫- 4 -
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