1 主 文 被告人両名をそれぞれ懲役5年及び罰金200万円に処する。 被告人両名に対し,未決勾留日数中各150日を,それぞれその懲役刑 に算入する。 被告人両名においてその罰金を完納することができないときは,それぞ れ1万円を1日に換算した期間,その被告人を労役場に留置する。 被告人両名から,札幌地方検察庁で保管中の,大麻草227本,ガラス 瓶入り大麻を含有する植物片24個,チャック付きビニール袋入り大麻 を含有する植物片1袋,大麻を含有する植物片15袋,大麻を含有する 薄茶色固形物10袋及び円筒容器入り大麻を含有する緑色固形物1個 (いずれも領置番号及び符号は別表(省略)記載のとおり)を没収する。 理 由 (罪となるべき事実) 被告人両名は,共謀の上,みだりに, 1⑴ 営利の目的で, ア 令和元年12月中旬頃から令和2年9月9日までの間,北海道恵庭市(住所 省略)当時の被告人A方において,大麻の種子を発芽させ,発芽した大麻草を鉢に 移植して水及び肥料を与えるなどして生育させた上,生長した大麻草の枝を切断し て発根させ,鉢に移植して水及び肥料を与えるなどして大麻草63本(別表番号1 はその一部)を栽培し, イ 同年3月中旬頃から同年9月24日までの間,同市(住所省略)Eマンシ ョン居室において,大麻の種子を発芽させ,発芽した大麻草を鉢に移植して水及 び肥料を与えるなどして生育させた上,生長した大麻草の枝を切断して発根させ, 鉢に移植して水及び肥料を与えるなどして大麻草34本(別表番号2はその一部) を栽培し, ウ 同年7月上旬頃から同年9月24日までの間,同市(住所省略)当時の被 2 告人B方において,切断した大麻草の枝を発根させ,鉢に移植して水及び肥料を 与えるなどして大麻草130本(別表番号3はその一部)を栽培 月上旬頃から同年9月24日までの間,同市(住所省略)当時の被 2 告人B方において,切断した大麻草の枝を発根させ,鉢に移植して水及び肥料を 与えるなどして大麻草130本(別表番号3はその一部)を栽培し, もってみだりに営利の目的で大麻を栽培する行為を業とし, ⑵ 同日,前記被告人B方において ア 営利の目的で,大麻を含有する植物片約409.7グラム(別表番号4及 び5はその鑑定残量)を所持し, イ 大麻を含有する植物片約288.24グラム(別表番号6はその鑑定残 量),同クッキー様固形物約176.8グラム(別表番号7はその鑑定残量)及 び同バター様固形物約230グラム(別表番号8はその鑑定残量)を所持し, 2 同月9日,前記被告人A方において,大麻を含有する植物片約152.1 3グラム(別表番号9及び10はその鑑定残量)を所持した。 (証拠の標目)省略 (判示1⑵イの事実認定の補足説明) 1 争点等 本件の争点は,被告人Aが判示1⑵イの事実のうち大麻を含有するクッキー様固 形物及び同バター様固形物(以下「本件大麻固形物」という。)を被告人Bと一緒 になって所持したと認められるかである。被告人Aの弁護人は,①本件大麻固形物 は,第三者が被告人B方に持ち込んだ可能性又は第三者が被告人B方に持ち込んだ 大麻を用いて作られた可能性があること(主張①),②栽培した大麻草の葉の部分 を用いてバターやクッキーを作ることを被告人両名が合意していないこと,被告人 Aの逮捕後に作成された本件大麻固形物の存在を被告人Aが知らなかったことなど を指摘し(主張②),本件大麻固形物については,被告人Aが被告人Bと一緒にな って所持したとは認められない旨主張する。 2 弁護人の主張①について 被告人Bは,本件大麻固形物は自宅で栽培された大麻草の葉の部分を用いて作っ た旨供述し ついては,被告人Aが被告人Bと一緒にな って所持したとは認められない旨主張する。 2 弁護人の主張①について 被告人Bは,本件大麻固形物は自宅で栽培された大麻草の葉の部分を用いて作っ た旨供述し,被告人B方にCと共に居候していたDは,被告人B方に本件大麻固形 3 物を含めて大麻を持ち込んだことはなく,Cも同様に持ち込んでいないと思う旨証 言する。 被告人Bの供述は,被告人B方で栽培された大麻草から葉の部分を容易に入手す ることが可能であったという被告人B方の状況に照らして自然な内容である。また, D,Cは,被告人B方で大麻栽培がされていることを知った上で同居を始め,その 後は被告人Bと共に又はその許可を得て被告人B方の大麻を使えたのであって,D らが他から大麻を入手して被告人B方に持ち込む必要性はないから,これらの事情 に沿ったDの証言は自然で合理的である。加えて,被告人Bの前記供述は,Dの前 記証言と相互に整合する。被告人Bには,本件大麻固形物に用いられた大麻が他か らDらが持ち込んだものであるならば,自分の栽培したものであるなどとDらをか ばってまで虚偽の供述をする動機もない。なお,弁護人の主張に沿った被告人Aの 供述は抽象的な可能性を述べるものに留まる。 したがって,被告人Bの供述及びDの証言はいずれも信用でき,本件大麻固形物 は,被告人B方で栽培された大麻を用いて作られたと認められる。 3 弁護人の主張②について ⑴ 関係証拠によれば,①被告人B方で発見された本件大麻固形物は,同所で栽 培された大麻草の葉の部分を用いて被告人Aの逮捕後に作られたこと,②被告人両 名は,被告人A方において,同所で栽培された大麻草のバッズ(花穂の部分)をト リミングした際に生じ,それ自体は販売できない残りかすを用いて,バターやクッ キーを作ったことがあったこと,③被告人 被告人両 名は,被告人A方において,同所で栽培された大麻草のバッズ(花穂の部分)をト リミングした際に生じ,それ自体は販売できない残りかすを用いて,バターやクッ キーを作ったことがあったこと,③被告人両名は,栽培した大麻草のうち,販売に 適したバッズについてはトリミングして販売することを合意していた一方で,販売 に適さないバッズは各自が自由に使用することを相互に容認し,また,葉の部分の うち,バッズの残りかすはバター等にすることを含めて各自が適宜処分し,せん定 した葉は普段捨てるという認識ではあったが,これらの葉の部分の取扱いについて 詳細な取り決めはしていなかったことなどが認められる。 ⑵ 本件大麻固形物は,被告人両名が共同して栽培した大麻草の葉の部分を捨て 4 ずに実際に用いて,大麻栽培の拠点の1つであった被告人B方で,作られたもので あるから,通常,両名の管理は及んでいると考えるのが相当である。加えて,前記 ⑴の認定事実によれば,被告人両名は,販売できないバッズの残りかすを用いて, バターやクッキーを作ったことがあり,また,被告人両名は栽培した大麻草の葉の 部分のうち,バッズの残りかすは各自が適宜処分し,せん定した葉の部分は普段捨 てるという認識であったが,これら葉の部分の取扱いについて詳細な取り決めをし ていなかった。この事実関係によれば,被告人両名は,販売できない葉のいずれの 部分を用いてもバターやクッキーが作られる可能性を認識していたと推認できるか ら,この点を含めて栽培した大麻草を管理することを相互に容認していたと認めら れる。そうすると,本件大麻固形物に用いられた葉の部分が普段捨てるものであっ ても,被告人Aは,栽培した大麻草の葉の部分を用いて作られた本件大麻固形物を, 被告人Bと一緒になって管理していたものといえる。 なお,本件大麻固形物は,被告人B られた葉の部分が普段捨てるものであっ ても,被告人Aは,栽培した大麻草の葉の部分を用いて作られた本件大麻固形物を, 被告人Bと一緒になって管理していたものといえる。 なお,本件大麻固形物は,被告人Bが被告人A方での同居を解消した後,被告人 Bが被告人Aにはその存在を隠していたDらに手伝わせて,被告人Aの逮捕後に作 成したものであるという事情がある。しかし,あくまで本件大麻固形物は被告人両 名が共同して栽培した大麻草の葉の部分から作られたものであり,また,Dらは被 告人Bと共に又はその許可を得て作成された大麻固形物を食べたことがあったにす ぎないから,本件大麻固形物の作成に際し,D,C及び被告人Bでこれを使用する ことを新たに合意していたとは認められない。そうすると,本件大麻固形物に用い られた葉の部分について,被告人Aの管理を排除して被告人BとDらが新たに管理 を始め,その結果,本件大麻固形物をDらが管理していたと認めるべき状況にあっ たとはいえない。また,被告人Bは,仮に被告人Aから頼まれれば本件大麻固形物 の使用を許可していたと思うと供述しているから,被告人Bには葉の部分や本件大 麻固形物に及ぶ被告人Aの管理を排除する意図もなかったと認められる。したがっ て,被告人BがDらに手伝わせて被告人Aの逮捕後に本件大麻固形物を作成したな どの前記事情は,本件大麻固形物を被告人Aが被告人Bと一緒に管理していたこと 5 を否定する理由にはならない。 ⑶ 以上の検討によれば,被告人Aは,本件大麻固形物について,被告人Bと一 緒になって所持したと認められる。 4 結論 以上の次第であって,弁護人の指摘はいずれも理由がなく,判示1⑵イの事実が 認定できる。 (法令の適用) 1 構成要件及び法定刑を示す規定 被告人両名の判示1⑴及び同⑵アの各所為は包括して刑法60条,麻薬 第であって,弁護人の指摘はいずれも理由がなく,判示1⑵イの事実が 認定できる。 (法令の適用) 1 構成要件及び法定刑を示す規定 被告人両名の判示1⑴及び同⑵アの各所為は包括して刑法60条,麻薬特例法5 条2号(判示1⑴アからウまでの各所為はいずれも刑法60条,麻薬特例法5条2 号(大麻取締法24条2項,1項)に,判示1⑵アの所為は刑法60条,大麻取締 法24条の2第2項,1項にそれぞれ該当するところ,判示1⑵アの所為は,判示 1⑴ウの所為に付随して行われたものである。)に,判示1⑵イ及び2の各所為は いずれも刑法60条,大麻取締法24条の2第1項にそれぞれ該当する。 2 科刑上の一罪の処理 被告人両名につき,判示1⑴及び同⑵アの大麻営利目的所持の点と判示1⑵イは, それぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,いずれも刑法54条1 項前段,10条により結局判示1を1罪として最も重い麻薬特例法違反の罪の刑で 処断する。 3 刑種の選択 被告人両名の判示1の各罪について,それぞれ有期懲役刑及び罰金刑を選択する。 4 併合罪の処理 被告人両名について,それぞれ刑法45条前段の併合罪であるから,各懲役刑に ついてはいずれも同法47条本文,10条により重い判示1の各罪の刑に同法47 条ただし書の制限内で法定の加重をする。 5 宣告刑の決定 6 以上の刑期及び所定金額の範囲内で被告人両名をそれぞれ懲役5年及び罰金20 0万円に処する。 6 未決勾留日数の算入 刑法21条を適用して,被告人両名に対し,未決勾留日数中各150日を,それ ぞれその懲役刑に算入する。 7 労役場留置 被告人両名においてその罰金を完納することができないときは,刑法18条によ り,それぞれ1万円を1日に換算した期間,その被告人を労役場に留置する。 8 没収 札幌地方検察 する。 7 労役場留置 被告人両名においてその罰金を完納することができないときは,刑法18条によ り,それぞれ1万円を1日に換算した期間,その被告人を労役場に留置する。 8 没収 札幌地方検察庁で保管中の,別表番号1は判示1⑴アの罪に係る大麻草,別表番 号2は判示1⑴イの罪に係る大麻草,別表番号3は判示1⑴ウの罪に係る大麻草, 別表番号4及び5は判示1⑵アの罪に係る大麻,別表番号6から8までは判示1⑵ イの罪に係る大麻,別表番号9及び10は判示2の罪に係る大麻で,いずれも犯人 の所持するものであるから,大麻取締法24条の5第1項本文により,被告人両名 からこれらをいずれも没収する。 9 訴訟費用の不負担 訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人両名に負担させ ない。 (量刑の理由) 被告人両名は,約10か月間にわたり,業として大麻栽培を行い,押収された大 麻草は合計227本にも上る。暴力団等の組織的背景はないものの,栽培拠点を3 か所まで順次拡大し,各所で必要な設備を整えつつ効率的に栽培する方法を構築し て複数種の大麻を栽培したほか,匿名性の高いSNSアプリや仮想通貨を用いて集 客,取引等を行い,体系的に不特定多数の顧客に大麻を販売してその害悪を社会に 拡散させた。被告人両名は,大麻の自己使用を契機に大麻栽培業を始め,販売に適 さない大麻を種々の方法で使用する中で,大麻を含有する植物片だけでも相当量を 7 所持したのであり,各人の大麻に対する抵抗感は欠如していた。 被告人両名は,対等な友人関係にあったところ,売上や経費を折半するとの合意 の下で,大麻の栽培,トリミング,梱包等の手間の掛かる作業を分担して行った。 効率的な栽培方法や匿名性の高い取引方法に係る情報を入手したのは被告人Bであ るものの,インターネット上で入手可能な情報を被 の下で,大麻の栽培,トリミング,梱包等の手間の掛かる作業を分担して行った。 効率的な栽培方法や匿名性の高い取引方法に係る情報を入手したのは被告人Bであ るものの,インターネット上で入手可能な情報を被告人Aと共有したにすぎず,対 等な共犯者間で通常想定される役割分担の域を出るものではない。被告人Bが売上 を管理し,仮に被告人両名が実際に得た収益の分配額に被告人Aの弁護人がいう差 があったとしても,前記役割分担の対等さや売上・経費が折半されるとの認識の下 で犯行に及んでいたことのほか,被告人Bから関係解消の申出があった際に被告人 Aが引き留めたことに照らしても,それぞれが主体的・積極的に本件犯行に臨み, 対等な役割を果たしたといえる。被告人Aが自認する利得額も相当額に及んでおり, 罰金額の点も含めて被告人両名の刑に差を設けるべき事情は認められない。被告人 両名の本件犯行に関する事情はいずれも悪質であって,本件は,業として行った大 麻栽培の事案の量刑傾向の中では,懲役刑の執行を猶予する程に軽い部類には位置 付けられず,中程度の部類に位置付けられる事案というべきである。 その上で,犯行以外の事情についてみると,現在25歳で前科もない被告人両名 が更生へ向けて各人なりに検討し,また,家族からの支援の在り方の再検討が必要 と思われるものの,被告人両名の更生を支援する環境を整える努力もされているた め,被告人両名の更生を期待したいと考えられることなどの事情も併せ考慮して, 被告人両名に対して,それぞれ主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (検察官沼前輝英,同小沼智,被告人Aの国選弁護人村本耕大(主任),同野田 晃弘,被告人Bの国選弁護人三本竹寛(主任),同中村浩士 各出席) (求刑 被告人両名につき懲役7年及び罰金200万円,主文同旨の没収) (各弁護人の科刑意見 被告 選弁護人村本耕大(主任),同野田 晃弘,被告人Bの国選弁護人三本竹寛(主任),同中村浩士 各出席) (求刑 被告人両名につき懲役7年及び罰金200万円,主文同旨の没収) (各弁護人の科刑意見 被告人Aにつき懲役3年,全部又は一部執行猶予,被告人 Bにつき懲役5年未満) 令和3年5月31日 8 札幌地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官 石 田 寿 一 裁判官 古 川 善 敬 裁判官 北 村 規 哲
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