判決 主文 1 被告は,原告A及び同Bの各自に対し,金60万円及びこれに対する平成13年12月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告A及び同Cの各自に対し,金40万円及びこれに対する平成13年12月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用はこれを10分し,その3を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 5 この判決は,第1及び第2項に限り,仮に執行することができる。 ただし,被告が原告A及び同Bに対し,金30万円の担保を供するときは主文第1項の,原告A及び同Cに対し,金20万円の担保を供するときは主文第2項の各仮執行を免れることができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告は,原告A及び同Bに対し,それぞれ金74万9702円及びこれに対する平成13年2月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告は原告A及び同Cに対し,それぞれ金63万6480円及びこれに対する平成13年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は被告の負担とする。 2 請求の趣旨に対する答弁(1) 原告らの請求をいずれも棄却する(2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 当事者の主張 1 請求の原因(1) 住民訴訟1ア平成10年9月28日,原告B及び同A(以下「原告Bら」とい 棄却する(2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 当事者の主張 1 請求の原因(1) 住民訴訟1ア平成10年9月28日,原告B及び同A(以下「原告Bら」という。)は福島県議会議員24名が平成9年8月22日から同月25日にわたり大阪府において開催された第49回全国都道府県議会議員軟式野球大会に参加した旅費など240万2897円を被告が支出したのは違法であるから,これによる損害を24名の県会議員は被告に支払え」との住民訴訟を地方自治法242条の2第1項4号に基づいて福島地方裁判所に提起した(平成10年(行ウ)第9号事件。以下「住民訴訟1」という。)。 イ上記提訴に際し,原告Bらは福島県弁護士会所属D,同E,同Cの3弁護士に対して通常の弁護費用及び経費を支払うことを黙示の前提として,上記訴訟の遂行を依頼した。 ウ平成12年9月5日,福島地方裁判所は原告Bら全面勝訴の判決をし,同判決は確定した。 エその後,上記240万2897円は24名の県会議員から被告に返還された。 オしたがって,原告Bらは,地方自治法242の2第7項により,被告に対して「相当と認められる額」の報酬請求権を有している。 カ相当額については,仙台高等裁判所平成12年(行コ)第13号(原審・福島地方裁判所平成12年(行ウ)第1号)の判決が存在するので,この判決の規準により計算すると以下のとおりとなる。 (ア) 請求金額240万2897円着手金 0.08=19万2231円報酬 0.16=38万4463円(小計)57万6694円(イ) 福島県弁護士会報酬規程16条2項 0.08=19万2231円報酬 0.16=38万4463円(小計)57万6694円(イ) 福島県弁護士会報酬規程16条2項では,事件の内容により30パーセントの範囲内での増減を規定しており,住民訴訟1の事案の複雑性,社会的意義,訴訟経過などに照らすと,30パーセントの範囲での増額が相当である。よって,上記小計に1.3を乗じた金74万9702円が原告Bら1人あてに支払われるべき相当額となる。 キ原告Bらは受任弁護士との間で相当額を上記のとおり合意し,被告に対して再三にわたり相当額の支払を求めたが,被告はこれに対し誠意ある対応を全くしなかった。そこで,原告Bらは平成13年2月14日付内容証明郵便をもって,相当額の支払を請求し,同郵便は翌15日被告に到達した。 (2) 住民訴訟2ア平成12年3月17日,原告A及び同C(以下「原告Aら」という。)は「平成11年9月28日に,被告がF,G,Hらに対して福島地方裁判所平成10年(行ウ)第2号事件の弁護報酬として1人あて120万円計360万円を支払ったのは違法であるから,これによる損害を上記3名(1人あて120万円)は被告に支払う」ことを求める住民訴訟を地方自治法242条の2第1項4号に基づいて福島地方裁判所に提起した(平成12年(行ウ)第1号事件。以下「住民訴訟2」という。)。 イ上記提訴に際し,原告Aらは福島県弁護士会所属E(復代理),同Cの2弁護士に対して通常の弁護費用及び経費を支払うことを黙示の前提として,上記訴訟の遂行を依頼した。 ウ平成12年9月12日,福島地方裁判所は原告Aら敗訴の判決を言い渡したので原告Aらは控訴し,仙台高等裁判所は平成13年4月20 払うことを黙示の前提として,上記訴訟の遂行を依頼した。 ウ平成12年9月12日,福島地方裁判所は原告Aら敗訴の判決を言い渡したので原告Aらは控訴し,仙台高等裁判所は平成13年4月20日,360万円のうち126万円(1人あて43万円)の返還を命ずる判決を言い渡し,同判決は確定した。 エ原告Aらは,控訴審の遂行を上記イの福島県弁護士会所属の2弁護士に加え仙台弁護士会所属Iに2弁護士と同様の条件をもって依頼した。 オその後,上記126万円は上記3名から被告に返還された。 カしたがって,原告Aらは住民訴訟1と同様の報酬請求権を有している。 キ相当額については,住民訴訟1と同様に計算すると以下のとおりとなる。 (ア) 請求金額 360万円着手金 0.08=28万8000円返還された金額 126万円報酬 0.16=20万1600円(小計)48万9600円(イ) 上記(1)カに記載したとおり,福島県弁護士会報酬規程16条2項では,事件の内容により30パーセントの範囲内での増減を規定しており,住民訴訟2の事案の複雑性,社会的意義,訴訟経過などに照らすと,住民訴訟1と同様に30パーセントの範囲での増額が相当であるので,上記小計に1.3を乗じた63万6480円が原告Aら1人あてに支払われるべき相当額となる。 ク原告Aらは受任弁護士との間で相当額を上記のとおり合意し,被告に対して再三にわたり相当額の支払を求めたが,被告はこれに対し誠意ある対応を全くしなかった。そこで,原告Aらは平成13年6月27日付内容証明郵便をもって, 士との間で相当額を上記のとおり合意し,被告に対して再三にわたり相当額の支払を求めたが,被告はこれに対し誠意ある対応を全くしなかった。そこで,原告Aらは平成13年6月27日付内容証明郵便をもって,相当額の支払を請求し,同郵便は翌28日被告に到達した。 (3) よって,地方自治法242条の2第7項に基づき,ア原告Bらは,住民訴訟1について,それぞれ74万9702円の弁護士報酬相当額及びこれに対する内容証明郵便送達の翌日である平成13年2月16日から,イ原告Aらは,住民訴訟2について,それぞれ63万6480円の弁護士報酬相当額及びこれに対する内容証明郵便送達の翌日である平成13年6月29日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求の原因に対する認否(1)ア請求の原因(1)アの事実は認める。 イ同イのうち,弁護士費用等の支払の点は知らない。 ウ同ウ及びエの事実は認める。 エ同オないしキは争う。 (ア) 地方自治法242条の2第7項による相当額とは当事者間で合意された報酬額の範囲内で相当と認められる額である。したがって,当事者間で合意された報酬額が,相当額の上限を画するものであり,当事者間で合意された報酬額が明らかにされなければ地方自治法242条の2第7項にいう相当額を決定することができない。ところが,原告らはこの点を明らかにしないで,被告に対し,報酬額の認定を求めてきたのであり,その請求自体適法なものとはいえない。そして,原告らは,平成13年12月14日付準備書面においてはじめて,訴状で主張する相当額が原告らと受任弁護士が合意した額であることを釈明した。よって,この釈明がなされるまで原告らの請求は適法 い。そして,原告らは,平成13年12月14日付準備書面においてはじめて,訴状で主張する相当額が原告らと受任弁護士が合意した額であることを釈明した。よって,この釈明がなされるまで原告らの請求は適法なものとはいえず,遅延損害金の始期は同準備書面が被告に到達した時というべきである。 (イ) 住民訴訟1において原告Bら2名が受ける利益は全く共通であり,受任弁護士の訴訟行為は全く共通である。住民訴訟は住民1人でも原告となって提起できる訴訟であり,又,住民訴訟が係属しているときは,他の住民は別訴をもって同一の請求はできないとされている(地方自治法242条の2第4項)。したがって,住民訴訟1において原告の数が何人であっても各人の連帯債権として原告1名の場合と同様に算定するべきである。 (2)ア同(2)アの事実は認める。 イ同イのうち,弁護士費用等の支払の点は知らない。 ウ同ウの事実は認める。ただし,控訴審判決言渡しの日は平成13年6月8日であり,認容額は129万円である。 エ同エのうち,弁護士費用等の支払の点は知らない。 オ同オの事実は認める。ただし,返還金額は129万円である。 カ同カないしクは争う。 (ア) 請求の原因に対する認否(1)エの(ア)及び(イ)と同じである。 (イ) 原告Aらのうち1名は代理人弁護士を兼ねる者である。原告兼代理人たる弁護士が自らに弁護士報酬を支払うという前提で弁護士報酬の相当額の請求をすることは失当である。 (ウ) 弁護士報酬の相当額を算定するに当たっては,勝訴判決によって県が現に受ける利益の額を基準とすべきである。したがって,上記相当額を算定する基準は,住民訴訟2においては認容額129 (ウ) 弁護士報酬の相当額を算定するに当たっては,勝訴判決によって県が現に受ける利益の額を基準とすべきである。したがって,上記相当額を算定する基準は,住民訴訟2においては認容額129万円である。原告らは着手金の算定に住民訴訟その2の請求金額360万円を基準としているが,認容額129万円を基準とするのが相当である。 第3 判断 1 住民訴訟1について(1) 請求の原因(1)ア,ウ及びエの事実は当事者間に争いがない。 (2) 地方自治法242条の2第7項は「第1項第4号の規定による訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において,弁護士に報酬を支払うべきときは,普通地方公共団体に対し,その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる。」と規定している。 (3) 証拠(甲5,7(いずれも枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,原告Bらは住民訴訟1を提起するに際し,その訴訟の提起・追行を福島県弁護士会所属D,同E,同Cに委任したこと,そして,住民訴訟1の判決確定後,受任弁護士との間で,その報酬額を請求の原因(1)カのとおりに合意(以下「本件合意」という。)したことが認められる。 (4) しかしながら,地方自治法の上記条項に照らすと,福島県は本件合意で定められた報酬額の範囲内で相当と認められる額(以下「相当額」という。)の支払義務を負うものというべきである。 ところで,この相当額は,当該訴訟が住民全体の利益のために提起されるものであって,勝訴判決が確定した場合に当該地方公共団体がこれによる経済的利益を享受することから,地方公共団体が負担することが公平の理念に合致するとの観点から認められるものであることを考慮し,当該訴訟を担当した弁護士が所属する弁護士会の 該地方公共団体がこれによる経済的利益を享受することから,地方公共団体が負担することが公平の理念に合致するとの観点から認められるものであることを考慮し,当該訴訟を担当した弁護士が所属する弁護士会の報酬規程を基本とし,当該訴訟の事案の内容,訴訟追行の状況等を総合的に勘案して決せられるべきである。 そこで,これを本件について検討すると,証拠(甲4,5,7(5,7につき枝番を含む。))によれば,住民訴訟1については,平成10年12月14日の第1回口頭弁論以来,10回にわたる口頭弁論と1回の弁論準備手続が行われ,その結果,原告Bらは全面勝訴してこれが確定し,福島県に合計240万2897円が返還されたこと,福島県弁護士会報酬規程によれば,着手金及び報酬金は,原則として,経済的利益の額を基準とし,経済的利益が300万円以下の場合,着手金はその8パーセント,報酬金はその16パーセントとされ,これらは事件の内容により30パーセントの範囲内で増減額することができるとされていること(同規程16条1項,2項)が認められ,本件事案の内容等を併せて勘案すると,住民訴訟1における相当額は60万円をもって相当とするというべきである。 また,原告Bらは,原告各人につきそれぞれ相当額の支払を求めているが,当該訴訟によって地方公共団体が享受する利益は原告数の多寡によって異にすることはないのであるから,原告数に応じた倍数の相当額の支払を受けることはできず,ただ,共同して訴訟を追行した者として,地方公共団体に対し,上記相当額を不可分債権として各自全額を請求することができ,原告Bらのうち1人に対する弁済は他の原告に対しても効力を生ずるものというべきである。 (5) 次に,遅延損害金算定の基準日について検討すると,上記のとおり,福島県は本件合 求することができ,原告Bらのうち1人に対する弁済は他の原告に対しても効力を生ずるものというべきである。 (5) 次に,遅延損害金算定の基準日について検討すると,上記のとおり,福島県は本件合意で定められた報酬額の範囲内における相当額を支払う義務を負うのであるから,相当額を決定するについては本件合意で定められた報酬額の存在が前提となる。しかるに,原告Bらが住民訴訟1における受任弁護士との間の本件合意を明らかにしたのは本訴における平成13年12月14日付け準備書面においてであり,同準備書面が被告に送達されたのが同月18日であることは,記録上明らかである。 したがって,遅延損害金算定の基準日は同月19日になるというべきである。 2 住民訴訟2について(1) 請求の原因(2)ア,ウ及びオの事実は当事者間に争いがない(ただし,弁論の全趣旨によれば,仙台高等裁判所は平成13年6月8日,1人あて43万円で合計129万円の返還を命じたことが認められる。)。 (2) 証拠(甲6,9,10(いずれも枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,原告Aらは住民訴訟2を提起するに際し,その訴訟の提起・追行を福島県弁護士会所属E(復代理)及び同Cの2弁護士に委任し,更に,控訴審において,仙台弁護士会所属I弁護士に委任したこと,そして,住民訴訟2の判決確定後,受任弁護士との間で,その報酬額を請求の原因(2)キのとおりに合意したことが認められる。 (3) しかしながら,住民訴訟2における相当額の算定方法も住民訴訟1についてと同様である。 そして,証拠(甲6,9,10(いずれも枝番を含む。))によれば,住民訴訟2につき,平成12年5月9日の第1回口頭弁論以来,3回にわたる口頭弁論が行われ,第1審の福島地方裁 である。 そして,証拠(甲6,9,10(いずれも枝番を含む。))によれば,住民訴訟2につき,平成12年5月9日の第1回口頭弁論以来,3回にわたる口頭弁論が行われ,第1審の福島地方裁判所は原告Aらの請求を棄却したが,控訴審である仙台高等裁判所において4回の口頭弁論が行われ,1人あて43万円の合計129万円の返還を命じ,これが確定し,福島県に129万円が返還されたことが認められ,以上の事実に,上記福島県弁護士会報酬規程,本件事案の内容等を併せて勘案すると,住民訴訟2における相当額は40万円をもって相当とするというべきである。 (4) また,原告数に応じた倍数の相当額の支払を受けることができないこと,原告Aらの債権が不可分債権であること,遅延損害金算定の基準日が平成13年12月19日となることは,住民訴訟1において説示したのと同様である。 (5) ところで,被告は,原告Cが自らに弁護士報酬を支払うという前提で弁護士報酬の相当額の請求をすることは失当である旨主張する。しかしながら,住民訴訟2については,第1審で敗訴したが,控訴審で仙台弁護士会所属I弁護士が加わり,一部勝訴の判決が言い渡されて確定したのであるから,原告Cは相当額の支払を受け得る立場にあるというべきである。 3 よって,原告Bらの請求は各自60万円とこれに対する平成13年12月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,原告Aらの請求は各自40万円とこれに対する平成13年12月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でそれぞれ理由があるのでこの限度で認容し,その余はいずれも理由がないので棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条本文,65条1項本文を,仮執 合による遅延損害金の支払を求める限度でそれぞれ理由があるのでこの限度で認容し,その余はいずれも理由がないので棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条本文,65条1項本文を,仮執行の宣言につき同法259条1項を,その免脱の宣言につき同条3項を各適用して,主文のとおり判決する。 福島地方裁判所第一民事部 裁判官吉田徹
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