令和2(ネ)10057 特許権侵害差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和4年3月29日 知的財産高等裁判所 1部 判決 原判決変更 東京地方裁判所 平成29(ワ)40337
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判決文本文101,543 文字)

1 令和4年3月29日判決言渡 令和2年(ネ)第10057号 特許権侵害差止等請求控訴事件 (原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第40337号) 口頭弁論終結日 令和3年12月9日 判 決 5 控 訴 人 株 式 会 社 リ コ ー 同訴訟代理人弁護士 塩 月 秀 平 小 泉 直 樹 10 鳥 海 哲 郎 岡 田 誠 友 村 明 弘 中 野 亮 介 阪 本 凌 15 山 室 慶 一 郎 同訴訟復代理人弁護士 海 住 幸 生 遠 藤 祥 史 同補佐人弁理士 稲 葉 良 幸 阿 部 豊 隆 20 澤 井 光 一 被 控 訴 人 株式会社ディエスジャパン 25 被 控 訴 人 株式会社ディエスロジコ 2 被 控 訴 人 株式会社奥美濃プロデュース 上記3名訴訟代理人弁護士 村 田 真 一 5 伊 藤 寛 泰 厚 谷 襄 児 上記3名訴訟代理人弁護士 村 田 真 一 5 伊 藤 寛 泰 厚 谷 襄 児 植 村 幸 也 外 崎 友 隆 上記3名訴訟代理人弁理士 奥 山 尚 一 10 田 中 祐 主 文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 被控訴人らは,別紙1及び2記載の各トナーカートリッジ製品を製 造し,譲渡し,貸し渡し,輸出し,輸入し,又は譲渡若しくは貸渡し 15 の申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をしてはならない。 (2) 被控訴人らは,その占有に係る前項の各トナーカートリッジ製品並 びに別紙1及び2記載の電子部品を廃棄せよ。 (3) 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,470万円及びこれに対 する被控訴人株式会社ディエスジャパンについて平成29年12月9 20 日から,被控訴人株式会社ディエスロジコ及び被控訴人株式会社奥美 濃プロデュースについて各同月8日から各支払済みまで年5分の割合 による金員を支払え。 ⑷ 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを4分し,その1を控訴人 25 の負担とし,その余を被控訴人らの負担とする。 3 3 この判決の第1項(1)ないし(3)は,仮に執行することができる。 事 実 及 び 理 由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 主文第1項(1)及び(2)と同旨 5 3 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,1000万円及びこれに対する被 控訴人株式会社ディエスジャパンについ 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 主文第1項(1)及び(2)と同旨 5 3 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,1000万円及びこれに対する被 控訴人株式会社ディエスジャパンについて平成29年12月9日から,被控訴 人株式会社ディエスロジコ及び被控訴人株式会社奥美濃プロデュースについて 各同月8日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。) 10 1 事案の要旨 本件は,発明の名称を「情報記憶装置,着脱可能装置,現像剤容器,及び, 画像形成装置」とする特許第4886084号の特許(以下「本件特許1」と いい,本件特許1に係る特許権を「本件特許権1」という。),発明の名称を「情 報記憶装置及び着脱可能装置」とする特許第5780375号の特許(以下「本 15 件特許2」といい,本件特許2に係る特許権を「本件特許権2」という。)及び 特許第5780376号の特許(以下「本件特許3」といい,本件特許3に係 る特許権を「本件特許権3」という。また,本件特許1ないし3を併せて「本 件各特許」と,本件特許権1ないし3を併せて「本件各特許権」という。)の特 許権者である控訴人が,被控訴人らが製造する別紙1及び2記載の電子部品 20 (以下「被告電子部品」という。)が本件各特許に係る発明の技術的範囲に属し, 被控訴人らが,控訴人が製造及び販売するプリンタに対応する使用済みの控訴 人製のトナーカートリッジ製品からその電子部品を取り外し,被告電子部品に 取り替えた上で,トナーを再充填して製造した別紙1及び2記載の各トナーカ ートリッジ製品(以下,これらを併せて「被告製品」という。)を販売する行為 25 が,本件各特許権の侵害に当たる旨主張して,被控訴人らに対し,特許法10 4 0条1項及び2 1及び2記載の各トナーカ ートリッジ製品(以下,これらを併せて「被告製品」という。)を販売する行為 25 が,本件各特許権の侵害に当たる旨主張して,被控訴人らに対し,特許法10 4 0条1項及び2項に基づき,被告製品の販売等の差止め及び廃棄並びに被告電 子部品の廃棄を求めるとともに,本件各特許権侵害の不法行為に基づく損害賠 償請求の一部として1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から 各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定(以下「改正 前民法所定」という。)の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事 5 案である。 原審は,被告電子部品は本件各特許に係る発明の技術的範囲に属するが,控 訴人による本件各特許権に基づく被告製品の製造,販売等の差止請求及び損害 賠償等請求は,権利の濫用に当たり許されないとして,いずれも棄却した。 そこで,控訴人が,原判決を不服として本件控訴を提起した。 10 2 前提事実 以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2の2記載のと おりであるから,これを引用する。 (1) 原判決4頁6行目から12行目までを「控訴人は,以下のとおりの本件各 特許権を有している。」と改め,同頁19行目の「平成22年6月11日」 15 の次に「,平成23年3月22日及び同年4月6日」を加える。 (2) 原判決5頁3行目及び13行目の各「平成22年6月11日」の次にいず れも「及び平成23年3月22日」を加え,同頁16行目から9頁21行目 までを次のとおり改める。 「(3) 本件各特許の特許請求の範囲 20 ア 本件特許1 本件特許1の特許請求の範囲は,請求項1ないし14からなり,そ の請求項1,2及び6の記載は,次のとおりである(以下,請求項の 番号に応じて,「本件発明1-1」な 囲 20 ア 本件特許1 本件特許1の特許請求の範囲は,請求項1ないし14からなり,そ の請求項1,2及び6の記載は,次のとおりである(以下,請求項の 番号に応じて,「本件発明1-1」などといい,請求項1,2及び6に 係る発明を併せて「本件各発明1」という。甲4)。 25 【請求項1】 5 画像形成装置本体に対して着脱可能に構成された着脱可能装置に 設置される情報記憶装置であって, 前記画像形成装置本体と前記着脱可能装置との間で通信される情 報が記憶される情報記憶部と, 前記画像形成装置本体に設置された本体側端子に接触して,前記画 5 像形成装置本体との間で前記情報を通信するための端子と, 前記情報記憶部と前記端子とが保持されるとともに,前記画像形成 装置本体に設置された突起部に係合する穴部が形成された基板と, を備え, 前記端子は,短手方向に隙間を空けて並設された複数の金属板であ 10 り, 前記基板に形成された前記穴部は,前記画像形成装置本体の前記突 起部に形成された接地用の本体側端子に接触するアース端子が形成さ れ,前記複数の金属板のうち2つの金属板に間に挟まれる位置に配設 されたことを特徴とする情報記憶装置。 15 【請求項2】 前記アース端子は,少なくとも,前記穴部の内径部に形成されたこ とを特徴とする請求項1に記載の情報記憶装置。 【請求項6】 前記本体側端子は複数の金属部材端子で構成されていて, 20 前記複数の金属板は,前記本体側端子の第1の金属部材端子に接触 した状態でシリアルクロックが入力されるクロック信号用の入力端子 と,前記本体側端子の第2の金属部材端子に接触した状態でシリアル データの入出力が行われるシリアルデータ用の入出力端子と,前記本 体側端子の第3の金属部材端子に接触した状態で るクロック信号用の入力端子 と,前記本体側端子の第2の金属部材端子に接触した状態でシリアル データの入出力が行われるシリアルデータ用の入出力端子と,前記本 体側端子の第3の金属部材端子に接触した状態で電圧が入力される電 25 源用の入力端子であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれ 6 かに記載の情報記憶装置。」 イ 本件特許2 本件特許2の特許請求の範囲は,請求項1ないし60からなり,そ の請求項1ないし4,25及び49の記載は,次のとおりである(以 下,請求項の番号に応じて,「本件発明2-1」などといい,請求項1 5 ないし4,25及び49に係る発明を併せて「本件各発明2」という。 甲5)。 【請求項1】 画像形成装置本体に対して着脱可能に構成された着脱可能装置に 設置される情報記憶装置であって, 10 前記画像形成装置本体が備える本体側端子に接触される情報記憶 装置側端子と, 前記画像形成装置本体が備える本体側突起部が挿入される穴部が, 形成された基板と, を備え, 15 前記情報記憶装置側端子は, クロック信号用端子と, シリアルデータ用端子と, 電源用端子と, アース端子と,を含み, 20 前記アース端子は,前記穴部に設けられ,前記情報記憶装置側端子 は,前記クロック信号用端子,前記アース端子,前記シリアルデータ 用端子,前記電源用端子の順に前記基板に配置されていること を特徴とする情報記憶装置。 【請求項2】 25 請求項1に記載の情報記憶装置であって, 7 前記アース端子は,少なくとも,前記穴部の内径部に形成されてい ること を特徴とする情報記憶装置。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の情報記憶装置であって, 5 前記クロック信号用端子,前記シリアルデータ用端子及び前 も,前記穴部の内径部に形成されてい ること を特徴とする情報記憶装置。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の情報記憶装置であって, 5 前記クロック信号用端子,前記シリアルデータ用端子及び前記電源 用端子は,金属板からなること を特徴とする情報記憶装置。 【請求項4】 請求項1又は2に記載の情報記憶装置であって, 10 前記クロック信号用端子,前記シリアルデータ用端子及び前記電源 用端子は,金属パッドからなること を特徴とする情報記憶装置。 【請求項25】 画像形成装置本体に対して着脱可能に構成された着脱可能装置に 15 設置される情報記憶装置であって, 前記画像形成装置本体が備える本体側端子に接触される情報記憶 装置側端子と, 前記画像形成装置本体が備える本体側突起部が挿入される穴部が, 形成された基板と, 20 を備え, 前記情報記憶装置側端子は, クロック信号用端子と, シリアルデータ用端子と, 電源用端子と, 25 アース端子と,を含み, 8 前記アース端子は,前記穴部に設けられ, 前記穴部は,前記クロック信号用端子と前記シリアルデータ用端子 との間に配置されていること を特徴とする情報記憶装置。 【請求項49】 5 画像形成装置本体に対して着脱可能に構成された着脱可能装置に 設置される情報記憶装置であって, 前記画像形成装置本体が備える本体側端子に接触される情報記憶 装置側端子と, 前記画像形成装置本体が備える本体側突起部が挿入される穴部が, 10 形成された基板と, を備え, 前記情報記憶装置側端子は, シリアルクロックが入力されるシリアルクロック入力端子と, シリアルデータが入力されるシリアルデータ入力端子と, 15 電源入力部と, アース端子と,を含み, 前記アース端子は 置側端子は, シリアルクロックが入力されるシリアルクロック入力端子と, シリアルデータが入力されるシリアルデータ入力端子と, 15 電源入力部と, アース端子と,を含み, 前記アース端子は,前記穴部に設けられ, 前記穴部に対して,前記情報記憶装置が前記画像形成装置本体に装 着された状態における鉛直方向上方の位置には前記シリアルクロック 20 入力端子が設置され,鉛直方向下方の位置には前記シリアルデータ入 力端子と前記電源入力部が設置されていること を特徴とする情報記憶装置。 ウ 本件特許3 本件特許3の特許請求の範囲は,請求項1ないし83からなり,そ 25 の請求項70,77,78及び80の記載は,次のとおりである(以 9 下,請求項の番号に応じて,「本件発明3-70」などといい,請求項 70,77,78及び80に係る発明を併せて「本件各発明3」とい う。甲6)。 【請求項70】 水平方向に突出する突起部と, 5 当該突起部に設置された接地用の本体側アース端子と, 前記突起部と同一方向に突出する一対のリブと,を備えた画像形成 装置本体に情報を伝達するための情報記憶装置であって, 前記情報記憶装置は, 前記画像形成装置本体側に伝達するための情報を記憶する情報記 10 憶部と, 前記突起部が挿入される穴部と,前記情報記憶部と,を備えた基板 と, 前記穴部に形成され,前記本体側アース端子と接触する情報記憶装 置側アース端子と, 15 を備え, 前記穴部に前記突起部が挿入された状態において,前記情報記憶部 は前記穴部よりも下方に設けられ, 前記基板は,前記穴部に前記突起部が挿入されていく間に,当該基 板の側面であって前記穴部よりも下方に,前記一対のリブのうちの少 20 なくとも一方が当接可能な縁部を備えたこと を特徴とする情 れ, 前記基板は,前記穴部に前記突起部が挿入されていく間に,当該基 板の側面であって前記穴部よりも下方に,前記一対のリブのうちの少 20 なくとも一方が当接可能な縁部を備えたこと を特徴とする情報記憶装置。 【請求項77】 請求項70ないし76のいずれかに記載の情報記憶装置であって, 前記基板の表面に設けられ,前記画像形成装置本体に設けられた本 25 体側端子と接触する情報記憶装置側端子を備えることを特徴とする情 10 報記憶装置。 【請求項78】 請求項77に記載の情報記憶装置であって, 前記情報記憶装置が前記画像形成装置本体に接続される際,前記情 報記憶装置側アース端子が前記本体側アース端子と接触した後に,前 5 記情報記憶装置側端子が前記本体側端子と接触可能に形成されている こと を特徴とする情報記憶装置。 【請求項80】 請求項70ないし79のいずれかに記載の情報記憶装置であって, 10 前記穴部は,前記基板に1つだけ形成されていること を特徴とする情報記憶装置。」 (3) 原判決14頁12行目の「を特徴とする」を「ことを特徴とする」と改め る。 ⑷ 原判決15頁5行目から17頁末行までを次のとおり改める。 15 「(5) 控訴人製のトナー用カートリッジの電子部品のデータの書換制限措置 等 ア 控訴人は,「IPSiO SP C830シリーズ」のレーザープリ ンタ(以下「C830シリーズ」といい,このうち,型番「C830」 及び「C831」のプリンタを「原告プリンタ」という。)及びその後 20 継機種である「RICOH SP C840シリーズ」のレーザープ リンタ(以下「C840シリーズ」という。また,これら以外のシリ ーズも含め,控訴人が製造するレーザープリンタを「原告製プリンタ」 と総称する。)に対応する控訴人製のトナ C840シリーズ」のレーザープ リンタ(以下「C840シリーズ」という。また,これら以外のシリ ーズも含め,控訴人が製造するレーザープリンタを「原告製プリンタ」 と総称する。)に対応する控訴人製のトナーカートリッジ(以下「原告 製品」又は「純正品」という。)の情報記憶装置である電子部品(IC 25 チップ)(以下「原告電子部品」という。)についてデータの書換えを 11 制限する措置(以下「本件書換制限措置」という。)を講じている。 控訴人によるC830シリーズの販売は終了しており,控訴人が現 在販売している原告製プリンタの製品群(カラーレーザープリンタ及 びモノクロレーザープリンタの合計30機種)のうち,本件書換制限 措置が講じられているのは,「RICOH SP C840ME」等の 5 カラーレーザープリンタ5機種である(甲31)。 イ 原告プリンタに原告製品が装着されると,原告プリンタのプリンタ ー画面において,「印刷できます」との表示がされるとともに,原告製 品のトナーの残量が段階的に表示され,トナーが少なくなってくると, 「トナーがもうすぐなくなります。」, 「交換用のトナーがあるか確認し 10 てください。」との予告表示(以下,単に「予告表示」という場合があ る。)がされ,トナーを使い切ると,「トナーがなくなりました。」,「ト ナーを補給してください。」との表示がされ,赤色ランプが点灯し,印 刷を停止し(乙25),その際,原告製品の原告電子部品(ICチップ) のメモリに●●●●●●●●●●が書き込まれる。 15 ウ 原告電子部品に●●●●●●●●●●が書き込まれた使用済みの原 告製品にトナーを再充填して原告プリンタに装着すると,別紙3の写 真1のように,原告プリンタのプリンター画面において,トナーの残 量表示が「?」と表示され,黄色ランプが点 ●●が書き込まれた使用済みの原 告製品にトナーを再充填して原告プリンタに装着すると,別紙3の写 真1のように,原告プリンタのプリンター画面において,トナーの残 量表示が「?」と表示され,黄色ランプが点滅し,「非純正トナーボト ルがセットされています。」との表示がされる(甲48の写真1,乙2 20 5)。「?」と表示されている部分をタッチパネルで1回押すことによ り,別紙3の写真2のような「サプライ情報」の画面に遷移し,同画 面上の「保守/補給」の「▶トナー残量」の項目に「検知不可」との表 示がされる(甲48)。 この場合でも,別紙3の写真1のように原告プリンタのプリンター 25 画面上に「印刷できます」との表示がされ,印刷操作を行うと支障な 12 く印刷することができる。 一方で,トナーの残量の段階的な表示や「トナーがもうすぐなくな ります。」,「交換用のトナーがあるか確認してください。」との予告表 示はされず,トナーを使い切ると,「トナーがなくなりました。」,「ト ナーを補給してください。」との表示がされ,赤色ランプが点灯し,印 5 刷を停止する(甲48,乙25)。 一方で,原告電子部品(ICチップ)に本件書換制限措置がされて いなければ,電圧の操作によって●●●●●●●●●●のデータを書 き換えることが可能であり,このようにデータを書き換えた上,トナ ーを再充填した使用済みの原告製品を装着した原告製プリンタにおい 10 ては,トナー残量の段階的表示及び残量予告表示をすることができる。 ⑹ 被控訴人らの行為等 ア 被控訴人らをはじめとするリサイクル事業者は,原告製プリンタの うち,本件書換制限措置がされていない機種に適合するトナーカート リッジについては,使用済みのトナーカートリッジに搭載された電子 15 部品(ICチップ)のメモリ リサイクル事業者は,原告製プリンタの うち,本件書換制限措置がされていない機種に適合するトナーカート リッジについては,使用済みのトナーカートリッジに搭載された電子 15 部品(ICチップ)のメモリのデータを書き換え,トナー残量の表示 をすることができるようにした上で,トナーを充填し,再生品として 販売している(乙26,46)。 イ 被控訴人ロジコ及び被控訴人奥美濃は,使用済みの原告製品から原 告電子部品を取り外し,別紙1及び2の電子部品(被告電子部品)に 20 取り替えた上で,トナーを充填し,再生品として別紙1及び2記載の 各トナーカートリッジ製品(被告製品)を製造している。 株式会社ディエスホールディングス(以下「ディエスホールディン グス」という。)は,被告ロジコ及び被告奥美濃から仕入れた被告製品 を被控訴人DSジャパンに販売している。 25 被控訴人ら及びディエスホールディングスは,グループ会社である。 13 ウ 被控訴人らは,平成25年4月から平成29年10月までの間,日 本国内において,直販又は被控訴人DSジャパンが運営する「eco -choice(エコチョイス)」との名称のウェブサイト(以下「被 告ウェブサイト」という。)において,別紙4の写真1ないし3記載の 形状の被告電子部品(以下「被告電子部品(設計変更前)」という。) 5 が搭載された被告製品(以下「被告製品(設計変更前)」という場合が ある。乙15)を販売し,又は販売の申出をし,同年11月以降,被 告電子部品の形状を別紙4の写真4ないし6記載の形状に設計変更し た電子部品(以下「被告電子部品(設計変更後)」という。乙15)が 搭載された被告製品(以下「被告製品(設計変更後)」という場合があ 10 る。)を販売し,又は販売の申出をしていた(甲7ないし10,乙2, 15)。 「被告電子部品(設計変更後)」という。乙15)が 搭載された被告製品(以下「被告製品(設計変更後)」という場合があ 10 る。)を販売し,又は販売の申出をしていた(甲7ないし10,乙2, 15)。 被告電子部品(設計変更後)の形状は,別紙4の写真5及び6のと おり,設計変更前のICチップの基板に設けられた穴部の上側の縁部 を切り取った形状である(以下,上記切り取った部分を「本件設計変 15 更部分」という場合がある。)。 ⑺ 被告電子部品の構成要件充足性 被告電子部品(設計変更前)は,本件各発明1及び2の構成要件を全 て充足すること,本件各発明3の構成要件のうち,構成要件3-70A ないし3-70D以外の各構成要件を充足することは,争いがない。」 20 3 争点 (1) 被告電子部品(設計変更前)の本件各発明3の技術的範囲の属否(構成要 件3-70Aないし3-70Dの充足性)(争点1) (2) 被告電子部品(設計変更後)の本件各発明1ないし3の技術的範囲の属否 (争点2) 25 ア 本件各発明1ないし3の構成要件1-1D等の「穴部」の充足性等(争 14 点2-1) イ 均等侵害の成否(争点2-2) (3) 無効の抗弁の成否(争点3) ア 本件各発明1ないし3の特開2002-198627号公報(乙5)を 主引用例とする進歩性の欠如(争点3-1) 5 イ 本件各発明3に関する明確性要件違反(争点3-2) (4) 消尽の成否(争点4) (5) 権利の濫用の成否(争点5) (6) 差止めの必要性(争点6) (7) 控訴人の損害額(争点7) 10 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告電子製品(設計変更前)の本件各発明3の技術的範囲の属否(構 成要件3-70Aないし3-70Dの充足性))について 以 人の損害額(争点7) 10 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告電子製品(設計変更前)の本件各発明3の技術的範囲の属否(構 成要件3-70Aないし3-70Dの充足性))について 以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の1記載のと おりであるから,これを引用する。 15 (1) 原判決19頁2行目から5行目までを次のとおり改める。 「 被告電子部品(設計変更前)が搭載された被告製品は,原告プリンタ用 のトナーカートリッジとして被控訴人らによって販売されており,当然に 構成要件3-70Aないし3-70Cの構成を備えた原告プリンタに着 脱可能であるから,被告電子部品は,構成要件3-70Aないし3-70 20 Dを充足する。」 (2) 原判決19頁6行目,12行目,17行目ないし19行目及び22行目の 各「被告電子部品」をいずれも「被告電子部品(設計変更前)」と改める。 (3) 原判決19頁9行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 したがって,被告電子部品(設計変更前)は,構成要件3-70Aない 25 し3-70Dを充足するから,本件各発明3の技術的範囲に属する。」 15 2 争点2(被告電子部品(設計変更後)の本件各発明1ないし3の技術的範囲 の属否)について (1) 争点2-1(本件各発明1ないし3の構成要件1-1D等の「穴部」の充 足性等)について 以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の2(1)記載 5 のとおりであるから,これを引用する。 ア 原判決20頁3行目の「構成要件1-1D等」を「構成要件1-1D, 1-1-F1,2-1C及び3-70F」と,同行目の「本件明細書等1 ~3」を「本件特許1の願書に添付した明細書及び図面(以下「本件明細 書等1」という。),本件特許2の願書 等」を「構成要件1-1D, 1-1-F1,2-1C及び3-70F」と,同行目の「本件明細書等1 ~3」を「本件特許1の願書に添付した明細書及び図面(以下「本件明細 書等1」という。),本件特許2の願書に添付した明細書及び図面(以下「本 10 件明細書等2」という。)及び本件特許3の願書に添付した明細書及び図面 (以下「本件明細書等3」という。)」と改める。 イ 原判決21頁14行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「オ 以上のとおり,被告電子部品(設計変更後)は,構成要件1-1D 等の「穴部」を備えるものであるから,本件各発明1及び2の構成要 15 件をすべて充足し,その技術的範囲に属する。 加えて,被告電子部品(設計変更後)は,前記争点1で述べたのと 同様の理由により,構成要件3-70Aないし3-70Dを充足する から,本件各発明3の技術的範囲に属する。」 ウ 原判決22頁24行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 20 「 また,被告電子部品(設計変更後)は,前記争点1述べたのと同様の 理由により,構成要件3-70Aないし3-70Dを充足しないから, この点においても,本件各発明3の技術的範囲に属さない。」 (2) 争点2-2(均等侵害の成否)について 以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の2(2)記載 25 のとおりであるから,これを引用する。 16 ア 原判決23頁6行目,17行目,20行目,24行目,24頁3行目及 び6行目の各「本件発明1」をいずれも「本件各発明1」と改める。 イ 原判決24頁25行目,末行,25頁2行目から3行目にかけての各「本 件発明2及び3」をいずれも「本件各発明2及び3」と改める。 ウ 原判決25頁9行目の「本件各発明」を「本件各発明1 イ 原判決24頁25行目,末行,25頁2行目から3行目にかけての各「本 件発明2及び3」をいずれも「本件各発明2及び3」と改める。 ウ 原判決25頁9行目の「本件各発明」を「本件各発明1ないし3」と改 5 める。 3 争点3(無効の抗弁の成否)について 以下のとおり訂正するほか,原判決別紙5記載のとおりであるから,これを 引用する。 (1) 原判決145頁1行目から5行目までを次のとおり改める。 10 「(別紙5) 争点3(無効の抗弁の成否)に関する当事者の主張 第1 争点3-1(本件各発明1ないし3の特開2002-198627 号公報(乙5)を主引用例とする進歩性の欠如) 1 争点3-1-1(本件各発明1の進歩性の欠如)について」 15 (2) 原判決145頁8行目の「乙5発明」を「本件各特許の優先日前に頒布さ れた刊行物である特開2002-198627号公報(乙5。以下「乙5公 報」という場合がある。)記載の回路基板10に係る発明(以下「乙5発明」 という。)」と,同頁15行目の「乙6考案」を「本件各特許の優先日前に頒 布された刊行物である実願平2-71037号(実開平4-30784号) 20 のマイクロフィルム(乙6。以下「乙6公報」という場合がある。)記載の基 板ガイド構造に係る考案(以下「乙6考案」という。)」と改める。 (3) 原判決153頁6行目の「乙6発明」を「乙6考案」と改める。 (4) 原判決158頁8行目を「2 争点3-1-2(本件各発明2の進歩性の 欠如)について」と改める。 25 (5) 原判決171頁24行目を「3 争点3-1-3(本件各発明3の進歩性 17 の欠如)について」と改める。 (6) 原判決178頁17行目から18行目までを次のとおり改める。 「第2 (5) 原判決171頁24行目を「3 争点3-1-3(本件各発明3の進歩性 17 の欠如)について」と改める。 (6) 原判決178頁17行目から18行目までを次のとおり改める。 「第2 争点3-2(本件各発明3に関する明確性要件違反)について 1 争点3-2-1(本件発明3-70,3-77,3-78及び3- 80に関する明確性要件違反)について」 5 (7) 原判決180頁3行目及び4行目を「2 争点3-2-2(本件発明3- 78に関する明確性要件違反)について」と改める。 4 争点4(消尽の成否)について 以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第3の4記載のと おりであるから,これを引用する。 10 (1) 原判決25頁22行目から24行目までを削る。 (2) 原判決27頁22行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 しかるところ,被控訴人らが原告電子部品(ICチップ)のメモリを書 き換える態様で使用済みの原告製品をリサイクルしていたとすれば,リサ イクル品について本件各特許権は消尽するのに,控訴人は,原告電子部品 15 (ICチップ)のメモリの書換えを技術的に困難にする本件書換制限措置 という合理性及び必要性のない行為により,被控訴人らが原告製品に搭載 された原告電子部品を取り外し,被告電子部品に取り替えることを余儀な くさせ,上記消尽の成立を妨げたものであり,控訴人に二重の利得を得る ことを認める必要性はないから,被告電子部品について本件各特許権の消 20 尽が成立するというべきである。」 (3) 原判決28頁13行目の「行使することはできず」から15行目末尾まで を「行使することはできない。」と,同頁19行目の「仮に」から20行目の 「あるから」までを「特許権者が,消尽が成立していない特許製品につ 決28頁13行目の「行使することはできず」から15行目末尾まで を「行使することはできない。」と,同頁19行目の「仮に」から20行目の 「あるから」までを「特許権者が,消尽が成立していない特許製品について 特許権の行使により利得機会を実現するにあたり,特許製品の仕様を決定す 25 ることは基本的に自由であり,「必要性及び合理性」なるものによって制約を 18 受けるいわれはないし,仮にこの点を措くとしても,本件書換制限措置を講 ずることには「必要性及び合理性」があるから」と改める。 (4) 原判決29頁23行目の「消尽は成立せず」から24行目末尾までを「消 尽は成立しない。」と改める。 5 争点5(権利の濫用の成否)について 5 次のとおり原判決を訂正し,当審における当事者の補充主張を付加するほか, 原判決の「事実及び理由」の第3の5記載のとおりであるから,これを引用す る。 (1) 原判決の訂正 ア 原判決30頁1行目から3行目までを次のとおり改める。 10 「 仮に被告電子部品について本件各特許権の消尽の成立が認められない としても,控訴人の本件請求は,以下のとおり,消尽の趣旨を潜脱し, 公正な競争を阻害するものであることを総合考慮すると,権利の濫用に 当たり許されない。 (1) 消尽の趣旨の潜脱 15 前述のとおり,控訴人は,原告電子部品(ICチップ)のメモリの 書換えを技術的に困難にする本件書換制限措置という合理性及び必要 性のない行為により,被控訴人らが原告製品に搭載された原告電子部 品を取り外し,被告電子部品に取り替えることを余儀なくさせ,原告 電子部品(ICチップ)のメモリを書き換える態様により原告製品を 20 リサイクルしたリサイクル品の原告電子部品についての本件各特許権 の消尽の成立を 被告電子部品に取り替えることを余儀なくさせ,原告 電子部品(ICチップ)のメモリを書き換える態様により原告製品を 20 リサイクルしたリサイクル品の原告電子部品についての本件各特許権 の消尽の成立を控訴人の意思により妨げたものであり,控訴人の本件 請求は,このように消尽の成立を妨げた結果を利用したものであるか ら,消尽の趣旨を潜脱するものにほかならない。」 イ 原判決30頁4行目の「(1)」を「(2)」と,同頁5行目の「本件各特許」 25 を「本件各発明1ないし3」と改める。 19 ウ 原判決31頁5行目の「(2)」を「(3)」と,同頁6行目の「上記(1)」を「上 記(2)」と改める。 エ 原判決32頁1行目の「(3)」を「(4)」と改める。 オ 原判決34頁5行目の「(4)」を「(5)」と,同頁6行目,7行目及び9行 目の各「本件各発明」をいずれも「本件各発明1ないし3」と改める。 5 カ 原判決42頁1行目の「(5)」を「(6)」と改める。 (2) 当審における控訴人の補充主張 原判決は,①控訴人は,使用済みの原告製品についてトナー残量が「?」 と表示されるように設定した上で,本件各発明1ないし3の実施品である原 告電子部品のメモリについて,十分な必要性及び合理性が存在しないにもか 10 かわらず本件書換制限措置を講じることにより,リサイクル事業者である被 控訴人らが原告電子部品のメモリの書換えにより本件各特許権の侵害を回避 しつつ,トナー残量の表示される再生品を製造,販売等することを制限し, その結果,被控訴人らが当該特許権を侵害する行為に及ばない限り,トナー カートリッジ市場において競争上著しく不利益を受ける状況を作出した上で, 15 当該各特許権の権利侵害行為に対して権利行使に及んだものと認められる, が当該特許権を侵害する行為に及ばない限り,トナー カートリッジ市場において競争上著しく不利益を受ける状況を作出した上で, 15 当該各特許権の権利侵害行為に対して権利行使に及んだものと認められる, ②このような控訴人の一連の行為は,これを全体としてみれば,トナーカー トリッジのリサイクル事業者である被控訴人らが自らトナーの残量表示をし た製品をユーザー等に販売することを妨げるものであり,トナーカートリッ ジ市場において控訴人と競争関係にあるリサイクル事業者である被控訴人ら 20 とそのユーザーの取引を不当に妨害し,公正な競争を阻害するものとして, 独占禁止法(独占禁止法19条,2条9項6号,一般指定14項)と抵触す るものというべきである,③そして,本件書換制限措置による競争制限の程 度が大きいこと,同措置を行う必要性や合理性の程度が低いこと,同措置は 使用済みの製品の自由な流通や利用等を制限するものであることなどの点も 25 併せて考慮すると,本件各特許権に基づき被告製品の販売等の差止めを求め 20 ることは,特許法の目的である「産業の発達」を阻害し又は特許制度の趣旨 を逸脱するものとして,権利の濫用(民法1条3項)に当たるというべきで ある,④控訴人は,本件各発明1ないし3の実施品である電子部品が組み込 まれたトナーカートリッジを譲渡等することにより既に対価を回収している ことや,本件書換制限措置がなければ,被控訴人らは,本件各特許権を侵害 5 することなく,トナーカートリッジの電子部品のメモリを書き換えることに より再生品を販売していたと推認されることなども考慮すると,本件におい ては,差止請求と同様,控訴人の損害賠償請求についても,権利の濫用に当 たると解するのが相当である旨判断したが,以下のとおり,原判決の判断は 誤りである。 10 ア 判断枠 すると,本件におい ては,差止請求と同様,控訴人の損害賠償請求についても,権利の濫用に当 たると解するのが相当である旨判断したが,以下のとおり,原判決の判断は 誤りである。 10 ア 判断枠組みについて 権利の濫用の有無は,権利を行使する者とその相手方についての主観的 及び客観的事情や,濫用の有無が問題となる権利の性質,その権利を発生 させる規定の立法趣旨等の具体的事情を考慮して判断されなければなら ない。 15 ところで,特許権は,発明者に発明の実施の独占を認めることにより, 発明へのインセンティブを与え,企業間の技術開発競争を促進するもので あり,他方で,特許権の存続期間は限定され,存続期間満了後は,発明の 自由な実施を認めることにより,発明を利用した商品・サービスの自由競 争が促進される。特許法は,発明の保護と利用のバランスを取りつつ,発 20 明の対象とする商品,サービスの公正な競争を確保し,それによって産業 の発達に寄与することを目的とする(特許法1条)。このような枠組みの中 で,特許法は,特許権の存続期間中においては,特許権者の独占的実施の 利益を保護することにより,企業間の技術開発競争を促進することに主眼 を置く形で競争秩序を規律しており,発明の対象とする商品・サービスの 25 自由競争が一定程度制約されることは制度上織り込み済みであるといえ 21 るから,どのように特許権や特許発明を利用して発明の対価を取得するか についての特許権者の決定は,原則として尊重されなければならない。 また,競争法的観点からみても,知的財産権侵害を理由とする差止請求 訴訟等の提起が独占禁止法に基づいて規制されるのは例外的な場合に限 られ,極めて慎重でなければならない。なぜなら,第1に,競争水準を上 5 回る利潤を獲得する可能性が社会経済にとって有益な活動を 請求 訴訟等の提起が独占禁止法に基づいて規制されるのは例外的な場合に限 られ,極めて慎重でなければならない。なぜなら,第1に,競争水準を上 5 回る利潤を獲得する可能性が社会経済にとって有益な活動を促進すると いう見方をもとに,現在の知的財産保護制度は設計されており,それにも かかわらず,差止請求訴訟等の提起を自由に行うことができなくなれば利 潤の獲得可能性は低くなり,現行の知的財産保護制度の機能が損なわれる からである。第2に,知的財産法の下では競争水準を超える利潤の獲得が 10 予定されており,この目的を追求する過程で行われるライセンス拒絶や知 的財産権侵害を理由とする差止訴訟等の提起は通常,不当とは考えられて いない。このような行為を規制することは,恣意的ないし予測不可能な形 で法を運用することになるおそれがあるからである。第3に,知的財産法 による保護が過度に過ぎるのであれば,知的財産法制の変更や裁定実施権 15 制度を利用して解決すれば足りるからである。 以上を踏まえると,特許権者による特許製品の仕様の決定や販売の態様 が製品の属性上一定の合理的根拠に基づくものであって,特許権の行使そ の他の特許権者の行為が相応の合理性を有するものと認められるという 事案の下にあっては,特許権の行使を認めることにより看過し難い競争制 20 限効果が生じるといった特段の事情がない限り,公正な競争を阻害するお それがあるものとはいえず,権利の濫用に当たらないというべきである。 これと異なり,特許権者である控訴人において原告電子部品のメモリに 本件書換制限措置を講じることについて十分な必要性及び合理性がある ことの主張立証を求める原判決の判断枠組みは妥当でない。 25 イ 公正競争阻害性の成否を論ずる市場の画定の必要性 22 独占禁止法において,公正な競争を阻害 て十分な必要性及び合理性がある ことの主張立証を求める原判決の判断枠組みは妥当でない。 25 イ 公正競争阻害性の成否を論ずる市場の画定の必要性 22 独占禁止法において,公正な競争を阻害するおそれ,すなわち公正競争 阻害性の成否を論ずるに当たっては,適切な市場画定を行い,どの市場に おける公正競争阻害性や正当化理由を検討するのかを明らかにする必要 がある。 控訴人のC830及びC840シリーズのプリンタは,ビジネス用プリ 5 ンタに該当し,原告製プリンタの中ではハイエンドの製品として位置づけ られる(甲47,75,乙46)。ビジネス用プリンタの販売市場において は,キヤノン株式会社をはじめ,富士ゼロックス株式会社,ブラザー工業 株式会社など多くの事業者間で激しい競争が展開され,本体機器の販売市 場における競争が維持されていること,需要者がビジネス用プリンタを購 10 入する段階で消耗品及び保守費用といったランニングコストの総額まで 念頭においた上でプリンタを選ぶ状況があることを踏まえると,プリンタ のトナーカートリッジの価格が過度に上昇した場合,需要者は消耗品等の コストを一体として考え,当該プリンタを使い続けるよりは,プリンタ自 体を他社に買い換えた方が得であると判断し,他社のプリンタに乗り換え 15 ることが容易にできるから,プリンタメーカー間の競争は,トナーカート リッジの価格を過度に上昇させることを抑える機能を有しており,特定1 社のプリンタ用トナーカートリッジの市場というアフターマーケット市 場における過度の値上げに対する有効な牽制力となっていると考えられ る。 20 したがって,複数のプリンタメーカーから構成されるプリンタ本体の販 売市場とアフターマーケットの市場は,相互関連性を有しているから,本 件においては,プリンタ本体の販売市 いると考えられ る。 20 したがって,複数のプリンタメーカーから構成されるプリンタ本体の販 売市場とアフターマーケットの市場は,相互関連性を有しているから,本 件においては,プリンタ本体の販売市場とアフターマーケットの市場は分 離せずに一体として評価されるべきである。 一方で,独占禁止法が禁止する不公正な取引方法の一類型である「競争 25 者に対する取引妨害」(一般指定14項)は,少なくとも「市場における有 23 力な事業者」によって行われる必要があるが,公正取引委員会は,市場シ ェア20%以下である場合には,「市場における有力な事業者」に該当しな いことを明示している(公取委事務局「流通・取引慣行に関する独占禁止 法上の指針」 (平3年7月11日最新改正平成29年6月16日) (以下「流 通・取引慣行ガイドライン」という。)第1部3(4))。 5 しかるところ,ビジネス用プリンタの販売市場における控訴人のC83 0及びC840シリーズのシェアは約12.5%(2018年度)であっ て,20%を下回るので,控訴人は,ビジネス用プリンタの販売市場にお いて,流通・取引慣行ガイドライン上の「市場における有力な事業者」に 該当するとはいえず,控訴人による本件書換制限措置を含む一連の行為は, 10 プリンタ本体の販売市場とアフターマーケット市場を一体として評価し た市場において,公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)はなく, 独占禁止法(同法19条,2条9項6号,一般指定14項)と抵触するも のではない。 ウ 競争制限効果が認められないこと 15 仮にトナーカートリッジ市場のみを前提としても,控訴人の本件書換制 限措置を含む一連の行為には,以下のとおり,競争制限効果は認められな い。 (ア) トナーの残量表示が「?」と表示され,予告表示がされない ナーカートリッジ市場のみを前提としても,控訴人の本件書換制 限措置を含む一連の行為には,以下のとおり,競争制限効果は認められな い。 (ア) トナーの残量表示が「?」と表示され,予告表示がされないことに よるユーザーへの影響 20 原判決は,①プリンタにとってトナー残量表示は一般的に備わってい る機能であると認められるところ,トナー残量が「?」と表示されると, ユーザーとしてはいつトナーが切れるかの予測がつかないことから,ト ナーが切れたときに備えて予備のトナーカートリッジを常時用意してお かなければならず,トナー残量の表示がされる場合に比べ,本来不必要 25 な保守・管理上の負担をユーザーに課すこととなる,②プリンタに純正 24 トナーカートリッジを装着した場合にトナー残量が「?」と表示される ことは通常あり得ないことから,同表示に接したユーザーは,トナーカ ートリッジの再生品の品質にはやはり問題があって,プリンタのトナー 残量表示機能が正常に作動していないのではないか,あるいは,トナー カートリッジが純正品ではないことからプリンタがトナーカートリッジ 5 に記録された情報を適正に読み取ることができないのではないかなどの 不安感を抱き,再生品の使用を躊躇すると考えられる,③公的機関によ るカラーレーザープリンタ用トナーカートリッジ等の入札においては, メーカーによる再生品以外の再生品について,トナーカートリッジに装 着するチップの情報を,リサイクルの都度確実に書き換えることや,純 10 正品と同等の機能を有することなどが条件とされていることによれば, 本件書換制限措置がされている原告電子部品について,被告電子部品と 取り替えることなく,トナー残量が「?」と表示される再生品を製造, 販売等した場合,このような条件を課す公的機関による入札において当 該再 件書換制限措置がされている原告電子部品について,被告電子部品と 取り替えることなく,トナー残量が「?」と表示される再生品を製造, 販売等した場合,このような条件を課す公的機関による入札において当 該再生品が入札条件を満たす可能性は低いなどとして,本件書換制限措 15 置により,被控訴人らがトナーの残量の表示が「?」であるトナーカー トリッジを市場で販売した場合,被控訴人らは,競争上著しく不利益を 被ることとなる旨判断した。 しかしながら,①については。原告製品では,再生品を使用する場合 も「トナーがなくなりました」等のトナー切れを通知する内容の表示が 20 出されるから,この場合における「負担」の内容は「必要最低限の予備 のトナーを用意しておく,その上で,トナー切れ表示が出たら交換する」 という程度のものであって,予告表示が出る場合における「予告表示が 出たらトナーを用意し,トナー切れ表示が出たら交換する」という処理 に比べて,ユーザーにそれほど重大な負担を課すものとはいえない。そ 25 して,原告プリンタ及びC840シリーズの需要者である事業者におい 25 ては,消耗品不足による業務への支障が生じないよう予備のトナーカー トリッジを必要最低限の個数は備えておくことは当然であり,かつ自然 な対応と考えられる(甲46の1)。また,トナーカートリッジに不具合 が生じる場合もあるから,ユーザーが予備のトナーを用意しておくこと は,円滑な業務遂行のためにごく自然な対応であるといえ,現に,リサ 5 イクル事業者は,各社のウェブサイトにおいて,ユーザーに対し,予備 のカートリッジを在庫として用意することを推奨している(甲65の1 ないし7)。 次に,②については,「?」の表示は,別紙3のとおり,原告プリンタ の印刷の待機画面において,残量メータの中に記号として小さく トリッジを在庫として用意することを推奨している(甲65の1 ないし7)。 次に,②については,「?」の表示は,別紙3のとおり,原告プリンタ の印刷の待機画面において,残量メータの中に記号として小さく表示さ 10 れるところ,「?」は一般的に「分からないとか,疑問である」ことを指 すから,残量表示部分に「?」が出ていれば,ユーザーは,「残量が分か らない」との趣旨であると容易に理解することができるといえるし,画 面最下部に「非純正トナーボトルがセットされています」との表示もさ れるから,非純正トナーボトルがセットされていることによって,残量 15 表示が分からないとの趣旨であると理解することができる。この場合で も,原告プリンタの印刷の待機画面では「印刷できます」と大きく表示 され,ユーザーが印刷できることを容易に理解できるようにしており, 実際にそのまま印刷することが可能である。また,トナー残量が表示さ れている部分をタッチパネルで1回押すことにより「サプライ情報」の 20 項目を出すと,「トナー残量」が「検知不可」との表示もされる。 加えて,そもそも純正品と比べた場合の再生品の主な訴求力は価格の 安さにあると考えられ(甲59,60の1ないし10等),ユーザーは, 再生品がその性質上,純正品と異なることを当然に想定しているから, 再生品の使用時にトナーの残量が表示されなくても,再生品に欠陥があ 25 ると認識することはない。 26 上記の各点を踏まえれば,「?」の表示は,ユーザーにおいては,「再 生品であるためにトナーの残量を検知することが不可能である」という ことを表示するものとして受け止められ,そのような意味内容は格別不 安を抱かせるようなものではなく,原判決が述べるようなユーザーが再 生品の品質について特別な不安感を抱くとか,再生品の使用を躊躇する 5 ことを表示するものとして受け止められ,そのような意味内容は格別不 安を抱かせるようなものではなく,原判決が述べるようなユーザーが再 生品の品質について特別な不安感を抱くとか,再生品の使用を躊躇する 5 などということはない。仮に「?」の表示が問題であるというのであれ ば,被控訴人らが自ら説明をすれば,ユーザーへの影響は緩和できるは ずであり,実際に,トナーの残量が表示されないリサイクル品について は,リサイクル事業者の方で,トナーの残量が表示されないが,「問題な く使用できます」旨を記載した書面をリサイクル品に同梱したり,ウェ 10 ブサイトで説明している事例もある(甲67の1及び2,68の1ない し3)。 ③については,ユーザーがトナーカートリッジの「品質」として考慮 するのは,印字品質,規定枚数を印刷できるか否か,アフターサービス の内容(甲47,甲62ないし64等)であり,トナーカートリッジの 15 「品質」には,トナー残量の表示や,トナー残量について「?」の表示 が出ないことまで含まれておらず,トナー残量の表示は,ユーザーの判 断要素として必須のものではないことからすると,原判決が挙げる公的 機関によるカラーレーザープリンタ用トナーカートリッジ等の入札条件 (乙38,39の2)には,トナーの残量がプリンタ上に表示なされな 20 ければ,かかる入札条件を満たさないという趣旨までは含んでいないと 考えられる。また,公的機関の入札には,仕様書において,「純正品と同 等」や,トナー残量表示を要求するなどの条件を明らかに設けていない ものも存在する(甲72)。仮に特定の公的機関がトナー残量の表示を必 須とする事例が存在したとしても,「?」と表示される再生品を受け入れ 25 る他のユーザーが存在することは十分想定されること(甲72)からすれ 27 ば, 。仮に特定の公的機関がトナー残量の表示を必 須とする事例が存在したとしても,「?」と表示される再生品を受け入れ 25 る他のユーザーが存在することは十分想定されること(甲72)からすれ 27 ば,直ちに再生品メーカーが競争上の不利益を受けているとまではいえ ない。 以上によれば,原判決が挙げる①ないし③は,本件書換制限措置によ り,被控訴人らがトナーの残量の表示が「?」であるトナーカートリッ ジを市場で販売した場合,被控訴人らは,競争上著しく不利益を被るこ 5 との根拠となるものではないから,原判決の上記判断は誤りである。 (イ) 本件各特許権侵害の回避可能性について 原判決は,①被控訴人らをはじめとするリサイクル事業者が,現状に おいて,本件書換制限措置のされた原告製プリンタについて,トナー残 量表示がされるトナーカートリッジを製造,販売するには,原告電子部 10 品を被告電子部品に取り替えるほかに手段はないと認められる,②そし て,本件各特許権に基づき電子部品を取り替えた被告製品の販売等が差 し止められることになると,被控訴人らはトナー残量が「?」と表示さ れる再生品を製造,販売するほかないから,被控訴人らは,トナーカー トリッジ市場において競争上著しく不利益を受けることとなる旨判断し 15 た。 しかしながら,原告プリンタ側の端子の位置や突起部の形状は決まっ ているので,ICチップは,それらに合う構造のものであればよく,例 えば,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●にするなどして,本件各特許権に抵触しな 20 いようにすることも十分に可能であると考えられる。 例えば,●(省略)●控訴人が,●●●●●●●●●●●に挿入した 時の動作を確認する実験(甲73,74)を実施したところ,●●●● に 触しな 20 いようにすることも十分に可能であると考えられる。 例えば,●(省略)●控訴人が,●●●●●●●●●●●に挿入した 時の動作を確認する実験(甲73,74)を実施したところ,●●●● において,「?」と表示されることなく,トナーの残量表示がされ,正常 に動作することを確認した。 25 このように,リサイクル事業者は,本件各特許権侵害を回避しつつ, 28 「?」と表示されない再生品を製造することができるから,原判決の上 記判断は誤りである。 (ウ) 乙70及び71に基づく被控訴人らの主張について a 被控訴人らは,当審において,トナーの残量表示が表示されず, 「?」 と表示されることのユーザーへの影響の根拠として,被控訴人ロジコ 5 が株式会社インテージ(以下「インテージ社」という。)に依頼して 実施したアンケート調査(以下「本件アンケート調査」という。)の 調査報告書(乙70)を提出する。 しかし,本件アンケート調査は,実際に原告プリンタを操作する場 面での「?」の残量表示を見た上での反応を調査したものではなく, 10 被控訴人らの想定する仮想の事例に基づくものにすぎず,また,対象 者に何ら必要な背景情報の説明もなく質問されており,対象者の属性 に応じて当然に前提とされるべき事項が適切に設定されていないなど の点において,不適切であり,本件アンケート調査の結果は信用する ことができない。このほか,聞き取り調査結果の報告書(乙66)及 15 びこれに言及する被控訴人ロジコの従業員作成の陳述書(乙25)等 も,乙70と同様に信用することができない。 b 被控訴人らは,当審において,プリンタのディスプレイ上に残量表 示がされず,「?」と表示されるリサイクルトナーカートリッジは東 京国税局の入札要件を満たさないことの根拠として,東京国税局 b 被控訴人らは,当審において,プリンタのディスプレイ上に残量表 示がされず,「?」と表示されるリサイクルトナーカートリッジは東 京国税局の入札要件を満たさないことの根拠として,東京国税局の回 20 答書(乙71)を提出する。 しかし,上記回答書の回答結果によれば,トナーのリサイクル品の 「品質」等に関する規格の内容においては,印字品質等だけが規格の 要素として挙げられており,トナー残量表示については要素となって おらず,トナー残量表示が「?」となる再生品が粗悪品又は不良品で 25 あると判断する可能性については一切言及がなく,前述の通り,東京 29 国税局が,トナー残量表示が「?」となる再生品を「粗悪品」と判断 していないことは明らかであるから,乙71は,トナーの残量がプリ ンタ上に表示なされなければ東京国税局の入札条件を満たさないこと の根拠となるものではない。 (エ) まとめ 5 以上によれば,控訴人の本件書換制限措置を含む一連の行為には,競 争制限効果は認められない。 エ 本件書換制限措置の必要性及び合理性について (ア) 本件書換制限措置の導入目的は,控訴人が20年以上前から検討を 進めているICチップを用いた●●●●●●●●●●●を確実にし,そ 10 れらの●●●●●●を介してユーザーへのメリットを生じさせるために ICチップ上の情報の正確性を常に確保しようとする点にある。 従来のRFIDチップの課題であった●●●●●とICチップのデー タ保護の問題を解決するという経緯で誕生したのが,本件各発明1ない し3の特徴である穴あき形状と本件書換制限措置を導入した新型ICチ 15 ップである。 トナー残量が表示される場所は,トナーカートリッジでなく,控訴人 のプリンタ製品のディスプレイであるから,トナー残量表示が不正確で あ 形状と本件書換制限措置を導入した新型ICチ 15 ップである。 トナー残量が表示される場所は,トナーカートリッジでなく,控訴人 のプリンタ製品のディスプレイであるから,トナー残量表示が不正確で ある場合に信頼を落とすのはプリンタメーカーである控訴人である。控 訴人は,本件書換制限措置が講じられていない場合には,自ら品質等を 20 コントロールできない第三者の再生品のトナーの残量を表示させられる のであって,残量表示の正確性を自らコントロールできないプリンタメ ーカーが,このような弊害を排除したいと考えて一定の措置を設けよう とすることは,特に不合理なものとはいえない。 したがって,控訴人による本件書換制限措置の導入は,ICチップ上 25 の情報の正確性の担保を行うという目的を達するための合理的手段であ 30 る。 次に,現在,控訴人の取り扱う製品のうち,本件書換制限措置が講じ られているのは,全ての製品ではなく,ユーザーからの要求水準が高く 本件書換制限措置の導入の必要性が高い一部のハイエンド機種に限られ ており,本件書換制限措置が導入された機種の選択についても,ビジネ 5 ス上の効果を最大化させるという観点での総合的な販売戦略上の判断に 基づくものである。また,原告製プリンタでは,本件書換制限措置を前 提とした場合でも,リサイクル品の使用時に何らの特別な操作を要求す るものではなく,トナー残量表示の点以外については,純正品の場合と 同様に印刷のための操作をすることを可能としている。このように控訴 10 人は,特定の機種に関して狙い撃ちで排除する目的や,特許権行使の可 能性を考慮して本件書換制限措置を導入したなどということは全くない。 以上のとおり,控訴人による本件書換制限措置の導入は,他のプリン タメーカーとの競争の観点から,ICチップ上の情報の正確 行使の可 能性を考慮して本件書換制限措置を導入したなどということは全くない。 以上のとおり,控訴人による本件書換制限措置の導入は,他のプリン タメーカーとの競争の観点から,ICチップ上の情報の正確性の担保を 行うという目的を達するための合理的手段であり,必要性及び合理性が 15 あることは明らかである。また,控訴人の主観的な意図としても,リサ イクル事業者排除の意図や特許権行使の可能性を考慮して本件書換制限 措置を導入したことなどない。 (イ) この点に関連して,原判決は,乙3先例(公正取引委員会による審 査事例)を挙げて,公正取引委員会が,プリンタのメーカーが,技術上 20 の必要性等の合理的理由がなく又はその必要性等の範囲を超えてIC チップの書換えを困難にし,カートリッジを再生利用できないようにし た場合や,ICチップにカートリッジのトナーがなくなったなどのデー タを記録し,再生品が装着されたときにレーザープリンタの機能の一部 が作動しないようにした場合には一般指定14項(競争者に対する取引 25 妨害)に違反するおそれがあるとの見解を示していると述べる。 31 しかし,乙3先例の事案は,特許権の行使に係る事案でも,権利の濫 用の成否が判断された事案でもなく,また,乙3は,プリンタメーカー の行為によって,再生品の使用自体に支障が生じたり,本来の目的の達 成を不能とするような重大な機能の一部が作動しなくなったりする場 合を念頭に置き,再生品の使用自体に支障が生じるか否かを重視して判 5 断しているから,乙3を本件の先例とすることには根拠がない。 オ 小括 以上によれば,控訴人の本件請求が権利の濫用に当たるとした原判決の 前記判断は誤りである。 (3) 当審における被控訴人らの補充主張 10 控訴人は,原判決の論理構成及び事実認定について 小括 以上によれば,控訴人の本件請求が権利の濫用に当たるとした原判決の 前記判断は誤りである。 (3) 当審における被控訴人らの補充主張 10 控訴人は,原判決の論理構成及び事実認定について縷々批判するが,原 判決の判断に誤りはなく,控訴人の主張は,以下のとおり,いずれも失当で ある。 ア 公正競争阻害性の成否を論ずる市場の画定の必要性の主張に対し 競争手段の不公正さが公正競争阻害性の内容となっている本件のよう 15 な取引妨害の事案では,そもそも市場が画定される必要はない。 仮に市場を画定しなければ公正競争阻害性の成否を論ずることはでき ないという控訴人の主張を前提とするとしても,その際に検討されるべき 市場は控訴人が主張する一次市場と二次市場を一体のものとして評価す る市場などではなく,ロックイン現象を前提とした狭い市場(控訴人のC 20 830シリーズ及びC840シリーズのプリンタのためのトナーカート リッジ市場)となる。この市場において,純正品メーカーである控訴人が 占めるシェアは80%を下ることはなく(乙56),控訴人が主張する「市 場における有力な事業者」に該当するから,そのような行為者による妨害 行為により,公正競争阻害性が生じていることは明白である。これに反す 25 る控訴人の主張は失当である。 32 イ 競争制限効果が認められないとの主張に対し (ア) 「?」表示は被控訴人らの競争上著しく不利益を与えること a トナーカートリッジの消費者は,トナー残量表示の有無を製品選択 における重要な要素であると考えており(乙25),いくら価格が安 くとも,トナー残量表示のないリサイクル製品は,純正品とは同等で 5 はない「中途半端な再生品」として消費者に受け入れられない。 「?」表示がされるリサイクル品は市場にほとんど存在して くら価格が安 くとも,トナー残量表示のないリサイクル製品は,純正品とは同等で 5 はない「中途半端な再生品」として消費者に受け入れられない。 「?」表示がされるリサイクル品は市場にほとんど存在しておらず, このことは,「?」表示がされるリサイクル品では,純正品との競合 品として市場に受け入れられないことを端的に示している。現に,「?」 マークが表示されたために不良品として返品された事例(乙46,5 10 6)が存在する。 本件において,ICチップを書き換えずにトナーを再充填した場合 には,トナー残量表示が常に「?」となりトナー残量が分からなくな るという不都合にとどまらず,トナーが少なくなってきた時のカート リッジ交換予告メッセージが出ないため,トナーがなくなった時に突 15 然トナーの補給を求める表示が出てプリンタが動かなくなるという 不便をユーザーが被ることになる(乙2,56)。 したがって,残量表示に「?」が表示されるということは,トナー 残量を表示するという機能一つに止まらない,大きな不利益をリサイ クル事業者に与えるものである。 20 b 残量表示がされず,「?」が表示される製品がユーザーに受け入れ られないことは、被控訴人らの実施した聴き取り調査の結果(乙25, 66)から明らかであり,また,残量表示がされないことは、官公庁 の入札条件を満たさない(乙67の1ないし4,68の1ないし4) ことからも明らかである。 25 さらに,このことは,本件アンケート調査(乙71)の結果及び東 33 京国税局の回答書(乙71)からも,裏付けられる。 被控訴人らは,マーケティングリサーチ等を主たる業務とする外部 調査機関であるインテージ社に依頼して,本件書換制限措置によって 残量が表示されず「?」と表示されることの競争上の不利益について, ユーザーの受け 人らは,マーケティングリサーチ等を主たる業務とする外部 調査機関であるインテージ社に依頼して,本件書換制限措置によって 残量が表示されず「?」と表示されることの競争上の不利益について, ユーザーの受け止め方を明らかにするため,令和3年3月,本件アン 5 ケート調査(乙70)を実施した。本件アンケート調査の結果によれ ば,残量表示がされず,「?」と表示される画面を初めて目にしたユ ーザーの最初の印象は,「何らかのエラーが起きている」,「印刷で きないと思う」(22頁)というものであり,印刷自体は可能である との説明が事前にされた上で,「?」マークが表示された場合,どの 10 ような対応をとるかについて,実際の業務においてコピー機,プリン タの機種選定やこれら機器の備品・消耗品選定を行っている選定者に 質問したところ,リサイクルトナーカートリッジの使用をとりやめる 者(「トナーカートリッジの購入先を切り替える」,「トナーカート リッジを返品・交換する」又は「純正品しか使わないようにする」と 15 答えた者)が約6割を占めた(30頁)。かかる本件アンケート調査 の結果から,残量表示がされず,「?」と表示されることはユーザー に対して不安感を与え,公正競争を阻害する抽象的な危険性を超えて, 具体的な危険性を有することが分かる。 また,東京国税局の同年4月13日付け回答書(乙71)によれば, 20 東京国税局の入札条件として,ISO14001等を取得したもので あるとの条件とは別に要求されている「チップ装着タイプのトナーカ ートリッジに装着するチップは,リサイクルの都度,確実に情報を書 き換えること」との条件(乙39の2)の趣旨は,「チップ装着タイ プのトナーカートリッジについては,プリンタが純正品を使用した場 25 合と同様の作動状況となるよう,リサイクルの都度,チップ 情報を書 き換えること」との条件(乙39の2)の趣旨は,「チップ装着タイ プのトナーカートリッジについては,プリンタが純正品を使用した場 25 合と同様の作動状況となるよう,リサイクルの都度,チップの情報を 34 書き換える必要がある」とのことである。これによれば,本件書換制 限措置により,ICチップの書換ができないこと自体によってリサイ クルトナーカートリッジは東京国税局の入札要件を満たさないことと なるだけでなく,プリンタのディスプレイ上に残量が表示されず「?」 と表示されてしまえば「プリンタが純正品を使用した場合と同様の作 5 動状況」とはならないのであるから,この点でも東京国税局の入札条 件を満たさないこととなる。 c この点に関し控訴人は,「?」表示がされたとしても問題なく印刷 できることを説明すれば足りる旨主張する。 しかし,残量が表示されず「?」と表示されることを説明しなけれ 10 ばならないこと自体が競争上不利益であるのみならず,たとえ説明を 行ったとしても,実際に使用する者に周知することは極めて困難であ り,さらに,事前に説明を行い,了承を得た上で,正常に残量表示が なされない商品を販売したにもかかわらず,残量表示が正常になされ ないことを理由にクレームがあり返品された事例すら存在すること 15 (乙64)からすれば,控訴人の上記主張は,失当である。 (イ) 本件書換制限措置を回避することは不可能か,著しく困難であるこ と 控訴人が本件各特許権侵害を回避しつつ「?」と表示されない再生品 を製造することができることの根拠として挙げる甲73及び74は,● 20 ●●●の製品を原告プリンタに装着した際に●(省略)●を原告プリン タに挿入した際に通常の印刷動作を行ったことを述べるものである。 しかし,本件書換制限措置を として挙げる甲73及び74は,● 20 ●●●の製品を原告プリンタに装着した際に●(省略)●を原告プリン タに挿入した際に通常の印刷動作を行ったことを述べるものである。 しかし,本件書換制限措置を回避できたというためには,大量に販売 されるリサイクルトナーカートリッジが長期間安定的にプリンタで使用 できる必要があるのであって,1本のトナーカートリッジが数枚印刷可 25 能であったとしても,本件書換制限措置を回避できることは意味しない。 35 実際,被控訴人らは,これまで●●●●●●と類似の形状の製品開発を 試み,流通させたことがあるが,プリンタ側の接点が1つでも接触不良 を起こすとエラーとなってしまうため動作が不安定となってしまった。 その結果,接続不良の不良品ということで返品されてきてしまったため, 導入を断念したこともある(乙56)。このような不安定な動作の製品 5 が消費者に到底受け入れられないことの証左である。 また,本件各特許権侵害の回避が容易でないことは,原判決が,被告 製品の構成や形状は,適合させる原告プリンタの構成や形状に合わさざ るを得ず,その設計上の自由度は相当程度制限されると考えられると認 定しているとおり,本件各発明1ないし3は,カートリッジとプリンタ 10 との接続部にあたる情報記憶装置を,穴部を介した形状により特定した ものであり,安定した接続を確保するためには,プリンタ側の構成や形 状に合致したものにせざるを得ないことからも明らかである。 したがって,実用に耐えうる程度の本件書換制限措置の回避は事実上 不可能か,著しく困難である。 15 ウ 本件書換制限措置を講ずることに必要性及び合理性がないこと 控訴人は,本件書換制限措置の導入の目的は,控訴人が20年以上前か ら検討を進めているICチップを用いた●●●●●●●●● 15 ウ 本件書換制限措置を講ずることに必要性及び合理性がないこと 控訴人は,本件書換制限措置の導入の目的は,控訴人が20年以上前か ら検討を進めているICチップを用いた●●●●●●●●●●●を確実 にし,それらの●●●●●●を介してユーザーへのメリットを生じさせる ためにICチップ上の情報の正確性を常に確保しようとする点にあり,本 20 件書換制限措置を講ずる必要性がある旨主張する。 しかし,本件書換制限措置が講じられているトナーカートリッジ製品は, C830シリーズ及びその後継機種に対応するもののみであり,これの機 種についてだけ,本件書換制限が必要であることについての立証はされて おらず,ICチップのメモリの書換えがされたリサイクル品の存在によっ 25 て,●●●●●●●●●●●●●●●●●に支障が生じたり,生じるおそ 36 れが存在することを裏付ける追加の主張立証もされていない。このことは, ICチップのメモリの書換えがされたリサイクル品の存在によって,●● ●●●●●●●●●●●●●●●に支障が生じた事実もないし,生じるお それすらないことを示している。 また,被控訴人らは,2014年(平成26年)から2018年(平成 5 30年)の過去5年間に限っても,これまで,控訴人製トナーカートリッ ジ製品のリサイクル品を約36万本以上販売してきており,そのうち,9 6%以上のICチップは全て書換えがされている。リサイクル事業者全体 では,同期間の原告製トナーカートリッジ製品のリサイクル品の販売台数 は約580万本にも及び,このうち560万台ほどのICチップは全て書 10 換えがされているものと推計される(乙46)。こうした事実は,控訴人 が主張するような本件書換制限措置の必要性が存在しないことを裏付け るに十分なものである。 したがって,控訴人 ップは全て書 10 換えがされているものと推計される(乙46)。こうした事実は,控訴人 が主張するような本件書換制限措置の必要性が存在しないことを裏付け るに十分なものである。 したがって,控訴人の上記主張は,失当である。 エ 小括 15 以上によれば,控訴人は,リサイクル品が装着された場合にディスプレ イ上に「?」が表示されるような設定と本件各特許権とは何ら関わりのな い本件書換制限措置という妨害行為を組み合わせる方法で,人為的に,純 正品と同等のリサイクル品を競争上劣位におき,被控訴人らリサイクル事 業者の取引を妨害しているものであり,かかる控訴人の行為は,必要性も 20 合理性も欠き正当化されないから,競争者に対する取引妨害として独占禁 止法(独占禁止法19条,2条9項6号,一般指定14項)に抵触する。 このように控訴人の本件各特許権に基づく本件請求は,消尽の成立を妨 げた上でされた権利行使であって,また,独占禁止法違反を前提とした権 利行使であるから,権利の濫用に当たり許されない。 25 したがって,原判決の判断に誤りはない。 37 6 争点6(差止めの必要性)について (控訴人の主張) (1) 原告製品には,原告電子部品が保持部材によって保持されて搭載され,同 保持部材は,上下2か所がピンにより圧着され(甲10の写真6-1~6- 4),この圧着ピンを破壊しない限り原告電子部品を取り外すことはできず, 5 圧着ピンを破壊した後は,取り外した保持部材を再度圧着することができな い。このため,被告製品は,原告製品からその保持部材を破壊して原告電子 部品を取り出し,被告電子部品に入れ替えた上,保持部材の4か所に接着剤 を付し,トナーカートリッジに再度装着して製造される(甲10の写真3- 1~3-4-1,4-2,乙15の写真2)。 10 この 部品を取り出し,被告電子部品に入れ替えた上,保持部材の4か所に接着剤 を付し,トナーカートリッジに再度装着して製造される(甲10の写真3- 1~3-4-1,4-2,乙15の写真2)。 10 このように被告電子部品が被告製品と物理的に一体となっており,かつ, 被告電子部品を単体では製造,販売等をしておらず,被告電子部品が組み込 まれた被告製品を製造,販売等しているから,控訴人は,被告製品の販売を 差止めの対象とせざるを得ないから,その差止めの必要がある。 この点に関し,被控訴人らは,被告電子部品を用いない被告製品の製造, 15 販売を準備しているから,被告製品の販売の差止めの必要性はない旨主張す るが,仮に被控訴人らが電子部品(ICチップ)の設計変更をしたとしても, 被控訴人らは,容易に設計変更前の被告電子部品を用いて被告製品の製造, 販売をすることが可能であるから,被控訴人らの主張する設計変更の事実の 有無やその設計変更の内容如何にかかわらず,本件において,被告製品の販 20 売等の差止めの必要性は依然として優に認められる。 (2) 被告電子部品は,被告製品と物理的に一体となっており,被告製品から被 告電子部品を取り外すには,被告製品の保持部材を破壊しなければならない ことからすると,被告製品全体が「侵害の行為を組成した物」(特許法100 条2項)に該当し,その廃棄の必要性がある。 25 38 また,実質的にも,被告電子部品を廃棄する際に,被告製品から取り外す には,被告製品の保持部材を破壊しなければならず,被告電子部品のみを廃 棄請求の対象としても執行の実効性がないことになるから,この点において も,被告製品全体を廃棄請求の対象とせざるを得ない。 さらに,被控訴人らは,今後回収する空になったトナーカートリッジを用 5 いて,本件各特許権 ても執行の実効性がないことになるから,この点において も,被告製品全体を廃棄請求の対象とせざるを得ない。 さらに,被控訴人らは,今後回収する空になったトナーカートリッジを用 5 いて,本件各特許権を侵害しない態様でリサイクルトナー製品を製造販売す ることは何ら禁じられないのであるから,現時点で保有する「侵害の行為を 組成した物」である被告製品について廃棄請求を認めても,被控訴人らに酷 な結果になることもない。 (3) 以上のとおり,被告製品全体の販売等の差止め及び廃棄の必要性があ 10 り,これに反する被控訴人らの主張は理由がない。 (被控訴人らの主張) (1) 被告製品から被告電子部品を保持する保持部材を取り外して,被告電子 部品を取り出した上で,これを再度組み付けなおして利用することができる から,被告製品と被告電子部品は可分であって物理的に一体となっているも 15 のとはいえないから,被告製品全体の販売の差止めは,過剰であり,その必 要性はない。 また,被控訴人らは,現在,被告電子部品(設計変更後)からさらに設計 を変更した製品(以下「本件再設計変更品」という。)を搭載したリサイクル トナーカートリッジを製造・販売するようになっており,被告電子部品を搭 20 載したリサイクルトナーカートリッジの製造・販売を行っておらず,また今 後も行うことはないこと(乙80)からすると,本件各特許権の侵害のおそ れはないから,差止請求の要件を欠いている。 (2) また,現時点において,被控訴人らは,被告電子部品を搭載した被告製 品を保有しておらず(乙87),「侵害の行為を組成した物」が存在しない 25 から,控訴人の廃棄請求はその要件を欠いている。 39 すなわち,トナーカートリッジ製品である被告製品と被告電子部品は, 可分であって物理 (乙87),「侵害の行為を組成した物」が存在しない 25 から,控訴人の廃棄請求はその要件を欠いている。 39 すなわち,トナーカートリッジ製品である被告製品と被告電子部品は, 可分であって物理的に一体とはいえないこと,物の発明においてその物があ る構成物の一部をなす場合には,その構成物の特許発明の対象である物以外 の部分は,「侵害の行為を組成した」とはいえないこと,また,現時点にお いて,被控訴人らは,被告電子部品を搭載した被告製品を保有していないこ 5 と(乙87)から,被告製品の廃棄請求を認める余地はない。 7 争点7(控訴人の損害額)について (控訴人の主張) (1) 特許法102条2項に基づく損害額 ア 被告製品の販売に係る利益(限界利益)の額 10 被控訴人らは,平成25年4月から平成29年10月までの間,被告電 子部品(設計変更前)が搭載された被告製品(設計変更前)を販売し,同 年11月から令和3年8月3日までの間,被告電子部品(設計変更後)が 搭載された被告製品(設計変更後)を販売し,被告製品(設計変更前・設 計変更後。以下,単に「被告製品」という場合がある。)の販売総数は,2 15 万1000本を下らず,これにより被控訴人らが得た利益(限界利益)の 額は,合計8400万円(1本当たり4000円)を下らない。 被控訴人らによる被告製品の販売は本件各発明1ないし3に係る本件 各特許権の侵害行為に当たるから,特許法102条2項により,被控訴人 らが得た上記利益の額は,控訴人が上記侵害行為により受けた損害額と推 20 定される(以下,この推定を「本件推定」という場合がある。)。 イ 被控訴人らの主張について (ア) 被控訴人らは,被告製品から被告電子部品を保持する保持部材を取 り外して,被告電子部品を取り出した上で,こ ,この推定を「本件推定」という場合がある。)。 イ 被控訴人らの主張について (ア) 被控訴人らは,被告製品から被告電子部品を保持する保持部材を取 り外して,被告電子部品を取り出した上で,これを再度組み付けなおし て利用することができることから,控訴人の損害額は,被告電子部品の 25 販売価格又はその限界利益を基準として算定すべきである旨主張する。 40 しかしながら,原告製品においては,原告電子部品(ICチップ)は 「保持部材」の中に保持されているが,ユーザーが電子部品(ICチッ プ)を取り出すことは全く想定されていないから,「保持部材」は原告製 品の一部として完全に溶着されており,かかる「保持部材」を破壊しな ければ電子部品(ICチップ)を取り出すことはできない。そして,被 5 告製品についても,真正品である原告製品と同様に,ユーザーが被告電 子部品(ICチップ)を取り出すことは想定されておらず,「保持部材」 は被告製品の一部として接着剤で固く接着されており,かかる「保持部 材」を破壊しなければ被告電子部品(ICチップ)を取り出すことはで きないから,被告電子部品は被告製品と物理的に一体となっていること 10 は明らかである。 また,被告製品は,そこに含まれる被告電子部品が本件各発明1ない し3と同じ構成を備えていることによって,必然的に「画像形成装置本 体に対して着脱可能に設置される着脱可能装置に接触式の情報記憶装置 を設置した場合であっても,画像形成装置本15体のコネクタの本体側 15 端子との位置決め不良による接触不良が生じにくい,情報記憶装置及び 着脱可能装置を提供することができる」などの本件各発明1ないし3の 作用効果を享受しているから,被告製品ひいてはプリンタ等の画像形成 装置の機能に対しても寄与をしている。 したがって,被 装置及び 着脱可能装置を提供することができる」などの本件各発明1ないし3の 作用効果を享受しているから,被告製品ひいてはプリンタ等の画像形成 装置の機能に対しても寄与をしている。 したがって,被控訴人らの上記主張は理由がない。 20 (イ) また,被控訴人らは,被告電子部品は被告製品の一部品であること, 被告製品において本件各発明1ないし3の顧客吸引力がないこと,控訴 人は,被告電子部品を用いなくても,本件各特許権の侵害を回避しつつ, 「?」と表示されない再生品を製造することができることを認めている こと,被告製品の売上げに原告プリンタの販売台数が寄与していること, 25 被告製品においては本件各特許以外の控訴人の他の特許が実施されて 41 いること,被告製品の価格は原告製品の販売価格よりも大幅に安価であ り,被控訴人らと控訴人の業務態様等が相違すること,被控訴人らが被 告製品を販売しなかったとしても,その販売分は,本件書換制限措置に より残量表示がされないままのリサイクル品に置き換わるにすぎない ことは,本件推定の覆滅事由に該当し,かかる事情を考慮すると,本件 5 推定は全部覆滅される旨主張する。 しかしながら,被告製品において本件各発明1ないし3の顧客吸引力 がないとする点は客観的な根拠に基づくものではなく,また,被控訴人 らが被告製品を販売しなかったとしても,その販売分は,本件書換制限 措置により残量表示がされないままのリサイクル品に置き換わるにすぎ 10 ないとはいえず,被控訴人らが挙げる上記事情は,いずれも本件各発明 1ないし3が被告製品の売上げに寄与又は貢献していることを否定する ものではない。 したがって,被控訴人らの上記主張は失当である。 (2) 特許法102条3項に基づく損害額 15 ア 本件各特許権の実施料は,被告製品1 寄与又は貢献していることを否定する ものではない。 したがって,被控訴人らの上記主張は失当である。 (2) 特許法102条3項に基づく損害額 15 ア 本件各特許権の実施料は,被告製品1本当たり2000円を下らないか ら,控訴人の特許法102条3項に基づく実施料相当額の損害額は,42 00万円(2000円×2万1000本)を下らない。この場合の実施料 率は,被控訴人らが提出した乙37の記載を根拠として被控訴人らが販売 する被告製品の平均小売価格である約1万3000円を基に算出した場合 20 には,約15.4%となる。 イ この点に関し,被控訴人らは,本件各発明1ないし3の効果はないに等 しく,本件各発明1ないし3に特段の価値を見いだすことはできないなど として,控訴人の実施料相当額の損害額は,被告電子部品の価格に実施料 率0.1%を乗じて算定すべきである旨主張する。 25 しかしながら,本件各発明1ないし3により,原告プリンタと原告プリ 42 ンタ製品で使用されるトナーカートリッジ製品の間での接触不良等の電 気的な問題が生じない等の課題解決があることから,本件各発明1ないし 3の効果は当然に認められること,特許権侵害をした者に対して事後的に 定められるべき実施に対し受けるべき料率は,通常の実施料率に比べて自 ずと高額になるであろうことを考慮すべきであること,本件各発明1ない 5 し3については,控訴人は自己実施することのみを方針としており,これ まで第三者に実施許諾をしたことはなく,第三者に実施許諾することは想 定していなかったことを踏まえると,本件においては,通常よりも高い実 施料率が定められるべきであるから。被控訴人らの上記主張は失当である。 (3) 弁護士費用等 10 被控訴人らによる本件各特許権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士 においては,通常よりも高い実 施料率が定められるべきであるから。被控訴人らの上記主張は失当である。 (3) 弁護士費用等 10 被控訴人らによる本件各特許権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士 費用及び弁理士費用相当の控訴人の損害額は,840万円を下らない。 (4) 小括 ア 前記(1)ないし(3)によれば,控訴人が被控訴人らによる本件各特許権の 侵害行為により受けた損害額は,9240万円(前記(1)又は(2)の損害額及 15 び前記(3)の弁護士費用等の合計額)を下らない。 イ 被控訴人らは,被控訴人らが使用済みの原告製品から原告電子部品を取 り外し,被告電子部品に取り替えて被告製品を製造している行為が,特許 権侵害の不法行為と評価されるとすれば,それは,控訴人の本件書換制限 措置により誘引されたものであるから,賠償すべき損害額の算定に当たっ 20 ては,本件書換制限措置をしたことを控訴人の過失と評価し,過失相殺が されるべきである旨主張する。 しかしながら,控訴人による本件書換制限措置は何ら問題のない行為で あること,本件各発明1ないし3は,設計変更により回避可能でもあるこ とからすると,本件各特許権侵害は控訴人が誘引したものとはいえないか 25 ら,控訴人には何ら過失は存在しない。 43 したがって,被控訴人らの上記主張は失当である。 ウ よって,控訴人は,被控訴人らに対し,本件各特許権の共同不法行為に よる損害賠償請求権に基づき,上記損害額の一部である1000万円及び これに対する訴状送達の日の翌日(被控訴人DSジャパンについて平成2 9年12月9日,被控訴人ロジコ及び被控訴人奥美濃について各同月8日) 5 から各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の 連帯支払を求める。 (被控訴人らの主張) (1) 特許法102 月9日,被控訴人ロジコ及び被控訴人奥美濃について各同月8日) 5 から各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の 連帯支払を求める。 (被控訴人らの主張) (1) 特許法102条2項に基づく損害額の主張に対し ア 被告製品の販売に係る利益(限界利益)の額について 10 被控訴人らが平成25年4月から令和3年8月3日までの間に販売した 被告製品の販売総数が2万1000本を下らないこと,これにより被控訴 人らが得た利益(限界利益)の額が8400万円を下らないことは,争わ ない。 被控訴人らが得た上記利益の額は,特許法102条2項により,控訴人 15 が受けた損害額と推定されるとの控訴人の主張は争う。 イ 推定覆滅事由等 (ア) ①被告電子部品は,被告製品に搭載された一部品である情報記憶装 置であること,②被告製品から被告電子部品を保持する保持部材を取り 外して,被告電子部品を取り出した上で,これを再度組み付けなおして 20 利用することができるから,被告製品と被告電子部品は可分であって物 理的に一体となっているものとはいえないこと,③被告電子部品の原価 は1個当たり100円程度であるのに対し(乙74),被告製品の平均 小売価格は1万3000円程度(乙37),原告製品の定価は3万円台 後半から4万円台前半であること(乙34,75),④本件各発明1な 25 いし3は,情報記憶装置の物理的形状に係る情報記憶装置の発明であっ 44 て,トナーカートリッジの発明ではないことからすると,被告製品全体 の販売利益(限界利益)と控訴人の損害との間に相当因果関係はないか ら,控訴人の損害額は,被告電子部品の価格の限界利益を基準として算 定すべきである。 (イ) 仮に被告製品の限界利益を基準に控訴人の損害額を算定するとして 5 も,前記(ア) に相当因果関係はないか ら,控訴人の損害額は,被告電子部品の価格の限界利益を基準として算 定すべきである。 (イ) 仮に被告製品の限界利益を基準に控訴人の損害額を算定するとして 5 も,前記(ア)①ないし④の事情(被告電子部品は被告製品の一部品であ ること等),被告製品において本件各発明1ないし3の顧客吸引力がな いこと,控訴人は,被告電子部品を用いなくても,本件各特許権の侵害 を回避しつつ,「?」と表示されない再生品を製造することができること を認めていること,被告製品の売上げに原告プリンタの販売台数が寄与 10 していること,被告製品においては本件各特許以外の控訴人の他の特許 が実施されていること,被告製品の価格は原告製品の販売価格よりも大 幅に安価であり,被控訴人らと控訴人の業務態様等が相違すること,被 控訴人らが被告製品を販売しなかったとしても,その販売分は,本件書 換制限措置により残量表示がされないままのリサイクル品に置き換わ 15 るにすぎないことは,以下のとおり,本件推定の推定覆滅事由に該当す る。 a 被告製品において本件各発明1ないし3の顧客吸引力がないこと等 (a) 本件明細書等1ないし3(甲4ないし6)には,本件各発明1な いし3の作用効果は,装置本体への脱着可能装置(トナーカートリ 20 ッジ)の着脱時に,情報記憶装置の電気回路においてアースが充分 にとれないことによる電気的な破損が生じにくく,また,端子の本 体側端子に対するずれを最低限に抑えることができる情報記憶装 置を提供すること,及び接触式の情報記憶装置を設置した場合であ っても,情報記憶装置本体のコネクタの本体側端子との位置決め不 25 良による接触不良が生じにくい,情報記憶装置を提供することにあ 45 るとの記載がある。 しかし,①被控訴人らがリサイクルトナーカートリッ 報記憶装置本体のコネクタの本体側端子との位置決め不 25 良による接触不良が生じにくい,情報記憶装置を提供することにあ 45 るとの記載がある。 しかし,①被控訴人らがリサイクルトナーカートリッジについて これまで受けたクレーム中には,ICチップに電気的な破損が生じ たことに起因する故障に関するクレームや情報記憶装置本体のコ ネクタの本体側端子との位置決め不良による接触不良に関するク 5 レームは,1件も確認できなかったこと(乙2,76),②原告製 プリンタのうち,C830及びC840シリーズ以外の機種に対応 する控訴人製のトナーカートリッジには,本件各発明1ないし3の 構造を持つICチップは採用されていないこと,③一般のユーザー は,被告製品の印刷性能等のトナーカートリッジとしての品質や価 10 格を基準として消費行動を選択しており,電気的な破損,端子のず れ又は接触不良の生じない製品を選択した結果として被告製品を 選択しているのではなく,トナーカートリッジの見えにくいところ に取り付けられたICチップの形状や機能に基づいて商品選択を するはずもないこと,④被控訴人らは,本件各発明1ないし3の作 15 用効果を被告製品のセールスポイントとして顧客に訴えたことは 一度もなく(乙76),控訴人自身も,原告製品の広告宣伝や原告 プリンタのカタログにおいて,接触不良が少ないなど,本件各発明 1ないし3の効用をうたっていないこと(乙34,75)からする と,被告製品における本件各発明1ないし3の顧客誘引力は皆無で 20 ある。 ⒝ 控訴人は,被告電子部品を用いなくても,本件各特許権の侵害を 回避しつつ,「?」と表示されない再生品を製造することができるこ とを認めていること(甲74等),被告製品は,原告プリンタにのみ 使用可能であり,ユーザーが被告製品を購 いなくても,本件各特許権の侵害を 回避しつつ,「?」と表示されない再生品を製造することができるこ とを認めていること(甲74等),被告製品は,原告プリンタにのみ 使用可能であり,ユーザーが被告製品を購入するのは,ユーザーが 25 原告プリンタを使用していることによるものであるところ,原告プ 46 リンタは好調な売れ行きを維持しており(甲58),被告製品の売上 げに原告プリンタの販売台数が寄与していることに照らすと,本件 各発明1ないし3が被告製品の売上げに寄与又は貢献していると はいえない。 b 被告製品に控訴人の他の特許が実施されていること 5 原告製品のうち,原告電子部品以外の部分に控訴人の有する5件の 特許(特許第3868146号(乙82),特許第4371317号 (乙83),特許第4371318号(乙84),特許第53276 48号(乙85),特許第5505003号(乙86))が実施され ている。これらの特許は,ランニングコストの低減や環境破壊低減, 10 トナー搬送不良による印刷不良や異常画像の防止,トナーカートリッ ジの交換の便宜性を高めるなどのプリンタ使用上の効用をユーザーに もたらすものである。 被告製品は,使用済みの原告製品から原告電子部品を取り外し,被 告電子部品に取り替えた上で,トナーを充填して製造した再生品であ 15 り,被告製品においても,これらの特許が実施されている。 被告製品の売上げに影響を与えるのは,ICチップの形状などでは なく,トナーカートリッジ本体等であり,これらの特許による効用で あるから,この意味でも,本件各発明1ないし3が被告製品の売上げ に寄与又は貢献しているとはいえない。 20 c 被控訴人らと控訴人の業務態様等が相違すること 被告製品の平均小売価格は1万3000円程度であって,原告製品 の 各発明1ないし3が被告製品の売上げ に寄与又は貢献しているとはいえない。 20 c 被控訴人らと控訴人の業務態様等が相違すること 被告製品の平均小売価格は1万3000円程度であって,原告製品 の価格(3万円台後半から4万円台前半)と比較すれば大幅に安価で ある。このような価格差を前提とすれば,被控訴人らと控訴人の業務 態様等に相違が存在するから,被告製品の販売がなかった場合に,被 25 告製品の販売による利益額を控訴人がそのまま得たであろうとはいえ 47 ない。 d 被告製品の販売分は残量表示がされないままのリサイクル品に置き 換わること 控訴人は,残量が適切に表示されないまま販売されているリサイク ル品が存在すること(甲67ないし71)を挙げて,残量表示がなく 5 ても販売に支障がない旨述べるが,そうであるなら,被控訴人らがI Cチップを交換した被告製品を販売していなかったとしても,その販 売分は,残量表示がされないままのリサイクル品に置き換わるにすぎ ない。 (ウ) 以上のとおり,本件推定を覆す覆滅事由が存在し,かかる事情を考 10 慮すると,本件推定は全部覆滅されるというべきである。 (2) 特許法102条3項に基づく損害額の主張に対し 控訴人の主張は争う。 前記(1)イ(ア)①ないし④の事情等に照らすと,控訴人の損害額は,被告電 子部品の価格を基準として算定すべきである。 15 次に,電子・通信用部品の実施料率(イニシャルペイメント無し)は,平 成4年度から平成10年度までの平均値が3.3%(乙78),電気の実施 料率は,平均2.9%(平成21年から平成22年までの調査結果)(乙7 9)である。しかし,前述のとおり,本件各発明1ないし3の効果はないに 等しく,本件各発明1ないし3に特段の価値を見いだすことはできないこと, 20 控 平成21年から平成22年までの調査結果)(乙7 9)である。しかし,前述のとおり,本件各発明1ないし3の効果はないに 等しく,本件各発明1ないし3に特段の価値を見いだすことはできないこと, 20 控訴人は,本件各特許権侵害を回避できると主張していること等の事情も考 慮すれば,控訴人の損害額の算定に当たっては,訴訟における料率が事後的 に定められる点を考慮したとしても,本件各発明1ないし3の実施に対して 受けるべき実施料率は,0.1%にも満たないというべきである。また,仮 に被告製品の価格を基準として損害額を算定する場合には,実施料率はさら 25 に僅少な割合とすべきである。 48 そして,被告電子部品の価格は100円程度であり,これに実施料率0. 1%を乗ずると,本件各発明1ないし3の実施に対して受けるべき金銭の額 は,2100円程度となる(100円×0.1%×2万1000本)。 (3) 弁護士費用等の主張に対し 控訴人の主張は争う。 5 (4) 過失相殺 被控訴人らにおいて,使用済みの原告製品から原告電子部品を取り外し, 被告電子部品に取り替えて,被告製品を製造している行為が,特許権侵害の 不法行為と評価されるとすれば,それは控訴人の本件書換制限措置により誘 引されたものであるから,賠償すべき損害額の算定に当たっては,本件書換 10 制限措置をしたことを控訴人の過失と評価し,過失相殺がされるべきである。 また,本件書換制限措置は,原告製品のごく一部にのみ実施されている特 許権によって原告製品のリサイクルを阻止しようとするものであり,資源の 有効活用に関する法整備・趨勢と逆行し,このような観点からも,控訴人に よる本件書換制限措置は過失相殺の対象とされるべきである。 15 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書等1ないし3の記載事項等 効活用に関する法整備・趨勢と逆行し,このような観点からも,控訴人に よる本件書換制限措置は過失相殺の対象とされるべきである。 15 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書等1ないし3の記載事項等について 以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第4の1記載のと おりであるから,これを引用する。 (1) 原判決56頁6行目から9行目までを次のとおり改める。 20 「(1) 本件各発明1ないし3について 本件明細書等1ないし3(甲4ないし6)には,次のような記載がある (以下,段落番号を引用するときは,本件明細書等1については「【000 1】①」,本件明細書等2については「【0001】②」,本件明細書等3に ついては「【0001】③」などと表記する場合がある。)。」 25 (2) 原判決58頁11行目を「(ア) 本件各発明1について」と,59頁10 49 行目を「(イ) 本件各発明2について」と,61頁3行目を「(ウ) 本件各発 明3について」と改める。 (3) 原判決81頁14行目から82頁17行目までを次のとおり改める。 「(2) 本件各発明1ないし3の技術的意義 前記(1)の記載によれば,本件明細書等1ないし3には,本件各発明1 5 ないし3の技術的意義に関し,次のような開示があることが認められる。 ア 本件各発明1について 従来から,複写機等の画像形成装置においては,画像形成装置本体 に対して着脱可能に現像剤容器(トナー収容容器等)やプロセスカー トリッジ等の着脱可能装置が設置されており,画像形成装置本体に着 10 脱可能装置がセットされると,着脱可能装置に設置されたIDチップ 等の情報記憶装置(情報記録部,不揮発メモリ)の端子(金属パッド) が画像形成装置本体側のコネクタの端子と接触し,情報記 本体に着 10 脱可能装置がセットされると,着脱可能装置に設置されたIDチップ 等の情報記憶装置(情報記録部,不揮発メモリ)の端子(金属パッド) が画像形成装置本体側のコネクタの端子と接触し,情報記憶装置と画 像形成装置本体との間で情報のやりとりをすることで,画像形成装置 本体と着脱可能装置との充実した品質管理がされているが,従来の接 15 触式の情報記憶装置においては,画像形成装置本体への着脱可能装置 の着脱時に,情報記憶装置の電気回路においてアースが充分にとれず に電気的に浮いた状態となり,電気的な破損が生じてしまう可能性が あるという課題があった(【0001】①ないし【0004】①)。 本件各発明1は,上記課題を解決し,画像形成装置本体に対して着 20 脱可能に設置される着脱可能装置に,接触式の情報記憶装置を設置し た場合であっても,情報記憶装置に電気的な破損が生じにくい,情報 記憶装置を提供するものであり,上記課題を解決するための手段とし て,請求項1,2及び6記載の構成を採用した(【0005】①ないし 【0007】①,【0011】①)。 25 これにより本件各発明1は,情報記憶装置の基板に形成された穴部 50 に,画像形成装置本体の突起部に形成された接地用の本体側端子に係 合するアース端子を形成しているため,情報記憶装置に電気的な破損 が生じにくくなり,また,上記アース端子が,情報を通信するための 端子を構成する複数の金属板のうちの2つの金属板に間に挟まれる 位置に配設されているため,穴部の中心から最も離れた位置にある端 5 子までの距離を短くすることができ,端子の本体側端子に対する平行 度が量産ばらつき等の理由でずれてしまったとしても,そのずれを最 低限に抑えることができるという効果を奏する(【0022】①)。 イ 本件各発明2及び3について ができ,端子の本体側端子に対する平行 度が量産ばらつき等の理由でずれてしまったとしても,そのずれを最 低限に抑えることができるという効果を奏する(【0022】①)。 イ 本件各発明2及び3について 前記アの従来の接触式の情報記憶装置においては,情報記憶装置に 10 設けられた端子(金属パット)と画像形成装置本体の端子との位置決 め不良により,それらの接触部分がずれてしまう不具合(接触不良) が生じるおそれがあるという課題があり,情報記憶装置の端子を小さ くした場合には,かかる課題が重要なものとなっていた(【0001】 ②,③ないし【0004】②,③)。 15 本件各発明2及び3は,いずれも上記課題を解決し,画像形成装置 本体に対して着脱可能に設置される着脱可能装置に,接触式の情報記 憶装置を設置した場合であっても,画像形成装置本体のコネクタの本 体側端子との位置決め不良による接触不良が生じにくい,情報記憶装 置を提供することにあり,上記課題を解決するための手段として,本 20 件各発明2にあっては請求項1ないし4及び25記載の構成を,本件 各発明3にあっては請求項70,77,78及び80記載の構成を採 用した(【0005】②,③,【0006】②,【0007】②,【00 14】②,【0025】③)。 これにより本件各発明2及び3は,画像形成装置本体に対して着脱 25 可能に設置される着脱可能装置に,接触式の情報記憶装置を設置した 51 場合であっても,画像形成装置本体のコネクタの本体側端子との位置 決め不良による接触不良が生じにくい,情報記憶装置を提供すること ができるという効果を奏する(【0027】②,③)。」 2 争点1(被告電子製品(設計変更前)の本件各発明3の技術的範囲の属否(構 成要件3-70Aないし3-70Dの充足性))について 5 以下 ができるという効果を奏する(【0027】②,③)。」 2 争点1(被告電子製品(設計変更前)の本件各発明3の技術的範囲の属否(構 成要件3-70Aないし3-70Dの充足性))について 5 以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第4の2記載のと おりであるから,これを引用する。 (1) 原判決83頁5行目の「(設計変更後も含む。)」を削る。 (2) 原判決83頁9行目から11行目までを次のとおり改める。 「 したがって,被告電子部品(設計変更前)は,構成要件3-70Aない 10 し3-70Dを充足するから,本件各発明3の技術的範囲に属するものと 認められる。 これに反する被控訴人らの上記主張は理由がない。」 3 争点2-1(被告電子製品(設計変更後)の本件各発明1ないし3の構成要 件1-1D等の「穴部」の充足性等)について 15 (1) 本件発明1-1の「穴部」の意義について ア 本件発明1-1の特許請求の範囲(請求項1)には,「画像形成装置本 体に対して着脱可能に構成された着脱可能装置に設置される情報記憶装 置」は,「前記画像形成装置本体に設置された突起部に係合する穴部が形成 された基板」を備え,「前記基板に形成された前記穴部」は,「前記画像形 20 成装置本体の前記突起部に形成された接地用の本体側端子に接触するア ース端子が形成」され,「本体側端子に接触して,前記画像形成装置本体と の間で前記情報を通信するための端子」である「前記複数の金属板のうち 2つの金属板に間に挟まれる位置に配設された」との記載がある。 上記記載から,本件発明1-1の「穴部」は,「情報記憶装置」の「基板」 25 に形成され,「前記画像形成装置本体に設置された突起部」に「係合」する 52 こと,「穴部」は,「前記複数の金属板のうち2つの 記載から,本件発明1-1の「穴部」は,「情報記憶装置」の「基板」 25 に形成され,「前記画像形成装置本体に設置された突起部」に「係合」する 52 こと,「穴部」は,「前記複数の金属板のうち2つの金属板に間に挟まれる 位置に配設され」ること,「穴部」には「前記画像形成装置本体の前記突起 部に形成された接地用の本体側端子に接触するアース端子」が形成されて いることを理解できる。 「穴」とは,一般に,「くぼんだ所」又は「向こうまで突き抜けた所」を 5 意味すること(甲14)からすると,「穴部」は,このような部位を意味 するものといえる。 一方で,本件発明1-1の特許請求の範囲(請求項1)には,「穴部」 の形状を具体的に特定した記載はない。 イ(ア) 本件明細書等1(甲4)には,「前記画像形成装置本体に設置された 10 突起部」に「係合」し,「前記複数の金属板のうち2つの金属板に間に挟 まれる位置に配設され」る「穴部」に関し,下記のような記載がある(下 記記載中に引用する図36ないし40については別紙5を参照)。 記 【0112】 15 実施の形態5. 図36~図41にて,この発明の実施の形態5について詳細に説明す る。 図36は,実施の形態5における情報記憶装置535の基板を示す3 面図であって,前記実施の形態1における図29に相当する図である。 20 図37は,情報記憶装置535と保持部材534k(534k25)と コネクタ573eとを示す斜視図であって,3つの部材534k(53 4k25),535,573eの相対位置関係を示す斜視図である。図3 8は,情報記憶装置535がコネクタ573eに係合した状態を示す斜 視図である。また,図39は,情報記憶装置535の電気回路とコネク 25 25),535,573eの相対位置関係を示す斜視図である。図3 8は,情報記憶装置535がコネクタ573eに係合した状態を示す斜 視図である。また,図39は,情報記憶装置535の電気回路とコネク 25 タ573eの電気回路とを示す回路図である。図40(A)は情報記憶 53 装置535がコネクタ573eに保持された状態を示す正面図であって, 図40(B)は情報記憶装置535が位置決め用の穴部535b21を 中心に回転している状態を示す正面図である。… 本実施の形態5は,情報記憶装置535の基板535bに位置決め用 の穴部535b21が1つだけ形成されている点と,位置決め用の穴部 5 535b21が複数の矩形状の金属パッド35a1,35a2,35a 3(金属板)の間に配置されている点と,が前記各実施の形態のものと 相違する。 【0113】 図36を参照して,本実施の形態5における情報記憶装置としてのI 10 Dチップ535は,基板535bの重心よりも鉛直方向上方の位置に, 位置決め用の穴部535b21が形成されている。そして,この穴部5 35b21の内径部と周囲とには,接地(アース)用の金属端子535 dが設置されている。なお,本実施の形態5において,基板535bの 表面に形成された金属端子535dは,円環状の部分に対して2つの突 15 出部535d1が水平方向に延設されるように形成されている。 また,位置決め用の穴部535b21に対して,鉛直方向上方の位置 には1つの矩形状の金属パッド35a1が設置され,鉛直方向下方の位 置には2つの矩形状の金属パッド35a2,35a3が設置されている。 さらに,基板535bの裏側(キャップ部34Yに対向する側である。) 20 には,半球面状のエポキシ等の樹脂材料からなり情報 つの矩形状の金属パッド35a2,35a3が設置されている。 さらに,基板535bの裏側(キャップ部34Yに対向する側である。) 20 には,半球面状のエポキシ等の樹脂材料からなり情報記憶部を覆って保 護する保護部材535eが設けられている。本実施の形態5において, 基板535bの形状や保護部材535e等の裏面の構成・配置によるが, 内部にIC等の情報記憶部を有することもあって裏面で最も大きく重量 がある構成物であるところの保護部材535eの上方に穴部535b2 25 1を配置することで,前述したIDチップ535の重心の鉛直上方に穴 54 部535b21があるという位置関係を実現している。具体的には,図 40(A)を参照して,本実施の形態5におけるIDチップ535(情 報記憶装置)は,位置決め用の穴部535b21の中心位置が,IDチ ップ535の重心から距離Zaだけ上方になるように形成されている。 【0114】 5 図37を参照して,コネクタ573eは,樹脂製で中空の箱であるコ ネクタ本体573e21を有しており,そのコネクタ本体573e21 に1本の中空円筒で先端にテーパ形状を有する位置決めピン573e2 3(位置決め用の突起部)が水平方向に起立するように設けられている。 そして,この位置決めピン573e23には,接地用の本体側端子57 10 3e25(アース端子)が設置されている。この接地用の本体側端子5 73e25は,板状(又は線状)の金属部材であって,その一部がコネ クタ本体73e21と一体で形成された位置決めピン573e23の中 空部に収納され,その湾曲部が中空円筒の周面の一部に形成されたスリ ット状の開口から露出して円筒外周面から突出している。また,位置決 15 めピン573e23(接地用の本体側端子573e25)に対 中 空部に収納され,その湾曲部が中空円筒の周面の一部に形成されたスリ ット状の開口から露出して円筒外周面から突出している。また,位置決 15 めピン573e23(接地用の本体側端子573e25)に対して,鉛 直方向上方の位置には1つの本体側端子73e2が設置され,鉛直方向 下方の位置には2つの本体側端子73e2が設置されている。これらの 本体側端子73e2は,板状(又は線状)の金属部材であって,設置位 置が異なる以外は,前記各実施の形態のものとほぼ同様に形成されてい 20 る。 また,コネクタ本体573e21の下方であって,位置決めピン57 3e23を挟む両側の位置には,互いの先端内側のテーパ面が線対称に なるよう形成された一対のリブからなり,IDチップ535の両側端面 であって穴部535b21の中心よりも鉛直下方の箇所に対向する一対 25 の規制部材としての振れ防止部材573e24が設けられている。 55 【0115】 また,保持部材534k(保持部)は,前記各実施の形態のものと同 様に,トナー容器(532Y)に固定され,コネクタ573eとIDチ ップ535との間に位置する。…図37を参照して,本実施の形態5に おける保持部材534kは,第1対向部534k24が垂直方向の軸を 5 基準に線対称に構成され,IDチップ535の上端の2つの角から穴部 535e21の両側までの領域を覆うように形成されている。また,保 持部材534kは,下方においても基板535bの最下段の金属パッド 35a3よりも下方を覆うように形成されており,これらの構成により 保持部材534kからのIDチップ535の脱落を防止している。 10 さらに,保持部材534kにおいて,コネクタ573eの4つの本体 側端子73e2,573e25に対向する領域 により 保持部材534kからのIDチップ535の脱落を防止している。 10 さらに,保持部材534kにおいて,コネクタ573eの4つの本体 側端子73e2,573e25に対向する領域を含む第1対向部534 k24の大部分は開口となっている。…そして,トナー容器532Yの 装着時には,位置決めピン573e23の開口534k22への侵入に 続いて,振れ防止部材573e24(一対の規制部材)も開口534k 15 22を介して保持部材534kの内部に侵入することになる。…その一 方で,IDチップ535の穴部535b21に位置決めピン573e2 3が挿入されるときにIDチップ535が押されることになるが,第2 対向部534k25が基板535bを後ろから支えることになるため, 端子同士の当接状態を維持することができる。 20 【0116】 図38は,実施の形態5におけるトナー容器532Yが装置本体10 0に装着された際に,装置本体100側のコネクタ573eとIDチッ プ535の位置決めが完了して本体側端子73e2,573e25と上 述の金属パッド35a1~35a3,アース端子535dとが接続した 25 状態を示す概略斜視図である。なお,図38では,理解容易のため,コ 56 ネクタ573eとIDチップ535との間にある保持部材534k(5 34k25)と金属パッド35a1~35a3の図示は省略されている。 トナー容器532Yの一連の装着動作のうち,キャップ部534Yの 主基準及び従基準の位置決め穴部34a,34bが,キャップ受け部7 3の主基準及び従基準の位置決めピン73a,73bに嵌合されてキャ 5 ップ部534Yの位置決めがされるところまでは,前記実施の形態1の 装着動作と同じである。その後,キャップ部534Yの位置が定ま 3の主基準及び従基準の位置決めピン73a,73bに嵌合されてキャ 5 ップ部534Yの位置決めがされるところまでは,前記実施の形態1の 装着動作と同じである。その後,キャップ部534Yの位置が定まった 後に,IDチップ535の穴部535b21は,コネクタ573eの位 置決めピン573e23の先端のテーパに拾われるように位置決めピン 573e23に嵌合されて,IDチップ535の水平方向及び垂直方向 10 の位置が同時に決まる。さらに,図40(A)に示すように,基板53 5bの左右両側であって穴部535b21の中心よりも下方である下側 の縁部にコネクタ573e2の一対のリブから成る振れ防止部材573 e24(一対の規制部材)が侵入する。このときIDチップの姿勢が図 40(B)のようにずれていたとしても,リブ先端のテーパ面が上記縁 15 部に当接すると,それをトリガーにして重心の作用で姿勢を鉛直にする 方向に基板535bが回転し,回転方向(図40(B)に示す両矢印方 向の回転である。)の姿勢のずれを矯正する(図40(A)の状態にする)。 これによって,IDチップ535の位置決めが完了する。このとき,I Dチップ535のアース端子535dの一部(穴部535b21の内径 20 部に相当する部分である。)が,図38に示す位置決めピン573e23 の接地用の本体側端子573e25に接触して,IDチップ535の接 地(導通)がとられることになる。さらに,その接地がとられた後に, 図39(A)に示すように,IDチップ535の3つの金属パッド35 a(35a1,35a2,35a3)も,コネクタ573eの3つの本 25 体側端子73e2にそれぞれ接触して,IDチップ535と本体側コネ 57 クタ573e(装置本体100)との間で情報の伝達が可能になる。 【0117】 ネクタ573eの3つの本 25 体側端子73e2にそれぞれ接触して,IDチップ535と本体側コネ 57 クタ573e(装置本体100)との間で情報の伝達が可能になる。 【0117】 このように,本実施の形態5では,下記(1)から(5)のさまざま な工夫を加えたことで安価な構成で高精度の位置決め機構を実現してい る。… 5 (3)図38の装着完了状態において,コネクタ573e側の3つの本 体側端子73e2の湾曲部(接触部)を結ぶ線上に位置決め用の穴部5 35b21の穴中心を一致させるように穴部535b21と本体側端子 573e2の湾曲部との配置関係を調整している。これによって,位置 決め部である穴部535b21から接触部までの水平方向の距離を縮め 10 て0mm近傍にするにすることができる。その結果,3つの金属パッド 35a1,35a2,35a3と本体側端子73e2とが接触するとき の位置精度が向上する。 (4)位置決め用の穴部535b21の位置を,複数の金属パッド35 a1,35a2,35a3を並べたときに生じる複数の間隙のうち,い 15 ずれかの間隙に配置している。これによって,複数の金属パッド35a 1,35a2,35a3の並びの外側である上方又は下方に穴部を配置 した場合に比べて,位置決め用の穴部535b21の中心から最も離れ た位置にある金属パッド35a3までの距離(振り子の腕長さに相当す ることになる。)を短くすることができる。具体的には,金属パッド35 20 a1,35a2,35a3の並びの外側に穴部を配置した場合,腕長さ は穴中心から金属パッド3つ分の距離になるが,本実施の形態5では, 腕長さを金属パッド2つ分の距離にすることができる。振れの腕長さが 短くなることで,最も遠い位置の金属パッド35a3の本体側端子73 e2に対す から金属パッド3つ分の距離になるが,本実施の形態5では, 腕長さを金属パッド2つ分の距離にすることができる。振れの腕長さが 短くなることで,最も遠い位置の金属パッド35a3の本体側端子73 e2に対する平行度が量産ばらつき等の理由でずれてしまったとしても, 25 そのずれを最低限に抑えることができる。 58 (5)トナー容器を単品で保管する際,異物が保持部材534kの中に 入ってIDチップ535と対向部534k24,534k25との間に 挟まり位置がずれたままになってしまう恐れがある。このような課題に 対して,本実施の形態5では,IDチップ535の穴部535b21が 重心よりも鉛直方向上方にあるように,位置関係の工夫をしている。こ 5 れにより,一対のリブから成る振れ防止部材573e24が回転中心で ある穴部535b21よりも鉛直方向下方に侵入するときに,振れ防止 部材573e24(リブ)のテーパ面との当接をトリガーにして重心の 作用で姿勢を鉛直方向に沿うように回転することができる(位置ずれを 規制して姿勢を矯正することができる。)。その結果,位置決め用の穴部 10 535b21が1つであっても,複数の本体側端子573e2に対する 複数の金属パッド35a1,35a2,35a3の位置精度を同時に高 めることができる。 以上,(1)~(5)に記載したように,それぞれの5つの工夫は,そ れぞれの作用効果を発揮することになり,金属パッド35aの面積を極 15 小にするという安価な構成を採用しても,アース端子を含むIDチップ 535側の複数の端子35a,535dと複数の本体側端子573e2, 573e25との位置決めの精度を極めて高いものすることができる。 (イ) 前記(ア)の記載及び図36ないし40を総合すると,本件発明1-1 の「前記画像形成 dと複数の本体側端子573e2, 573e25との位置決めの精度を極めて高いものすることができる。 (イ) 前記(ア)の記載及び図36ないし40を総合すると,本件発明1-1 の「前記画像形成装置本体に設置された突起部」が「係合」し,「前記複 20 数の金属板のうち2つの金属板に間に挟まれる位置に配設され」る「穴 部」に相当するIDチップ535の穴部535b21は,装置本体10 0側のコネクタ573eの位置決めピン573e23の先端のテーパに 拾われるように位置決めピン573e23に嵌合されて,IDチップ5 35の水平方向及び垂直方向の位置が同時に決まること,IDチップ5 25 35の位置決めが完了すると,IDチップ535のアース端子535d 59 の一部(穴部535b21の内径部に相当する部分)が,位置決めピン 573e23の接地用の本体側端子573e25に接触して,IDチッ プ535の接地(導通)がとられること,その接地がとられた後に,I Dチップ535の3つの金属パッド35a(35a1,35a2,35 a3)も,3つの本体側端子73e2にそれぞれ接触して,IDチップ 5 535と本体側コネクタ573e(装置本体100)との間で情報の伝 達が可能になること,このような位置決めの機構によって,アース端子 を含むIDチップ535側の複数の端子35a,535dと複数の本体 側端子573e2,573e25との位置決めの精度を極めて高いもの にすることができることを理解できる。 10 そうすると,本件明細書等1には,本件発明1-1の「前記画像形成 装置本体に設置された突起部」に「係合」し,「前記複数の金属板のうち 2つの金属板に間に挟まれる位置に配設され」る「穴部」に相当するI Dチップ535の穴部535b21が,IDチップ535の水平方向及 び垂 本体に設置された突起部」に「係合」し,「前記複数の金属板のうち 2つの金属板に間に挟まれる位置に配設され」る「穴部」に相当するI Dチップ535の穴部535b21が,IDチップ535の水平方向及 び垂直方向の両方向の位置を決める位置決め用の穴部として機能するこ 15 との開示があることが認められる。 ウ 以上の本件発明1-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載,本件明細 書等1の記載及び「穴部」の一般的な意味を総合すれば,本件発明1-1 の「穴部」は,「情報記憶装置の基板」に形成され,「前記画像形成装置 本体に設置された突起部」に「係合」し,「前記複数の金属板のうち2つの 20 金属板に間に挟まれる位置に配設され」た基板を突き抜けた空間であって, 情報記憶装置の水平方向及び垂直方向の位置を決める機能を有するもの と解される。 エ これに対し被控訴人らは,①「穴」は,「向こうまで突き抜けた所」を意 味するものであり,「向こうまで突き抜け」ているということは,向こうと 25 手前を峻別する境界が存在し,かつ,その境界によって囲まれていること 60 となるが,縁部が閉じていないのであれば,向こうと手前とを峻別する境 界すらないから,本件発明1-1の「穴部」とはいえない,②控訴人は, 本件特許権1の出願経過において,切欠部を開示した実願平1-1176 64号(実開平3-57074号)のマイクロフィルム(乙17)を引用 例として拒絶理由通知を受けた際に,「穴部又は切欠部」の「切欠部」を削 5 除する補正を行い(乙16ないし20),特許請求の範囲から,「切欠部」 を有する情報記憶装置を除外した経緯があることからすれば,「穴部」と は,切取部分の縁部が全て閉じているものを指す旨主張する。 しかしながら,本件発明1-1の特許請求の範囲(請求項1)及び本件 明細書等1には,「穴 憶装置を除外した経緯があることからすれば,「穴部」と は,切取部分の縁部が全て閉じているものを指す旨主張する。 しかしながら,本件発明1-1の特許請求の範囲(請求項1)及び本件 明細書等1には,「穴部」の形状を縁部が全て閉じているものに限定する 10 記載はなく,前記ウのとおり,「情報記憶装置の基板」に形成され,「前 記画像形成装置本体に設置された突起部」に「係合」し,「前記複数の金属 板のうち2つの金属板に間に挟まれる位置に配設され」た基板を突き抜け た空間であって,情報記憶装置の水平方向及び垂直方向の両方の位置を決 める機能を有するものであれば,本件発明1-1の「穴部」に当たるもの 15 と解されるから,被控訴人らの上記主張は採用することができない。 (2) 被告電子部品(設計変更後)の本件各発明1の構成要件充足性について 被告電子部品(設計変更後)が本件発明1-1の構成要件1-1Dの「前 記情報記憶部と前記端子とが保持されるとともに,前記画像形成装置本体に 設置された突起部に係合する穴部が形成された基板」にいう「穴部」及び構 20 成要件1-1F1の「前記基板に形成された前記穴部」にいう「穴部」を備 えるかについて判断する。 乙15及び弁論の全趣旨によれば,被告電子部品(設計変更後)は,設計 変更前の被告電子部品の穴部の上側の基板を切り取り,その縁部の一部が欠 けるに至ったものと認められる。そして,設計変更前の被告電子部品の穴部 25 の形状(別紙4の写真3)と被告電子部品(設計変更後)の設計変更前の穴 61 部に相当する部分を設計変更により切り取った部分を合わせた部分の形状 (別紙4の写真6)によれば,被告電子部品(設計変更後)の上記合わせた 部分は,「基板」に形成され,「前記複数の金属板のうち2つの金属板に間に 挟まれる位置に配設され」た基板を突 分を合わせた部分の形状 (別紙4の写真6)によれば,被告電子部品(設計変更後)の上記合わせた 部分は,「基板」に形成され,「前記複数の金属板のうち2つの金属板に間に 挟まれる位置に配設され」た基板を突き抜けた空間であって,上記合わせた 部分のうちの設計変更前の穴部に相当する部分が「画像形成装置本体」(プリ 5 ンタ)の「突起部」に「係合」し,被告電子部品の水平方向及び垂直方向の 両方の位置を決める機能を有するものと認められるから,構成要件1-1D 及び1-1F1の「穴部」に該当する。 そうすると,被告電子部品(設計変更後)は,本件発明1-1の構成要件 1-1D及び1-1F1の「穴部」を備え,上記各構成要件を充足するから, 10 本件発明1-1の技術的範囲に属するものと認められる。同様に,被告電子 部品(設計変更後)は,本件発明1-2及び1-6の技術的範囲に属するも のと認められる。 これに反する被控訴人らの主張は採用することができない。 (3) 被告電子部品(設計変更後)の本件各発明2及び3の構成要件充足性につ 15 いて ア 本件発明2-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載から,本件発明2 -Cの「穴部」は,「情報記憶装置」の「基板」に形成され,「前記画像形 成装置本体が備える本体側端子に設置された突起部」が「挿入」されるこ と,「穴部」には「前記アース端子」が設けられていることを理解できる。 20 「穴」とは,一般に,「くぼんだ所」又は「向こうまで突き抜けた所」を意 味すること(甲14)からすると,「穴部」は,このような部位を意味す るものといえる。一方で,本件発明2-1の特許請求の範囲(請求項1) には,「穴部」の形状を具体的に特定した記載はない。 本件明細書等2(甲5)の記載(【0117】②ないし【0122】②) 25 及び図36ないし4 ,本件発明2-1の特許請求の範囲(請求項1) には,「穴部」の形状を具体的に特定した記載はない。 本件明細書等2(甲5)の記載(【0117】②ないし【0122】②) 25 及び図36ないし40を総合すると,本件明細書等2には,本件発明2- 62 1の「前記画像形成装置本体が備える本体側端子に設置された突起部」が 「挿入」される「穴部」に相当するIDチップ535の穴部535b21 が,IDチップ535の水平方向及び垂直方向の両方向の位置を決める位 置決め用の穴部として機能することの開示があることが認められる。 以上の本件発明2-1の特許請求の範囲(請求項1)の記載,本件明細 5 書等2の記載及び「穴部」の一般的な意味を総合すれば,本件発明2-1 の「穴部」は,「情報記憶装置の基板」に形成され,「前記画像形成装置 本体が備える本体側端子に設置された突起部」が「挿入」される,基板を 突き抜けた空間であって,情報記憶装置の水平方向及び垂直方向の位置を 決める機能を有するものと解される。 10 そして,前記(2)で説示したのと同様の理由により,被告電子部品(設計 変更後)は,本件発明2-1の構成要件2-1Cの「穴部」を備え,上記 構成要件を充足するから,本件発明2-1の技術的範囲に属するものと認 められる。同様に,被告電子部品(設計変更後)は,本件発明2-2ない し2-4,2-25及び2-49の技術的範囲に属するものと認められる。 15 これに反する被控訴人らの主張は採用することができない。 イ 前記2で説示したのと同様の理由により,被告電子部品(設計変更後) は,構成要件3-70Aないし3-70Dを充足するものと認められる。 次に,本件発明3-70の特許請求の範囲(請求項70)の記載から, 本件発明3-70の「穴部」は,「情報記憶装置」の「基板 変更後) は,構成要件3-70Aないし3-70Dを充足するものと認められる。 次に,本件発明3-70の特許請求の範囲(請求項70)の記載から, 本件発明3-70の「穴部」は,「情報記憶装置」の「基板」に備えられ, 20 「前記画像形成装置本体側端子」に設置された「水平方向に突出する突起 部」が「挿入」されることを理解できる。「穴」とは,一般に,「くぼんだ 所」又は「向こうまで突き抜けた所」を意味すること(甲14)からする と,「穴部」は,このような部位を意味するものといえる。一方で,本件 発明3-70の特許請求の範囲(請求項70)には,「穴部」の形状を具 25 体的に特定した記載はない。 63 本件明細書等3(甲6)の記載(【0117】③ないし【0122】③) 及び図36ないし40を総合すると,本件明細書等3には,本件発明3- 70の「前記画像形成装置本体側端子」に設置された「水平方向に突出す る突起部」が「挿入」される「穴部」に相当するIDチップ535の穴部 535b21が,IDチップ535の水平方向及び垂直方向の両方向の位 5 置を決める位置決め用の穴部として機能することの開示があることが認め られる。 以上の本件発明3-70の特許請求の範囲(請求項70)の記載,本件 明細書等3の記載及び「穴部」の一般的な意味を総合すれば,本件発明3 -70の「穴部」は,「情報記憶装置の基板」に形成され,「前記画像形 10 成装置本体側端子」に設置された「水平方向に突出する突起部」が「挿入」 される,基板を突き抜けた空間であって,情報記憶装置の水平方向及び垂 直方向の位置を決める機能を有するものと解される。 そして,前記(2)で説示したのと同様の理由により,被告電子部品(設計 変更後)は,本件発明3-70の構成要件3-70Fの「穴部」を備え, 15 上 方向の位置を決める機能を有するものと解される。 そして,前記(2)で説示したのと同様の理由により,被告電子部品(設計 変更後)は,本件発明3-70の構成要件3-70Fの「穴部」を備え, 15 上記構成要件を充足するから,本件発明3-70の技術的範囲に属するも のと認められる。同様に,被告電子部品(設計変更後)は,本件発明3- 77,3-78及び3-80の技術的範囲に属するものと認められる。 これに反する被控訴人らの主張は採用することができない。 (4) 小括 20 以上のとおり,被告電子部品(設計変更後)は,本件各発明1ないし3の 技術的範囲に属する。 4 争点3(無効の抗弁の成否)について (1) 争点3-1(本件各発明1ないし3の特開2002-198627号公報 (乙5)を主引用例とする進歩性の欠如)について 25 ア 乙5の記載事項 64 乙5には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1なし3, 5ないし7,11及び12については別紙6を参照)。 (ア) 【特許請求の範囲】 【請求項1】 印刷用記録材に関する情報を格納する記憶装置を備える 回路基板であって, 5 前記回路基板上において一の方向の両端部に配置されている2以上の 接地端子と, 前記回路基板上に配置されていると共に,前記印刷用記録材に関する情 報の書き込みおよび読み出しに用いられる複数の端子とを備える回路基 板。 10 (イ) 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,印刷用記録材を収容する印刷記録 材収容体に備えられる回路基板に関する。 【0002】 【従来の技術】近年,インクカートリッジ内のインクに関する情報を格 15 納する記憶装置を有する回路基板を備えたインクカートリッジが実用化 されている。回 する。 【0002】 【従来の技術】近年,インクカートリッジ内のインクに関する情報を格 15 納する記憶装置を有する回路基板を備えたインクカートリッジが実用化 されている。回路基板には,プリンタからの電源供給,格納情報等を受 け取るため,あるいは,格納されている情報をプリンタに対して送出す るための端子が備えられている。 【0003】従来の端子の配置構造について図12を参照して説明する。 20 回路基板500は,接地端子510を中心にして,その一側にデータ入 出力用端子520,他側にリード・ライト信号用端子530が配置され ている第1端子列と,第1端子列の上段に位置すると共に,電源端子5 40を中心にして,その一側にクロック信号用端子550,他側にチッ プセレクト信号用端子560が配置されている第2端子列とを備えてい 25 る。 65 【0004】プリンタ580には,これら各端子510~560に対応 して接触ピン570がそれぞれ備えられており,インクカートリッジが プリンタの装着部に装着されると各端子510~560と各接触ピン5 70とが相互に接触し,回路基板500とプリンタ580との間で電力, データ等のやりとりが可能となる。接地端子510は,インクカートリ 5 ッジが正しく装着されているか否かをプリンタ580にて判定するため に用いられており,プリンタ580の接地端子用ピンと接地端子510 との接触(導通)を検出することによってインクカートリッジの装着が 検出される。 【0005】 10 【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来,回路基板500 のズレ等により他の端子520~560と接触ピン570とが接触して いない場合にも,導通が検出され,インクカートリッジが装着されてい るものと判定されることが る課題】しかしながら,従来,回路基板500 のズレ等により他の端子520~560と接触ピン570とが接触して いない場合にも,導通が検出され,インクカートリッジが装着されてい るものと判定されることがあった。かかる場合には,インクカートリッ ジが装着されていると判定されているにもかかわらず,記憶装置に格納 15 されているデータの読み書きができないという問題があった。 【0006】本発明は,上記問題を解決するためになされたものであり, 回路基板上の端子に対する接触を正確に検出することができる回路基板 の端子配置構造を提供することを目的とする。また,印刷記録材収容体 が装着されたか否かの検出を正確に実行することのできる印刷記録材収 20 容体を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段及びその作用・効果】上記課題を解決する ために本発明の第1の態様は,印刷用記録材に関する情報を格納する記 憶装置を備える回路基板を提供する。本発明の第1の態様に係る回路基 25 板は,前記回路基板上において一の方向の両端部に配置されている2以 66 上の接地端子と,前記回路基板上に配置されていると共に,前記印刷用 記録材に関する情報の書き込みおよび読み出しに用いられる複数の端子 とを備えることを特徴とする。 【0008】本発明の第1の態様に係る回路基板によれば,回路基板上 において一の方向の両端部に配置されている2以上の接地端子を備える 5 ので,回路基板上の端子に対する接触を正確に検出することができる。 (ウ) 【0026】A.第1の実施例に係る回路基板の端子の構成例 図1~図3を参照して第1の実施例に係る回路基板の端子の構成につ いて説明する。図1は第1の実施例に係る回路基板の端子の構成例を示 す説明図である。図2は図1に示 実施例に係る回路基板の端子の構成例 図1~図3を参照して第1の実施例に係る回路基板の端子の構成につ いて説明する。図1は第1の実施例に係る回路基板の端子の構成例を示 す説明図である。図2は図1に示す回路基板の側面図である。図3は第 10 1の実施例に係る回路基板の端子とプリンタ側の接触ピンとの接触状態 を模式的に示す説明図である。 【0027】回路基板10は,略矩形状の外形を有しており,インクカ ートリッジに装着する際の位置決め用の貫通孔11,外周の一部に形成 されたインクカートリッジ装着時における位置決め用の切り欠き12を 15 備えている。回路基板10は,プリンタとの対向面13に複数の端子2 0~27を備え,インクカートリッジとの接合面14に各端子20~2 7と接続されている記憶装置30を備えている(図2参照)。 【0028】回路基板10の対向面13の上半分には,工場出荷時に記 憶装置30を試験する際に用いられる略円状の試験用端子20が備えら 20 れ,下半分には,上下に2列に配列されている略矩形状の複数の端子2 1~27を備えている。上側列に配列されている端子は,図1中左側か らデータ入出力用のI/O端子21,電源供給用の電源端子22,記憶 装置30を選択的にアクティブにするためのチップセレクト信号(選択 信号)CSを入力するためのチップセレクト端子23である。下側列に 25 配列されている端子は,図1中左側から接地端子24,記憶装置30に 67 対してリード・ライト制御信号W/Rを入力するためのリード・ライト 端子25,記憶装置30に対してクロック信号CLK(同期信号)を入 力するためのクロック端子26,および接地端子27である。 【0029】図1から明らかなように,本実施例に係る回路基板10は, 2列ある端子列のうち下側列の両端部に接地端子24 CLK(同期信号)を入 力するためのクロック端子26,および接地端子27である。 【0029】図1から明らかなように,本実施例に係る回路基板10は, 2列ある端子列のうち下側列の両端部に接地端子24,27を備え,接 5 地端子24,27よりも内側に他の端子21~23,25,26を備え ている。また,クロック端子26は接地端子24,27との間に配置さ れている。さらに,接地端子24,27は,電源端子22とは異なる列 に配置されていると共に,電源端子22の端子辺とその端子辺との間隔 が最も近い距離を取らない位置関係にある。すなわち,接地端子24, 10 27は,電源端子22に対する最近接端子ではない。なお,本実施例に おける接地とは,信号用の基準電圧を意味し,電圧の正負を問わないも のとする。 【0031】図3を参照して本実施例に係る回路基板10とプリンタ側 の接触ピンとの接触状態について説明する。プリンタ側には,これら各 15 端子21~27に対応して接触ピンP1~P7がそれぞれ備えられてお り,インクカートリッジがプリンタの装着部に装着されると各端子と各 接触ピンP1~P7とが相互に接触し,プリンタから回路基板10の記 憶装置30に対して電力が供給され,プリンタと記憶装置30との間で データのやりとりが可能となる。 20 【0032】接地端子24,27は,インクカートリッジが正しく装着 されているか否かをプリンタにて判定するために用いられており,プリ ンタは,プリンタ側の2本の接地端子用接触ピンP4,P7が接地端子 24,27とそれぞれ接触し,導通を検出することによってインクカー トリッジの装着を検出する。 25 【0033】本実施例に係る回路基板10は,端子の配列方向に対する 68 垂直並びに水平の傾斜,およびズレの影響を最も受けやすく,端子と接 触ピ よってインクカー トリッジの装着を検出する。 25 【0033】本実施例に係る回路基板10は,端子の配列方向に対する 68 垂直並びに水平の傾斜,およびズレの影響を最も受けやすく,端子と接 触ピンとの不接触が発生しやすい両端部に接地端子24,27を備えて いる。したがって,プリンタが接地端子24,27と接地端子用接触ピ ンP4,P7との接触を検出した際には,他の端子21~23,25, 26と他の接触ピンP1~P3,P5,P6とがそれぞれ接触していな 5 い可能性は極めて低く,インクカートリッジの装着を検出したにもかか わらず記憶装置30に対するアクセスができないといった事態を回避す ることができる。 【0034】また,接地端子24,27は電源端子22に対する最近接 端子ではないので,電源端子22と接地端子24,27との短絡を防止 10 することができる。 (エ) 【0039】C.第1の実施例に係る回路基板を備えるインクカー トリッジの構成例 図5~図7を参照して第1の実施例に係る回路基板10が装着されるイ ンクカートリッジの構成例について説明する。図5は第1の実施例に係 15 る回路基板10が装着されるインクカートリッジの全体構成を示す斜視 図である。図6は図4中における回路基板10の装着部を拡大して示す 拡大図である。図7はインクカートリッジをプリンタに装着する際の様 子を示す説明図である。 【0040】インクカートリッジ40は,インクカートリッジをキャリ 20 ッジ上に備えない,いわゆる,オフキャリッジタイプのプリンタに対し て装着されるための形態を有している。オフキャリッジタイプのプリン タは,一般的に,大型プリンタであることが多く,このような大型プリ ンタに用いられるインクカートリッジは,オンキャリッジタイプのプリ ンタに用いられるイン 形態を有している。オフキャリッジタイプのプリン タは,一般的に,大型プリンタであることが多く,このような大型プリ ンタに用いられるインクカートリッジは,オンキャリッジタイプのプリ ンタに用いられるインクカートリッジを比較して大型である。 25 【0041】インクカートリッジ40は,回路基板10を装着する回路 69 基板装着部41と,インクカートリッジ40内のインクをプリンタに対 して供給するためのインク供給口42と,インクの供給を円滑にするた めにインクカートリッジ40内に空気を送り込むための空気供給口43 と,プリンタに対して装着する際のガイド部44を備えている。インク カートリッジ40は,ガイド部44等が形成されている辺(幅方向)に 5 対して垂直な辺(奥行き方向)の長さが幅方向よりも長い外形寸法を有 している。インクカートリッジ40と奥行き寸法と回路基板10の幅寸 法との関係を,両者の比で表した場合,例えば,その比は,15:1以 上である。 【0042】回路基板10は,図5に示されるように,貫通孔11およ 10 び切り欠き12において位置決めされると共に,インクカートリッジ4 0の回路基板装着部41に対して固定されている。 【0043】インクカートリッジ40がプリンタに装着される際には, インクカートリッジ40のガイド部44がプリンタ側のガイドピン10 1を案内し,回路基板装着部41,インク供給口42,および空気供給 15 口43と,プリンタ側の接触ピン102,インク供給口103,および 空気供給口104とを適切に接触,接合させる。 【0045】プリンタ100の接触ピンP7は,プリンタ内部で接地さ れており,接触ピンP4はCPU60のカートリッジアウト検出端子と 接続されている。インクカートリッジ40がプリンタ100に装着され 20 ると,プリン タ100の接触ピンP7は,プリンタ内部で接地さ れており,接触ピンP4はCPU60のカートリッジアウト検出端子と 接続されている。インクカートリッジ40がプリンタ100に装着され 20 ると,プリンタ100の各接触ピンP1~P7と回路基板10の各端子 21~27とが接触する。このとき,プリンタ100の接触ピンP4, P7と回路基板10の接地端子24,27とが共に接触していれば,C PU60は接地電圧VSSを検出する。すなわち,プリンタ100(C PU60)は,インクカートリッジ40が装着され,接触ピンP4,P 25 7と回路基板10の接地端子24,27との導通を検出し,インクカー 70 トリッジ40が正しく装着されていると判断する。 【0046】一方,プリンタ100の接触ピンP4,P7のいずれかが 回路基板10の接地端子24,27と接触していない場合には,CPU 60はカートリッジアウト電圧VCCを検出する。すなわち,プリンタ 100は,接触ピンP4,P7と回路基板10の接地端子24,27と 5 の導通を検出することができず,インクカートリッジ40が正しく装着 されていないと判断する。 【0047】プリンタ100は,接触ピンP4,P7と回路基板10の 接地端子24,27との導通を検出し,インクカートリッジ40が正し く装着されていると判断すると,電源端子22に対して電源VDDの供 10 給を実行し,アクセスを所望する記憶装置30に対してチップセレクト 信号CSを送信する。 (オ) 【0063】以上,いくつかの実施例に基づき本発明に係る回路基 板を説明してきたが,上記した発明の実施の形態は,本発明の理解を容 易にするためのものであり,本発明を限定するものではない。本発明は, 15 その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく,変更,改良され得 ると共に,本 上記した発明の実施の形態は,本発明の理解を容 易にするためのものであり,本発明を限定するものではない。本発明は, 15 その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく,変更,改良され得 ると共に,本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。 【0064】例えば,第1の実施例では,オフキャリッジタイプのプリ ンタに対して用いられるインクカートリッジ40に回路基板10が装着 された場合について説明したが,図11に示すようにオンキャリッジタ 20 イプのプリンタに対して用いられるインクカートリッジ48に装着され てもよい。かかる場合にも,第1~第4の実施例に係る回路基板10, 200,300,400を用いることによって,インクカートリッジの 装着の有無を正確に検出することができると共に,インクカートリッジ の装着を検出したにもかかわらず,記憶装置30に対してアクセスがで 25 きないといった事態を回避することができる。 71 【0066】第1の実施例では,回路基板10をインクカートリッジ4 0に対して装着する例を用いて説明したが,回路基板10をトナーカー トリッジに対して装着しても良い。トナーカートリッジを装着する際に も,インクカートリッジ装着時と同様の問題が発生し,かかる問題は回 路基板10を用いることによって解決されるからである。 5 イ 争点3-1-1(本件各発明1の進歩性の欠如)について (ア) 本件発明1-1について 被控訴人らは,①本件発明1-1と乙5発明(乙5記載の回路基板1 0に係る発明)とは,乙5発明が構成要件1-1F1及び1-1F2に 係る構成を備えていない点でのみ相違(相違点1-1及び1-2)し, 10 その余の構成は一致する,②乙6には,相違点1-1及び1-2に係る 本件発明1-1の構成が開示されている,③当業者は, 1F2に 係る構成を備えていない点でのみ相違(相違点1-1及び1-2)し, 10 その余の構成は一致する,②乙6には,相違点1-1及び1-2に係る 本件発明1-1の構成が開示されている,③当業者は,乙5及び6に基 づいて,乙5発明において,相違点1-1及び1-2に係る本件発明1 -1の構成とすることを容易に想到し得たものである,④仮に乙5発明 が構成要件1-1Dに係る本件発明1-1の構成を備えていない点が, 15 本件発明1-1と乙5発明の相違点であるとしても,当業者は,乙5及 び周知慣用技術に基づいて,乙5発明において上記構成とすることを容 易に想到し得たものである,⑤したがって,本件発明1-1には,進歩 性欠如の無効理由がある旨主張する。 a 本件発明1-1と乙5発明の相違点について 20 前記3(1)認定のとおり,本件発明1-1の特許請求の範囲(請求 項1)には,「画像形成装置本体に対して着脱可能に構成された着脱 可能装置に設置される情報記憶装置」は,「前記画像形成装置本体に 設置された突起部に係合する穴部が形成された基板」を備え(構成要 件1-1D),「前記基板に形成された前記穴部」は,「前記画像形成 25 装置本体の前記突起部に形成された接地用の本体側端子に接触する 72 アース端子が形成」され(構成要件1-1F1),「本体側端子に接触 して,前記画像形成装置本体との間で前記情報を通信するための端 子」である「前記複数の金属板のうち2つの金属板に間に挟まれる位 置に配設された」(構成要件1-1F2)との記載があり,上記記載 から,本件発明1-1の「穴部」は,「情報記憶装置」の「基板」に形 5 成され,「前記画像形成装置本体に設置された突起部」に「係合」す ること,「穴部」は,「前記複数の金属板のうち2つの金属板に間に 挟まれる位置に配設され」る 部」は,「情報記憶装置」の「基板」に形 5 成され,「前記画像形成装置本体に設置された突起部」に「係合」す ること,「穴部」は,「前記複数の金属板のうち2つの金属板に間に 挟まれる位置に配設され」ること,「穴部」には「前記画像形成装置 本体の前記突起部に形成された接地用の本体側端子に接触するアー ス端子」が形成されていることを理解できる。 10 しかるところ,乙5には,乙5記載の回路基板10において,「画 像形成装置本体」(プリンタ)に「設置された突起部に係合する穴部 が形成され」た構成を備えること及び「前記基板に形成された前記穴 部は,前記画像形成装置本体の前記突起部に形成された接地用の本体 側端子に接触するアース端子が形成」された構成を備えることの開示 15 があるものと認められない。そうすると,乙5発明が構成要件1-1 D及び1-1F1に係る本件発明1-1の構成を備えていないこと は,本件発明1-1と乙5発明の相違点であるものと認められる(以 下,かかる相違点のうち,構成要件1-1Dに係る相違点を「相違点 1-3①」という。)。 20 これに反する被控訴人らの主張は採用することができない。 b 相違点1-3①(構成要件1-1D)の容易想到性について 被控訴人らは,相違点1-3①に関し,①乙5のインクカートリッ ジ40の回路基板装着部41に対する回路基板10の固定時における 位置決め用の貫通孔11(【0042】,図1)は,回路基板10を固 25 定するためのものであるところ,その固定する先をインクカートリッ 73 ジ40ではなく,プリンタ又はその他の部材又は場所とするか,ビス やねじで固定するかは,当業者が適宜選択する設計的事項にすぎない, ②乙5の図11には,プリンタ本体に対向する基板が開示されている, ③基板の挿入方向とカートリッジ側の端子と本体 又は場所とするか,ビス やねじで固定するかは,当業者が適宜選択する設計的事項にすぎない, ②乙5の図11には,プリンタ本体に対向する基板が開示されている, ③基板の挿入方向とカートリッジ側の端子と本体側の接点の配置を適 宜選択できることは,周知慣用技術であること(乙32の図3及び4, 5 【0036】,乙33の図2及び7)からすると,乙5に接した当業者 は,乙5記載の回路基板10の貫通孔11をプリンタ本体に対向する 構成とし,かつ,当該貫通孔がプリンタ本体に「設置された突起部に 係合」する構成とすることを容易に想到することができた旨主張する。 そこで検討するに,乙5の記載(【0031】,【0042】,図3, 10 5ないし7)によれば,インクカートリッジ40がプリンタに装着さ れると回路基板10の各端子21~27とプリンタ本体側の各接触ピ ンP1~P7とが相互に接触し,プリンタと回路基板の記憶装置30 との間でデータのやりとりが可能となるが,回路基板10は,図5な いし7に示すように,インクカートリッジ40の回路基板装着部41 15 の基準面に対して水平方向に固定されており,回路基板10の基板面 は,プリンタ本体(本体側の各接触ピンP1~P7)に対向するもの ではない。また,回路基板10は,インクカートリッジ装着部41に 装着する際の位置決め用の貫通孔11を備えているが(【0027】, 図1ないし3),乙5には,貫通孔11についてプリンタ本体側の突起 20 部(各接触ピンP1~P7)に係合する穴部の構成とすることについ ての記載も示唆もない。 一方,乙5の図11には,回路基板10が,オンキャリッジタイプ のプリンタに用いられるインクカートリッジ48に対し装着された例 が示されているが,乙5には,オンキャリッジタイプのプリンタの本 25 体側端子の構成や同プリン ,回路基板10が,オンキャリッジタイプ のプリンタに用いられるインクカートリッジ48に対し装着された例 が示されているが,乙5には,オンキャリッジタイプのプリンタの本 25 体側端子の構成や同プリンタとインクカートリッジ48との配置態様 74 について記載も示唆もない。 そうすると,被控訴人らが主張するように基板の挿入方向とカート リッジ側の端子と本体側の接点の配置を適宜選択できることは,周知 慣用技術であるとしても,乙5に接した当業者において,乙5の回路 基板において,「画像形成装置本体」(プリンタ)に「設置された突起 5 部に係合する穴部が形成され」た構成(相違点1-3①に係る本件発 明1-1の構成)とする動機付けがあるものと認められないから,上 記構成を容易に想到することができたものと認めることはできない。 したがって,被控訴人らの上記主張は理由がない。 c まとめ 10 以上のとおり,当業者は,相違点1-3①に係る本件発明1-1の 構成を容易に想到することができたものと認められないから,その余 の点について判断するまでもなく,被控訴人ら主張の乙5を主引用例 とする本件発明1-1の進歩性欠如の無効理由は認められない。 (イ) 本件発明1-2及び1-6について 15 本件発明1-2及び1-6は,それぞれの発明特定事項(請求項2及 び6)に本件発明1-1の構成(請求項1)を含むから,前記(ア)bと 同様の理由により,被控訴人ら主張の乙5を主引用例とする本件発明1 -2及び1-6の進歩性欠如の無効理由は認められない。 ウ 争点3-1-2(本件各発明2の進歩性の欠如)について 20 (ア) 本件発明2-1について 乙5には,乙5記載の回路基板10において, 「画像形成装置本体」 (プ リンタ)が備える「本体側突起部が挿入される穴部が,形成さ の進歩性の欠如)について 20 (ア) 本件発明2-1について 乙5には,乙5記載の回路基板10において, 「画像形成装置本体」 (プ リンタ)が備える「本体側突起部が挿入される穴部が,形成され」た構 成(構成要件2-1C)及び「前記アース端子は,前記穴部に設けられ」 た構成(構成要件2-1E)を備えることの開示があるものと認められ 25 ない。そうすると,本件発明2-1と乙5発明は,乙5発明が構成要件 75 1-1D及び1-1F1に係る本件発明1-1の構成を備えていない点 において相違するものと認められる (以下,かかる相違点のうち,構成 要件2-1Cに係る相違点を「相違点1-3②」という。)。これに反す る被控訴人らの主張は採用することができない。 そして,前記イ(ア)bで説示したのと同様の理由により,乙5に接し 5 た当業者において,乙5の回路基板において,「画像形成装置本体」(プ リンタ)が備える「本体側突起部が挿入される穴部が,形成され」た構 成(相違点1-3②に係る本件発明2-1の構成)とする動機付けがあ るものと認められないから,上記構成を容易に想到することができたも のと認めることはできない。 10 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被控訴人ら主 張の乙5を主引用例とする本件発明2-1の進歩性欠如の無効理由は認 められない。 (イ) 本件発明2-2ないし2-4,2-25及び2-49について 本件発明2-2ないし2-4,2-25及び2-49は,それぞれの 15 発明特定事項(請求項2ないし4,25及び49)に相違点1-3②に 係る本件発明2-1の構成と同一の構成(構成要件2-2H,2-3J, 2-4L,2-25C及び2-49C)を含むから,前記(ア)と同様の 理由により,被控訴人ら主張の乙5を主引用例とする 違点1-3②に 係る本件発明2-1の構成と同一の構成(構成要件2-2H,2-3J, 2-4L,2-25C及び2-49C)を含むから,前記(ア)と同様の 理由により,被控訴人ら主張の乙5を主引用例とする本件発明2-2な いし2-4,2-25及び2-49の進歩性欠如の無効理由は認められ 20 ない。 エ 争点3-1-3(本件各発明3の進歩性の欠如)について (ア) 本件発明3-70について 乙5には,乙5記載の回路基板10が,「画像形成装置本体」(プリン タ)が備える「水平方向に突出する突起部」である「前記突起部」が「挿 25 入される穴部と,…を備えた基板」の構成(構成要件3-70F)及び 76 「前記穴部に形成され,前記本体側アース端子と接触する情報記憶装置 側アース端子」の構成(構成要件3-70G)を備えることの開示があ るものと認められない。そうすると,本件発明3-70と乙5発明は, 乙5発明が構成要件3-70F及び3-70Gに係る本件発明の構成を 備えていない点において相違するものと認められる (以下,かかる相違 5 点のうち,構成要件3-70Fに係る相違点を「相違点1-3③」とい う。)。これに反する被控訴人らの主張は採用することができない。 そして,前記イ(ア)bで説示したのと同様の理由により,乙5に接し た当業者において,乙5の回路基板において,「画像形成装置本体」(プ リンタ)が備える「水平方向に突出する突起部」である「前記突起部」 10 が「挿入される穴部と,…を備えた基板」の構成(相違点1-3③に係 る本件発明3-70の構成)とする動機付けがあるものと認められない から,上記構成を容易に想到することができたものと認めることはでき ない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被控訴人ら主 15 張の乙5を主引用例とす 付けがあるものと認められない から,上記構成を容易に想到することができたものと認めることはでき ない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被控訴人ら主 15 張の乙5を主引用例とする本件発明3-70の進歩性欠如の無効理由は 認められない。 (イ) 本件発明3-77,3-78及び3-80について 本件発明3-77,3-78及び3-80は,それぞれの発明特定事 項(請求項77,78及び80)に本件発明3-70の構成(請求項7 20 0)を直接又は間接的に含むから,前記(ア)と同様の理由により,被控 訴人ら主張の乙5を主引用例とする本件発明3-77,3-78及び3 -80の進歩性欠如の無効理由は認められない。 (2) 本件各発明3に関する明確性要件違反(争点3-2) ア 争点3-2-1(本件発明3-70,3-77,3-78及び3-80 25 に関する明確性要件違反)について 77 被控訴人らは,本件発明3-70の特許請求の範囲(請求項70)の「前 記基板は,前記穴部に前記突起部が挿入されていく間に,当該基板の側面 であって前記穴部よりも下方に,前記一対のリブのうちの少なくとも一方 が当接可能な縁部を備えた」との記載(構成要件3-70I)は,画像形 成装置本体の「前記一対のリブ」の形状やトナーカートリッジに対する「一 5 対のリブ」の位置関係が明らかでなく,「前記一対のリブのうちの少なくと も一方が当接可能な縁部」がどのような構成を有するのか不明であり,ま た,「基板」の形状がどのように限定されるのか不明であるから,上記記載 は不明確であり,本件発明3-70は,特許法36条6項2号の明確性要 件に適合せず,同様に,本件発明3-77,3-78及び3-80は,本 10 件発明3-70を直接又は間接的に発明特定事項に含むから,明確 明確であり,本件発明3-70は,特許法36条6項2号の明確性要 件に適合せず,同様に,本件発明3-77,3-78及び3-80は,本 10 件発明3-70を直接又は間接的に発明特定事項に含むから,明確性要件 に適合しない旨主張する。 そこで検討するに,本件発明3-70の特許請求の範囲(請求項70) の記載は,「水平方向に突出する突起部と,当該突起部に設置された接地用 の本体側アース端子と,前記突起部と同一方向に突出する一対のリブと, 15 を備えた画像形成装置本体に情報を伝達するための情報記憶装置であっ て,前記情報記憶装置は,前記画像形成装置本体側に伝達するための情報 を記憶する情報記憶部と,前記突起部が挿入される穴部と,前記情報記憶 部と,を備えた基板と,前記穴部に形成され,前記本体側アース端子と接 触する情報記憶装置側アース端子と,を備え,前記穴部に前記突起部が挿 20 入された状態において,前記情報記憶部は前記穴部よりも下方に設けられ, 前記基板は,前記穴部に前記突起部が挿入されていく間に,当該基板の側 面であって前記穴部よりも下方に,前記一対のリブのうちの少なくとも一 方が当接可能な縁部を備えたことを特徴とする情報記憶装置。」というも のである。上記記載から,構成要件3-70Iの「前記基板は,前記穴部 25 に前記突起部が挿入されていく間に,当該基板の側面であって前記穴部よ 78 りも下方に,前記一対のリブのうちの少なくとも一方が当接可能な縁部を 備えた」にいう「前記一対のリブ」は,「画像形成装置本体」が有する構成 であって,「画像形成装置本体」の「水平方向に突出する突起部と同一方向 に突出する」形状及び配置関係にあることを理解することができ,また, 「前記基板」は,「前記突起部」(画像形成装置本体」の「水平方向に突出 5 する突起部」)が「挿入される に突出する突起部と同一方向 に突出する」形状及び配置関係にあることを理解することができ,また, 「前記基板」は,「前記突起部」(画像形成装置本体」の「水平方向に突出 5 する突起部」)が「挿入される穴部」と,「前記情報記憶部」と,「前記穴部 に前記突起部が挿入されていく間に,当該基板の側面であって前記穴部よ りも下方に,前記一対のリブのうちの少なくとも一方が当接可能な縁部」 を備えることを理解することができるから,構成要件3-70Iの上記記 載内容は明確である。 10 したがって,被控訴人らの上記主張は採用することができないから,本 件発明3-70,3-77,3-78及び3-80に明確性要件違反の無 効理由は認められない。 イ 争点3-2-2(本件発明3-78に関する明確性要件違反)について 被控訴人らは,本件発明3-78の特許請求の範囲(請求項78)の「前 15 記情報記憶装置が前記画像形成装置本体に接続される際,前記情報記憶装 置側アース端子が前記本体側アース端子と接触した後に,前記情報記憶装 置側端子が前記本体側端子と接触可能に形成されている」との記載(構成 要件3-78R)は,本件明細書等3記載の実施形態をみると,画像形成 装置本体側の突起と情報記憶装置側端子の特徴によって実現されており, 20 上記記載によって更にどのような限定が本件発明3-70(請求項70) 又は3-77(請求項77)の情報記憶装置に加えられるのか不明確であ るから,本件発明3-78は,明確性要件に適合しない旨主張する。 そこで検討するに,本件発明3-78の特許請求の範囲(請求項78) の記載は,「請求項77に記載の情報記憶装置であって,前記情報記憶装置 25 が前記画像形成装置本体に接続される際,前記情報記憶装置側アース端子 79 が前記本体側アース端子と接触した後に, 78) の記載は,「請求項77に記載の情報記憶装置であって,前記情報記憶装置 25 が前記画像形成装置本体に接続される際,前記情報記憶装置側アース端子 79 が前記本体側アース端子と接触した後に,前記情報記憶装置側端子が前記 本体側端子と接触可能に形成されていることを特徴とする情報記憶装置。」 というものである。上記記載及び請求項77の記載から,構成要件3-7 8Rの記載は,請求項77の「前記画像形成装置本体に設けられた本体側 端子と接触する情報記憶装置側端子」について,前記情報記憶装置が前記 5 画像形成装置本体に接続される際の前記情報記憶装置側アース端子と前 記本体側アース端子との接触と,情報記憶装置側端子と前記本体側端子と の接触との接触順序を規定したものであり,上記記載の内容は明確である。 したがって,被控訴人らの上記主張は採用することができないから,本 件発明3-78に明確性要件違反の無効理由は認められない。 10 5 争点4(消尽の成否)について 被控訴人らは,被控訴人らが原告電子部品(ICチップ)のメモリを書き換 える態様で使用済みの原告製品をリサイクルしていたとすれば,リサイクル品 に搭載された原告電子部品について本件各特許権は消尽するのに,控訴人は, 原告電子部品(ICチップ)のメモリの書換えを技術的に困難にする本件書換 15 制限措置という合理性及び必要性のない行為により,被控訴人らが原告製品に 搭載された原告電子部品を取り外し,被告電子部品に取り替えることを余儀な くさせ,上記消尽の成立を妨げたものであり,控訴人に二重の利得を得ること を認める必要性はないから,被告電子部品について本件各特許権の消尽が成立 するというべきである旨主張する。 20 そこで検討するに,特許権者が我が国の国内において特許製品を譲渡した場 合には,当該特許製 める必要性はないから,被告電子部品について本件各特許権の消尽が成立 するというべきである旨主張する。 20 そこで検討するに,特許権者が我が国の国内において特許製品を譲渡した場 合には,当該特許製品について特許権はその目的を達成したものとして消尽し, もはや特許権の効力は,当該特許製品を使用し,譲渡し,又は貸し渡す行為等 には及ばず,特許権者は,当該特許製品について特許権を行使することは許さ れないものと解される(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第 25 三小法廷判決・民集51巻6号2299頁,最高裁平成18年(受)第826 80 号同19年11月8日第一小法廷判決・民集61巻8号2989頁参照)。 そして,この消尽の趣旨は,特許製品について譲渡を行う都度特許権者の許 諾を有するとすると,市場における特許製品の円滑な流通が妨げられ,一方, 特許権者が我が国において譲渡した特許製品については,当該譲渡を通じて特 許発明の公開の代償を確保する機会を既に保障されているから,特許権者がそ 5 の流通過程において二重に利得を得ることを認める必要はないことによるもの と解されるから,消尽により特許権の行使が制限される対象製品は,特許権者 が我が国において譲渡した特許製品と同一性を有する製品に限られると解すべ きである。 これを本件についてみると,被告製品は,控訴人が譲渡した本件各発明1な 10 いし3の実施品である原告電子部品を搭載した使用済みの原告製品から,原告 電子部品を取り外し,被控訴人らの製造した被告電子部品と取り替えた上で, トナーを充填し,再生品として製造し販売したものであるから(前記前提事実 の(6)イ),被告電子部品は,控訴人が譲渡した原告製品に搭載された原告電子 部品と同一性を有するものではない。 15 また,被控訴人らが本件各特許権 して製造し販売したものであるから(前記前提事実 の(6)イ),被告電子部品は,控訴人が譲渡した原告製品に搭載された原告電子 部品と同一性を有するものではない。 15 また,被控訴人らが本件各特許権の消尽の成立を妨げたと述べる対象製品は, 仮定のリサイクル品に搭載された原告電子部品であって,実際の流通過程に置 かれたものではないから,当該原告電子部品が被告電子部品と同一性を有する ものでないことは明らかである。 したがって,被告電子部品について本件各特許権の消尽が成立するものと認 20 められないから,被控訴人らの上記主張は理由がない。 6 争点5(権利の濫用の成否)について 被控訴人らは,控訴人の本件請求は,控訴人が,原告電子部品(ICチップ) のメモリの書換えを技術的に困難にする本件書換制限措置という合理性及び必 要性のない行為により,被控訴人らが原告製品に搭載された原告電子部品を取 25 り外して被告電子部品に取り替えることを余儀なくさせ,原告電子部品(IC 81 チップ)のメモリを書き換える態様により原告製品をリサイクルしたリサイク ル品の原告電子部品についての本件各特許権の消尽の成立を控訴人の意思によ り妨げ,そのような結果を利用したものであるという点において消尽の趣旨を 潜脱し,また,リサイクル品が装着された場合にディスプレイ上に「?」が表 示されるような設定と本件書換制限措置という妨害行為を組み合わせる方法で, 5 純正品と同等のリサイクル品を競争上劣位におき,リサイクル事業者である被 控訴人らの取引を不当に妨害しているから,公正な競争を阻害するものであり, 競争者に対する取引妨害として,独占禁止法(独占禁止法19条,2条9項6 号,一般指定14項)に抵触することを総合考慮すると,控訴人が,被控訴人 らに対し,被告電子部品について本件各特許権に のであり, 競争者に対する取引妨害として,独占禁止法(独占禁止法19条,2条9項6 号,一般指定14項)に抵触することを総合考慮すると,控訴人が,被控訴人 らに対し,被告電子部品について本件各特許権に基づく差止請求権及び損害賠 10 償請求権を行使することは,権利の濫用に当たり許されない旨主張するので, 以下において判断する。 (1) 認定事実 前記第2の2の前提事実と後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事 実が認められる。 15 ア 本件書換制限措置による原告プリンタの機能への影響等 (ア) 原告電子部品 控訴人が製造するレーザープリンタ(原告製プリンタ)のうち,原告 プリンタ(型番「C830」及び「C831」)を含むC830シリーズ 及びC840シリーズのプリンタに対応する控訴人製のトナーカートリ 20 ッジ(原告製品)には情報記憶装置である電子部品(ICチップ)(原告 電子部品)が搭載されている。 原告電子部品のメモリには,●(省略)●などが書き込まれている(甲 29,30,42,乙26)。 (イ) 原告製品(純正品)が装着された原告プリンタの動作 25 原告プリンタに原告製品(純正品)が装着されると,原告プリンタの 82 プリンター画面において,「印刷できます」との表示がされるとともに, 原告製品のトナーの残量が段階的に表示され,トナーが少なくなってく ると,「トナーがもうすぐなくなります。」,「交換用のトナーがあるか確 認してください。」との予告表示がされ,トナーを使い切ると,「トナー がなくなりました。」,「トナーを補給してください。」との表示がされ, 5 赤色ランプが点灯し,印刷を停止し,その際,原告製品の原告電子部品 (ICチップ)のメモリに●●●●●●●●●●が書き込まれる。 ●(省略)●ただし,●(省略)●が ください。」との表示がされ, 5 赤色ランプが点灯し,印刷を停止し,その際,原告製品の原告電子部品 (ICチップ)のメモリに●●●●●●●●●●が書き込まれる。 ●(省略)●ただし,●(省略)●がされる。(甲41,乙25,49) (ウ) トナーを再充填した使用済みの原告製品(再生品)が装着された原 告プリンタ の動作 10 原告電子部品に●●●●●●●●●●が書き込まれた使用済みの原告 製品(再生品)にトナーを再充填して原告プリンタに装着すると,別紙 3の写真1のように,原告プリンタのプリンター画面において,トナー の残量表示が「?」と表示され,黄色ランプが点滅し,「非純正トナーボ トルがセットされています。」との表示がされる(甲48の写真1,乙2 15 5)。 「?」と表示されている部分をタッチパネルで1回押すことにより, 別紙3の写真2のような「サプライ情報」の画面に遷移し,同画面上の 「保守/補給」の「▶トナー残量」の項目に「検知不可」との表示がされ る(甲48)。 この場合でも,別紙3の写真1のように原告プリンタのプリンター画 20 面上に「印刷できます」との表示がされ,印刷操作を行うと支障なく印 刷することができる。 一方で,トナーの残量の段階的な表示や「トナーがもうすぐなくなり ます。」,「交換用トナーがあるか確認してください。」との予告表示はさ れず,トナーを使い切ると,「トナーがなくなりました。」,「トナーを補 25 給してください。」との表示がされ,赤色ランプが点灯し,印刷を停止す 83 る(甲48,乙25)。 (エ) 控訴人による本件書換制限措置 a 原告製プリンタに対応する控訴人製のトナーカートリッジの電子部 品のメモリに書き込まれた●●●●●●●●●●は,電圧の操作によ ってそのデータを書き換えることが可能であるが,原告電子 書換制限措置 a 原告製プリンタに対応する控訴人製のトナーカートリッジの電子部 品のメモリに書き込まれた●●●●●●●●●●は,電圧の操作によ ってそのデータを書き換えることが可能であるが,原告電子部品につ 5 いては,●●●●●●●●●●の書換えを制限する本件書換制限措置 を講じられている。 仮に原告電子部品(ICチップ)に本件書換制限措置がされていな ければ,電圧の操作によって●●●●●●●●●●のデータを書き換 えることが可能であり,このようにデータを書き換えた上,トナーを 10 再充填した使用済みの原告製品(再生品)を装着した原告製プリンタ においては,トナー残量の段階的表示及び残量予告表示をすることが できる。 b 控訴人が現在販売している原告製プリンタの製品群(合計30機種) のうち,本件書換制限措置が講じられているのは,「RICOH SP 15 C840ME」等のカラーレーザープリンタ5機種である(甲31)。 イ 被控訴人らによる控訴人製のトナーカートリッジの再生品の販売等 (ア) 被控訴人らは,原告製プリンタのうち,本件書換制限措置がされて いない機種に適合するトナーカートリッジについては,使用済みのトナ ーカートリッジに搭載された電子部品(ICチップ)のメモリのデータ 20 を書き換え,トナー残量の表示をすることができるようにした上で,ト ナーを充填し,再生品として販売している(乙26,46)。 (イ) 被控訴人らは,平成25年4月から平成29年10月までの間,日 本国内において,直販又は被控訴人DSジャパンが運営する被告ウェブ サイトにおいて,別紙4の写真1ないし3記載の形状の被告電子部品 25 (設計変更前)が搭載された被告製品(設計変更前) (乙15)を販売し, 84 同年11月以降,被告電子部品の形状を別紙4の写真4ないし おいて,別紙4の写真1ないし3記載の形状の被告電子部品 25 (設計変更前)が搭載された被告製品(設計変更前) (乙15)を販売し, 84 同年11月以降,被告電子部品の形状を別紙4の写真4ないし6記載の 形状に設計変更した電子部品(以下「被告電子部品(設計変更後)」とい う。乙15)が搭載された被告製品(設計変更後)を販売した。 被告製品を装着した原告製プリンタにおいては,トナー残量の段階的 表示及び残量予告表示をすることができる。 5 (ウ) 被告ウェブサイトには被告製品の価格の表示はなく,被控訴人らは, 会員登録した者に対して個別に見積りをして価格を提示しているとこ ろ,平成30年1月から同年12月末までの被告製品の平均価格は,1 本約1万3000円(甲8の3,5,6,乙37)である。 一方,原告製品の標準価格は,約2万5000枚印刷できるブラック 10 が3万9000円,約2万枚印刷できるイエロー,マゼンタ,シアンが 3万7000円,約1万2000枚印刷できるブラックが2万4000 円,約1万2000枚印刷できるイエロー,マゼンタ,シアンが2万3 500円である(甲23,乙34)。 ウ ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●の存在 15 ●(省略)●控訴人が,●●●●●●●●●●●に挿入した時の動作を 確認する実験(甲73,74)を実施したところ,●●●●において,「?」 と表示されることなく,トナーの残量表示がされ,正常に動作することが 確認された。 控訴人は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を認めている。 20 エ 再生品トナーカートリッジの市場シェア,官公庁の入札条件等 (ア) トナーカートリッジにおける平成21年から平成29年までのリユ ース率(新品〔純正品と汎用品〕に対するリユース品の割合)は,モノク エ 再生品トナーカートリッジの市場シェア,官公庁の入札条件等 (ア) トナーカートリッジにおける平成21年から平成29年までのリユ ース率(新品〔純正品と汎用品〕に対するリユース品の割合)は,モノク ロで32.9~37.2%(平成29年は34.9%),カラーは11. 4~16.0%(平成29年は13.4%),モノクロ・カラー合計は2 25 3.1~26.4%(平成29年は23.3%)の範囲内で推移している 85 (乙30)。 (イ) 東京国税局による平成29年1月の被告製品を含むカラーレーザー プリンタ用トナーカートリッジ等の入札において,メーカーによる再生 品以外の再生品については, 「ISO14001」及び「ISO9001」 を取得した工場で製造された再生品であること,E&Qマーク等を取得 5 したものであること,チップ装着タイプのトナーカートリッジに装着す るチップは,リサイクルの都度,確実に情報を書き換えることなどの条件 が付されていた(乙39の2)。 また,東北農政局による平成29年2月の富士ゼロックス製プリンタ 用トナーカートリッジ等の入札においては,再生品について,ISO90 10 00シリーズを認証取得した工場で生産された製品であること,E&Q マーク等の認証を取得しており,純正品と同等の機能を有することなど が条件とされていた(乙38)。 (ウ) 公正取引委員会は,平成16年10月21日付けで「キヤノン株式会 社に対する独占禁止法違反被疑事件の処理について」と題する審査事例 15 (乙3先例)に関する報道資料(乙3)を公表し,上記被疑事件につい て,キヤノンに対して独占禁止法の規定に基づき審査を行ってきたとこ ろ,現在までに再生業者が再生品を再生販売することが可能になってい ると認められたことから,上記審査を終了することとしたと発 事件につい て,キヤノンに対して独占禁止法の規定に基づき審査を行ってきたとこ ろ,現在までに再生業者が再生品を再生販売することが可能になってい ると認められたことから,上記審査を終了することとしたと発表した。 a 乙3には,「1 本件の概要」として,以下のような記載がある。 20 (a) キヤノンは,レーザプリンタ及びそのカートリッジの開発及び製 造を行っており,我が国におけるカラーレーザプリンタの市場にお いて有力な事業者である。 ⒝ キヤノンは,平成14年及び15年に発売を開始した同社製のカ ラーレーザープリンタに使用されるカートリッジについて,プリン 25 タ本体の損傷防止及び純正品が使用された場合の印字品質を確保 86 する観点から,RFIDと称されるICタグを搭載し,そのICチ ップに寿命データを記録している,そして,セキュリティなどの理 由から,再生業者が当該寿命データを書き換えることにより初期状 態に戻して再生品として利用することは困難となっている,上記カ ラーレーザープリンタは,ICチップに寿命データが記録されてい 5 ても,トナーが充填された再生品を当該プリンタに装着した場合に は,純正品ではないと認識し,当該プリンタ本体のパネルに「カー トリッジフセイ」と表示するものの,ユーザーが所要の操作を行う ことにより印刷を継続することができるようにしており,再生業者 が寿命データを書き換えなくても,カートリッジを再生利用するこ 10 とは可能である,ただし,この場合であっても,一定の条件を満た す場合には,当該再生品は寿命に達した純正品と認識され,当該プ リンタが作動しないことがあることから,再生業者がユーザーに対 して再生品を販売するに当たり支障が生じている。 ⒞ キヤノンは,再生品の使用を希望するユーザーの存在を考慮し, 15 再生品の使 該プ リンタが作動しないことがあることから,再生業者がユーザーに対 して再生品を販売するに当たり支障が生じている。 ⒞ キヤノンは,再生品の使用を希望するユーザーの存在を考慮し, 15 再生品の使用に支障が生じることがないよう,以下の対応を行った。 ①再生業者の団体に対し,再生品が装着されたプリンタの作動する 条件について説明するとともに,取扱説明書の記載も一部修正す ることとした。 ②「カートリッジフセイ」との上記表示についても,ユーザーが再 20 生品を使用することをためらわせることのないような表現に修 正することとした。 ③ 一部のカラーレーザープリンタでは,再生品が装着された場合 には色調整の機能が働かない場合があったが,上記修正に併せて, その原因となっていたソフトウェアのプログラムの誤りを修正 25 することとした。 87 ⒟ 上記対応により,キヤノン社製カラーレーザープリンタに使用さ れるカートリッジの再生品の利用を望むユーザーに対し,再生業者 が再生品を提供することは可能になっており,独占禁止法上の問題 は解消しているものと認められる。 b また,乙3には,「2 公正取引委員会の対応」として,以下のよう 5 な記載がある。 「 レーザプリンタのメーカーがレーザープリンタに使用されるカート リッジにICチップを搭載することについて,カートリッジの再生利 用との関係で生じ得る問題に関する独占禁止法上の考え方は,別紙の とおりである。」 10 「<別紙>レーザープリンタに装着されるトナーカートリッジへのICチ ップの搭載とトナーカートリッジの再生利用に関する独占禁止法上の 考え方 近年,レーザープリンタに使用されるトナーカートリッジ(以下「カ ートリッジ」という。)にICチップが搭載されている事例が増えてい 載とトナーカートリッジの再生利用に関する独占禁止法上の 考え方 近年,レーザープリンタに使用されるトナーカートリッジ(以下「カ ートリッジ」という。)にICチップが搭載されている事例が増えてい 15 る。レーザープリンタのメーカーがその製品の品質・性能の向上等を 目的として,カートリッジにICチップを搭載すること自体は独占禁 止法上問題となるものではない。しかし,プリンタメーカーが,例え ば,技術上の必要性等の合理的理由がないのに,あるいは,その必要 性等の範囲を超えて, 20 ① ICチップに記録される情報を暗号化したり,その書換えを困難 にして,カートリッジを再生利用できないようにすること ② ICチップにカートリッジのトナーがなくなった等のデータを記 録し,再生品が装着された場合,レーザープリンタの作動を停止し たり,一部の機能が働かないようにすること 25 ③ レーザープリンタ本体によるICチップの制御方法を複雑にした 88 り,これを頻繁に変更することにより,カートリッジを再生利用で きないようにすること などにより,ユーザーが再生品を使用することを妨げる場合には,独 占禁止法上問題となるおそれがある(第19条(不公正な取引方法第 10項[抱き合わせ販売等]又は第15項(現第14項)[競争者に対 5 する取引妨害])の規定に違反するおそれ)。 なお,前記の考え方は,インクジェットプリンタに使用されるイン クカートリッジにICチップを搭載する場合についても,基本的に同 様である。」 ⑵ 被控訴人ら主張の本件書換制限措置による競争上の不利益について 10 被控訴人らは,①トナーカートリッジの消費者は,トナー残量表示の有無 を製品選択における重要な要素であると考えており(乙25),いくら価格 が安くとも,トナー残量表示のないリサイクル製品 いて 10 被控訴人らは,①トナーカートリッジの消費者は,トナー残量表示の有無 を製品選択における重要な要素であると考えており(乙25),いくら価格 が安くとも,トナー残量表示のないリサイクル製品は,純正品と同等ではな い「中途半端な再生品」として消費者に受け入れられない,②ICチップを 書き換えずにトナーを再充填した場合には,トナー残量表示が常に「?」と 15 なりトナー残量が分からなくなるという不都合にとどまらず,トナーが少な くなってきた時のカートリッジ交換予告メッセージが出ないため,トナーが なくなった時に突然トナーの補給を求める表示が出てプリンタが動かなくな るという不便をユーザーが被ることになり,その結果,リサイクル事業者に 大きな不利益を与えるものである,③残量表示がされず,「?」が表示され 20 る製品がユーザーに受け入れられないことは,被控訴人らの実施した聴き取 り調査の結果(乙25,66)から明らかであり,また,残量表示がされな いことは,官公庁の入札条件を満たさない(乙67の1ないし4,68の1 ないし4)ことからも明らかであり,このことは,本件アンケート調査(乙 70)の結果及び東京国税局の回答書(乙71)からも,裏付けられる,④ 25 本件書換制限措置を回避できたというためには,大量に販売されるリサイク 89 ルトナーカートリッジが長期間安定的にプリンタで使用できる必要があり, 実用に耐えうる程度の本件書換制限措置の回避は事実上不可能か,著しく困 難である,⑤したがって,本件書換制限措置は,リサイクル業者である被控 訴人らに対し,競争上著しい不利益を与えるものである旨主張するので,以 下において判断する。 5 ア ①ないし③について (ア) 前記⑴アの認定事実によれば,本件書換制限措置が講じられた原告 電子部品が搭載された純正品の い不利益を与えるものである旨主張するので,以 下において判断する。 5 ア ①ないし③について (ア) 前記⑴アの認定事実によれば,本件書換制限措置が講じられた原告 電子部品が搭載された純正品の原告製品が装着された原告プリンタと 使用済みの原告製品にトナーを再充填した再生品が装着された原告プ リンタの機能を対比すると,再生品が装着された原告プリンタは,トナ 10 ー残量表示に「?」と表示され,残量表示がされず,予告表示がされな い点で純正品の原告製品が装着された原告プリンタと異なるが,再生品 が装着された場合においても,トナー切れによる印刷停止の動作及び 「トナーがなくなりました。」等のトナー切れ表示は純正品が装着され た場合と異なるものではなく,印刷機能に支障をきたすものではないこ 15 と,再生品が装着された原告プリンタにおいても,トナー残量表示に「?」 と表示されるとともに,「印刷できます。」との表示がされるので,再生 品であるため,残量表示がされないことも容易に認識し得るものであり, ユーザーが印刷機能に支障があるとの不安を抱くものとは認められな いこと,ユーザーは,残量表示がされないことについて予備のトナーを 20 あらかじめ用意しておくことで対応できるものであり,このようなユー ザーの負担は大きいものとはいえない。 また,リサイクル業者においては,残量表示がされないことについて ユーザーが不安を抱くことを懸念するのであれば,再生品であるため, 残量表示がされないが,印刷はできることを表示することによって対応 25 できるものと認められる。 90 このように本件書換制限措置が講じられた原告電子部品が搭載された 再生品が装着された原告プリンタでは,トナー残量表示に「?」と表示 され,残量表示がされず,予告表示がされない点は,ユーザーにとって 大き このように本件書換制限措置が講じられた原告電子部品が搭載された 再生品が装着された原告プリンタでは,トナー残量表示に「?」と表示 され,残量表示がされず,予告表示がされない点は,ユーザーにとって 大きな負担といえないことを踏まえると,残量表示がされない再生品と 純正品との上記機能上の差異及び価格差を考慮して,再生品を選択する 5 ユーザーも存在するものと認められる。 この点に関し被控訴人らは,残量表示がされず,「?」が表示される 製品がユーザーに受け入れられないことを裏付ける証拠として,本件ア ンケート調査(乙70)を提出している。 そこで検討するに,証拠(乙69,70)によれば,①本件アンケー 10 ト調査は,プリンタにおいてトナーの残量が表示されず「?」と表示さ れる場合のユーザーの受け止め方を明らかにすることを目的とし,被控 訴人らがインテージ社に委託し,インテージ社の有するインターネット 調査専用の母集団である「マイティモニター」から選定された,コピー 機,プリンタの機種選定やこれら機器の備品・消耗品選定を行っている 15 者(対象者①)及びプリント業務やトナー交換を行っている者(対象者 ②)に対し,令和3年3月25日から同月29日までの間に,質問3~ 8に対する回答を求める方法で実施され,対象者①については1058 名,対象者②については1063名の有効回答を得て,その回答結果を 集計したものであること,②質問3ないし5及び7の内容は,いずれも 20 対象者①及び対象者②に対し,「印刷できます」との表示はある一方, トナーの残量が表示されず「?」と表示されているプリンタの画面の写 真を示した上で,(ア)どのように思うか(質問3。自由記載),(イ)それ がどのような状態だと考えるか(選択式。質問4),(ウ)何が原因だと思 うか(選択式。質問5。),(エ) ているプリンタの画面の写 真を示した上で,(ア)どのように思うか(質問3。自由記載),(イ)それ がどのような状態だと考えるか(選択式。質問4),(ウ)何が原因だと思 うか(選択式。質問5。),(エ)同様の表示がされた経験の有無(選択式。 25 質問7)を問うたものであること,③質問6は,対象者①に対し,上記 91 のプリンタ画面の写真を示し,「プリンターのトナーカートリッジを交 換すると,写真のように「?」マークが表示されてトナー残量が表示さ れなくなります。この状態でもトナーがあれば印刷自体は可能ですが, この状態ではいつトナーがなくなるのかわからず,予告なく印刷ができ なくなります。」との説明を付した上で,「もしあなたの会社のプリン 5 ターで,このような表示が出たとしたら,どのような対応をとりますか。 以下のうち最もお考えに近いものをお答えください。」との質問をする ものであり,各選択肢及び回答の割合は,「トナーカートリッジの購入 先を切り替える(5.8%)」,「トナーカートリッジを返品・交換す る(27.3%)」,「コストが安ければそのまま使う(13.4%)」, 10 「社内からクレームがでなければそのまま使う(6.0%)」,「純正 品しか使わないようにする(24.6%)」,「備品・消耗品購入の権 限がないため関連部署に連絡する(7.3%)」,「何も対応しない(3. 1%)」,「当てはまるものはない(12.6%)」であったこと,④ 質問8は,対象者①に対し,「もしあなたの会社に残量表示が出ないト 15 ナーカートリッジを導入しているとして,あなたのもとに利用部門・利 用者から,残量表示が出ないトナーカートリッジに関するクレームや, そのようなトナーカートリッジはやめて欲しいとの要望があったらどう しますか。最もお考えに近いものをお答えください。」との質問 部門・利 用者から,残量表示が出ないトナーカートリッジに関するクレームや, そのようなトナーカートリッジはやめて欲しいとの要望があったらどう しますか。最もお考えに近いものをお答えください。」との質問をする ものであり,各選択肢及び回答の割合は,「すぐにトナーカートリッジ 20 を純正品に変更する(25.0%)」,「在庫がなくなるまでは使用し 純正品に変更する(27.2%)」,「コスト面を説明して利用者に納 得してもらう(11.7%)」,「備品・消耗品購入の権限がないため 関連部署に連絡する(2.3%)」,「プリンターメーカーに連絡する (7.7%)」,「カートリッジ購入先に連絡する(6.2)%」,「ト 25 ナーカートリッジの購入先変更を検討する(3.6%)」,「今は何と 92 も言えない(10.4%)」,「何も対応しない(4.3%),「その 他(1.6%)」であったことが認められる。 しかるところ,ユーザーが実際に原告プリンタを操作する場面におい ては,ユーザーがプリンタ本体のディスプレイを凝視するようなことは 実際には想定し難いこと(甲104,105)に照らすと,本件アンケ 5 ート調査は,トナーの残量が表示されず「?」と表示される場合のユー ザーの受け止め方を明らかにするものとしては,調査の方法において適 切でない。また,対象者①(コピー機,プリンタの機種選定やこれら機 器の備品・消耗品選定を行っている者)のみを対象とした質問6及び8 についてみると,回答の分布から当該トナーカートリッジに対して否定 10 的な心証を抱く傾向は読み取れるものの,被控訴人らの想定する仮想の 事例に基づくものであることや,選択肢の配列が否定的な回答への誘導 をする余地のあるものであることに照らすと,コピー機,プリンタの機 種選定やこれら機器の備品・消耗品選定を行っている者の受 定する仮想の 事例に基づくものであることや,選択肢の配列が否定的な回答への誘導 をする余地のあるものであることに照らすと,コピー機,プリンタの機 種選定やこれら機器の備品・消耗品選定を行っている者の受け止め方を 正確に反映したものとみることは困難である。 15 したがって,本件アンケート調査の結果は,残量表示がされず,「?」 が表示される製品がユーザーに受け入れられないことを裏付けるものと はいえない。このほか,被控訴人らの聞き取り調査結果の報告書(乙6 6)及びこれに言及する被控訴人ロジコの従業員作成の陳述書(乙25) 等も,残量表示がされず「?」が表示される製品がユーザーに受け入れ 20 られないことを裏付けるものとはいえない。 (イ) 前記⑴エ(イ)の東京国税局による平成29年1月の被告製品を含む カ ラーレーザープリンタ用トナーカートリッジ等の入札における入 札条件(乙39の2)及び東北農政局による平成29年2月の富士ゼロ ックス製プリンタ用トナーカートリッジ等の入札における入札条件(乙 25 38)には,再生品に関する条件が定められているが,いずれもトナー 93 の残量がプリンタ上に表示されなければ,入札条件を満たさないという 趣旨までは含んでいないものと認められる。 また,被控訴人ら提出の東京国税局の上記入札に係る東京国税局作成 の回答書(乙71)には,トナーのリサイクル品の「品質」等に関する 規格の内容においては,印字品質等だけが規格の要素として挙げられて 5 おり,トナー残量表示については要素となっておらず,トナー残量表示 が「?」となる再生品が粗悪品又は不良品であると判断する可能性につ いては一切言及がないことに照らすと,上記回答書は,トナーの残量が プリンタ上に表示されなければ東京国税局の入札条件を満たさないこと の根拠となるものではない 粗悪品又は不良品であると判断する可能性につ いては一切言及がないことに照らすと,上記回答書は,トナーの残量が プリンタ上に表示されなければ東京国税局の入札条件を満たさないこと の根拠となるものではない。このほか,乙67の1ないし4,68の1 10 ないし4を考慮しても,上記残量表示がされることが公的入札の条件で あるものとは認められない。 (ウ) 以上によれば,被控訴人らが本件書換制限措置がリサイクル業者で ある被控訴人らに対し,競争上著しい不利益を与えるものであることの 理由として挙げる前記①ないし③の主張は,採用することができない。 15 イ ④について 前記(1)ウの認定事実によれば,電子部品の形状を工夫することで,本件 各発明1ないし3の技術的範囲に属さない電子部品を製造し,これを原告 電子部品と取り替えることで,本件各特許権侵害を回避し,残量表示をさ せることは,技術的に可能であり,●●●●●●●●●●●●●●●●● 20 ●●●●●●●●●●●●●●,●●●●●●の性能に問題があることを うかがわせる証拠がないことに照らすと,実用に耐えうる程度の本件書換 制限措置の回避は事実上不可能又は著しく困難であるとの被控訴人らの 主張④は採用することができない。 ウ 乙3先例について 25 前記⑴エ(ウ)記載の乙3先例は,プリンタメーカーの行為によって,再 94 生品の使用自体に支障が生じるような事案であり,前記アに照らすと,本 件とは事案が異なるものであるから,本件には妥当しない。 エ まとめ 以上によれば,本件書換制限措置は,リサイクル業者である被控訴人ら に対し,競争上著しい不利益を与えるものとの被控訴人らの前記主張は理 5 由がない。 (3) 小括 以上のとおり,本件書換制限措置が講じられた原告電子部品 限措置は,リサイクル業者である被控訴人ら に対し,競争上著しい不利益を与えるものとの被控訴人らの前記主張は理 5 由がない。 (3) 小括 以上のとおり,本件書換制限措置が講じられた原告電子部品が搭載された 純正品の原告製品が装着された原告プリンタと使用済みの原告製品にトナー を再充填した再生品が装着された原告プリンタの機能を対比すると,再生品 10 が装着された原告プリンタは,トナー残量表示に「?」と表示され,残量表 示がされず,予告表示がされない点で純正品の原告製品が装着された原告プ リンタと異なるが,再生品が装着された場合においても,トナー切れによる 印刷停止の動作及び「トナーがなくなりました。」等のトナー切れ表示は純正 品が装着された場合と異なるものではなく,印刷機能に支障をきたすもので 15 はないこと,再生品が装着された原告プリンタにおいても,トナー残量表示 に「?」と表示されるとともに,「印刷できます。」との表示がされるので, 再生品であるため残量表示がされないことも容易に認識し得るものであり, ユーザーが印刷機能に支障があるとの不安を抱くものとは認められないこと, ユーザーは,残量表示がされないことについて予備のトナーをあらかじめ用 20 意しておくことで対応できるものであり,このようなユーザーの負担は大き いものとはいえないことを踏まえると,残量表示がされない再生品と純正品 との上記機能上の差異及び価格差を考慮して,再生品を選択するユーザーも 存在するものと認められる。また,前記認定のとおり,残量表示がされるこ とが公的入札の条件であるとはいえない。 25 一方,リサイクル事業者においては,残量表示がされないことについてユ 95 ーザーが不安を抱くことを懸念するのであれば,再生品であるため残量表示 がされないが,印刷はできることを表示する 。 25 一方,リサイクル事業者においては,残量表示がされないことについてユ 95 ーザーが不安を抱くことを懸念するのであれば,再生品であるため残量表示 がされないが,印刷はできることを表示することによって対応できること, 電子部品の形状を工夫することで,本件各発明1ないし3の技術的範囲に属 さない電子部品を製造し,これを原告電子部品と取り替えることで,本件各 特許権侵害を回避し,残量表示をさせることは,技術的に可能であり,●● 5 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●からすると, 原告プリンタ用のトナーカートリッジの市場において,本件書換制限措置に よるリサイクル事業者の不利益の程度は小さいものと認められる。 次に,控訴人は,本件書換制限措置を行った理由について,原告電子部品 に本件書換制限措置が講じられていない場合には,原告プリンタに自ら品質 10 等をコントロールできない第三者の再生品のトナーの残量が表示され,残量 表示の正確性を自らコントロールできないので,このような弊害を排除した いと考えて本件書換制限措置を講じたものである旨を主張し,経営戦略とし て,原告製プリンタに対応するトナーカートリッジのうち,ハイエンドのプ リンタであるC830及びC840シリーズに対応する原告製品に搭載され 15 た原告電子部品を選択した旨を述べていること(甲75,76),その理由に は,相応の合理性が認められること,上記のとおり,本件各特許権侵害を回 避した電子部品の製造が技術的に可能であることを併せ考慮すると,控訴人 が本件書換制限措置がされた原告電子部品を取り替えて使用済みの原告製品 に搭載した被告電子部品について本件各特許権を行使することは,原告製品 20 のリサイクル品をもっぱら市場から排除する目的によるものと認めることは できない。 子部品を取り替えて使用済みの原告製品 に搭載した被告電子部品について本件各特許権を行使することは,原告製品 20 のリサイクル品をもっぱら市場から排除する目的によるものと認めることは できない。 上記のとおり,本件書換制限措置によりリサイクル事業者が受ける競争制 限効果の程度は小さいこと,控訴人が本件書換制限措置を講じたことには相 応の合理性があり,控訴人による被告電子部品に対する本件各特許権の行使 25 がもっぱら原告製品のリサイクル品を市場から排除する目的によるものとは 96 認められないことからすると,控訴人が本件書換制限措置という合理性及び 必要性のない行為により,被控訴人らが原告製品に搭載された原告電子部品 を取り外し,被告電子部品に取り替えることを余儀なくさせ,上記消尽の成 立を妨げたものと認めることはできない。 以上の認定事実及びその他本件に現れた諸事情を総合考慮すれば,控訴人 5 が,被控訴人らに対し,被告電子部品について本件各特許権に基づく差止請 求権及び損害賠償請求権を行使することは,競争者に対する取引妨害として, 独占禁止法(独占禁止法19条,2条9項6号,一般指定14項)に抵触す るものということはできないし,また,特許法の目的である「産業の発達」 を阻害し又は特許制度の趣旨を逸脱するものであるということはできないか 10 ら,権利の濫用に当たるものと認めることはできない。 したがって,被控訴人らの前記主張は採用することができない。 7 争点6(差止めの必要性)について (1) 証拠(甲10,乙15)及び弁論の全趣旨によれば,原告製品には,原告 電子部品が保持部材によって保持されて搭載され,同保持部材は,上下2か 15 所がピンにより圧着され,この圧着ピンを破壊しない限り原告電子部品を取 り外すことはできず,圧着ピンを破壊 告製品には,原告 電子部品が保持部材によって保持されて搭載され,同保持部材は,上下2か 15 所がピンにより圧着され,この圧着ピンを破壊しない限り原告電子部品を取 り外すことはできず,圧着ピンを破壊した後は,取り外した保持部材を再度 圧着することができず,このため,被告製品は,原告製品からその保持部材 を破壊して原告電子部品を取り出し,被告電子部品に入れ替えた上,保持部 材の4か所に接着剤を付しトナーカートリッジに再度装着して製造されるこ 20 とが認められる。 被控訴人らによる被告製品の販売は,本件各特許権の侵害行為である被告 電子部品の販売を不可避的に伴うが,上記のとおり,被告電子部品が被告製 品と物理的に一体となっていることからすれば,控訴人は,被告製品の販売 を差止めの対象とせざるを得ない。 25 本件発明による原告プリンタ製品と当該プリンタ製品で使用されるトナ 97 ーカートリッジ製品の間での接触不良等の電気的な問題が生じない等の課題 解決による品質向上は,被告製品の売上に対して寄与,貢献をしているから, これと異なる旨をいう被控訴人らの主張は全て理由がない。 (2) 被告電子部品は,被告製品と物理的に一体であることからすれば,被告製 品全体をもって「侵害の行為を組成した物」と認めることが相当である。そ 5 して,被控訴人らは,被告電子部品を用いて被告製品を容易に製造できる状 況にあるので,被告製品の差止めに加え,被控訴人らが占有する被告製品及 び被告電子部品も,併せて廃棄させる必要性が高い。 被控訴人らは,控訴人が本件各特許権との抵触がないと認めている他社製 品に類似した形状へ設計変更したICチップを使用した製品の販売を準備し 10 てきたが,現在では,被告電子部品を用いない被告製品の製造・販売をして おり,特許権侵害が生ずる余地はなくな めている他社製 品に類似した形状へ設計変更したICチップを使用した製品の販売を準備し 10 てきたが,現在では,被告電子部品を用いない被告製品の製造・販売をして おり,特許権侵害が生ずる余地はなくなったと主張し,廃棄請求についても, 物の発明における物がある構成物の一部をなす場合,その構成物の特許発明 の対象である物以外の部分は,同条2項の「侵害の行為を組成した物」とは いえないと主張するが,被控訴人らの主張は,いずれも採用することができ 15 ない。 (3) 以上によれば,被告製品の製造等の差止め及び廃棄の必要性がある。 なお,被控訴人らは,更なる設計変更を主張しているが,原告製品の保持 部材を破壊して,電子部品(ICチップ)を侵害品の電子部品(ICチップ) に入れ替え,保持部材を改めて接着剤で固く接着することで,本件トナーカ 20 ートリッジ製品を製造していることからすれば,仮に被控訴人らが電子部品 (ICチップ)の設計変更をしたとしても,被控訴人らは,容易に設計変更 前の被告電子部品を用いて本件トナーカートリッジ製品の製造・販売をする ことができるから,被控訴人らの主張する設計変更の事実の有無や,その設 計変更の内容如何にかかわらず,本件において差止めの必要性は認められる 25 というべきである。 98 8 争点7(控訴人の損害額)について (1) 特許法102条2項に基づく損害額について ア 被告製品の販売に係る特許法102条2項の適用について (ア) 被控訴人らが平成25年4月から令和3年8月3日までの間に販売 した被告製品の販売総数が2万1000本を下らないこと,これにより 5 被控訴人らが得た利益(限界利益)の額が8400万円を下らないこと は,当事者間に争いがない。 被控訴人らによる被告電子部品が搭載された被告製品の販 数が2万1000本を下らないこと,これにより 5 被控訴人らが得た利益(限界利益)の額が8400万円を下らないこと は,当事者間に争いがない。 被控訴人らによる被告電子部品が搭載された被告製品の販売は本件各 発明1ないし3に係る本件各特許権の侵害行為に当たるから,特許法1 02条2項により,被控訴人らが得た上記利益の額は,控訴人が上記侵 10 害行為により受けた損害額と推定(本件推定)される。 (イ) これに対し被控訴人らは,①被告電子部品は,被告製品に搭載され た一部品である情報記憶装置であること,②被告製品から被告電子部品 を保持する保持部材を取り外して,被告電子部品を取り出した上で,こ れを再度組み付けなおして利用することができるから,被告製品と被告 15 電子部品は可分であって物理的に一体となっているものとはいえないこ と,③被告電子部品の原価は1個当たり100円程度であるのに対し, 被告製品の平均小売価格は1万3000円程度,原告製品の定価は3万 円台後半から4万円台前半であること,④本件各発明1ないし3は,情 報記憶装置の物理的形状に係る情報記憶装置の発明であって,トナーカ 20 ートリッジの発明ではないことからすると,被告製品全体の販売利益(限 界利益)と控訴人の損害との間に相当因果関係はないから,控訴人の損 害額は,被告電子部品の販売利益(限界利益)を基準として算定すべき である旨主張する。 しかしながら,原告製品と同タイプのトナーカートリッジは,主とし 25 て,容器本体(ボトル本体)と,その頭部に設けられたキャップ部(ボ 99 トルキャップ)とで構成され,トナー容器のキャップ部には,シャッタ 部材34,情報記憶装置としてのIDチップ(ICチップ)等が分解可 能に設置されていること(本件明細書等1の【0061】,【00 99 トルキャップ)とで構成され,トナー容器のキャップ部には,シャッタ 部材34,情報記憶装置としてのIDチップ(ICチップ)等が分解可 能に設置されていること(本件明細書等1の【0061】,【0083】, 図18,20等),被告電子部品は,情報記憶装置としてのICチップで あるから,使用済みの原告製品の再生品である被告製品の一部品である 5 こと,被告電子部品は,キャプ部の保持部材に接着剤によって接着され て被告製品と物理的に一体となっていること,被控訴人らは,被告電子 部品が搭載された被告製品を一つの製品として販売し,その構成部品で ある被告電子部品を個別に販売したものではないことに照らすと,被控 訴人らが得た被告製品の限界利益の額について同項による推定(本件推 10 定)が及び,被告電子部品が被告製品の一部品であることは,上記推定 の全部又は一部を覆す推定覆滅事由として考慮するのが相当であると解 される。 したがって,被控訴人らの上記主張は採用することができない。 イ 推定覆滅事由について 15 被控訴人らは,被告電子部品は被告製品の一部品であること,被告製品 において本件各発明1ないし3の顧客吸引力がないこと,控訴人は,被告 電子部品を用いなくても,本件各特許権の侵害を回避しつつ,「?」と表示 されない再生品を製造することができることを認めていること,被告製品 の売上げに原告プリンタの販売台数が寄与していること,被告製品におい 20 ては本件各特許以外の控訴人の他の特許が実施されていること,被告製品 の価格は原告製品の販売価格よりも大幅に安価であり,被控訴人らと控訴 人の業務態様等が相違すること,被控訴人らが被告製品を販売しなかった としても,その販売分は,本件書換制限措置により残量表示がされないま まのリサイクル品に置き換わるにす に安価であり,被控訴人らと控訴 人の業務態様等が相違すること,被控訴人らが被告製品を販売しなかった としても,その販売分は,本件書換制限措置により残量表示がされないま まのリサイクル品に置き換わるにすぎないことは,本件推定の覆滅事由に 25 該当し,かかる事情を考慮すると,本件推定は全部覆滅される旨主張する 100 ので,以下において判断する。 (ア) ①被告電子部品が情報記憶装置(ICチップ)であり,被告製品の 一部品であることは,前記ア(イ)認定のとおりであること,②本件各発 明1ないし3は,トナーカートリッジの電子部品に関する発明であって, トナーカートリッジ全体の発明ではないこと,③本件各発明1において 5 は,その構成により,情報記憶装置に電気的な破損が生じにくくなると ともに,穴部の中心から最も離れた位置にある端子までの距離を短くす ることができ,端子の本体側端子に対する平行度が量産ばらつき等の理 由でずれても,そのずれを最低限に抑えることができるという効果を奏 するところに技術的意義を有し(本件明細書等1の【0022】),本件 10 各発明2及び3においては,同様に,画像形成装置本体に対して着脱可 能に設置される着脱可能装置に接触式の情報記憶装置を設置した場合で あっても,画像形成装置本体のコネクタの本体側端子との位置決め不良 による接触不良が生じにくい,情報記憶装置及び着脱可能装置を提供す ることができるという効果を奏することに技術的意義があること(本件 15 明細書等2及び3の【0027】)が認められ,本件各発明1ないし3の 実施品である原告電子部品は,電気的な破損や接触不良が生じにくい情 報記憶装置として,トナーカートリッジ及びプリンタ本体の品質管理に 安定的に寄与しているものと認められるところ,一方で,トナーカート リッジに求められる基本 部品は,電気的な破損や接触不良が生じにくい情 報記憶装置として,トナーカートリッジ及びプリンタ本体の品質管理に 安定的に寄与しているものと認められるところ,一方で,トナーカート リッジに求められる基本的な性能は,トナーの適量をプリンタ本体の感 20 光体ドラムに供給するためのトナーをキャップ部側へ搬送するトナー搬 送(本件明細書1等の【0062】,【0065】)に係る性能にあるもの と認められるが,本件各発明1ないし3は,かかる性能を発揮するため の技術とはいえないから,被告製品の売上げに対する顧客吸引力は限定 的であることに鑑みると,被告電子部品が被告製品の一部品であること 25 は,本件推定の覆滅事由に該当するものと認められる。 101 (イ) 被控訴人らは,被告製品においては本件各特許以外の控訴人の他の 特許(乙82ないし86)に係る発明が実施されていることは,本件推 定の覆滅事由に該当する旨主張する。 しかし,被控訴人らが挙げる上記各発明の実施によって被控訴人らの 得た利益の一部又は全部について控訴人が受けた損害との相当因果関係 5 がないことの具体的な根拠は明らかでなく,本件推定を覆す事情に該当 するものとは認められないから,被控訴人らの上記主張は採用すること ができない。 (ウ) 被控訴人らは,①控訴人は,被告電子部品を用いなくても,本件各 特許権の侵害を回避しつつ,「?」と表示されない再生品を製造すること 10 ができることを認めていること,②被告製品の売上げに原告プリンタの 販売台数が寄与していること,③被告製品の価格は原告製品の販売価格 よりも大幅に安価であり,被控訴人らと控訴人の業務態様等が相違する こと,④被控訴人らが被告製品を販売しなかったとしても,その販売分 は,本件書換制限措置により残量表示がされないままのリサイクル品に 15 も大幅に安価であり,被控訴人らと控訴人の業務態様等が相違する こと,④被控訴人らが被告製品を販売しなかったとしても,その販売分 は,本件書換制限措置により残量表示がされないままのリサイクル品に 15 置き換わるにすぎないことは,本件推定の覆滅事由に該当する旨主張す る。 しかしながら,①については,本件各特許権の侵害を回避しつつ, 「?」 と表示されない再生品のシェアに関する立証はないことに照らすと,本 件推定の覆滅事由に該当するものとは認められない。 20 ②及び③については,被告製品は,原告プリンタに対応する原告製品 の再生品であって,原告プリンタ用の専用品であり,原告製品と被告製 品の顧客層が共通することに照らすと,本件推定の覆滅事由に該当する ものとは認められない。 ④については,以上のことに加えて,本件書換制限措置により残量表 25 示がされないままのリサイクル品のシェアに関する立証もないことに照 102 らすと,被控訴人らが被告製品を販売しなかったとしてもその販売分が 本件書換制限措置により残量表示がされないままのリサイクル品に置き 換わるにすぎないとはいえず,本件推定の覆滅事由に該当するものとは 認められない。 したがって,被控訴人らの上記主張は採用することができない。 5 ウ まとめ 以上を前提に検討するに,前記イ(ア)認定のとおり,被告電子部品が被 告製品の一部品であることは,本件推定の覆滅事由に該当すること,本件 各発明1ないし3の技術的意義の内容,トナーカートリッジに求められる 基本的な性能は,トナーの適量をプリンタ本体の感光体ドラムに供給する 10 ためのトナーをキャップ部側へ搬送するトナー搬送(本件明細書1等の【0 062】,【0065】)に係る性能にあるものと認められるが,本件各発明 1ないし3は, リンタ本体の感光体ドラムに供給する 10 ためのトナーをキャップ部側へ搬送するトナー搬送(本件明細書1等の【0 062】,【0065】)に係る性能にあるものと認められるが,本件各発明 1ないし3は,かかる性能を発揮するための技術とはいえないことを総合 考慮すると,被告製品の購買動機の形成に対する本件各発明1ないし3の 寄与割合は5%と認めるのが相当であり,上記寄与割合を超える部分につ 15 いては被告製品の販売による限界利益の額と控訴人の受けた損害額との間 に相当因果関係がないものと認められる。 したがって,本件推定は上記限度で覆滅されるから,特許法102条2 項に基づく控訴人の損害額は,被告製品の限界利益の額(8400万円) の5%に相当する420万円と認められる。 20 (3) 特許法102条3項に基づく損害額について ア 被告製品の販売に係る売上高は,平均小売価格である1万3000円(乙 37)に販売数量である2万1000本(争いがない)を乗じた2億73 00万円であると認められる。 イ 社団法人発明協会発行の「実施料率〔第5版〕」(乙78)には,電子・ 25 通信用部品の実施料率に係る平成4年度~平成10年度の平均値として, 103 イニシャル有りが3.5%,イニシャルなしが3.3%であるとの記載が あり,また,経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハン ドブック」の表Ⅰ-3(乙79)には,アンケート結果(調査実施期間2 009年11月5日~2010年2月15日)として,技術分類を「電気」 とする特許の「ロイヤルティ料率」について2.9%と記載され,「器械」 5 とする特許の「ロイヤルティ料率」について3.5%との記載がある。 そして,本件各発明1ないし3の技術的意義は,前記のとおりであるこ と,その他本件に現れた諸事情を総合考慮す 記載され,「器械」 5 とする特許の「ロイヤルティ料率」について3.5%との記載がある。 そして,本件各発明1ないし3の技術的意義は,前記のとおりであるこ と,その他本件に現れた諸事情を総合考慮すると,控訴人の特許法102 条3項に基づく実施料相当額の損害額は,被告製品の売上高に1.5%を 乗じた額と認めるのが相当である。 10 そうすると,被告製品の販売に係る控訴人の特許法102条3項に基づ く実施料相当額の損害額は,410万円(2億7300万円×0.015。 1万円未満四捨五入。)となる。 ウ 前記(2)ウ認定の特許法102条2項に基づく控訴人の損害額420万 円は,前記イ認定の同条3項に基づく控訴人の損害額410万円よりも高 15 いから,同条2項に基づく損害額が控訴人の損害額となる。 (4) 弁護士費用 本件事案の性質・内容,本件の認容額,原審及び当審の審理経過等諸般の 事情を斟酌すると,被控訴人らの本件特許権侵害の不法行為と相当因果関係 のある弁護士費用及び弁理士費用相当額は,50万円と認めるのが相当であ 20 る。 (5) 過失相殺 被控訴人らは,控訴人主張の本件各特許権侵害は,控訴人の本件書換制限 措置により誘引されたものであるから,被控訴人らが賠償すべき損害額の算 定に当たっては,控訴人が本件書換制限措置をしたことを控訴人の過失と評 25 価し,過失相殺がされるべきである旨主張する。 104 しかしながら,前記6(3)のとおり,控訴人による本件書換制限措置には相 応の合理性があるものと認められるから,被控訴人らの主張は採用すること ができない。 ⑹ 小括 以上によれば,控訴人は,被控訴人らに対し,本件特許権侵害の不法行為 5 に基づく損害賠償として470万円(前記(3)ウ及び(4)の合計額)及びこれ 張は採用すること ができない。 ⑹ 小括 以上によれば,控訴人は,被控訴人らに対し,本件特許権侵害の不法行為 5 に基づく損害賠償として470万円(前記(3)ウ及び(4)の合計額)及びこれ に対する被控訴人DSジャパンについて平成29年12月9日から,被控訴 人ロジコ及び被控訴人奥美濃について各同月8日から各支払済みまで改正前 民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。 第5 結論 10 以上によれば,控訴人の請求は,被控訴人らに対し,被告製品の販売等の差 止め及び廃棄並びに被告電子部品の廃棄を求めるとともに,470万円及びこ れに対する被控訴人DSジャパンについて平成29年12月9日,被控訴人ロ ジコ及び被控訴人奥美濃について各同月8日から支払済みまで年5分の割合に よる金員の支払を求める限度で理由があり,その余はいずれも理由がないから 15 棄却すべきものである。 したがって,原判決は一部不当であって,本件控訴は一部理由があるから, 原判決を本判決主文第1項のとおり変更することとして,主文のとおり判決す る。 20 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官 大 鷹 一 郎 25 裁判官 小 林 康 彦 105 裁判官 小 川 卓 逸 106 (別紙1) 被告製品目録(1) 下記図1及び「第2 構造の説明」に記載された構造の電子部品(「被告電 子部品」)が,下記図2及び図3並びに「第2 構造の説明」に記載されたよう に搭載された,下記図2及び図3並びに「第2 構造の説明」に記載された構造 5 のトナーカートリッジ製品(以下「被告トナーカートリッジ製品(1)」という。)。 第1 被告製品に関す 載されたよう に搭載された,下記図2及び図3並びに「第2 構造の説明」に記載された構造 5 のトナーカートリッジ製品(以下「被告トナーカートリッジ製品(1)」という。)。 第1 被告製品に関する図面の説明 図1は,被告電子部品を示すものであり,図1(a)は被告電子部品の基板の表 面を示す図であり,図1(b)は被告電子部品の基板の側面を示す図であり,図1(c) 10 は被告電子部品の基板の裏面を示す図である。 図2は,被告トナーカートリッジ製品(1)を示すものであり,図2(a)~図2(d) は被告トナーカートリッジ製品(1)の外観を示す図であって,図2(a)は被告トナ ーカートリッジ製品(1)の正面図,図2(b)は90°回転させた平面図であり,図2 (c)①及び図2(c)②は左側面図(被告電子部品が被告トナーカートリッジ製品(1) 15 に搭載されている部分の側面図。図2(c)①又は図2(c)②の2種類の形状がある。), 図2(d)は右側面図である。ブラック,シアン,マゼンタ及びイエローの4色それ ぞれに対応する形状の被告トナーカートリッジ製品(1)があり,色の種類によって, ブラックは図2(a)B,シアンは図2(a)C,マゼンタは図2(a)M,イエローは図2 (a)Yというように符号を付している。 20 図3は,被告電子部品が被告トナーカートリッジ製品(1)に搭載されている部 分(斜視図)の拡大図であり,図3①は左側面が図2(c)①の場合の拡大図であり, 図3②は左側面が図2(c)②の場合の拡大図である。 25 107 〔図1(a)〕 〔図1(b)〕 5 〔図1(c)〕 図1 被告電子部品 108 〔図1(a)〕 〔図1(b)〕 5 〔図1(c)〕 図1 被告電子部品 108 〔図2(a)B〕 5 〔図2(b)B〕 〔図2(c)①B〕 〔図2(d)B〕 10 〔図2(c)②B〕 図2 被告トナーカートリッジ製品(1)(ブラック) 15 109 〔図2(a)C〕 5 〔図2(b)C〕 〔図2(c)①C〕 〔図2(d)C〕 10 〔図2(c)②C〕 図2 被告トナーカートリッジ製品(1)(シアン) 15 110 〔図2(a)M〕 5 〔図2(b)M〕 〔図2(c)①M〕 〔図2(d)M〕 10 〔図2(c)②M〕 図2 被告トナーカートリッジ製品(1)(マゼンタ) 15 111 〔図2(a)Y〕 5 〔図2(b)Y〕 10 〔図2(c)①Y〕 〔図2(d)Y〕 〔図2(c)②Y〕 15 図2 被告トナーカートリッジ製品(1)(イエロー) 112 〔図3①〕 〔図3②〕 5 図3 被告電子部品が被告トナーカートリッジ製品に 搭載されている部分(斜視図)の拡大図(全色共通) 113 第2 構造の説明 1.被告トナーカートリッジ製品(1)には,図2及び図3に示すように,被告電 子部品が搭載されている(ただし,被告電子部品を保持する保持部材100の 形状並びに保持 通) 113 第2 構造の説明 1.被告トナーカートリッジ製品(1)には,図2及び図3に示すように,被告電 子部品が搭載されている(ただし,被告電子部品を保持する保持部材100の 形状並びに保持部材100に使用される接着剤の位置,数及び形状は問わな い。)。 5 2.被告電子部品は,以下の構造を有している。 (1)被告電子部品は,図1(a)及び図1(c)に示すように,穴部12を有する基 板10を有している(ただし,穴部12及び基板10の形状は問わない。)。 穴部12には,アース端子30が形成されている。 (2)被告電子部品には,図1(a)に示すように,基板10の表面に電子部品側端 10 子として,クロック信号用端子20,アース端子30,シリアルデータ用端 子40,及び,電源用端子50がこの順に配置されている(ただし,電子部 品側端子の形状,サイズ及び端子間の間隔は問わない。)。 (3)被告電子部品には,図1(c)に示すように,基板10の裏面に,原告が製 造・販売するプリンタ又は複写機と被告トナーカートリッジ製品(1)との間 15 で通信される情報が記憶されるメモリ部60が穴部12よりも下方に設け られている(ただし,メモリ部60の形状及び基板10の裏面上の位置は問 わない。)。 以上 20 114 (別紙2) 被告製品目録(2) 下記図1及び「第2 構造の説明」に記載された構造の電子部品(「被告電子 部品」)が,下記図2及び図3並びに「第2 構造の説明」に記載されたように搭 載された,下記図2及び図3並びに「第2 構造の説明」に記載された構造のト 5 ナーカートリッジ製品(以下「被告トナーカートリッジ製品(2)」という)。 第1 被告製品に関する図面の説明 図1は,被告電子部品を示すものであり,図1(a)は被告電子部品の基 た構造のト 5 ナーカートリッジ製品(以下「被告トナーカートリッジ製品(2)」という)。 第1 被告製品に関する図面の説明 図1は,被告電子部品を示すものであり,図1(a)は被告電子部品の基板の表 面を示す図であり,図1(b)は被告電子部品の基板の側面を示す図であり,図1(c) 10 は被告電子部品の基板の裏面を示す図である。 図2は,被告トナーカートリッジ製品(2)を示すものであり,図2(a)~図2(d) は被告トナーカートリッジ製品(2)の外観を示す図であって,図2(a)は被告トナ ーカートリッジ製品(2)の正面図,図2(b)は90°回転させた平面図であり,図2 (c)①及び図2(c)②は左側面図(被告電子部品が被告トナーカートリッジ製品(2) 15 に搭載されている部分の側面図。図2(c)①又は図2(c)②の2種類の形状がある。), 図2(d)は右側面図である。ブラック,シアン,マゼンタ及びイエローの4色それ ぞれに対応する形状の被告トナーカートリッジ製品があり,色の種類によって, ブラックは図2(a)B,シアンは図2(a)C,マゼンタは図2(a)M,イエローは図2 (a)Yというように符号を付している。 20 図3は,被告電子部品が被告トナーカートリッジ製品(2)に搭載されている部 分(斜視図)の拡大図であり,図3①は左側面が図2(c)①の場合の拡大図であり, 図3②は左側面が図2(c)②の場合の拡大図である。 25 115 〔図1(a)〕 〔図1(b)〕 5 〔図1(c)〕 図1 被告電子部品 116 〔図2(a)B〕 5 〔図2(b)B〕 〔図2(c)①B〕 5 〔図1(c)〕 図1 被告電子部品 116 〔図2(a)B〕 5 〔図2(b)B〕 〔図2(c)①B〕 〔図2(d)B〕 10 〔図2(c)②B〕 図2 被告トナーカートリッジ製品(2)(ブラック) 15 117 〔図2(a)C〕 5 〔図2(b)C〕 〔図2(c)①C〕 〔図2(d)C〕 10 〔図2(c)②C〕 図2 被告トナーカートリッジ製品(2)(シアン) 15 118 〔図2(a)M〕 5 〔図2(b)M〕 〔図2(c)①M〕 〔図2(d)M〕 10 〔図2(c)②M〕 図2 被告トナーカートリッジ製品(2)(マゼンタ) 15 119 〔図2(a)Y〕 5 〔図2(b)Y〕 〔図2(c)①Y〕 〔図2(d)Y〕 10 〔図2(c)②Y〕 図2 被告トナーカートリッジ製品(2)(イエロー) 15 120 〔図3①〕 〔図3②〕 5 図3 被告電子部品が被告トナーカートリッジ製品に 搭載されている部分(斜視図)の拡大図(全色共通) 121 第2 構造の説明 1.被告トナーカートリッジ製品(2)には,図2及び図3に示すように,被告電 子部品が搭載されている(ただし,被告電子部品を保持する保持部材100の 形状並びに保持部材100に使用される接着剤の位置,数及び形状は問わな い。)。 5 2.被告電子部品は,以下の構造を有し 電 子部品が搭載されている(ただし,被告電子部品を保持する保持部材100の 形状並びに保持部材100に使用される接着剤の位置,数及び形状は問わな い。)。 5 2.被告電子部品は,以下の構造を有している。 (1)被告電子部品は,図1(a)及び図1(c)に示すように,穴部12を有する基 板10を有している(ただし,穴部12及び基板10の形状は問わない。)。 穴部12には,アース端子30が形成されている。 (2)被告電子部品には,図1(a)に示すように,基板10の表面に電子部品側端 10 子として,クロック信号用端子20,アース端子30,シリアルデータ用端 子40,及び,電源用端子50がこの順に配置されている(ただし,電子部 品側端子の形状,サイズ及び端子間の間隔は問わない。)。 (3)被告電子部品には,図1(c)に示すように,基板10の裏面に,原告が製 造・販売するプリンタ又は複写機と被告トナーカートリッジ製品(2)との間 15 で通信される情報が記憶されるメモリ部60が穴部12よりも下方に設け られている(ただし,メモリ部60の形状及び基板10の裏面上の位置は問 わない。)。 20 122 (別紙3) 写真1(甲48の写真1) 5 写真2(甲48の写真2) 123 (別紙4) 被告電子部品の形状 5 1 被告電子部品(設計変更前) 写真1:トナーカートリッジを撮影した写真 124 5 写真2:トナーカートリッジを近接して撮影した写真 125 5 10 写真3:トナーカートリッジのチップのみを近接して撮影した写真 126 127 2 被告電子部品(設計変更後) 写真4:ト 5 10 写真3:トナーカートリッジのチップのみを近接して撮影した写真 126 127 2 被告電子部品(設計変更後) 写真4:トナーカートリッジを撮影した写真 5 10 128 写真5:トナーカートリッジを近接して撮影した写真 5 10 129 写真6:トナーカートリッジのチップのみを近接して撮影した写真 130 (別紙5) 本件明細書 【図36】 【図37】 5 131 【図38】 5 【図40】 132 【図39】 133 (別紙6) 乙5 134 135 5 136 (別紙7) 甲74 (写真省略) (写真省略) 5 写真4 写真5

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