平成15(行ウ)95等 公文書非公開決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年2月26日 大阪地方裁判所 情報公開
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判決文本文8,420 文字)

主文 1 被告が,原告に対し,平成15年9月18日付けでした原告の大阪市情報公開条例に基づく別紙文書目録1記載の各文書の公開請求を却下する決定をいずれも取り消す。 2 被告が,原告に対し,同年10月28日付けでした原告の大阪市情報公開条例に基づく別紙文書目録2記載の各文書の公開請求を却下する決定をいずれも取り消す。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告が,大阪市情報公開条例(以下「公開条例」という。)に基づき,大阪市の第三セクターである各株式会社の特定調停申立てに係る特定調停申立書等の文書の公開を請求したところ,被告が,公開条例の他の法令等との調整規定により上記各文書が公開条例の対象ではないとして公開請求を却下する決定をしたため,原告がその取消しを求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠(書証番号は特記しない限り枝番を含む。)により容易に認められる事実)(1) 公開条例公開条例(2条,5条及び7条)では,何人も大阪市長等の実施機関に対し,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書等であって,当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有している公文書の公開を請求することができ,実施機関は,公開請求があったときは,7条各号所定の非公開情報が記録されている場合を除き,公開請求者に対し,当該公文書を公開しなければならないと規定されている。 公開条例15条には他の法令等との調整規定が置かれ,「この条例の規定は,法律の規定により,行政機関の保有する情報の公開に関する法律の規定を適用しないこととされている書類等については,適用しない。」と規定され,同条2項(以下「本件規定」という。) ,「この条例の規定は,法律の規定により,行政機関の保有する情報の公開に関する法律の規定を適用しないこととされている書類等については,適用しない。」と規定され,同条2項(以下「本件規定」という。)では,「この条例の規定は,他の法令等の規定により,公文書の閲覧若しくは縦覧又は公文書の謄本,抄本その他の写しの交付(以下「公文書の閲覧等」という。)を受けることができるときは,適用しない。ただし,公文書の閲覧等を受けることができるものの範囲又は期間若しくは方法等が限られている場合において,当該法令等がその範囲外のものに対する公文書の閲覧等又は異なる期間若しくは方法等による公文書の閲覧等を禁止する趣旨でないと認められるときは,この限りでない。」と規定されている。 (2) 大阪市が出資する第三セクターであるアジア太平洋トレードセンター株式会社(以下「ATC」という。),株式会社大阪ワールドトレードセンタービルディング(以下「WTC」という。)及び株式会社湊町開発センター(以下「MDC」といい,ATC及びWTCと合わせて「三セク各社」という。)は,平成15年6月20日,債権者である大阪市及び金融機関等を相手方として,大阪簡易裁判所に特定調停を申し立て,その後各調停事件は大阪地方裁判所に移送された(以下「別件各調停事件」という。)。被告は,別紙文書目録1記載の三セク各社が申し立てた各特定調停申立書(以下「本件各申立書」という。),同目録2記載の三セク各社が債権者に対して示した各再建計画(以下「本件各再建計画」という。)及び本件各再建計画に関して別件各調停事件において鑑定嘱託された監査法人の各鑑定結果(以下「本件各鑑定結果」といい,本件各申立書及び本件各再建計画と合わせて「本件各文書」という。)を保有している。 (3) 原告は,同年9月4日,被告に対 件において鑑定嘱託された監査法人の各鑑定結果(以下「本件各鑑定結果」といい,本件各申立書及び本件各再建計画と合わせて「本件各文書」という。)を保有している。 (3) 原告は,同年9月4日,被告に対し,公開条例に基づき本件各申立書の公開を請求したが,被告は,同月18日,本件各申立書については本件規定により公開条例が適用されないとして,原告の公開請求をいずれも却下する決定を行った。また,原告は,同年10月14日,被告に対し,公開条例に基づき本件各再建計画及び本件各鑑定結果の公開を請求したが,被告は,上記各文書については本件規定により公開条例が適用されないとして,原告の公開請求をいずれも却下する決定(以下,上記各決定を「本件各決定」という。)を行った。 (4) 原告は,同年11月5日,本件各決定の取消しを求めて本訴を提起した。なお,被告は,本訴で本件各文書の非公開事由の主張をしないことを明らかにしている。 2 争点本件の争点は,本件各文書について本件規定により公開条例が適用されないかどうかであり,これに関する当事者の主張は次のとおりである。 (被告)(1) 公開条例15条の趣旨は,他の法令等の規定により定められた閲覧等の制度と公開条例による公文書公開制度との調整規定として,他の法令等による閲覧等が設けられている場合における公開条例の適用関係を定めるものであり,本件規定は,他の法令等の規定により公文書の閲覧等を受けることができるときは,当該法令等が定める公文書の閲覧等の制度を利用すべきであることから,公開条例を適用しないことを定めている。本件規定ただし書では,最大限の公開を実施するため,他の法令等の規定により公文書の閲覧等が定められ,公文書の閲覧等を受けることができる者の範囲又は期間若しくは方法等が限られている場合でも,当該法令等がその範 だし書では,最大限の公開を実施するため,他の法令等の規定により公文書の閲覧等が定められ,公文書の閲覧等を受けることができる者の範囲又は期間若しくは方法等が限られている場合でも,当該法令等がその範囲外のものに対する公文書の閲覧等又は異なる期間若しくは方法等による公文書の閲覧等を禁止する趣旨でないと認められるときは,公開条例の規定を並行して適用することとしているが,当該法令等がその範囲外のものに対する公文書の閲覧等又は異なる期間若しくは方法等による公文書の閲覧等を禁止する趣旨である場合には,本件規定本文により公開条例は適用されない。これは,憲法94条,地方自治法14条1項,2条16項により,条例は法律の範囲内で法令に違反しない限り制定することができるところ,法令等が一定の範囲外の公文書の閲覧等を禁止する趣旨である場合には,公開条例を適用して公開請求の対象とすることにより公文書の閲覧等を認めることはできないからである。 (2) 本件各文書は,別件各調停事件の記録の一部であり,特定調停手続規則9条,民事調停規則23条は,当事者又は利害関係人に限り,裁判所書記官に対し,記録の閲覧若しくは謄写又はその正本,謄本,抄本若しくは事件に関する証明書の交付(以下「記録の閲覧等」という。)の請求を認めており,同規則10条では,調停手続は,調停委員会が相当であると認めて傍聴を許可した者を除き非公開の手続によることとされている。このように調停手続が非公開であるにもかかわらず,何人でもその記録の閲覧等を請求できることになれば,当事者のプライバシーや企業秘密等が知られることになり,漏えいを案ずる当事者が萎縮することにより調停手続の場において率直かつ十分な意見交換や内密の資料の提出等を行うことが困難となり,結果的に調停制度の所期の成果を得ることができなくなるおそ ことになり,漏えいを案ずる当事者が萎縮することにより調停手続の場において率直かつ十分な意見交換や内密の資料の提出等を行うことが困難となり,結果的に調停制度の所期の成果を得ることができなくなるおそれがあること,また,公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録や原則として非公開の手続で行われる民事保全の手続に関する事件記録との均衡を図る必要があること等を考慮して,民事調停規則は当事者又は利害関係人に限り記録の閲覧等の請求を認めることにしたと解され,調停記録を広く一般に公開に供することは手続を非公開とした法令の趣旨を没却することになり,許されない。このように,民事調停規則23条の規定が本件各調停手続の当事者又は利害関係人でない者に対しては記録の閲覧等を禁止する趣旨であると認められることから,本件各文書は本件規定により公開条例が適用されないことになり,本件各決定に違法な点はない。 (原告)(1) 民事調停規則で記録の閲覧等の対象となっているのは,裁判所において作成,保管されている裁判記録としての各文書であるのに対し,本件各文書は被告が当事者として取得して保有することとなった文書,いわば裁判書類の副本であり,これらは物理的に別物である。本件規定で公開条例の適用外とされている公文書とは,実施機関が作成,保管する文書で,他の法令により開示できる文書のことであり,これについては当該他の法令により開示すべきとしているにすぎない。本件のように,裁判所等他の機関が保有する文書を他の法令により閲覧等ができるという場合は,本件規定の射程に入らないものである。 (2) 民事調停規則23条の規定は,調停手続を主宰し,調停記録を保管する裁判所に対する規範なのであって,行政機関の保有する情報の公開を規定する公開条例の適用の有無には全く関係がない。行政機関の保有する情報の公 調停規則23条の規定は,調停手続を主宰し,調停記録を保管する裁判所に対する規範なのであって,行政機関の保有する情報の公開を規定する公開条例の適用の有無には全く関係がない。行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)15条に定められた調整措置の対象となる法令には,民事調停法又は同規則の規定は含まれず,また,行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」という。)では,民事調停に関する文書について調整規定は存在しない。これらは,民事調停に関する文書が裁判所の保有する文書であることから,行政機関の保有する文書の公開を定める情報公開法との調整が問題とならないからである。民事調停規則23条の規定は,行政機関が保有する情報に関する情報公開法,公開条例の適用に関する法令ではなく,法令と条例との主従関係が生じるような法令ではないのであって,本件規定において公文書の閲覧等を禁止する趣旨の法令ではない。 (3) 民事調停規則10条は裁判所が手続を公開しないことを意味するのであって,当事者や利害関係人が手続を公開してはならないことを意味するものではない。同規則は,当事者又は利害関係人がその保有する調停に関する文書をすべて非公開として,第三者に対する閲覧等を禁止する趣旨を有するものではない。同規則23条の文言によっても,調停の関係人に内容の非公開を貫くことを強制しているわけではないことが明らかである。 第3 争点に対する判断 1 公開条例において「公文書」とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書等であって,当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているものをいう(公開条例2条2項)。本件規定は,このような大阪市長等の実施機関において職務上作成し, は取得した文書等であって,当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているものをいう(公開条例2条2項)。本件規定は,このような大阪市長等の実施機関において職務上作成し,又は取得した文書等であって,当該実施機関が保有している公文書につき,他の法令等の規定により閲覧若しくは縦覧又は謄本,抄本その他の写しの交付を受けることができるときは,公開条例の規定を適用しないとしているものであり,しかも,公文書の閲覧等を受けることができるものの範囲又は期間若しくは方法等が限られている場合において,当該法令等がその範囲外のものに対する公文書の閲覧等又は期間若しくは方法等による公文書の閲覧等を禁止する趣旨でないと認められるときは,並行して公開条例による閲覧等を許容することとしているのであって,情報公開法15条1項と同趣旨の調整規定と解される。 したがって,本件規定は,文言解釈上,大阪市の実施機関において保有する「公文書」の閲覧等が他の法令等に定められている場合に関する調整規定であり,裁判所の保有する同一内容の文書について閲覧等に関する法令の規定が存することをもって,「他の法令等の規定により,公文書の閲覧若しくは縦覧又は謄本,抄本その他の写しの交付を受けることができるとき」に当たると解することはできない。 2 被告は,本件規定は,他の法令等の規定により定められた閲覧等の制度と公開条例による公開制度との調整を定めたものであり,他の法令等の規定により文書の閲覧等を受けることができるときは,当該法令等が定める閲覧等の制度を利用すべきであることから,公開条例を適用しないことを定め,本件規定ただし書は,当該法令等が一定の範囲外の閲覧等を禁止する趣旨でないと認められるときは公開条例の規定を並行して適用することとし,これが禁止されている場合 とから,公開条例を適用しないことを定め,本件規定ただし書は,当該法令等が一定の範囲外の閲覧等を禁止する趣旨でないと認められるときは公開条例の規定を並行して適用することとし,これが禁止されている場合には,条例は法令に違反し得ないから,公開条例を適用して公開請求の対象として閲覧等を認めることはできないとしたものであると主張する。 しかしながら,戸籍,不動産登記等,専ら当該開示制度を利用すべき場合については,整備法により関係法律において情報公開法の適用除外の規定が設けられており,これを受けて,公開条例15条1項が,情報公開法の規定を適用しないこととされている書類等については公開条例を適用しないと定めていることにより,専ら当該開示制度による閲覧等が行われることを図っている。 また,市の実施機関が保有する公文書につき,法令により直接閲覧等ができることが定められている場合において,当該法令に同法令が定める範囲外の閲覧等を禁止する趣旨の定めがされていれば,公開条例による公開の対象とすることができないことは,本件規定ただし書から明らかである。これに対し,他の機関が本来的に保有する文書について法令が閲覧等を制限している場合に関する調整としては,一部は公開条例15条1項により,その余は,公開条例7条7号が「法令等の規定の定めるところにより公開しないこととされ,若しくは公にすることができないと認められる情報又は法律若しくはこれに基づく政令の規定による明示の指示等により公にすることができないと認められる情報」を非公開情報と定めていることにより,十分対応が図られているものと認められ,あえて被告主張のような解釈をする必要があるとは考えられない。 なお,本件各文書は,調停事件記録の一部であって,裁判所が保有する文書であり,法令の規定により情報公開法の規定を適用しな ものと認められ,あえて被告主張のような解釈をする必要があるとは考えられない。 なお,本件各文書は,調停事件記録の一部であって,裁判所が保有する文書であり,法令の規定により情報公開法の規定を適用しないこととされているものではなく,公開条例15条1項に該当するものでもない。 そうすると,公開条例の他に被告が保有する本件各文書の閲覧等を定めた法令等が存在しない以上,本件規定本文に該当する場合ではないというべきである。 3 また,仮に,本件規定を,被告主張のように,他の法令により実施機関の保有する当該公文書と同一の内容の文書の閲覧等を他の機関から受けることができる場合にも及ぶ規定であると解釈することができるとしても,以下のとおり,原告による本件各文書の公開請求については,本件規定ただし書の適用により,公開条例の適用が認められるものと解される。 すなわち,特定調停手続規則9条において準用する民事調停規則23条は,当事者及び利害関係人以外の第三者による記録の閲覧等を認めていないが,第三者による記録の閲覧等が制限されていることが,直ちに,当事者及び利害関係人において調停に関する文書を第三者に閲覧等させることを禁止することを意味するものではない。調停手続において作成,提出され,当事者らにおいて取得する文書には様々のものがあり,当事者らにおいて当然他に利用することを予定している文書も存在するのであって,例えば,記録の閲覧等には正本や証明書の交付等も含まれるところ,これらの文書は当事者らが第三者に交付等することを当然予定しているものである。また,当事者が調停とは別の利用方法を予定していた文書や,行政機関において情報公開の対象となっていた文書が,相手方等から調停事件の資料として提出されたことによって,当事者の利用方法や情報公開が制限されることになると解す 別の利用方法を予定していた文書や,行政機関において情報公開の対象となっていた文書が,相手方等から調停事件の資料として提出されたことによって,当事者の利用方法や情報公開が制限されることになると解することはできない。このように,第三者による記録の閲覧等が制限されていても,調停に関する文書の中には当事者らが第三者に交付等することを当然予定した文書も存在するのであり,同条は,当事者らに対し,調停に関する文書を第三者に閲覧等させることを禁止する趣旨のものではないというべきである。 そうであるとすると,仮に本件規定を被告主張のような規定であると解するとしても,上記のとおり,特定調停手続規則9条,民事調停規則23条が,当事者らに対し,調停に関する文書を第三者に閲覧等させることを禁止する趣旨のものではない以上,上記規定を理由として,別件各調停事件の相手方である大阪市において,本件各文書を第三者に閲覧等させることが禁止されるものではなく,本件規定ただし書にいう一定の範囲外の公文書の閲覧等を禁止する趣旨でないと認められるときに該当すると認められる。したがって,原告による本件各文書の公開請求につき,本件規定本文により公開条例の適用が排除されるものということはできない。 確かに,調停に関する文書の中には,調停手続が原則として非公開とされ,第三者の記録の閲覧等が制限されていることから,当事者のプライバシーや企業秘密に関する内容の文書や,当事者が第三者に公開しないことを前提として裁判所に提出し,相手方や利害関係人が取得した文書等第三者に対する公開が相当でない情報が記録されている文書が存在することは認められる。しかしながら,これらの文書は,調停手続が非公開とされ,記録の閲覧等が制限されることを直接の理由として公開等が制限されるものではなく,当該文書の内容や が記録されている文書が存在することは認められる。しかしながら,これらの文書は,調停手続が非公開とされ,記録の閲覧等が制限されることを直接の理由として公開等が制限されるものではなく,当該文書の内容や当事者間の合意,調停手続に対する影響等により,当事者らにおいて第三者に閲覧等させることが制限されるものであって,公開条例7条各号における非公開事由該当性の問題として対処すべきである。 4 以上によれば,本件各文書が本件規定により公開条例の対象とならない旨の被告の主張を採用することはできず,本件規定により原告の各情報公開請求を却下した本件各決定は違法である。被告は,原告の各情報公開請求に対し,公開条例の適用があることを前提とし,公開条例所定の非公開事由の存否について判断した上で公開・非公開の決定をすべきであって,原告の本件各請求には理由があるから,これらを認容することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官川神裕裁判官山田明裁判官一原友彦・(別紙) 文書目録1(1) ATCにかかる「特定調停申立書」(2) WTCにかかる「特定調停申立書」(3) MDCにかかる「特定調停申立書」2(1) ATCから提出された再建計画及びその計画に対する監査法人の鑑定結果(2) WTCから提出された再建計画及びその計画に対する監査法人の鑑定結果(3) MDCから提出された再建計画及びその計画に対する監査法人の鑑定結果 ら提出された再建計画及びその計画に対する監査法人の鑑定結果

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