平成3(ワ)169等 東日本旅客鉄道損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成12年7月14日 千葉地方裁判所
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判決文本文17,578 文字)

主文 一被告は、原告に対し、一四二五万三九二三円及びこれに対する平成二年九月二〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員の支払をせよ。 二原告のその余の請求を棄却する。 三訴訟費用はこれを一〇分し、その三を原告の、その余を被告の負担とする。 四この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。ただし、被告が一五〇〇万円の担保を供するときは、右仮執行を免れることができる。 事実及び理由 第一請求一被告は、原告に対し、二〇三六万二七四七円及びこれに対する平成二年九月二〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員の支払をせよ。 二訴訟費用は被告の負担とする。 三仮執行宣言第二事案の概要被告は、平成二年三月一九日零時から最大七二時間のストライキの実施を原告に予告していたが、その予告時刻より半日早い同月一八日の正午からストライキを実施した。本件は、原告が、このストライキの前倒し実施は違法であると主張して、損害賠償を被告に訴求した事案である。 一争いのない事実等 1 当事者原告は、「日本国有鉄道改革法(昭和六一年法律第八七号)」並びに「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(昭和六一年法律第八八号)」に基づき昭和六三年四月一五日設立された、旅客鉄道事業等を営む株式会社であり、日本国有鉄道(以下「旧国鉄」という。)が経営していた旅客鉄道事業のうち、主として東北及び関東地方の営業を引き継いだものである。また、被告は、原告の千葉支社管内における動力車に関係する業務に従事する従業員などで構成される労働組合である。 2 労働関係調整法三七条に基づく通知被告の上部組織である国鉄動力車労働組合総連合は、平成二年一月五日(以下、月日のみで示すものは、平成二年のものをいう。)、労働関係調整法(以下 働組合である。 2 労働関係調整法三七条に基づく通知被告の上部組織である国鉄動力車労働組合総連合は、平成二年一月五日(以下、月日のみで示すものは、平成二年のものをいう。)、労働関係調整法(以下「労調法」という。)三七条に基づいて、労働大臣及び中央労働委員会に対し、概要次のとおりの内容で争議行為に関する通知を行うとともに、その通知書の写しを原告本社勤労課に交付した。 (一) 事件定年延長、日本国有鉄道清算事業団配属者の雇用確保、ダイヤ改正に伴う労働条件確立に関する争議(二) 争議の日時一月一六日零時以降、本件の完全解決に至るまでの期間(三) 争議行為の場所原告が、東京都内、千葉県内、茨城県内等で経営する旅客鉄道輸送事業及び貨物鉄道輸送事業に関する全職場 3 本件ストに関する具体的通知被告は、かねてからの諸懸案要求事項に対する原告の対応が不誠実であるとして、原告から誠意ある対応がない限り、三月一九日からストライキ(以下「本件スト」という。)を実施することを決定し、同月一六日、原告千葉支社長宛に、概要次のとおりの争議行為に関する具体的通知を行った。なお、原被告間には、ストライキに先立ちその具体的内容を通知する旨の労働協約は存在しない。 (一) ストライキの日時三月一九日零時以降四八時間ないし七二時間。ただし、本線乗務員については始発時、地上勤務者については始業時より。 (二) 対象者(1) 津田沼運転区、千葉運転区、館山運転区、勝浦運転区、銚子運転区及び京葉運輸区の全本線乗務員(2) 幕張電車区及び習志野電車区の検修業務の日勤勤務者を対象とする時限ストライキ(3) 指名ストライキ(対象者略)(三) なお、右通知には、「会社及び警察権力からの不当な介入、不当労働行為及びスト破り行為があった場合は、戦術を拡大する。」と 勤務者を対象とする時限ストライキ(3) 指名ストライキ(対象者略)(三) なお、右通知には、「会社及び警察権力からの不当な介入、不当労働行為及びスト破り行為があった場合は、戦術を拡大する。」との記載がある。また、諸懸案要求事項の具体的内容は、概要次のとおりである。 (1) 千葉県地方労働委員会による救済命令の完全履行(2) 強制配転者の元職復帰の道筋明確化(3) 予科採用者の運転士登用(4) ダイヤ改正に関する労働条件改善(5) 研修等を実施する場合の要員配置実施(6) 被告津田沼支部・A支部長の強制配転撤回(7) 転勤を希望しない者の強制配転中止(8) 定年延長に関する労働条件改善 4 被告組合員の入構制限と組合事務所前のフェンス設置等(一) 原告は、被告の主要拠点である千葉運転区において、三月一八日、勤務開始時刻(午前一一時一六分)より二時間三〇分以上早く出勤してきた被告の千葉運転区支部・B副支部長に対し、その時点における入構を認めなかった。また、原告は、同日午前八時五〇分ころ、被告のC副委員長と千葉運転区支部・D書記長の入構要求を拒否した。 (二) 原告は、被告の主要拠点である津田沼運転区において、三月一八日午前一〇時過ぎころ、被告のE書記長、津田沼支部・F書記長の入構要求を拒否した。また、原告は、同日午前一一時前ころ、被告が使用する津田沼運転区内の原告所有事務所(以下「本件事務所」という。)の壁面から約二・八メートル離れた通路上に人の背の高さほどのトタンフェンスを設置する工事をはじめ、工事は一時間ほどで終了した。 (三) また、原告は、本件ストの開始前に、勤務予定の被告組合員で宿泊を伴う者に宿泊施設を提供しない措置をとったり、本件ストの前倒し実施に先立ち、千葉運転区及び津田沼運転区の駅構内にビデオカメラやサーチライトを 、原告は、本件ストの開始前に、勤務予定の被告組合員で宿泊を伴う者に宿泊施設を提供しない措置をとったり、本件ストの前倒し実施に先立ち、千葉運転区及び津田沼運転区の駅構内にビデオカメラやサーチライトを設置したりしたことがあった。 5 本件ストの前倒し実施直前の交渉経過(三月一八日)午前九時五〇分ないし五五分と一〇時三〇分ころにはG交渉部長が電話で、午前一〇時四五分ころにはC副委員長らが原告千葉支社を訪れて、原告に対し、被告組合員を駅構内に立ち入れるよう、本件事務所前のフェンス設置工事を中止するよう申し入れたが、原告側はこれを拒否した。そのような交渉の中、被告側からは、遅くとも午前一一時二〇分ころ、原告が態度を変えないのであれば戦術拡大を行わざるを得ず、同日正午からストライキ前倒しを行うと述べたが、原告側が態度を変えることはなかった。そして、同日午前一一時五五分ころ、被告C副委員長は、戦術を拡大して、正午以降全乗務員を対象としたストライキを実施することを口頭で正式に通告した。また、被告は、午後二時三五分ころ、原告H勤労担当課長にその旨のストライキ通告書を交付した。 6 本件ストの前倒し実施被告は、三月一八日正午以降、傘下の全乗務員を対象とするストライキを実施し、被告組合員のうち、運転中の列車乗務員は、終着駅あるいは乗り継ぎ駅まで運転した後、運転室から離れてストライキに参加し、乗務予定の乗務員は、始発駅あるいは乗り継ぎ駅において乗務に就かずにストライキに参加した。なお、ストライキ突入時に運転中の被告組合員のうち八人は、運転室を離れる際、ブレーキ弁ハンドルの抜き取りや、手ブレーキ緊締、手歯止めなどの転動防止措置を懈怠した。 7 本件ストの前倒し実施による混乱状況本件ストの前倒し実施により、千葉県のほぼ全域及び東京都の東部にわたる広範な地 ハンドルの抜き取りや、手ブレーキ緊締、手歯止めなどの転動防止措置を懈怠した。 7 本件ストの前倒し実施による混乱状況本件ストの前倒し実施により、千葉県のほぼ全域及び東京都の東部にわたる広範な地域で別紙一のような列車運行の乱れが生じた。原告は、右による混乱は本件ストの前倒し実施により惹起されたものであると主張している。 8 原告が本件ストの前倒し実施対応に要した費用原告は、本件ストの前倒し実施の対応として、別表(一)のとおり一〇九九名の人員配置を行い、本件ストの前倒し実施に関して要した費用として、合計二〇三六万二七四七円(人件費九二四万九四一六円〔別表(二)〕、代替輸送費七七四万八四一一円〔別表(三)〕、払戻費三三六万四九二〇円〔別表(四)〕を支払ったが、原告は、その合計額全額が本件ストの前倒し実施と相当因果関係にある損害であると主張している。 (右事実は、当事者間に争いがないか、証拠〔甲八、九、一四、一八、二三、三三、三四ないし四二、四七、四九ないし五一、五七ないし六一、七六ないし一九〇、一九二、一九三、乙一一ないし一三、一六、一七、一九、二四ないし二七、三一、三二、三五、三六、三八、三九、四九ないし五三、六三、証人I、同J、同K、同L、同M、同N、同O、同P、同Q、同R〕及び弁論の全趣旨により認められる事実である〔なお、書証の枝番は省略した。以下同じ。〕。)二争点 1 本件ストの前倒し実施が違法か 2 本件ストの前倒し実施による損害額三争点についての当事者の主張 1 本件ストの前倒し実施が違法か(一) 原告の主張本件ストの前倒し実施の目的は、その経緯から明らかなように、被告組合員の代替乗務員らに対する威圧行為を防止するために原告が行った駅構内への立入り制限やフェンス設置等に対する抗議・報復にあり、原告に対して一方的に損害 実施の目的は、その経緯から明らかなように、被告組合員の代替乗務員らに対する威圧行為を防止するために原告が行った駅構内への立入り制限やフェンス設置等に対する抗議・報復にあり、原告に対して一方的に損害を与えようとするものである。 また、本件ストの前倒し実施の手続に関し、原被告間にその予告義務を定めた労働協約が締結されてはいなかったが、労調法に基づく予告通知は漠然としたものであって、その通知がなされただけでは多数の利用客に生じるであろう甚大な被害を回避することができないから、これまで、被告は労調法に基づく通知とは別に争議の具体的内容を原告に事前に通知し、原告はそれをもとに利用客に周知方を図ってきたという経緯があり、この具体的内容の通知は、ストライキが法律で認められていなかった旧国鉄時代でさえ行われてきたことであって、いわば労使間の信義則に由来する義務であり、被告は、この通知義務に違反して本件ストを前倒し実施した。 しかも、前倒し実施の態様は、単なる労務不提供にとどまらず、その対応を混乱させるべく運転業務途中でストライキに入ることで関係線区全体に影響を生じさせ、ストライキに参加していない他の従業員の業務を積極的に妨害したものであり、また、事故防止のための転動防止措置等を懈怠する等、乗客の安全を著しく脅かすストライキであった。 以上を総合考慮すると、本件ストの前倒し実施は違法である。 (二) 被告の主張本件ストの前倒し実施は、当初のストライキの目的の下で戦術を拡大したものであり、その契機は、原告が被告の正当な争議行為を妨害することに終始し被告との団体交渉に応じなかった点にある。 また、被告は、原告との間にストライキの予告通知に関する協約がないにもかかわらず、三月一六日に具体的なストライキ通告を行い、その際、戦術拡大があり得ることも通 の団体交渉に応じなかった点にある。 また、被告は、原告との間にストライキの予告通知に関する協約がないにもかかわらず、三月一六日に具体的なストライキ通告を行い、その際、戦術拡大があり得ることも通告していたのみならず、本件ストの前倒し実施に至る経緯から明らかなように、その実施も事前に口頭で通告しているのであって、何ら抜き打ちストライキではなく、争議戦術の裁量において著しく社会的妥当性を欠くものでもない。 しかも、ストライキの開始時期は必ず始発からでなければならないわけではなく、また、車両整理が不可能又は困難な場所でストライキに入った列車はないし、転勤防止措置等の懈怠があったとしても、それは争議戦術ではない。なお、本件ストが、結果的にストライキに参加しない他の従業員に対する妨害をもたらすものであっても、それはストライキに通常伴う労務不提供の効果に過ぎない。 そもそも、原告は、被告に対し不当労働行為を反復していたほか、本件ストの前日に組合役員等の駅構内への立入りを拒否したり、本件事務所前にフェンスを設置したり、被告組合員に対しストライキ前日に宿泊施設を提供しない等の不当な支配介入を行っているのであるから、労使間の信義則に由来する事前通告義務などということを主張することのできる立場にはない。 以上のとおり、本件ストの前倒し実施は違法ではない。 2 本件ストの前倒し実施による損害額(一) 原告の主張原告主張の前記損害額は、全額本件ストの前倒し実施と相当因果関係があるというべきであるが、これを敷衍すると、次のとおりである。 (1) 人件費相当損害額について「警護」・「支援」・「添乗」関係費用は、被告組合員が、平成元年一二月五日及び平成二年一月一八日のストライキに際し、ストライキ前日、駅構内へ立ち入り滞留するなどして原告の退去通告に応じなか ついて「警護」・「支援」・「添乗」関係費用は、被告組合員が、平成元年一二月五日及び平成二年一月一八日のストライキに際し、ストライキ前日、駅構内へ立ち入り滞留するなどして原告の退去通告に応じなかったり、ストライキ当日、代替乗務員らに対し罵声を浴びせ、追いかけ、写真撮影を行うなどの威迫行為を数多く行ったため、本件ストにおける同様の反復行為を排除し代替乗務員を守るために必要な支出である。「現認」関係費用は、ストライキ中の非違行為は懲戒処分の対象となることから、その適正な運用をするために必要な支出、「警備」関係費用は、被告を支援する集団が、国鉄清算事業団職員の解雇問題について被告と共に戦い抜く戦線を作り上げると宣言していたことから、その対策のために必要な支出である。 また、千葉運転区と津田沼運転区については、被告の重要拠点であり、被告傘下の多数の組合員が代替乗務員に威迫行為を行うことが予想されたことから、これに備えた相応の人員配置したものである。無人駅などの小さな駅でも、ストライキの前倒し実施により乗客に混乱が生じることは当然であるから、これらの駅に人員の配置を行うことには合理的な根拠がある。 なお、原告が請求している人件費は、本件ストの前倒し実施により所定の勤務時刻より早く出勤し、または、所定勤務における休憩時間をとらず、あるいは所定勤務のない者が急遽出勤を命ぜられたりしてストライキ対策に従事したことに対して支払ったものであって、本件ストの前倒しが行われる以前に超過勤務をしていた者に対する人件費は含まれていない。 (2) 代替輸送費相当損害額についていすみ鉄道・小湊鉄道は、本件ストの対象路線が運転を停止した場合、外房方面から千葉方面に向かう旅客の振替が可能な鉄道である。また、終着・始発駅で接続している両鉄道で代替輸送対象者の人数が異 ついていすみ鉄道・小湊鉄道は、本件ストの対象路線が運転を停止した場合、外房方面から千葉方面に向かう旅客の振替が可能な鉄道である。また、終着・始発駅で接続している両鉄道で代替輸送対象者の人数が異なっている点については、原告が関知するところではなく、原告は、あくまで両鉄道からの請求に基づいて代替輸送費を支払ったにすぎないものである。したがって、原告の代替輸送費相当損害額に過剰見積はない。 (二) 被告の主張(1) 人件費相当損害額について原告のストライキ対策要員としては、乗客対応要員と団体交渉等の組合対応要員だけで充分なはずであり、「現認」・「警護」・「支援」・「添乗」の関係要員は、ストライキに対する不当な支配介入のためのものであるのに、この関係で五〇〇名以上もの要員を配置したのは不当であって、これらに対する人件費の支出が本件ストの前倒し実施によって生じた損害であるといえないことは明らかである。また、「警備」関係要員は、原告が勝手にゲリラを想定して配置したものにすぎず、同様に、これに対する人件費の支出が本件ストの前倒し実施によって生じた損害であるとはいえない。さらに、各配置先における勤務の具体的内容や実際の超過勤務時間の短さからその合理性に疑問があるものや、無人駅に対する配置等その必要性に疑問があるものもある。 そもそも、「乗務」関係要員を除いて、適切な人数についての基準は作りようがないにもかかわらず、原告側の恣意的な要員配置をすべて本件ストの前倒し実施によって生じた損害とすることには根拠がない。また、原告は、三月一八日の朝からストライキ対策をとっていたのが現実であり、かなりの者が同日朝から超勤で動員されていたはずであるから、本件ストの前倒し実施のために超勤手当を払ったわけではないはずであるにもかかわらず、これを損害であるとし キ対策をとっていたのが現実であり、かなりの者が同日朝から超勤で動員されていたはずであるから、本件ストの前倒し実施のために超勤手当を払ったわけではないはずであるにもかかわらず、これを損害であるとして被告にその支払を求めるのは不当である。 以上のとおり、原告が人件費相当損害額を過剰に見積もっていることは明らかである。 (2) 代替輸送費相当損害額についていすみ鉄道・小湊鉄道の振替輸送は本件ストの対象路線とは関係のないものである。仮に関係があるとしても、大原駅から五井駅の間を両鉄道を乗り継いで行くとした場合、いすみ鉄道に関する大原駅から上総中野駅までの代替輸送対象者が九一名、小湊鉄道に関する上総中野駅から五井駅までの代替輸送対象者が八二名と人数に相違があることには合理的な根拠がない。また、原告が主張する代替輸送費の中には、代替輸送を企画して車両の手配を予約しただけで実際には代替輸送すべき旅客がいなかったため実車配備の輸送を実施せずに待機料を支払ったにすぎない部分が含まれているが、これは原告の代替輸送計画における旅客動向把握の見込み違いによって生じたものである。さらに、各駅で利用客に混乱が生じたのは、原告のストライキ対策の拙劣さによるものであって、その解消のために要した人員に関する費用を損害として被告にその支払を求めるのは不当である。 したがって、原告が代替輸送費相当損害額を過剰に見積もっていることは明らかである。 第三当裁判所の判断一本件ストの前倒し実施の違法性について原告は、本件ストの前倒し実施が原被告間の信義則上に由来する通告義務に違反し、原告に対し一方的に損害を与えようとする目的と方法で行われたものであると主張するので、この点について判断する。 1 本件ストの前倒し実施の目的について本件ストの前倒し実施直前、被告が原告 違反し、原告に対し一方的に損害を与えようとする目的と方法で行われたものであると主張するので、この点について判断する。 1 本件ストの前倒し実施の目的について本件ストの前倒し実施直前、被告が原告に対して要求していたのは、もっぱら三月一八日午前中に原告が行った駅構内への立入り拒否を撤回すること及びフェンス設置工事を中止することであり、被告としてはこの要求が受け入れられない限り本件ストを前倒しせざるを得ないと言明したことは、前示のとおりである。そうすると、被告が本件ストを前倒し実施した意図の中には、駅構内への立入り拒否及びフェンス設置に対する抗議といった要素が含まれていたことは、少なくとも明らかである。また、前示のとおり、本件事務所は原告所有の建物であるところ、証拠(甲三二、七三ないし七五、乙一一、証人I、同L、同M、同O)によれば、(一)被告は、旧国鉄時代に本件事務所の使用承認を受けていたが、使用承認期限である昭和六二年三月三一日経過後も引き続き使用していたこと、(二) 原被告間において、本件事務所につき賃貸借契約や使用貸借契約等は締結されていないし、本件事務所の使用に関する便宜供与を内容とする労働協約も締結されていないこと、(三) 原告は、被告に対し、昭和六二年一月二一日、右承認期限をもって本件事務所を明渡すよう予告したが、同年一〇月一日以降本件ストに至るまでの間、本件事務所を明け渡すよう再三求めていたことが認められる。 ところで、いわゆる抗議ストライキであっても、それが広い意味での労働条件の向上ないし経済的地位の向上に関係している限り、直ちにその目的が違法であるということはできない。しかしながら、原告には使用者としての施設管理権があり、労働組合又はその組合員が、使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利用して組合 直ちにその目的が違法であるということはできない。しかしながら、原告には使用者としての施設管理権があり、労働組合又はその組合員が、使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利用して組合活動ないし争議行為を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められる特段の事情がある場合を除いては、当該施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動ないし争議行為に当たらないというべきである(最高裁昭和四九年(オ)第一一八八号同五四年一〇月三〇日第三小法廷判決・民集三三巻六号六四七頁の趣旨は、本件のような争議行為ないしその準備行為の場合についても妥当するというべきである。)。 そこで、右特段の事情について検討するに、証拠(甲二五ないし二八、六二ないし六六、乙一九、証人I、同L)によれば、被告組合員は、平成元年一二月五日及び平成二年一月一八日のストライキにおいて、ストライキ前日、駅構内に立ち入り滞留するなどして原告の退去通告に応じなかったり、ストライキ当日、代替乗務員らに対し、罵声を浴びせ、追いかけ、写真撮影をしたとの事実が認められるから、原告が、被告組合員で勤務に関係のない者(勤務時間よりも大幅に早く出勤してきた者を含む。)を駅構内に立ち入らせないのは、職場環境を適正良好に保持し規律ある業務の運営体制を確保し得るように当該施設を管理利用する目的に出たものということができ、また、本件事務所にフェンスを設置したのは、ストライキ開始後の代替乗務員の安全確保を図り、使用者としての操業の自由を維持する目的に出たものであるということができ、合理性がないとはいえない。 ところで、被告は、(1) 被告組合員は、本件スト初日の勤務内容が確定的に示されるのは前日の勤務 使用者としての操業の自由を維持する目的に出たものであるということができ、合理性がないとはいえない。 ところで、被告は、(1) 被告組合員は、本件スト初日の勤務内容が確定的に示されるのは前日の勤務終了時であるから、駅構内や本件事務所においてその時点でストライキの突入の方法が組合役員から具体的に指示される必要がある、(2)ストライキが終了あるいは中止となった場合に円滑に運転を再開するためにどの列車にどの乗務員が乗車すべきかなどについて、被告組合役員と現場の当局との綿密な打ち合わせが必要であり、そのための労使慣行として被告が原告の施設を利用してきたと主張し、これに沿う供述ないし陳述記載がある(乙五〇ないし五三、六三、証人O、同Q、同P、同R)。しかし、(1)については、所論のような被告の必要性をもって原告の施設管理権が制約されるべき筋合いのものとすることはできない。また、(2)については、円滑に運転を再開するためにどのような方策を採るかは、労務受領権を有する原告が第一義的に判断すべき事柄であって、駅構内における被告組合員と現場の当局との綿密な打ち合わせは必要ないと原告が判断して被告役員らの入構を拒否したと窺うことのできる本件においては、被告所論のような慣行の存在をもって原告の施設利用権が制約される根拠とすることもできない。その他、本件において、三月一九日から実施予の本件ストに関し、被告組合員が前日の午前八時三〇分ないし一〇時ころの段階で駅構内に立ち入ったり、本件事務所を使用することを原告が受忍すべきであるとする事情を窺うことはできない。 以上のとおり、被告ないし被告組合員に対し駅構内ないし本件事務所の利用を拒否することが、各施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められる特段の事情があるとはいえないから、原告による駅構内への立入り拒 とおり、被告ないし被告組合員に対し駅構内ないし本件事務所の利用を拒否することが、各施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められる特段の事情があるとはいえないから、原告による駅構内への立入り拒否及びフェンス設置等が不当労働行為に該当するということはできない。したがって、被告による本件ストの前倒し実施の目的のうち、右に対する抗議については、正当なものということはできない。 2 本件ストの前倒し実施の方法について原告は、本件ストの前倒し実施の際、被告組合員らが転動防止措置を懈怠したことをもって本件ストの前倒し実施を違法とするべき事情であると主張する。しかしながら、証拠(甲六〇、六一、乙一一、一六、一七、六〇、六一)によれば、被告の組合員数は少なくとも本件スト当時七〇〇名以上であったにもかかわらず、違反者は八名にすぎないことが認められるから、被告の組合員全員が本件ストに参加したものではないことを考慮してもなお、その違反が乗務員各人の運転取扱心得(乙一六)あるいは動力車乗務員執務標準(乙一七)違反となることは格別、争議行為として行われたものということには疑問の残るところであり、したがって、この点に関する原告の主張は失当である。 また、原告は、本件ストの前倒し実施はストライキに参加していない他の従業員の業務を積極的に妨害する結果を生じており、これが本件ストの前倒し実施を違法とするべき事情であると主張するが、本件においては、ストライキの前倒し実施によって、ストライキ行為そのものに通常伴う程度を超えた特段の結果が生じたことを窺わせる的確な資料はないから、原告の右主張も失当である。 ところで、(一) 原被告間にはストライキに先立ちその具体的内容を被告から原告に通知する旨の手続を定めた労働協約は存在しないが、被告は、原告千葉支社に対して事前 いから、原告の右主張も失当である。 ところで、(一) 原被告間にはストライキに先立ちその具体的内容を被告から原告に通知する旨の手続を定めた労働協約は存在しないが、被告は、原告千葉支社に対して事前に争議行為の具体的通知を行い、右通知には、「会社及び警察権力からの不当な介入、不当労働行為及びスト破り行為があった場合は、戦術を拡大する。」との記載があったこと、(二) また、被告が、原告に対し、本件ストの前倒し実施直前の交渉過程においてストライキを前倒し実施する可能性があると伝えていたことは、前示のとおりである。そして、証拠(甲六、三一)によれば、(三) 旧国鉄時代、被告が、昭和六〇年一一月二九日実施予定のストライキに際し、戦術拡大としてストライキの一二時間前倒しを実施した前例があること、(四) 原告は、国鉄労働組合東日本本部との間の労働協約において、始発以降途中でストライキに入る場合についての規定を設けていること(七二条二項)が認められる。これら(一)ないし(四)の事実によれば、原告は、本件ストに関しても、前日からの前倒し実施も全くあり得ないではないと予測する余地があったということができる。また、本件ストの前倒し実施の態様は、前示のとおり、三月一八日正午の時点で被告組合員割当ての運転区間の運転業務があればそれが終わってからストライキに入るというものであり、正午に一斉にストライキに入るのと比較すれば、やや穏便な態様であったということができる。 しかし、他方で、(1) 原告が営む事業は、東北と関東地方における大規模な旅客鉄道事業等であること、(2) 本件ストの規模は、千葉県のほぼ全域及び東京都の東部にわたる広範なものであったこと、(3) 本件ストの前倒し実施により、別紙一のような列車運行の乱れが生じ、その結果利用客に与えた混乱は甚大なもの 本件ストの規模は、千葉県のほぼ全域及び東京都の東部にわたる広範なものであったこと、(3) 本件ストの前倒し実施により、別紙一のような列車運行の乱れが生じ、その結果利用客に与えた混乱は甚大なものであったこと、(4) 本件ストに参加した被告組合員は、その大半が動力車に関係する業務(主として運転業務及び検修業務)に従事していたこと、(5)本件ストの態様は、もともと丸二日以上列車の運転業務・検修業務等を行わないというものであったところ、これが一二時間前倒しで実施されたものであること、以上の事実は前示のとおりである。そして、証拠(甲一〇、一一、一四、三一、六七、乙一一、証人M、同O)によれば、(6) 従前、被告がストライキを実施する場合には、原告との間に争議行為の予告に関する労働協約は締結していないが、原告に対し二八時間以上前にその内容と実施時期について具体的に通告をしてきたことが認められる。 以上(1)ないし(6)の事実に照らせば、原被告間のように、従前から労使間にある程度ストライキの予告に関する信頼関係が築かれている状態で、本件ストのように大規模かつ利用者に与える打撃の大きなストライキを前倒しで実施するに際しては、その事業の高度の公共性及び非代替性、業務内容の技術性・専門性及び非代替性に照らし、信義則上、争議行為を行う側に、充分な猶予期間をおいた事前通告義務が課されていると解すべきである。この点、被告は、「原告の行ってきた不当労働行為」の内容に照らせば、原告は労使間の信義則に由来する事前通告義務を主張できる立場にはないと主張するが、右認定判断を動かすものではない。 そして、本件ストの前倒し実施については、前示のとおり、予告通知が正式に口頭でなされたのはストライキ突入の五分前のことであり、本件ストの規模内容に照らすと、その程度の時間で を動かすものではない。 そして、本件ストの前倒し実施については、前示のとおり、予告通知が正式に口頭でなされたのはストライキ突入の五分前のことであり、本件ストの規模内容に照らすと、その程度の時間で充分な代替乗務員を確保し列車運行の遅延を回避することができるとは到底考えられず、結局、原被告間において信義則上要求される充分な猶予期間をおいた争議行為の事前通告があったということはできない。 なお、証拠(甲四九、七六、乙一九、三一、四九ないし五一、証人J、同L、同Q、同P)によれば、三月一八日の原被告の交渉過程で、被告役員が本件ストの前倒し実施について言及したことが窺えるが、それがされたのは本件ストの前倒し実施の一ないし三時間くらい前にすぎないのであって、このことが右認定判断の妨げとなるものではない。また、被告は、三月一七日以前に本件スト前倒し実施の可能性を示唆していたとも主張し、これに沿う供述ないし陳述記載があるが(乙四九、五〇、五二、六三、証人O、同R)、その一方、本件ストの前倒し実施を被告が決定した主要因が、三月一八日の原告による駅構内への立入り拒否及びフェンス設置行為等は不当労働行為であると被告が考えた点にあることは被告の自陳するところであるから、逆に、三月一七日以前には本件ストの前倒し実施が確定的なものとはなっていなかったということができ、そのような段階で本件スト前倒し実施の可能性の示唆があったとする右供述ないし記載には、信を措くことができない。 3 小括以上の目的及び方法を総合考慮すると、本件ストの前倒し実施には違法性があるということができる。 二本件ストの前倒し実施による損害額について 1 人件費相当損害額について争いのない事実等に証拠(甲七七ないし一八五、一八八ないし一九〇、証人N)を併せると、原告は、本件ストの前倒し ができる。 二本件ストの前倒し実施による損害額について 1 人件費相当損害額について争いのない事実等に証拠(甲七七ないし一八五、一八八ないし一九〇、証人N)を併せると、原告は、本件ストの前倒し実施に対する対策要員経費として、少なくとも合計九二四万九四一六円を支払ったことが認められる。 ところで、被告は、この支出が過大なものであると主張しているので、この点について検討すると、まず、証拠(甲二五ないし二八、六二ないし六六、乙一九、証人I、同L)によれば、一月一八日以前に被告が実施したストライキにおいて、被告が「代替乗務員への説得」と主張するものの実態は、暴力的な内容の罵声やヤジ、脅迫等であり、しかも、被告組合員が代替乗務員を追いかけ、写真撮影をするというものであったことが認められる。これらの行為は、平和的説得と団結の示威の域を超えた使用者の操業活動の自由に対する不当な阻止行動というべきである。 また、被告が本件ストの前倒し実施を決定した主要因が「原告の不当労働行為」への反発にあったことは前示のとおりであるから、本件ストの前倒し実施の際、被告組合員らの行動がより先鋭化する可能性があったものということができる。そうすると、これに対し、使用者である原告が必要な対抗措置を採ることは、ストライキ対策の一環として許容されるものであって、本件ストの前倒し実施に対抗するため、「現認」・「警護」・「支援」・「添乗」を業務内容とする対策要員を配置したことそれ自体については合理性があるということができる。 次に、証拠(甲二四、三一、証人I、同L)によれば、被告を支援する集団が、過去に被告のストライキに呼応してゲリラ事件を起こしたことがあるだけでなく、本件ストに際しても、その直前に国鉄清算事業団職員の解雇に対し、被告と共に戦い抜く戦線を作り上げると宣言してい する集団が、過去に被告のストライキに呼応してゲリラ事件を起こしたことがあるだけでなく、本件ストに際しても、その直前に国鉄清算事業団職員の解雇に対し、被告と共に戦い抜く戦線を作り上げると宣言しているとの事実が認められる。右のようなゲリラ事件は、一度勃発すれば、取り返しのつかない甚大な人的・物的被害をもたらすおそれがあることが明らかであるから、「警備」を業務内容とする対策要員を配置すること自体にも、合理性があるということができる。 そして、原告が、本件ストの前倒し実施に対する対策要員として、千葉運転区には現認三九名・警護一一名・警備六名・添乗三一名を、津田沼運転区には現認五一名・警護二四名・警備一〇名を配置したこと、千葉運転区と津田沼運転区が被告の主要拠点であることは前示のとおりであるが、右人員配置についての前示経緯と証拠(甲六七、乙一九、証人I、同J、同L)によって認められる本件ストの前倒し実施の際の被告組合員らの言動に照らすと、原告の配置した要員数が合理性を欠き、要員配置の裁量権を逸脱したものであるということはできない。 なお、被告は、各配置先における勤務の具体的内容や実際の超過勤務時間の短さ等からその配置の必要性について疑問があるとも主張するが、これを窺わせるような資料のない本件においては、右主張を採用することはできない。また、被告は、無人駅へのストライキ対策要員の配置等についても疑問があるとするが、ストライキの前倒し実施がされた場合、普段は利用客が少なく混乱のない駅であっても混乱が生じる可能性があるということができるから、これらの駅にストライキ対策要員を配置することには合理的な根拠があるというべきであって、この点に関する被告の主張も失当である。 結局、人件費については、原告主張額の全額が本件ストの前倒し実施と相当因果関係のあ トライキ対策要員を配置することには合理的な根拠があるというべきであって、この点に関する被告の主張も失当である。 結局、人件費については、原告主張額の全額が本件ストの前倒し実施と相当因果関係のある損害であるということができる。 2 代替輸送費相当損害額について争いのない事実等に証拠(甲一八六、一九二、証人N)を併せると、原告は、実際に代替輸送業務を担当した各会社からの請求書等に基づいて合計七七四万八四一一円を支払ったことが認められる。 ところで、被告は、この支出が過大なものであると主張しているので、この点を検討すると、まず、本件ストの前倒し実施によって外房線・内房線に別紙一のような列車運行の乱れが生じたことは前示のとおりであるが、その場合、外房方面から千葉方面へ向かうには、いすみ鉄道と小湊鉄道を乗り継ぐことが鉄道による唯一の交通手段であることは当裁判所に顕著であるから、いすみ鉄道と小湊鉄道は本件ストの前倒し実施時の代替輸送に関係がないとする被告の主張は採用することができない。次に、証拠(甲一八六)によれば、いすみ鉄道の大原駅から上総中野駅までの代替輸送対象者が八七名(他に大原駅から大多喜駅までの代替輸送対象者が四名)、小湊鉄道の上総中野駅から五井駅までの代替輸送対象者が八二名と人数に相違があることが認められる。しかし、右のように実際に大多喜駅で途中下車した代替輸送対象者がいることから窺われるように、代替輸送対象者のすべてがいすみ鉄道と小湊鉄道の双方を利用するとは限らないことは明らかであって、両鉄道の代替輸送対象者数に違いがあるからといって、直ちに原告が代替輸送費を過剰に見積もっているということはできず、したがって、この点に関する被告の主張も採用することができない。 なお、被告は、原告主張の代替輸送費の中には、代替輸送に使用され て、直ちに原告が代替輸送費を過剰に見積もっているということはできず、したがって、この点に関する被告の主張も採用することができない。 なお、被告は、原告主張の代替輸送費の中には、代替輸送に使用されなかったものが含まれているが、その待機料相当損害額は本件ストと因果関係がないと主張する。そこで、この点について検討するに、証拠(甲一八六)によれば、(一) 京成電鉄株式会社が千葉駅に手配したバス一台及びジェイアールバス関東株式会社が成田駅に手配したバス一台が、それぞれ実際には代替輸送に使用されておらず、原告は当該バスについて待機料を支払ったこと、(二) ジェイアールバス関東株式会社が千葉から上総一ノ宮駅ないし安房鴨川駅までの代替輸送に手配したバス七台のうち、三台は実際に代替輸送に使用されたかどうかは不明であるが、これらも貸切扱いとなっており、原告は他の四台と同額の使用料を支払ったとの事実が認められる。しかし、ストライキが前倒し実施された場合に、何人の乗客の代替輸送が必要となるのかについては一般に予測困難な上、本件ストが前倒し実施された三月一八日は日曜日であるから平日に比してなお予測が困難であること、バス一台あたりの乗車可能人数は乗客の詰め具合によって異なること、突然のストライキの前倒し実施で乗客が混乱している中で、代替バスに不足が生じたとすれば、乗客の不満に拍車をかける可能性があることが明らかであることに照らすと、右のような程度のバスが結果的に代替輸送に使用されなかったとしても、その手配に関する費用相当額を損害に算入することが不相当であるということはできない。 結局、代替輸送費についても、原告主張額の全額が本件ストの前倒し実施と相当因果関係のある損害であるというべきである。 3 払戻費相当損害額について証拠(甲一八七、証人N)によれば、 できない。 結局、代替輸送費についても、原告主張額の全額が本件ストの前倒し実施と相当因果関係のある損害であるというべきである。 3 払戻費相当損害額について証拠(甲一八七、証人N)によれば、原告は、合計三三六万四九二〇円を支払ったことが認められるところ、その全額が本件ストの前倒し実施と相当因果関係のある損害であるということができる。 4 小括以上のとおり、本件ストの前倒し実施により原告が被った損害は、原告主張のとおり、合計二〇三六万二七四七円(人件費九二四万九四一六円、代替輸送費七七四万八四一一円、払戻費三三六万四九二〇円)であったということができる。 5 過失相殺争いのない事実等、証拠(甲四九、乙三一、三五、四九、五〇、五一、五三、六三、証人Q、同P、同R)及び弁論の全趣旨によると、(一) 被告による本件ストの前倒し実施は、三月一八日に、原告が、被告からの被告組合員ないし組合役員の入構要求及び本件事務所前のフェンス設置工事の中止要求を頑なに拒否したことに端を発していること、(二) この原告の行動は、被告のストライキに際し原告が従前行ってきた対応ないし慣行と異なるものであったが、原告は、本件スト前倒し実施の直前に、原告側の責任ある立場の者と被告との交渉の機会を設けなかったため、被告がこれらを組合攻撃のための不当労働行為であるととらえたことが主要因であったこと、以上の事実を認めることができ、これらが本件ストの前倒し実施という違法行為を招来させた一因であるということができる。そして、このことは、原告による駅構内への立入り拒否やフェンス設置等が使用者の施設管理権の行使として是認され得るとしても、前示損害の発生に寄与した過失として損害額算定に当たり斟酌されるべきである。また、前示のとおり、原告は、本件ストの前倒し実施を想定できる可 置等が使用者の施設管理権の行使として是認され得るとしても、前示損害の発生に寄与した過失として損害額算定に当たり斟酌されるべきである。また、前示のとおり、原告は、本件ストの前倒し実施を想定できる可能性があったということができるから、緊急時の対策いかんによっては4の損害を更に押さえることができた可能性もあったということができる。当裁判所は、これらの点において、本件ストの前倒し実施により生じた右損害については、相応の過失相殺をするのが適当であり、その割合は三割(六一〇万八八二四円の減額)とするべきであると判断するが、これを控除した残額は、一四二五万三九二三円となる。 三結論以上によれば、原告の本訴請求は右損害元金とこれに対する原告訴求の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余を失当として棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法六一条、六四条、仮執行とその免脱の宣言について同法二五九条に従い、主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第三部裁判長裁判官園部秀穗裁判官吉川昌寛裁判官小宮山茂樹は、転補のため、署名押印することができない。 裁判長裁判官園部秀穗

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