令和7年11月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和7年(ネ)第88号損害賠償等請求控訴事件(原審・岡山地方裁判所令和4年(ワ)第692号)口頭弁論終結日令和7年9月24日判決(省略) 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は、控訴人に対し、33万円及びこれに対する令和元年8月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを80分し、その79を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。 5 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 事案の概要(略称は、原判決の例による。) 1 請求の要旨本件は、控訴人が、東警察署所属の警察官の種々の職務行為やA校長の種々の職務行為がいずれも国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものであるとして、被控訴人に対し、同項に基づき、損害賠償金2444万1996円及びこれに対する令和元年8月28日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 原審の判断原審は、東警察署所属の警察官の職務行為やA校長の職務行為はいずれも国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとして、控訴人の請求をいずれ も棄却した。 3 控訴の提起控訴人は、これを不服として、次のとおりの裁判を求めて控訴した。 (1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は、控訴人に対し、2444万1996円及びこれに対する令和元年8月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 前提事実次のとお (1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は、控訴人に対し、2444万1996円及びこれに対する令和元年8月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 前提事実次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第2の2(原判決2頁3行目~7頁3行目、別紙を含む。)に記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決3頁24行目の「原告の人定事項を特定し」を「釣銭を持ち去った人物として控訴人が浮上したことから」と改める。 2 原判決4頁11行目から13行目にかけての「令和元年8月22日の取調べ状況報告書及び供述調書には、原告の署名指印があり、同月27日から同年10月10日までの取調べ状況報告書には原告の署名押印があり」を「令和元年8月22日の取調べ状況報告書及び供述調書並びに同月27日の取調べ状況報告書には控訴人の署名指印があり、同年9月11日から同年10月10日までの取調べ状況報告書には控訴人の署名押印があり」と改める。 3 原判決5頁3行目の「東警察署」を「東警察署所属の司法警察員」と、4行目の「岡山区検察庁」を「岡山区検察庁検察官」と、5行目の「同庁」を「同検察官」とそれぞれ改める。 4 原判決5頁13行目から14行目にかけての「連絡を取ってはならないことを」を「接触を一切しないよう」と改める。 第3 争点原判決7頁19行目の「身体検査」を「所持品検査」と改めるほかは、原判決「事実及び理由」第3の1~3(原判決7頁5行目~25行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 第4 争点に関する当事者の主張原判決11頁6行目の「身体検査」を「所持品検査」と改めるほかは、原判決「事実及び理由」第4の1~12(原判決8頁1行目~16頁3行目、別紙を含む。)に記載のとおりであるから、こ る当事者の主張原判決11頁6行目の「身体検査」を「所持品検査」と改めるほかは、原判決「事実及び理由」第4の1~12(原判決8頁1行目~16頁3行目、別紙を含む。)に記載のとおりであるから、これを引用する。なお、当審における当事者の主張は、後記第5において必要な限度で適宜摘示する。 第5 当裁判所の判断当裁判所は、原審と同様、A校長の職務行為は国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないから、これに関する控訴人の請求は棄却するのが相当であると判断する一方、原審とは異なり、東警察署所属の警察官の職務行為は同項の適用上違法の評価を受ける点があるから、これに関する控訴人の請求は損害賠償金33万円及びこれに対する令和元年8月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容するのが相当であると判断する。 その理由は次のとおりである。 1 本件被疑事件の捜査に係る警察官の違法行為の有無(争点1~6)について(1) 本件被疑事件について次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第5の1(1)(原判決16頁7行目~18頁12行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ア原判決16頁18行目から20行目にかけての「他人の財物又は他人の物であるとの認識があったというべきであり、窃盗又は占有離脱物横領の故意が認められる」を「他人の財物又は他人の物であるとの認識があったと強く推認される」と、25行目の「呼び止めたり、探したりする」を「呼び止める」とそれぞれ改める。 イ原判決17頁24行目から25行目にかけての「認識に至る余地は全くない」を「認識に至るとは考え難い」と、同行目から26行目にかけての「刑事責任を免れんがための虚偽の弁解と言わざるを得ない」を「客観的状況に沿わないものであった 行目にかけての「認識に至る余地は全くない」を「認識に至るとは考え難い」と、同行目から26行目にかけての「刑事責任を免れんがための虚偽の弁解と言わざるを得ない」を「客観的状況に沿わないものであった」と、18頁4行目から6行目にかけての「当該紙幣を店員等に届け出ることができなかったとはおよそ認め難く、実際、店員を呼び止めたり、探したりする行 動も認められない」を「当該紙幣を店員等に届け出ることができない状況にあったわけでもないにもかかわらず、店員を呼び止めるなどの行動も認められない」と、8行目の「明らかに不合理な弁解と言わざるを得ない」を「客観的状況に沿わないものであった」とそれぞれ改める。 ウ原判決18頁11行目の「不合理な弁解」を「客観的状況に沿わない供述」と改める。 (2) 争点1-1(控訴人の尊厳を著しく害する言動等を用いて取調べをした違法の有無)についてア判断枠組み任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは、事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において許容されると解すべきである(最高裁昭和59年2月29日第二小法廷決定・刑集38巻3号479頁)。したがって、任意捜査の一環として行われた本件取調べは、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を逸脱した場合に限り、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるというべきである。 イ検討(ア) 原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-1】の点について原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-1】の「当裁判所の判断」欄(原判決37頁)の記載を次のとおり改める。 「警察官は、取調べにおいて、控訴人に対し、被害者が被害届を提出して「犯人」を処罰してほしいとの意向を示してい 表」の番号【3-1】の「当裁判所の判断」欄(原判決37頁)の記載を次のとおり改める。 「警察官は、取調べにおいて、控訴人に対し、被害者が被害届を提出して「犯人」を処罰してほしいとの意向を示していると述べただけで、控訴人を「犯人」と称したわけではない。したがって、警察官がこのような発言をして取調べを行ったことは、社会通念上相当と認められる態様及び限度を逸脱したとは認められない。 これに対し、控訴人は、警察官が控訴人を「犯人」と称したことを前提に、警察官がこのような発言をして取調べを行ったことは、社会通念上相当と認められる態 様を逸脱していると主張する。しかし、警察官は上記のとおり控訴人を「犯人」と称していない。したがって、控訴人の主張は、前提を誤るものであり採用することができない。」(イ) 原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-4】の点についてa 原判決の引用後記bのとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-4】の「当裁判所の判断」欄(原判決38頁)の記載のとおりであるから、これを引用する。 b 当審における控訴人の主張に対する判断控訴人は、警察官が、控訴人の供述が防犯カメラの映像と整合しないことを指摘したいのであれば、その旨をそのまま指摘すれば足り、「とぼけている」と控訴人を見下したような発言をする必要はないことに鑑みると、警察官がこのような発言をして取調べを行ったことは、社会通念上相当と認められる態様を逸脱していると主張する。 確かに、警察官が、当該供述の不合理性を指摘して追及するに当たっては、当該供述が客観的状況と整合しないと指摘すれば足りる。しかし、「とぼけているとしか思えない」という警察官の発言が、控訴人の人格を否定するものではなく、控訴人が 合理性を指摘して追及するに当たっては、当該供述が客観的状況と整合しないと指摘すれば足りる。しかし、「とぼけているとしか思えない」という警察官の発言が、控訴人の人格を否定するものではなく、控訴人が当該供述をしている理由を推測して述べたものにすぎないことに鑑みると、警察官がこのような発言をして取調べを行ったことは、社会通念上相当と認められる態様を逸脱したとは認められない。 したがって、控訴人の主張は採用することができない。 (ウ) 原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-5】の点について原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-5】の「当裁判所の判断」欄(原判決39頁)の記載を次のとおり改める。 「警察官は、取調べにおいて、控訴人に対し、控訴人がセルフレジの現金返却口から手に取った紙幣を店員等に届け出なかったのは緊急性がないと考えたからであ ると供述したことについて、「人間としておかしい」と述べている。確かに、控訴人の上記供述は、防犯カメラの映像から認められる客観的状況に沿わない不合理なものである。しかし、警察官は、当該供述の不合理性を指摘して追及するに当たっては、当該供述が客観的状況と整合しないとか、そうであるから当該供述を信用することはできないなどと指摘すれば足りるのであって、糾問的に追及することが全く許容されないわけではないものの、「人間としておかしい」と控訴人の人格を否定する発言をする必要は全くなく、許容されるものではおよそない。したがって、警察官がこのような発言をして取調べを行ったことは、社会通念上相当と認められる態様を逸脱したと認められる。 これに対し、被控訴人は、警察官は、控訴人が不合理な供述をしていることなどについて、人の態度として通常あるべきものと異なるから信用に値しないという意味で「人間としておかしい」と したと認められる。 これに対し、被控訴人は、警察官は、控訴人が不合理な供述をしていることなどについて、人の態度として通常あるべきものと異なるから信用に値しないという意味で「人間としておかしい」と述べたにすぎず、控訴人を侮辱するなどしたわけではないから、警察官がこのような発言をして取調べを行ったとしても、社会通念上相当と認められる態様及び限度を逸脱していないと主張する。しかし、控訴人の供述が不合理で信用することができないのであれば、端的にそう述べればよいのであって、控訴人の人格を否定する発言をする必要はなく、警察官が被控訴人が主張するような意味でこのような発言をしたとしても、そのことは、当該取調べが社会通念上相当と認められる態様を逸脱したと認められることを左右するものではない。 したがって、被控訴人の主張は、採用することができない。」(エ) 原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-6、3-8、3-9、6-3】の点について原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-6、3-8、3-9、6-3】の各「当裁判所の判断」欄(原判決40~42、44頁)の記載を次のとおり改める。 「警察官の発言の中には、「もう犯人として取りあえず取調べをしょんで。やってることは間違いないでしょ。」(番号【3-6】)、「犯人の言ったことを全部、あっ、そうですね、そうですね、そうでございますねって、そんなん警察じゃねえ ですし、刑事じゃないんで」(番号【3-8】)、「俺らは…犯人として扱ってしょうるから。」(番号【3-9】)、「冤罪とか犯人扱いとかって言うんですけれども、犯人なんですよ、はっきり言って」(番号【6-3】)など、警察官が、取調べにおいて、控訴人が本件被疑事件の犯人であるという趣旨で「犯人」という言葉を使っていると見られるものがある。もっとも、控 ども、犯人なんですよ、はっきり言って」(番号【6-3】)など、警察官が、取調べにおいて、控訴人が本件被疑事件の犯人であるという趣旨で「犯人」という言葉を使っていると見られるものがある。もっとも、控訴人が被疑者として捜査の対象とされていたことに鑑みると、上記のものを含む警察官の発言が、控訴人が置かれていた立場を踏まえたものといえないわけではないことや、捜査の進展状況から見て控訴人に対する容疑が強まっていたことなども総合すると、本件被疑事件が比較的軽微な事案であったことを踏まえても、警察官がこのような発言をして取調べを行ったことは、社会通念上相当と認められる態様及び限度を逸脱したとは認められない。 これに反する控訴人の主張は採用することができない。」(オ) 原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-11】の点について原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-11】の「当裁判所の判断」欄(原判決42頁)の記載を次のとおり改める。 「警察官は、取調べにおいて、控訴人に対し、控訴人の供述を「文章にしたらむちゃくちゃなことになっとる…痴呆症かっていうぐらい」と述べている。確かに、控訴人の令和元年8月22日の取調べにおける供述は、防犯カメラの映像から認められる客観的状況に沿わない不合理なものである。しかし、警察官は、当該供述の不合理性を指摘して追及したり、真実を述べるよう説得したりするに当たっては、当該供述が客観的状況と整合しないとか、そうであるから当該供述を信用することはできないと指摘するなどすれば足りるのであって、糾問的に追及することが全く許容されないわけではないものの、「痴呆症かっていうぐらい」と控訴人の人格を否定する発言をする必要は全くなく、許容されるものではおよそない。警察官がこのような発言をして取調べを行ったことは、社会通念上相当と ないわけではないものの、「痴呆症かっていうぐらい」と控訴人の人格を否定する発言をする必要は全くなく、許容されるものではおよそない。警察官がこのような発言をして取調べを行ったことは、社会通念上相当と認められる態様を逸脱したと認められる。 これに対し、被控訴人は、警察官は、控訴人の供述が極めて不合理であることを例える意味で「痴呆症」という言葉を用いただけで、控訴人を「痴呆症」と称したわけではないから、警察官がこのような発言をして取調べを行ったとしても、社会通念上相当と認められる態様及び限度を逸脱していないと主張する。しかし、控訴人の供述が極めて不合理で信用することができないのであれば、端的にそう述べればよいだけのことである。「痴呆」という用語は、社会的にも侮辱的な意味合いのある表現とされている(甲84)上、これが用いられた文脈に照らせば、これを聞いた控訴人は、知的精神的能力が極めて低いと侮辱されたと通常受け止めるし、警察官にとっても、そのように受け止められることは容易に想像できることであるから、警察官がこのような発言をしたことは適切さを著しく欠くものであったというべきである。そうすると、警察官が被控訴人が主張するような意味でこのような発言をしたとしても、そのことは、当該取調べが社会通念上相当と認められる態様を逸脱したと認められることを左右するものではない。したがって、被控訴人の主張は採用することができない。」ウ小括以上によれば、東警察署所属の警察官による控訴人に対する取調べは、原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-5、3-11】の点で、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものである。 (3) 争点1-2(控訴人を困惑させる言動、偽計等により、控訴人に供述・自白を強いる取調べをした違法の有無)について原判決別 1】の点で、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものである。 (3) 争点1-2(控訴人を困惑させる言動、偽計等により、控訴人に供述・自白を強いる取調べをした違法の有無)について原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-2、3-3、3-7、3-10、6-2、6-4~6-6、12-2、15】の態様の取調べが、社会通念上相当と認められる態様及び限度を逸脱したとは認められず、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないことは、原判決「事実及び理由」第5の1(3)ア~ウ(原判決19頁23行目~20頁17行目、別紙を含む。)に記載のとおりであるから、これを引用する。 当審における控訴人の主張は、上記判断を左右するものではない。 (4) 争点1-3(刑事訴訟法198条4項に違反して、供述調書の増減変更の申立てに応じなかった違法の有無)についてア原判決の引用後記イのとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第5の1(4)ア~ウ(原判決20頁20行目~22頁8行目、別紙を含む。)に記載のとおりであるから、これを引用する。 イ当審における控訴人の主張に対する判断控訴人は、控訴人がB警察官に供述調書(甲52、以下「本件供述調書」という。)に録取されている内容は控訴人の言いたい内容とニュアンスが異なると述べているから、B警察官が控訴人の申立てのとおりニュアンスを変更した供述を本件供述調書に記載しなかったのは、刑事訴訟法198条4項に反すると主張する。 しかし、B警察官は、控訴人の予定の都合上、取調べを終了しなければならない時刻が迫っていたところ、控訴人が、ニュアンスを直してもらいたいと述べたものの、本件供述調書のどの部分のニュアンスが控訴人の言いたい内容と異なっており、本件供 都合上、取調べを終了しなければならない時刻が迫っていたところ、控訴人が、ニュアンスを直してもらいたいと述べたものの、本件供述調書のどの部分のニュアンスが控訴人の言いたい内容と異なっており、本件供述調書にどのように記載すればよいかについてまで必ずしも具体的に述べてはいなかっただけでなく、「あと1000字くらいを付け加えてくれるんなら」、「今の半分ぐらいを補足、追加してほしい」などと述べていたこと、控訴人が最終的には供述調書に署名する意思はあるが、当日の時点では署名するつもりはないとの意向を示していたことから、同条4項及び5項の手続を履践して供述調書を完成させることを断念し、本件供述調書の末尾に原判決を引用して説示した記載をして対応したと見られる。このような本件の事実関係の下では、B警察官が控訴人の増減変更の申立てに係る内容を本件供述調書に記載しなかったことは、警察官が、被疑者が増減変更を申し立てた事項が録取事項と関係がある事項である場合には、増減変更の申立てに係る内容を供述調書に記載する義務を負っていること(同条4項)を踏まえても、同項に反し、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものでは ない。 したがって、控訴人の主張は採用することができない。 (5) 争点2-1(必要性のない捜索差押許可状を請求し、執行した違法の有無)について次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第5の1(5)(原判決22頁11行目~24頁4行目、別紙を含む。)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ア原判決22頁15行目の冒頭から21行目の末尾までを次のとおり改める。 「イ捜索差押えは、犯罪の態様、軽重、対象物の証拠としての価値、重大性、対象物が隠滅毀損されるおそれの有無、捜索差押えを受ける者の不利益の程度その他諸般の事情 行目の末尾までを次のとおり改める。 「イ捜索差押えは、犯罪の態様、軽重、対象物の証拠としての価値、重大性、対象物が隠滅毀損されるおそれの有無、捜索差押えを受ける者の不利益の程度その他諸般の事情に照らし明らかに捜索差押えの必要がない限り、その必要性が認められる(最高裁昭和44年3月18日第三小法廷決定・刑集23巻3号153頁参照)。そして、警察官による捜索差押許可状等の発付の請求又は執行が国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるのは、警察官が、その請求時又は執行時において、現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して捜索差押えの必要性等の要件の充足性を判断する上において、合理的根拠が客観的に欠如していることが明らかであるにもかかわらず、あえて捜索差押許可状等の発付を請求したり執行したりしたと認め得るような事情がある場合に限られる。」イ原判決23頁13行目から15行目にかけての「原告は、故意や不法領得の意思を否認しており、かかる供述は防犯カメラの映像等と整合しない不合理な弁解であって、自らの刑事責任を免れようとする意図を疑わせるに十分である」を「控訴人は、故意や不法領得の意思を否認する供述をしていた」と改める。 ウ原判決24頁2行目から3行目にかけての「本件捜索差押えにかかる捜索差押許可状の請求及び執行にあたり、捜索差押えの必要性を欠く違法があったとは認められない」を「東警察署所属の警察官が、本件捜索差押えに係る捜索差押許可状 等の発付を請求した時点及びこれを執行した時点において、捜索差押えの必要性の要件を充足していると判断したことには合理的根拠があったと認められるから、同警察官がその捜索差押許可状等の発付を請求し、これを執行したことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受け 差押えの必要性の要件を充足していると判断したことには合理的根拠があったと認められるから、同警察官がその捜索差押許可状等の発付を請求し、これを執行したことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない」と改める。 (6) 争点2-2(本件高校を対象とする捜索差押許可状を請求し、執行した違法の有無)についてア原判決の引用・補正次のとおり補正し、後記イのとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第5の1(6)(原判決24頁7行目~25頁12行目、別紙を含む。)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (ア) 原判決24頁13行目の冒頭から15行目の末尾までを次のとおり改める。 「イ被疑者以外の者の住居等の捜索については、押収物存在の蓋然性が必要とされる(刑事訴訟法222条1項、102条2項)。そうすると、警察官による被疑者以外の者の住居等に対する捜索差押許可状等の発付の請求又は執行が国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるのは、警察官が、その請求時又は執行時において、現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して捜索差押えの必要性や押収物存在の蓋然性等の要件の充足性を判断する上において、合理的根拠が客観的に欠如していることが明らかであるにもかかわらず、あえて捜索差押許可状等の発付を請求したり執行したりしたと認め得るような事情がある場合に限られる。」(イ) 原判決24頁26行目から25頁1行目にかけての「その対象物は、原告が否認する故意や不法領得の意思の有無を解明するために重要な証拠」を「その対象物は、犯人性を基礎付けたり、控訴人が否認する故意や不法領得の意思の有無を解明したりするために重要な証拠」と改める。 (ウ) 原判決25頁11 得の意思の有無を解明するために重要な証拠」を「その対象物は、犯人性を基礎付けたり、控訴人が否認する故意や不法領得の意思の有無を解明したりするために重要な証拠」と改める。 (ウ) 原判決25頁11行目から12行目にかけての「本件高校を対象とする捜索差押許可状の請求及び執行にあたり、捜索差押えの必要性を欠く違法があったとは 認められない」を「東警察署所属の警察官が、本件高校を対象とする捜索差押許可状等の発付を請求した時点及びこれを執行した時点において、捜索差押えの必要性や押収物存在の蓋然性の要件を充足していると判断したことには合理的根拠があったと認められるから、同警察官がその捜索差押許可状等の発付を請求し、これを執行したことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない」と改める。 イ当審における控訴人の主張に対する判断控訴人は、①控訴人の行為は窃盗ではなく占有離脱物横領に当たると判断されることが多い類型のものであり、被害額も4000円にとどまるなど、本件被疑事件は比較的軽微な事案であった、②既に収集された証拠資料によれば犯人性は問題なく認められるから、クレジットカードや着衣は証拠としての価値がなく、本件被疑事件は、計画的な事案でも共犯事件でもないから、携帯電話機も証拠としての価値がなかった、③控訴人が捜査に協力する姿勢を示していたことに鑑みると、クレジットカード等は、控訴人から任意に提出されることが期待でき、隠滅毀損されるおそれはなかった、④本件高校が捜索の対象となると、捜査の対象となっているという控訴人が最も他人に知られたくない事実が本件高校の関係者に発覚し、控訴人の社会的評価が低下するなどとして、本件高校を捜索場所とする捜索差押えの必要性は認められず、仮にこれが認められるとしても、他の場所に先んじて本件高 知られたくない事実が本件高校の関係者に発覚し、控訴人の社会的評価が低下するなどとして、本件高校を捜索場所とする捜索差押えの必要性は認められず、仮にこれが認められるとしても、他の場所に先んじて本件高校を捜索場所とする捜索差押えを執行したことは違法であると主張する。 確かに、本件被疑事件は、比較的軽微な事案である。しかし、通常の公判手続により審理される場合には軽微な犯罪と重大犯罪との間に証拠法上の取扱いに差異があるわけではないところ、控訴人が故意や不法領得の意思を否認する供述をしており、本件被疑事件が通常の公判手続により審理される可能性があったことに鑑みると、本件被疑事件が比較的軽微な事案であったことをもって直ちに、明らかに捜索差押えの必要がないということにはならない(①)。また、任意提出を受けることができないかどうかは、捜索差押えの必要性の要件ではなく、これを判断する一事 情にすぎない。確かに、所要の捜査の結果、本件店舗から紙幣を持ち去った人物が控訴人名義のクレジットカードを使用したことが認められ、控訴人は犯人性を認める供述をしていた。しかし、自白事件であったとしても客観的証拠の収集が不要なわけではなく、クレジットカードや着衣は犯人性に関する基本的かつ重要な証拠であり、携帯電話機は犯行の経緯や動機に関する情報が記録されている可能性があるから、証拠価値がなかったとは認められない(②、③)。そうすると、本件高校を捜索場所とする捜索差押えを実施すると、控訴人が捜査の対象となっていることが本件高校の関係者に発覚し、控訴人の社会的評価が低下することなどが否定できないこと(④)を踏まえても、東警察署所属の警察官が、本件高校を対象とする捜索差押許可状等の発付を請求した時点及びこれを執行した時点において、捜索差押えの必要性の要件を充足してい ことなどが否定できないこと(④)を踏まえても、東警察署所属の警察官が、本件高校を対象とする捜索差押許可状等の発付を請求した時点及びこれを執行した時点において、捜索差押えの必要性の要件を充足していると判断したことに合理的根拠がなかったとは認められない。そして、捜索差押許可状等は許可状であって、その実行着手時期等は捜査官の判断に委ねられていることに鑑みると、東警察署所属の警察官が、他の捜索場所に対する捜索差押えを執行してもなお差押えの目的を達成できない場合でない限り、本件高校を捜索場所とする捜索差押えを執行してはならない職務上の法的義務を負っているとは認められないから、同警察官が他の場所に先んじて本件高校を捜索場所とする捜索差押えを執行したことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。 したがって、控訴人の主張は採用することができない。 (7) 争点3(控訴人の同意なく身体等の写真撮影を行った違法の有無)についてア原判決の引用後記イのとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第5の1(7)(原判決25頁14行目~24行目、別紙を含む。)に記載のとおりであるから、これを引用する。 イ当審における控訴人の主張に対する判断控訴人は、警察官からその容貌等を写真撮影することについて拒絶する意思を示 す暇を与えられなかったためにその意思を積極的に示していないにすぎず、警察官が控訴人から積極的な同意を得ていない以上、警察官が控訴人の容貌等を写真撮影したことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けると主張する。 この点、相手方が警察官がその容貌等を写真撮影することについて真意に基づき承諾していたのであれば、承諾の意思を積極的に示していなかったとしても、警察官が相手方の容 上違法の評価を受けると主張する。 この点、相手方が警察官がその容貌等を写真撮影することについて真意に基づき承諾していたのであれば、承諾の意思を積極的に示していなかったとしても、警察官が相手方の容貌等を写真撮影したことは同項の適用上違法の評価を受けるものではない。そして、控訴人は、警察官に対し、容貌等の写真撮影について拒絶する意思を示していないところ、警察官と控訴人との間のやり取りの時間、状況等に鑑みると、控訴人が拒絶する意思を示す暇がなかったとは認められないから、控訴人は、容貌等の写真撮影について真意に基づき承諾していたと認められる。そうすると、警察官が控訴人の容貌等を写真撮影したことは、控訴人が承諾の意思を積極的に示していなかったことを踏まえても、同項の適用上違法の評価を受けるものではない。 したがって、控訴人の主張は採用することができない。 (8) 争点4(控訴人の同意なく所持品検査を行った違法の有無)についてア判断枠組み所持人の承諾のある所持品検査は、その態様が捜索に類するものである場合はもとより、捜索に当たるものである場合であっても、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受ける余地はない。 イ検討(ア) 原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【1】の所持品検査について原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【1】の「当裁判所の判断」欄(原判決36頁)の記載を次のとおり改める。 「警察官は、取調べ開始に当たり、控訴人の所持品検査を実施しているところ、控訴人がこれに異議なく応じていることに鑑みると、警察官が控訴人の所持品検査を実施したことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。」(イ) 原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【9】の所持品検査について 原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【9】の「当 たことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。」(イ) 原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【9】の所持品検査について 原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【9】の「当裁判所の判断」欄(原判決47頁)の記載を次のとおり改める。 「警察官は、取調べ開始に当たり、控訴人の所持品検査を実施しているところ、控訴人が、所持品を押収されたら困るとは述べているものの、所持品検査自体には異議なく応じていることに鑑みると、警察官が控訴人の所持品検査を実施したことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。」(ウ) 原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【14】の所持品検査について原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【14】の「当裁判所の判断」欄(原判決49頁)の記載を次のとおり改める。 「警察官は、取調べ開始に当たり、控訴人の所持品検査を実施しているところ、控訴人は、警察官が控訴人の着衣の外側から手を触れることに嫌悪感を示しているものの、所持品検査自体には渋々ながらも応じていることに鑑みると、警察官が控訴人の所持品検査を実施したことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。」(エ) 令和元年9月11日、同月30日及び同年10月11日の取調べ開始に当たっての所持品検査について控訴人は、警察官は、令和元年9月11日、同月30日及び同年10月11日の取調べ開始に当たり、控訴人の承諾を得ずにその所持品検査を実施しており、このことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けると主張する。 しかし、上記(ア)~(ウ)のとおり、警察官が、同年8月22日、同月27日及び同年10月10日の取調べ開始に当たり、控訴人の承諾を得た上でその所持品検査を実施していることに鑑みると、警察官が、同年9月11日、同月30 ~(ウ)のとおり、警察官が、同年8月22日、同月27日及び同年10月10日の取調べ開始に当たり、控訴人の承諾を得た上でその所持品検査を実施していることに鑑みると、警察官が、同年9月11日、同月30日及び同年10月11日の取調べ開始に当たって、控訴人の所持品検査を実施していたとしても、控訴人の承諾を得た上で実施していたと考えるのが自然であるところ、控訴人が承諾していなかったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって、控訴人の主張は採用することができない。 ウ当審における控訴人の主張に対する判断控訴人は、警察官から所持品検査を実施することについて拒絶する意思を示す暇を与えられなかったためにその意思を積極的に示していないにすぎず、警察官が控訴人から積極的な同意を得ていない以上、警察官が控訴人の所持品検査を実施したことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けると主張する。 この点、相手方が警察官が所持品検査を実施することについて真意に基づき承諾していたのであれば、承諾の意思を積極的に示していなかったとしても、警察官が所持品検査を実施したことは同項の適用上違法の評価を受けるものではない。そして、控訴人は、警察官に対し、所持品検査について拒絶する意思を示していないところ、警察官と控訴人との間のやり取りの時間、状況等に鑑みると、控訴人が拒絶する意思を示す暇がなかったとは認められず、控訴人は所持品検査について真意に基づき承諾していたと認められる。そうすると、警察官が控訴人の所持品検査をしたことは、控訴人が承諾の意思を積極的に示していなかったことを踏まえても、同項の適用上違法の評価を受けるものではない。 (9) 争点5(控訴人を誤信させて供述調書等に指印をさせた違法の有無)についてア判断枠組み被疑者は供述調書への いなかったことを踏まえても、同項の適用上違法の評価を受けるものではない。 (9) 争点5(控訴人を誤信させて供述調書等に指印をさせた違法の有無)についてア判断枠組み被疑者は供述調書への署名・押印(指印)を拒絶することができること(刑事訴訟法198条5項)や、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有するものというべきであり、国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは、憲法13条の趣旨に反して許されないこと(最高裁平成7年12月15日第三小法廷判決・刑集49巻10号842頁)に鑑みると、警察官が被疑者に指印を拒絶できないと誤信させて供述調書等に指印させた場合には、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるというべきである。 イ検討(ア) 控訴人は、令和元年8月22日午前の取調べ時に、警察官から、任意提出書 (甲39)及び還付請書(甲41)に署名指印するよう求められた際、警察官に対し、「印鑑もありますよ」と述べ、指印ではなく押印で対応したいという意思を示した。ところが、警察官は、被疑者には指印させる必要があると誤解していたこともあり、控訴人に対し、「駄目なんですよ。参考人の場合はいいんですけど、被疑者の取調べの場合は。指印じゃないといかん」、「仕方ない、これは決まりだから」などと、被疑者である控訴人には指印義務があるかのように述べた。これを受けて、控訴人が、警察官に対し、「押印では駄目な」のかと改めて確認しても、警察官は、同様の説明を行った。その結果、控訴人は、指印義務があるためこれを拒絶することはできないと誤信し、これらに指印した。その後、控訴人は、同様の誤信をしたまま、同日午後の取調べ時には取調べ状況報告書(甲44)及び供述調書(甲51)に、同月27日の取調べ時には取調べ状況報告書(甲45) ないと誤信し、これらに指印した。その後、控訴人は、同様の誤信をしたまま、同日午後の取調べ時には取調べ状況報告書(甲44)及び供述調書(甲51)に、同月27日の取調べ時には取調べ状況報告書(甲45)にそれぞれ指印した(原審控訴人本人4~6頁)。 以上のとおり、警察官は、自らの誤った説明により、控訴人に指印を拒絶できないと誤信させて供述調書等に指印させており、このことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受ける。 (イ) これに対し、被控訴人は、①警察官が、控訴人に対し、指印を物理的に強制したわけではなく、指印義務や指印に応じない場合の不利益を述べて指印を心理的に強制したわけでもないこと、②控訴人が、一連の取調べにおいて、自己が納得できないことについては明確に拒絶しているにもかかわらず、指印についてはそのようなことはなく複数回にわたって応じていることに鑑みると、控訴人は、指印することについて真意に基づき承諾していたと認められるから、警察官が控訴人に供述調書等に指印させたことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないと主張する。 確かに、警察官は、控訴人に対し、指印を物理的に強制したわけではなく、指印に応じない場合の不利益を述べて指印を心理的に強制したわけでもない。もっとも、警察官は、控訴人に対し、指印義務があるかのように述べており、控訴人が複数回 にわたって指印をしているのは、このような誤った説明によるものである(①、②)。このように、控訴人は、指印義務がないことを知った上で指印していたわけではないから、指印することについて承諾していたとしても、これが真意に基づくものであったとは認められない。 したがって、被控訴人の主張は前提を誤るものであり採用することができない。 (10) 争点6(無罪立証のための証拠を散 ついて承諾していたとしても、これが真意に基づくものであったとは認められない。 したがって、被控訴人の主張は前提を誤るものであり採用することができない。 (10) 争点6(無罪立証のための証拠を散逸又は隠匿した違法の有無)について東警察署所属の警察官が証拠を散逸又は隠匿したとは認められず、その証拠の保管等が国賠法上1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないことは、原判決28頁20行目の冒頭から24行目の末尾までを削除するほかは、原判決「事実及び理由」第5の1(10)(原判決28頁12行目~26行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 当審における控訴人の主張は、上記判断を左右するものではない。 (11) 小括以上によれば、東警察署所属の警察官が、原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-5、3-11】の態様の取調べをしたことや、同番号【4、7、10】のとおり控訴人に供述調書等に指印させたことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものである。 2 本件高校校長(A校長)の違法行為の有無(争点7及び8)について(1) 争点7(本件職務命令に係る違法の有無)についてア原判決の引用・補正次のとおり補正し、後記イのとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第5の2(1)(原判決29頁6行目~31頁1行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (ア) 原判決29頁9行目の「37条」を「37条4項」と改める。 (イ) 原判決29頁25行目の末尾に「そして、本件職務命令が違法であったとしても、そのことから直ちに本件職務命令が国賠法1条1項の適用上違法の評価を受 けるものではなく、A校長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件職務命令をしたと認め ったとしても、そのことから直ちに本件職務命令が国賠法1条1項の適用上違法の評価を受 けるものではなく、A校長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件職務命令をしたと認め得るような事情がある場合に限り、上記評価を受ける。」を加える。 (ウ) 原判決30頁9行目から10行目にかけての「本件自宅待機命令」を「本件自宅勤務命令」と改める。 イ当審における控訴人の主張に対する判断控訴人は、①職務上違法行為を行ったり事故を起こしたりしたわけではなく、職務の運営に重大な支障を与えたわけでもなく、控訴人を被疑者とする捜索差押えが学校内で実施されたことは控訴人の職務遂行の能力や信用性に疑問を抱かせるものではない、②発令期間が3か月間という長期に及んでいるなどとして、本件職務命令は必要性も相当性も欠いていると主張する。 しかし、控訴人が行った可能性がある非違行為が、私人として公務外に行った行為であるとはいえ、刑法犯であること、控訴人が、教員として法令を遵守するように生徒に指導し、自ら模範となるべき立場にあったことに鑑みると、控訴人が、刑事処分を受けたわけではなく、被疑者として捜査の対象となっていたにとどまることを踏まえても、A校長が、控訴人の行為が生徒のみならず保護者に与える影響が大きく、控訴人が出勤して職務を遂行したり他の教職員や生徒・保護者と接触したりした場合の混乱や不都合を回避する必要があると判断したことが不合理であるとはいえない(①)。そして、A校長が、本件職務命令を発令するより前の時点で、本件被疑事件を担当する警察官から、控訴人から事情聴取をするのは控えてもらいたいと言われたことから、まずは本件被疑事件に係る捜査の進捗状況を見守り、控訴人から事情聴取をするのは後日にしようと考えたところ、令和元年10月15日 から、控訴人から事情聴取をするのは控えてもらいたいと言われたことから、まずは本件被疑事件に係る捜査の進捗状況を見守り、控訴人から事情聴取をするのは後日にしようと考えたところ、令和元年10月15日に、東警察署に対し、控訴人から事情聴取をすることの可否について確認したところ、東警察署から良いとの回答を得たことから、同年11月14日に、控訴人から事情聴取をし、その結果も踏まえて、遅くとも同年12月18日には本件職務命令を解除したことが認められる。このような経過に加え、本件職務命令が給与等の処 遇面で不利益を与えるものではなかったことを併せ考慮すると、本件職務命令の期間が不相当に長期間であったともいえない(②)。 したがって、控訴人の主張は採用することができない。 (2) 争点8(A校長の発言等の違法行為(パワーハラスメント行為)該当性)についてA校長が控訴人が問題視する発言等をしたことが国賠法上1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないことは、原判決31頁10行目の「37条」を「37条4項」と改めるほかは、原判決「事実及び理由」第5の2(2)(原判決31頁4行目~32頁15行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。 当審における控訴人の主張は、上記判断を左右するものではない。 (3) 小括したがって、A校長が本件職務命令をしたことや控訴人が問題視する発言をしたことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。 3 争点9(控訴人に生じた損害及び損害額)(1) 治療費、薬剤費、交通費及び休業損害について争いのない事実や証拠(甲6~10、70(いずれも枝番を含む。))によれば、控訴人は、令和元年9月12日以降、精神科・心療内科等に通院するようになり、同年11月29日には適応障害との診断を受けており 争いのない事実や証拠(甲6~10、70(いずれも枝番を含む。))によれば、控訴人は、令和元年9月12日以降、精神科・心療内科等に通院するようになり、同年11月29日には適応障害との診断を受けており、病気休暇等を取得したことが認められる。しかし、控訴人が、同年8月22日~同年10月11日の東警察署所属の警察官の言動等や同年8月28日の本件職務命令、同年9月18日及び同年10月24日のA校長の言動により身体症状や精神症状が現れるようになったと主張していることに鑑みると、控訴人が、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受ける東警察署所属の警察官の言動等(原判決別紙「捜査経過一覧表」の番号【3-4】(同年8月22日)、【3-11】(同日)、【4】(同日)、【7】(同日)及び【10】(同月27日))により、適応障害を発症したとまでは認められず、休業を余儀なくされたとも認められない。 したがって、適応障害の治療に要した治療費、薬剤費及び交通費は、上記の違法な言動等と相当因果関係のある損害とは認められず、控訴人が主張する休業損害が同言動等と相当因果関係のある損害とも認められない。 (2) 慰謝料について控訴人は、東警察署所属の警察官から、人格を否定する発言をされたり指印を強いられたりしたことにより、適応障害を発症したとは認められないものの、精神的苦痛を被ったとは認められるところ、これを慰謝するための金額は、発言の内容及び回数並びに指印の回数に鑑みると、30万円と認めるのが相当である。 (3) 弁護士費用相当額上記(2)の認容額を始めとする本件に現れた一切の事情を考慮すると、東警察署所属の警察官の違法な職務行為と相当因果関係に立つ弁護士費用相当損害額は、3万円と認めるのが相当である。 第6 結論以上によれば、控訴人の請求は、33 件に現れた一切の事情を考慮すると、東警察署所属の警察官の違法な職務行為と相当因果関係に立つ弁護士費用相当損害額は、3万円と認めるのが相当である。 第6 結論以上によれば、控訴人の請求は、33万円及びこれに対する令和元年8月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し、その余の請求はいずれも理由がないから棄却すべきであるところ、これと異なる原判決は一部失当である。 よって、本件控訴は一部理由があるから、原判決を上記のとおり変更することとして、主文のとおり判決する。 広島高等裁判所岡山支部第1部 裁判長裁判官菱田泰信 裁判官中畑啓輔 裁判官大門宏一郎
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