平成14(わ)1219 業務上過失傷害被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年7月1日 神戸地方裁判所
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判決文本文4,008 文字)

主文 被告人を禁錮4月に処する。 この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成13年8月17日午後3時25分ころ,業務として普通貨物自動車(以下「被告人車両」という。)を運転し,兵庫県西宮市A町B字C所属中国縦貫自動車道上りaキロポスト先路上を,岡山方面から大阪方面に向かい,時速約70キロメートルで,先行するD(当時22歳)運転の普通乗用自動車(軽四,以下「D車両」という。)に追従して進行するに当たり,同車の動静を注視し,進路の安全を確認しつつ進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,同乗者との会話に気を取られて同車の動静注視不十分のまま漫然と前記速度で追従進行した過失により,同車が渋滞のため停止しようとしているのを前方約16.7メートルの至近距離に迫ってようやく発見し,急制動の措置を講じたが間に合わず,被告人車両をD車両に追突させて同車を前方に押し出し,同車をその前方に停止していたE(当時62歳)運転の普通乗用自動車(以下「E車両」という。)に,更に同車をその前方に停止していたF(当時60歳)運転の普通乗用自動車(以下「F車両」という。)に順次追突させ,よって,別紙一覧表(省略)記載のとおりD外6名にそれぞれ傷害を負わせたものである。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明) 1 まず,弁護人は,被告人車両がD車両に追突した事実は認めるものの,被告人車両がD車両に追突するより前に,D車両やE車両が先に前車への追突事故を起こしていたから,E車両及びF車両に対する追突については,被告人は責任を負わない旨主張するので した事実は認めるものの,被告人車両がD車両に追突するより前に,D車両やE車両が先に前車への追突事故を起こしていたから,E車両及びF車両に対する追突については,被告人は責任を負わない旨主張するので,この点について説明を補足する。 (1) 関係証拠によれば,事故現場には,D車両が追突された地点に被告人車両のスリップ痕及びD車両のねじれ痕といった明瞭な痕跡があるものの,D車両やE車両によって,これより先に追突事故が生じていたことをうかがわせる痕跡は何らないこと,F,E及びDの各運転者は,いずれも本件事故は被告人車両が追突してきたことによって生じたものであって,それ以前に衝突事故が起きていたことはない旨明確に供述ないし証言しているところ,これらの供述等は一貫したものである上,相互に符合しているものであって十分信用できること,被告人自身,先行する追突事故を見たわけではないし,衝突音を聞いたこともなく,事故当時や捜査段階の初期において,先に追突事故が生じていたといった弁解もしてなかったことなどが認められるのであって,これらを総合すれば,本件事故は,被告人がD車両に追突したことにより順次E車両,F車両に追突したものであることは優に認めることができる。 (2) これに対し,被告人は,捜査段階の途中から,被告人がD車両に追突するより前に追突事故が生じていた旨供述を変遷させているところ,変遷後の供述には格別裏付けがない上,その変遷の時期は,被告人が被告人車両にはいわゆる任意保険がかけられていると思っていたのにそれがないことを知ったり,F車両の修理代が高額になることを知った後であって,変遷後の供述は,関係証拠と対比して信用することができない。 なお,弁護人は,F及びEの各運転者が,2度追突の衝撃があった旨供述していることをもって,弁護人の主張を ることを知った後であって,変遷後の供述は,関係証拠と対比して信用することができない。 なお,弁護人は,F及びEの各運転者が,2度追突の衝撃があった旨供述していることをもって,弁護人の主張を裏付けるものであるとする。しかしながら,関係証拠によれば,2度の衝撃があったことは,被追突車両が追突車両に押し出されて加速し前方の車両に1度目の追突をし,これにより減速したところに,再度追突車両が追いついて衝突したものとして合理的に説明しうるものである上,F及びEの各運転者は,いずれも1度目の追突の衝撃は強かったのに対し,2度目の追突の衝撃はそれより弱かったし,この2度の衝撃がブレーキ音(ブレーキ音は一度だけであるため,これが被告人車両によるものであることは明らか)を聞いた直後であったとも供述しているのであって,これらの供述は前記の説明とも符合するものであるから,2度追突の衝撃があったことは,弁護人の主張を裏付けるものとはいえない。 2 次に,弁護人は,被告人が,同乗者との会話に気を取られていたことはなく,前方注視を怠っていないから,被告人のD車両に対する動静注視が不十分であったことはなく,また,被告人が,急ブレーキをかけたのは,D車両との距離が50メートルになった時点であって,16.7メートルの至近距離に至ってからではないから,被告人に公訴事実記載の過失はなく,被告人は無罪であると主張し,被告人も,捜査段階の途中からこれに沿う供述をするので,この点についても説明を補足する。 (1) 被告人が,同乗者との会話に気を取られて,D車の動静に気付くのが遅れたことは,被告人が事故現場において,現場にかけつけた警察官に対し,事故の原因として説明しているところであって,その内容に不自然な点もなく,十分信用することができる。弁護人は,被告人の平成13年8 たことは,被告人が事故現場において,現場にかけつけた警察官に対し,事故の原因として説明しているところであって,その内容に不自然な点もなく,十分信用することができる。弁護人は,被告人の平成13年8月29日付けの警察官調書(乙2号証)で,被告人が同乗者との話に夢中になっていたと記載されているのは,取調べ警察官が,被告人が同乗者と話をしていたことを確認しただけで,記載したものである旨主張するが,前記のとおり,被告人は事故現場においても同様の供述をしているのであるから,この主張は採用できない。また,被告人が,16.7メートルの距離で急ブレーキをかけたことも,被告人が事故後,事故現場で行われた実況見分において,自ら指示したものであって,その内容に格別不自然な点もなく,信用することができる。弁護人は,この指示は,実況見分の際,警察官に誘導されたものであると主張するが,その地点に特段の痕跡があるわけでもなく,当時被告人は素直に事実を認めていたことからすると,警察官においてあえて被告人を誘導しなければならない必要性はないから,この主張も採用できない。 (2) これに対し,被告人は捜査段階の途中から,D車両に対する前方注視を怠ったことはなく,D車両との距離が50メートルになった時点で急ブレーキをかけた旨供述を変遷させているところ,その変遷の理由は,概要,事故から日時がたってよく考えると,そう思うようになったというものにすぎず,変遷後の供述は,関係証拠と対比して信用することができない。 3 よって,弁護人の前記1,2の主張はいずれも採用することができない。 (法令の適用) 1 罰条平成13年法律第138号による改正前の刑法211条前段 2 科刑上一罪の処理刑法54条1項前段,10条により1罪として最も重いDに対する業務上過失傷害罪の (法令の適用) 1 罰条平成13年法律第138号による改正前の刑法211条前段 2 科刑上一罪の処理刑法54条1項前段,10条により1罪として最も重いDに対する業務上過失傷害罪の刑で処断 3 刑種の選択禁錮刑選択 4 執行猶予刑法25条1項 5 訴訟費用の負担刑訴法181条1項本文(量刑の理由)本件は,被告人が,高速道路を走行中,判示の過失により,自車を前車に追突させて押し出し,同車を更に順次2台の車に追突させ,各車両の運転者及び同乗者合計7名に傷害を負わせた,という業務上過失傷害の事案である。この犯行の罪質,過失の内容,事故態様及び結果等,殊に,被告人の過失は,自動車運転者としての基本的な注意義務に違反したもので過失の程度は大きく,かつ,一方的な過失であること,事故の規模が比較的大きく,計7名もの被害者を出しており,うち1名については胸骨骨折等で加療約3週間を要していること,被告人は,事故当時には自己の責任を認めていたにもかかわらず,その後,供述を変遷させて不合理な弁解に終始しており,反省が十分とは言い難いこと,被告人車両がいわゆる任意保険に加入していない上,被告人が事故の責任を争っているため,事故から1年10か月近くを経ても未だ示談が成立しておらず,今後十分な弁償がなされるかも明らかでないこと,そして,こうした事情から,被害者の中には厳しい被害感情を表す者もいること,以上を併せ考えると,本件の犯情は悪く,被告人の刑事責任を軽くみることができない。 しかしながら,幸いにも各被害者が被った傷害の程度については,おおむね打撲や挫傷等にとどまり重傷とまではいえないこと,被告人にはこれまで前科前歴がなく,通常の社会生活を送ってきていること,その他被告人のために酌むべき諸事情を十分考慮すると,被告人を いては,おおむね打撲や挫傷等にとどまり重傷とまではいえないこと,被告人にはこれまで前科前歴がなく,通常の社会生活を送ってきていること,その他被告人のために酌むべき諸事情を十分考慮すると,被告人を直ちに服役させるまでの必要はなく,長期の執行猶予期間を付した上で,社会内で更生の機会を与えるのを相当と思料する。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑禁錮4月)平成15年7月1日神戸地方裁判所第14刑事係乙裁判官浦島高広

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