【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 当審における訴訟費用は被告人の負担とする。 理 由 弁護人猪股正哉の上告趣意第一点について。 第一審判決は挙示の証拠
主文本件上告を棄却する。 当審における訴訟費用は被告人の負担とする。 理由弁護人猪股正哉の上告趣意第一点について。 第一審判決は挙示の証拠により、「被告人は判示会社に雇われ、オートバイ販売の業務に従事中、判示四月一三日同会社より販売の為判示自動二輪車一台を受取りこれを同月二一日判示Aに一一万二、〇〇〇円で売却し、これが代金を受取り右会社の為業務上保管中その頃之を自己の用途に(着服)費消して横領したものである。」との旨の事実を認定したが、右挙示の証拠の中被告人が代金を会社の為保管中これを着服若しくは費消したという点に関する証拠はただ被告人の第一審公判廷における自供だけしかない、しかるにこの被告人の自供とは第一審第一回公判において被告人が被告事件に対する陳述として「公訴事実の通り間違いありません。」とだけ述べた供述に外ならない、ということは記録上明白である。そこで本件起訴状を見ると、公訴事実として「被告人は右会社に雇われ、オートバイ販売の業務に従事中、右四月一三日同会社より販売の為右自動二輪車一台を受取りこれを同月二一日右Aに一一万二、〇〇〇円で売却し、これが代金を受取り右会社の為業務上保管中その頃自己の用途に着服横領したものである」との記載がある。そして起訴状中右公訴事実の部分の文字は炭酸紙と硬筆を用いて記載されているが、その中「これが代金として受取り」とある「として」の三字を抹消し紺色インキで「を」の一字を記入し以て「これが代金を受取り」と改めてある部分には極めて微かに起訴状作成検事名下のと同一と観られる角印が押してあり、その上欄には「三字抹一字加入」と記載されていて、これは右検事の適式真正の訂正と認められる。しかるに、起訴状の公訴事実の部分の最後の文言は炭酸紙と硬筆を用いて本 下のと同一と観られる角印が押してあり、その上欄には「三字抹一字加入」と記載されていて、これは右検事の適式真正の訂正と認められる。しかるに、起訴状の公訴事実の部分の最後の文言は炭酸紙と硬筆を用いて本来の筆蹟で記載された「保- 1 -管中その頃自己の用途に着服横領したものである」というのであるが、この部分の「その頃」の次に、いずれも右と異る筆蹟で黒鉛筆で「之を」の二字を挿入し、「着服」の二字を括弧でくくり且つ(着服)と横領との間に「費消して」の四字を挿入してあるが、これら鉛筆書きの文字及び符号の挿入については検事の押印も欄外への挿入字数の記載もないこと右起訴状原本上明白である。してみれば、起訴状の右最後の部分は初めから今日まで「その頃自己の用途に着服横領したものである」と記載されているのであり、この部分には権限ある右検事の適式真正な挿入記載は全然ないのであり、又、何人かによる変造もないのである、ということは極めて明白である。従つて第一審公判で被告人が「公訴事実の通り間違ありません」と述べたのは「その頃自己の用途に着服横領したものである」との趣旨で公訴事実の通り間違いないとの意味である。しからば第一審判決にいわゆる「その頃之を自己の用途に(着服)費消して横領したものである」とは如何なる意味か、これは、その文面より解釈すれば、(着服)は従であり費消は主であり、事実認定の本旨は着服横領でなく費消横領の趣旨であると解するのが妥当である。そうすると、第一審判決が、着服横領したとの趣旨の自供のみによつて態様の異る費消横領の事実を認めたことは採証法則に違反するとの非難を生じ得る。論旨中費消横領の事実を認定するに足る証拠は皆無なりと主張する点は恰もこの非難に当たる。けれども、この点並びに、論旨中、第一審裁判所が勝手に起訴状を訂正もしくは訴因を変更し、又 るとの非難を生じ得る。論旨中費消横領の事実を認定するに足る証拠は皆無なりと主張する点は恰もこの非難に当たる。けれども、この点並びに、論旨中、第一審裁判所が勝手に起訴状を訂正もしくは訴因を変更し、又、その判決が「(着服)費消して」とあいまいな表現をしたことは不公正であり且つ第一審判決中の着服の文字は誤記と認められると解した原判決も不公正であつていずれも憲法に違反するという点は、名を違憲に藉り実質は単なる法令違反を主張するに過ぎず、すべて上告適法の理由とならない。第一審裁判官が起訴状の文字を訂正変造した事実も訴因を変更した筆跡も記録上認められない。 同第二点について。 - 2 -所論も単なる法令違反の主張であつて上告適法の理由とならない。 同第三点について。 一は第一審判決が採用しなかつた証拠による事実誤認の主張、二は訴訟法違反の主張、三は量刑不当の主張に過ぎず、いずれも上告適法の理由とならない。 被告人本人の上告趣意は量刑不当の主張に過ぎず刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。 よつて同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。 昭和三〇年一二月二六日最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官垂水克己裁判官島保裁判官河村又介裁判官小林俊三裁判官本村善太郎- 3 - 三裁判官本村善太郎- 3 -
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