平成25(行ウ)5

裁判年月日・裁判所
平成27年7月29日 広島地方裁判所
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判決文本文21,277 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,A及びBに対し,金3億6300万円及びこれに対する平成25年4月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。 第2 事案の概要 本件は,大竹市の住民である原告らが,大竹市長であるA(以下「A市長」という。)及び同副市長であるB(以下「B副市長」という。)が,共同で大竹市の財産である別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を売り渡したのは(以下「本件売渡し」という。),地方自治法(以下単に「法」という。)237条2項の適正な対価なくして譲渡し,さらに,法96条1項6号の議決も経ていないなどその手続が違法でかつ市長の裁量を逸脱濫用しているとして,被告に対し,法242条の2第1項4号本文に基づき,A市長及びB副市長に対して適正な対価と売却価格との差額3億6300万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年4月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するよう求めた事案である。 これに対し,被告は,B副市長に対して支払をするよう求める訴えは,住民監査請求の前置を満たしていないとして訴えの却下を求めるとともに,本件土地は「適正な対価」で売却されたこと,また,仮にそうでないとしても,法96条1項6号の議決を経ていることなどを主張して適法であるなどと反論した。 1 前提事実(末尾に証拠を掲げた事実のほかは,当事者間に争いがない。) 大竹市は,平成3年,大竹市b地区に所在する本件土地から大竹港埋め立ての土砂を採取し,跡地を住宅団地とする計画を立てた。 (末尾に証拠を掲げた事実のほかは,当事者間に争いがない。) 大竹市は,平成3年,大竹市b地区に所在する本件土地から大竹港埋め立ての土砂を採取し,跡地を住宅団地とする計画を立てた。 大竹市は,平成10年12月,本件土地を宅地造成する事業を開始したが, 平成15年,需要が少ないとの理由から宅地開発を断念した(乙1)。 大竹市は,平成17年,本件土地を工業用地に転換する事業計画を立てたが,その事業も実現しなかった(乙2)。 大竹市は,平成20年2月,b地区の土地の半分を学校統合移転先とし,本件土地を住宅地とする計画を表明した(乙42,44)。 大竹市は,平成20年9月,本件土地の売払いに向けて,不動産鑑定士に本件土地の鑑定を依頼したところ,不動産鑑定士から,同年10月1日時点の鑑定評価額が10億5400万円であるとの回答を得た(乙3)(以下「平成20年鑑定」という。)。 大竹市は,同年10月17日,以下の条件で,本件土地の売払い入札の公告を行った。 ア一般競争入札イ売払い対象面積 6万2000.43㎡ウ最低売却価格 10億5400万円エ申込み受付期間平成20年11月4日から同月7日までしかし,応募はなかった。 大竹市は,同年11月14日,最低売却価格を非公開,申込受付期間を同年12月1日から同月3日までとして,再度,本件土地の一般競争入札の公告を行った。 しかし,応募はなかった。 ア大竹市は,平成22年秋,本件土地について3回目の売却手続(公募売却手続)の開始を計画したが,その際,本件土地の一部でも応募があれば売払いが可能となるようにするとともに,仮にその場合に複数の応募があると,希望面積及び希望価格だけでは対象者を決定することができなくなるこ の開始を計画したが,その際,本件土地の一部でも応募があれば売払いが可能となるようにするとともに,仮にその場合に複数の応募があると,希望面積及び希望価格だけでは対象者を決定することができなくなることから,目的物に対する発想・解決方法等の提案も含めて審査し,事業者を選定するという手法(プロポーザル方式)を採用することとした(乙 46の1,2)。 イ大竹市不動産評価審議会(同市が取得し,貸し付け又は処分する不動産の適正な評価を期するため,不動産の評価について審議する審議会。以下「市不動産評価審議会」という。)(甲16)は,平成22年9月,本件土地の評価額を4万㎡で5億0566万円と決定した(なお,不動産鑑定は実施されていない。)(甲24の1,24の2,25)。 ウ大竹市は,平成22年9月30日,応募受付期間を同年10月21日から同月26日までとして,本件土地に関する事業実施者募集の公告を行った。 エ大竹市は,平成22年10月18日,本件土地の予定価格(最低価格であり以下同じ。)を,本件土地全体で4億5657万1166円(4万㎡で2億9458万円)と定めた(乙18,19)。 上記予定価格が,上記イの市不動産評価審議会の決定額と相違するのは,予定価格が売渡しの5年後の土地価格を予測しているのに対し,市不動産評価審議会の決定額は現在価格を算出していることと,予定価格が取引事例比較法による比準価格を採用していないのに対し,市不動産評価審議会の決定額はこれを一部採用していることによるものであった(乙18)。 なお,大竹市において,本件土地の売却を担当していたのは,都市環境部監理課であり,その課長は,証人Cであった。 オ平成22年10月26日,上記ウの募集に対して1社から応募があったが,その買受希望面積は,4万㎡で希望価格が2 地の売却を担当していたのは,都市環境部監理課であり,その課長は,証人Cであった。 オ平成22年10月26日,上記ウの募集に対して1社から応募があったが,その買受希望面積は,4万㎡で希望価格が2億5800万円であり,予定価格を約12.4%下回っていた(乙37)。 その頃,本件土地から約200mという近隣にある大手企業社宅跡地が売却され,宅地化されるという報道がされた(乙20)。 同年11月24日,上記の応募をした1社は辞退した(乙21,38)。 大竹市は,平成23年9月,本件土地について4回目の売却手続(公募売 却手続)を行うことし,同月21日,本件土地の鑑定を不動産鑑定士に依頼した。 不動産鑑定士は,同年10月31日,本件土地の同月1日時点の鑑定評価額が7億1300万円であるとする鑑定書を提出した(甲1)(以下「平成23年鑑定」といい,鑑定評価額を「平成23年鑑定評価額」という。)。 市不動産評価審議会は,同年11月4日,本件土地の評価額を7億1300万円と決定した(甲2)。 大竹市は,同年11月8日,議員全員協議会(大竹市が,事前に同市市議会に対して開催依頼をした上で,市議会の重要議題について,市議会議員全員に対して議題の説明を行う会議のこと。)において,4回目の売却手続を行うことを説明した(乙25の1の1,25の1の2,25の2)。 大竹市は,同月9日,次の条件で,本件土地についてプロポーザル方式による事業実施者募集の公告を行った(乙51の1,51の2)。 ア売払い最低面積 4万㎡イ応募受付同月22日から同月25日までウ予定価格非公表大竹市は,平成23年11月18日,本件土地の予定価格を,本件土地全体で3億3777万8342円(以下「本件予定価格」という。)と定めた(甲3 から同月25日までウ予定価格非公表大竹市は,平成23年11月18日,本件土地の予定価格を,本件土地全体で3億3777万8342円(以下「本件予定価格」という。)と定めた(甲3)。 本件予定価格が,市不動産評価審議会の決定した評価額や平成23年鑑定評価額と相違する理由は,3回目の公募の際の理由と概ね同様である。 D有限会社及びE不動産有限会社は,平成23年11月25日,本件土地全体を3億5000万円で買い受け,宅地及び施設用地とするという内容で上記の公募に応募した(乙27の1の1ないし27の1の6。D有限会社及びE不動産有限会社は,複数の法人による1つのグループとして,共同で譲受けを申し出た。以下,両社を併せて「Dら」という。)。 ア Dらは,平成23年11月29日午前10時55分から午後0時まで,大竹市b地区造成土地売払い事業実施者選定委員会(以下「本件選定委員会」という。)において事業のプレゼンテーションを実施した。 本件選定委員会は,同日午後3時30分から午後4時55分まで開催された同委員会において,Dらを大竹市b地区造成土地売払い事業(以下「本件事業」という。)の実施者として選定した(甲4)。 なお,本件選定委員会は,B副市長が委員長を務め,委員らは大竹市の教育長・各部長・消防長及び都市計画課長ら11名で構成されていたものであり,外部委員は含まれていなかった。 イ A市長は,同年12月5日,Dらとの間で,「大竹市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」(昭和39年大竹市条例第19号)(以下「本件条例」という。)3条の規定による大竹市議会の議決を得ることを停止条件として,本件土地の全部を3億5000万円で譲渡する旨の土地売買仮契約を締結した(甲5)。 ア大竹市は, 第19号)(以下「本件条例」という。)3条の規定による大竹市議会の議決を得ることを停止条件として,本件土地の全部を3億5000万円で譲渡する旨の土地売買仮契約を締結した(甲5)。 ア大竹市は,平成23年12月8日,議員全員協議会において,市議会議員の全員に対し,本件事業の事業者にDらを選定し,本件土地全体を3億5000万円で売却する予定であることを説明した。その際,大竹市は,本件売渡しの必要性と,本件土地の予定価格については数年後の地価を想定して決定した旨を説明した(乙27の2)。 イ大竹市は,同月12日午前,市議会本会議に,本件土地を,Dらに対し3億5000万円で売り払う旨の議案(以下「本件議案」という。)を提案し,これに対し市議会は,生活環境委員会に審議を付託した(甲6,26)。 大竹市は,本件議案について,法96条1項8号(種類及び金額について条例で定める財産の取得又は処分)の委任を受けた本件条例3条に基づいて提案したものであるところ(甲27),法96条1項6号(適正な対 価のない譲渡)に基づく提案としなかったのは,大竹市が,3億5000万円という本件土地の売渡し価格(以下「本件土地売渡価格」という。)は「適正な対価」(同号)の範囲内であると考えていたためであった。 ウ大竹市は,同日午後に開催された市議会生活環境委員会において,本件土地の平成23年の鑑定評価額が7億円であること,予定価格が3億3777万8342円であることを説明した(甲7)。 なお,市議会生活環境委員会は,大竹市の市議会議員16名のうち8名で構成されており,残り8名の市議会議員のうち7名が,同日に開催された委員会を傍聴した。 同日,生活環境委員会は,本件議案を可決した。 エ大竹市議会は,同月15日に開催された本会議において,生活環 れており,残り8名の市議会議員のうち7名が,同日に開催された委員会を傍聴した。 同日,生活環境委員会は,本件議案を可決した。 エ大竹市議会は,同月15日に開催された本会議において,生活環境委員会の審査報告をもとに,本件議案の質疑及び討論を行った(甲8)。 上記本会議において,出席した議員からは,本件土地の不動産鑑定評価額が1坪当たり約3万8000円であることを示した上で,本件土地売渡価格では1坪当たり約1万8000円で売却することになるなどの意見が出された。 同日,市議会は,本件議案を可決した(以下「本件売渡議決」という。)。 大竹市議会は,平成24年10月4日に決算特別委員会を,同年12月14日に本会議をそれぞれ開催し,平成23年度土地造成特別会計決算(以下「本件決算」という。)の審議において,Dらに対する本件売渡しに関し,以下の点について質疑応答・討論を行った(乙30,31)。 ア本件土地の適正な対価は平成23年鑑定評価額であるか。 イ予定価格の決定について,5年後の地価を計算したことウ適正な対価でない場合には,法96条1項6号の議決を要することエ本件議案の議決の経緯上記決算特別委員会では本件決算は不認定となったものの,大竹市議会は, 上記本会議において,本件売渡しによる収入3億5000万円を含め,本件決算を賛成多数により認定した(乙30,31。以下「本件決算議決」という。)。 大竹市の住民である原告らは,平成24年12月4日,大竹市監査委員に対し,本件売渡しが適正な対価によらず,また法237条2項の議決を得ない違法な財産の処分に当たるため,本件売渡しに基づいて所有権移転登記手続を行ったことが違法不当であるとして,被告が,A市長及び購入募集手続の担当職員らに対して損害賠償請 た法237条2項の議決を得ない違法な財産の処分に当たるため,本件売渡しに基づいて所有権移転登記手続を行ったことが違法不当であるとして,被告が,A市長及び購入募集手続の担当職員らに対して損害賠償請求をすることを求め,法242条1項に基づく監査請求を行った(以下「本件監査請求」という。)。大竹市監査委員は,平成25年1月28日付けで,原告らに対し,本件監査請求を棄却する旨の通知をした(甲9)。 原告らは,平成25年2月26日,本件訴訟を提起した。 2 争点及びこれに対する当事者の主張 B副市長に対して損害賠償を請求することを求める訴えは,住民監査請求の前置を満たしているか。 (被告)本件訴訟のB副市長に対して支払を請求することを求める訴えの対象は,大竹市長がB副市長への損害賠償請求を怠っているという点であるところ,本件監査請求ではその点は問題となっていないから,住民監査請求の前置を満たしていない。 (原告ら)争う。 本件売渡しは,「適正な対価なくして」(法237条2項)なされたか。 (原告ら)本件売渡しの対価である3億5000万円は,本件土地の不動産鑑定評価額及び市不動産評価審議会の定めた評価額である7億1300万円と比較 して,著しく低い。 適正な対価とは時価をいい,時価は原則として不動産鑑定評価額を基準とすべきである(財政法9条の「適正な対価」を定めるための評価方法については,国有財産評価基準通達が,不動産鑑定評価額をもとにして決定されるものと定めており(甲10,11),PRE研究会(国土交通省が平成19年度より設置した「公的不動産の合理的な所有・利用に関する研究会」)が作成した資料(甲12)によれば,法237条2項の「適正な対価」とは「あらかじめ各地方公共団体 PRE研究会(国土交通省が平成19年度より設置した「公的不動産の合理的な所有・利用に関する研究会」)が作成した資料(甲12)によれば,法237条2項の「適正な対価」とは「あらかじめ各地方公共団体が設置する委員会・審議会等に諮問を行い,不動産鑑定士による鑑定評価額をもとに決定するのが一般的である。」とされている。そして,大竹市不動産評価審議会も,平成23年鑑定評価額をもって「適正な対価」と認めている。 被告の主張する算定方法による予定価格の決定は,不動産鑑定士ではない証人Cが中心となって行っている点,不動産鑑定評価基準によらない評価を行っている点(具体的には,比準価格を用いず開発法による価格のみを採用している点及び鑑定時の販売価格ではなく将来の販売価格を元にしている点)で不合理である。 (被告)法237条2項,同96条1項6号の「適正な対価」とは,時価であるが,不動産の場合は特定物である以上,時価は実際の取引を通じて初めて明らかになる。不動産鑑定評価額は,合理的と考えられる市場の存在を前提とした評価の結果であって,時価そのものではないから,必ず不動産鑑定評価額を採用しなればならないものではない。 不動産鑑定士が不動産鑑定評価をするについては,比準価格と開発法による価格とを併用しなければならず(乙52,53),かつ,価格時点における開発造成後の価格をもとに計算しなければならないが(乙53,54),本件土地は特殊であって比準価格を採用することはそもそも合理性がないし, さらに,過去数回にわたり一般競争入札を行っているが応札がなかったことや,地価が引き続き下落傾向にあり,購入者も限定されるという制約があるため将来の価格をもとに計算しなければ,時価を把握できない事情があった。 大竹市は,不動産鑑定 っているが応札がなかったことや,地価が引き続き下落傾向にあり,購入者も限定されるという制約があるため将来の価格をもとに計算しなければ,時価を把握できない事情があった。 大竹市は,不動産鑑定士の助言をもとに,平成23年鑑定において用いられた開発法の手法と数値をそのまま反映させ,同鑑定では情報が無かったため算定要素に含まれていなかった必要経費(下水道負担金,分合筆手数料,集会所建設費)を支出に加えるという計算を行い,その計算結果を本件予定価格としたものであって合理性がある。 現実的にも,特定の不動産に対する需要はその時々の社会情勢,当該地域の状況その他様々な条件によって変動するものであり,その幅は大きいから,時価とはある程度の幅のあるものとして捉える必要がある。 本件売渡しに至るまでの需要としては,3回目の公募時において,本件土地の一部(4万㎡)を2億5800万円で買い受けようという応募であったが,この応募と同じ単価で本件土地全体を計算すると3億9990万2773円となる。 上記応募の金額は,リスクが極めて低い条件(いわゆる売れたら払い方式)を前提とした設定金額であったにもかかわらず,最終的には辞退という結果となっていること,この3回目の公募以降も地価の下落傾向が続いていたこと及び本件土地の近くに競合住宅団地(乙20)が出現したことから生じる需要と供給への影響を考え合わせれば,本件売渡価格3億5000万円は適正な対価の範囲内である。 本件売渡しにA市長の裁量権の逸脱濫用があるか。 (原告ら)ア A市長が本件売渡しについてプロポーザル方式を選択したことは,予定価格を事前公表せず,募集期間が17日間という短期間であったことからすると,本件土地を少しでも高額で売却すべき義務を負う市長として,そ 渡しについてプロポーザル方式を選択したことは,予定価格を事前公表せず,募集期間が17日間という短期間であったことからすると,本件土地を少しでも高額で売却すべき義務を負う市長として,そ の裁量権を濫用・逸脱したものである。 イ A市長には,本件土地をできる限り有利な価格で売却するよう努力すべき義務を負っていたところ,以下の理由により,上記義務に反した裁量権の逸脱・濫用がある。 すなわち,本件売渡しについて,①実際に応募したDら以外にも,本件土地の購入を希望する業者が存在したこと,②予定価格を公表しなかったこと,③入札期間が短期間であること,④本件選定委員会には外部委員がいなかったこと,⑤本件選定委員会の審議が,専らDらのプレゼンテーションについて行われ,Dらの応募についての疑問を述べる委員はいなかったこと,⑥本件選定委員会が,Dらの事業計画の実施可能性について何ら調査を行わないまま,事業者を選定したことの各事情があることからすると,本件選定委員会は,予め事業者となることが内定している特定の業者に対して形式的にプレゼンテーションを実施させたものである。 このように選定された事業者に対する本件売渡しは,A市長の裁量権の逸脱・濫用である。 (被告)原告らの指摘する事情について次のとおり反論する。 ア本件売渡しでプロポーザル方式を選択した理由は,本件土地の一部でも売払いの応募があれば売却することを検討したものの,面積の異なる応募があった場合,希望面積及び購入希望価格だけでは売払い対象者を決定できなくなるところ,プロポーザル方式であれば,まちづくりという観点から比較検討することが可能になるからであり,A市長に裁量権の逸脱・濫用はない。 イ本件売渡し自体について,①確かに大竹市に営業に来ていた業者は他に3社あり,そ 式であれば,まちづくりという観点から比較検討することが可能になるからであり,A市長に裁量権の逸脱・濫用はない。 イ本件売渡し自体について,①確かに大竹市に営業に来ていた業者は他に3社あり,それぞれに公募の書類を届けたが,結局,Dら以外からの応募はなかった,②予定価格を公表すると,予定価格未満の価格でなければ採 算がとれないと判断した企業が応募しないおそれがあり,また,応募金額が公表した金額に近づいてしまうおそれがあった,③入札期間については,過去4度の入札・公募の中で4回目だけが特に短いわけではないし,平成23年12月に開催される市議会本会議で売渡しの議決を得る必要があったから,やむを得ないものだった④事業実施者を迅速に決定する必要があったことから,本件選定委員会に外部委員がいなかったことに理由がある,⑤本件選定委員会の審議において,不安要素も含めて自由な意見も述べられており問題はない,⑥本件売渡しは事業コンペではないため,計画どおりに事業が行われることを調査することは必要がなかった。 本件売渡価格が「適正な対価」でない場合,平成23年12月15日の市議会本会議における本件売渡議決に係る審議は,本件土地売渡価格が「適正な対価」ではないことを前提として行われたものか。 (被告)大竹市議会においては,平成20年以降,議員らが,本件土地の2回の一般競争入札及び3回目の公募が不調に終わったことを認識し,また,本件土地は,不動産鑑定評価額を下回る金額でなければ売却できないであろうことを議論していた。 大竹市議会においては,議員らは,平成23年11月8日の議員全員協議会において本件土地の売却計画を議論し,同年12月8日の議員全員協議会において本件議案について大竹市から事前説明及び資料提供を受けた。その上で,同年1 ,議員らは,平成23年11月8日の議員全員協議会において本件土地の売却計画を議論し,同年12月8日の議員全員協議会において本件議案について大竹市から事前説明及び資料提供を受けた。その上で,同年12月12日の生活環境委員会及び同月15日の市議会本会議において,本件土地の平成23年鑑定評価額が7億1300万円であり,それに対し,本件土地の売払い価格は3億5000万円と約半値であることを明確に認識した上で,その必要性及び妥当性を検討して本件議案を議決している。 (原告ら) 大竹市は,平成23年12月15日の市議会本会議において,3億5000万円は「適正な対価」であると説明しているのであり,「適正な対価」でないが上記価格で売り払う必要があるとは説明していない。 また,本件議案は,本件条例3条による承認を求めるものとして提案されたのであって,それを前提に審議されており,法96条1項6号の議決を求めるものとして提案されていない。 鑑定評価額については,平成23年12月12日,生活環境委員会で,証人Cから,口頭で,本件土地の平成23年の鑑定評価額は7億円であるとの説明が一回あったのみである。 本件決算が市議会本会議で認定されたことは,法96条1項6号,同237条2項の要件の追認に当たるか。 (被告)平成24年12月14日の市議会本会議において,議員らは,本件土地の適正な対価が平成23年鑑定評価額の7億1300万円であった場合には,本件土地売渡価格(3億5000万円)が法96条1項6号,法237条2項との関係で問題になることを明確に認識した上で,質疑・討論を行い,その結果,本件売渡しによる収入3億5000万円を含めて本件決算を認定した。 つまり,大竹市議会は,同日,本件土地売渡しについて,法9 の関係で問題になることを明確に認識した上で,質疑・討論を行い,その結果,本件売渡しによる収入3億5000万円を含めて本件決算を認定した。 つまり,大竹市議会は,同日,本件土地売渡しについて,法96条1項6号,同237条2項の要件について追認した。 (原告ら)A市長は,一貫して「適正な対価」であると説明しているのであり,平成24年12月14日の市議会本会議においても「適正な対価」でないことを前提とする提案及び審議はなされていない。 したがって,市議会が本件決算を認定しても,法96条1項6号,同237条2項の要件を追認したことにはならない。 本件売渡しが違法である場合,これについてA市長に責任(故意・過失)があるか。 (原告ら)A市長は,当初,大竹市職員から鑑定評価額でないと売却できない旨の申し出を受けており,本件売渡しが法違反であることを認識していたから,故意又は過失がある。 (被告)A市長は,4回目の公募に先立って,予定価格の金額や計算方法をB副市長や証人Cに指示していない。 A市長は,検討を重ねて,所定の手続にのっとって本件事業の実施者を選定し,本件土地を売却したのであるから,職務上の義務に違反していない。 本件売渡しが違法である場合,B副市長は本件売渡しをA市長と共同して行ったか。また,B副市長に故意又は過失があるか。 (原告ら)B副市長は,A市長が不動産鑑定評価額より低い価格で本件土地を売却しようとしているのを知りながら,売却を再考するよう諫言しなかった。また,B副市長は,A市長と予定価格を決めるなどしているから,本件売渡しについてA市長と共謀して行った。 (被告)副市長は,市長から指揮監督を受け(法154条),市長を補佐する権限はあるが(法1 副市長は,A市長と予定価格を決めるなどしているから,本件売渡しについてA市長と共謀して行った。 (被告)副市長は,市長から指揮監督を受け(法154条),市長を補佐する権限はあるが(法167条1項),市長の職務執行を阻止する権限や意見具申をする権限はない。また,B副市長は本件売渡価格の決定について権限はなく,A市長と共謀して行うとの意味が不明である。 大竹市に生じた損害はいくらか。 (原告ら)市不動産評価審議会により定められた評価額と本件売渡しの代金3億5 000万円との差額は3億6300万円であり,同価額が損害である。 (被告)本件土地を不動産鑑定評価額で売却することは,過去にはできなかったし,将来的にもできない上,今後,さらに地価が下落する可能もある。 他方で,本件売渡しにより,大竹市は固定資産税等の税収が増加し,借入れの支払利息や本件土地の維持管理費といった経費が減少するなどの大きな利益が見込まれるから,大竹市に損害はない。 第3 争点に対する判断 について上記第2の1のとおり,原告らは,本件監査請求において,本件売渡し及び契約の履行としての所有権移転登記手続が違法であることを理由としているところ,これは,本件売渡し及びこれに基づく契約の履行,並びにこれに関与した職員らの行為に係る損害賠償請求権の履行を怠っていることを違法な財務会計行為と主張し,監査請求の対象としているものと解される。本件訴訟において,原告らは,被告がB副市長に対する損害賠償請求を怠っていることを違法な財務会計行為と主張しているのであり,上記のとおり,原告らはこれについて本件監査請求を経ていることとなる。 したがって,被告の本案前の答弁は理由がない。 末尾に掲げた証拠及び弁論の全 な財務会計行為と主張しているのであり,上記のとおり,原告らはこれについて本件監査請求を経ていることとなる。 したがって,被告の本案前の答弁は理由がない。 末尾に掲げた証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア本件土地について3回目の公募を行うに当たり,平成22年9月に開催された市不動産評価審議会においては,同審議会は適正な評価を審議する場であるが,審議した評価額は,市長が決定する最低価格と一致しないことを前提に審議されている(甲24の1,24の2)。 イ本件土地について4回目の公募を行うに当たり,平成23年11月に開催された市不動産評価審議会においては,本件土地の売却が現実に可能か 否かは考慮しないこととし,あくまでも市長が決定する価格の参考意見として,平成23年鑑定評価額の適否が審議された。そして,平成23年鑑定評価額を変更する根拠がないため,同評価額が適正であるという意見が出されていた(甲2)。 ウ証人Cは,平成22年8月頃,本件土地を早期に売却するため,2回の公募が不調に終わった原因を検討していた。そして,3回目の公募に先立ち,平成20年鑑定(比準法(取引事例比較法)による価格を3割,開発法による価格を7割として評価額を調整している。)(乙3)について,①本件土地は大規模であり,近隣において類似する適切な取引事例が存在しないにもかかわらず,3割とはいえ比準法(取引事例比較法)を利用することに合理性がない,②本件土地は造成前の土地であり,開発法は,造成後の宅地分譲価格を基礎として計算されるが,事業終了まで長期間が見込まれるにもかかわらず,その間の地価の下落による宅地分譲価格の下落を想定していないことに合理性はないという結論に達した(証人C,乙39)。 エ証人Cは,上記ウの結論に ,事業終了まで長期間が見込まれるにもかかわらず,その間の地価の下落による宅地分譲価格の下落を想定していないことに合理性はないという結論に達した(証人C,乙39)。 エ証人Cは,上記ウの結論について平成20年鑑定を行った不動産鑑定士に確認したところ,不動産鑑定評価基準に従うべき不動産鑑定士としては,証人Cの考える点を考慮して鑑定することは困難であるが,指摘の考え方はありうるとの回答を得た。 そこで,証人Cは,3回目の公募に係る本件土地の予定価格を算出する際,比準法を利用せず開発法のみを使用することとし,かつ,地価が下落傾向にあることから,今後,5年間の地価下落を見込むなどして,平成20年鑑定の内容の一部を修正して,予定価格とすべき額を算出した。 具体的には,①平成20年鑑定の評価額に,同年から平成22年までの大竹市fg丁目の土地の公示価格(以下「fg丁目の公示価格」という。)の前年比変化率を乗じて地価の変化を計算して,平成22年における販売 価格を求め,②大竹市内部での売渡しの手続や,買主における事業の準備の期間(価格評価時点から約9か月)と,予想される販売期間の半分(48か月)を足すと57か月(約5年)となることから,5年後の販売価格を基準として開発法を適用することとし,③平成17年から平成22年までのfg丁目の公示価格の1年当たり変化率(平均値)4.1%を求め,これを上記①の平成22年度における販売価格に5回乗じて,5年後の販売価格を算出した。そして,5年後の販売価格を基礎として,有効宅地率を65%(平成20年鑑定では71%)とし,下水道負担金,分合筆手数料及び集会所建設費を造成工事費に加えたほかは,平成20年鑑定と同じ計算を行って,開発法に基づき,本件土地全体で4億5657万1166円という価格を算出した。 1%)とし,下水道負担金,分合筆手数料及び集会所建設費を造成工事費に加えたほかは,平成20年鑑定と同じ計算を行って,開発法に基づき,本件土地全体で4億5657万1166円という価格を算出した。 A市長は,平成22年10月頃,上記価格を本件土地の3回目の公募に係る予定価格とすることについて了解した(証人C,乙3,18,19,39)。 オ証人Cは,本件土地の4回目の公募に際し,基本的には3回目と同じ方法で予定価格を算出することとした。そこで,改めて本件土地について不動産鑑定評価(平成23年鑑定)を行い,取得した不動産鑑定評価書を利用して,3回目と概ね同様の計算方法を行った上で,本件予定価格を算出した。 具体的には,平成23年鑑定により同年の販売価格を求め,これに価格変化率4.6%(平成18年から平成23年までのfg丁目の公示価格の1年当たり変化率)を5回乗じて,5年後の販売価格を算出した。そして,改めて下水道分担金,分合筆手数料及び集会所建設費を算出して造成工事費に加え,有効宅地率を平成23年鑑定どおりの71%としたほかは,3回目と同様の計算を行って,開発法に基づき,本件土地全体で3億3777万8342円という価格を算出した。 A市長は,平成23年11月18日,上記価格を予定価格とすることを了解した(証人C,甲1,3,乙39) ア法237条2項が「適正な対価なくして・・・譲渡してはならない」と規定している趣旨は,適正な対価によらずに普通地方公共団体の財産を譲渡すると,地方公共団体に損失が生じるおそれがあり,又は,特定の者の利益のために財政の運営がゆがめられるおそれがあるため,それを防止しようとする趣旨であると解される(平成15年(行ヒ)第231号同17年11月17日最高裁第1小法廷判決・集民218号4 ,特定の者の利益のために財政の運営がゆがめられるおそれがあるため,それを防止しようとする趣旨であると解される(平成15年(行ヒ)第231号同17年11月17日最高裁第1小法廷判決・集民218号459頁も同趣旨)。ここでいう「適正な対価」とは,当該財産の有する市場価格,すなわち時価を指すと解される。 そうすると,当該財産について売買契約が成立する価格,すなわち,売却の公示後,一定期間内の最高の入札価格又は応募者の提示する価格は常に時価となるとも考えられる。しかしながら,不動産市場は供給量は変わらない一方で,社会経済情勢やその地域の状況によって需要が大きく変化するから,特定の不動産をとりまく状況が常に合理的な市場であるとは限らないため,低い価格で入札等が行われた場合に偶然売買契約が成立してしまうと,地方公共団体が損失を受けかねない。 したがって,地方公共団体がその所有する不動産を売却する際は,通常,最低売却価格又は予定価格(最低価格)を設定し,その価格以上の複数の入札又は応募者の中から売却の相手方を選択することとなる。この最低売却価格又は予定価格は,一般的には,不動産鑑定評価額又はこれを受けた大竹市不動産評価審議会のような委員会や諮問機関の意見によっていると解される。 本件の場合も,1回目の入札は不動産鑑定評価額を最低売却価格として行われ,2回目の入札は最低売却価格を非公開として行われたものの, 同様であった。しかし,いずれも,入札者が現れなかったものである。 イところで,そもそも法が財産の譲渡を「適正な対価」をもって行うことを求めている趣旨が,上記のような弊害を防止しようとするものであること,国有財産(甲10)とは異なり,地方公共団体の所有する財産である不動産については,不動産鑑定評価額をもとに算定すべきとい ことを求めている趣旨が,上記のような弊害を防止しようとするものであること,国有財産(甲10)とは異なり,地方公共団体の所有する財産である不動産については,不動産鑑定評価額をもとに算定すべきという基準が存在しないことからすると,常に最低売却価格又は予定価格を不動産鑑定評価額とする必要はないと考えられる。なぜなら,適正な対価とは市場による価値をいうのであり,評価的な概念であるから,必ずしも一義的に算出され得るものではなく,性質上,一定の幅があり得るものであるところ,不動産鑑定評価額は適正な対価の1つと考えられるが,これと異なる額であっても,また適正な対価の範囲内となることがあり得るからである。 この点,上記のとおり,不動産鑑定士は,平成20年鑑定及び平成23年鑑定について,不動産鑑定評価基準に従って鑑定したことを述べているにすぎず,本件土地の最低売却価格や予定価格としての合理性を主張しているものではないし,大竹市不動産評価審議会は3回目及び4回目の公募に当たって本件土地の評価額として不動産鑑定評価額を採用したものの,市長がその責任において決定する最低売却価格又は予定価格はこれと相違することを前提としているものである。 ウそうすると,市長が,不動産鑑定評価額やこれを前提とした市不動産評価審議会の意見によらないで,これより低い額を,「適正な対価」である最低売却価格又は予定価格として決定することも可能であると解される。 エ本件予定価格は証人Cが算出したものであり,その具体的方法は,上記のとおり,不動産鑑定士による既存の不動産鑑定評価額(平成23年鑑定評価額)をできるだけ利用しながら,比準法を利用しないこととし,また,地価が下落傾向にあったことから,分譲宅地の販売価格とし て現在の価格ではなく5年後の価格を求めたも 額(平成23年鑑定評価額)をできるだけ利用しながら,比準法を利用しないこととし,また,地価が下落傾向にあったことから,分譲宅地の販売価格とし て現在の価格ではなく5年後の価格を求めたものであるところ,平成23年鑑定の鑑定書(甲1)においても比準法の採用事例は質的にやや劣るとされているとおり,場所及び面積について本件土地に類する適切な取引事例が十分にあったとは認められない上,平成17年から平成23年までfg丁目の公示価格が下落し続けていたこと,将来地価が上昇に転じることを予測できるような事情が特に見当たらないこと,公募に応じる事業者らも,造成事業を完成させて区画を完売するまで,ある程度の期間を見込んで収益の予想を立てるはずであることを前提にすれば,証人Cの手法も,それ自体,本件土地の対価を算出するための,1つの合理的な方法であったと評価できる。 また,3回目の公募において応募した1社が提示した希望価格も,当該公募における予定価格を約12.4%下回っていたというのであり,この事実は,3回目の公募における予定価格自体は,結果として,市場による価値として不合理なほど低額とはいえないことをうかがわせる。 そして,4回目の公募においては,改めて不動産鑑定評価額を得て,3回目の公募の際に行ったのと同様の手法により求めた額を本件予定価格としたというのであるから,この金額決定についても合理的であるといえる。 オ原告らは,原則として不動産鑑定評価額が「適正な対価」であると主張し,不動産鑑定士ではない「素人」が算出した評価額をもって適正な対価とすることはできない,また,鑑定と異なる額となる場合は,鑑定の前提事実が誤っていたり,明らかな鑑定手法の誤りが認められたりといった,極めて限定された例外的な場合のみであると主張する。 この点 対価とすることはできない,また,鑑定と異なる額となる場合は,鑑定の前提事実が誤っていたり,明らかな鑑定手法の誤りが認められたりといった,極めて限定された例外的な場合のみであると主張する。 この点,不動産鑑定評価額によらない場合が例外的であるべきとしても,その例外が許容できるかどうかは,法237条2項の趣旨及び不動産鑑定評価の位置づけから判断されるべきであり,不動産鑑定評価が不 動産鑑定評価基準に照らして誤っている場合等の極めて限定された場合のみであるとは認められず,不動産鑑定評価基準によらない場合は当然不動産鑑定士でない者が算出することとなるから,これが許されないとする上記原告らの主張は採用できない。 なお,本件予定価格についてみると,上記エのとおり,証人Cが本件予定価格を算出する過程は合理的である上,本件土地は既に3回の入札及び公募に失敗していたこと,3回目の公募において提示された希望価格が,本件予定価格と同様の方法で算出された額よりもなお低かったことを考慮すると,不動産鑑定評価と異なる額を予定価格又は最低売却価格とすることが許される例外的な場合に該当するというべきである。 また,原告らは,本件予定価格の算出過程について,平成23年鑑定も,開発法で販売収入を求める際の複利現価率の基礎となる「投下資本収益率」において将来の地価の下落を織り込んでいることから,これとは別に5年後までの地価の下落を考慮することは合理的でないという趣旨の主張をする。 しかしながら,平成23年鑑定の鑑定書において,投下資本収益率が,売り急ぎや売れ残りといった事業の不確実性だけでなく,将来の地価の低下を見込んでいることを示す記載(いつ頃,どの程度地価が低下すると予想しているのか等)は見当たらないから,上記原告らの主張は採用できない。 カ りといった事業の不確実性だけでなく,将来の地価の低下を見込んでいることを示す記載(いつ頃,どの程度地価が低下すると予想しているのか等)は見当たらないから,上記原告らの主張は採用できない。 カ以上より,本件予定価格は「相当の対価」として合理的である。 そして,本件土地売渡価格は,公募に応募した唯一の事業者が提示し,本件予定価格を上回っていた希望価格であるから,市場価格であって時価であり,かつ,法237条2項の趣旨を没却するものでもないと評価できる。 したがって,本件売渡しは「適正な対価なくして」なされたものとは認 められない。 末尾に掲げた証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 ア大竹市が4回目の公募に当たって予定価格を公表しなかったのは,プロポーザル方式であるため予定価格より多少低額の応募者であっても他の要素を考慮して売却することがあり得たが,予定価格を公表すると,一般競争入札と同様に考えてこれより低額でなければ採算がとれないと判断した企業が応募しなくなるおそれがあり,また,応募金額が公表した金額に近づくおそれがあったためである(証人C,乙25の2)。 イ本件土地の1回目から4回目までの各入札・公募について,それぞれの公告から受付期間末日までの日数は,1回目の入札については22日間,2回目の入札については20日間,3回目の公募については27日間,4回目の公募については17日間である。 ア原告らは,本件売渡しでプロポーザル方式を選択したことがA市長の裁量権の逸脱・濫用であると主張するが,本件土地の一部のみについての応募も可能とする以上,面積及び購入希望金額が異なる応募者が複数現れることが予想されるところ,そのうちどの応募者に売却すべきかを決定する必要があるため,本件土地の るが,本件土地の一部のみについての応募も可能とする以上,面積及び購入希望金額が異なる応募者が複数現れることが予想されるところ,そのうちどの応募者に売却すべきかを決定する必要があるため,本件土地の売却は「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」(地方自治法施行令167条の2第1項2号)に当たるということができる。 したがって,プロポーザル方式を選択したことは,A市長の裁量権の逸脱・濫用には当たらない。 なお,原告らは,予定価格を公表しなかったことなども主張するところ,これは本件売渡し自体が裁量権の逸脱・濫用に当たるという主張と解されるから,以下で併せて検討する。 イ原告らは,Dらの他に,本件土地の購入を希望する業者がいたと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 ウ原告らは,予定価格を公表しなかったことも不合理であると主張するところ,地方公共団体が財産を売り払う際に予定価格を公表することを義務づける根拠は見当たらない上,上記のとおり,本件においては予定価格を非公表とした合理的な理由があると認められる。 エ原告らは,4回目の公募について入札期間が短期間であったと主張するが,入札の最短期間について定めた規定がないことから直ちに違法とはいえないし,上記のとおり,本件土地に関して4回にわたり行われた入札又は公募の中で,4回目の入札期間は最も短期間ではあるものの,特に不自然なほど短いとは認められない。 オ原告らは,本件選定委員会に外部委員がいないことが違法であると主張するが,違法とする根拠が見当たらない。 カ原告らは,本件選定委員会の審議がもっぱらプレゼンテーションについて行われ,Dらの応募自体に対する疑問が述べられなかったと主張するが,本件選定委員会の委員らが何か疑問を抱くべき事情があったとは認められ 告らは,本件選定委員会の審議がもっぱらプレゼンテーションについて行われ,Dらの応募自体に対する疑問が述べられなかったと主張するが,本件選定委員会の委員らが何か疑問を抱くべき事情があったとは認められないから,原告らの主張する点は特に不合理とはいえない。 キ原告らは,本件選定委員会が,Dらの事業計画の実現可能性について不安を抱きながらもあえて調査を行わなかったと主張するところ,証拠(甲4)によると,本件選定委員会において,事業計画における経費や造成工事費の現実性,具体的な工程の見込みについては審議されている上,特別養護老人ホームや保育施設等の施設は,介護保険計画等との関係で申請や認可を行う必要があり,平成23年11月の時点では実現可能性を調査することも困難であったことが認められるから,これ以上に何らかの調査の必要性があったことはうかがえず,違法とはいえない。 ク原告らは,本件売渡しについては事前に大竹市とDらとの間で秘密裏に 協議が行われ,Dらに対して本件土地を売却することが内定していたものであり,予定価格を公表しなかったり,入札期間を短期間としたり,本件選定委員会に外部委員を入れなかったりしたのは,他の業者が応募して選定されることを排除するためであると主張していると解される。 しかしながら,上記イからキまでのとおり,原告らの主張する事情はいずれも不合理とはいえず,大竹市とDらとの事前の協議をうかがわせるものではなく,その他Dらに対して売却することが事前に内定していたことを認めるに足る証拠がないから,原告らの上記主張は採用できない。 以上より,本件売渡しについて,A市長に裁量権の逸脱・濫用があったとは認められない。 仮に,本件土地売渡価格が,適正な対価ではなかった場合について検討する。 末尾に掲げた証拠 い。 以上より,本件売渡しについて,A市長に裁量権の逸脱・濫用があったとは認められない。 仮に,本件土地売渡価格が,適正な対価ではなかった場合について検討する。 末尾に掲げた証拠及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 ア大竹市は,平成23年12月12日,市生活環境委員会において,本件土地売渡価格は適正な対価であるという立場であったものの,本件土地の不動産鑑定評価額は7億円であり,予定価格は3億3777万8342円,売渡し価格は3億5000万円となる予定であることをそれぞれ説明し,生活環境委員会は,それを前提として審議した(甲7)。 イ大竹市議会は,平成23年12月15日に開催された大竹市議会の本会議において,そこでは,不動産鑑定評価額が1坪当たり3万8000円であるが,本件土地売渡価格は,1坪当たり1万8000円であるとの前提で討論がなされた(甲8)。 上記を前提に検討する。 「地方自治法237条2項は,条例又は議会の議決による場合でなければ,普通地方公共団体の財産を適正な対価なくして譲渡し,又は貸し付けてはならない旨規定している。一方96条1項6号は,条例で定める場合を除くほ か,財産を適正な対価なくして譲渡し,又は貸し付けることを議会の議決事項として定めている。これらの規定は,適正な対価によらずに普通地方公共団体の財産の譲渡等を行うことを無制限に許すとすると,当該普通地方公共団体に多大の損失が生ずるおそれがあるのみならず,特定の者の利益のために財政の運営がゆがめられるおそれもあるため,条例による場合のほかは,適正な対価によらずに財産の譲渡等を行う必要性と妥当性を議会において審議させ,当該譲渡等を行うかどうかと議会の判断にゆだねることとしたものである。このような同法237条2項等の規定 る場合のほかは,適正な対価によらずに財産の譲渡等を行う必要性と妥当性を議会において審議させ,当該譲渡等を行うかどうかと議会の判断にゆだねることとしたものである。このような同法237条2項等の規定の趣旨にかんがみれば,同項の議会の議決があったというためには,当該譲渡等が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上当該譲渡等を行うことを認める趣旨の議決がされたことを要するというべきである。議会において当該譲渡等の対価の妥当性について審議がされた上当該譲渡等を行うことを認める趣旨の議決がされたというだけでは,当該譲渡等が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上議決がされたということはできない」(前記最高裁判決参照)。 原告らは,本件土地の適正な対価は平成23年鑑定評価額であると主張するところ,本件議案の審議は,上記のとおり,本件土地売渡価格が平成23年鑑定評価額と異なることを前提として行われ,その上で本件売渡議決がされているものである。さらに,議案の提出者が,法96条1項6号に基づく議案であることを明示する必要があるかどうかについて検討すると,同号に基づく議案として提出されることは,議案の提出者が当該議案による売却価格を「適正な対価」と評価していないことを表すものであるが,この評価について明示がなくとも,議会において不動産鑑定評価額によらない価格であることを前提として審議されていれば,法237条2項等の規定の趣旨を満たすと考えられるから,上記の明示は必要ないと解される。 そうすると,本件議案の提出者は,法96条1項6号に基づく議案である ことを明示していないが,原告らの主張するとおり本件土地の適正な対価を平成23年鑑定評価額とした場合には,市議会本会議において本件土地売渡価格が適正な対 96条1項6号に基づく議案である ことを明示していないが,原告らの主張するとおり本件土地の適正な対価を平成23年鑑定評価額とした場合には,市議会本会議において本件土地売渡価格が適正な対価ではないことを前提として審議されているということができるから,本件売渡議決は,法96条1項6号の議決に該当するというべきである。 仮に,本件売渡議決が法96条1項6号の議決に該当しない場合について検討する。 上記第2の1のとおり,決算特別委員会及び市議会本会議における本件決算の審議の際,本件売渡しにつき,適正な対価によらないものであるかどうか,法96条1項6号の議決があったといえるかどうかにつき審議がされ,決算特別委員会では不認定となったものの,本会議では認定された。 上記事実によれば,大竹市議会は,本件売渡しが適正な対価によらないものであるという問題提起を受けて,これが適正な対価によるか否か,よらない場合には議会の議決を要するがそれを得ていたかどうかが問題となることを明確に認識した上で審議を行い,改めて決算として認定する本件決算議決を行ったというのであるから,本件決算議決は,法96条1項6号の議決が事後に行われたと評価することができ,大竹市議会の追認に当たる。 6 以上から,その余の争点について判断するまでもなく,A市長及びB副市長が大竹市に対する損害賠償責任を負うとは認められない。 第4 結論以上のとおりであり,原告らの請求はいずれも理由がないから,主文のとおり棄却する。 広島地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官小西洋 裁判官榎本康浩 裁判官内藤陽子 裁判長 裁判官小西洋 裁判官榎本康浩 裁判官内藤陽子 別紙物件目録(当時の地番,地目である。) 所在大竹市a町b字cd番e外地目雑種地面積 62,000.43㎡以上

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