昭和29(ラ)56 強制執行停止申請事件

裁判年月日・裁判所
昭和29年5月25日 福岡高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原決定を取消す。      抗告人において保証として金五万円を供託するときは、相手方の抗告人 に対する福岡地方裁判所昭和二十五年(ワ)第三二九号家屋明渡請求事件の確定判 決に基

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判決文本文2,531 文字)

主文 原決定を取消す。 抗告人において保証として金五万円を供託するときは、相手方の抗告人に対する福岡地方裁判所昭和二十五年(ワ)第三二九号家屋明渡請求事件の確定判決に基く強制執行は、両名間の同裁判所昭和二十九年(ワ)第六三五号請求異議事件の第一審判決があるまでこれを停止する。 理由 本件抗告事由の要旨は、抗告人は本件家屋の賃借人であつたAより右家屋に対する賃借権とともに本件必要費及び有益費の償還請求権及び留置権を譲受け、Aは本件強制執行の債務名義たる確定判決に係る訴訟事件の控訴審の口頭弁論終結後である昭和二十八年十月三日相手方に対し右償還請求権及び留置権譲渡の通知をしたので、抗告人は右留置権の取得を相手方に対抗することを得るに至つたものである。 原決定は抗告人の本件家屋の占有は不法であると認定し抗告人の本件強制執行停止申請を却下したけれども、抗告人は前示のとおりAより賃借権とともに償還請求権及び留置権の譲渡を受けて該家屋を占有するに至つたものであつて、賃借権の譲渡について相手方の承諾がなくても抗告人の右占有を不法ということはできない。従つて原決定は不当であるから本抗告に及んだものである、というのである。 よつて按ずるに、原決定は「かりに申請人(抗告人)の主張が真実であり、申請人は従前の本件家屋の賃借人たるAから、所有者たる被申請人(相手方)に対する右家屋の改造等により生じた必要費及び有益費の償還請求並びにこれが弁済を受けるまでの右家屋の留置権を譲受けた上、同家屋に入居しこれを占有するに至つたとしても、少くとも前記家屋明渡訴訟事件の事実審の口頭弁論終結時において右占有が不法のものであり、申請人において被申請人に対し右留置権を主張し得なかつたことは、右訴訟事件の確定判決の既判力の効果とし しても、少くとも前記家屋明渡訴訟事件の事実審の口頭弁論終結時において右占有が不法のものであり、申請人において被申請人に対し右留置権を主張し得なかつたことは、右訴訟事件の確定判決の既判力の効果としてもとより否定し得ぬところである。それ故右口頭弁論終結後において前記償還請求権の譲渡につき対抗要件を具えたとしても、これを理由として申請人が本件家屋を留置し得べき限りでないことは、民法第二百九十五条第二項により明白であるから、申請人が本件請求異議のため主張した事情は法律上理由がないと断ずべきものである」として、抗告人の本件執行停止申請を却下したのである。 しかし甲第四号証の判決正本によれば、本件家屋明渡に関する第二審判決においては、抗告人は本件家屋の賃借人であつたAから該家屋に関する必要費及び有益費の償還請求権及び賃借権を譲受けて本件家屋を占有するに至つたもので且つその譲受に伴いAの有した本件家屋に対する留置権をも譲受けたものと認むべきであるとし、ただその譲渡を相手方において承諾し又は相手方に譲渡の通知をした事実が認められないから相手方に対し留置権を主張し得ないため、相手方に対する関係においては抗告人の本件家屋の占有は不法であるという趣旨の下に、抗告人に該家屋の明渡を命じたこと明である。 従つてこの判決は家屋明渡の請求権について既判力を有することは勿論であるけれども、抗告人が抗弁として主張した留置権の存否、従つて又その留置権譲渡のためになされた占有移転が不法であるか否かについて既判力を有するものではなく、もしその訴訟の口頭弁論終結後に抗告人主張のような償還請求権譲渡の通知がなされたとすれば、抗告人はその償還請求権及びこれとともになされえ留置権の譲渡を以て相手方に対抗することができるものといわなければならない。もつとも抗告人は賃借権とともに うな償還請求権譲渡の通知がなされたとすれば、抗告人はその償還請求権及びこれとともになされえ留置権の譲渡を以て相手方に対抗することができるものといわなければならない。もつとも抗告人は賃借権とともにこれらの権利を譲受けて本件家屋を占有するに至つたというのであつて、賃借権の譲渡については賃貸人たる相手方の承諾がない限りその譲渡を相手方に対抗することができないから、賃借権に基き本件家屋を占有することはもとより不法であるけれども、賃借権は賃借物を使用収益することのできる権利であるに反し、留置権は単に債務を弁済するまでその物を占有する権利に過ぎないから、留置権の譲渡については債務者の承諾を要しないこと勿論であつて、ただ留置権は被担保債権とともに譲渡することを要するため、被担保債権の譲渡につき対抗要件を具備しなければ留<要旨>置権の譲渡も債務者に対抗し得ないに過ぎない。従つて留置権の譲渡によつて留置物の占有の移転を受けこれ</要旨>を占有することは民法第二百九十五条第二項の意義における不法の占有とはいえないから、その占有移転当時債務者の承諾がなかつたとしても、その後被担保債権の譲渡について譲渡通知がなされた以上は、譲受人は適法に留置権をも主張し得るものといわなければならない。従つて抗告人は前示確定判決に係る口頭弁論終結後留置権につき対抗力を生じたことを以て該確定判決に対し請求異議の訴を提供し得ること勿論であつて、原決定は以上の点について法律の解釈を誤つた嫌がある。 ところで抗告人提出の本件証拠によれば、抗告人がAより本件償還請求権の譲渡を受けこれに伴い本件留置権をも譲渡を受けて本件家屋を占有するに至つたこと、及び右確定判決後右償還請求権譲渡について抗告人主張の如くAより相手方に対し譲渡通知のなされたことが一応認められる。従つて前段説明の理由に照し 件留置権をも譲渡を受けて本件家屋を占有するに至つたこと、及び右確定判決後右償還請求権譲渡について抗告人主張の如くAより相手方に対し譲渡通知のなされたことが一応認められる。従つて前段説明の理由に照し抗告人は右留置権に基き本件確定判決に基く相手方の家屋明渡の請求に対し請求異議の訴を提起し本件強制執行の停止を申請したのは相当であるから、原決定を取消した上主文のとおり決定する。 (裁判長判事森静雄判事竹下利之右衛門判事高次三吉)

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