平成22(ワ)13704 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年3月8日 東京地方裁判所
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判決文本文19,751 文字)

平成22年(ワ)第13704号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日平成25年1月30日判決東京都新宿区〈以下略〉原告 X同訴訟代理人弁護士赤井文彌同笹浪恒弘同藤川和之同齊藤貴一東京都中央区〈以下略〉被告株式会社チューン同訴訟代理人弁護士伊藤芳朗同田代奈美 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,200万円及びこれに対する平成18年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,インターネット上のアドレス〈略〉において開設するウェブサイトにおける別紙〈略〉記載の一切の表示を抹消せよ。 第2 事案の概要 1 本件は,「Aクリニック」という名称の診療所(以下「本件クリニック」という。)の開設者である原告が,本件クリニックに関する情報を記載したウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)を運営する被告に対し,被告 による本件ウェブサイトの運営が原告のプライバシー,肖像権,氏名権等の人格権及び本件クリニックに係る業務遂行権を侵害する不法行為であり,また,本件ウェブサイト上に虚偽の事実を表示していることが不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項14号の不正競争に該当すると主張して,人格権若しくは財産権(業務遂行権)に基づく差止請求権又は不競法3条の差止請求権に基づき 実を表示していることが不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項14号の不正競争に該当すると主張して,人格権若しくは財産権(業務遂行権)に基づく差止請求権又は不競法3条の差止請求権に基づき,本件ウェブサイト上の一切の表示の抹消を求めるとともに,不法行為又は不競法5条2項に基づく財産的損害の賠償として150万円(一部請求),不法行為に基づく慰謝料請求として50万円及びこれらに対する不法行為の日(被告が本件ウェブサイトに関する権限を喪失したとされる平成18年9月27日の翌日)から支払済みまで民法所定の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 争いのない事実等(証拠略)(1) 当事者等ア原告原告は医師であり,本件クリニックの開設者である。 イ被告被告は,ホームページの作成等を主な業とする株式会社であり,株式会社メディライン(以下「メディライン」という。)から委託を受けて,インターネット上のアドレス(略)において,「Aクリニック」の名称を標榜するウェブサイト(本件ウェブサイト)を開設している。 ウメディラインメディラインは,医薬品,医薬部外品,化粧品の販売並びに輸出入及び輸出入代行業務,医療機器の販売・リース・レンタル等,経営コンサルティング業務,経理事務代行業務,労働者派遣事業などを目的とする株式会社であり,その代表取締役は,Zである。なお,メディラインの商号は,平成20年3月25日以前は,「有限会社スペクトラム」であったが,同 日付けで「株式会社スペクトラム」に変更され,さらに,同年8月29日付けで現商号に変更された。 エ株式会社ディーピーシー株式会社ディーピーシー(以下「DPC」という。)は,医薬品,医薬部外品,化粧品の販売並 に変更され,さらに,同年8月29日付けで現商号に変更された。 エ株式会社ディーピーシー株式会社ディーピーシー(以下「DPC」という。)は,医薬品,医薬部外品,化粧品の販売並びに輸出入及び輸出入代行業務,医療機器の販売・リース・レンタル等,経営コンサルティング業務などを目的とする株式会社であり,その代表取締役は,メディラインと同じくZである。 (2) 本件クリニック本件クリニックは,平成17年12月14日,東京都千代田区(以下略)に,「Aクリニック」との名称で開設された,外科・心臓血管外科を診療科目として標榜する診療所であり,その開設の際に保健所長宛てに提出された診療所開設届では,本件クリニックの開設者及び管理者は,いずれも原告とされていた。その後,本件クリニックは,平成21年10月29日に,東京都千代田区(以下略)に移転したが,その際に提出された診療所開設届でも,本件クリニックの管理者は原告とされていた。 本件クリニックは,下肢静脈瘤の治療に特化した専門クリニックであり,原告がその院長を務めている。 (3) 本件契約原告とメディライン(ただし,当時の商号は「有限会社スペクトラム」)は,平成17年10月頃,本件クリニックの開設に当たり,主にメディラインが本件クリニックの開設運営に必要な経費等を支出負担(出資)し,原告が医療知識・技術等を提供(出資)し,共に本件クリニックを営むことを約する内容の契約(以下「本件契約」という。)を締結した(なお,本件契約の当事者に,原告及びメディラインのほかに,DPCが含まれるかについては,当事者間に争いがある。)。 本件契約に関連し,原告及びメディラインが作成した平成17年10月1 2日付けの「協業覚書」(以下「本件覚書 ンのほかに,DPCが含まれるかについては,当事者間に争いがある。)。 本件契約に関連し,原告及びメディラインが作成した平成17年10月1 2日付けの「協業覚書」(以下「本件覚書」という。)には,原告とメディラインが,原告の行う医院の運営とその運営サポートであるメディラインの業務との協業について合意に達したこと(前書き),本件覚書の有効期間を平成17年10月12日から平成27年12月31日までとすること(第1条),原告及びメディラインは,互いの利益のために,原告がメディライン以外の者から同種サービスの提供を受けないこと(第2条),原告及びメディラインは,互いの業務の状況等を口頭又は書面で遅滞なく報告し,業務の遂行に支障を生じるおそれのある事故の発生を知った場合は,その旨を直ちに報告し,今後の対応方針についての協議を行うこと(第4条),原告及びメディラインは,互いの事業において獲得した利潤について,毎年末に報告し,その利潤は別途定めた計算方法により公平に分配すること(第5条),原告及びメディラインは,協業の成功に向けて相互に協力して必要な手続を誠実に進め,早期に両者間の各種契約の締結を行うものとすること(第6条)などが記載されていた。 (4) 本件ウェブサイトの開設等本件クリニックの開設に当たり,本件契約に係る契約関係に基づいて,メディラインは,原告の了解を得て,被告に対して,本件クリニックのホームページの制作及び運営を委託した。被告は,メディラインからの委託を受けて,本件ウェブサイトを制作・開設し,以後これを運営している。なお,本件ウェブページの制作及び更新に当たっては,原告も,本件クリニックの紹介や医学的知識に関する記事などのコンテンツの作成に積極的に関わった。 (5) 原告による本件契約の を運営している。なお,本件ウェブページの制作及び更新に当たっては,原告も,本件クリニックの紹介や医学的知識に関する記事などのコンテンツの作成に積極的に関わった。 (5) 原告による本件契約の解除の申入れ等平成18年9月27日に原告がZに対して,本件契約を解除したいと申し入れたことを端緒として,本件クリニックに関する原告とメディラインとの協力関係は破綻した。原告は,同年10月11日に,Zから本件クリニックに係る銀行預金通帳,診療所開設書類及び不動産契約書等の経営関係書類を 受領するなどし,以後,メディラインの関与なしに本件クリニックを運営するようになった。 (6) その後の経緯等ア本件ウェブサイトについて原告とメディラインとの協力関係が破綻した後,本件クリニックに関しては,その所在地,所属医師及び診療時間の変更,来院者数及び手術件数(実績)の増加などの種々の変化があったが,被告が,本件ウェブサイトの管理や更新に関する原告からの要望に応じなかったことから,本件訴訟の提起時,本件ウェブサイトには,本件クリニックに関する上記情報等について事実と異なる内容が掲載されている状態であった。また,被告は,原告から本件ウェブサイトの削除の要求を受けたが,本件ウェブサイトの運営委託をメディラインから受けていることを理由に,原告の求めを拒絶した。 ただし,本件訴訟係属中の平成24年2月頃,被告は,本件ウェブサイト上から,本件クリニックの所在地,勤務していない医師名など,一部の記載を削除し,その結果,本件ウェブサイトの表示内容は,別紙(略)記載のとおりとなった。 一方,原告は,平成18年10月29日に「***」のドメインを取得し,「***」のアドレス上に,本件クリニックの名称を標榜するウェブ イトの表示内容は,別紙(略)記載のとおりとなった。 一方,原告は,平成18年10月29日に「***」のドメインを取得し,「***」のアドレス上に,本件クリニックの名称を標榜するウェブページを新たに開設し,以後,これを運営している。 イ Bクリニックの開設等Z及び医師であるWは,平成19年9月11日,医療法人社団スペクトラム(以下「社団スペクトラム」という。)を設立し,Wが理事長,Zが理事に就任するとともに,本件クリニックの当時の所在地から1キロメートルほど離れた場所に「Bクリニック」という名称の診療所(以下「訴外クリニック」という。)を開設し,以後これを経営している。なお,同ク リニックは,本件クリニックと同様,下肢静脈瘤の専門クリニックである。 また,被告代表者は,平成20年1月15日以降,社団スペクトラムの理事を務めている。 ウ別件訴訟についてメディラインは,平成22年6月頃,原告に対し,3億0918万8425円及びその遅延損害金の支払を求める訴訟(以下「別件訴訟」という。)を提起した。別件訴訟において,メディラインは,原告に対し,本件契約に基づく利益分配請求として,本件クリニック開設後4年間の本件クリニックの利益の2分の1に当たる1億4793万8425円の支払を求めるとともに,組合員たる原告が本件契約に基づいて負担する,下肢静脈瘤専門クリニックを全国展開すべき債務の不履行を理由とする損害賠償請求として,1億6125万円の支払を求めている。 なお,別件訴訟において,原告は,本件契約が原告とメディラインとの組合契約又は組合類似の契約であるが,DPCはその当事者でないこと,本件クリニックの利益は,原告とメディラインとで折半するべきではなく,各自の出資割合に応じて利益 ,本件契約が原告とメディラインとの組合契約又は組合類似の契約であるが,DPCはその当事者でないこと,本件クリニックの利益は,原告とメディラインとで折半するべきではなく,各自の出資割合に応じて利益分配(民法674条1項)するべきこと,メディラインが本件契約に基づく出資義務を果たしていないことなどを主張した。 3 争点(1) 被告による本件ウェブサイトの運営が原告に対する不法行為を構成するか(2) 被告による本件ウェブサイトの運営が不競法2条1項14号の不正競争に当たるか(3) 本件ウェブサイトの表示の抹消請求の可否(4) 損害の有無及びその額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(被告による本件ウェブサイトの運営が原告に対する不法行為を構成 するか)について〔原告の主張〕(1) 被告は,何らの権限もないのに,本件ウェブサイトに,原告名義で,原告の個人情報(氏名,写真,略歴等)や本件クリニックの業務情報等を掲載し,原告からの削除要求にもかかわらず,これを公開し続けている。しかも,本件ウェブサイトに掲載された内容は,閲覧者をして,本件ウェブサイトが原告及び本件クリニックのホームページと誤信させるものとなっている上,本件クリニックの所在地,連絡先,診療時間,スタッフ,手術実績等について誤った情報を提供することで,原告の本件クリニックの業務を妨害し,かつ原告の名誉・信用等を著しく毀損する状況を作出している。 したがって,被告が本件ウェブサイトを削除せずに,これを運営し続ける行為は,所有権ないし占有権等の財産権行使の一内容であるところの原告の業務遂行権を侵害し,また,本件クリニックこと原告のプライバシー,肖像権,氏名権等の人格権を侵害するものである。 なお,被告は,本件訴訟係属中に,本件ウェブ の財産権行使の一内容であるところの原告の業務遂行権を侵害し,また,本件クリニックこと原告のプライバシー,肖像権,氏名権等の人格権を侵害するものである。 なお,被告は,本件訴訟係属中に,本件ウェブサイト上の事実と異なる記載の一部を削除したが,その削除はごく一部であり,かつ不完全,中途半端なものにとどまっている。原告の個人情報が本件ウェブサイト上で不本意な形で全世界に発信されることは,原告の自己情報コントロール権の侵害となり,また,現在の運営状況が十分に反映されず,原告がメール相談に応じることもできないような不完全なウェブサイトの存在は,本件クリニックの営業に大きな支障をもたらし,本件クリニックの信頼を失墜させている。よって,仮に本件ウェブサイトに虚偽の記載がないとしても,本件ウェブサイトの存在自体が,原告の権利を侵害している。 (2) 確かに,メディラインは,本件契約に基づく契約関係の下で,被告に対して,本件ウェブサイトの制作及び運営を委託し,原告も,当初は,被告による本件ウェブサイトの運営につき了解していたが,原告は,平成18年9月 27日,メディラインの債務不履行を理由に本件契約を解除したから,被告は,この時点で,メディラインの有していた権限に基づいて原告名義で原告や本件クリニックに関する各種情報を公開する権限を失った。 被告による本件ウェブサイトの運営により,原告は,人格権及び財産権という排他的な絶対権を侵害されており,一方,被告は,本件ウェブサイトを削除することが極めて容易であり,削除することにつき何らの不利益がないにもかかわらず,原告からの再三の削除要求を無視して,本件ウェブサイトの公開を継続しているのであるから,このような被告の行為は,悪質であり,違法性が顕著である。 また,Z及び被告代表者 いにもかかわらず,原告からの再三の削除要求を無視して,本件ウェブサイトの公開を継続しているのであるから,このような被告の行為は,悪質であり,違法性が顕著である。 また,Z及び被告代表者は,社団スペクトラムの理事に就任し,本件クリニックの近くに,競合する訴外クリニックを開設して運営しているところ,被告が本件ウェブサイトを放置しているのは,本件クリニックの業務を妨害するためである。 (3) 被告の主張についてア本件契約は,原告とメディラインとの間で締結した本件覚書に基づき,主にメディラインが開設運営に必要な経費等を支出負担(出資)し,原告が医療知識・技術を提供(出資)して,共に本件クリニックを営むことを約した組合契約又は組合類似の契約であったが(以下,本件契約に基づき組合又は組合類似のものとして成立した団体を「本件団体」という。),被告は,これを前提に,被告が本件団体から委託を受けて,本件ウェブサイトを制作し,これを運営してきたのであり,その当時,原告もそれが本件団体の業務の一環として行われることを了解していたのであるから,被告が本件ウェブサイトを運営することによって,原告個人の権利が侵害されることはなく,被告の行為に違法性はない旨主張する。 しかし,原告は,メディラインが本件契約に基づく出資義務を怠ったことを理由として,債務不履行により本件契約を解除し,あるいは,本件団 体からのメディラインの除名,原告の脱退又は本件団体の解散によって,本件契約は既に解消されているから,被告の主張は失当である。 また,仮に本件契約が解消されておらず,本件団体が現存するとしても,本件ウェブサイトは,本件クリニックこと原告についての虚偽の情報を掲載し,原告の利益に反するものであるから,被告が本件ウェブサイトを放 た,仮に本件契約が解消されておらず,本件団体が現存するとしても,本件ウェブサイトは,本件クリニックこと原告についての虚偽の情報を掲載し,原告の利益に反するものであるから,被告が本件ウェブサイトを放置する行為は,条理上の作為義務に違反するものであり,しかも,被告は,現在,実質的にメディラインが本件クリニックの経営から撤退し,原告のみが実質的な経営を行っており,メディラインが本件ウェブサイトの放置により原告の権利を侵害していることを知悉しているのであるから,被告がメディラインと共同して,本件クリニックの信用を失墜させる共同不法行為を行っているといえる。 よって,原告とメディラインとの「組合」の問題は,本件では何らの法的意味を持たない。 イ被告は,本件クリニックの権利主体が原告ではないと主張するが,医療法39条及び44条の規定や,「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」の通知に照らせば,本件クリニックに関する権利の全てが,本件クリニックの開設者兼管理者である原告に帰属することは明らかである。 仮に本件団体が内的組合であったとしても,そもそも内的組合とは,対外的に個人が権利帰属主体となって,組合が権利帰属主体とはならないことを説明する概念であると思われるから,本件クリニックに関する権利の主体が原告であることを否定することはできない。 また,原告とメディラインとの間で作成された本件覚書では,「甲(原告)の行う医院の運営とその運営サポートである乙(メディライン)の業務との協業について合意に達した」と明記されていることから,本件契約においても,原告のみが本件クリニックの運営を行うことが前提であった ことが明らかであり,本件クリニックについての原告の権利主体性が認められる。 〔被告の主張〕(1) ,本件契約においても,原告のみが本件クリニックの運営を行うことが前提であった ことが明らかであり,本件クリニックについての原告の権利主体性が認められる。 〔被告の主張〕(1) 本件契約について原告,メディライン及びDPCは,平成17年8月頃,下肢静脈瘤レーザー治療専門クリニックを全国に展開し運営することを共同事業として,メディラインがその資金提供と人材提供による出資を行い,原告が同クリニックの医療役務や専門知識の提供役務による出資を行い,DPCが下肢静脈瘤治療用レーザーの安定供給と普及及び人材提供による出資を行うとの内容の組合契約を締結することとし,三者間で本件契約を締結した。 したがって,本件契約に基づき成立した団体(本件団体)は組合である。 (2) 権利侵害及び違法性がないこと本件クリニックは,組合である本件団体が,本件契約に基づく共同事業の第1号店として開設したものであって,原告は,本件団体の組合員として,本件クリニックの開設管理に当たっているにすぎないから,原告が,本件団体と切り離したところで,本件クリニックについて独自の権利・利益を主張することはできない。また,本件クリニックの名称も,本件団体が付したものであり,本件団体が組合事業を行うために使用する屋号であるから,原告の名称とはいえない。 他方,本件ウェブサイトの運営も,本件団体の事業の一環としてなされているものであるから,本件ウェブサイトは,原告のサイトではなく,本件クリニックの経営主体である本件団体のサイトである。したがって,本件ウェブサイトによって原告個人の権利が侵害されることはない。 そして,被告は,本件団体から委託を受けて,本件ウェブサイトを制作し,これを運営してきたのであり,その当時,原告も,それが本件団体の業務 サイトによって原告個人の権利が侵害されることはない。 そして,被告は,本件団体から委託を受けて,本件ウェブサイトを制作し,これを運営してきたのであり,その当時,原告も,それが本件団体の業務の一環として行われることを了解していたのであるから,被告が本件ウェブサ イトを運営することによって,原告個人の権利が侵害されることはなく,また,その被告の行為に違法性はない。 なお,本件ウェブサイトに原告個人の情報が掲載されているとしても,それはあくまで本件クリニックに関する情報として掲載されているものであって,原告個人の人格権を構成するほどの情報ではない。 (3) 原告の主張についてア原告は,原告が本件クリニックの開設者兼管理者になっていることや医療法の規定を根拠として,本件クリニックに関する権利が全て原告に帰属すると主張するが,本件団体は,いわゆる内的組合,すなわち,当事者間の内部関係では共同事業として組合関係があるが,許可営業などのように個人(又は法人)名義でしかできない事情があるため,対外的行為は,全員の名(ないし組合の名)ではなく,当事者の固有の名義で行われ,組合関係が対外的に現れないものである。本件では,本件団体の組合員のうちクリニックの開設者になることが可能であった原告が,本件クリニックの開設者になったにすぎず,そのことは,本件団体において組合の事業を共同して行うことと何ら矛盾しないし,医療法違反ともならない。 イ原告は,メディラインの債務不履行を理由に本件契約を解除したことにより,被告が原告及び本件クリニックに関する情報を公開する権限を失ったと主張する。 しかし,原告は,本件団体の一組合員として,本件クリニックが赤字の時期には他の組合員に頼っていたにもかかわらず,本件クリニックが黒字 本件クリニックに関する情報を公開する権限を失ったと主張する。 しかし,原告は,本件団体の一組合員として,本件クリニックが赤字の時期には他の組合員に頼っていたにもかかわらず,本件クリニックが黒字に転じたとたんに,一方的に本件契約の解除や組合からの脱退を言い立てて,メディライン及びDPCの関与を排除し,以後その利益を独り占めしているにすぎない。 また,原告の上記解除の申入れは,「組合の目的たる事業の成功又は成功の不能」(民法682条)又は「やむことを得ない事由の存在」(同法 683条)との解散事由には当たらず,原告の業務執行からの辞任や他の組合員らの業務執行の解任の事由(同法672条)はないのであるから,本件団体が解散したとか,原告が組合を脱退したという評価は不可能であって,本件団体は,現在も存続している。 ウ原告は,被告が本件ウェブサイトを削除することが容易であると主張するが,被告は,依頼者である本件団体からの指示がなければ,本件ウェブサイトを削除することができない。本件ウェブサイトをどうするかは,本来,本件団体の問題として,原告及びメディラインとの間で決すべき問題である。 2 争点(2)(本件ウェブサイトの運営が不競法2条1項14号の不正競争に当たるか)について〔原告の主張〕被告が本件ウェブサイトを公開・運営している行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」を「流布」する行為であり,不競法2条1項14号の不正競争に該当する。 すなわち,被告代表者が理事を務める社団スペクトラムは,訴外クリニックを運営しているところ,同クリニックは,本件クリニックと同様に,下肢静脈瘤治療等を専門に行うクリニックであり,しかも両クリニックは1キロメートルほど離れた場所に位置し,対象とする は,訴外クリニックを運営しているところ,同クリニックは,本件クリニックと同様に,下肢静脈瘤治療等を専門に行うクリニックであり,しかも両クリニックは1キロメートルほど離れた場所に位置し,対象とする顧客が重なる関係にあるから,競争関係に立つ。そうすると,被告代表者は,本件クリニックと競争関係に立つ訴外クリニックの運営母体たる社団スペクトラムの理事として,同クリニックの経営に携わる者であるから,被告もまた,本件クリニックを経営する原告と競争関係に立つといえる。 また,被告は,本件ウェブサイトに,本件クリニックの運営に関する基本的かつ重要な事項について虚偽の事実を記載している。なお,本件ウェブサイトには,「X先生が丁寧にお応えします」と記載されたメール相談システムが運 営されているところ,実際には,原告がそれにアクセスすることができず,相談者に対して返答することができない仕組みになっているため,「メール相談に回答する」という記載も虚偽の事実となる。さらに,原告が本件ウェブサイトを運営できず,随時内容を更新することができないにもかかわらず,あたかも原告がこれを運営し,随時内容を更新しているかの如き体裁を採っていることも虚偽事実である。 そして,被告は,不特定多数の人間が自由にアクセスできる本件ウェブサイトにおいて,上記のような本件クリニックについての虚偽の事実を公開しているのであるから,虚偽の事実を「流布」していると評価できる。 〔被告の主張〕被告はあくまでウェブサイトの制作・運営会社であり,被告代表者が他の医療法人の理事に名を連ねているからといって,被告が原告と「競争関係」(不競法2条1項14号)にあるわけではない。 また,本件ウェブサイトの管理・運営は本件団体が被告に依頼したものであり,その時点で虚偽の に名を連ねているからといって,被告が原告と「競争関係」(不競法2条1項14号)にあるわけではない。 また,本件ウェブサイトの管理・運営は本件団体が被告に依頼したものであり,その時点で虚偽の事実は一切なかった。その後,原告が本件団体の業務を懈怠しているために,更新作業が止まっているにすぎない。 3 争点(3)(本件ウェブサイトの表示の抹消請求の可否)について〔原告の主張〕(1) 人格権及び財産権(業務遂行権)に基づく請求被告が本件ウェブサイトを運営し,そこに別紙(略)記載の表示をしていることは,前記1〔原告の主張〕のとおり,原告の人格権及び財産権(業務遂行権)を侵害する不法行為に該当するから,原告は,人格権及び財産権に基づき,本件ウェブサイトの別紙記載の一切の表示の抹消を請求することができる。 なお,原告が経営している本件クリニックの情報が,原告の望まない形で本件ウェブサイトに掲載されていること自体が,原告の人格権としてのプラ イバシー権(自己情報コントロール権)の侵害であり,また,本件ウェブサイトの記載のうち,虚偽の情報のみが削除された場合,未完成のような本件クリニックのウェブサイトが残ることになり,それを閲覧した者に対して,原告がウェブサイトの管理をできていないかのような印象を与え,本件クリニックの名誉・信用が毀損され,業務遂行が妨げられることになるため,本件ウェブサイト上の虚偽の情報のみを削除するだけでは,権利侵害を完全に阻止できるわけではないから,本件ウェブサイトの全部の表示の抹消が必要である。 (2) 不競法に基づく請求被告が,本件クリニックについての虚偽の事実を表示した本件ウェブサイトを公開・運営する行為は,不競法2条1項14号の「不正競争」に該当すると 要である。 (2) 不競法に基づく請求被告が,本件クリニックについての虚偽の事実を表示した本件ウェブサイトを公開・運営する行為は,不競法2条1項14号の「不正競争」に該当するところ,それを閲覧した多数の人間が,本件クリニックが潰れてしまったのではないか,不親切な医師である,手術をしていないのではないか等の不安を抱くこととなり,本件クリニックの営業に対する信用を著しく侵害し,また,今後も原告の営業に対する信用を著しく侵害するおそれがあることは明らかである。 よって,原告の営業上の利益の侵害及びそのおそれがあることから,原告は,被告に対し,その侵害行為の差止めとして,本件ウェブサイトにおける一切の表示の抹消を請求できる。 〔被告の主張〕原告の主張は争う。 本件ウェブサイトは,途中までは原告も了解して,制作・運営されてきたものであり,その内容にも一切の誤謬がなかった。最近になって,原告が,本件契約に違反して,他の組合員を排除した上,被告にも一切連絡することなく,勝手に本件クリニックを移転させ,医師を入れ替えるなどしたために,齟齬が生じるようになったにすぎない。 したがって,これらの事情からすれば,被告が自己の費用において,本件ウェブサイトの抹消等に応じなければならない理由はない。 4 争点(4)(損害の有無及びその額)について〔原告の主張〕(1) 財産的損害 150万円ア不競法に基づく請求被告代表者が理事を務める社団スペクトラムは,平成20年8月1日から平成21年7月31日までの1年間に,1364万8813円の事業利益を上げているところ,被告は,故意又は過失により原告の営業上の利益を侵害し,その侵害行為により社団スペクトラムを介して上記事業 から平成21年7月31日までの1年間に,1364万8813円の事業利益を上げているところ,被告は,故意又は過失により原告の営業上の利益を侵害し,その侵害行為により社団スペクトラムを介して上記事業利益を上げているのであるから,原告が被告の侵害行為により被った損害の金額は,上記事業利益に等しいと推定されるべきである(不競法5条2項)。 よって,原告は,上記損害のうち,一部請求として150万円を請求する。 イ不法行為に基づく請求上記アの推定規定は不競法上の推定規定であるが,被告による権利侵害がなければ,原告が営業において得られた利益として,不法行為に基づく損害賠償にも妥当するから,原告は,選択的に,不法行為に基づく損害として,上記アと同額の損害を主張する。 (2) 慰謝料 50万円原告は,被告による本件ウェブサイトの運営によって,名誉権・信用等の人格権を侵害され,また,財産権ないしその一内容である業務遂行権を侵害されて,精神的苦痛を被った。その原告の受けた精神的損害は,慰謝料にして50万円を下らない。 〔被告の主張〕原告の主張は全て争う。 原告には,財産的損害も,精神的損害も生じていない。また,原告は,附帯請求について,平成18年9月28日を起算日としているが,その時点を起算日とすべき根拠の主張立証はない。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告による本件ウェブサイトの運営が原告に対する不法行為を構成するか)について(1) 財産権(業務遂行権)の侵害についてア原告は,本件クリニックの運営が原告の事業であり,本件クリニックに関する権利が原告に帰属することを前提に,本件ウェブサイトによって本件クリニックの業務が妨害されていることが,本件 についてア原告は,本件クリニックの運営が原告の事業であり,本件クリニックに関する権利が原告に帰属することを前提に,本件ウェブサイトによって本件クリニックの業務が妨害されていることが,本件クリニックこと原告の財産権の侵害であると主張する。 しかし,本件契約は,その契約当事者にDPCが含まれるか否かは争いがあるものの,少なくとも原告及びメディラインが契約当事者となった組合契約又は組合類似の契約であることについては当事者間に争いがないところ,前記第2,2(3)のとおり,本件契約は,原告とメディラインが,主にメディラインが本件クリニックの開設運営に必要な経費等を支出負担(出資)し,原告が医療知識・技術等を提供(出資)し,共に本件クリニックを営むことを内容とする契約であること,本件契約に係る本件覚書の第4条では,互いの業務についての報告義務や協議の義務が定められ,第5条では,互いの事業において獲得した利潤を公平に分配することが定められていること,その他前記第2,2(1)ないし(3)記載の事実を総合考慮すれば,本件契約は組合契約であると認められ,その契約に基づき成立した本件団体は,本件クリニックの運営等を共同の事業とする組合であると解するのが相当である(なお,原告は,本件契約が組合契約又は組合類似の契約であると主張するが,原告の述べる「組合類似の契約」の意義や,その「組合類似の契約」と一般的な組合契約との実質的な差異は明らかで なく,本件契約の上記内容に鑑みれば,これを組合契約と解することに何ら支障はないものと認められる。)。 そうすると,本件クリニックの運営は,組合契約たる本件契約に基づいて組合員らが共同で営む事業であると認められるから,原告が本件団体の組合員の一人として,その事業に係る業務を執行しているとし 。 そうすると,本件クリニックの運営は,組合契約たる本件契約に基づいて組合員らが共同で営む事業であると認められるから,原告が本件団体の組合員の一人として,その事業に係る業務を執行しているとしても,その事業の主体は組合たる本件団体であって,その事業に伴う権利や財産も,総組合員の共有に属するものであって(民法668条),原告一人に属するものと認めることはできない。 したがって,原告の上記主張は,その前提において誤りであり,採用することができない。 イ原告の主張について(ア) これに関して原告は,医療法の規定や通知に照らせば,本件クリニックに関する権利の全てが,本件クリニックの開設者兼管理者である原告に帰属することが明らかであると主張する。 この点,確かに,前記第2,2(2)のとおり,保健所長に対しては,本件クリニックの開設者兼管理者が原告であるとして届け出られていることが認められるが,組合が行う事業についても,組合の業務の執行を一人又は数人の組合員に委任することが可能であり(民法672条1項参照),また,例えば,許認可等の関係で,特定の個人又は法人の名義でしか当該事業を行えないような場合に,一人の組合員の名義で対外的な行為を行うことも可能であると解されるのであって,本件において,法令等に基づく制限から,本件クリニックの開設者兼管理者が医師である原告と届け出られているとしても,そのことと,本件クリニックの運営が組合の事業であることとは何ら矛盾するものでない。また,本件クリニックが本件団体の事業であると解した場合に,仮にそれが医療機関の非営利性などの規制に反することになるとしても,そのことによって, 本件契約における当事者間の合意の内容やそれに基づく当事者間の内部関係についての認定が左右されるもの にそれが医療機関の非営利性などの規制に反することになるとしても,そのことによって, 本件契約における当事者間の合意の内容やそれに基づく当事者間の内部関係についての認定が左右されるものではない。 (イ) 原告は,原告とメディラインとの間で作成された本件覚書の記載においても,原告のみが本件クリニックを運営することが前提とされていたと主張する。 この点,本件覚書の前書きには,「甲」を原告,「乙」をメディラインとして,「甲の行う医院の運営とその運営サポートである乙の業務との協業について合意に達した」と記載されていることが認められるが,上記アのとおり,本件契約が,原告とメディラインがそれぞれ出資して,共に本件クリニックを営むことを内容とする契約であることからすれば,本件覚書の前書きの上記記載は,本件団体が本件クリニックを共同の事業としながら,医師である原告が,クリニックの開設やそこでの医療行為の提供などの,本件クリニックの事実上の運営行為をしていくとの趣旨をいうにすぎないものと解される。また,上記アのとおり,本件覚書の第4条では,互いの業務についての報告義務や協議の義務が定められ,第5条では,互いの事業において獲得した利潤を公平に分配することが合意されていることに照らしても,本件契約の当事者間で,原告のみが本件クリニックの事業主体となることが前提とされていたと解することはできないというべきである。 (ウ) 原告は,本件契約は,メディラインの出資義務の債務不履行による解除,メディラインの除名,原告の脱退又は本件団体の解散によって,既に解消されたと主張する。 しかし,そもそも本件全証拠を精査しても,メディラインの出資義務の債務不履行に基づく契約解除,除名,脱退又は本件団体の解散を基礎付ける事実を認める によって,既に解消されたと主張する。 しかし,そもそも本件全証拠を精査しても,メディラインの出資義務の債務不履行に基づく契約解除,除名,脱退又は本件団体の解散を基礎付ける事実を認めることはできない。 また,一部の組合員が出資義務を履行しない場合でも,そのことを理 由に組合契約を解除することはできないと解されるから(大審院昭和14年6月20日第二民事部判決・民集18巻666頁参照),原告の解除の主張は理由がない。さらに,仮に本件契約がメディラインの債務不履行によって解除されたといい得たとしても,組合契約の解除の効力は遡及しないから(民法684条・620条),組合財産は清算手続による清算の対象となるにすぎず,当然に原告に帰属することにはならない。 このことは,本件団体がその他の事由により解散した場合も同様である(同法685条)。このほか,メディラインの除名(同法680条)については,「正当な事由」「他の組合員の一致」等の要件を満たしていることにつき何ら具体的な主張立証がなく,また,仮に原告主張のとおり,本件契約が原告とメディラインの二者間の契約であった場合には,組合の解散を意味することになる一方の除名をなすことはできないと解され,仮にそれができるとしても,同時に組合の解散を導く結果,清算手続を要することになることは上記と同様である。加えて,原告自らが組合から脱退した場合に,組合財産が原告に帰属することにならないことは当然である。 よって,本件契約の解除や本件団体の解散等を理由に本件クリニックが原告に帰属することになっているとの原告の主張は採用することができない。 (エ) 原告は,現在,実質的にメディラインが本件クリニックの経営から撤退し,原告のみが経営を行っていると主張する。 しかし,本件訴訟の経緯 ているとの原告の主張は採用することができない。 (エ) 原告は,現在,実質的にメディラインが本件クリニックの経営から撤退し,原告のみが経営を行っていると主張する。 しかし,本件訴訟の経緯や別件訴訟の内容に照らせば,それは,単に原告が本件クリニックの経営からメディラインを排除したにすぎないものと解され,そのような現状をもって,原告及びメディライン間で本件クリニックに係る共同事業についての清算が終了し,その結果として,本件クリニックが原告個人に帰属したものと評価することはできない。 ウ以上のとおり,本件クリニックは組合たる本件団体が共同の事業として営むものであると認められるから,本件クリニックに係る権利は,原告個人ではなく,本件団体に属するものと解されるのであり,そうである以上,本件クリニックに係る権利の全てが原告個人に帰属することを前提として,その財産権の一内容をなす業務遂行権の侵害が原告に対する不法行為を構成するという原告の主張は,その前提を欠き,理由がないというべきである。 なお,原告は,被告が本件ウェブサイトを削除することが極めて容易であり,削除することにつき何らの不利益がないこと,Z及び被告代表者が社団スペクトラムの理事として,競合する訴外クリニックを運営しており,本件ウェブサイトの放置は本件クリニックの業務を妨害するためであるなどと,被告の行為の悪質さやその違法性についても言及するが,これらはいずれも本件クリニックに係る権利が原告個人に帰属することを前提として初めていえることであるから,上記のとおり,かかる主張の前提が認められない以上,失当であり採用することができない。 エところで,原告は本件団体の構成員であることから,構成員の一人として,第三者に対して権利行使をすることができ,又 り,かかる主張の前提が認められない以上,失当であり採用することができない。 エところで,原告は本件団体の構成員であることから,構成員の一人として,第三者に対して権利行使をすることができ,又は,本件団体をいわゆる内的組合と解した場合には,少なくとも対外的には,原告がその権利の帰属主体になり得ると考えられる余地もないわけではない。 しかし,前記第2,2(4)のとおり,本件においては,被告は,メディラインから本件ウェブサイトの制作及び運営を委託されたものであるところ,本件クリニックの運営が本件団体の事業であることに照らすと,メディラインによる被告への委託は,本件団体の組合員であるメディラインが,本件団体の業務の執行として,これを被告に委託したものと解するのが相当である。 そうすると,本件ウェブサイトは本件団体のウェブサイトであり,被告 は,本件団体から委託されて本件ウェブサイトを運営しているにすぎないのであるから,その本件ウェブサイトの運営が,本件団体との関係で違法と評価される余地はなく,したがって,原告が,本件団体における本件クリニックに係る業務の執行者として,あるいは組合のために本件クリニックに関する債権債務の帰属主体となる者として,本件ウェブサイトの運営の違法性を主張することができるものと解することはできない。 よって,いずれにせよ,本件においては,原告が,本件クリニックに関する権利に基づいて被告の不法行為責任を主張することができる地位にあるとは認められない。 (2) 人格権の侵害について前記第2,2(6)アのとおり,本件ウェブサイトには別紙(略)記載の表示がされているところ,そこには,原告の氏名及び略歴が表示され,また,原告の写真が掲載されていることが認められる。この点に関して,原告は,こ 2(6)アのとおり,本件ウェブサイトには別紙(略)記載の表示がされているところ,そこには,原告の氏名及び略歴が表示され,また,原告の写真が掲載されていることが認められる。この点に関して,原告は,このような本件ウェブサイトの表示が,原告のプライバシー,肖像権,氏名権等の人格権を侵害するものであると主張する。 しかし,原告は,本件団体が経営する本件クリニックの院長として,その業務に従事している者であるから,本件団体が運営する本件ウェブサイトに,本件クリニックの業務に関連して,原告の氏名及び略歴が表示され,原告の写真が掲載されているとしても,そのことから当然に原告の人格権が侵害されているということはできない。 上記(1)アの認定事実を前提に,前記争いのない事実等並びに証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,組合たる本件団体は,本件ウェブサイトの運営主体かつ本件クリニックの事業主体であり,原告はその組合員であること,本件ウェブサイト上で原告は本件クリニックの院長として表示されており,原告の氏名,略歴及び写真もそれを示すものとして掲載されているにすぎないこと,原告は実際に本件クリニックの院長として本件クリニックの業務に従 事しており,上記各表示は虚偽のものではなく,また,他者による冒用でもないこと,本件ウェブサイトは,原告の承認と関与の下で制作されたものであること,本件ウェブサイト上には,氏名,略歴及び写真のほかにも,原告に関する雑誌記事,原告の論文や書籍の紹介などが掲載されているが,それらはいずれも本件クリニックの院長である原告の医師としての業績に関するものであり,それ以外には,本件クリニックの業務と無関係な原告の私的な情報が掲載されているわけではないこと,原告は,自身が開設した本件クリニックに関するウェブサイト上に氏名及び としての業績に関するものであり,それ以外には,本件クリニックの業務と無関係な原告の私的な情報が掲載されているわけではないこと,原告は,自身が開設した本件クリニックに関するウェブサイト上に氏名及び略歴を表示し,かつ写真を掲載して,自らそれらを公開していることが,それぞれ認められる。 このように,本件ウェブサイト上の原告の氏名,略歴及び写真は,いずれも本件クリニックの院長である原告を示すものとして表示されており,それらの表示は虚偽のものでも,第三者による冒用でもなく,しかも,そのような情報は,いずれも原告が本件クリニックに係る他のウェブサイトで自ら公開しているものである。また,本件ウェブサイトの運営主体かつ本件クリニックの事業主体は本件団体であり,原告はその組合員として,本件クリニックの業務執行に当たっている上,そもそも原告自身が本件ウェブサイトの制作を承認し,それに関与していたというのであるから,これらの事情に照らせば,本件ウェブサイト上に原告の氏名及び略歴が表示され,原告の写真が掲載されているからといって,それによって,原告の人格的利益が社会生活上の受忍限度の範囲を超えて違法に侵害されているということはできない。 したがって,本件ウェブサイトの運営が原告の人格権を侵害する不法行為であるとは認められない。 (3) 小括以上によれば,被告による本件ウェブサイトの運営が,原告の財産権又は人格権を違法に侵害するものであって,不法行為を構成するものであると認めることはできない。 2 争点(2)(本件ウェブサイトの運営が不競法2条1項14号の不正競争に当たるか)について原告は,被告が本件クリニックを経営する原告と競争関係にあることを前提に,被告による本件ウェブサイトの運営が不競法2条1項14号の不正競争に当たる 条1項14号の不正競争に当たるか)について原告は,被告が本件クリニックを経営する原告と競争関係にあることを前提に,被告による本件ウェブサイトの運営が不競法2条1項14号の不正競争に当たると主張する。 しかし,前記第2,2(1)イのとおり,被告は,ホームページの作成等を主な業とする株式会社であるから,その被告が,下肢静脈瘤の専門クリニックである本件クリニックと競争関係にあると認めることはできない。 この点に関して原告は,被告代表者が理事を務める社団スペクトラムが,本件クリニックと競争関係にある訴外クリニックを運営していると主張し,前記第2,2(6)イのとおり,その事実が認められるものの,訴外クリニックを運営しているのは社団スペクトラムであって被告でないことは明らかであり,被告代表者が社団スペクトラムの理事を兼ねているからといって,ホームページの制作会社である被告と,医療法人である社団スペクトラムあるいは下肢静脈瘤治療の専門クリニックである訴外クリニックとを同視して,被告が本件クリニックと競争関係にあると解することはできない。 また,そもそも,前記1のとおり,本件クリニックの事業主体は,原告ではなく,本件団体であると認められることからすれば,仮に本件ウェブサイトによって本件クリニックの営業上の信用が害されることがあったとしても,それをもって,本件クリニックとは別に,原告の営業上の信用が害されたと評価し得るとはいえない。 しかも,被告による本件ウェブサイトの運営は,本件団体から委託されたものであるから,その被告の行為が,本件団体が運営する本件クリニックとの関係で不正競争に当たると解することは困難である。 したがって,本件ウェブサイトに虚偽の事実が記載されているか否かにつき検討するまでもなく,被告による本件ウェ 件団体が運営する本件クリニックとの関係で不正競争に当たると解することは困難である。 したがって,本件ウェブサイトに虚偽の事実が記載されているか否かにつき検討するまでもなく,被告による本件ウェブサイトの運営が原告に対する不正 競争に当たるとの原告の主張は採用することができない。 3 結論以上のとおり,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官東海林保 裁判官田中孝一 裁判官足立拓人

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