平成11(ワ)2341 地代確認本訴請求,建物収去土地明渡等反訴請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年9月2日 神戸地方裁判所
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判決文本文16,082 文字)

主文 1 原告と被告Aとの間において,原告が借地権を有している別紙物件目録1ないし3記載の土地の地代が,平成2年1月分から平成11年11月分までは1か月当たり65万2200円,平成11年12月分から平成14年5月分までは1か月当たり85万0600円,平成14年6月分以降は1か月当たり73万5136円であることを確認する。 2 原告と被告八幡不動産商事有限会社との間において,原告が借地権を有している別紙物件目録4ないし6の土地の地代が,平成2年1月分から平成14年5月分までは1か月当たり21万9600円,平成14年6月分以降は1か月当たり24万7574円であることを確認する。 3 原告と被告Bとの間において,原告が借地権を有している別紙物件目録7の土地の地代が,平成2年1月分から平成14年5月分までは1か月当たり20万6900円,平成14年6月分以降は1か月当たり23万3246円であることを確認する。 4 原告は,被告Aに対し,2万5519円及びこれに対する平成12年4月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 5 原告は,被告Bに対し,12万4117円及びこれに対する平成12年4月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 6 原告のその余の本訴請求及び被告らのその余の反訴請求をいずれも棄却する。 7 訴訟費用は,本訴反訴を通じてこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 8 この判決は,4,5,7項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 本訴(1) 原告と被告Aとの間において,原告が借地権を有している別紙物件 ることができる。 事実及び理由 第1 請求 1 本訴(1) 原告と被告Aとの間において,原告が借地権を有している別紙物件目録1ないし3記載の土地(以下「被告A所有地」という)の地代が平成2年1月分以降合計月額65万2200円であることを確認する。 (2) 原告と被告八幡不動産商事有限会社(以下「被告八幡不動産」という)との間において,原告が借地権を有している別紙物件目録4ないし6記載の土地(以下「被告八幡不動産所有地」という)の地代が平成2年1月分以降合計月額21万9600円であることを確認する。 (3) 原告と被告Bとの間において,原告が借地権を有している別紙物件目録7記載の土地(以下「被告B所有地」という)の地代が平成2年1月分以降合計月額20万6900円であることを確認する。 2 反訴(1) 原告は,被告Aに対し,212万6600円及びこれに対する反訴状送達日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 原告は,被告Bに対し,1034万3154円及びこれに対する反訴状送達日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (3) 主位的請求ア原告は,被告らに対し,別紙物件目録8記載の建物(以下「本件ビル」という)を収去して,別紙物件目録1ないし7記載の土地(以下「被告ら所有地」という)を明け渡せ。 イ原告は,被告Aに対し795万5406円,同八幡不動産に対し192万6541円,同Bに対し252万3441円をそれぞれ支払え。 (4) 予備的請求1ア被告Aと原告との間の被告A所有地に関する賃貸借契約に基づく平成2年3月26日以 万6541円,同Bに対し252万3441円をそれぞれ支払え。 (4) 予備的請求1ア被告Aと原告との間の被告A所有地に関する賃貸借契約に基づく平成2年3月26日以降の賃料が1か月あたり120万円であることを確認する。 イ被告八幡不動産と原告との間の被告八幡不動産所有地に関する賃貸借契約に基づく平成2年3月26日以降の賃料が1か月あたり40万4128円であることを確認する。 ウ被告Bと原告との間の被告B所有地に関する賃貸借契約に基づく平成2年3月26日以降の賃料が1か月あたり38万0739円であることを確認する。 (5) 予備的請求2被告Aと原告との間の被告A所有地に関する賃貸借契約に基づく平成11年12月1日以降の賃料が1か月あたり90万円であることを確認する。 (6) 予備的請求3ア被告Aと原告との間の被告A所有地に関する賃貸借契約に基づく平成14年6月1日以降の賃料が1か月あたり81万5105円であることを確認する。 イ被告八幡不動産と原告との間の被告八幡不動産所有地に関する賃貸借契約に基づく平成14年6月1日以降の賃料が1か月あたり27万4528円であることを確認する。 ウ被告Bと原告との間の被告B所有地に関する賃貸借契約に基づく平成14年6月1日以降の賃料が1か月あたり25万8573円であることを確認する。 第2 事案の概要本訴は,原告が,被告らとの間の借地契約上の地代額の確認を求める事案である。 反訴は次のとおりの事案である。 ① 被告A及び被告Bが,原告との間の合意に基づく精算金の支払い及びこれに対する反訴状送達日の翌日から支払済みまで商事法定利率年 る事案である。 反訴は次のとおりの事案である。 ① 被告A及び被告Bが,原告との間の合意に基づく精算金の支払い及びこれに対する反訴状送達日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いをそれぞれ求める事案。 ② 被告Bが,原告との間の合意に基づく家賃補償額の支払い及びこれに対する反訴状送達日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求める事案。 ③ 被告らが,主位的に,原告との間の借地契約の解除に基づき,建物収去土地明渡及び解除の効力発生日から明渡済みまでの賃料相当損害金の支払いを求め,予備的に,賃料増額請求に基づく同借地契約の地代額の確認を求める事案。 1 争いのない事実(1) 当事者原告は,平成11年1月19日に神戸地方裁判所から特別清算開始命令を受けた特別清算会社である(なお,原告の旧商号は「株式会社カサベラ光和」であった)。 被告Aは被告A所有地を,被告八幡不動産は被告八幡不動産所有地を,被告Bは被告B所有地をそれぞれ所有している。 原告は,現在,被告ら所有地の上に,本件ビルを所有している。 (2) 原告の借地権取得原告は,昭和55年ころ,被告ら所有土地上に本件ビルを建築所有することを計画し,被告らと交渉した結果,原告は,被告A及び同八幡不動産との間で昭和61年12月26日に,被告Bとの間で昭和62年1月23日に,それぞれ不動産売買契約書を取り交わし,借地権設定に関する合意を締結した(以下,これらの合意を「本件合意」と総称する)。 (3) 本件合意のうち,争いのない内容ア原告は,被告ら所有地上に存する被告ら所有建物の所有権 権設定に関する合意を締結した(以下,これらの合意を「本件合意」と総称する)。 (3) 本件合意のうち,争いのない内容ア原告は,被告ら所有地上に存する被告ら所有建物の所有権の譲渡を受けると共に,被告ら所有地上に堅固な建物の所有を目的とする借地権の設定を受け,これと交換に,原告所有の不動産(本件ビルの南に隣接するaビルの区分所有権)を被告らに譲渡する。 イ原告は被告らに対して以下の地代を支払う(なお,同地代額に関する合意が当面の暫定的なものであったかどうかについては争いがある)。 被告Aに対して月額65万2200円被告八幡不動産に対して月額21万9600円被告Bに対して月額20万6900円ウ被告らは,本件ビルが完成し,建物保存登記を終えるまでの間,原告が,登記権利者として,上記借地権に基づき,被告ら所有地について地上権設定登記を保持することを承諾する。しかしながら,原告は,同ビルの建物保存登記完了と同時に,同地上権設定登記の抹消登記手続を行う。 エ被告らと原告は,上記地上権設定登記の抹消登記手続を行うまでに,被告ら所有地について賃貸借契約を締結する。 オ上記アの等価交換については,その後の換地処分における実測面積が確定した時点で借地面積の増減がある場合には,確定した面積にしたがって金銭精算する。 (4) 原告が被告A及び被告Bに対して支払うべき精算金,原告が被告Bに対して支払うべき家賃補償額原告が被告Aに対し,本件合意の上記(3)オに基づき,仮換地から本換地への移行に伴う面積の増加に伴って支払うべき精算金は212万6600円である。 また,同 家賃補償額原告が被告Aに対し,本件合意の上記(3)オに基づき,仮換地から本換地への移行に伴う面積の増加に伴って支払うべき精算金は212万6600円である。 また,同様の理由で,原告が被告Bに対して支払うべき精算金は14万7267円である。 さらに,原告は,被告Bに対して,昭和63年11月ころ,本件合意に基づき被告Bに交換譲渡する物件について,aビル1階部分(約65平方メートル)から,別のビル(bビル)1階部分への変更申入れをし,被告Bはこれを承諾したが,その際,原告は,被告Bに対し,被告Bが別途自ら取得することになったaビルの401号,402号,502号,201号について,10年間の家賃を補償する旨約した。ところが,原告は,同201号室,502号室の,平成10年12月分から同11年12月分までの家賃1019万5887円(78万4299円×13か月分)を支払っていない。 (5) その後の経緯本件ビルは,平成元年12月22日ころ完成し,平成2年3月26日に建物保存登記がなされた。 ところが,現在に至るまで,原告と被告らとの間で,被告ら所有地に関する賃貸借契約は締結されないまま現在に至っている。 また,原告は,被告ら土地について取得した地上権について未だに登記を抹消していない。そして,原告は,同地上権に対して,平成2年3月26日,株式会社富士銀行に対して極度額50億円の根抵当権を設定し,また,同年6月14日,芙蓉総合開発株式会社に対して極度額10億円の根抵当権を設定した。 原告は,被告A所有地の地下に本件ビルの地下1階と,本件ビルの北に隣接するcビルの地下1階とをつなぐ地下通路(以下「本件地下通路」という)を設置した。また, 円の根抵当権を設定した。 原告は,被告A所有地の地下に本件ビルの地下1階と,本件ビルの北に隣接するcビルの地下1階とをつなぐ地下通路(以下「本件地下通路」という)を設置した。また,原告は,被告A所有地上に排煙設備を設置した。 (6) 被告らは,原告に対し,平成11年12月24日に原告に到達した書面において,原告との賃貸借契約を解除する意思表示をした。 2 争点①原被告ら間の賃貸借契約の解除事由の存否,②被告らの建物収去土地明渡請求の信義則違反性,権利濫用性,③被告らの賃料増額請求の有無と適正賃料,④被告A及び被告Bの原告に対する精算金請求,被告Bの原告に対する未払家賃補償額請求が特別清算債権に該当するか(1) 賃貸借契約の解除の可否ア被告らの主張本件合意は当面の暫定的な契約であって,原被告らの間においては,本件ビルの建物保存登記完了後に改めて賃貸借契約を締結することとされていた。ところが,原告は,被告らからの再三にわたる賃貸借契約締結のための協議の申入れに応じなかった。 また,原告は,本件ビルが完成したにもかかわらず,本件合意に違反して,地上権設定登記の抹消登記手続を行わないどころか,同地上権について,前記争いのない事実のとおり,根抵当権まで設定した。 さらに,本件合意によれば,原告の賃借用途は本件ビルの所有目的に限定されているにもかかわらず,原告は,前記争いのない事実のとおり,本件ビルの地下1階と,その北に隣接するc3ビルの地下1階との間に通路を設置した。同地下通路は,cビル側から本件ビルを通じて公道に至ることはできても,本件ビル側からはcビルにしか至ることのできないものであって,本件ビルの公用を高めるもの c3ビルの地下1階との間に通路を設置した。同地下通路は,cビル側から本件ビルを通じて公道に至ることはできても,本件ビル側からはcビルにしか至ることのできないものであって,本件ビルの公用を高めるものではない。このような施設の設置は,本件合意の定める用法の範囲を逸脱した契約違反である。加えて,前記争いのない事実のとおり,原告は,被告A所有地上に地上排煙設備を設置している。これは,cビルの建築に伴って設置されたことからして,本件ビルの付属設備ではないことが明らかであって,かかる設備の設置も本件合意に違反する契約違反である。 のみならず,前記争いのない事実のとおり,原告は,被告Bに対する家賃補償や,同被告及び被告Aに対する精算金支払を履行していないのであって,これらも契約違反に該当する。 以上の解除原因の存在に照らせば,被告らの原告に対する平成11年12月24日到達の解除の意思表示は有効である。 よって,被告らは,原告に対し,賃貸借契約の終了に基づき,本件ビルの収去と被告ら所有地の明渡しを求める。 また,原告は,平成11年12月25日から平成14年12月5日まで(35か月11日間)被告ら所有地を不法に占有使用していたことになるのであるから,この間に発生する賃料相当損害金は,被告Aについて3860万8806円,被告八幡不動産について1300万3476円,被告Bについて1224万7741円となる。そこで,被告らは原告に対し,上記金額から供託額(47か月分)を控除した金額,すなわち,被告Aは795万5406円,被告八幡不動産は192万6541円,被告Bは252万3441円の支払いをそれぞれ求める。 イ原告の認否反論本件合意が当面の間の暫定 ,被告Aは795万5406円,被告八幡不動産は192万6541円,被告Bは252万3441円の支払いをそれぞれ求める。 イ原告の認否反論本件合意が当面の間の暫定的なものであったという主張は否認する。被告らから原告に対して賃貸借契約締結の再三の申入れがあったということもない。 また,今日まで,被告ら所有地上の地上権設定登記の抹消登記手続がなされていないのは,被告らが,本件ビルの完成後,地代に関する合意を覆すような態度をとるようになり,賃貸借契約の締結について被告らの協力が得られなかったことが原因である。原告の側に何ら義務違反はない。また,同地上権に根抵当権を設定したことも何ら契約違反には当たらない。 さらに,被告らは,地下通路の設置や排煙設備の設置が契約違反であると主張するが,地下通路については,むしろ本件ビルの利用価値を高めるものであって,建物所有目的に反するものではないし,排煙設備については,消防法上の要請から設置したものであって,本件ビルの利用に付随して設置された必要不可欠なものであるから,契約違反になるようなものではない。 原告の被告Bに対する家賃補償義務,同被告及び被告Aに対する精算金支払義務違反については認めるが,これらは,賃貸借契約上の債務とは別異の債務の不履行を理由とするものであるから,賃貸借契約の解除原因とはなり得ないものである。 (2) 明渡請求の信義則違反,権利濫用ア原告の主張仮に,被告らの主張する解除原因が認められるとしても,本件ビルが現在でも約10億円の経済的価値を有すること,これを収去することに起因する社会経済上の不利益,今日に至るまでの経緯,原告が特別清算会社であることな らの主張する解除原因が認められるとしても,本件ビルが現在でも約10億円の経済的価値を有すること,これを収去することに起因する社会経済上の不利益,今日に至るまでの経緯,原告が特別清算会社であることなどの事情に照らすと,本件土地の明渡請求は信義則に反し,権利濫用に当たるものであって,許されない。 イ被告らの認否争う。 (3) 被告らの賃料増額請求と適正賃料ア被告らの主張本件合意における地代に関する合意は,本件ビルの建物保存登記に至るまでの間の暫定的合意に過ぎず,その後,改めて賃貸借契約を締結し,相当な地代額を決め直す約束であった。したがって,本件合意における地代に関する合意は建物保存登記後には効力がないものである。ところが,その後,原告の懈怠により,賃貸借契約の締結に至ることができなかったのであるから,本件ビルの建物保存登記がなされた平成2年3月26日の翌日以降については,地代額は,相当な金額に変更されたとみるのが当事者の合理的意思解釈というべきである。そして,同相当賃料額は,被告Aについては80万3227円,被告八幡不動産については27万0496円,被告Bについては25万4776円を下回らない。 仮に,相当な賃料の変更がないとしても,被告らは,平成元年ころから平成2年3月26日までに,原告に対して,賃料増額請求をたびたび行った。したがって,遅くとも平成2年3月26日以降の賃料は適正な賃料額に増額されたものである。そして,同日における適正賃料は,上記金額を下回らない。 また,被告Aは,平成11年11月30日に原告に到達した書面により,原告に対し,被告A所有地の賃料について,214万6390円への賃料増額請求を行った。し 上記金額を下回らない。 また,被告Aは,平成11年11月30日に原告に到達した書面により,原告に対し,被告A所有地の賃料について,214万6390円への賃料増額請求を行った。したがって,平成11年12月1日以降の被告Aに対する相当賃料額は月額90万円を下回らない。 さらに,万一,契約解除の主張が認められなかった場合に備えて,被告らは,平成14年5月16日,本件訴訟手続において,原告に対し,平成14年6月1日からの賃料について,下記のとおりの賃料増額請求をした。 被告A 月額81万5105円被告八幡不動産月額27万4528円被告B 月額25万8573円イ原告の認否反論被告らが,平成14年5月16日,本件訴訟手続において賃料増額請求をした事実のみ認め,その余の事実は否認する。 本件ビルの建物保存登記後に相当賃料額を決め直す旨の合意などなかったし,被告らが平成1,2年ころに賃料増額請求をしたことも,被告Aが平成11年に賃料増額請求をしたこともない。 なお,平成14年に,本件訴訟手続において賃料増額請求がなされたことは争わないが,前記争いのない事実のとおり,原告は,被告らから借地権の設定を受けた際,その引換に,被告らに対し,原告所有のaビルの区分所有権を等価交換により譲渡したのである。これにより,被告らは,被告ら所有地の70パーセントの部分を原告に譲渡したのと実質的には同一の経済的結果が生じているのであるから,その部分については,地代の算定の際に考慮外にする旨の合意が成立したとみるべきである。したがって,鑑定人が適正地代と鑑定した額の30 に譲渡したのと実質的には同一の経済的結果が生じているのであるから,その部分については,地代の算定の際に考慮外にする旨の合意が成立したとみるべきである。したがって,鑑定人が適正地代と鑑定した額の30パーセントをもって現時点における地代と認定すべきである。 (4) 原告の被告らに対する精算金及び家賃補償額の支払債務は特別清算債権に該当するかア原告の主張原告が,被告Aに対して精算金212万6600円,被告Bに対して精算金14万7267円,被告Bに対して家賃補償額1019万5887円の支払債務を負うことについては争いがない。 しかしながら,原告は特別清算会社であって,平成11年12月24日に協定が可決され,平成12年1月17日に認可決定が可決され,同年2月9日の経過をもってこれが確定したのであるから,上記各支払債務についてはいずれも特別清算債務となり,配当基準債権額の1.2パーセントの支払しかできない。 よって,原告が被告Aに支払うべき精算金額は2万5519円,被告Bに支払うべき精算金額は1767円,被告Bに支払うべき家賃補償額は12万2350円ということになる。 イ被告らの認否原告の主張を争う。 被告A及び被告Bの精算金支払請求権及び被告Bの家賃補償額支払請求権については,特別弁済を受けうる債権と解すべきである。 第3 争点に対する判断 1 賃貸借契約の解除の可否被告らは,本件賃貸借契約の解除事由として,①原被告間においては,本件ビルの建物保存登記後改めて賃料の改定を含む賃貸借契約を締結することになっていたのに,原告が,被告らからの再三にわたる賃貸借契約のための協議の申出に応じなかっ 事由として,①原被告間においては,本件ビルの建物保存登記後改めて賃料の改定を含む賃貸借契約を締結することになっていたのに,原告が,被告らからの再三にわたる賃貸借契約のための協議の申出に応じなかったこと,②原告が,本件合意に反して,本件ビルの建物保存登記後も,地上権設定登記の抹消登記手続を行わない上に,同地上権に対して,根抵当権まで設定したこと,③原告が,被告A所有地の地下に,本件ビルの地下1階と北隣のcビルの地下1階とを結ぶ地下通路を被告Aに無断で開設したこと,④原告が,被告A所有地上に,地上排煙設備を被告Aに無断で設置したこと,⑤原告が,被告A及び被告Bに対する精算金の支払い及び被告Bに対する家賃補償額の支払いをいずれも履行しないことを主張する(⑤のみ争いがない)。 (1) そこでまず,本件合意の内容及び締結前後の事情について認定する。 ア証拠(甲1ないし10,21ないし25,29,乙2ないし6,10,12ないし27,36,39,証人C,被告A本人〔ただし,乙10,36,39,被告A本人については,以下の認定に反する部分を除く〕)及び前記争いのない事実を総合すれば,以下の事実が認められる。 不動産ディベロッパーである原告は,被告ら所有地を含むその周辺の土地にビルを建設する再開発事業計画を進めることになり,被告らとの間で交渉を進めた結果,被告ら所有地を原告が借り受けて,本件ビルを建設することになった。 そこで,原告と被告らは,交渉の上,以下のとおり合意し,昭和61年12月26日には原告と被告A及び被告八幡不動産との間で,昭和62年1月23日には原告と被告Bとの間でそれぞれ不動産売買契約が締結された。 ① 被告らは,原告に対し,被告ら所有地上の既存建物を譲渡 告と被告A及び被告八幡不動産との間で,昭和62年1月23日には原告と被告Bとの間でそれぞれ不動産売買契約が締結された。 ① 被告らは,原告に対し,被告ら所有地上の既存建物を譲渡すると共に,被告ら所有地上に,堅固な建物所有を目的とする借地権を設定する。 ② 原告は,被告らに対し,本件ビルの南に隣接する原告所有建物(aビル)の一部区分所有権及びその借地権を譲渡する。 ③ 上記①の譲渡及び権利設定の代金と,上記②の譲渡代金は同額であるので,これを相殺して決済する。 ④ 被告は,原告が,被告ら所有地上の既存建物を取り壊して本件ビルを建築完成するまでの間は,借地料の支払いを免除する。 ⑤ 借地料は,本件合意成立時から本件ビル完成時までの間の物価や地代の値上がりを見越して,南隣のaビルの借地料の15パーセント増しの金額とする。具体的には以下のとおりの金額である。 被告A 月額65万2200円被告八幡不動産月額21万9600円被告B 月額20万6900円⑥ 被告ら所有地について換地処分が予定されているため,上記③の相殺による決済分については,換地処分によって増減した面積に応じて精算金で調整する。 ⑦ 本件ビルの建築資金等の調達のために,とりあえず,被告ら所有地上に地上権の登記を設定し,同地上権上に原告が担保権を設定するが,本件ビルの建物保存登記を行うまでに,原被告ら間において,上記⑤の賃料等を内容とする賃貸借契約を締結し,建物保存登記と同時に同地上権設定登記を抹消し,同地上権上の担保権を 原告が担保権を設定するが,本件ビルの建物保存登記を行うまでに,原被告ら間において,上記⑤の賃料等を内容とする賃貸借契約を締結し,建物保存登記と同時に同地上権設定登記を抹消し,同地上権上の担保権を賃借権上に移し換える。 そこで,原告は,上記合意に基づいて,本件ビルの建築事業を進め,平成元年12月22日ころ本件ビルを完成させ,平成2年3月26日に建物保存登記をした。ところが,本件ビルが完成したころから,被告らが賃料額の値上げを求めてきたため,上記⑦の合意に即して,上記⑤の賃料を内容とする賃貸借契約を締結することができなくなってしまった。そのため,原告は上記⑤の賃料を平成2年1月分から供託している。また,その結果,上記⑦の地上権に設定された根抵当権を賃借権上に移し換えることもできないまま現在に至っている(なお,以上の認定事実に照らすと,原被告ら間において,被告ら所有地に対する賃貸借契約の締結は正式には未だにされていないことになるが,少なくとも,上記認定の本件合意には,上記⑤の賃料を支払う旨の賃貸借契約ないし地上権設定契約が含まれていると認めることができるから,原告は,同賃借権ないし地上権を根拠として被告ら所有地を使用し,本件ビルを所有しているものと認められる)。 イ以上の認定に対して,被告Aは,本件ビル完成後,賃料は上記⑤の金額から値上げする予定であった旨,地上権に担保権を設定することまで了承したことはない旨述べる。 しかしながら,上記認定のとおり,原被告ら間において賃料の支払い開始は本件ビル完成後とされていたこと(このこと自体は被告Aも本人尋問において認めている),同賃料額は,本件合意成立時から,実際に賃料支払義務が発生する建物完成時まで数年間ブランクがあることを考慮して15パーセント 成後とされていたこと(このこと自体は被告Aも本人尋問において認めている),同賃料額は,本件合意成立時から,実際に賃料支払義務が発生する建物完成時まで数年間ブランクがあることを考慮して15パーセント上乗せして決められていることに照らすと,上記⑤の賃料は,本件ビル完成時以降の賃料であることが明らかであるから,建物完成後直ちにこれを値上げするということは考えられないことである。また,たしかに,原被告ら間の契約書には,地上権に対する担保権の設定に関する記載はないものの,原告が不動産ディベロッパーであることに照らすと,本件ビル建築前の段階における地上権の設定は原告が金融機関から融資を得るための担保設定を目的とするものであることが明らかである。そして,契約書上,賃貸借契約の締結後に地上権設定登記を抹消する旨定められていることからすると,原被告ら間においては,地上権に設定した担保を賃貸借契約上に移し換えることについても当然合意されていたとみるのが当事者の合理的意思解釈というべきである。以上の次第で,被告Aの上記供述は信用することができない。 (2) そこで,以上の認定事実を前提に,被告らの主張する解除原因について検討する。 ア賃貸借契約の未締結について上記認定事実に照らせば,原被告ら間において,本件ビル完成後に賃貸借契約を締結する旨合意がされていたのに,未だにこれがなされていないことは事実であるが,その原因は,むしろ,被告らの側が,本件ビル完成後いきなり賃料の値上げを求めるという,本件合意に反する要求をしてきたためであると認められるから,賃貸借契約が未締結であることが原告の責任であると認めることはできない。 イ地上権設定登記の存続と,これに対する根抵当権の設定について ためであると認められるから,賃貸借契約が未締結であることが原告の責任であると認めることはできない。 イ地上権設定登記の存続と,これに対する根抵当権の設定について上記認定のとおり,被告ら所有地上に設定された地上権に原告が根抵当権を設定したことが原被告ら間の合意に反するものであると認めることはできず,むしろ,被告らはこれを許容していたと推認することができる。更に,同地上権が未だに抹消されていないのは,上記認定のとおり,被告らが当初の合意に反する賃料値上げ要求をしてきたため,原被告ら間において賃貸借契約が締結できず,地上権に設定された担保権を賃借権上に移し換えることができないためであると認められるから,地上権設定登記の存続とこれに対する根抵当権の設定をもって,原被告ら間の信頼関係を破壊するに足るだけの契約解除事由と認めることはできない。 ウ地下通路の設置について原被告ら間の借地契約は,地階部分を含む大型ビルの建築を前提とするものである以上,地下通路の設置も,それが,貸主である被告らに何らかの不利益,不都合を生じさせない限り,契約内容に含まれていると解するのが合理的意思解釈というべきである。そして,原被告らが,本件合意と同時に取り交わした確認書(甲10,21,22)によれば,被告らは,既存の南隣のaビルと本件ビルの間に地下通路を設置することについては原告に対してこれを求めていたくらいであって,その結果,本件ビルの南側にはaビルとの間を結ぶ地下通路が設置されていること,これに対して被告らが何ら不服を述べていないこと,cビルとの間の地下通路も,これと同様に,cビルと本件ビルとの間の往来を便利にするものであって,本件ビルの利便性を高めこそすれ,これが被告らに不利益,不都合を生じ 被告らが何ら不服を述べていないこと,cビルとの間の地下通路も,これと同様に,cビルと本件ビルとの間の往来を便利にするものであって,本件ビルの利便性を高めこそすれ,これが被告らに不利益,不都合を生じさせていることを認めることができないことに照らすと,同地下通路の設置が原被告ら間の賃貸借契約ないし地上権設定契約に違反していると認めることはできない。 エ地上の排煙設備の設置について証拠(甲17,18,証人C)によれば,被告A所有地上の排煙設備は,本件ビルとcビルのいずれかにおいて火災が発生した場合に両ビル間の地下通路を通じて煙が侵入することを防ぐために,原告が神戸市消防局との間において打合せを行った上で設置したものであること,被告A所有地を占有する面積も1.52平方メートルに過ぎないことが認められ,このことに,前記のとおり,上記地下通路の設置が原被告ら間の賃貸借契約に反するものではないことを併せ考えると,かかる排煙設備の設置が,原被告らの信頼関係を破壊するものであるとは到底認めることができない。 (3) 結論以上の次第で,被告らが主張する解除事由のうち理由があるのは,当事者間に争いのない,原告の精算金及び家賃補償額の不払いの事実のみである。そして,たしかに,同不払額の総額は被告Aに対する関係では212万6600円,被告Bに対する関係では1034万3154円というかなりの額ではあるものの,これらの金員の未払いは,賃貸借契約そのものの不履行ではないこと,原告は賃貸借契約の賃料については当初から供託を続けていること,その他に,原告に格別債務不履行の事実が認められないことを総合すると,上記不払いの事実をもって,原被告ら間の信頼関係を破壊するほどの事実であるとは認められないから,これに基 から供託を続けていること,その他に,原告に格別債務不履行の事実が認められないことを総合すると,上記不払いの事実をもって,原被告ら間の信頼関係を破壊するほどの事実であるとは認められないから,これに基づく解除を認めることはできない。 よって,被告らの原告に対する,賃貸借契約ないし地上権設定契約の解除に基づく建物収去土地明渡請求は理由がない。 2 被告らの賃料増額請求の成否と適正賃料額(1) 被告らの主張する賃料増額請求について被告らは,原被告ら間の賃料に関する合意は暫定的なものに過ぎないことを理由に,本件ビルの建物保存登記完了後,賃料は相当額に増額されたと解すべきであると主張する。しかしながら,前記認定のとおり,原被告らは,本件ビル完成後に支払義務が発生することを前提に,その間の物価,地代の値上がりを想定して賃料を決定したことが認められる。そうすると,建物保存登記後直ちに賃料が増額されるという被告らの主張は,原被告ら間の本件合意に反するものであって,理由がない。 次に,被告らは,平成元年ころから平成2年3月26日までの間に,原告に対して賃料増額請求をたびたび行ったことを根拠に,賃料増額を主張するが,かかる事実を認めるに足りる証拠はない。 しかしながら,証拠(乙11,被告A本人)によれば,被告Aは,平成11年11月25日に差し出した内容証明郵便によって賃料増額請求を行った事実が認められる。 そうすると,被告らの主張のうち認められるのは,被告Aが平成11年11月25日付内容証明郵便によって行った賃料増額請求と,争いのない,被告らが本件訴訟において平成14年5月16日に行った賃料増額請求ということになる。 なお,上記各賃料増額請求について 1月25日付内容証明郵便によって行った賃料増額請求と,争いのない,被告らが本件訴訟において平成14年5月16日に行った賃料増額請求ということになる。 なお,上記各賃料増額請求については調停を経ていないが,被告らが,主位的に建物収去土地明渡まで求めて本件反訴を提起し,予備的に賃料増額請求をしているに過ぎないことに照らすと,かかる予備的請求についてのみ調停前置を要求することは手続を複雑にするものであるし,本件訴訟手続において,適正賃料額について鑑定もなされていることに照らし,調停に付さないこととする。 (2) そこで,上記各賃料増額請求によって,賃料増額が認められるかを検討する。 鑑定結果によれば,平成11年12月1日時点における被告A所有地の適正賃料は85万0600円,平成14年6月1日時点における被告A所有地の適正賃料は73万5136円,被告八幡不動産所有地の適正賃料は24万7574円,被告B所有地の適正賃料は23万3246円と認められる。 これに対して,原告は,被告らが,被告ら所有地の当時の価格の70パーセントに相当する金額について原告所有のaビルの区分所有権を無償で取得した上で,原告に被告ら所有地を賃貸していることを理由に,実質的には,被告らは,被告ら所有地の70パーセントに相当する部分については所有権を喪失し,その余の30パーセントの部分を原告に賃貸したものとみるべきであるから,被告ら所有地全体の適正賃料の30パーセントが適正賃料額であると主張し,証人Cも同旨の証言をする。 しかしながら,証人Cは,本件合意締結当時の原告の担当者ではなく,当時の被告らとの交渉に関与したものではないから,同証人の証言のみからかかる事実を認めることはできず,その他に原告の上記主張を認 しかしながら,証人Cは,本件合意締結当時の原告の担当者ではなく,当時の被告らとの交渉に関与したものではないから,同証人の証言のみからかかる事実を認めることはできず,その他に原告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。 原告は甲23号証がかかる主張を裏付けるものであると主張するが,これをみても,被告らが,被告ら所有地の70パーセントの所有権を実質的に原告に移転するという趣旨の記載はなく,むしろ,「等価交換の対象は,借地権設定対価と建物評価額の合計額と,ビル敷地の借地権持分価額とビル価額の合計額とします」という記載があることからすると,被告らは,原告所有不動産(aビルの区分所有権)を,借地権の設定の対価ないし権利金として取得したものとみることができる。そして,当時は,バブル経済の影響下にあって地価が著しく上昇を続けていたことに鑑みると,かかる契約は必ずしも不自然ではないというべきである。更に,本件鑑定も,原告が原告所有不動産の一部を譲渡したことを権利金の支払いと捉え,これを前提に当初の賃料額は概ね適正であると評価しているのであって,適正賃料の30パーセントが相当であるとは評価していない。 そうすると,前記各賃料増額請求によって,被告A所有地の賃料は,平成11年12月分から同14年5月分までは1か月当たり85万0600円,平成14年6月分以降は1か月当たり73万5136円に,被告八幡不動産所有地の賃料は平成14年6月分以降は1か月当たり24万7574円に,被告B所有地の賃料は平成14年6月分以降は23万3246円に変更されたと認めることができる。 3 原告の被告らに対する精算金及び家賃補償額の支払債務は特別清算債権に該当するか(1) 原告が以下の支払義務を負うことについては争いがない。 ア被告 ことができる。 3 原告の被告らに対する精算金及び家賃補償額の支払債務は特別清算債権に該当するか(1) 原告が以下の支払義務を負うことについては争いがない。 ア被告Aに対し換地処分の結果,所有地の面積が増加したことに伴う精算金212万6600円イ被告Bに対し上記換地処分に伴う精算金14万7267円被告Bが原告から取得したテナントビルについて,原告が10年間の家賃を補償する旨約したにもかかわらず,原告が平成10年12月分から同11年12月分まで支払いを怠った家賃合計1019万5887円(2) 特別清算債権の適用の有無しかしながら,証拠(甲19の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,原告は特別清算会社であって,平成11年12月24日に債権者集会において協定が可決され,平成12年1月17日に同協定が認可され,同年2月9日の経過をもってこれが確定した結果,別除権のない一般債権については配当基準債権額の1.2パーセントの支払いしかできなくなったことが認められる。 よって,原告が被告Aに支払うべき精算金額は212万6600円の1. 2パーセントの2万5519円,被告Bに支払うべき精算金額は14万7267円の1.2パーセントの1767円,被告Bに支払うべき家賃補償額は1019万5887円の1.2パーセントの12万2350円ということになる。 被告A及び被告Bは,これらの債権について,債権全額の特別弁済を受けることのできる債権であると主張するけれども,その法律上,事実上の根拠は明らかでなく,かかる主張を認めることはできない。 4 結論以上の次第で,原告の本訴請求はいずれも一 済を受けることのできる債権であると主張するけれども,その法律上,事実上の根拠は明らかでなく,かかる主張を認めることはできない。 4 結論以上の次第で,原告の本訴請求はいずれも一部を認容し,その余をいずれも棄却し,被告らの反訴請求のうち,被告Aの平成11年12月1日以降の賃料増額請求,被告らの平成14年6月1日以降の賃料増額請求,被告Aの精算金支払請求,同Bの精算金及び家賃補償額の支払請求についてはいずれも一部を認容し,その余の反訴請求をいずれも棄却する。 神戸地方裁判所第4民事部裁判官太田敬司

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