平成23(許)7 株式買取価格決定申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

裁判年月日・裁判所
平成24年3月28日 最高裁判所第二小法廷 決定 棄却 高松高等裁判所 平成22(ラ)67
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判決文本文4,681 文字)

- 1 - 平成23年(許)第7号株式買取価格決定申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件平成24年3月28日第二小法廷決定 主文 本件抗告を棄却する。 抗告費用は抗告人らの負担とする。 理由 第1 事案の概要 1 本件は,相手方の普通株式を全部取得条項付種類株式とする定款変更に係る株主総会の決議についての反対株主であるとする抗告人らが,相手方に対し,抗告人らの有する株式を公正な価格で買い取ることを請求したものの,その価格の決定につき協議が調わないため,会社法117条2項に基づき,それぞれ当該株式の価格の決定の申立て(以下「本件買取価格の決定の申立て」という。)をした事案である。 2 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。 (1) 相手方は,平成20年10月以前から,大阪証券取引所の市場第二部にその株式を上場していた。その発行に係る株式は,後記(2)アの定款変更の効力発生日以前においては,普通株式のみであり,平成21年1月5日,社債,株式等の振替に関する法律(以下「社債等振替法」という。)128条1項所定の振替株式となった。 (2) 平成21年6月29日に開催された相手方の株主総会において次のアないしウの決議がされ,併せて,同日開催された普通株式の株主による種類株主総会においてイの決議がされた(以下,上記各株主総会を「本件総会」と総称する。)。 - 2 -ア残余財産の分配についての優先株式であるA種種類株式を発行することができる旨定款を変更する。 イ相手方の普通株式を全部取得条項付種類株式とし,その取得対価として全部取得条項付種類株式1株につきA種種類株式を0.00000058 あるA種種類株式を発行することができる旨定款を変更する。 イ相手方の普通株式を全部取得条項付種類株式とし,その取得対価として全部取得条項付種類株式1株につきA種種類株式を0.000000588株の割合をもって交付する旨定款を変更し,この変更の効力発生日を平成21年8月4日とする。 ウ相手方は,取得日を平成21年8月4日と定めて,上記の取得対価によりその全部取得条項付種類株式の全部を取得する。 (3) 抗告人X1は,本件総会に先立ち,上記決議に係る議案に反対する旨相手方に通知し,かつ,本件総会において,同議案に反対する旨議決権の行使をした。 抗告人X2は,本件総会における議決権行使の基準日である平成21年3月31日の時点で,保有する相手方の普通株式を第三者に貸し付けており,本件総会において議決権は行使されなかった。 (4) 抗告人X1は,平成21年7月11日,会社法172条1項に基づき,その当時保有する相手方の株式7万3000株について,全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定の申立てをし,抗告人X2は,同日,その当時保有する相手方の株式8万7000株について,同申立てをした(以下,これらの申立てを「本件取得価格決定の申立て」と総称する。)。 (5) 抗告人X1は,平成21年7月30日,相手方に対し,会社法116条1項に基づき,その当時保有する相手方の株式44万1000株を公正な価格で買い取ることを請求し,抗告人X2は,同日,その当時保有する相手方の株式29万5000株について,同請求をした(以下,これらの請求を「本件買取請求」と総称- 3 -する。)。 (6) 相手方の株式は,平成21年7月29日に上場廃止となり,同年8月4日,振替機関による取扱いが廃止された。抗告人らは,同日までに,社債等振替法154条 請求」と総称- 3 -する。)。 (6) 相手方の株式は,平成21年7月29日に上場廃止となり,同年8月4日,振替機関による取扱いが廃止された。抗告人らは,同日までに,社債等振替法154条3項所定の通知(以下「個別株主通知」という。)の申出をしておらず,抗告人らの申出に係る個別株主通知がされることはなかった。 (7) 平成21年8月4日,前記(2)イの定款変更の効力が生じ,相手方は,同日,全部取得条項付種類株式の全部を取得した。 (8) 抗告人らは,平成21年9月30日,会社法117条2項に基づき,本件買取価格の決定の申立てをした。 (9) 相手方は,本件買取価格の決定の申立てに係る事件の審理において,平成21年11月18日に提出した書面により,抗告人らについて個別株主通知がされていないことを理由に,本件買取価格の決定の申立てが不適法であると主張して争った。 3 原審は,本件買取請求は,相手方の普通株式が全部取得条項付種類株式となったことを前提とする本件取得価格決定の申立てと相矛盾する行為であるから,本件取得価格決定の申立てをした抗告人らが本件買取請求をすることはできず,その結果,本件買取価格の決定の申立ては不適法となると判断して,同申立てを却下すべきものとした。 第2 職権による検討 1 会社法116条1項所定の株式買取請求権は,その申立期間内に各株主の個別的な権利行使が予定されているものであって,専ら一定の日(基準日)に株主名簿に記載又は記録されている株主をその権利を行使することができる者と定め,こ- 4 -れらの者による一斉の権利行使を予定する同法124条1項に規定する権利とは著しく異なるものであるから,上記株式買取請求権が社債等振替法154条1項,147条4項所定の「少数株主権等」に該当することは明 らの者による一斉の権利行使を予定する同法124条1項に規定する権利とは著しく異なるものであるから,上記株式買取請求権が社債等振替法154条1項,147条4項所定の「少数株主権等」に該当することは明らかである。そして,会社法116条1項に基づく株式買取請求(以下「株式買取請求」という。)に係る株式の価格は,同請求をした株主と株式会社との協議が調わなければ,株主又は株式会社による同法117条2項に基づく価格の決定の申立て(以下「買取価格の決定の申立て」という。)を受けて決定されるところ,振替株式について株式買取請求を受けた株式会社が,買取価格の決定の申立てに係る事件の審理において,同請求をした者が株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に個別株主通知がされることを要するものと解される(最高裁平成22年(許)第9号同年12月7日第三小法廷決定・民集64巻8号2003頁参照)。上記の理は,振替株式について株式買取請求を受けた株式会社が同請求をした者が株主であることを争った時点で既に当該株式について振替機関の取扱いが廃止されていた場合であっても,異ならない。なぜならば,上記の場合であっても,同株式会社において個別株主通知以外の方法により同請求の権利行使要件の充足性を判断することは困難であるといえる一方,このように解しても,株式買取請求をする株主は,当該株式が上場廃止となって振替機関の取扱いが廃止されることを予測することができ,速やかに個別株主通知の申出をすれば足りることなどからすれば,同株主に過度の負担を課すことにはならないからである。 2 これを本件についてみるに,本件買取請求を受けた相手方において抗告人らが株主であることを争っているにもかかわらず,本件買取価格の決定の申立ての審理終結までの間に個別株主通知がされることはなかっ 2 これを本件についてみるに,本件買取請求を受けた相手方において抗告人らが株主であることを争っているにもかかわらず,本件買取価格の決定の申立ての審理終結までの間に個別株主通知がされることはなかったのであるから,抗告人らは- 5 -自己が株主であることを相手方に対抗するための要件を欠くことになり,本件買取請求は不適法となる。 そうすると,本件買取価格の決定の申立ては,適法な株式買取請求をした者ではない者による申立てとして不適法である。 第3 抗告人らの抗告理由について 1 所論は,抗告人らが既に本件取得価格決定の申立てをしていることを理由に本件買取価格の決定の申立てを不適法であるとした原審の判断には,会社法116条の解釈適用を誤った違法があるというのである。 2 会社法172条1項が全部取得条項付種類株式の取得に反対する株主に価格の決定の申立て(以下「取得価格決定の申立て」という。)を認めた趣旨は,その取得対価に不服がある株主の保護を図ることにあると解され,他方,同法116条1項が反対株主に株式買取請求を認めた趣旨は,当該株主に当該株式会社から退出する機会を付与することにあるから,当該株主が取得対価に不服を申し立てたからといって,直ちに当該株式会社から退出する利益が否定されることになるものではなく,また,当該株主が上記利益を放棄したとみるべき理由もない。したがって,株主が取得価格決定の申立てをしたことを理由として,直ちに,当該株式についての株式買取請求が不適法になるものではない。 しかしながら,株式買取請求に係る株式の買取りの効力は,同請求に係る株式の代金の支払の時に生ずるとされ(同法117条5項),株式買取請求がされたことによって,上記株式を全部取得条項付種類株式とする旨の定款変更の効果や同株式の取得の効果が妨げら 効力は,同請求に係る株式の代金の支払の時に生ずるとされ(同法117条5項),株式買取請求がされたことによって,上記株式を全部取得条項付種類株式とする旨の定款変更の効果や同株式の取得の効果が妨げられると解する理由はないから,株式買取請求がされたが,その代金支払までの間に,同請求に係る株式を全部取得条項付種類株式とする旨の定- 6 -款変更がされ,同株式の取得日が到来すれば,同株式について取得の効果が生じ(同法173条1項),株主は,同株式を失うと解される。そして,株式買取請求及び買取価格の決定の申立ては,株主がこれを行うこととされており(同法116条1項,117条2項),株主は,株式買取請求に係る株式を有する限りにおいて,買取価格の決定の申立ての適格を有すると解すべきところ,株式買取請求をした株主が同請求に係る株式を失った場合は,当該株主は同申立ての適格を欠くに至り,同申立ては不適法になるというほかはない。 3 これを本件についてみるに,抗告人らの有する本件買取請求に係る普通株式は,平成21年8月4日,全部取得条項付種類株式となり,相手方がこれを全部取得し,抗告人らは,同日,同株式を失ったのであるから,抗告人らは,同株式の価格の決定の申立て適格を欠くに至り,同申立ては不適法というべきである。 そうすると,本件買取価格の決定の申立てが不適法であるとして同申立てを却下すべきものとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。 第4 結論以上によれば,本件買取価格の決定の申立てを却下すべきものとした原審の判断は,いずれにせよ結論において是認することができるから,抗告は棄却するのが相当である。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官竹内行夫裁判官古田 原審の判断は,いずれにせよ結論において是認することができるから,抗告は棄却するのが相当である。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官竹内行夫裁判官古田佑紀裁判官須藤正彦裁判官千葉勝美)

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