- 1 -主文 本件各訴えをいずれも却下する。 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 主位的請求処分行政庁がAの滞納に係る平成11年度所得税等及び平成13年度所得税の徴収のために平成17年9月14日付けで別紙差押債権目録記載の各債権に対してした各差押処分をいずれも取り消す。 予備的請求処分行政庁がAの滞納に係る平成11年度所得税等及び平成13年度所得税の徴収のために平成17年9月14日付けで別紙差押債権目録記載の各債権に対してした各差押処分がいずれも無効であることを確認する。 第2事案の概要 本件は,処分行政庁がAの滞納に係る所得税等の滞納処分として別紙差押債権目録記載の各債権につき各差押処分を行ったところ,当該各債権の真の債権者であると主張する原告会社及び第三債務者である原告Bが,主位的に上記各差押処分の取消しを,予備的に上記各差押処分が無効であることの確認を求めている事案である。なお,以下においては,原告ら両名につき,主位的請求に係る訴えを「本件取消しの訴え」と,予備的請求に係る訴えを「本件無効確認の訴え」といい,両者を併せて「本件各訴え」という。 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)( )当事者等 アAは,平成10年12月4日,業務上横領,法人税法違反被疑事件により逮捕され,続いて勾留された上,同月22日,所得税法違反で起訴され- 2 -(以下「本件刑事事件」という,平成11年3月19日,第1回公判期。)日が開かれた。弁護士である原告Bは,平成10年12月4日,Aから私選弁護人に選任され,Aを被告人とする刑事事件の保釈保証金として使用するものとして下記①及び②のとおり当該各年月日に各金員を預かり, 日が開かれた。弁護士である原告Bは,平成10年12月4日,Aから私選弁護人に選任され,Aを被告人とする刑事事件の保釈保証金として使用するものとして下記①及び②のとおり当該各年月日に各金員を預かり,これらをいずれも名古屋地方裁判所に納付した(以下,下記①を「本件第1預託金」と,下記②を「本件第2預託金」と,下記①及び②を併せて「本件各預託金」といい,本件各預託金に係る原告Bに対する各預託金返還請求権を「本件各預託金債権」という。ただし,後記4( )のとおり,原告 Bが本件各預託金を誰から預かったかについては争いがあり,原告らは,原告会社から預かったものであると主張し,被告は,Aから預かったものであると主張しており,本件各預託金債権が原告会社又はAのいずれに帰属するかが争点となっている。(甲26))。 記①平成11年10月22日1億円②平成14年9月4日1000万円イ原告会社(設立当初の商号は「株式会社C)は,平成8年5月,A,」D外1名を取締役とし,Dを代表取締役として設立されたが,D外1名は,,,,平成11年1月31日にAは同年4月20日にそれぞれ辞任し同日Eが原告会社の代表取締役に就任し,Aの父であるF及びAの妻であるGが原告会社の取締役に就任した。原告会社は,平成17年4月1日「株,式会社H」に商号変更を行った上(同年5月24日登記,同月2日,会)社分割により,株式会社Iを設立し,Eが同社の代表取締役に就任した。 Eは,同月23日,原告会社の代表取締役を辞任したが,同日,原告会社の取締役に重任されている(甲23,26,乙11,12,29,弁論。 の全趣旨),,,(「」ウAは本件刑事事件に係る逮捕の当時原告会社J株式会社以下J- 3 -。)。(,,,という等の関連会社約 甲23,26,乙11,12,29,弁論。 の全趣旨),,,(「」ウAは本件刑事事件に係る逮捕の当時原告会社J株式会社以下J- 3 -。)。(,,,という等の関連会社約13社を経営していた甲23乙11 31,34)( )本件訴訟に至る経緯 ア債権差押処分処分行政庁は,本件各預託金はいずれもAが株式会社C名で原告Bに預け入れたものであり,本件各預託金債権はAに帰属するとの判断の下に,平成17年9月14日,Aの滞納に係る所得税等の徴収のため,国税徴収法(以下「徴収法」という)62条に基づき,本件各預託金債権を被差。 押債権とする各差押処分を行い(以下「本件各差押処分」という,同月。)15日,原告Bに対し,各債権差押通知書を送達するとともに,同日,Aに対し,本件各差押処分に係る各差押調書謄本を送達した。本件各差押処分における被差押債権の表示は,別紙差押債権目録記載1及び同2のとおりであった(甲3ないし6,乙7,弁論の全趣旨)。 イ不服申立て(その1)A及び原告Bは,平成17年11月11日,処分行政庁に対し,本件各差押処分についてそれぞれ異議申立てをしたが,処分行政庁は,平成18年2月2日,これらをいずれも却下する決定をした。A及び原告Bは,これを不服として,同年3月3日,国税不服審判所長に対し,それぞれ審査請求をしたが,国税不服審判所長は,同年10月16日,これらをいずれも棄却する裁決をし,各裁決書謄本は,同月17日,A及び原告Bに送達された(甲7ないし18,弁論の全趣旨)。 ウ訴え提起原告らは,平成19年4月17日,本件各訴えを提起した(顕著な事。 実)エ不服申立て(その2)原告会社は,平成19年4月17日,本件各差押処分について国税不服- 4 -,,,審判所長に 原告らは,平成19年4月17日,本件各訴えを提起した(顕著な事。 実)エ不服申立て(その2)原告会社は,平成19年4月17日,本件各差押処分について国税不服- 4 -,,,審判所長に対し審査請求をしたが国税不服審判所長は同年6月14日国税通則法(以下「通則法」という)77条4項に規定する1年の不服。 申立期間が経過し,同項ただし書に規定する「正当な理由」もないから,原告会社の審査請求は不適法であるとしてこれを却下する裁決をした乙。 (5の1・2,同6) 争点 ( )本件各訴えの原告適格の有無 ( )原告会社の本件取消しの訴えに関する不服申立前置の有無 ( )本件各預託金債権の帰属 当事者の主張の要旨( )争点( )(本件各訴えの原告適格の有無)について (被告の主張),,国は徴収法により滞納者の第三債務者に対する債権を差し押えた場合被差押債権の取立権を取得し(同法67条1項,滞納者に代わって債権)者の立場に立つことになるが,この場合の国と第三債務者との関係は,一般民事上の債権者対債務者の関係と何ら異ならず,第三債務者が任意に債務の履行をしなければ,国がその取立権を行使するには,民事訴訟法の定める手続に従い,被差押債権について債務名義を得た上,一般私債権の強制執行手続を執るしかない。そして,被差押債権の不存在を主張する第三債務者としては,国が差押えに基づき債務の履行を求めてきたときに,これを拒絶すれば足りるのであり,国が取立権者となることによって,本来の立場以上に不利益な立場に陥るおそれはない。 したがって,第三債務者は,被差押債権の不存在を理由として,差押処分の取消し又は無効確認を求めるにつき法律上の利益を有しないから,本件各差押処分に係る第三債務者である原告Bは,本件各訴えに はない。 したがって,第三債務者は,被差押債権の不存在を理由として,差押処分の取消し又は無効確認を求めるにつき法律上の利益を有しないから,本件各差押処分に係る第三債務者である原告Bは,本件各訴えにつき原告適格を有しない。 - 5 -(原告Bの主張)第三債務者は,本来は自由になし得る債務者への弁済を一方的に禁じられるのであるし,処分行政庁が取立権者になることによって,被差押債権の帰属を争う一連の手続に巻き込まれることとなり負担が増大するから,これらの点のみをとらえても,その法的地位に変動があると考えられる。 また,第三債務者は,もともと弁済時までに生ずるすべての事由をもって債務者に対抗し得る法的地位を有していたにもかかわらず,弁済禁止の派生的効果として差押えの時点以降に債務者との間に生じた事由は一切主張し得ないという私法上重大な不利益を受けることになるから,その法的地位に変動があるというよりほかはない。 したがって,第三債務者は,一般的に差押処分の違法性について判断を求めることにつき直接的な利益を有するというべきであって,本件各差押処分に係る第三債務者である原告Bも,本件各訴えにつき原告適格を有する。 ( )争点( )(原告会社の本件取消しの訴えに関する不服申立前置の有無) について(被告の主張)通則法115条1項本文は,国税に関する法律に基づく処分の取消訴訟は,審査請求をすることができる処分にあっては,審査請求についての裁決を経た後でなければ提起することができないと定めるところ,この裁決とは適法な審査請求に基づいてされた裁決を指すのであって,不服申立てが不服申立期間経過後にされたものであるため不服申立手続においても本案審理を受けることなく却下されたときは,同項本文に規定する裁決を経たことにはならない(最高裁昭和30年 すのであって,不服申立てが不服申立期間経過後にされたものであるため不服申立手続においても本案審理を受けることなく却下されたときは,同項本文に規定する裁決を経たことにはならない(最高裁昭和30年月28日第二小法廷判決・民 集9巻1号60頁参照。原告会社は,本件各差押処分があった日の翌日)から起算して1年を経過した後の平成19年4月17日,国税不服審判所- 6 -長に対し,本件各差押処分を不服として審査請求を行ったが,国税不服審判所長は,同年6月14日,通則法77条4項に規定する1年の不服申立期間を徒過した不適法なものであるとして却下裁決を行った。 したがって,原告会社に係る本件取消しの訴えは,不服申立前置を欠く不適法な訴えである。 (原告会社の主張)原告会社は,処分行政庁があえて原告会社に対して本件各差押処分に関する通知を行わなかったため,不服申立てを行う機会を奪われたのであるから,通則法115条1項本文に規定する不服申立前置が適用されないというべきである。仮に同項本文が適用されるとしても,原告会社は,平成19年4月12日になって初めて本件各差押処分を知ったのであるから,通則法77条4項ただし書に規定する「正当な理由」があるというべきであり,原告会社が同月17日に国税不服審判所長に対して行った審査請求は有効である。 したがって,原告会社に係る本件取消しの訴えは,適法な訴えである。 ( )争点( )(本件各預託金債権の帰属)について (原告らの主張)本件各預託金債権に関する実質的な出捐者は,原告会社の元代表取締役であるEであり,Eが原告会社(当時の商号は「株式会社C)に貸し付」け,Eから貸付けを受けた原告会社が,原告Bに当該貸付金を刑事保釈保証金として預託したものである。このような事情があるため,本件各預託金債権は ,Eが原告会社(当時の商号は「株式会社C)に貸し付」け,Eから貸付けを受けた原告会社が,原告Bに当該貸付金を刑事保釈保証金として預託したものである。このような事情があるため,本件各預託金債権は原告会社に帰属するにもかかわらず,処分行政庁は,Aとは別の法人格を有する原告会社の法人格を否認し,原告会社の有する債権をAの有する債権であるとの認定の下に本件各差押処分を行っているから,本件各差押処分には明白かつ重大な違法があるのであって,取り消されるべきであるし,無効であるというべきである。 - 7 -(被告の主張)原告らの主張を裏付ける客観的な証拠は存在せず,その主張自体不自然・不合理である一方,平成11年10月22日,Aが実質的に支配していたJに対し,同社を登記名義人とする東京都目黒区α×××番地20所在の区分所有建物及びその敷地権(以下「β物件」という)の売買残代金。 1億円以上が支払われたことから,これが本件第1預託金の原資であると考えられ,本件第2預託金もAが準備したものと考えられることから,本件各預託金債権は,Aに帰属するというべきである。 第3当裁判所の判断 原告Bの本件各訴えの原告適格の有無(争点( ))について ( )行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条 1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に 益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである(最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照。そして,当該)処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその- 8 -,,趣旨及び目的をも参酌し当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項参照。 )そして,行政事件訴訟法36条は,無効等確認の訴えの原告適格について規定するが,同条にいう当該処分の無効等の確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」の意義についても,上記取消訴訟の原告適格の場合と同義に解するのが相当である(最高裁平成元年(行ツ)第130号同4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁参照。 )( )上記( )の観点から,本件各差押処分に係る第三債務者である原告Bが 本件各訴えに関する原告適格を有するか否かについて検討する。 ア本件各差押処分の根拠法規である徴収法は,国税の滞納処分 )上記( )の観点から,本件各差押処分に係る第三債務者である原告Bが 本件各訴えに関する原告適格を有するか否かについて検討する。 ア本件各差押処分の根拠法規である徴収法は,国税の滞納処分その他の徴収に関する手続の執行について必要な事項を定め,私法秩序との調整を図りつつ,国民の納税義務の適正な実現を通じて国税収入を確保することを目的とし同法1条国税と私債権との関係につき国税優先の原則同(),,(法8条)を定める一方で,国税と担保権付債権との関係につき,原則として法定納期限を基準として,納税者の財産上に担保権が設定され又は成立した時期との先後によって優劣を決するなどして,一定の例外を認めるとともに(同法15条ないし25条,滞納処分において差押財産を選択す)るに当たっては,滞納処分の執行に支障がない限り,その財産につき第三者が有する権利を害さないように努めるべきことを定め(同法49条,)納税者に他の財産があるにもかかわらず第三者の権利の目的となっている財産を差し押さえた場合には,当該第三者に税務署長に対する差押換の請求権を付与するなど(同法50条,51条,58条,59条,滞納者の)財産につき権利を有する第三者の利益を上記の限度で尊重すべきことを定め,私法秩序の尊重と租税徴収確保の要請との調整を図っている。 - 9 -そして,徴収職員は,滞納者に督促状を発しても所定の期限までに完納しないなどの事由があるときは,滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならないが(同法47条1項,事柄の性質上,滞納処分とし)ての差押えの対象となる財産は,差押えをする時に滞納者に帰属しているものでなければならず,債権の差押えに当たっては,被差押債権が滞納者に帰属するか否かの判定について,借用証書,預金通帳,売掛帳その他取 の差押えの対象となる財産は,差押えをする時に滞納者に帰属しているものでなければならず,債権の差押えに当たっては,被差押債権が滞納者に帰属するか否かの判定について,借用証書,預金通帳,売掛帳その他取引関係帳簿書類等により滞納者に帰属すると認められるか否かを参考として行うものとされている(国税徴収法基本通達47条関係5,20( )参 照。 )滞納処分としての債権の差押えは,第三債務者に対する債権差押通知書,(,の送達によって行いその効力はその送達の時に生じ徴収法62条1項3項,債権が差し押さえられると,第三債務者はその履行を,滞納者は)債権の取立てその他の処分を禁じられる(同条2項。徴収職員は,滞納)者の債権を差し押さえたときは,差押調書を作成し,その謄本を滞納者に()。 ,交付しなければならない同法54条2号差し押さえた債権について徴収職員は,その取立てをすることができるが(同法67条1項,第三)債務者が任意に履行しないときは,必要に応じ,国が主体となって,給付の訴えの提起,支払督促の申立て等の手続を執ることとなる(同通達67条関係4参照。 )イ上記アの徴収法の体系・構造等にかんがみれば,徴収法の趣旨及び目的は,私法秩序との調整を図りつつ,滞納処分その他の徴収手続により国税収入を確保するというものであるところ,この私法秩序との調整とは,一般私債権に対する優先徴収権を原則的に認めつつ,私有財産の保護,契約自由の原則に基づく経済活動の自由を確保する観点から,滞納者の財産につき権利を有する第三者の利益を一定の限度で尊重することを内容とするものと解され,滞納処分としての債権差押えに係る第三債務者の利益の尊- 10 -重まで含むものではないと解される。 この点,滞納処分としての債権の差押えは,第三債務者に対する債権 ることを内容とするものと解され,滞納処分としての債権差押えに係る第三債務者の利益の尊- 10 -重まで含むものではないと解される。 この点,滞納処分としての債権の差押えは,第三債務者に対する債権差押通知書の送達によって行い,その効力はその送達の時に生じるものとされているが(徴収法62条1項,3項,このような制度が採用されたの)も,第三債務者の利益の保護の目的で設けられたものではなく,第三債務者に対し,債権差押通知書を送達するとともに被差押債権の履行を禁じることを通じて(同条2項。なお,民法481条1項参照,債権の差押え)による処分禁止の効果の実現を手続的に担保することを目的としたものであって,第三債務者の利益の保護の目的に出たものではないと解される。 また,滞納処分としての差押えの対象となる財産は,差押えをする時に滞納者に帰属しているものでなければならないと解され,債権の差押えに当たっては,前述の基準に従って被差押債権が滞納者に帰属するか否かの判定が行われているが(同通達47条関係5,20( ) ,これらの徴収法 7 )の解釈・運用が,第三債務者に対して債権を有する第三者の利益の保護を目的とするものであって,第三債務者の利益の保護の目的に出たものではないことも明らかである。 以上検討したところによれば,徴収法及びその関係法令には,滞納処分としての債権差押処分に係る第三債務者の利益を保護すべきものとする趣旨を含むと解される規定は存しない。 ウそして,国が,滞納国税の徴収のため,徴収法に基づき滞納者の第三債,,務者に対する債権を差し押さえた場合国は被差押債権の取立権を取得し滞納者に代わって債権者の立場に立ち,その権利を行使し得るにとどまるものと解されるところ,仮に,滞納者に帰属しない債権又は既に消滅した債権を被差押債権とする さえた場合国は被差押債権の取立権を取得し滞納者に代わって債権者の立場に立ち,その権利を行使し得るにとどまるものと解されるところ,仮に,滞納者に帰属しない債権又は既に消滅した債権を被差押債権とするなど,徴収法又はその関係法令に違反した債権差押えが行われた場合であっても,第三債務者としては,債権差押処分前から滞納者に対して有しているすべての異議及び抗弁を差押債権者である国- 11 -に対して対抗することができるのであって,国が差し押さえた債権の取立訴訟を提起した場合にも,この訴訟において,被差押債権の不存在(滞納者への帰属の欠如を含む)又は消滅等の事由を主張し,そのような事由。 が認められる場合には,国の請求を棄却する旨の判決がされ,徴収手続が効を奏しないことになるのであるから,債権差押処分がされても第三債務者が法律上の不利益を被ることはないと解される(最高裁平成13年(許)第30号同14年6月13日第一小法廷決定・民集56巻5号1014頁参照。 )したがって,徴収法及びその関係法令において,滞納処分としての債権差押処分において考慮されるべき利益の中に,これによって害されることとなるものとして第三債務者の法律上の利益(権利又は法律上保護された利益)が含まれるものとは解されない。 エ以上によれば,滞納処分としての債権差押処分につき,上記イで検討した徴収法及び関係法令の趣旨及び目的並びに上記ウで検討した当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を総合して考慮すると,債権差押処分に係る第三債務者は,当該差押処分の取消し又は無効確認を求めるにつき法律上の利益を有しないものとして,その取消訴訟又は無効確認訴訟における原告適格を有しないものと解するのが相当である。 したがって,本件各差押処分に係る第三債務者である原告Bは,本件各訴えに につき法律上の利益を有しないものとして,その取消訴訟又は無効確認訴訟における原告適格を有しないものと解するのが相当である。 したがって,本件各差押処分に係る第三債務者である原告Bは,本件各訴えに関する原告適格を有しないというべきである。 オこの点,原告Bは,債権差押処分によって第三債務者は被差押債権の帰属を争う一連の手続に巻き込まれることとなり負担が増大する旨主張するが,取立訴訟を提起されて応訴するなどの負担が生ずることがあるとしても,これは事実上のものにとどまり,これをもって,第三債務者の法律上の利益(権利又は法律上保護された利益)が害されるものということはできない。 - 12 -また,原告Bは,本来は自由になし得る債務者への弁済を一方的に禁じられ,もともと弁済時までに生ずるすべての事由をもって債務者に対抗し得る法的地位を有していたにもかかわらず,差押処分時以降に債務者との間に生じた事由は一切主張し得ないという私法上重大な不利益を受けることになるから,その法的地位に変動がある旨主張する。しかし,債権差押処分によって債務の内容に何ら変動はなく,債権差押処分後の弁済及び債務の消滅又はその内容の変更を目的とする契約の制限という効果は,債務者の権能が差押処分によって制限されることから生ずるいわば反射的効果にすぎず,第三債務者としては,その制約に反しない限り,債務者に対するあらゆる異議及び抗弁をもって差押債権者に対抗することができると解されるから(最高裁昭和39年(オ)第155号同45年6月24日大法廷判決・民集24巻6号587頁参照,これをもって,第三債務者自身の)法律上の利益(権利又は法律上保護された利益)が害されるものということはできない。なお,類似の手続である民事執行法による債権差押手続において,第三債務者が執行抗告を提起し って,第三債務者自身の)法律上の利益(権利又は法律上保護された利益)が害されるものということはできない。なお,類似の手続である民事執行法による債権差押手続において,第三債務者が執行抗告を提起し得るとしても,執行抗告の申立適格には「法律上の利益を有する者」との限定はないところ,不存在(債務者への帰属の欠如を含む)又は消滅等の事由の存する被差押債権につき。 債権差押命令が発付されても,第三債務者が法律上の不利益を被ることはなく,そのような事由は執行抗告の理由にならないと解されること(前掲最高裁平成13年(許)第30号同14年6月13日第一小法廷決定参照)からすると,上記の判断が左右されるものとは解されない。( )したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告Bの本件各 訴えは,いずれも不適法であるから,却下を免れない。 原告会社の本件各訴えの原告適格の有無(争点( )。争点( )(本件各預託 金債権の帰属)を含む)について。 ,,,( )原告会社は本件各預託金債権はAではなく原告会社に帰属するので - 13 -本件各差押処分は違法であると主張し,主位的にその取消しを,予備的にこれが無効であることの確認を求めている。そこで,本件各預託金債権の帰属が問題となるが,原告会社は本件各差押処分の名宛人たる滞納者ではないから,抗告訴訟である本件各訴えを審理するに当たっては,まず,本件各訴えに関して原告会社が原告適格を有するか否かを判断する必要があるところ,原告適格に関して規定する行政事件訴訟法9条1項,36条における「法律上の利益を有する者」とは,上記1( )のとおり,当該処分により自己の権 利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうことにかんがみると,本件各訴え 「法律上の利益を有する者」とは,上記1( )のとおり,当該処分により自己の権 利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうことにかんがみると,本件各訴えのように,滞納処分としての債権差押処分がされた場合において,第三者が当該被差押債権は自己に帰属すると(すなわち自己が当該被差押債権の債権者であると)主張したときは,当該第三者が当該被差押債権の債権者であると証拠上認定できるのであれば,当該第三者は上記「法律上の利益を有する者」に当たるが,そのように証拠上認定できない場合には,特段の事情のない限り,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれがあるとはいえないから,当該第三者は上記「法律上の利益を有する者」には当たらないと考えられる。そして,処分の取消し又は無効確認を訴求する原告適格に関する立証責任は原告に課されると解されることも併せ考えると,原告会社が,本件各預託金債権が自らに帰属することの立証責任を負うものと解される。 本件では,被告は,原告Bについてのみその原告適格を争い,原告会社の原告適格は争っていないが,訴訟要件にかかわる問題であるから,以下,原告会社の原告適格につき,職権をもって,争点( )の検討に先立ち,その前 提問題となる争点( )の検討を含め,判断することとする。 ,,,( )前提事実争いのない事実摘示した各証拠及び弁論の全趣旨によれば 以下の各事実を認めることができる。 - 14 -アAの経営する関連会社の一つであるJは,不動産の所有管理等を目的として昭和33年4月に設立された株式会社であるが,Aは,平成8年7月16日,同社の代表取締役に就任した。Aは,前提事実( )アのとおり業 務上横領,法人税法違反 るJは,不動産の所有管理等を目的として昭和33年4月に設立された株式会社であるが,Aは,平成8年7月16日,同社の代表取締役に就任した。Aは,前提事実( )アのとおり業 務上横領,法人税法違反被疑事件で平成10年12月4日に逮捕された直,,,後の同月14日に同社の取締役を辞任し代表取締役を退任したが同日Aの妻であるGが代表取締役に就任し,Aの父であるFが取締役に就任した。なお,G及びFは,平成12年5月25日に同社の取締役を退任したが,この退任登記は平成16年6月10日までされなかった。また,平成,(。 11年当時のJの株主構成は同様にAの経営する関連会社有限会社K平成11年6月までAが代表取締役,Gが取締役,同年7月以降はFが代表取締役,Aの母であるLが取締役)が全株式を保有するというものであった(乙20,28ないし32,弁論の全趣旨)。 イA及びその妻であるGは,平成9年12月25日当時,β物件を共有していたが(持分割合は,Aが10分の9,Gが10分の1,同日売買を)原因として,同月26日,Jに対し,共有者全員持分全部移転登記を経由した(甲23,乙22の1・2)。 ウEは,平成10年3月に不動産リース業を営む会社を退職した後無職であったが,同年6月,Aと知り合い,同年7月から,Jに部長として勤務し始めた。Eは,Aの経営する関連会社約13社の事業の見直し,統廃合等の検討を行うなどしていたが,同年12月4日にAが逮捕された後は,原告Bを通じてAの指示を受けつつ,Aの経営する関連会社の運営に携わるようになり,平成11年4月20日には,前提事実( )イのとおり原告 会社の代表取締役に就任した(甲23)。 エAが逮捕された後,Aの経営する関連会社の資金繰りが苦しくなったため,Eは,A所有の高級自動車を売却して資 月20日には,前提事実( )イのとおり原告 会社の代表取締役に就任した(甲23)。 エAが逮捕された後,Aの経営する関連会社の資金繰りが苦しくなったため,Eは,A所有の高級自動車を売却して資金繰りに充てるなどしてきたが,平成11年6月ころから,Aの意向に従い,その当時Gらが居住して- 15 -いたJ名義のβ物件を売却して本件刑事事件に係るAの保釈保証金を捻出,()する計画を検討しこの計画についての検討状況を原告Bに書簡乙21等で報告し,原告Bを通じてAからの指示を受けつつ,複数の不動産業者を介して,売却先を探す作業を行った。そして,同年9月28日,JとM株式会社(以下「M」という)との間で,β物件を代金1億5000万。 円(支払期日同年10月7日)で売却する旨の売買契約が締結され,同年,,9月28日その代金のうち3000万円が手付金として現金で支払われEがこれを受領した。Eは,Aの意向に従い,この3000万円については,Aの経営する関連会社の運転資金に充てた。残代金1億2000万円については,M側の事情で支払が遅れたが,同年10月22日,現金で支払われ,Eがこれを受領した。β物件については,Mから転売を受けた株式会社Nに対し,同日売買を原因として,同日,Jから中間省略で所有権。 ((,。),移転登記が経由された甲23ただし上記認定に反する部分を除く乙21ないし27,弁論の全趣旨)オEは,平成11年10月22日,上記エのとおりβ物件の売買残代金を受領した後,東京から原告Bのいる名古屋まで現金1億円を自家用車で運び,同日深夜,原告Bに対し,本件刑事事件に係る保釈保証金に充てるべくこの現金1億円を預けたが(本件第1預託金,その際,原告Bは,E)から,預り証の宛名は原告会社名(当時の商号は「株式会社C)で発 び,同日深夜,原告Bに対し,本件刑事事件に係る保釈保証金に充てるべくこの現金1億円を預けたが(本件第1預託金,その際,原告Bは,E)から,預り証の宛名は原告会社名(当時の商号は「株式会社C)で発行」するように依頼されたため「株式会社C」宛ての預り証を発行した。本,件刑事事件については第1審が有罪判決であったため,Aは,平成14年9月4日,原告Bに対し,控訴に際しての追加保釈保証金に充てるべく現金1000万円を自ら直接預けたが(本件第2預託金,その際,原告B)は,Aから,預り証の宛名は原告会社名(当時の商号は「株式会社C)」で発行するように依頼されたため「株式会社C」宛ての預り証を発行し,た(甲1,3(3枚目,4(3枚目,23,26,弁論の全趣旨)。 ))- 16 -( )そこで,上記認定事実及び前提事実に基づき検討するに,まず,本件第 1預託金の金額は1億円と相当高額のものであるところ,Eが,本件刑事事件に係るAの保釈保証金を捻出するために売却の計画を進めたβ物件の売買残代金として現金1億2000万円を受領した日と同じ日(平成11年10月22日)に,現金1億円を自ら自家用車で名古屋まで運び,これを本件刑事事件に係るAの保釈保証金として原告Bに預けていることからすると,本件第1預託金の原資には,上記売買残代金の一部が充てられたものと推認される。そして,(ア)β物件は,Jに登記名義が移される前は,Aが妻と共に共有しており(Aの持分は10分の9),Aの逮捕後にその売却の検討が始まった平成11年6月ころ,β物件には妻らが居住し,その売却の話も妻の了解の上で進められたものとうかがわれること,J及び原告会社はいずれもAの経営する関連会社の一部で,現に,Aは,逮捕直後の辞任までJの代表取締役かつ原告会社の取締役であり,その ,その売却の話も妻の了解の上で進められたものとうかがわれること,J及び原告会社はいずれもAの経営する関連会社の一部で,現に,Aは,逮捕直後の辞任までJの代表取締役かつ原告会社の取締役であり,その辞任後は両社の取締役に妻と父を,Jの代表取締役に妻を就任させ,Jの株主構成も,同様の役員構成を採るAの経営する関連会社が全株式を保有するというものであったことに加え,(イ)本件刑事事件につき原告Bを私選弁護人として選任して同事件に係る事務全般を同人に委任したのはA自身であって,Eは,原告Bを通じて,勾留中のため自ら行動できないAの指示を受けつつ,Aの経営する関連会社の運営全般を代行するとともに,β物件の売却により本件刑事事件に係るAの保釈保証金の捻出を進めたにすぎないことをも併せ考えると,結局,Eは,現金1億円を原告Bに預けた当時,原告会社の代表取締役ではあったものの,実質的には,J及び原告会社を支配するAの使者として,専らAの利益を図る目的で,本件刑事事件に係る委任事務であるAの保釈手続をその受任者である原告Bが遂行するのに必要な金員に充てるべく,その委任者であるAがEを通じてその原資とするために捻出した現金をもって,本件第1預託金を原告Bに預託したものと推認されるというべきである。 - 17 -そして,本件第2預託金は,A自身が,原告Bに対し,本件刑事事件に係る控訴に際しての追加保釈保証金に充てるべく現金1000万円を直接預けていることからすると,本件第1預託金の預託に係る上記の経緯に照らしても,Aが自ら原告Bに預託したものと推認されるというべきである。 ,,(),,( )この点Eは陳述書甲23において①本件第1預託金について 平成11年9月ころ,原告Bから本件刑事事件に係るAの保釈保証金として1億円が必要と言 きである。 ,,(),,( )この点Eは陳述書甲23において①本件第1預託金について 平成11年9月ころ,原告Bから本件刑事事件に係るAの保釈保証金として1億円が必要と言われたが,Aが有している債権は全く回収できなかったため,Eが保釈保証金1億円を調達し,原告会社に貸し付ける形で立て替えることを決め,自宅に保管していた現金8000万円のうち7500万円と自らの知人2名から借り入れた2500万円とを合わせて合計1億円の現金を準備し,同年10月22日,これを原告Bに預けたものであり,自宅に保管していた現金8000万円は,昭和63年ころから平成4年ころまでの間,γにあるO株式会社(以下「O」という)を介して行った株取引を通じて。 上げた利益によるものである旨,②本件第2預託金(Aが平成14年9月4日に原告Bに預けた1000万円)についても,そのうち300万円は,自らが知人から借り入れてAに渡したものであり,残りの700万円は,Aが調達したものではあるものの,自らとAとの間で原告会社が出捐した本件第1預託金に係る1億円の利息として原告会社にAが支払うとの合意があった旨などを供述する。 しかし,Eが昭和63年9月から平成4年8月までOを通じて株取引を行っていたことを裏付ける証拠(甲27)は提出されているものの,この証拠によっても,その株取引による利益の総額は必ずしも明らかではない上,株取引を終了した平成4年8月から本件第1預託金を原告Bに預けた平成11年10月までには7年余を経過していることからすると,自ら投資取引を行っていたEが,そのように長期間にわたって8000万円もの高額の現金を自宅に保管していたという供述内容自体が,保安上の観点からも資産運用上- 18 -の観点からも不自然・不合理である上,2500万円を借 たEが,そのように長期間にわたって8000万円もの高額の現金を自宅に保管していたという供述内容自体が,保安上の観点からも資産運用上- 18 -の観点からも不自然・不合理である上,2500万円を借り入れた知人の氏名も明らかにされておらず,借入れの事実を裏付ける借用証書等の客観的証拠も存しないことからすると,本件第1預託金の調達の経緯・事情に関する上記①の供述は,にわかに採用し難いものといわざるを得ない。また,平成11年当時,上記( )エのとおり,Aの経営する関連会社の資金繰りは苦し く,特に原告会社は,平成11年3月期決算では,年間売上高はわずかに約744万円である一方,営業損失は約1477万円に及び,同月現在の現金・預金の合計額も10万円に満たず,欠損金が約3772万円に及ぶ状況であり(乙8,平成12年3月期決算でも,営業利益は約153万円が計上)されているものの,年間売上高はわずかに約374万円,現金・預金の合計額も約106万円であり,欠損金も約3513万円に及ぶ(乙9)など,当時の経営状態は相当逼迫していたことがうかがわれ,同社の運営を代行していたEはこの経営状態を当然に熟知していたはずであるにもかかわらず,何らの担保も取ることなく自らの出捐と借入れで1億円を調達して原告会社に貸し付け,しかも,これを自ら原告Bに預けた日と同じ日に,その資金調達のため売却の話を進めたβ物件の売買残代金1億2000万円を自ら受領しながら,これを一切貸付けの原資に用いることなく全額をJの金庫に保管したというのは,供述内容自体著しく不自然である(なお,原告会社に係る平成12年3月期の法人税確定申告書添付の主要勘定明細(乙9)には,科目「差入保証金,金額「,明細「B弁護士」と記載されている」」100,000,000ものの,これに対応するも 告会社に係る平成12年3月期の法人税確定申告書添付の主要勘定明細(乙9)には,科目「差入保証金,金額「,明細「B弁護士」と記載されている」」100,000,000ものの,これに対応するものとしてEからの同額の借入れについては何ら記載されておらず,上記供述は会計処理上の裏付けも欠くものといわざるを得ない。そして,EがAのために保釈保証金1億円を用立てるのであれば,。)自ら直接Aに対してこの金員を貸し付ければよいところ,殊更に経営状態の逼迫した原告会社に無担保で貸し付けるということ自体,迂遠かつ不自然である上,原告会社は,訴状においては,本件第1預託金の原資について何ら- 19 -明らかにせず,被告から平成19年9月11日付け準備書面( )において原 告会社の逼迫した経営状態を審らかにされるや,Eから本件第1預託金の原資を調達した旨の主張を始めたのであって,このような経緯にも照らし,上記( )を含めて以上に検討したところを総合すると,上記①の供述は,採用 することができないというべきである。 そして,Aが原告Bに自ら直接預けた本件第2預託金に関するEの上記②の供述も,氏名を特定しない知人からの借入れ及びAとの間の利息の合意の双方につき,客観的な証拠による裏付けを欠き,Eの原告会社に対する貸付金につきAが利息を支払うとするなど不自然かつ不合理であって,上記( ) を含めて以上に検討したところを総合すると,採用することができないというべきである。 ( )また,原告Bが本件各預託金債権に関して作成した各預り証の宛名は原 告会社宛てとなっている(甲1,3(3枚目),4(3枚目))ところ,原告Bは,陳述書(甲26)において,A及びEとの間で,私選弁護人としての報酬1500万円(消費税別)については,裁判所から還付を受けた刑 宛てとなっている(甲1,3(3枚目),4(3枚目))ところ,原告Bは,陳述書(甲26)において,A及びEとの間で,私選弁護人としての報酬1500万円(消費税別)については,裁判所から還付を受けた刑事保釈保証金から充当してよいとの合意を取り付けており,平成17年10月6日に保釈保証金が還付されたので,同月12日から同年12月15日までの間に報酬1500万円を経理処理した旨供述している。この供述によれば,原告BのAに対する報酬債権と原告会社の原告Bに対する本件刑事事件の保釈保証金に係る預託金返還請求権との相殺処理を行う旨の合意がされたことになるが,原告会社においてこのように債権者の異なる債権同士を相殺するとの合意をすること自体が不自然であるし,通例行われない内容の合意が行われるのであれば,後日の紛争を回避すべく合意内容を記載した書面が作成されるのが通常と考えられるところ,そのような合意がされたことを裏付ける客観的な証拠はないことにも照らすと,上記供述の内容からは,かえって,原告B自身が,本件各預託金債権の債権者がAであることを所与の前提として- 20 -上記相殺処理を行ったものと推認するのが自然であり,上記各預り証の宛名が原告会社と記載されたのもE及びAの依頼に基づく名義上の処理にすぎないことをも併せ考えると,上記各預り証の宛名の記載及び原告Bの上記供述内容によっても,上記の認定が左右されるものではない。 ,,,( )以上によれば本件各預託金債権に関しては本件の全証拠によっても 原告会社に帰属するものと認めることはできず,かえって,上記( )のとお り,Aの預託に係る預託金債権として,Aに帰属するものと推認されるというべきである。 ,,,そうすると原告会社は本件各預託金債権の真の債権者とは認められず他に,これらを ,上記( )のとお り,Aの預託に係る預託金債権として,Aに帰属するものと推認されるというべきである。 ,,,そうすると原告会社は本件各預託金債権の真の債権者とは認められず他に,これらを被差押債権とする債権差押処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれがあると解すべき特段の事情の存在も認められない以上,本件各差押処分につき「法律上の利益を有する者」に当たらないと解するのが相当であり,本件各差押処分の取消し又は無効確認を求める本件各訴えについて原告適格を有しないというべきである。 したがって,争点( )について判断するまでもなく,原告会社の本件各訴 えは,いずれも不適法であるから,却下を免れない。 結論 以上によれば,本件各訴えは,その余の点について判断するまでもなく,い,,。 ずれも不適法であるからこれらを却下することとし主文のとおり判決する東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官岩井伸晃- 21 -裁判官三輪方大裁判官小島清二- 22 -(別紙)差押債権目録 Aが原告会社名で下記刑事事件の保釈保証金として平成11年10月22日に原告Bに預け入れた1億円の返還請求権記(事件名)名古屋地方裁判所平成▲年(わ)第▲号外 Aが原告会社名で下記刑事事件の保釈保証金として平成14年9月4日に原告Bに預け入れた1000万円の返還請求権記(事件名)名古屋地方裁判所平成▲年(わ)第▲号外4件
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