令和3(ワ)6908 特許権侵害行為差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年1月30日 大阪地方裁判所
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令和5年1月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和3年(ワ)第6908号特許権侵害行為差止等請求事件口頭弁論終結日令和4年11月28日判決原告アルインコ株式会社 同訴訟代理人弁護士中務尚子同榎本辰則被告株式会社ジャストビギン同訴訟代理人弁護士松本司同田上洋平 同冨田信雄同訴訟代理人弁理士深井敏和 主文 1 被告は、別紙被告製品目録記載の製品を製造し、販売し、販売の申出をし、販売のための展示をしてはならない。 2 被告は、別紙被告製品目録記載の製品及び半製品(別紙被告製品目録に記載の製品の構造を具備しているが製品として完成するに至らないもの)を廃棄せよ。 3 被告は、原告に対し、●(省略)●円及びうち●(省略)●円に対する令和3年8月7日から支払済みまで年5分の割合による金員、うち●(省略)●円に対する令和3年8月7日から支払済みまで年3分の割合による金員を各支払え。 4 原告のその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用は、これを37分し、その10を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 6 この判決は、第3項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文1、2項と同旨 2 被告は、原告に対し、●(省略)●及びうち●(省略)●に対する令和3年8月7日から支払済みまで年5分の割合による金員並びにうち●(省略)●に対する令和3年8月7日から支払済みまで年3分の割合による金員を各支払え。 第2 事案の概要 本件は、別紙特許公報記載の特許(以下「本件特許」といい、その特許権を「本件特許権」という。)を有する原告が、別紙被告製品目録記載の製 3分の割合による金員を各支払え。 第2 事案の概要 本件は、別紙特許公報記載の特許(以下「本件特許」といい、その特許権を「本件特許権」という。)を有する原告が、別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」といい、個別には「被告製品1(2)」などという。)を製造販売等する被告に対し、被告製品が本件特許権の技術的範囲に属するとして、特許法100条1項に基づく被告の行為の差止め及び同2項に基づく被告製品の廃棄等を求めるとともに、 民法709条に基づき、原告の被った損害及びこれに対する前記販売行為等がされた後である令和3年8月7日から支払済みまで、令和2年4月1日より前の行為による損害については平成29年法律第44号による改正前の民法所定の、同日以降の行為による損害については同法による改正後の民法所定の各利率による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告は、建設用仮設機材及び機械の開発、製造、販売、リース、レンタル並びに輸出入等を目的とする株式会社である。 イ被告は、建具工事、金物工事、塗装工事、ガラス工事、ガス管配管工事の 企画、設計、施工、請負等を目的とする株式会社である。 (2) 本件特許権本件特許権の特許請求の範囲、技術分野、発明の詳細な説明、図面等は、別紙特許公報記載のとおりであり、原告の請求は、特許請求の範囲の請求項1(以下、同項に係る発明を「本件特許発明」という。)に基づくものである。 本件特許発明の構成要件は、次のとおり分説される(以下、分説された要件 を符号に応じて「構成要件A」などという。)。 A 作業空間を形成する足場構築体(1)から外側空間に向けて突出する落下物受取 許発明の構成要件は、次のとおり分説される(以下、分説された要件 を符号に応じて「構成要件A」などという。)。 A 作業空間を形成する足場構築体(1)から外側空間に向けて突出する落下物受取装置(4)を設け、B 該落下物受取装置(4)の基端部と前記足場構築体(1)の間に隙間(S)を有する構成において、前記隙間(S)を覆う隙間遮蔽装置(20)を設け、 C 前記隙間遮蔽装置(20)は、前記落下物受取装置(4)の基端部に固定される固定部材(21)と、D 該固定部材(21)から足場構築体(1)に向けて延びる遮蔽部材(23)を備え、E 前記固定部材(21)に対して前記遮蔽部材(23)を回動自在に枢結し ており、F 前記遮蔽部材(23)は、不使用時に前記固定部材(21)に向けて回動することにより、該固定部材(21)の上に重ねられるように構成されて成るG 足場における落下物の落下防止装置。 (3) 被告の行為被告は、被告製品を、遅くとも本件特許が登録された平成28年4月15日以降現在に至るまで、業として製造及び販売し、販売の申出をし、また販売のための展示をしている(甲3(枝番を含む))。 被告製品のうち、被告製品1は、アルミ製の枠組みに朝顔(防護棚)として 2層シートが用いられているものであり、被告製品2(1)及び同(3)は、アルミ製の枠組みに朝顔として4層構造のシートが用いられているもの、被告製品2(2)及び同(4)は、アルミ製の枠組みに朝顔として2層のシートが用いられているもの、被告製品2(5)は、アルミ製の枠組みに朝顔としてFRP板(繊維強化プラスチック板)を取り付けたものである。 (4) 被告製品の構成等 被告製品の構成は、別紙被告製品説明書に記載のと 2(5)は、アルミ製の枠組みに朝顔としてFRP板(繊維強化プラスチック板)を取り付けたものである。 (4) 被告製品の構成等 被告製品の構成は、別紙被告製品説明書に記載のとおりである(用語等は被告主張によるものである。)。 被告は、被告製品がいずれも本件特許発明の構成要件A、B及びGに相当する構成を備えることを争わない。 2 争点 (1) 被告製品が、構成要件C、同D、同E及び同Fに共通して含まれる構成である「固定部材(21)」に相当する構成を備えているか(争点1)(2) 原告の被った損害額(争点2)なお、原告は、いわゆる均等侵害の主張(請求原因)もしており、被告はこれを争っている。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告製品が、構成要件C、同D、同E及び同Fに共通して含まれる構成である「固定部材(21)」に相当する構成を備えているか)について【原告の主張】(1) 被告製品が「固定部材」の構成を備えること ア本件特許発明における「固定部材(21)」の意義本件特許発明における隙間遮蔽装置(20)は、落下物受取装置(1)の基端部と遮蔽部材(23)を、固定部材(21)により回動自在に固定することで、落下物受取装置(4)と足場構築体(1)の作業空間の外側面に生じる隙間Sを確実かつ好適に遮蔽し、また落下物受取装置(4)の姿勢変更 に応じることができるものである。 したがって本件特許発明における固定部材(21)とは、落下物受取装置(4)の基端部と遮蔽部材(23)を回動自在に固定する機能を果たす部材である。 イ被告製品の構成 被告製品の下枠(基端部)には、隙間を防ぐ隙間板(遮蔽フラップ)が、 被告も主張するとおり、蝶番(ヒ (23)を回動自在に固定する機能を果たす部材である。 イ被告製品の構成 被告製品の下枠(基端部)には、隙間を防ぐ隙間板(遮蔽フラップ)が、 被告も主張するとおり、蝶番(ヒンジ)で回動自在に固定されている。被告製品の蝶番は、まさに被告製品の基端部と遮蔽部材23を回動自在に固定しており、本件特許発明にいう固定部材(21)に相当するものである。 すなわち、蝶番は、第1翼片と第2翼片を枢結(枢軸により回動自在に連結)したものであり、その部材中の第1翼片が、落下物受取装置の基端部に リベット等で固着されて固定されているから、本件特許発明における、落下防止装置の基端部と遮蔽部材を回動自在に固定するために設けられる部材としての「固定部材」の構成に当たる。そして、「遮蔽部材は、不使用時に固定部材(第1翼片)に向けて回動することにより、固定部材(第1翼片)に重ねられるように構成されて成」っている。 したがって、被告製品は、本件特許発明における「固定部材」を備えている。 (2) 被告の主張に対する反論ア枢結手段が固定部材と独立して存在する必要はないこと「枢結」とは、「回転自在に結び付けること」を意味し、枢軸により回動自 在に連結された形態を意味する。したがって、ある構成において、固定側のA部材と回動側のB部材が存在し、それらを回転自在に結びつける場合、「A部材に対して、B部材を回動自在に枢結する」という表現がされることになる。 本件特許発明における構成要件Eでは、「前記固定部材(21)に対して前 記遮蔽部材(23)を回動自在に枢結しており」とされており、上述のとおり、固定側の固定部材(21)と、回動側の遮蔽部材(23)が存在し、それらが回転自在に結び付けられていることを意味 して前 記遮蔽部材(23)を回動自在に枢結しており」とされており、上述のとおり、固定側の固定部材(21)と、回動側の遮蔽部材(23)が存在し、それらが回転自在に結び付けられていることを意味している。すなわち、固定部材(21)は、「落下物受取装置(4)の基端部に固定され」(構成要件C)、「固定部材(21)から足場構築体(1)に向けて延びる遮蔽部材」(構成要 件D)を枢結させるために設けられた部材である。加えて、構成要件Eの文 言には「枢結手段」という語の記載はないことも考慮すれば、本件特許発明は固定部材(21)と独立して存在する枢結手段を構成要件とするものではない。 イ請求項中の符号の意義について特許法施行規則24条の4及び様式29の2〔備考〕14ロには、「請求項 の記載の内容を理解するため必要があるときは、当該願書に添付した図面において使用した符号を括弧をして用いる。」と記載されており、請求項の参照符号は、特段の事情のない限り、記載内容を理解するための補助的機能を有するにとどまり、符号によって特許請求の範囲に記載された内容を限定する機能は有しない。 本件特許発明においては、構成要件CないしFにおいて、固定部材について「(21)」の符号を用いているが、明細書中に図示される実施例は、後付けされるユニット20a を構成する場合の1つの実施例にすぎないことも併せ考えると、構成要件CないしFに記述の固定部材がかかる1実施例において説明される固定部材(21)に限定されるものではない。 すなわち、本件特許の明細書図面は、固定部材(21)の例として、両端部に取付手段(25a、25b)を設けた長尺の板材について説明しているが、これは後付けユニット(20a)を構成するための1つの実施形態であ ち、本件特許の明細書図面は、固定部材(21)の例として、両端部に取付手段(25a、25b)を設けた長尺の板材について説明しているが、これは後付けユニット(20a)を構成するための1つの実施形態であり、本件特許発明は、これとは別に、遮蔽部材(23)を枢結するための固定部材が落下物受取装置の基端部に取付一体化されたものを別の実施形態 として含んでおり(明細書【0016】【0021】【0042】参照)、その場合、符号(21)で図示された部材の構成を任意に変更し得ることは、自明のことである。 【被告の主張】(1) 蝶番(22)は固定部材(21)に当たらないこと ア本件特許発明の「隙間遮蔽装置(20)」の構成 本件特許発明の「隙間遮蔽装置(20)」は、請求項1に明記されている「固定部材(21)」及び「遮蔽部材(23)」のほか、「枢結手段(22)」より構成されている。 このように解されるのは、構成要件Eでは「前記固定部材(21)に対して前記遮蔽部材(23)を回動自在に枢結しており」、また構成要件Fでは 「前記遮蔽部材(23)は、不使用時に前記固定部材(21)に向けて回動することにより、該固定部材(21)の上に重ねられるように構成されて成る」とされているが、「遮蔽部材(23)」を回動自在に枢結し、「固定部材(21)の上に重ねられるように回動する」には、「枢結手段(22)」が必要であるからである。 このことは、本件明細書(甲2)の「【0039】・・・・、隙間遮蔽装置20は、前記落下物受取装置4の基端部(具体的には補助板11)に着脱自在に固定される固定部材21と、該固定部材21に枢結手段22を介して回動自在に連結された遮蔽部材23とを備えたユニット20aを構成している。」との説明や、「【00 部(具体的には補助板11)に着脱自在に固定される固定部材21と、該固定部材21に枢結手段22を介して回動自在に連結された遮蔽部材23とを備えたユニット20aを構成している。」との説明や、「【0043】・・・・、隙間遮蔽装置20は、固定部材21の上に 遮蔽部材23を相互に側縁部分がオーバラップするように重ね合わせた状態で、長手方向に間隔をあけて配置された複数の蝶番から成る枢結手段22により枢結され、図示矢印で示すように、固定部材21の上で遮蔽部材23を反転方向に回動起立可能とするように構成されている。」との実施例の説明でも「枢結手段」の構成が説明されていることからも裏付けられる。 イ 「枢結手段(22)」は「固定部材(21)」と独立して存在するものであること本件特許発明の固定部材(21)は、構成要件Cに記載されているように、落下物受取装置(4)の基端部に隙間遮蔽装置(20)を固定する部材である。構成要件Eは「前記固定部材(21)に対して前記遮蔽部材(23)を 回動自在に枢結しており」とし、構成要件Fは「前記遮蔽部材(23)は、 不使用時に前記固定部材(21)に向けて回動することにより、該固定部材(21)の上に重ねられるように構成されて成る」としているが、これは「固定部材(21)」と「遮蔽部材(23)」とを回動自在に枢結する手段(枢結手段(22))が、「固定部材(21)」と独立して存在することを記載している。 したがって、固定部材(21)は、原告主張のような「落下物受取装置(4)の基端部と遮蔽部材(23)を回動自在に固定する機能を果たす部材」ではなく、遮蔽部材(23)を固定部材(21)に対して回動自在に枢結するのは、構成要件E、Fが存在することを示す枢結手段(22)である。 ウ被告製品 (23)を回動自在に固定する機能を果たす部材」ではなく、遮蔽部材(23)を固定部材(21)に対して回動自在に枢結するのは、構成要件E、Fが存在することを示す枢結手段(22)である。 ウ被告製品の構成 被告製品の「隙間遮断装置20」には、本件特許発明の「固定部材(21)」に対応する構成は存在せず、枢結手段である「蝶番22」を「落下物受取装置4」の基端部に取り付けている。 「蝶番22」は、「落下物受取装置4」の基端部に対し「遮断板23」を回動自在に枢結する部材であり、また、「遮断板23」と「落下物受取装置4」 を枢結することで、不使用時には「遮断板23」を「落下物受取装置4」に向けて回動させ、その上に重ねられるようにしているものである。よって、被告製品の「蝶番22」は本件明細書の【0043】でも説明されているように枢結手段であって、本件特許発明の「固定部材(21)」ではない。 被告製品には、「固定部材(21)」の構成が存在しないため、別紙被告製 品説明書図3.図8及び図10のとおり、蝶番22(枢結手段)は、落下物受取装置4の基端部に固定されているし、また蝶番22は、落下物受取装置4の基端部と遮断板23とを回動自在に枢結しており、遮断板23は、不使用時に前記基端部に向けて回動することにより、本件特許発明のように「固定部材(21)の上」(構成要件F)ではなく、「前記基端部等の上」に重ね られるように構成されているのである。 エ原告の主張について原告の主張のように、「固定部材(21)」が「蝶番(22)」の「第1翼片」であるとすると、「遮蔽部材(23)」を上記「第1翼片」に向けて回動した場合、「第1翼片」の「上に重ねる」というより「蝶番を閉じる」と表現される。また、蝶番を閉じてもそ 蝶番(22)」の「第1翼片」であるとすると、「遮蔽部材(23)」を上記「第1翼片」に向けて回動した場合、「第1翼片」の「上に重ねる」というより「蝶番を閉じる」と表現される。また、蝶番を閉じてもその大きさが小さいことから、本件明細書の第4 図の場合のように「保管・運搬に便利となる」こともない。 原告の主張は、構成要件Fの構成及びその構成の作用効果の説明と矛盾する。 (2) 請求項1に付記された数字の意義について本件特許発明の請求項1の記載は、各構成部材に実施例と同じ数字が付記さ れている。すなわち、「固定部材」には実施例の「固定部材」の構成と同じ「(21)」の数字が付記されている。他の「遮蔽部材」等の部材も同様である。 このような実施例の部材に付記された数字と同じ数字が付された請求項の場合は、請求項の部材は実施例の部材と同じ概念に解釈すべきことになる。すなわち、請求項の「固定部材(21)」の概念は、実施例の「固定部材21」と 同じ概念の構成であると解釈すべきことになる。 ところで、実施例では「固定部材21」、「枢結手段22」及び「遮蔽部材23」は各独立した部材であり、「【0039】・・・・、隙間遮蔽装置20は、前記落下物受取装置4の基端部(具体的には補助板11)に着脱自在に固定される固定部材21と、該固定部材21に枢結手段22を介して回動自在に連結され た遮蔽部材23とを備えたユニット20aを構成している。」と説明されているとおりである。 そうすると、請求項1の「固定部材(21)」も、実施例の「固定部材21」の構成と同じ概念であるから、原告主張のように「落下物受取装置(4)の基端部と遮蔽部材(23)を回動自在に固定する機能を果たす部材」と解するこ とはできない。 固定部材21」の構成と同じ概念であるから、原告主張のように「落下物受取装置(4)の基端部と遮蔽部材(23)を回動自在に固定する機能を果たす部材」と解するこ とはできない。 したがって、この請求項1に付記された数字の観点から見ても、被告製品の「蝶番(22)」が本件特許発明の「固定部材(21)」に該当するとの原告の主張は失当である。 2 争点2(原告の被った損害額)について【原告の主張】 (1) 特許法104条2項に基づく損害額ア被告は、被告製品を、遅くとも本件特許が登録された平成28年4月15日から令和4年7月31日まで製造販売しているところ、その売上額の合計は●(省略)●であり、うち令和2年3月31日以前のものが●(省略)●であり、同年4月1日以後のものが●(省略)●である。 イ被告製品の推定利益率は●(省略)●パーセントであるから、アの金額にこれを乗じたもの(民法改正前のものが●(省略)●、改正後のものが●(省略)●、●(省略)●)が特許法102条2項により推定される損害額となる。 ウ原告は、本訴の提起追行を弁護士に委任したところ、その費用(上記イの 1割に相当する金額)は被告の行為と相当因果関係ある損害である。 エよってイとウの●(省略)●(うち民法改正前の分が●(省略)●、改正後の分が●(省略)●)が原告の被った損害である。 (2) 推定覆滅について(被告主張に対する反論)ア本件特許発明の技術的意義及び顧客吸引力 本件特許発明の作用効果は、落下物受取装置の基端部の縁と、足場構築体の作業空間の外側面の間には、狭小な隙間が生じることが不可避であるが、遮蔽部材が回動自在に取り付けられていることによって、落下物受取装置の角度にかかわらず、常に当該隙間を遮 基端部の縁と、足場構築体の作業空間の外側面の間には、狭小な隙間が生じることが不可避であるが、遮蔽部材が回動自在に取り付けられていることによって、落下物受取装置の角度にかかわらず、常に当該隙間を遮蔽できるというものである。 そして、小さなボルト・ナットやビス等であっても、高所から落下すれば 人体を負傷する危険があることから、落下物受取装置の角度にかかわらず常 に当該隙間を遮蔽できるという作用効果は、高所で作業を行う際に最重要視される安全性を実現するものであり、かかる作用効果は落下物受取装置として極めて高い技術的意義及び顧客誘引力を有するものである。 被告製品においても、遮蔽部材が回動自在に取り付けられていることが製品の特長として紹介されており、本件特許発明の作用効果を有していること で、極めて大きな顧客誘引性に寄与している。また、このような観点から、本件特許発明は、落下防止装置において部分的に実施されているというものではない。 イ他の知的財産権実施・使用は推定の覆滅事由とならないこと被告製品2は、SⅡ型(被告製品2(1))及びSH型(同2(3))の他、2 層Ⅱ型、2層H型及びパネルタイプ朝顔(被告製品2(2)、同2(4)、同2(5))、の3種類が存在するところ、被告の主張は、かかる3種類及び被告製品1に対しては被告が保有する特許第6418473号の特許発明(以下「被告発明」という。)が実施されていないことを自認するものである。被告製品の平成28年4月15日から令和4年7月31日までの売上額は●(省略)●で あるところ、被告発明が実施されているというSⅡ型及びSH型の売上額は●(省略)●であり、被告製品全ての売上額の●(省略)●にも満たない。 さらに、被告発明の出願は、平成30年2月20 )●で あるところ、被告発明が実施されているというSⅡ型及びSH型の売上額は●(省略)●であり、被告製品全ての売上額の●(省略)●にも満たない。 さらに、被告発明の出願は、平成30年2月20日であるが、SⅡ型及びSH型に対する実施が開始された時期も不明であり、それらの発売にかかる全期間を通じて、被告発明による何らかの顧客誘引力があったものではない。 また、被告は、商標登録第6436982号の登録商標(以下「被告商標」という。)を使用しており、他社の製品に対して強い識別力を有するとともに高い宣伝広告機能を発揮しているとして、被告製品の売上げに強く貢献している旨主張している。しかし、既述のとおり、工事現場における落下物受取装置については、何より安全性が最重視されるのであり、商標の如何によ って顧客の購買意欲に影響を及ぼすことはなく、安全性の観点から製品の選 択が行われる。また、被告商標における識別力が被告の売上に貢献するほど、被告商標や被告製品について周知性が認められるものでもない。 【被告の主張】(1) 原告の主張中アの事実及びイ●(省略)●(2) 推定覆滅について 次のとおり、本件特許発明の実施が被告製品の売り上げに貢献した割合は微々たるものであり、被告製品の販売により被告の得た利益の8割については、特許法102条2項による推定が覆滅される。 ア本件特許発明の位置づけ本件特許発明の出願前より、折畳式朝顔装置は公知技術として存在してお り、本件特許発明に進歩性が認められるのは、単に隙間を覆うためではなく、遮蔽部材が固定部材により回動自在に取り付けられている点にある(乙3)から、この点がどの程度顧客誘引力を高めるかという観点から検討する。 被告製品の特徴は、落下物受 単に隙間を覆うためではなく、遮蔽部材が固定部材により回動自在に取り付けられている点にある(乙3)から、この点がどの程度顧客誘引力を高めるかという観点から検討する。 被告製品の特徴は、落下物受け取り装置部分がシートとネットの多層構造で高い安全性を保持していること、軽量であること、作業時間が圧縮される ことであり、被告製品導入のメリットは前記3点に加え、耐久性、美観性、運搬性、在庫管理であって(甲3、乙4)、これらが顧客誘引力を高めている。 朝顔と本体の隙間に隙間フラップが搭載されていることに言及しているものの、ここであげられている特徴は、遮断板(隙間フラップ)が存在することで、単に隙間が覆われることになるという効果に言及するものにすぎず、 遮蔽部材を回動自在に取り付けられていることを特徴として記載していない。 イ本件特許発明は侵害品の部分のみに実施されていること本件特許発明は、実質的には隙間遮蔽装置の発明にすぎず、足場における落下物の落下防止装置において、隙間遮蔽装置部分の占める割合は、機能的・コ スト的・物理的に占める割合のいずれにおいれも、5分の1程度のものにすぎ ない。加えて、後記のとおり、被告は「足場における落下物の落下防止装置」において大きな割合を占める落下物を受け止める部分において特徴のある被告発明を実施しており、なおさら「隙間遮蔽装置」部分の割合は小さいと言わざるを得ない。 そして、「足場における落下物の落下防止装置」において最も重要なのは、電 動工具やそれなりの重量のある建築資材等を受け止め、通行人や作業者に死傷事故を生じさせないことであるが、本件特許発明の「隙間遮蔽装置」において落下を防止できるのは、原告の主張するとおり小さなボルト・ナットやビス等であり、この 建築資材等を受け止め、通行人や作業者に死傷事故を生じさせないことであるが、本件特許発明の「隙間遮蔽装置」において落下を防止できるのは、原告の主張するとおり小さなボルト・ナットやビス等であり、このような小さなボルト・ナットやビス等が通行人に落下することはないし、作業者には労働安全衛生規則により工事用ヘルメット(保護帽)の着 用が法的に義務づけられていることから、落下物受取装置の基端部と足場との間にできる隙間を通り抜けることのできる小さなボルト・ナットやビスで傷害等の結果が生じることは極めて稀である。 したがって、落下物受取装置において、本件特許発明の作用効果がその売上げに貢献する割合は微々たるものと言わざるを得ない。 ウ他の知的財産権の実施・使用について被告製品2(1)及び同2(3)は、被告発明の実施品であり、同特許発明の優れた効果(棒状部材の突き抜け防止)が訴求力を有し、売り上げに強く貢献している。また、被告製品2は、「楽美」の2文字を墨書体の特徴的な文字で表現してなる高い識別力と宣伝広告機能を有する被告商標を使用している。 これら発明の実施や商標の使用が売り上げに貢献していることは、特許法102条2項の推定を覆滅させる事情となる。 第4 判断 1 争点1(被告製品が、構成要件C、同D、同E及び同Fに共通して含まれる構成である「固定部材(21)」に相当する構成を備えているか)について (1) 本件特許発明の特許請求の範囲の解釈 本件特許発明の構成要件を、「固定部材(21)」に着目して見ると、同部材は、落下物受取装置の基端部に固定され、隙間遮蔽装置を構成する部材であること(構成要件C)、(隙間遮蔽装置使用時に)固定部材から足場構築体に向けて遮蔽部材が延びていること(構 着目して見ると、同部材は、落下物受取装置の基端部に固定され、隙間遮蔽装置を構成する部材であること(構成要件C)、(隙間遮蔽装置使用時に)固定部材から足場構築体に向けて遮蔽部材が延びていること(構成要件D)、遮蔽部材が回動自在に枢結されていること(構成要件E)、(隙間遮蔽装置不使用時に)遮蔽部材が固定部材に 向けて回動することにより固定部材の上に重ねられること(構成要件F)という構成・機能を有する部材であることが示されており、固定部材の構成・機能について、上記以外のものは読み取れない。 また、構成要件C、同D及び同Eによれば、「隙間遮蔽装置(20)は」(構成要件C)、「固定部材(21)と」(同)「遮蔽部材(23)とを備え、」(同D)、 「前記固定部材(21))に対して前記遮蔽部材(23)を回動自在に枢結しており」と記載されているところ、隙間遮蔽装置として遮蔽部材を固定部材に回動可能に枢結する手段(部材・方法)については、特許請求の範囲の中で具体的に特定・限定されていない。この点は、構成要件Fの記載を踏まえても同様である。 (2) 本件明細書の記載本件明細書には、次のとおり記載されている。 ア発明が解決しようとする課題【0008】落下物受取装置は、…該落下物受取装置の基端部の縁と、足場構築体の作 業空間の外側面の間には、狭小な隙間を生じることが不可避である。このため、…小さい物品が落下すると、前記隙間を通過することにより地上に向けて落下するおそれがあり、金属製等の落下物の場合、微小な物品であっても人体を負傷する危険がある。 【0009】 落下物受取装置は、稼動姿勢と格納姿勢の間で選択的に姿勢変更可能に構 成されているので、稼働姿勢とされた落下物受取装置に前記隙間 も人体を負傷する危険がある。 【0009】 落下物受取装置は、稼動姿勢と格納姿勢の間で選択的に姿勢変更可能に構 成されているので、稼働姿勢とされた落下物受取装置に前記隙間を塞ぐ板材を設ける単純な構成とする場合は、落下物受取装置を格納姿勢に姿勢変更するとき、前記板材を取外す必要がある等、姿勢変更の作業が困難となる。 イ課題を解決するための手段【0012】 そこで、上記課題を解決するために、本発明が手段として構成したところは、作業空間を形成する足場構築体から外側空間に向けて突出する落下物受取装置を設け、該落下物受取装置の基端部と前記足場構築体の間に隙間(S)を有する構成において、前記隙間(S)を覆う隙間遮蔽装置を設け、前記隙間遮蔽装置は、前記落下物受取装置の基端部に固定される固定部材と、該固定 部材から足場構築体に向けて延びる遮蔽部材を備え、前記固定部材に対して前記遮蔽部材を回動自在に枢結しており、前記遮蔽部材は、不使用時に前記固定部材に向けて回動することにより、該固定部材の上に重ねられるように構成されて成る点にある。 【0014】 従って、前記隙間遮蔽装置は、前記隙間(S)の大きさに応じて、前記遮蔽部材の起立角度θを変更することにより、該隙間(S)を覆うように構成することが可能となる。 【0016】前記隙間遮蔽装置は、前記固定部材を落下物受取装置の基端部に取付一体 化した構成とすることが可能であり、或いは、落下物受取装置に後付けされるユニットを構成することも可能である。 ウ発明を実施するための形態【0038】(隙間遮蔽装置)/本発明は、足場構築体1 における作業空間の外側面X と、落下物受取装置4の基端部…の間に形成される隙間Sを 能である。 ウ発明を実施するための形態【0038】(隙間遮蔽装置)/本発明は、足場構築体1 における作業空間の外側面X と、落下物受取装置4の基端部…の間に形成される隙間Sを覆うことができ る隙間遮蔽装置20を提供するものであり、特に、…落下物受取装置4の姿勢変更や取付位置変更により隙間Sが変化する場合でも、それに追従することにより、常に確実に隙間を塞ぐことができる装置を目的としている。 【0039】図4に示す1実施形態において、隙間遮蔽装置20は、前記落下物受取装 置4の基端部(具体的には補助板11)に着脱自在に固定される固定部材21と、該固定部材21に枢結手段22を介して回動自在に連結された遮蔽部材23とを備えたユニット20aを構成している。 【0040】前記固定部材21は、例えば、前記補助板11の上面にほぼ合致して重ね られる大きさ及び形状を有する金属板により形成され…取付板24a、24bを固着しており…第1取付手段25aを設け…第2取付手段25bを設けている。 【0042】本発明の隙間遮蔽装置20は、予め固定部材21を落下物受取装置4の基 端部に取付一体化することにより構成しても良いが、既設の落下物受取装置4に後付け可能なユニット20aを構成することが好ましく…従って、隙間遮蔽装置20は、固定部材21を落下物受取装置4の基端部に取付一体化した構成とする場合と、落下物受取装置4に後付けされるユニット20aを構成する場合がある。 【0043】図示のようにユニット20aを構成する場合は、隙間遮蔽装置20は、固定部材21の上に遮蔽部材23を相互に側縁部分がオーバラップするように重ね合わせた状態で、長手方向に間隔をあけて配置された複数の蝶番から ようにユニット20aを構成する場合は、隙間遮蔽装置20は、固定部材21の上に遮蔽部材23を相互に側縁部分がオーバラップするように重ね合わせた状態で、長手方向に間隔をあけて配置された複数の蝶番から成る枢結手段22により枢結され、…ている。 (3) 検討 前記本件明細書の記載によれば、本件特許発明は、落下物受取装置の基端部の縁と足場構築体の作業空間の外側面の間に隙間が生じ小さい物品が落下し人体を負傷する危険があり、当該隙間を単純な板材で塞いだ場合には落下物受取装置を格納する際に板材を取外す必要がある等姿勢変更の作業が困難であるといった課題に対し(【0008】【0009】)、当該隙間を覆うことができ、 かつ落下物受取装置の姿勢変更等によって隙間が変化する場合でもそれに追従し確実に隙間を塞ぐことができる隙間遮蔽装置を提供するものである(【0014】【0038】)。本件明細書には、本件特許発明の実施例として、隙間遮蔽装置は、固定部材を落下物受取装置の基端部に取付一体化した構成とする場合と、落下物受取装置に後付けされるユニットを構成する場合とを挙げており (【0016】)、後付け可能かつ着脱自在の隙間遮蔽装置の実施例の一つ(ユニット20a)として、固定部材に枢結手段を介して遮蔽部材を回動自在に連結するものが記載されている(【0039】【0040】【0043】)。 このような固定部材に枢結手段22を用いて遮蔽部材を回動可能に枢結する方法は、本件明細書上、「図4に示す1実施形態において」(【0039】)、 「図示のようにユニット20aを構成する場合は」(【0043】)と記載されているとおり、後付けユニットタイプの隙間遮蔽装置の一実施例という位置付けで記載されているに過ぎない。また、本件明細書には、固定 図示のようにユニット20aを構成する場合は」(【0043】)と記載されているとおり、後付けユニットタイプの隙間遮蔽装置の一実施例という位置付けで記載されているに過ぎない。また、本件明細書には、固定部材の大きさ及び形状並びに落下物受取装置への固定方法については適宜の方法を採用することができることが示唆されており(【0040】)、その余の本件明細書の記 載を見ても、「固定部材(21)」が、特定の構成を備えるべきものであるとか、枢結手段が、固定部材(21)と別途独立のもの(部材)であることが前提であることをうかがわせるとかの旨の記載はない。 したがって、本件特許発明における「固定部材(22)」とは、実施例のように固定部材とは別の枢結手段が存在する場合に限らず、固定部材が枢結手段と 一体のもの、一つの部材が固定部材と枢結手段を兼ねるものなどもこれに当た ると解される。 むしろ、枢結手段が固定部材から独立して存在すること(独立した部材であること)等が要求されていないとの解釈は、上記のとおり実施例の一つとして挙げられた固定部材に遮蔽部材を枢結する「蝶番」について、「枢結部材」ではなく「枢結手段」と記載されていることと整合するといえる(【0039】【0 043】)。 なお、構成要件Cないし同Fには「固定部材(21)」として符号が記載されているものの、これは請求項の記載内容を理解するために補助的に付されたものであると解され(特許法施行規則24条の4及び様式29の2の〔備考〕14のロ)、それ以上に本件特許発明における固定部材の構成を符号により特定 される実施形態に限定するものであると解すべき事情も見当たらない。 したがって、本件明細書の記載を参酌しても、本件特許発明において、上記(1)のとおり、① 固定部材の構成を符号により特定 される実施形態に限定するものであると解すべき事情も見当たらない。 したがって、本件明細書の記載を参酌しても、本件特許発明において、上記(1)のとおり、①落下物受取装置の基端部に固定され、隙間遮蔽装置を構成する部材であること(構成要件C)、②(隙間遮蔽装置使用時に)固定部材から足場構築体に向けて遮蔽部材が延びていること(構成要件D)、③遮蔽部材が回 動自在に枢結されていること(構成要件E)、④(隙間遮蔽装置不使用時に)遮蔽部材が固定部材に向けて回動することにより固定部材の上に重ねられること(構成要件F)という要素を充たせば「固定部材」(構成要件C~F)に相当する部材であるといえ、これに加え、枢結手段とは独立して存在することを要するものではないと解すべきである。 (4) 被告製品における「蝶番(の第1翼片)」が本件特許発明の「固定部材」に相当するか(あてはめ)別紙被告製品説明書のとおり、被告製品における蝶番は、第1翼片、第2翼片及び回転軸から成り、第1翼片(図3右側のもの)が落下物受取装置の基端部にリベット等で固着され、第2翼片(図3左側のもの)が遮蔽部材に固着さ れている。これにより、被告製品の蝶番の第1翼片は、①落下物受取装置の基 端部に固定され、隙間遮蔽装置を構成する部材であること(構成要件C)、②(隙間遮蔽装置使用時に)固定部材(第1翼片)から足場構築体に向けて遮蔽部材が延びていること(構成要件D)、③遮蔽部材が回動自在に枢結されていること(構成要件E)、④(隙間遮蔽装置不使用時に)遮蔽部材が固定部材に向けて回動することにより固定部材の上に重ねられること(構成要件F)という 要素を全て充たしているといえ、本件特許発明の「固定部材」に相当する部材 (隙間遮蔽装置不使用時に)遮蔽部材が固定部材に向けて回動することにより固定部材の上に重ねられること(構成要件F)という 要素を全て充たしているといえ、本件特許発明の「固定部材」に相当する部材であるということができる。 被告は、このように解すると構成要件Fの構成及びその構成の作用効果の説明と矛盾する旨主張するが、保管・運搬に便利となるとの作用効果は、遮蔽部材を回動自在に枢結することによりもたらさせるものであって、固定部材の構 成に由来するものではないから、その主張は失当である。 したがって、被告製品は、構成要件Cないし同Fを充足しており、構成要件A、同B、同Gを充足することは争いがないから、本件特許発明の技術的範囲に属する。 2 争点2(原告の被った損害額)について (1) 特許法102条2項により推定される損害額平成28年4月15日から令和4年7月31日までに製造販売された被告製品の売上額の合計が●(省略)●よって、当該金額に当該利益率を乗じた金額(前記第3の2【原告の主張】(1)イ)が推定覆滅前の特許法102条2項により推定される損害の額となる。 (2) 推定覆滅事情被告は、本件特許発明は、製品の一部のみに実施されるものであること、被告製品には他の顧客誘引力がある一方、本件特許発明に顧客誘引力が乏しいこと、本件特許発明以外の特許発明の実施や被告商品に付された商標が顧客誘引力を持つことから、上記損害額の8割は推定が及ばないものと主張する。 ア本件特許発明の意義 前判示のとおり、本件特許発明は、建設現場等で高所からの工具等の落下による負傷等を防止するために設置される落下物防止装置(朝顔)において、「落下物受取装置は、…該落下物受取装置の基端部の縁と、 前判示のとおり、本件特許発明は、建設現場等で高所からの工具等の落下による負傷等を防止するために設置される落下物防止装置(朝顔)において、「落下物受取装置は、…該落下物受取装置の基端部の縁と、足場構築体の作業空間の外側面の間には、狭小な隙間を生じることが不可避である。このため、…小さい物品が落下すると、前記隙間を通過することにより地上に向け て落下するおそれがあり、金属製等の落下物の場合、微小な物品であっても人体を負傷する危険がある。」等の課題に対して、隙間(S)を覆う隙間遮蔽装置を設け、前記隙間遮蔽装置は、前記落下物受取装置の基端部に固定される固定部材と、該固定部材から足場構築体に向けて延びる遮蔽部材を備え、前記固定部材に対して前記遮蔽部材を回動自在に枢結しており、前記遮蔽部材 は、不使用時に前記固定部材に向けて回動することにより、該固定部材の上に重ねられるように構成することにより該課題を解決するものである。 この点、証拠(甲3、4(枝番を含む))及び弁論の全趣旨によると、被告製品における遮断板によって遮蔽される隙間は、足場の設置態様によっては相応に幅が広いものも想定され(少なくとも被告主張のような傷害結果が生 じることが極めて稀な小さなもののみが通過する隙間に限られないと認められる。)、被告製品においても、朝顔において隙間を塞ぐことが重要な意義を有するものと扱われていることが認められるのであって、本件特許発明は、これを効果的に行うものとしての技術的意義を有し、実施品の顧客誘引力を高めるものであると認められる。 イ他方、朝顔の性能としては、被告主張のとおり、上部から外方への落下物を直接受け止める部分であるパネル部分(本件特許発明でいう落下物受取装置)の性能が重要であろうことは商品の性質上当然であ イ他方、朝顔の性能としては、被告主張のとおり、上部から外方への落下物を直接受け止める部分であるパネル部分(本件特許発明でいう落下物受取装置)の性能が重要であろうことは商品の性質上当然であり、被告が、本件特許発明以外の特許を実施している点を指摘するのも、この趣旨をいうものと理解することができる。また、作業効率性、美観性といった被告製品の他の 要素も顧客誘引力に相応に寄与することも理解できるところである。もっと も、被告商品2に付された被告商標については、これについて特段の顧客誘引力があることをうかがわせる証拠はないため、本件において考慮することは困難である。また、本件特許発明が製品の一部に実施されているという主張は、落下物受取装置が遮断板に向かって傾斜を持った態様で運用されることからすると、同装置で受け取られた落下物は遮断板に至り、遮断板によっ て更に下方への落下が阻止されることになるのであって、このように、遮断板と一体となって落下物の下方への落下が防止されるという被告製品の構成からすると、本来的な意味で特許技術が製品の一部にのみ実施されたものであるということはできない。 なお、被告は、本件特許発明は、遮蔽部材を落下物受取装置の基底部に回 動可能に固定することのみを特徴としている旨主張するが、抽象的には遮蔽部材を設置して隙間を塞ぐ構成は他に考え得る趣旨をいうものと解したとしても、その具体的な競合品等に関する主張立証はされていないから、これを推定の覆滅に当たって考慮することは困難である。 ウ本件において、イに述べた事情はあるものの、被告が指摘する事情はなお 同種の商品一般の顧客誘引力の重点の置き方を指摘するものにとどまっており、これらの事情を特許法102条2項による推定を覆滅させる事情と て、イに述べた事情はあるものの、被告が指摘する事情はなお 同種の商品一般の顧客誘引力の重点の置き方を指摘するものにとどまっており、これらの事情を特許法102条2項による推定を覆滅させる事情として重く見るのは相当でなく、総合的にみると、(1)で推定される原告の損害のうち、3割の限度ではその推定の覆滅の立証があったものというべきである。 (3) 小括以上によれば、推定覆滅を考慮した特許法102条2項により推定される原告の被った損害は●(省略)●(うち民法改正前の分が●(省略)●、改正後の分が●(省略)●)であり、これに1割の弁護士費用相当の損害を加算した●(省略)●円(うち民法改正前の分が●(省略)●円、改正後の分が●(省 略)●円)が、原告の被った損害であると認められる。 第5 結論以上の次第で、被告製品は本件特許権の技術的範囲に属するから、原告の差止請求、廃棄請求は全部理由があり、損害賠償請求は、主文掲記の限度で理由があり、その余は理由がない。主文1項及び2項については、仮執行宣言を付するのは相当でないからこれを付さないこととする。 よって、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 松阿彌隆 裁判官 杉浦一輝 裁判官 布目真利子 【別紙特許公報省略】 (別紙)被告製品目録被告製造にかかる下記製品 布目真利子 【別紙特許公報省略】 (別紙)被告製品目録被告製造にかかる下記製品名の落下物受取装置(いずれの製品にも、1800タイプ、1500タイプ、1200タイプ、900タイプ、600タイプの規格があり、その全てが対象である。) 1 製品名:セイフティーウイング(1) タイプ1(2) タイプH 2 製品名:楽美(1) ストロングⅡ型 (2) 2層Ⅱ型(3) ストロングH型(4) 2層H型(5) パネルタイプ朝顔 (別紙)被告製品説明書 1 被告製品の構造は、図1ないし図10のとおりである。 図1は、被告製品の全体構造の写真である。足場構築体1から外側空間に向けて突出する落下物受取装置4を設けている。 図2は、落下物受取装置4の基端部と足場構築体1間の隙間Sの写真である。 落下物受取装置4の基端部と足場構築体1の間に隙間Sを有し、隙間Sを覆う隙間遮断装置20を設けている。 図3は、隙間遮断装置使用状態の写真である。隙間Sを覆う隙間遮断装置20は、落下物受取装置4の基端部に固定される蝶番22(枢結手段)と、蝶番22から足 場構築体1に向けて延びる遮断板23を備えている。 図4は、隙間遮断装置不使用状態の写真である。 図5ないし図10は、遮断板23の回動にかかる写真である。 蝶番22は、落下物受取装置4の基端部と遮断板23とを回動自在に枢結しており、遮断板23は、不使用時に前記基端部に向けて回動することにより、前記基端 部等の上に重ねられるように構成されている。 2 符号の説明符号1 足場構築体符号4 に枢結しており、遮断板23は、不使用時に前記基端部に向けて回動することにより、前記基端 部等の上に重ねられるように構成されている。 2 符号の説明符号1 足場構築体符号4 落下物受取装置 符号S 隙間符号20 隙間遮断装置符号22 蝶番(枢結手段)符号23 遮断板

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