平成22(ワ)46918 商号使用禁止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年7月21日 東京地方裁判所
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判決文本文5,955 文字)

- 1 - 平成23年7月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第46918号商号使用禁止等請求事件口頭弁論終結日平成23年5月31日判決東京都豊島区<以下略>原告有限会社アトリエMEI同訴訟代理人弁護士野間啓東京都豊島区<以下略>被告 araisarajapan 株式会社同訴訟代理人弁護士崔宗樹 主文 1 被告は,「araisarajapan株式会社」との商号を使用してはならない。 2 被告は,東京法務局豊島出張所平成22年6月15日登記に係る「株式会社aito」から「araisarajapan株式会社」への商号変更登記の抹消登記手続をせよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の概要本件は,婦人服・子供服のデザイン,製造及び販売等を業とする原告が,繊- 2 - 維製品の企画,製造及び販売等を業とする被告において,原告及び原告代表者とのライセンス交渉中に,ライセンス契約の締結を前提に,その商号を原告代表者の氏名のアルファベット表記や原告の登録商標と同じ「araisara」を含むものに変更したところ,その後,ライセンス交渉が決裂して原告との契約締結の可能性がなくなったにもかかわらず,嫌がらせや損害賠償請求の交渉材料にするという不正の目的をもって,原告であると誤認されるおそれのある上記商号を使用しており,これによって原告の営業上の利益が侵害されるおそれがあるとして,会社法8条に基づき,被告に 償請求の交渉材料にするという不正の目的をもって,原告であると誤認されるおそれのある上記商号を使用しており,これによって原告の営業上の利益が侵害されるおそれがあるとして,会社法8条に基づき,被告に対し,商号の使用差止め及び商号変更登記の抹消登記手続を求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は,婦人服・子供服のデザイン,製造及び販売等を業として,平成16年1月に設立された有限会社である(設立時期につき弁論の全趣旨)。 原告代表者は,ファッションショーの東京コレクションに参加するなどしているデザイナーであり,原告は,平成21年7月,原告代表者の氏名であるAをアルファベットで表記する「araisara」につき,洋服・コート等を指定商品として,商標登録した(登録時期・指定商品につき甲1)。 イ被告は,繊維製品の企画,製造,輸出入及び販売等を業とする株式会社である(目的につき乙3)。 (2) 当事者間の業務提携と被告の商号変更等- 3 - ア原告は,日本の伝統を題材にした「araisara」という服飾ブランドを展開しており,平成21年春以降,東京コレクションに参加するなどしていた。 イ被告代表者は,有名ブランドの製造下請等を業とするhap株式会社の代表取締役であり,平成21年2月ころ,知人の紹介で原告代表者と知り合った。その後,原告代表者と被告代表者は,協議の結果,「araisara」の別のブランドである「sara-aito」という服飾ブランドを立ち上げて展開することを合意し,平成22年1月,上記ブランドを取り扱う会社として,被告の前身である「株式会社aito」を設立した。 ウ被告は,平成22年4月以降, o」という服飾ブランドを立ち上げて展開することを合意し,平成22年1月,上記ブランドを取り扱う会社として,被告の前身である「株式会社aito」を設立した。 ウ被告は,平成22年4月以降,原告及び原告代表者(以下,両者を合わせて「原告ら」ということがある。)との間で「araisara」ブランドを取り扱うライセンス契約(以下「本件契約」という。)の締結に向けた交渉を開始して協議を重ね,同年5月31日に商号を現商号である「araisarajapan株式会社」(以下「本件商号」という。)に変更し,同年6月15日にその旨の変更登記を行うなどした。しかしながら,同年7月18日に被告代表者が原告代表者から契約書案の内容について抗議を受けたことを契機として,被告代表者は,原告らとの本件契約の締結を断念し,同年8月3日,原告らに対し,交渉の打切りを通告した(交渉開始時期・商号変更時期につき乙25,弁論の全趣旨)。 エ被告は,現在,営業活動を行っていない上,本件契約締結交渉の過程で多額の金員を支出したことから,今後,法的整理手続の対象となるおそれもあり,今後,原告との間で本件契約を締結する可能性はない(金員の支- 4 - 出につき乙1,2,6ないし8)。 2 争点及び当事者の主張本件の争点は,①本件商号は原告であると誤認されるおそれのある商号か,②被告による本件商号の使用は不正の目的によるものか,③本件商号の使用によって原告の営業上の利益が侵害されるおそれがあるか,である。 (原告の主張)(1) 本件商号は,商標登録もされている原告代表者の氏名のアルファベット表記を含むものであるから,原告であると誤認されるおそれのある商号である。 (2) 被告の本件商号への変更は,本件契約の締結を前提に行ったもので 標登録もされている原告代表者の氏名のアルファベット表記を含むものであるから,原告であると誤認されるおそれのある商号である。 (2) 被告の本件商号への変更は,本件契約の締結を前提に行ったものであるから,契約締結の可能性がなくなった以上,被告が本件商号を使用し続ける合理的な理由はない。それにもかかわらず,被告は,原告からの再三にわたる商号変更の要請に対し,損害賠償金の支払を条件として応じない。したがって,被告による本件商号の使用は,嫌がらせや損害賠償請求の交渉材料にするという不正の目的によるものである。 (3) 被告が本件商号のまま破産すれば,業界では原告代表者が破産したと誤解されることは間違いない。また,被告が本件商号のままhap株式会社で取り扱っているブランドで営業活動を行うようになれば,「araisara」のブランドイメージが大きく毀損されることになる。このため,被告による本件商号の使用によって,原告の営業上の利益が侵害されるおそれがある。 (被告の主張)(1) 本件商号は,原告の登録商標と同一の「araisara」の語を含むものではあるものの,原告の商号と類似すらしていないから,原告であると誤- 5 - 認されるおそれのある商号ではない。 (2) 本件契約の締結可能性はなくなったものの,被告は,本件契約の締結のために6700万円を超える多額の支出を行ったため,原告らとの間でこれを精算する必要があり,その限りで本件商号を使用し続けているにすぎない。 このため,被告による本件商号の使用は,不正な活動を行う積極的な意思に基づくものでなく,不正の目的によるものとはいえない。 (3) 被告による本件商号の使用によって原告の営業上の利益が侵害されるおそれがあることは争う。 第3 当裁判所の判断 な意思に基づくものでなく,不正の目的によるものとはいえない。 (3) 被告による本件商号の使用によって原告の営業上の利益が侵害されるおそれがあることは争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(本件商号は原告であると誤認されるおそれのある商号か)について前示第2の1(前提事実)(1)ア,(2)アのとおり,原告は,Aという氏名の代表者兼デザイナーの下で,その氏名のアルファベット表記である「araisara」という名称の服飾ブランドを展開し,「araisara」の語につき,洋服,コート等を指定商品として,商標登録を得ている。これに対し,被告の使用する本件商号である「araisarajapan株式会社」は,「araisara」という主要部分につき,外観において原告の服飾ブランド名や登録商標と同一であり,称呼においても原告の服飾ブランド名,登録商標及び原告代表者の氏名の称呼と同一である。本件商号のうち,「japan」の部分は,「araisara」という企業の日本法人といった印象を与える付加的な部分にすぎない。したがって,本件商号は,主要部分の外観又は称呼において原告の用いているブランド名や保有する登録商標や原告代表者名と同一であることから,原告であると誤認されるおそれのある商号であるというべ- 6 - きである。 この点につき,被告は,本件商号が原告の商号とは類似してないから,原告であると誤認されるおそれはない旨主張する。しかしながら,会社法8条1項が「他の会社であると誤認されるおそれ」と規定するだけであって,「他の会社の商号であると誤認されるおそれ」と規定していないことからすると,同条は,不正の目的をもって他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号の使用を禁じることにより,他の会社の営業上の利益を広 社の商号であると誤認されるおそれ」と規定していないことからすると,同条は,不正の目的をもって他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号の使用を禁じることにより,他の会社の営業上の利益を広く保護することにその趣旨があるのであって,他の会社の商号のみを保護することにその趣旨があるのではないと解するのが相当である。そうすると,同条によって保護される対象には,他の会社の商号に限られず,他の会社の商品名や商標等であって他の会社であると誤認されるおそれのあるものも含まれるというべきである。 本件において,原告のブランド名や原告代表者名等は認識しているものの,原告の商号を十分に認識していない者に対しては,本件商号は原告であると誤認されるおそれがあるものといえる。したがって,本件商号が原告の商号と類似してないことをもって原告であると誤認するおそれがないということはできず,被告の前記主張は採用することができない。 2 争点②(被告による本件商号の使用は不正の目的によるものか)について会社法8条は,商号選定自由の原則(同法6条1項)の下で,故意に他の会社の商号等に類似した商号等を使用して公衆を欺くといった反社会的な行為を防止すること等を目的として設けられたものであって,不正競争防止法2条1項1号とは異なり,他人の商号等の周知性を要件とすることなく,これに類似した商号等の使用に対する差止請求権を定めている。このような規定の趣旨- 7 - に照らすならば,会社法8条1項にいう「不正の目的」とは,不正な行為や状態を欲する意思を要し,具体的には,他の会社を害する目的や違法性のある目的,公序良俗に反する目的等をいうものと解される(最高裁昭和34年(オ)第1188号同36年9月29日第二小法廷判決・民集15巻8号2256頁参照)。 ,他の会社を害する目的や違法性のある目的,公序良俗に反する目的等をいうものと解される(最高裁昭和34年(オ)第1188号同36年9月29日第二小法廷判決・民集15巻8号2256頁参照)。 これを本件についてみると,前示第2の1(前提事実)(2)ウ・エのとおり,被告の本件商号への変更は,被告が本件契約を締結して服飾ブランド「araisara」を取り扱うことを前提として行われたものであるところ,本件契約の締結交渉が決裂したことにより,今後,本件契約が締結される可能性はなくなっており,被告は,現在,営業を行っておらず,今後,法的整理手続の対象となるおそれもある。また,証拠(甲3,12,乙9,11,12)によれば,原告らと被告は,本件契約の締結交渉において,本件契約が終了したときは被告による本件商号の使用も終了させる旨を再三確認していたことが認められる。そうすると,本件契約を締結する可能性がなくなった現在においては,被告が本件商号の使用を継続する必要性はなくなったものであり,被告もそのことは十分に認識しているということができる。ところが,被告は,本件契約の締結交渉が決裂して相当の期間が経過した現在においても,原告との間の損害賠償等の清算を主張して本件商号の使用を継続し,原告から社名の変更を求められているにもかかわらず,これに応じていない(乙17の1,2,乙19,乙20の1,2,乙24)。 これらの事実関係を総合すれば,被告は,本件商号を保有する実質的な根拠を喪失し,かつそのことを十分に認識しているにもかかわらず,法的整理手続- 8 - の対象となる可能性もある状況の下で,原告に自己の要求する損害賠償金等を支払わせるために,その支払を社名変更ないし商号変更登記抹消の条件とし,現在もその主要部分が原告のブランド名や登録商標 - の対象となる可能性もある状況の下で,原告に自己の要求する損害賠償金等を支払わせるために,その支払を社名変更ないし商号変更登記抹消の条件とし,現在もその主要部分が原告のブランド名や登録商標,原告代表者の氏名のアルファベット表記と同一の本件商号を自己の名称として使用し続けているものであり,原告が被告に対して損害賠償債務等を負っているのか否かについてすら未確定の状態で,被告が,履行上の牽連関係にすらない損害賠償金等の支払を商号変更登記抹消の条件とすることは,原告を害し,不正な状態を欲する意思に基づくものというべきであるから,被告には不正の目的があるといえる。 したがって,被告による本件商号の使用は,不正の目的によるものというべきである。 3 争点③(本件商号の使用によって原告の営業上の利益が侵害されるおそれがあるか)について前示第2の1(前提事実)(2)エのとおり,被告は,本件契約締結交渉の過程で多額の金員を支出していることから,今後,法的整理手続の対象となるおそれがあり,本件商号のまま,それが実行されれば,原告の取引関係者からは,原告代表者ないし原告代表者の経営する原告の関連会社が法的整理手続の対象となったものと誤解され,ひいては原告自身の信用も危ぶまれることは容易に推認することができる。 したがって,原告は,被告による本件商号の使用によって,原告の営業上の利益を侵害されるおそれがある。 4 結論以上によれば,原告の請求は,いずれも理由があるからこれを認容し,主文- 9 - のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官阿部正幸 裁判官山門優 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官 阿部正幸 裁判官 山門優 裁判官 志賀勝

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