【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人亀井正男上告趣意第一点は「本件公判請求書ニハ名古屋地方裁判所検事局 検事武内氏ノ署名捺印ノミアリテ所属官庁印ノ押捺
主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人亀井正男上告趣意第一点は「本件公判請求書ニハ名古屋地方裁判所検事局 検事武内氏ノ署名捺印ノミアリテ所属官庁印ノ押捺ナキヲ以テ違式ノ書類タルニ付 キ畢竟無効ナルニ帰シ之ニ基キ為サレタル本件ノ審理、裁判ハ総テ無効ナリ往年横 浜所在某官庁ノ官吏カ裁判所ヨリ証人トシテ召喚セラレタルニ際シ其ノ呼出状ニ所 属官庁(裁判所)印押捺ナク無効ナリトシテ召喚ニ応セサリシ事例アルヤニ聞ク場 合ナレハ厳正ナル批判ヲ請ハント欲ス」というにある。 しかし、刑事訴訟法第七十一条第一項には、「官公吏の作成する書面には別段の 規定ある場合の外年月日を記載して署名捺印し其所属の官署又は公署を表示すべし」 とあるだけで、官署又は公署の印を捺せとは書いてない。其他にも、公判請求書に は所属官署の印を捺さなければならぬ旨を定めた規定はない。そして本件公判請求 書には、作成者検事武内孝之の署名捺印があり、其所属庁たる名古屋地方裁判所検 事局の表示及び年月日の記載があるから、それで適式の公判請求書たるに十分で、 庁印が捺してなくても所論のような違式のものではない。従つて論旨は理由がない。 同第二点は「原審判決ハ其ノ判示事実ヲ(一)被告人ノ当廷ニ於ケル云々判示同 旨ノ供述(二)強制処分手続ニ於ケル証人Aニ対スル訊問調書中云々ノ供述記載( 三)押収ノ木製偽装ピストルノ存在ヲ証拠トシテ之ヲ認定シタリ然レトモ(一)被 告人ハ原審公判終了ト同時ニ保釈セラレ夫レ迄ノ勾留ハ全ク不必要ノモノナリシト スヘク斯ル被告人ノ自白ハ不当ニ長ク抑留若クハ拘禁サレタ後ノ自白ナレハ之ヲ証 拠トスルコトヲ得サルノミナラス(二)ノ証人Aノ訊問調書ナルモノハ原審公判ニ 於テ適法ニ証拠調手続ヲ経タルモノナリヤ否ヤ明確ナラサル(即チ原審公判調書ニ 拠レハ第一審公判調書記 レタ後ノ自白ナレハ之ヲ証 拠トスルコトヲ得サルノミナラス(二)ノ証人Aノ訊問調書ナルモノハ原審公判ニ 於テ適法ニ証拠調手続ヲ経タルモノナリヤ否ヤ明確ナラサル(即チ原審公判調書ニ 拠レハ第一審公判調書記載ノ証拠書類ヲ証拠調シタルカ如ク記載スルヲ以テ其ノ第 - 1 - 一審公判調書ヲ査閲スルニ同調書ニハ証拠調シタル書類トシテ被害者ニ対スル予審 判事ノ訊問調書トノミアリテ所謂被害者ハ窃取シタル金員ノ保管者タル銀行支店長 Bヲ指スヤ或ハ誰ヲ指スヤ漠然トシテ明確ナラス)ヲ以テ之ヲ証拠トスルコトハ違 法タルニ帰スルモノトス」というにある。 しかし、記録によつて、被告人抑留拘禁の期間及び本件審理手続の経過を調べて 見るとつぎのようになつている。昭和二十二年四月二日被告人逮捕、同日同人に対 する司法警察官の第一回訊問、同月三日同第二回訊問、同月八日強制処分に於ける 予審判事の被告人訊問、同日同人勾留、同月九日公判請求、同年五月十五日名古屋 地方裁判所第一回公判、同月十八日同裁判所判決宣告、同月十九日控訴申立、同年 六月二十四日名古屋高等裁判所記録受理、同年七月八日同裁判所第一回公判、同日 保釈、同月十五日同裁判所判決宣告。本件のような事件で右程度の拘禁は、現今に おける悪条件の環境の制約下においては誠に已むを得ない処であつて、これを不当 に長い勾留とはいえないから、論旨前段は理由がない。次に記録を調べて見ると、 原審公判調書には第一審公判調書記載の証拠書類の要旨を告げた旨の記載があり、 第一審公判調書には被害者に対する予審判事訊問調書の要旨を告げた旨の記載があ る。そして本件において被害者の側で予審判事の訊問を受けた者は、所論A一人だ けであるから、第一審公判調書における「被害者に対する予審判事の訊問調書」と は、右Aに対する訊問調書を指して居ること一点の疑もない。所論のような不明確 の 側で予審判事の訊問を受けた者は、所論A一人だ けであるから、第一審公判調書における「被害者に対する予審判事の訊問調書」と は、右Aに対する訊問調書を指して居ること一点の疑もない。所論のような不明確 の点は少しもないから、後段の論旨も理由がない。 同第三点は「新憲法ニ依リ国民ハ総テ基本的人権ノ享有ヲ確保セラレ之ヲ保障シ 何人ヲ以テモ之ヲ妨ケラレサルハ明ラカナリ然リ而シテ裁判官ハ良心ニ従ヒ独立シ テ裁判ヲ行フ職権ヲ有セラルルト雖モ所謂良心ニ従ヒ独立シテ行フ裁判ノ内容ニ客 観的合理性乃至首肯性ヲ包蔵スルモノナラサルヘカラスシテ単ニ裁判官ノ誤レル主 観ニ委ネラルヘキモノニ非サルヤ疑ヲ容レス蓋シ然ラストセンカ国民ノ基本的人権 - 2 - ハ憲法ノ保障ニ拘ラス裁判官ノ誤レル主観ヲ以テ容易ニ之ヲ蹂躙シ得ル結果トナル ヘケレハナリ左レハ判決ノ内容タル当該裁判官ノ主観カ国民ノ基本的人権ニ影響ヲ 及ホスヘキ程度ニ客観的合理性乃至首肯性ヲ欠クモノト認ムヘキトキハ憲法違反ト シテ上告シ得ルコト論ヲ侯タス洵ニ是レ之アルカ為メ刑事訴訟法第四百十二条乃至 第四百十四条ノ規定ヲ廃止セラレタル所以ナリ然ルニ弁護人カ原審ニ於テ弁論要旨 ニ基キ縷々上申シタルカ如キ諸種ノ情状アリテ須ク本件被告人ニハ二年半(或ハ三 年)以下ノ懲役ヲ以テ今ヤ刑法改正規定ニ依リ執行猶予ノ恩典ヲ与フヘキ事案ナル コト客観的ニ首肯スヘキ場合ナルニ拘ラス原審カ誤レル主観ノ下ニ懲役三年半ノ実 刑ヲ科シタルハ基本的人権ヲ害スル違憲ノ判決ナリ」というにある。 しかし、記録を精査して見ても、本件において必ずしも所論のような判決をしな ければならないものとは思えないし、原審判事の主観が所論のように「客観的合理 性乃至首肯性を欠く」ものと認むべき資料は少しも見当らないから、論旨は採用し 得ない。 よつて、裁判所法第十条但書第一号、刑事訴訟法第四百 ものとは思えないし、原審判事の主観が所論のように「客観的合理 性乃至首肯性を欠く」ものと認むべき資料は少しも見当らないから、論旨は採用し 得ない。 よつて、裁判所法第十条但書第一号、刑事訴訟法第四百四十六条により主文の如 く判決する。 この判決は、裁判官全員の一致した意見である。 検察官橋本乾三関与 昭和二十三年二月六日 最高裁判所大法廷 裁判長裁判官 塚 崎 直 義 裁判官 長 谷 川 太 一 郎 裁判官 霜 山 精 一 裁判官 井 上 登 裁判官 栗 山 茂 - 3 - 裁判官 真 野 毅 裁判官 庄 野 理 一 裁判官 小 谷 勝 重 裁判官 島 保 裁判官 斎 藤 悠 輔 裁判官 藤 田 八 郎 裁判官 岩 松 三 郎 裁判官 河 村 又 介 - 4 -
▼ クリックして全文を表示