主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告Aに対し、以下の各金員を支払え、(1) 5486万8802円及びこれに対する令和元年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員(2) 230万6888円及びこれに対する令和5年10月24日から支払済みまで年5分の割合による金員 2 被告は、原告Aに対し、令和5年11月から令和13年3月まで、毎年8月を除き、毎月末日限り、以下の各金員を支払え。 (1) 令和5年11月から令和7年3月まで7600円(2) 令和7年4月から令和13年3月まで8400円 3 被告は、原告Aに対し、令和5年11月から令和13年3月まで、毎月末日 限り、1万4292円を支払え。 4 被告は、原告Aに対し、令和5年11月から原告Aの死亡まで、毎月末日限り、以下の各金員を支払え。 (1) 令和5年11月から令和13年3月まで7万3000円(2) 令和13年4月から令和35年11月まで19万4666円 (3) 令和35年12月以降48万6666円 5 被告は、原告Aに対し、令和13年4月から令和62年2月まで、毎月末日限り、25万4614円を支払え。 6 被告は、原告Bに対し、880万円及びこれに対する令和元年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、原告A(事故当時6歳、以下「原告A」という。)が、令和元年5月26日、三重県四日市市a町地内にある被告設置のbスポーツ広場(以下「本件グラウンド」という。)において、そこに置かれていたグラウンド整地用のローラー(以下「本件整地ローラー」という。)を他 年5月26日、三重県四日市市a町地内にある被告設置のbスポーツ広場(以下「本件グラウンド」という。)において、そこに置かれていたグラウンド整地用のローラー(以下「本件整地ローラー」という。)を他の子どもたちと動かして遊んでいたところ、転倒してその頭部が本件整地ローラーの下敷きになるという事 故(以下「本件事故」という。)に遭い、両眼を失明等したことについて、原告A及びその母である原告B(以下「原告B」という。)が、被告に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)2条1項に基づき、損害賠償として、原告らに対してそれぞれ前記第1記載の金員(平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の起算日は、前記第1の1(1)・同 6につき本件事故の日、同1(2)につき本件訴え提起日(令和4年10月26日)の約1年後の日である。)の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いがない事実及び後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者等 ア原告Aは、平成25年2月16日生まれの女児(原告B及びC(以下「C」という。)との間の二女)であり、本件事故当時、6歳3か月で小学1年生であった。 原告Aには、3つ年上の兄(本件事故当時小学4年生。以下「兄」という。)及び1つ年上の姉(本件事故当時小学2年生。以下「姉」という。) がいる。 イ原告Bは、平成29年にCと離婚し、令和4年にD(原告Aと養子縁組)と再婚した。 原告Bは、本件事故当時、単身で稼働して子ら3人(兄、姉及び原告A)と共に暮らしていたところ、近隣にCの実家(原告Aの祖父母の住居。以 下「祖父母宅」という。)があったため、子らは、下校後は専ら祖父母宅で 過ごして帰宅し、また、そのまま祖 び原告A)と共に暮らしていたところ、近隣にCの実家(原告Aの祖父母の住居。以 下「祖父母宅」という。)があったため、子らは、下校後は専ら祖父母宅で 過ごして帰宅し、また、そのまま祖父母宅に泊まったりすることも度々あった(甲55、原告B本人)。 ウ被告は、本件グラウンドを所有する地方自治体である。 (2) 本件グラウンドの設置経緯及び状況等ア被告は、昭和57年4月に施行された地域改善対策特別措置法に基づき、 生活環境等の安定向上が阻害されている地域(以下「対象地域」という。)における生活環境の改善や社会福祉の増進等に関する政令で定める事業(以下「地域改善対策事業」という。同法1条)として、昭和59年3月30日頃、その所有する三重県四日市市a町地内の土地にグラウンドを整備して本件グラウンドを設置した(乙4、12)。 イ本件グラウンドは、被告の行政財産台帳に記載されており、被告が所有している(弁論の全趣旨)。 ウ本件グラウンドの形状等は、別紙2図面のとおりであり、サッカーゴール、バックネット、トイレ及びベンチ等が設置されており、本件事故当時は、老人会によるグランドゴルフや子どもの遊び場などに、主に周辺住民 によって日常利用されていた(甲5、51、証人E、証人F)。 エ本件整地ローラーの形状は、別紙3のとおりであり、コの字型の取っ手がローラー部分に取り付けられており、取っ手の握り手部分を手で持って押す又は引いてローラー部分をグラウンド上で回転させて使用する整地用の手動式ローラーである。 本件整地ローラーの寸法は、ローラー部分は直径約63㎝、幅約100㎝弱、握り手部分の幅が約130㎝であり、重量は約600㎏である。(甲4、51、弁論の全趣旨)オ本件整地ローラーは、その取得・設置 件整地ローラーの寸法は、ローラー部分は直径約63㎝、幅約100㎝弱、握り手部分の幅が約130㎝であり、重量は約600㎏である。(甲4、51、弁論の全趣旨)オ本件整地ローラーは、その取得・設置の経緯や所有者は不明であるが、本件事故当時、本件グラウンドの隅(別紙2図面「ローラーが置いてあっ た場所」と指示された場所)に置かれており、ワイヤー等で支柱等に固定 はされていなかった(甲1、6、弁論の全趣旨)。 (3) 本件事故の発生等(甲8~18、51、弁論の全趣旨)ア原告Aは、令和元年5月26日午後6時頃、兄・姉並びに原告Bの知人女性(以下「知人」という。)の子らである女子児童(当時小学4年生。以下「知人女児」という。)、男子児童(当時小学1年生。以下「知人男児」 という。)及び男子幼児(当時幼稚園年長。以下「知人幼児」という。)の6名(以下、この6名を併せて「原告Aら6名」という。)で、本件グラウンドにおいて、本件整地ローラーを転がして遊んでいたところ、原告Aの身体が当該ローラーに巻き上げられるようにしてローラー部分に乗り上げ、その勢いのまま、ローラー部分の前方に転倒し、その頭部がローラー 部分の下敷きになった。 イ原告Aは、本件事故により、頭蓋底骨折、顔面多発骨折、視神経管骨折、両外傷性視神経症、左伝音性難聴、右肘関節部挫傷等の傷害を負い、両眼を失明し、左伝音性難聴、右肘の自発痛残存及び可動域制限の後遺障害が残存した。 2 争点(1) 本件事故に関する国賠法2条1項責任の成否(2) 損害の発生及び数額(3) 過失相殺 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)(本件事故に関する国賠法2条1項責任の成否)について【原告らの主張 (2) 損害の発生及び数額(3) 過失相殺 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)(本件事故に関する国賠法2条1項責任の成否)について【原告らの主張】本件グラウンドは、被告が所有・設置した行政財産であり、国賠法2条1項の「公の営造物」に当たる。 本件グラウンドは、遅くとも平成23年には、子どもたちの遊び場となっ ており、その頃には本件整地ローラーが本件グラウンド内に置かれていたと ころ、被告は、この頃にはこれらの状況について把握し得る状況にあった。 被告は、本件整地ローラーが、その使用に付随して事故発生の危険性を有するものであり、これを子どもたちの遊び場になっている本件グラウンドに長年にわたり放置し、かつ、所有者に対して施錠等の措置をさせることなく自由に使用できる状況下に置いておけば、本件グラウンドで遊ぶ子どもたち が本件整地ローラーに関心を示し、本来の用途や使用方法、使用に伴う危険を理解しないまま、本件整地ローラーを使って遊び、その際に事故を生じさせる危険があることは容易に予測することができた。 被告は、本件事故発生の4日後には本件整地ローラーの固定を完了しており、本件事故発生の回避は容易であった。 したがって、本件事故発生は、被告における通常の予測の範囲を超えるものではなく、本件グラウンドは、通常有すべき安全性を欠いた状態であったから、被告は、本件事故につき国賠法2条1項の責任を負う。 【被告の主張】ア本件グラウンドは、当初被告が設置したものであるが、住民の一般の利 用に供するものではなく、行政財産ではない。 すなわち、本件グラウンドの設置根拠となる地域改善対策特別措置法が昭和 本件グラウンドは、当初被告が設置したものであるが、住民の一般の利 用に供するものではなく、行政財産ではない。 すなわち、本件グラウンドの設置根拠となる地域改善対策特別措置法が昭和62年に失効後、これに代わり同年に制定・施行された地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律が平成14年に失効するに際し、被告は、地域改善対策事業が終了して本件グラウンドの設置 目的が達成されたと判断し、同法失効後は対象地域の住民のために設置された本件グラウンドを被告が特別に経費をかけて維持管理していくことができなくなったため、本件グラウンドが所在する地元住民からの要望に応じて、その自治会であるc自治会(以下「本件自治会」という。)に対し、本件グラウンドの管理を移して、その私的利用の施設とした。 したがって、遅くとも平成14年以降は、本件グラウンドは国賠法2条 1項の「公の営造物」に当たらない。 イ仮に、本件グラウンドが国賠法2条1項の「公の営造物」に当たるとしても、本件グラウンドは、グラウンドゴルフ等のスポーツを行うことが予定されているものであり、これら予定された用法によって本件グラウンドを利用した場合には、本件グラウンドの隅に本件整地ローラーが置かれて いるとしても、これらの用法に内在する危険性から発生する場合を除いて、人身事故は発生し得ない。 本件事故は、児童及び幼児である原告Aら6名が、本件グラウンドの隅に置かれていた約600kg もの本件整地ローラーを、引っ張り役2名、押し役4名で動かして遊ぶという通常予測し得ない異常な方法によって本 件グラウンドを利用したことに起因するものであるから、本件グラウンドは通常有すべき安全性を欠いておらず、被告には本件グラウ 押し役4名で動かして遊ぶという通常予測し得ない異常な方法によって本 件グラウンドを利用したことに起因するものであるから、本件グラウンドは通常有すべき安全性を欠いておらず、被告には本件グラウンドの設置又は管理に瑕疵はなく、被告は、本件事故につき国賠法2条1項の責任を負わない。 (2) 争点(2)(損害の発生及び数額)について 【原告らの主張】ア本件事故により、原告Aは別紙4-1・2損害一覧表「損害費目」欄各記載のとおりの損害を被り、その損害額は同「損害額」欄各記載のとおりである。 前記第1の1~5記載の原告Aの請求金額と損害額の対応関係は、次の とおりである。 (ア) 原告Aの一時金請求部分(前記第1の1)前記第1の1(1)の5486万8802円は、別紙4-1損害一覧表「損害費目」で「治療費」ないし「後遺障害慰謝料」に係る「損害額」の合計5108万6002円の8割(過失相殺2割。以下同じ。)に相当 する4086万8802円に弁護士費用1400万円(将来の定期金請 求部分の弁護士費用を含む。)を加えた額である。 同1(2)の230万6888円は、別紙4-2損害一覧表「損害費目」に係る「損害額」のうち令和5年10月分(本件の口頭弁論終結見込み時期である本件訴え提起から1年後の時期)までの合計金額(「寄宿舎代小学校」につき13か月分12万3500円の8割に相当する9万88 00円、「帰省交通費」につき14か月分25万0110円の8割に相当する20万0088円並びに「将来介護費」につき123万2000円の8割に相当する98万5600円及び日額3000円の426日分127万8000円の8割に相当する102万2400円の合計)である。 (イ) 原告Aの将来の定期金請求部分( 3万2000円の8割に相当する98万5600円及び日額3000円の426日分127万8000円の8割に相当する102万2400円の合計)である。 (イ) 原告Aの将来の定期金請求部分(前記第1の2~5)前記第1の2~5の各金額は、別紙4-2損害一覧表「損害費目」に係る各「損害額」の8割に相当する金額である。 イ原告Bは、原告Aの母であり、本件事故により原告Aが被った被害について、固有の慰謝料が生じる。その慰謝料額は1000万円を下らない。 原告Bは、弁護士に委任して本訴提起を余儀なくされ、その弁護士費用は80万円を下らない。 前記第1の6記載の原告Bの請求金額は、上記1000万円の8割に相当する800万円に上記80万円を加えた額である。 【被告の主張】 ア原告Aの被った損害について、いずれも不知ないし争う。 損害額についての具体的な主張は、別紙4-1・2損害一覧表「被告の主張」欄各記載のとおりである。 イ原告Bの被った損害について、不知ないし争う。 (3) 争点(3)(過失相殺)について 【被告の主張】 原告Aら6名が、本件整地ローラー付近に集まってから本件事故発生までは相当な時間があったと考えられ、その間、原告B、C及び知人(以下、3名を併せて「保護者ら」という。)いずれもが子らの様子を全く見ていなかったとは考えられない。 そうであれば、子らが異常な行動に出ることはないようにさせる注意義務 は、もとより、第一次的にはその保護者にあるのであって、保護者らが直ちに制止しなかったという過失は極めて重大であり、大幅な過失相殺がされるべきである。 【原告らの主張】原告Aらが、本件整地ローラー付近に集まってか 者にあるのであって、保護者らが直ちに制止しなかったという過失は極めて重大であり、大幅な過失相殺がされるべきである。 【原告らの主張】原告Aらが、本件整地ローラー付近に集まってから本件事故発生までに相 当な時間があったことは否認する。 保護者らは、本件整地ローラーが使用可能な状態にあることを認識していなかったため、原告Aらの行動に目を向けておらず、その結果、本件事故を防ぐことができなかったとしてもやむを得ず、保護者らに過失はない。被害者側の過失として原告Bに一定の過失が認められるとしても、原告Bが本件 事故の発生を予見することは極めて困難であったから、その過失割合が2割を超えることはない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件事故に関する国賠法2条1項責任の成否)について(1) 国賠法2条1項にいう「公の営造物の設置又は管理に瑕疵」があるとは、 公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、「公の営造物」とは、国又は公共団体により直接に公の目的に供される有体物をいうものと解され、上記の安全性を欠くか否かの判断は、当該営造物の構造、本来の用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的、個別的に判断すべきである(最高裁昭和42年(オ)第921号同45年8月20日第一 小法廷判決・民集24巻9号1268頁、最高裁昭和53年(オ)第76号 同年7月4日第三小法廷判決・民集32巻5号809頁参照)。 (2) 本件グラウンドが国賠2条1項の「公の営造物」に該当するか否かについてア本件グラウンドは、地方公共団体である被告が、その所有する土地において、被告の地域改善対策事業として整備して設置したものであり(前提 事実(2)ア)、被告が所有 に該当するか否かについてア本件グラウンドは、地方公共団体である被告が、その所有する土地において、被告の地域改善対策事業として整備して設置したものであり(前提 事実(2)ア)、被告が所有する行政財産(地方自治法238条4項所定の普通地方公共団体において公共用に供した財産)として把握され(同イ)、現にグラウンド施設として住民の利用に供されている(同ウ)ものであるから、公共団体により直接に公の目的に供される有体物にほかならないと認められる。 イこの点、被告は、本件グラウンドの設置根拠となる地域改善対策特別措置法及びこれに代わる地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の失効に際し、本件自治会に対して、本件グラウンドの管理を移して、その私的利用の施設としたため、遅くとも平成14年以降は、本件グラウンドは公の営造物ではない旨主張する。そして、四日市市運動 施設の設置及び管理に関する条例(地方自治法244条の2の規定に基づき四日市市運動施設の設置及び管理について必要な事項を定めるもの。乙2)において、本件グラウンドは当該条例が定める運動施設には含まれていない。 しかし、証拠(甲2、50、乙3、12、13、証人G、証人E)及び 弁論の全趣旨によれば、本件グラウンドは、対象地域の住民の健康保持を目的として設置されたものであり、その利用状況は、本件自治会の置かれた地域の住民が中心となって利用するというものであって、被告が本件自治会に管理を移したという平成14年以前もそれ以降も特段の変動はないこと、被告が、本件グラウンドについて本件自治会に移した管理の内容 は、利用調整に係る運営管理や、グラウンドの整備や草刈りといった日常 的な管理をいうものであって、本件グラウンドに設置したフェン 、本件グラウンドについて本件自治会に移した管理の内容 は、利用調整に係る運営管理や、グラウンドの整備や草刈りといった日常 的な管理をいうものであって、本件グラウンドに設置したフェンス等の設備の修繕という本件グラウンド自体の維持管理に係る部分の管理は平成14年以降も変わらず被告が行っており、被告の課内室であり本件グラウンドからほど近い場所に所在する交流プラザは、本件グラウンドの門扉入り口の鍵を保有していること、及び、被告は、平成31年4月1日、本件 自治会に対し、本件グラウンドの日常的な管理(除草、グラウンド整備、トイレ清掃等)について、年額29万2000円で委託する旨の委託契約を締結して委託料を支払っていることが認められる。そうすると、被告が主張する本件グラウンドの本件自治会への移管とは、被告所有の行政財産として被告が管理主体となる本件グラウンドの管理業務のうち日常的な 管理業務を本件自治会に委託したことをいうにすぎず、これにより本件グラウンドが本件自治会の私的利用物になったとはいえないから、被告により直接に住民の利用目的に供された営造物であるとの本件グラウンドの性質を失わせる事由とはならない。四日市市運動施設の設置及び管理に関する条例上の運動施設に本件グラウンドが含まれていないことは、本件グ ラウンドの設置及び管理の経緯が他の一般の運動施設と異なることの影響を受けた結果と推認されるのであって、本件グラウンドの上記性質を否定する事情ということはできない。 そして、本件グラウンドの設置が地域改善対策事業として対象地域住民の利用に供することを目的にされたものであり、平成14年以降は専ら本 件自治会が置かれた地域の住民に供されてきたとの事情があるにしても、その設置目的は公の目的にあったものであり て対象地域住民の利用に供することを目的にされたものであり、平成14年以降は専ら本 件自治会が置かれた地域の住民に供されてきたとの事情があるにしても、その設置目的は公の目的にあったものであり、平成14年以降の利用形態も、利便性から事実上近隣の住民による利用が中心となったというにとどまり、住民の一般利用という公の目的に供されていたというに妨げはない。 被告主張のとおり本件グラウンドが本件自治会の私的利用施設であるな らば、平成14年当時に、明示に公用廃止の手続がされていたはずである が、そのような手続がされたことはなく、また、上記の平成14年以降の利用形態について、これが実態として公共物としての機能を失っており、本件グラウンドについて黙示的に公用が廃止されたということも認められない。 以上によれば、被告の上記主張は採用することができず、本件グラウン ドは、その設置当時から平成14年以降もなお、被告により直接に公の目的に供される有体物としての性質を有すると認められる。 ウしたがって、本件グラウンドは、被告が管理主体となる国賠法2条1項所定の「公の営造物」に該当する。 (3) 本件グラウンドが通常有すべき安全性を欠いているか否かについて ア本件グラウンドが通常有すべき安全性について、被告は、本件グラウンドの隅に本件整地ローラーが置かれていても、本件グラウンドをその予定された用法によって利用した場合には、本件整地ローラーによる人身事故発生の危険性はなく、本件事故は通常予測し得ない異常な方法によって本件グラウンドを利用したことによって生じたものであるから、本件グラウ ンドが通常有すべき安全性を欠くとの瑕疵はない旨主張し、原告らは、遊び場となっている本件グラウンドの隅に置かれた本件整地ローラー ラウンドを利用したことによって生じたものであるから、本件グラウ ンドが通常有すべき安全性を欠くとの瑕疵はない旨主張し、原告らは、遊び場となっている本件グラウンドの隅に置かれた本件整地ローラーを使って子どもたちが遊ぶことは通常の予測の範囲を超えるものではなく、本件グラウンドが通常有すべき安全性を欠くとの瑕疵により本件事故が発生した旨主張する。 そこで、本件グラウンドが通常有すべき安全性を欠くか否かは、本件グラウンドの構造、本来の用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮した上で、本件事故の際に原告Aら6名が隅に置かれていた本件整地ローラーを使用して本件グラウンドを利用したことが、通常予測し得ない異常な方法による利用であり、これによって本件事故が生じたものであ るか否かを判断すべきことになる。 イ本件グラウンド及びそこに置かれた本件整地ローラーの本来的用法は、本件グラウンドの設置経緯や面積及び付属施設の有無などの形状等並びに本件整地ローラーの形状やこれが置かれた場所からして(前提事実(2))、周辺住民が、サッカー、野球等の一定の広がりのあるグラウンドを必要とするスポーツを行う運動施設として本件グラウンドを利用し、その スポーツ利用によって荒れたグラウンドをその利用の前後に整地する目的で、当該利用者又は本件グラウンドの管理者によって本件整地ローラーを整地目的としての用法に従って使用することにあると認められる。 そして、本件整地ローラーは、本件グラウンドにワイヤー等で支柱等に固定されることなく置かれており(前提事実(2)オ)、上記の本来的用法に よらずに本件整地ローラーを使用しようとする者がいた場合には、その者が解錠等の作業なしにそのまま本件整地ローラーを動かすことは可能な状態 置かれており(前提事実(2)オ)、上記の本来的用法に よらずに本件整地ローラーを使用しようとする者がいた場合には、その者が解錠等の作業なしにそのまま本件整地ローラーを動かすことは可能な状態であったが、本件整地ローラーが、広大な本件グラウンドの隅に単体で置かれており(前提事実(2)オ)、本件グラウンドの利用を妨げるなどの状態になかったことや、整地用ローラーとしての形状・重量からしても整 地目的以外の用途への流用が常態であったものではないことからすると、上記のスポーツ利用者以外の本件グラウンドの利用者が、本件グラウンドを利用するために本件整地ローラーを整地目的以外の目的で動かそうとする必要や動機、さらには整地目的の用法に従わない高速での使用など身体への危険を生じさせる態様で動かそうとする必要や動機は、通常想定す ることができない。実際に、本件事故以前には、遅くとも平成23年以降の長期にわたって、本件グラウンドに本件整地ローラーが本件事故当時と同様の状態で置かれていたところ、本件整地ローラーは、老人会によるグランドゴルフ実施後に整地目的で使用されていたといった上記の本来的用法に従った使用がされた限りであったと認められ(甲6、乙13、証人 E、原告B本人)、本件グラウンドの利用者が上記の本来的用法によらずに 本件整地ローラーを使用したり、これによって身体に危険が生じたりした事象があったことはうかがわれない。 以上の諸事情を総合考慮すると、本件整地ローラーが本件グラウンドに置かれた状態は、本件グラウンドの利用者がその本来的用法によらずに本件整地ローラーを使用することが通常想定されないから、ワイヤー等で支 柱等に固定されることなく置かれた状態であっても、本件グラウンドの利用における通常の安全性に欠けると の本来的用法によらずに本件整地ローラーを使用することが通常想定されないから、ワイヤー等で支 柱等に固定されることなく置かれた状態であっても、本件グラウンドの利用における通常の安全性に欠けるところはないというべきである。 ウ前記イの認定判断は、本件グラウンドが近隣の子どもたちの日常的な遊び場となっているとの利用状況(前提事実(2)ウ)や、本件事故が子どもたちが遊び場として本件グラウンドを利用する中で生じたものであるこ と、すなわち、本件事故の当日、原告Aは、先に本件グラウンドに遊びに行っていた兄とCに加わるため、姉と共に本件グラウンドに行き、その後に原告Bや知人及び知人の子ら3名も本件グラウンドに来たことから、原告Aら6名が本件グラウンドを遊び場として利用する中で、本件整地ローラーを遊びの道具として、兄及び知人女児がコの字型の取っ手の内側に入 ってけん引し、原告Aと姉がローラー部分を後ろから押し、知人男児及び知人幼児がコの字型の取っ手を外側から引っ張るというような方法で、本件整地ローラーを、その置かれていた隅から本件グラウンドを横切るように50m以上にわたって動かして遊んでいた際に、前提事実(3)アのとおりの態様で発生したものであると認められること(甲51、55、証人F、 原告B本人、弁論の全趣旨)を勘案しても、異なるものではない。 まず、本件グラウンドの本来的用法は、サッカー、野球等の一定の広がりのあるグラウンドを必要とするスポーツを行う運動施設として利用であり(前記イ)、本件グラウンドは、平らなグラウンドが広がっているだけで子どもが使用する遊具の設置はないから(前提事実(2)ウ、甲51)、こ こが近隣の子どもたちの日常的な遊び場となっているにしても、遊びとし ては、専ら、 ラウンドが広がっているだけで子どもが使用する遊具の設置はないから(前提事実(2)ウ、甲51)、こ こが近隣の子どもたちの日常的な遊び場となっているにしても、遊びとし ては、専ら、グラウンド上を鬼ごっこなどで走り回ったり、持参したボールその他の簡易な用具で遊んだりするに限られ、そのような遊びのための場所として利用されていたと認められる。そして、広い本件グラウンドの隅に本件整地ローラーが置かれていたとしても、上記のような遊びをする範囲を妨げる状態にはなく、また、本件整地ローラーは、その形状からし て遊具として子どもの興味関心を引くようなものでなく、さらに、その重量からして、子どもが静止状態から動かすには非常に大きな力を加える必要があり、また、それ故に無理にでも動かしただけで疲労や危険を伴うことは子どもであっても察知することが可能と考えられる(整地用ローラーで遊ぶことは、大人に見つかった場合には直ちに危険であるとして強い叱 責を受けることになるから、とりわけ大人がいる場所では、子どもであってもためらうものと考えられる。)ものであるから、本件グラウンドを上記のような日常的な遊びのための場所として利用する子どもが、本件整地ローラーを動かして遊ぶという目的や動機を有するに至ることは、通常想定できない。実際に、本件事故以前に、本件グラウンドで子どもが本件整地 ローラーを遊びに用いたり、本件整地ローラーが整地目的外に使用されているのを子どもが見聞きしていたりした事象があったことはなく(前記イ)、本件整地ローラーが置かれていることを認識しながら日常的に児童・幼児だけを本件グラウンドで遊ばせている親であっても、子どもが本件整地ローラーで遊ぶという危険を認識したことはなかったと認められる(原 告B本人)。 以上 ることを認識しながら日常的に児童・幼児だけを本件グラウンドで遊ばせている親であっても、子どもが本件整地ローラーで遊ぶという危険を認識したことはなかったと認められる(原 告B本人)。 以上の諸事情を総合考慮して見たときには、原告Aら6名による本件事故の際の遊びは、本件整地ローラーを、小学4年生2名、小学2年生1名、小学1年生2名及び幼児1名という年少の児童・幼児ら6名が集って、けん引したり押したりしてローラー部分を転がし、しかも、かなりの距離を、 押している児童が勢いのままにローラーに乗り上げて前方に転倒(前提事 実(3)ア)するというまでの相当の速度で転がして遊ぶというものであったから、本件グラウンド及びそこに置かれた本件整地ローラーの本来的用法と異なることはもちろん、上記の日常的な遊び場としての本件グラウンドにおける遊び方とも著しくかけ離れた態様の遊びというほかない。子どもである以上、遊びとして大人が思いもよらない行動に出ることはあり得 るとはいえ、上記のとおり、子どもが本件整地ローラーを動かして遊ぶという目的や動機を有するに至ることは通常想定できないから、とりわけ幼児も含む年少者が集団で一体となって本件整地ローラーを相当の速度で転がす遊びに及ぶことは、異常な遊び方として本件グラウンドの設置管理者が通常予測し得ないものである。 エ以上の次第であるから、本件グラウンドは、その通常有すべき安全性を欠いているものではなく、本件事故は、原告Aら6名が通常予測し得ない異常な方法により本件整地ローラーを使用して本件グラウンドを利用したことによって生じたものであるから、被告が本件事故につき国賠法2条1項の責任を負うものではない。 オなお、本件事故後の事情として、証拠(甲7、47~4 用して本件グラウンドを利用したことによって生じたものであるから、被告が本件事故につき国賠法2条1項の責任を負うものではない。 オなお、本件事故後の事情として、証拠(甲7、47~49)によれば、被告の担当者が、本件事故後の令和2年当時にされた被告による損害賠償その他の事項に係る協議・交渉の場において、原告Bに対し、被告に責任がない旨の発言をすることなく責任の割合が分からないため和解ができない旨の発言をしたことは認められるが、協議・交渉の場での担当者にお ける見解を述べるにとどまり、また、当該発言があったことで原告らにおいて被告の責任の有無についての訴訟上の主張立証資料の収集提出ができなかったなどの事情もないから、被告が本訴において、国賠法2条1項の責任自体を争うことが訴訟上の信義則に反して許されないということはない。 2 したがって、争点(1)について判断したとおり、本件事故につき被告の国賠 法2条1項責任は認められないから、同責任に基づく原告らの請求は、いずれも理由がない。 第4 結論よって、原告らの請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 津地方裁判所四日市支部 裁判長裁判官日比野幹 裁判官西前ゆう子 裁判官深見菜有子
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