平成13(ワ)2424 保険金請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年5月14日 神戸地方裁判所
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判決文本文13,179 文字)

主文 1 被告株式会社甲保険は,原告に対し,金1005万2550円及びこれに対する平成13年11月9日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告の被告乙連合会に対する請求,被告株式会社甲保険に対するその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用の負担は,次のとおりとする。 (1) 原告と被告株式会社甲保険との間に生じた訴訟費用はこれを9分して,その1を原告の負担とし,その余を被告株式会社甲保険の負担とする。 (2) 原告と被告乙連合会との間に生じた訴訟費用は,原告の負担とする。 4 この判決の1項は,仮に執行することができる。 事実 第1 当事者の求める裁判 1 原告(請求の趣旨)(1) 被告株式会社甲保険は,原告に対し,金1308万円及びこれに対する平成13年11月9日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告乙連合会は,原告に対し,金2000万円及びこれに対する平成13年11月9日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (4) この判決は仮に執行することができる。 2 被告ら(請求の趣旨に対する答弁)(1) 原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 当事者の主張 1 原告(請求原因)(1) 被告甲保険に対する請求ア本件火災保険契約の締結原告は,平成9年3月25日,被告甲保険との間で,次のような火災保険契約(以下「本件火災保険契約」という。)を締結した(甲1)。 (ア) 保険の目的別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)(イ) 保険金 約(以下「本件火災保険契約」という。)を締結した(甲1)。 (ア) 保険の目的別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)(イ) 保険金a 損害保険金 990万円b 臨時費用保険金 100万円c 残存物取り片付け費用保険金 99万円d 失火見舞い費用保険金 20万円e 特別費用保険金 99万円イ本件火災の発生(ア) 本件建物は,平成13年6月8日午前9時12分頃(本件火災保険契約の保険期間中),火災(以下「本件火災」という。)にあった。 (イ) 原告は,前同日午前8時55分頃,本件建物のうち別紙図面(1)記載の和室A(以下,本件建物の部屋等の名称は,いずれも別紙図面(1)記載の名称による。)において,紙の空き箱で作成した仏壇(以下「本件仏壇」という。)の前の燭台に立てた蝋燭に点火し,そのまま同日午前9時5分頃外出した。 すると,蝋燭が何らかの原因で転倒し,本件仏壇の側辺に着火し,延焼拡大して,本件火災が発生したものと推定される(別紙図面(3)参照)。 (ウ) 原告の関与としては,蝋燭に点火し,そのまま放置して外出したことであるが,蝋燭が倒れることは予見していなかった。したがって,本件火災は偶然の事故によるものである。 ウ結論よって,原告は,本件火災保険契約に基づき,被告に対し,前記ア(イ)aないしeの保険金合計1308万円,及びこれに対する平成13年11月9日(訴状送達の日の翌日)から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 ( 被告に対し,前記ア(イ)aないしeの保険金合計1308万円,及びこれに対する平成13年11月9日(訴状送達の日の翌日)から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (2) 被告乙連合会に対する請求ア本件火災共済契約の締結原告は,平成13年1月1日,被告乙連合会との間で,次のような火災共済契約(以下「本件火災共済契約」という。)を締結した(甲6)。 (ア) 火災共済の目的本件建物内に存在する家財一式(イ) 火災共済金(限度額) 2000万円イ本件火災の発生(ア) 本件建物は,平成13年6月8日(本件火災共済契約の共済期間中),本件火災にあった。 (イ) 本件火災は偶然の事故によるものである。その理由は,前記(1)イ(イ)(ウ)(前記3頁)記載のとおりである。 ウ家財の被災本件火災により,本件建物内にあった2440万円相当の家財(原告,離婚した妻a,長女b,二女cの家財道具)が罹災した。 エ結論よって,原告は,本件火災共済契約に基づき,被告に対し,本件火災共済金2000万円,及びこれに対する平成13年11月9日(訴状送達の日の翌日)から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 被告ら(請求原因に対する認否,反論)(1) 請求原因(1)(被告甲保険に対する請求)についてア認否請求原因ア(本件火災保険契約の締結),同イ(ア)(本件火災の発生)は認めるが,同イ(イ)(ウ)(偶然の事故によるもの)は否認ないし争う。 イ反論(ア) 本件火災の原因本件火災は原告の放 約の締結),同イ(ア)(本件火災の発生)は認めるが,同イ(イ)(ウ)(偶然の事故によるもの)は否認ないし争う。 イ反論(ア) 本件火災の原因本件火災は原告の放火によるものであり,偶然の事故によるものではないので,被告甲保険には火災保険金の支払義務はない。原告は,本件火災当時,多額の負債を抱えていたことも,原告の放火を裏付けるものである。 (イ) 保険金額についてa 本件火災により原告が被った損害は,合計865万8300円を超えるものではなく(乙3),損害保険金額は865万8300円を超えるものではない。 b 残存物取り片付け費用保険金は,19万4250円を超えない(乙3)。 c 特別費用保険金は,保険の目的が全損となった場合に,それによって生ずる特別な費用に対して支払われるものである(甲4-特約条項1条11項)。ところが,本件建物は修繕可能であり,かつ,かかる修繕に要する費用は保険金額を超えるものではないから(乙3),本件建物が全損したものとはいえず,原告は特別費用保険金の支払を請求できない。 (2) 請求原因(2)(被告乙連合会に対する請求)についてア請求原因(2)ア(本件火災共済契約の締結)について(ア) 請求原因(2)アのうち,保険の目的は否認し,その余は認める。 (イ) 本件火災共済契約の目的となる家財は,共済契約者又は共済契約者と生計を一にする親族(以下「共済契約関係者」という。)が所有する家財であって,共済契約関係者が居住する建物内に存するものである(丙1-規約8条)。 イ請求原因(2)イ(本件火災の発生)について(ア) 請求原因(2)イ(ア)(本件火災の発生)は認める て,共済契約関係者が居住する建物内に存するものである(丙1-規約8条)。 イ請求原因(2)イ(本件火災の発生)について(ア) 請求原因(2)イ(ア)(本件火災の発生)は認めるが,同(イ)(偶然の事故によるもの)は否認ないし争う。 (イ) 本件火災は原告の放火によるものであり,偶然の事故によるものではないので,被告乙連合会には火災共済金の支払義務はない。 ウ請求原因(2)ウ(家財の被災)は否認する。 (ア) 本件火災当時,a,b,cは,原告と生計を一にする親族ではなくなっており,共済契約関係者には該当しない。したがって,仮にa,b,cの家財が本件建物内に若干残置されていたとしても,本件火災共済の目的家財ではない。 (イ) そうすると,本件火災当時,469万円相当の原告の家財があったので(別紙「家財損害認定」参照),家財共済金は469万円となり,臨時費用共済金70万3500円を加えた火災共済金総額は539万3500円となる。 3 被告ら(抗弁)(1) 重過失による免責-被告両名の主張ア被告甲保険,被告乙連合会は,本件火災が原告の重大な過失によるものである場合は,原告に対し,火災保険金,火災共済金の支払義務を負わない(甲4-特約条項2条1項(1)号,丙1-規約60条1項1号)。 イ仮に,原告が主張するとおり,原告が蝋燭に点火した火が原告の意図に反して拡大したものとすると,原告の主張に係る火災発生現場の状況を踏まえれば,原告に重大な過失があることが認められる。 すなわち,上記の出火場所の状況は,紙製仏壇,コピー用紙,半紙,紙箱等の可燃物が,蝋燭の火に容易に接触しうるのみならず,本件仏壇,紙箱等に着火すれば,容易に炎上しうる状況にあ 。 すなわち,上記の出火場所の状況は,紙製仏壇,コピー用紙,半紙,紙箱等の可燃物が,蝋燭の火に容易に接触しうるのみならず,本件仏壇,紙箱等に着火すれば,容易に炎上しうる状況にあった(別紙図面(3)参照)。かかる状況そのものは,原告もこれを認識していたのであるから,原告にとって,本件火災の発生は,容易に予見し得たといえる。 原告は,これらの可燃物を蝋燭から遠ざけるか,蝋燭の火を消火するかさえすれば,本件火災発生を防ぐことができたのであり,結果を回避することが可能かつ容易であった。 ウしたがって,本件火災の発生は,原告がごく僅かな注意さえ払えば,これを予見し,かつ回避することが可能であったのに,原告が漫然これを看過して,本件火災の発生を招致したものであるから,重大な過失が認められる。 よって,被告らは,原告の重大な過失による免責により,原告に対し,本件火災保険金,火災共済金の支払義務を負わない。 (2) 不実の表示による免責-被告乙連合会の主張ア被告乙連合会の規約には,共済金受取人が,共済金の請求において,提出する書類に故意に不実のことを記載した場合には,共済金を支払わないとの規定がある(丙1-規約25条2項)。 イ原告は,平成13年6月中旬,被告乙連合会に対し,被災状況申告書(丙6),「住宅の概況等申告書」(丙5の3)等を添付して,火災共済金支払請求書(丙5の1)を提出した。 ウところで,原告は,平成13年4月6日,妻のaと協議離婚し,aと娘二人(b,c)は,同年4月25日,本件建物から転出している。したがって,本件火災(平成13年6月8日)当時,a,b,cは,原告と生計を一にする親族ではなくなっており,原告一人が本件建物に居住していた 人(b,c)は,同年4月25日,本件建物から転出している。したがって,本件火災(平成13年6月8日)当時,a,b,cは,原告と生計を一にする親族ではなくなっており,原告一人が本件建物に居住していた。 ところが,原告は,被告乙連合会に対する火災共済金の支払請求に際し,「住宅の概況等申告書」(丙5の3)に家族構成を4人と記載し,成人女子の大量の衣類等の記載を含む被災状況申告書(丙6)を提出している。原告は,被告乙連合会に対し,妻子との離婚・別居の事実を秘匿し,世帯人員を実際よりも多く申告することによって,より多くの被害認定を得ることを企て,かかる不実の申告を行ったものである。 エ本件火災により被害を受けた原告の家財は,別紙「家財損害認定」の認定数量欄記載のとおりである。原告が「被災状況申告書」(丙6)に記載した被害家財は,本件火災により実際に被害を受けた原告の家財数量を著しく上回るのは勿論のこと,原告が本件訴訟で主張している被害家財数量をも著しく上回っている。 原告は,本件火災当時,本件建物には存在しなかった家財や,存在したが実際の数量とは異なり著しく過大な数量を申告しているのである。 オ以上の次第で,原告は,本件火災共済金の支払請求に際し,世帯構成や罹災した家財及びその数量に不実の記載をしているので,被告乙連合会は,不実の表示による免責により,原告に対し,本件火災共済金の支払義務を負わない。 4 原告(抗弁に対する認否,反論)(1) 抗弁(1)(重過失による免責)についてア認否抗弁(1)のうち,ア(重過失による免責条項)は認めるが,イ及びウ(原告に重大な過失)は争う。 イ反論(ア) 原告は,本 ア認否抗弁(1)のうち,ア(重過失による免責条項)は認めるが,イ及びウ(原告に重大な過失)は争う。 イ反論(ア) 原告は,本件火災の15年程前から紙製仏壇を作り,毎日朝晩蝋燭に点火し,3分間ほど般若心経を唱え,祖先の霊に供えていたのである。本件仏壇は紙製でも安定しており,この15年間において一度も倒れたことはなく,お札も同様である。 (イ) 原告には,かような状況下で,本件仏壇やお札が倒れることを予見することは不可能であり,原告には,軽過失も存しなかったというべきである。 (2) 抗弁(2)(不実の表示による免責)は争う。 ア認否抗弁(2)のうち,ア(不実の表示による免責条項),イ(本件火災共済金支払請求書の提出)は認めるが,ウ,エ,オ(本件火災共済金支払請求書に不実の記載)は否認ないし争う。 イ反論(ア) 原告は,平成13年6月14日又は15日,被告乙連合会に提出した被災状況申告書(丙6)を作成しており,本件火災(平成13年6月8日)直後で精神状態が不安定な中で作成したものである。したがって,被害品の申告について,多少の違いがあったとしても,原告の申告が虚偽のものであったということにはならない。 しかも,原告の被告乙連合会に対する被災物件の申告は,多少の記憶違いがあっても,概ね客観的被災状況に合致するものであり,不実の表示を故意に行ったとは考えられない。 (イ) 原告代理人は,本件訴訟を提起するに際し,家財の損害については,原告の消防に対する申告の控え(甲2)を基に,請求を行っている。 原告本人が原告代理人に相談に来たときには,既に本件建物内の損傷 告代理人は,本件訴訟を提起するに際し,家財の損害については,原告の消防に対する申告の控え(甲2)を基に,請求を行っている。 原告本人が原告代理人に相談に来たときには,既に本件建物内の損傷した家財は廃棄処分されており,また,被告乙連合会に提出した申告書(丙5の3,丙6)はコピーが取られておらず,原告代理人には甲第2号証しか提出できなかったのである。 原告代理人としては,家財の損害については,原告手持ちの消防に対する申告の控え(甲2)を基に訴状を起案するしかなく,甲第2号証を基にして本件訴訟を提起したものである。 これは,訴訟技術上やむを得ぬ選択であり,何ら非難されるべきことではない。 (ウ) 原告が,本件火災後,被告乙連合会に家族構成を4人と申告したのは,平成13年4月6日に妻と離婚しても,妻の箪笥や衣類を本件建物の和室Bにまだ置いていたからであり(丙4の19・20・31・33・36・37),また,二人の娘も,本件建物の洋室A,Bにそれぞれ自分の部屋を持って生活していたからである(丙4の15~18・34・35・38・40)。 原告が消防にり災世帯員一人と申告したのは,本件火災時に現実に在宅していた者の人数を申告すべきと考えたからである。本件火災時には,原告一人しか在宅していなかったから,一人と申告したものである。 このように,原告の申告は客観的なものであり,被告乙連合会の主張は理由がない。 理由 第1 争いのない事実次の事実は,当事者間に争いがない。 1 請求原因(1)ア(本件火災保険契約の締結),同イ(ア)(本件火災保険契約期間中の火災の発生)。 2 請求原因(2)ア(本件火災共済契約の締 実次の事実は,当事者間に争いがない。 1 請求原因(1)ア(本件火災保険契約の締結),同イ(ア)(本件火災保険契約期間中の火災の発生)。 2 請求原因(2)ア(本件火災共済契約の締結)(ただし,保険の目的は除く),同イ(ア)(本件火災共済契約期間中の火災の発生) 3 抗弁(1)ア(重過失による免責条項),同(2)ア(不実の表示による免責条項),同(2)イ(火災共済金支払請求書の提出)。 第2 故意又は重大な過失の検討 1 事実の認定証拠(甲2・3,甲8~13,甲15~17,甲20,検甲1~4,乙1,丙3,丙4の1~48,原告本人)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 (1) 本件建物等ア原告は,平成9年3月,本件建物を購入し,現在に至るまで本件建物に居住している。 イ本件建物は,鉄筋コンクリート造5階建の集合住宅(30戸,延べ床面積2649㎡)の最上階(5階)の502号室(床面積82㎡)であり,間取りは和室A・B,洋室A・B,台所兼食堂の5室である(別紙図面(1)参照)。 (2) 本件火災の出火部位及びその付近ア本件火災の出火部位は,和室A内の整理ダンス上部の本件仏壇付近である(別紙図面(2)参照)。本件火災により,本件建物(82㎡)のうち,和室・廊下20㎡を焼損し,その他62㎡を煙損した。 イ本件火災当時,整理ダンス(底辺が40㎝×90㎝,高さが100㎝)の上に,紙の菓子箱に半紙を貼った手作りの本件仏壇(底辺が10㎝×10㎝,高さが40㎝)が置かれていた。本件仏壇の中には,先祖の戒名を記載した手製の紙のお札が,蛇腹状に折り畳まれて立てかけられていた(別紙図面(3),甲15・16参照)。 ウ本件仏壇の前(東側)には,半紙を かれていた。本件仏壇の中には,先祖の戒名を記載した手製の紙のお札が,蛇腹状に折り畳まれて立てかけられていた(別紙図面(3),甲15・16参照)。 ウ本件仏壇の前(東側)には,半紙を敷いた木箱(底辺が20㎝×20㎝,高さが3㎝)があり,木箱の中には,蝋燭(新品で長さ10㎝,直径1㎝)の燭台(高さ5㎝,金属製),水の入った容器,鐘,線香立て,花立て,予備の蝋燭などがあった(別紙図面(3)参照)。 なお,蝋燭に点火した場合,蝋燭の炎と本件仏壇との距離は5~6㎝程であった。 エ本件仏壇の横(南側)には,木製の小物入れ(底辺が22㎝×40㎝,高さが40㎝)があり,その上にはB5のコピー用紙が5枚程積み重ねられていて,その上に重し代わりの調理器具の小さな「お玉」が置かれていた(別紙図面(3)参照)。 (3) 本件火災原因ア原告は,約15年程前から紙製の仏壇を作り,毎日朝晩蝋燭に点火し,3分間程般若心経を読経し,祖先の霊に供えるのを日課としていた。 原告は,平成13年6月8日当日も,午前8時55分頃,本件仏壇の前の蝋燭に点火し,般若心経を読経した後,午前9時5分頃,蝋燭の火を消すのを失念してそのまま外出したところ,午前9時12分頃,本件仏壇付近から出火して,本件火災が発生した(別紙図面(3)参照)。 イ本件火災発生当時,天候は曇りで,風速5.5~6m/秒の北風が吹いていた。上記風速は風力4に当たり,陸上では砂ぼこりが立ち,紙片が舞い上がる程度である。 また,本件火災発生当時,和室Aの南側の窓が30㎝位開けられ,洋室Aの北側の窓,和室Bの南側の窓,台所兼食堂の南側の窓もそれぞれ10㎝程開けられ,台所兼食堂の天窓も開けられ,各室から東西廊下部に繋がる扉等も開けられた状態で 室Aの南側の窓が30㎝位開けられ,洋室Aの北側の窓,和室Bの南側の窓,台所兼食堂の南側の窓もそれぞれ10㎝程開けられ,台所兼食堂の天窓も開けられ,各室から東西廊下部に繋がる扉等も開けられた状態であった(別紙図面(1)参照)。 原告は,平成9年3月(本件建物に入居)以降,雨の日,台風の時,雨が降りそうな時以外は,部屋の換気のために,毎日部屋の窓を開けて外出するのが日課であった。 ウ本件火災の原因は,次の(ア)(イ)のいずれかと推定できる。しかし,蝋燭の炎を吹き消すことなく可燃物を吹き飛ばし,吹き飛ばされた可燃物が蝋燭立ての上にある蝋燭の炎から着火するためには,可燃物と蝋燭との間に微妙な位置関係が必要であるため,蝋燭の転倒による可能性が大である(甲9-1・30・31頁)。 (ア) 蝋燭が風に煽られて転倒し,蝋燭の火が仏壇の側辺に着火し,延焼拡大した(別紙図面(3)参照)。 (イ) 可燃物(本件仏壇,お札,コピー用紙等)が風で飛ばされて,蝋燭に接炎して着火し,延焼拡大した(別紙図面(3)参照)。 2 検討(1) 当裁判所の判断前記1の認定によると,次のとおり認めることができ,原告には,本件火災を発生させたことについて,故意がなかったことが明らかに認められ,重大な過失があったものとも認められない。 ア本件火災発生当時北風が強く,しかも換気のため本件建物の各室・廊下の窓や扉が開かれていた。そのため,和室Aに強い風が吹き込み,蝋燭が風に煽られて転倒し,蝋燭の火が仏壇の側辺に着火し,延焼拡大したか(可能性大),可燃物(本件仏壇,お札,コピー用紙等)が風で飛ばされて,蝋燭に接炎して(可能性小),本件火災が発生したものである。 イしかし,本件火災発生 が仏壇の側辺に着火し,延焼拡大したか(可能性大),可燃物(本件仏壇,お札,コピー用紙等)が風で飛ばされて,蝋燭に接炎して(可能性小),本件火災が発生したものである。 イしかし,本件火災発生当時,いくら北風が強かったとはいっても,蝋燭が風に煽られて転倒し,蝋燭の火が本件仏壇の側辺に着火し,延焼拡大して本件火災となったこと,あるいは,可燃物(本件仏壇,お札,コピー用紙等)が風で飛ばされて,蝋燭に接炎して,本件火災が発生したことについては,多くの不幸な偶然が重なったために,たまたま火災になったものと思われる。 すなわち,本件火災発生当時と同じ条件を再現し,実験してみても,よほどの偶然が重ならない限り,何十回と実験を重ねても,そう簡単には火災にはならないものと思われる。何故なら,蝋燭が転倒して本件仏壇の側辺に着火したり,可燃物が風で飛ばされて蝋燭に接炎しても,よほどの特殊な条件が重ならない限り,A和室全体に燃え広がるような火事にはならないと思われるからである。 ウそれゆえ,原告が,本件火災発生直前,本件建物の各部屋の窓や扉を開け放ち,蝋燭の火を消し忘れて外出したことについては,蝋燭の火から火災になる予見可能性がなかったとまではいえないので,過失があったことは認められるが,重大な過失があったものとは認めることができない。 (2) 失火責任法上の重過失の解釈からの裏付けアところで,失火責任法の重過失を認めたものとして,最高裁昭和41年6月3日判決・裁判集民事83巻685頁があり,同重過失を認めなかったものとして,最高裁昭和32年7月9日判決・民集11巻7号1203頁,最高裁平成13年3月2日判決・判例時報1787号17頁がある。 イそして,上記最高裁昭和32年7月9日判決は,失火責任法上の重大な ,最高裁昭和32年7月9日判決・民集11巻7号1203頁,最高裁平成13年3月2日判決・判例時報1787号17頁がある。 イそして,上記最高裁昭和32年7月9日判決は,失火責任法上の重大な過失の意義について,「通常人に要求される程度の相当の注意をしなくとも,わずかな注意さえすれば,たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに,漫然とこれを見すごしたような,ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指すものと解するのを相当とする。」と判示している。 ウ確かに,上記アの3判決の具体的な事例をみると,最高裁は,失火責任法上の重過失については,失火者にほとんど故意に近いような著しい注意欠如があった場合でない限り,重過失を認めておらず,相当ひどい程度の過失があると思われる事例であっても,重過失を認め難いと判断していることが分かる。 エ本件火災保険約款,火災共済約款上の重過失の意義についても,失火責任法上の重過失の意義についての上記最高裁判決の判断が参考となる。そうすると,本件火災についても,前記(1)で認定したように,原告には重過失がないことが,失火責任法上の重過失の意義についての上記最高裁判決の判断からも裏付けることができる。 第3 不実の表示による免責の検討 1 事実の認定証拠(甲2・3,甲9,甲11〔一部〕,甲14,丙1,丙3~6〔枝番を含む〕,丙9~15)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 (1) 原告の家族構成ア原告(昭和19年1月生)は,平成9年3月本件建物を購入し,妻のa,娘二人(b,c)の4人で本件建物に居住していた。b・cは洋室A・Bを自室としていた。 イしかし,原告は,平成13年4月6日,aと協議離婚している(丙9)。a(昭和24年 を購入し,妻のa,娘二人(b,c)の4人で本件建物に居住していた。b・cは洋室A・Bを自室としていた。 イしかし,原告は,平成13年4月6日,aと協議離婚している(丙9)。a(昭和24年5月生),b(昭和53年3月生),c(昭和55年7月生)の3名は,同年4月25日,本件建物から出て,神戸市兵庫区d通e丁目で,aの実母が経営する喫茶店の2階を仮住まいとした(甲14,丙10,丙15)後,同年6月3日,神戸市中央区f町h丁目を生活の本拠として移り住んだ(丙10・11,丙15)。 ウしたがって,本件火災発生(平成13年6月8日)当時,a,b,cは,原告と生計を一にする親族ではなくなっており,原告一人が本件建物に居住していた。それゆえ,本件火災当時,本件建物内には,a,b,cの私物(衣類等)は僅かしか残っていなかった(丙4の1~48)。 例えば,b・cの部屋であった洋室A・Bの写真(丙4の15~18・34・35・38・40)を見ても,クローゼット,天袋の中に荷物が詰まっておらず,衣類がまばらであることなど,若い女性が本件火災直前まで生活していた部屋であるとは到底思えない。不要な物を除いて,b,cの所持品も持ち出されているものである。 エ原告も,平成13年6月8日,西消防署での質問に対し,「原告が一人で本件建物に住んでいる。」と供述しているし(甲11-2項),同年6月13日,西消防署長宛に,り災世帯員は原告一人である旨の火災損害届を提出している(丙12)。 (2) 火災共済金の支払請求ア原告は,平成13年6月中旬頃,被告乙連合会に対し,被災状況申告書(丙6),「住宅の概況等申告書」(丙5の3)等を添付して,火災共済金支払請求書(丙5の1)を提出した。 イところで,原告は,平成13年 年6月中旬頃,被告乙連合会に対し,被災状況申告書(丙6),「住宅の概況等申告書」(丙5の3)等を添付して,火災共済金支払請求書(丙5の1)を提出した。 イところで,原告は,平成13年4月6日,妻のaと協議離婚しており,aと娘二人(b,c)は,同年4月25日,本件建物から転出している。したがって,本件火災発生(平成13年6月8日)当時,a,b,cは,原告と生計を一にする親族ではなくなっており,原告一人が本件建物に居住していた。 ところが,原告は,被告乙連合会に対する火災共済金の支払請求に際し,「住宅の概況等申告書」(丙5の3)に家族構成を4人と記載し,成人女子の大量の衣類等の記載(丙6の13~14頁)を含む被災状況申告書(丙6)を提出しているのである。 原告は,被告乙連合会に対し,妻子との離婚・別居の事実を秘匿し,世帯人員を実際よりも多く申告することによって,より多くの被害認定が得られるものと期待して,かかる不実の申告を行ったものと考えられる。 ウところで,本件火災共済契約の目的となる家財は,共済契約者又は共済契約者と生計を一にする親族(共済契約関係者)が所有する家財であって,共済契約関係者が居住する建物内に存するものである(丙1-規約8条)。したがって,本件火災当時,a,b,cが原告と生計を一にする家族(共済契約関係者)であるか否かが,特に重要となる。 だからこそ,原告は,a,b,cが原告と生計を一にする家族(共済契約関係者)であると偽って,多額の火災共済金を取得しようとしたのである。 エ本件火災により被害を受けた原告の家財は,別紙「家財損害認定」の認定数量欄記載のとおりである。 原告が「被災状況申告書」(丙6)に記載した被害家財は,本件火災により実際に被 エ本件火災により被害を受けた原告の家財は,別紙「家財損害認定」の認定数量欄記載のとおりである。 原告が「被災状況申告書」(丙6)に記載した被害家財は,本件火災により実際に被害を受けた原告の家財数量を著しく上回るのは勿論のこと,原告が西消防署長宛に提出した火災損害届(丙12)で記載していた被害家財数量や,原告が本件訴訟で主張している被害家財数量(原告の平成14年2月14日付け準備書面添付の別紙記載のとおり)をも著しく上回っている(別紙「家財損害認定」の原告主張欄,申告数量欄,認定数量欄を比較対照)。 原告は,本件火災当時,本件建物には存在しなかった家財や,存在したが実際の数量とは異なり著しく過大な数量を申告しているのである(なお,被告乙連合会の平成2003年2月13日付け準備書面第2の1ないし10参照)。 2 検討(1) 一般に不実の表示を免責事由とした保険約款の規定は,損害が発生した場合に,保険者が迅速に損害填補責任の有無を調査し,かつ,適正な填補額を決定することができるようにするために設けられた規定であり,保険契約における信義誠実の原則がその前提をなしているものである。 被告乙連合会の共済契約の規約における不実の表示による免責に関する規定(規約25条2項)も同様である。 (2) ところが,前記1の事実によると,原告は,被告乙連合会に対する火災共済金の支払請求に際し,世帯構成や罹災した家財及びその数量について,故意に虚偽の内容を記載して,多額の火災共済金を取得しようと意図していたことが認められるので,被告乙連合会は,不実の表示による免責により,原告に対し,火災共済金の支払義務を負わない。 第4 被告甲保険の保険金額の検討 1 前記第1(争いのない事実),第2(故意又 いたことが認められるので,被告乙連合会は,不実の表示による免責により,原告に対し,火災共済金の支払義務を負わない。 第4 被告甲保険の保険金額の検討 1 前記第1(争いのない事実),第2(故意又は重大な過失の検討)によると,被告甲保険は,本件火災保険契約に基づき,原告に対し,火災保険金支払義務があることが認められる。 2 そして,証拠(甲4,乙3)及び弁論の全趣旨によると,本件火災保険契約に基づく火災保険金は,次の(1)ないし(4)の合計1005万2550円であることが認められる。 (1) 損害保険金 865万8300円(2) 臨時費用保険金 100万0000円(3) 残存物取り片付け費用保険金 19万4250円(4) 失火見舞い費用保険金 20万0000円 3 原告は,特別費用保険金99万円を請求しうると主張する。 しかし,特別費用保険金とは,特約条項1項ないし4項までの事故により保険の目的が全損となった場合に,それによって生ずる特別な費用に対して支払われるものである(甲4-特約条項1条11項)。 ところが,本件建物は現実に修繕可能であり(原告本人の供述),かつ,かかる修繕に要する費用は,保険金額を超えるものではないので(乙3),本件建物は,現実的にも経済的にも全損したとはいえない。 それゆえ,原告は,本件火災保険契約に基づき,被告甲保険に対し,特別費用保険金99万円を請求することはできない。 第5 結論 1 以上によると,原告の本件火災保険金等請求は次のとおりとなる。 (1) 被告甲保険に対する請求本件火災保険金1005万2550円,及びこれに対する平成13年11月9日(訴状送達の日の翌日)から完済まで民法所定 保険金等請求は次のとおりとなる。 (1) 被告甲保険に対する請求本件火災保険金1005万2550円,及びこれに対する平成13年11月9日(訴状送達の日の翌日)から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。 (2) 被告乙連合会に対する請求全く理由がない。 2 よって,原告の本件火災保険金等請求は,上記1(1)認定の限度で理由があるので,これを認容し,その余は理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判官紙浦健二

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