令和5年1月25日判決言渡令和4年(行コ)第180号所得税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和2年(行ウ)第224号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 A税務署長が控訴人に対し平成30年11月28日付けでした控訴人の 平成28年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分のうち、総所得金額2846万5166円及び納付すべき税額713万1000円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要等 1 事案の概要 不動産貸付業を営む個人事業者である控訴人は、平成28年分の不動産所得の金額の計算に係る消費税及び地方消費税(以下、これらを併せて「消費税」又は「消費税等」ということがある。)の経理処理について税抜経理方式を適用し、賃貸料収入等の課税売上げに係る消費税等相当額を仮受消費税等として、管理費等の各種費用の課税仕入れに係る消費税等相当額を仮払消費税等として 計上していた。他方で、控訴人は、不動産貸付業の用に供していた建物の譲渡収入に係る消費税等相当額を仮受消費税等の額に加算しないまま、仮受消費税等の額から仮払消費税等の額を控除し、その差額を平成28年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成28年課税期間」という。)の納付すべき消費税等の額から控除した残額を、控訴人の不動産所得の計算上必要 経費に算入して所得税及び復興特別所得税(以下、これらを併せて「所得税等」 という。)の確定申告(青色申告。以下「本件確定申告」という ら控除した残額を、控訴人の不動産所得の計算上必要 経費に算入して所得税及び復興特別所得税(以下、これらを併せて「所得税等」 という。)の確定申告(青色申告。以下「本件確定申告」という。)を行った。 これに対し、処分行政庁は、譲渡所得の基因となる資産の譲渡で消費税等が課されるものに係る経理処理については、当該資産をその用に供していた不動産所得と同一の経理方式によるものとされていることから、上記建物の譲渡収入に係る消費税等相当額は税抜経理方式により仮受消費税等の額に加算すべき であるなどとして、所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。 本件は、控訴人が、上記更正処分及び賦課決定処分はいずれも違法であるとして、その取消しを求める事案である。 原審は控訴人の請求をいずれも棄却したことから、控訴人が本件控訴を提起 した。 2 関係法令等の定め及び前提事実は、原判決「事実及び理由」欄の第2の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する(当審における当事者の主張は、適宜、原審における当事者の主張に加える。)。ただし、原判決を次のとおり訂正する。 原判決2頁23行目の「別紙」を「原判決別紙(以下「別紙」という。)」と改める。 原判決4頁26行目の「本件各譲渡」を「譲渡所得に係る建物の譲渡」と改める。 原判決5頁23行目の「提出した」の次に「(本件確定申告)」を加える。 ⑷ 原判決6頁14行目の「不動産所得」から15行目の「適用し、」までを削除する。 ⑸ 原判決7頁1行目の「算定した」の次に「(以下、控訴人による上記一連の計算方法を「原告計算方法」という。)」を加える。 3 争点 本件各譲渡に係る経理処理について税込経理方式と税抜経理方式のいずれ 1行目の「算定した」の次に「(以下、控訴人による上記一連の計算方法を「原告計算方法」という。)」を加える。 3 争点 本件各譲渡に係る経理処理について税込経理方式と税抜経理方式のいずれ が適用されるか(本件注書きの適用の有無及び可否)について理由附記の違法の有無 4 争点に関する当事者の主張 争点 (本件各譲渡に係る経理処理について税込経理方式と税抜経理方式のいずれが適用されるか)について (被控訴人の主張)ア本件確定申告において本件各譲渡について税抜経理方式を前提としていること控訴人は、本件確定申告に係る譲渡所得の計算において、本件各建物の譲渡代金に係る消費税等相当額を含めない税抜価格で収入金額を算定 している以上、本件確定申告において、本件各譲渡について税抜経理方式を採用していることが明らかである。このことは、本件更正処分等に先立つ税務調査においても、控訴人から「B様平成28年所得税申告比較」と題する書面(乙26の3枚目。以下「本件比較書面」という。)が提出されているところ、本件比較書面には、「①当初申告(税抜)」 及び「③税込で申告した場合」との記載があり、かつ、本件確定申告書における各金額が上記①の欄の金額と同額になっていることからも裏付けられている。 イ本件注書き及び本件通達12項は合理的であること(税抜経理方式及び税込経理方式を混用することが許されないこと) 所得税等の課税所得金額の計算に当たり、消費税法2条1項3号に規定する個人事業者が行う取引に係る消費税等の経理処理について、税抜経理方式又は税込経理方式のいずれによることとしても差し支えないが(所得税法施行令182条の2第5項、所得税法施行規則38条の2第2項参照)、同一所得区分内で両経理方 費税等の経理処理について、税抜経理方式又は税込経理方式のいずれによることとしても差し支えないが(所得税法施行令182条の2第5項、所得税法施行規則38条の2第2項参照)、同一所得区分内で両経理方式を混用すれば、当該所得の計 算上、収入若しくは費用の内容又はその対応関係に混乱が生じることか ら、同一所得内においては経理処理の方法を統一して課税所得を計算すべきである。事業所得等と事業所得等を生ずべき当該業務(消費税法上の「事業」)の用に供している資産の譲渡による所得は、当該事業に付随する取引として同一の事業の範囲に含まれる取引であることからすれば、同一所得区分内の場合と同様に、会計処理の方法を統一することに より、当該所得の計算上、収入若しくは費用の内容又はその対応関係に混乱が生じることを防ぐという要請が働くのであり、同一の事業に含まれる取引については適用する経理処理を統一することに正当性が認められる。税抜経理方式と税込経理方式を混用すると、適正な所得金額の計算を行えないおそれがあるから、上記両経理処理を混用することは許さ れない。 仮に、平成16年の税制改正を踏まえて本件通達についてみたとしても、租税特別措置法31条1項は、分離課税の対象となる土地等の譲渡所得に対する課税は、利益が生じた場合には比例税率の分離課税とされている一方で、損失が生じた場合には総合課税の対象となる他の所得の金額 から控除することができるという不均衡な制度に対処するために改正されたもので、その改正目的は正当であり、上記改正の結果、改正前の取扱いと比較して、税込経理方式と税抜経理方式の選択により不均衡にみえるような結果が生じる場合があったとしても、後記オのとおり、租税公平主義に反するということはできない。 したがって、 の取扱いと比較して、税込経理方式と税抜経理方式の選択により不均衡にみえるような結果が生じる場合があったとしても、後記オのとおり、租税公平主義に反するということはできない。 したがって、譲渡所得の基因となる資産の譲渡で消費税が課されるものに係る経理処理については、当該資産をその用に供していた事業所得等を生ずべき業務と同一の方式によると定める本件注書き及び本件通達12項は、平成16年の税制改正を踏まえたとしても、所得税法の規定に照らし、合理的である。 ウ本件注書きは消費税法の趣旨に反するものではないこと 本件注書きは、税抜経理方式と税込経理方式では所得金額の計算に差異が生じることを前提とした上で、所得金額の計算を適正に行うためには、両方式のいずれかを統一して適用する必要があり、そのことは業務の用に供している資産の譲渡についても同様であることを定めたものであって、その内容は、消費税法の基本的な仕組みや消費税法の規定などに照 らして合理的なものである。 消費税の基本的な仕組みからすると、消費税等相当額は、理念的には、仮受金又は仮払金としての性質を有し、通常は損益の計算に影響を及ぼさないものの、会計処理の方式の差異(税抜経理方式か、税込経理方式かの区分)により、企業会計上の所得金額が異なってくるという問題は 存在するのであり、具体的には棚卸資産や減価償却資産に消費税等を含む処理を行うか否かによって、所得金額が異なってくることからすると、税抜経理方式と税込経理方式のいずれの経理処理の方法を適用するかにより所得金額に差異が生ずることは当然に想定されており、上記会計処理の方式の差異により所得金額に差異が生ずる場合があることをもって 本件注書きが消費税法の趣旨に反するとはいえない。 エ本件注書き 得金額に差異が生ずることは当然に想定されており、上記会計処理の方式の差異により所得金額に差異が生ずる場合があることをもって 本件注書きが消費税法の趣旨に反するとはいえない。 エ本件注書きは租税公平主義に反するものではないこと税込経理方式と税抜経理方式における消費税等の額は、税抜経理方式では事業所得等の金額の計算に原則として影響を及ぼさないのに対し、税込経理方式では同計算に影響を及ぼすことになる。ただし、我が国の消 費税の基本的な仕組みなどからすれば、上記両経理方式はいずれも合理的な経理処理の方法であることから、本件通達2項は、所得金額の計算に当たり、両経理方式のどちらを適用しても差し支えないこと及びどちらの経理方式を適用するかは事業者(納税者)の選択に委ねられていることを明らかにしたものである。このように、その内容を異にする経理 方式の適用が納税者の選択に委ねられている場合、納税者がどちらの経 理方式を選択するかにより、当該納税者の置かれた状況は異なることになるから、そのように状況の異なる納税者については、同様に課税されなければならないことにはならない。そうすると、税込経理方式と税抜経理方式という経理方式の違いによって不動産所得等の金額に差異が生じることになるとしても、それは、納税者の選択によって状況を異にし た結果であるから、そのこと自体は公平に反するものではなく、税込経理方式と税抜経理方式の選択適用を認めることは、租税公平主義に反するものではない。 なお、継続性の原則の下でも関係諸法令等の改廃に伴う変更等、正当な理由があれば、会計処理の原則及び手続を変更することが許容されてい るから、仮に、平成16年の税制改正を契機として控訴人に課税上の不利益が生じたのであれば、 諸法令等の改廃に伴う変更等、正当な理由があれば、会計処理の原則及び手続を変更することが許容されてい るから、仮に、平成16年の税制改正を契機として控訴人に課税上の不利益が生じたのであれば、本件通達の改正の有無にかかわらず、会計処理の方式を変更することができると考えられる。 オ仮に、本件確定申告において本件各譲渡について税込経理方式を前提としていたとしても、本件各譲渡は、控訴人の不動産所得を生ずべき業務 に付随して行われたものであり、当該事業に係る資産の譲渡等であるから、本件各譲渡に係る経理処理については本件注書きが適用される。 したがって、控訴人は、本件確定申告書において、平成28年分の不動産所得を生ずべき業務に係る取引について税抜経理方式を適用したのであるから、本件各譲渡についても税抜経理方式を適用する必要がある。 カ控訴人の平成28年分の所得税等に係る不動産所得及び譲渡所得の計算方法本件各譲渡に係る経理処理について税抜経理処方式を適用すると、本件各譲渡による収入に係る消費税等相当額を仮受消費税等の額に算入することとなり、控訴人の平成28年分の所得税等額の納付すべき税額等は、別 紙5の第1の1に記載の計算方法(以下「被告計算方法」という。)のと おり算定され、上記消費税相当額を必要経費に算入することはできない。 キ原告計算方法について原告計算方法は、税抜経理方式を適用した場合、本件各建物の譲渡代金に係る消費税等相当額を仮受消費税に計上すべきであるのに、これを仮受消費税等の額に含めない一方で、不動産所得のみに係る仮受消費税 等勘定及び仮払消費税等勘定をそれぞれ計上し、当該両勘定の差額を、平成28年課税期間に係る消費税等の納付すべき消費税額から控除した金額を、不動産所 めない一方で、不動産所得のみに係る仮受消費税 等勘定及び仮払消費税等勘定をそれぞれ計上し、当該両勘定の差額を、平成28年課税期間に係る消費税等の納付すべき消費税額から控除した金額を、不動産所得の計算上雑損失として必要経費に算入し、控除しており、一見、税抜経理方式を適用した場合の課税所得に対する調整計算を行っているようにみえるものの、実際には、仮受消費税等勘定に本件 各譲渡に係る消費税等相当額が含まれておらず、会計慣行や所得税法施行令182条の2第1項の調整規定に沿うものではない。 したがって、原告計算方法による控訴人の本件確定(修正)申告は適正なものではない。 (控訴人の主張) ア本件確定申告において本件各譲渡について税込経理方式を前提としていること本件確定申告において、本件各譲渡に係る所得は総収入金額に消費税等相当額を加えたか否かにかかわらず赤字であったため、消費税等の経理方式は譲渡所得の額に影響しない一方で、不動産所得の額は、本件各譲 渡に係る譲渡所得の必要経費に算入されていることにより、本件各譲渡に係る譲渡所得の消費税等に税込処理方式を適用した場合の所得額に合致しているのであるから、控訴人は、本件各譲渡に係る譲渡所得の消費税等に税込経理方式を適用したと評価されるべきである。 イ本件各譲渡に係る所得が不動産所得と同一の事業の範囲に含まれるとは いえないこと 所得税法においては、不動産の賃貸に係る所得を不動産所得とし、他の種類の所得と合算して所得税額を計算することとされており(総合課税)、賃貸の用に供されていた建物であってもその譲渡による所得は、他の所得と区分し当該譲渡所得に係る税額を計算することとしている(分離課税)。 賃貸の用に供されていた建物が譲渡され されており(総合課税)、賃貸の用に供されていた建物であってもその譲渡による所得は、他の所得と区分し当該譲渡所得に係る税額を計算することとしている(分離課税)。 賃貸の用に供されていた建物が譲渡された場合のその取引については、不 動産所得の損益を記録計算するために作成される不動産所得に係る会計帳簿に記録されることはない。 そうすると、譲渡された建物が賃貸の用に供されていたということをもって、当該建物の譲渡に係る所得が不動産所得と同一の事業の範囲に含まれるとはいえず、控訴人の平成28年分の不動産所得に関し、本件注書き の適用はない。 ウ本件通達等は消費税の中立性の原則に反すること消費税は、会計処理上は単なる通過勘定という性格をもつものであって、納付すべき消費税等の金額及び所得税法上の所得金額は、異なる計算方法であるにすぎない経理処理の方法の違いによって異なってはならないとい う消費税の所得金額に対する中立性の原則がある。 平成16年の税制改正前には、土地・建物等にかかる譲渡所得が赤字である場合においては、他の所得と損益通算されるため、税込経理方式と税抜経理方式のいずれを採用しても課税される所得金額は同額であったが、上記税制改革において租税特別法31条が改正され、土地・建物等に係る 譲渡所得の赤字は他の所得と損益通算ができないこととされた。それにもかかわらず、本件通達2項(注)2(本件注書き)及び本件通達12項は変更されなかった。そのため、本件注書きを適用した場合、不動産所得等の計算上は、税込経理方式を採用した場合にのみ譲渡収入に係る消費税等相当額が必要経費として算入されることとなり、本件のように分離課税の 譲渡所得が赤字の場合、譲渡所得について税込経理方式と税抜経理方式の 式を採用した場合にのみ譲渡収入に係る消費税等相当額が必要経費として算入されることとなり、本件のように分離課税の 譲渡所得が赤字の場合、譲渡所得について税込経理方式と税抜経理方式の いずれを採用するかによって、不動産所得の金額に差異が生ずる状況となった。 上記のような経理方式の差異により不動産所得の金額に差異が生じさせる本件注書きは、上記中立性の原則に反し、違法である。 エ本件注書きは租税公平主義に反すること 本件注書きの適用により、事業所得等について税抜経理方式を採用している納税者について、事業等の用に供していた土地等にかかる分離課税の譲渡所得が発生した場合において、譲渡所得に係る消費税につき税抜経理方式しか適用することができないとすると、納税者は、不動産貸付業の用に供していた不動産を譲渡する場合において、その譲渡所得が赤字になる 年ごとに自身の有利になるように不動産所得について税込経理方式に変更することを強いられることになる。他方、商法上の商人は、一般に公正妥当と認められる会計慣行に従って商業帳簿を作成する義務を負い、当該会計慣行を構成する企業会計原則の一つである継続性の原則を遵守する必要があり、消費税の経理方式を変更するためには正当な理由が求められるた め、不動産について税抜経理処理方式を採用している商人は、企業会計原則に違反しなければ課税上の不利益を甘受せざるを得ないこととなる。上記のとおり、本件注書きによる課税処理は、納税者に違法な経理方式の変更を強いるものである。課税庁における取扱いにおいても、全て税抜経理処理又は税込経理方式で統一的に帳簿に記録しなければならないこととは されておらず、税抜経理方式と税込経理方式を併用することも適正な計算方法とされている場合が る取扱いにおいても、全て税抜経理処理又は税込経理方式で統一的に帳簿に記録しなければならないこととは されておらず、税抜経理方式と税込経理方式を併用することも適正な計算方法とされている場合がある。 したがって、本件注書きは、租税公平主義に反し、違法である。 オ原告計算方法によるべきであること控訴人は、本件各譲渡による譲渡所得の経理処理について税込経理方式 を採用しているので、原告計算方法のとおり、譲渡所得に係る消費税等は、 譲渡所得に係る収入金額に含まれるものとして取り扱うことになるから、仮受消費税等として処理されず、納付すべき消費税等の額が不動産所得にかかる仮受消費税等の金額から仮払消費税等の金額を控除した残額を上回る部分(本件では1664万5166円)について、不動産所得の計算上、必要経費に算入することになる。 カ被告計算方法は法令の根拠によるものではないこと事業所得等について税抜経理方式を採用している納税者について、事業等の用に供していた土地等にかかる分離課税の譲渡所得が発生した場合おいて、譲渡所得に係る消費税につき税抜経理方式しか適用することができないと定めているのは本件通達のみであるところ、本件通達は、納税者を 拘束する法規範ではなく、行政庁の取扱いを定めたものにすぎないのであって、上記のような所得金額の差異をもたらす事態を合理的・適正なものとする法的根拠とはなり得ない。 したがって、被告計算方法には、法令の根拠がない。 争点 (理由附記の違法の有無)について 原判決「事実及び理由」欄の第2の4に記載のとおりであるからこれを引用する。ただし、原判決16頁11行目と12行目の間に次のとおり加える。 「 この点、処分行政庁は、国税不服審判所に提 原判決「事実及び理由」欄の第2の4に記載のとおりであるからこれを引用する。ただし、原判決16頁11行目と12行目の間に次のとおり加える。 「 この点、処分行政庁は、国税不服審判所に提出した令和元年5月29日付の意見書(甲4)において、本件通達の所得税法、消費税法上の根拠につい て具体的にすべきであるとの控訴人の主張に対する反論の中で、「平成元年通達2を改正しないまま、新たな解釈を付加することは、租税法律主義の趣旨に抵触する。」旨、本件通達自体を法令と同列に位置付けるという誤った認識の下で本件更正通知書の更正の理由を記載していることは、上記理由の附記がその結論に達した理由又は根拠を納税者に理解し得る程度に示すもの でなかったことを裏付けるものである。」 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、以下のとおりである。 2 争点(本件各譲渡に係る経理処理について税込経理方式と税抜経理方式のいずれが適用されるか)について ⑴ 前記前提事実⑷イ及び証拠(乙8)によれば、控訴人は、本件確定申告に係る譲渡所得の計算において、本件各建物の譲渡代金に係る消費税等相当額を含めない税抜価額で収入金額を算定しており、本件確定申告において、本件各譲渡について税抜経理方式を採用していることが明らかである。 このことは、証拠(乙26)によれば、本件更正処分等に先立ち、平成3 0年6月15日に行われた税務調査において、控訴人の委任したC税理士(本件でも控訴人の補佐人税理士として選任されている。)及びD税理士は、本件確定申告において、税抜経理方式を選択したことを認め、税抜経理方式を行えば、消費税等相当額を経費として計上できないことは知っていたが、税抜経理方式 税理士として選任されている。)及びD税理士は、本件確定申告において、税抜経理方式を選択したことを認め、税抜経理方式を行えば、消費税等相当額を経費として計上できないことは知っていたが、税抜経理方式と税込経理方式で所得金額に大きな違いが生ずるこ とはあってはならないことなので税抜経理方式と税込経理方式の所得金額を同じとするために、本件各譲渡に係る仮受消費税を不動産所得の必要経費として算入したと説明し、税務署側が消費税相当額を必要経費として認めないのであれば、税込経理方式に訂正し、修正申告する旨述べるとともに、D税理士が作成した本件比較書面を税務署側に提出したこと、本件比 較書面には「①当初申告(税抜)」及び「③税込で申告した場合」についての記載があり、かつ、本件確定申告書における各金額が本件比較書面における「①当初申告(税抜)」の各欄の金額と同額になっていることからも裏付けられている。これに反する控訴人の主張は採用することができない。 したがって、控訴人が本件確定申告において税込経理方式を採用したこ とを前提とする控訴人の主張は、既にこの点で理由がないが、当事者の主張に鑑み、その余の主張についても検討する。 本件各譲渡は、控訴人の不動産所得を生ずべき業務に付随して行われたものであり、当該事業に係る資産の譲渡等であるから、本件各譲渡に係る経理処理については本件注書きが適用されるところ、控訴人は、本件確定申告書 において、平成28年分の不動産所得を生ずべき業務に係る取引について税抜経理方式を適用したのであるから、仮に、本件確定申告において、本件各譲渡について税込経理方式を前提としていたとしても、本件各譲渡について税抜経理方式が適用されることとなる。 そうすると、本件各譲渡による収入に係る消 るから、仮に、本件確定申告において、本件各譲渡について税込経理方式を前提としていたとしても、本件各譲渡について税抜経理方式が適用されることとなる。 そうすると、本件各譲渡による収入に係る消費税等相当額を仮受消費税等 の額に算入することとなり、控訴人の平成28年分の所得税等額の納付すべき税額等は、被告計算方法のとおり算定される。 これに対し、控訴人は、本件各譲渡に係る所得が不動産所得と同一の事業の範囲に含まれるとはいえない上、本件通達等は消費税の中立性の原則に反し、本件注書きは租税公平主義に反し、違法であるから、本件注書きを適用 する被告計算方法は、法令の根拠によるものではなく、違法であると主張する。 しかし、本件各譲渡に係る所得が不動産所得と同一の事業の範囲に含まれることは上記で説示したとおりである。 また、所得税等の課税所得金額の計算に当たり、消費税法上、事業所得等 と事業所得等を生ずべき事業の用に供している資産の譲渡による所得は、当該事業に付随する取引として同一の事業の範囲に含まれる取引であることからすれば、同一所得区分内の場合と同様に、会計処理の方法を統一することにより、当該所得の計算上、収入若しくは費用の内容又はその対応関係に混乱が生じることを防ぐ必要性が認められる。したがって、同一の事業に含ま れる取引について適用する経理処理を統一することを定めた本件注書き及び 本件通達12項は、所得税法の規定、消費税法の基本的な仕組みや規定に照らし、合理的であり、正当性が認められる。消費税等相当額は、理念的には、仮受金又は仮払金としての性質を有し、通常は損益の計算に影響を及ぼさないものの、税抜経理方式と税込経理方式のいずれの経理処理の方法を適用するかにより所得金額に差異が 。消費税等相当額は、理念的には、仮受金又は仮払金としての性質を有し、通常は損益の計算に影響を及ぼさないものの、税抜経理方式と税込経理方式のいずれの経理処理の方法を適用するかにより所得金額に差異が生ずることは当然に想定されており、上記会計 処理の方式の差異により所得金額に差異が生ずる場合があることをもって直ちに本件注書きが消費税法の趣旨に反するとはいえない。 そして、内容を異にする経理方式の適用が納税者の選択に委ねられている場合、納税者がどちらの経理方式の適用を選択するかにより、当該納税者の置かれた状況は異なることになるから、そのように状況の異なる納税者は、 同様に課税されなければならないことにはならず、税込経理方式と税抜経理方式という経理方式の違いによって不動産所得等の金額に差異が生じることになるとしても、それは、納税者の選択によって状況を異にした結果であるから、そのこと自体は租税公平主義に反するものとはいえない。 なお、控訴人は、上記差異が生じたのは、平成16年の税制改正において 租税特別法31条が改正されたにもかかわらず、本件注書き及び本件通達12項が変更されなかったためであるとも主張するが、上記改正は、分離課税の対象となる土地等の譲渡に対する課税は、利益が生じた場合には比例税率の分離課税とされている一方で、損失が生じた場合には総合課税の対象となる他の所得の金額から控除することができるという不均衡な制度に対処する ために改正されたもので、その改正目的は正当である。したがって、上記改正の結果、上記改正前の取扱いと比較して、税込経理方式と税抜経理方式の選択により、課税上、不均衡に見えるような結果が生じる場合があったとしても、租税公平主義に反するということはできない。さらに、企業会計における継続性 の取扱いと比較して、税込経理方式と税抜経理方式の選択により、課税上、不均衡に見えるような結果が生じる場合があったとしても、租税公平主義に反するということはできない。さらに、企業会計における継続性の原則の下でも、関係諸法令等の改廃に伴う変更等、正当な理由 があれば、会計処理の原則及び手続を変更することが許容されているから、 仮に、平成16年の税制改正を契機として控訴人に課税上の不利益が生じたのであれば、本件通達の改正の有無にかかわらず、会計処理の方式を変更することができると考えられるから、継続性の原則に照らしても、本件注書きによる課税処理は、納税者に違法な経理方式の変更を強いるものであるとはいえない。 したがって、控訴人の上記主張はいずれも採用することができない。 3 争点(理由附記の違法の有無)について原判決「事実及び理由」欄の第3の3に記載のとおりであるからこれを引用する。ただし、原判決を次のとおり訂正する。 原判決23頁11行目の「帳簿書類」を「帳簿組織」と改める。 原判決25頁23行目から24行目にかけての「いえないから」を「いえない。また、控訴人は、本件通達自体を法令と同列に位置付けるという誤った認識の下で本件更正通知書の更正の理由を記載していると主張するが、控訴人の上記主張する点は、更正の理由の附記の違法性と結びつくものとはいえない。したがって」と改める。 4 本件更正処分等の適法性について本件更正処分について前記2で説示したとおり、控訴人の平成28年分の総所得金額及び所得税等の納付すべき税額等は、被告計算方法のとおり算定され、その結果は本件更正処分と同額となる。また、前記3のとおり、本件通知書の理由附記が 違法であるという の平成28年分の総所得金額及び所得税等の納付すべき税額等は、被告計算方法のとおり算定され、その結果は本件更正処分と同額となる。また、前記3のとおり、本件通知書の理由附記が 違法であるということもできない。 したがって、本件更正処分は適法である。 本件賦課決定処分について上記のとおり、本件更正処分は適法であり、これを前提に計算すると、納付すべき過少申告加算税の額は、本件賦課決定処分と同額となる。また、 前記3のとおり、本件通知書の理由附記が違法あるということもできない。 したがって、本件賦課決定処分は、適法である。 5 結論よって、控訴人の請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部 裁判長裁判官中村也寸志 裁判官武藤貴明 裁判官餘多分亜紀
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