平成13(ネ)2529 預託金返還等請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成13年10月1日 東京高等裁判所
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判決文本文9,996 文字)

(原審・東京地方裁判所平成11年(ワ)第26624号預託金返還等請求事件(原審言渡日平成13年4月11日)) 主文 本件各控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人の控訴の趣旨(1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人らの控訴人に対する請求をいずれも棄却する。 2 被控訴人らの請求の趣旨(次の(1)と(2)を選択的に請求)(1) 控訴人は,被控訴人A及び被控訴人Bに対しそれぞれ1350万円,被控訴人Cに対し900万円並びに以上に対する平成11年12月5日(本件訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を,それぞれ支払え。 (2)ア株式会社甲野ゴルフ倶楽部(以下「㈱甲野ゴルフ」という。)が平成11年4月14日に控訴人との間で締結した資産譲渡契約及びゴルフ場経営委任契約を,いずれも取り消す。 イ控訴人は,被控訴人A及び被控訴人Bに対しそれぞれ1350万円,被控訴人Cに対し900万円を支払え。 3 当審における審理,判断の範囲原判決は,上記2の被控訴人らの請求のうち,被控訴人A及び被控訴人Bの請求については(1)の請求を全部認容し,被控訴人Cの請求については,(1)の請求のうち,控訴人に対し900万円及びこれに対する平成12年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うべきことを命ずる限度で認容し,その余の請求を棄却した。この原判決中被控訴人Cの本訴請求を棄却した部分については,同被控訴人からの控訴の申立てはない。したがって,当審においては,被控訴人A及び被控訴人Bの請求はその全部について,被控訴人Cの請求は原判決が認容した範囲について,その当否を審理,判断すべきこととなる。 第2 本件事案 申立てはない。したがって,当審においては,被控訴人A及び被控訴人Bの請求はその全部について,被控訴人Cの請求は原判決が認容した範囲について,その当否を審理,判断すべきこととなる。 第2 本件事案の概要及び当事者双方の主張本件は,㈱甲野ゴルフが開設したゴルフ場の会員で,同社に対して預託金返還請求権を有している被控訴人らが,同社から上記ゴルフ場の経営を引き継いだ控訴人に対し,商法26条1項(商号を続用する営業譲受人の責任)の規定に基づき預託金の返還を求め,これと選択的に,同社と控訴人間の上記ゴルフ場の経営の引継ぎに関する契約を詐害行為として,その取消し及び預託金相当額の価格賠償を求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠の摘示がない項目は,当事者間に争いがない。)(1) ㈱甲野ゴルフは,茨城県行方郡a町b番地において,「甲野ゴルフ倶楽部」という名称のゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」という。)を開設し,経営していた株式会社である。 (2)ア被控訴人Aは,平成元年8月3日,㈱甲野ゴルフに対して預託金1350万円を預託し,本件ゴルフ場の会員によって構成される組織である甲野ゴルフ倶楽部(以下「本件ゴルフクラブ」という。)の正会員になった。 イ被控訴人Bは,同年10月31日,㈱甲野ゴルフに対して預託金1350万円を預託し,本件ゴルフクラブの正会員になった。 ウ被控訴人Cは,平成2年2月8日,㈱甲野ゴルフに対して預託金900万円を預託し,本件ゴルフクラブの平日会員になった。 (3) 被控訴人らと㈱甲野ゴルフとの間で締結された本件ゴルフクラブの各入会契約においては,預託金の預託期間はいずれも10年間とし,預託期間満了後,被控訴人らはいつでも預託金返還請求ができることとされている。 したがって,㈱甲野ゴルフは,被控訴人らに対し,上記(2)の各 約においては,預託金の預託期間はいずれも10年間とし,預託期間満了後,被控訴人らはいつでも預託金返還請求ができることとされている。 したがって,㈱甲野ゴルフは,被控訴人らに対し,上記(2)の各預託金(以下併せて「本件預託金」という。)の返還義務を負っている。 (4) 被控訴人らは,本件訴状により,原審においては被告であった㈱甲野ゴルフに対し,本件預託金の返還を請求し,本件訴状は,平成11年12月6日,㈱甲野ゴルフに対し送達された。 (5) 控訴人は,平成11年3月30日に設立された株式会社であり,設立時の商号は「甲野ゴルフ倶楽部株式会社」であったが,同年12月27日に現在の商号に変更され,平成12年1月12日付けでその旨の商号変更登記がされた(以下,変更前の商号を「甲野ゴルフ㈱」と略称することがある。)。 (6) ㈱甲野ゴルフは,平成11年4月14日,控訴人との間で,本件ゴルフ場の営業に必要な動産等をその帳簿価額で控訴人に譲渡し,㈱甲野ゴルフの債務のうち,預かり保証金や借入金等の長期債務を除いた債務のうち上記帳簿価額に見合う額の債務を控訴人が引き受けることにより対価の支払に代える旨の「資産譲渡契約」と題する契約(以下「本件契約1」という。),本件ゴルフ場の土地及びクラブハウス等の建物を同年5月1日から10年間,賃料月額200万円で控訴人に賃貸する旨の「ゴルフ場賃貸契約」と題する契約(以下「本件契約2」という。)及び本件ゴルフ場における顧客へのサービスに関する経営について,同年5月1日から10年間,控訴人の名義で営業を行うことを控訴人に委任し,控訴人は自己の計算で本件ゴルフ場の経営を行う旨の「ゴルフ場経営委任契約」と題する契約(以下「本件契約3」といい,本件契約1から本件契約3までを併せて,以下「本件各契約」という。)をそれぞれ締結し, 訴人は自己の計算で本件ゴルフ場の経営を行う旨の「ゴルフ場経営委任契約」と題する契約(以下「本件契約3」といい,本件契約1から本件契約3までを併せて,以下「本件各契約」という。)をそれぞれ締結し,本件ゴルフ場は,同年5月1日から控訴人によって運営されている。(丙3)(7) 平成11年4月14日当時,㈱甲野ゴルフは債務超過の状態にあった。 2 争点(1) 控訴人が,商法26条1項に基づき,被控訴人らに対し,本件預託金の返還義務を負うか。 ア被控訴人らの主張本件各契約は,本件ゴルフ場の経営という営業目的のため組織化され有機的一体として機能している㈱甲野ゴルフが所有する資産を債務承継を伴って控訴人に譲渡するとともに,本件ゴルフ場を構成している土地建物の将来にわたる利用並びに本件ゴルフ場の売上げ及び年会費収入といった将来債権を控訴人に帰属させ,これについて控訴人が㈱甲野ゴルフに対価を支払い,対外的には控訴人の名義で本件ゴルフ場の営業を行うことを内容とするものであるから,経営委任ではなく,営業譲渡又は営業の賃貸借に当たる。そして,控訴人は,本訴提起後に商号を変更したものの,本件ゴルフ場の運営を開始してから約8か月にわたり,甲野ゴルフ㈱という㈱甲野ゴルフと実質的に同一の商号を使用し,同一のゴルフ場の名称を使用してきたものである。 したがって,控訴人は,被控訴人らに対し,商法26条1項の適用又は類推適用により,本件預託金の返還義務を負う。 イ控訴人の主張控訴人は,㈱甲野ゴルフの経営の悪化に伴う本件ゴルフ場の閉鎖の危機を回避し,本件ゴルフ場のゴルフコースの維持・管理を目的として㈱甲野ゴルフから本件ゴルフ場の経営の委任を受けたものである。本件においては,ゴルフ場営業の構成要素のうち最も重要な土地建物は譲渡の対象から除外されているのである ゴルフコースの維持・管理を目的として㈱甲野ゴルフから本件ゴルフ場の経営の委任を受けたものである。本件においては,ゴルフ場営業の構成要素のうち最も重要な土地建物は譲渡の対象から除外されているのであるから,営業譲渡には当たらないし,営業に必要な動産類は控訴人の所有するところであるから,営業の賃貸借にも当たらない。本件ゴルフ場の営業を対外的に控訴人の名義で行っているのは,㈱甲野ゴルフの経営悪化により,同社の名義ではゴルフ場の出入り業者との取引を継続することができなかったからであり,また,控訴人が㈱甲野ゴルフとの間で土地建物について賃貸借契約を締結し,㈱甲野ゴルフに賃料を支払っているのは,同社に対する債権の回収を意図する金融機関の圧力によるものであり,実質が経営委任であることに変わりはない。 また,被控訴人らが控訴人に対して商法26条1項の責任を初めて主張した時点においては,控訴人の商号は既に甲野ゴルフ㈱から現在のものに変更され,商号の続用の状態にはなかった。 さらに,商法26条1項の立法趣旨からすれば,同項により営業譲渡人の債権者が営業譲受人に対して債権の行使ができるのは,債権者が営業主の交替に気付かず,そのため債権回収の機会が遅れたことによる損害のみに限られるというべきであるが,被控訴人らは,本訴提起の時点において,営業主の交替を知っており,控訴人に対する同項に基づく請求は,㈱甲野ゴルフに対する本件預託金の返還請求権が認められて初めてその権利の行使が可能となるのであるから,債権回収の遅れを理由とする損害は発生していない。 したがって,控訴人は,被控訴人らに対し,商法26条1項に基づく責任を負わない。 (2) 本件契約1及び3が詐害行為であるとして,控訴人が被控訴人らに対し価格賠償義務を負うか。 ア被控訴人らの主張㈱甲野ゴルフは,本件 控訴人らに対し,商法26条1項に基づく責任を負わない。 (2) 本件契約1及び3が詐害行為であるとして,控訴人が被控訴人らに対し価格賠償義務を負うか。 ア被控訴人らの主張㈱甲野ゴルフは,本件契約1により,控訴人に対し,本件ゴルフ場の営業に必要な一切の動産類を譲渡し,本件契約3により,それまで㈱甲野ゴルフが取得していた年会費,グリーンフィー,食堂売上げ等年間で合計8億円を超える営業収入,すなわち将来発生することが確実な債権を控訴人に譲渡した。当時,㈱甲野ゴルフは25億円を超える債務超過の状態にあり,同社の所有する不動産には極度額の合計が106億円を超える根抵当権が設定されていて換価価値はなく,1億1000万円を下らない価値のある上記動産類以外にみるべき財産はなかった。したがって,本件契約1及び本件契約3はいずれも詐害行為に当たる。 そして,本件契約1及び本件契約3は,本件ゴルフ場を構成するすべての財産及び経営権を控訴人の支配下に移転することによって,預託金返還請求権者の追及を回避し,一部の債権者である出入り業者及び金融機関に対する弁済を優先させる目的でされたものであるから,㈱甲野ゴルフ及び控訴人に詐害の意思があったことは明らかである。 また,本件契約1の対象となった資産は具体的には特定しておらず,現物返還は不可能であるから,現物返還に代わる価格賠償が認められるべきである。 イ控訴人の主張本件契約1の対象は,本件ゴルフ場の経営委任に必要なものに限定しており,その対価も譲渡日における帳簿価額によっているから,㈱甲野ゴルフの一般財産を減少させるものではない。また,㈱甲野ゴルフは,本件ゴルフ場の経営により大幅な営業損失を出してきたのであり,控訴人が本件契約3によって経営委任を受けることにより,その営業損失を免れ,むしろ,累積赤字が させるものではない。また,㈱甲野ゴルフは,本件ゴルフ場の経営により大幅な営業損失を出してきたのであり,控訴人が本件契約3によって経営委任を受けることにより,その営業損失を免れ,むしろ,累積赤字が増えないことにより一般財産の減少が防止されるものといえる。本件各契約締結当時,本件ゴルフ場は閉鎖の危機に瀕していたのであり,控訴人が経営委任を受けることにより,その危機が回避され,ゴルフコースの維持・管理が行われ,ゴルフ場としての価値を保存することができ,ひいては,㈱甲野ゴルフの一般財産の減少を防ぐことになった。さらに,本件契約3については,控訴人が委任事務を履行する義務を負ったにすぎず,㈱甲野ゴルフの一般財産を逸出させるような処分行為は存在しないから,詐害行為取消権の対象とはならない。したがって,本件契約1及び本件契約3はいずれも詐害行為には当たらない。 ㈱甲野ゴルフ及び控訴人は,本件ゴルフ場の閉鎖の危機を回避し,ゴルフコースの維持・管理をし,ゴルフ場としての価値を保存する意図をもって本件各契約を締結したものであるから,詐害の意思を有していなかった。 仮に,本件において詐害行為取消権が成立するとしても,目的物が受益者の下に存在しているから,原則どおり現物返還が認められることになり,価格賠償は許されない。 第3 当裁判所の判断 1 控訴人が,被控訴人らに対し,商法26条1項に基づく責任を負うか。 (1) 本件各契約に至る経緯については,以下のとおり原判決を補足,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」の2項の(1)(10頁10行目から14頁16行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア 「被告甲野ゴルフ」とあるのを,いずれも「㈱甲野ゴルフ」と改める。 イ 10頁10行目の「甲第5号証,」の次に「甲 10行目から14頁16行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア 「被告甲野ゴルフ」とあるのを,いずれも「㈱甲野ゴルフ」と改める。 イ 10頁10行目の「甲第5号証,」の次に「甲7,」を加える。 ウ 11頁13行目の「本件ゴルフ場の運営を委託し,」を「本件ゴルフ場の運営をさせ,」と改める。 エ 11頁16行目の「その経営の委託を受ける会社として」を「本件ゴルフ場の運営を行う会社として」と改める。 オ 11頁20行目の「被告E」を「E」と改める。 カ 11頁21行目から22行目にかけて及び同頁25行目の「本件経営委任契約」をいずれも「本件契約3」に,同頁22行目,13頁3行目及び同頁20行目の「本件資産譲渡契約」をいずれも「本件契約1」に,11頁22行目及び13頁22行目の「本件ゴルフ場賃貸借契約」をいずれも「本件契約2」に,それぞれ改める。 キ 14頁10行目から同頁16行目までを削る。 ク前掲各証拠に基づき,以下のとおり,当裁判所が認定した事実を補足する。 (ア) ㈱甲野ゴルフの再建のため平成5年1月に同社の取締役に就任したEは,本件各契約締結以前の平成10年ころ,本件ゴルフ場を存続させるための方策として,会員から預託金返還請求権の現物出資を受けて新会社を設立し,本件ゴルフ場の土地建物をその新会社に譲渡し,金融機関等の債務の大幅な縮減を得た上で,新規会員の募集等による収入等により債務の弁済を行い,無借金のゴルフ場にすることを計画したが,当時は同社の代表者が直ちにはこの計画を採用するところとならず,Eは,平成11年1月28日,同社の取締役を辞任した。この新会社の設立計画は,現時点においても維持されてはいるが,早期に債権処理を図りたい意向の金融機関の協力が得られない状況にある。また,本件各契約締結のころ,外資系企 8日,同社の取締役を辞任した。この新会社の設立計画は,現時点においても維持されてはいるが,早期に債権処理を図りたい意向の金融機関の協力が得られない状況にある。また,本件各契約締結のころ,外資系企業による本件ゴルフ場の買収の動きもあった。 (イ) 本件各契約に係る契約書は,それぞれ別個の契約書として作成されているが,同一の機会に作成されたもので,併せて一冊に綴じられている。 (ウ) 本件各契約締結当時,㈱甲野ゴルフにおいては,本件ゴルフ場の経営がそのほとんど唯一の事業であったが,平成11年5月1日以降は,本件契約3に基づき,従来㈱甲野ゴルフが得ていた本件ゴルフ場のグリーンフィー,年会費,食堂売上げ等の収入を控訴人が取得することとなったため,㈱甲野ゴルフの収入は事実上本件契約2に基づく賃料収入のみとなった。 (エ) 本件ゴルフ場の名称は,控訴人がその運営を引き継いだ後も,従来どおり「甲野ゴルフ倶楽部」の名称のままであった。控訴人は,被控訴人らが本件訴えを提起した後の平成11年12月27日,その商号を「甲野ゴルフ倶楽部株式会社」から現在の商号に変更したが,そのころ又はその後に,本件ゴルフ場の名称も「Dカントリークラブ甲野コース」と変更された。 (2) 以上に基づき,控訴人が被控訴人らに対し商法26条1項に基づく責任を負うかどうかについて検討する。 ア本件各契約は,別個の契約の形式を採っているが,本件ゴルフ場の営業による収支から㈱甲野ゴルフの金融機関に対する債務や会員に対する預託金返還債務を切り離し,控訴人が㈱甲野ゴルフから本件ゴルフ場の運営を引き継いで,債務の支払に窮していた本件ゴルフ場の存続を図ることを目的として,同一の機会に締結されたものであり,控訴人及び㈱甲野ゴルフによって一体のものとして認識されている。控訴人は,本件各契約に 引き継いで,債務の支払に窮していた本件ゴルフ場の存続を図ることを目的として,同一の機会に締結されたものであり,控訴人及び㈱甲野ゴルフによって一体のものとして認識されている。控訴人は,本件各契約に基づき,㈱甲野ゴルフから,本件ゴルフ場の土地建物を賃借し,本件ゴルフ場の運営に必要なその余の資産を譲り受け,本件ゴルフ場の運営に従事している従業員の雇用関係を承継して,本件ゴルフ場の運営を引き継ぎ,以後自己の名義及び計算においてその運営を行い,他方,㈱甲野ゴルフは,賃料収入を取得するのみで,基本的に本件ゴルフ場の運営には関与することはないというのであるから,控訴人は,㈱甲野ゴルフから,有機的一体となった本件ゴルフ場の営業を承継したものと認めることができる。そして,本件各契約が相互に密接に関連付けられていて,本件ゴルフ場の営業に最も重要な財産である土地建物については控訴人が㈱甲野ゴルフから期間10年で賃借し,控訴人が本件ゴルフ場の運営を行う期間も10年とされていることからすれば,本件各契約に基づく㈱甲野ゴルフと控訴人の法律関係は営業の賃貸借と認めるのが相当である。 控訴人は,㈱甲野ゴルフから本件ゴルフ場の経営の委任を受けたにすぎないと主張するが,本件においては,本件ゴルフ場の経営は控訴人の名義によって行われているのであり,委託者の名義によって経営が行われる経営の委任とはその本質を異にしているものというべきである。もっとも,控訴人は,本件において対外的に控訴人の名義で本件ゴルフ場の経営を行っているのは,㈱甲野ゴルフの名義でゴルフ場の出入り業者との取引を継続することができなかったからであるとか,控訴人が㈱甲野ゴルフとの間で土地建物について賃貸借契約を締結し,㈱甲野ゴルフに賃料を支払っているのは,金融機関の圧力によるものであるとか主張するが,本件ゴルフ することができなかったからであるとか,控訴人が㈱甲野ゴルフとの間で土地建物について賃貸借契約を締結し,㈱甲野ゴルフに賃料を支払っているのは,金融機関の圧力によるものであるとか主張するが,本件ゴルフ場の経営においては,その名義のみならず損益も控訴人に帰属するものであり,控訴人代表者の本件訴訟及び別件訴訟における供述(甲7)並びに陳述書(丙12)における陳述によっても,本件各契約締結当時,本件ゴルフ場の出入り業者としては㈱甲野ゴルフに対する売掛金債権に係る債務を控訴人が引き継がなければ取引の継続に応じないという状況にあったというのであって,控訴人の計算で本件ゴルフ場の経営を行うことが必須であったのであるから,単なる便宜として対外的に控訴人の名義を用いたにすぎないものとは到底認められない。また,控訴人が㈱甲野ゴルフに賃料を支払うこととされていることについても,本件ゴルフ場の土地建物の使用収益及び本件ゴルフ場の経営により年間約7億円の売上総利益が得られるのであって,控訴人が本件ゴルフ場の経営を引き継いだことにより㈱甲野ゴルフは上記賃料以外の収入を失ったのであるから,上記賃料は実質的にも営業の賃貸借の対価と認めることができる。したがって,控訴人の上記主張は失当である。なお,営業の賃貸借において,営業に必要な財産の一部の譲渡を受けることもその性質に反するものとはいえないから,本件において控訴人が動産類等の資産の譲渡を受けているからといって,上記の判断の妨げになるものではない。 イそして,本件各契約締結当時における控訴人の商号は,㈱甲野ゴルフと実質的に同一の甲野ゴルフ㈱であり,控訴人は,本件訴訟提起後の平成11年12月27日に現在の商号に変更するまで約8か月間その商号を使用していたものであるから,本件ゴルフ場の営業の賃借を受けた控訴人が賃貸人であ 一の甲野ゴルフ㈱であり,控訴人は,本件訴訟提起後の平成11年12月27日に現在の商号に変更するまで約8か月間その商号を使用していたものであるから,本件ゴルフ場の営業の賃借を受けた控訴人が賃貸人である㈱甲野ゴルフの商号を続用していたものと認められる。 ウところで,商法26条1項は、営業の譲受人が譲渡人の商号を続用する場合に、譲渡人の営業によって生じた債務については譲受人もまたその弁済の責めに任ずべき旨を定める規定であるが、これは,営業の譲渡を受けた者が譲渡人の商号を続用している場合には、譲渡人に対する営業上の債権者は譲受人が債務を引き受けたものと信頼するのが通常の事態と考えられるから,そのような信頼を保護するという趣旨に基づくものであって,この場合,譲受人も併存的に債務を引き受けたものとして債権者に対しその弁済の責任を負うものと解される。そして,営業の賃貸借も,法律行為による営業の移転であって,賃借人は,その営業から生じる権利義務の主体となり,営業上の債権者の信頼を保護すべき点においては,営業の譲渡における場合と基本的に変わるところはない。特に,本件においては,控訴人は,㈱甲野ゴルフのほとんど唯一の事業を賃借し,同社が負担していた債務の一部も引き受け,本件ゴルフ場の固定資産税も負担するというものであって,契約上の期間も10年と長期であり,将来㈱甲野ゴルフが再び自ら本件ゴルフ場の運営を行う可能性はほとんどないものと考えられることからすれば,実質的には営業の譲渡と極めて類似するものということができる。したがって,少なくとも本件においては,営業の譲渡ではなく営業の賃貸借であっても,商法26条1項が類推適用されるものと解するのが相当である。 エ控訴人は,被控訴人らが控訴人に対し商法26条1項の責任を初めて主張した時点においては,控訴人の商 ではなく営業の賃貸借であっても,商法26条1項が類推適用されるものと解するのが相当である。 エ控訴人は,被控訴人らが控訴人に対し商法26条1項の責任を初めて主張した時点においては,控訴人の商号は既に変更されていたから,商号の続用の状態にはないと主張するが,上記ウに説示した同項の趣旨に照らしても,営業の譲受人がいったん商号を続用していた以上,当該譲受人に対する請求の時点において商号が続用されていることまでは要しないというべきであるから,控訴人の主張は失当である。 また,控訴人は,同項の責任は,債権者が営業主の交替に気付かなかったため債権回収の機会が遅れたことによる損害のみに限られるべきであるとの見解に立って,本件においてはそのような損害が発生していないと主張するが,上記のとおり,同項による営業の譲受人の責任は,営業の譲渡人と併存的に債務の履行義務を負うというものであるから,上記見解は到底採用することができない。 以上によれば,控訴人には,商法26条1項に基づき,被控訴人らに対し,本件預託金を返還し,訴状送達の日の翌日である平成11年12月5日(ただし,被控訴人Cについては据置期間満了日の翌日である平成12年2月9日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金をそれぞれ支払う義務がある。 第4 結論以上によれば,原判決は相当であるから,本件各控訴をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第15民事部裁判長裁判官近藤崇晴 裁判官宇田川基 裁判官宇田川基 裁判官加藤正男

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