平成13年(わ)第2019号判決上記の者らに対する市川市土砂等による土地の埋立,盛土及びたい積の規制に関する条例違反被告事件について,当裁判所は検察官梅田健史出席のうえ審理し,次のとおり判決する。 主文 被告人Bを懲役1年に,被告会社A株式会社を罰金10万円にそれぞれ処する。 被告人Bに対し,未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告会社A株式会社(代表取締役B)は,東京都江戸川区ab丁目c番d号に本店を置き,土木建築用資材の運搬,販売業等を営むもの,被告人Bは,同会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括するものであるが,被告人Bは,被告会社の業務に関し,被告会社が千葉県市川市e,f番及びその周辺にたい積させた土砂等について,市川市長から,平成8年6月3日付けで,市川市土砂等による土地の埋立,盛土及びたい積の規制に関する条例に基づき,同11年4月30日までに同所にたい積された土砂等を搬出して原状に復するよう命ぜられたのに,上記期限までに原状回復の措置を講ぜず,もって,同市長の命令に違反したものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)罰条市川市土砂等による土地の理立,盛土及びたい積の規制に関する条例19条2号,8条,2l条未決算入刑法21条(量刑の事情)本件は,被告人Bが代表取締役を務め土木建築用資材の運搬,販売業等を営むA株式会社(被告会社)が,同会社の業務として,千葉県市川市eの土地(以下「本件土地」ともいう。)にたい積させた土砂等につき,市川市長から,平成8年6月3日付けで,市川市土砂等による土地の 等を営むA株式会社(被告会社)が,同会社の業務として,千葉県市川市eの土地(以下「本件土地」ともいう。)にたい積させた土砂等につき,市川市長から,平成8年6月3日付けで,市川市土砂等による土地の埋立,盛土及びたい積の規制に関する条例に基づき,同11年4月30日までに同所にたい積された土砂等を搬出して原状に復するよう命ぜられたのに,上記期限までに原状回復の措置を講ぜず,もって,同市長の命令に違反したという市川市条例違反の事案である。 被告人及び被告会社による本件までの一連の行状による結果は,後記のとおり,被告人及び被告会社の本件土地にたい積させた土砂等が,面積にして4万平方メートル余り,容積にして63万立方メートル余り,高さにして約38メートルに達するというとてつもない状況を呈していることに照らし,それ自体で言語道断の所業というべきであるところ,被告人は,当公判廷において,本件に至る経緯につき,縷々弁解を申し立てて経緯についても自己の正当性を主張するので,以下,量刑事情の一環として,証拠により認められる本件に至る経緯,並びに,被告人のこれに関する弁解と当裁判所のこれに対する判断を示すこととする。 被告会社は,昭和年代に,いわゆるg地区内にある市川市e所在の土地(当初借用にかかるこの土地を「h敷地」という)を建材用車両,機器及び材料等の置場として賃借するや,その用法に反し,また,残土搬入の事業許可も有しないのに,マンション建築に伴って生ずる残土の処分委託を受けてはこれをここに搬入,たい積し始めた(甲7,14,21,25,乙3)。 被告人は,当公判廷において,当時自己側は残土の搬入は一切行っていない,資材を置いただけである旨断言した。しかし,被告会社が本件土地に残土を搬入していた事実は,被告人のその旨を認める供述調書を待つまでもなく, 当公判廷において,当時自己側は残土の搬入は一切行っていない,資材を置いただけである旨断言した。しかし,被告会社が本件土地に残土を搬入していた事実は,被告人のその旨を認める供述調書を待つまでもなく,前掲証拠上明らかであり,また,この点は,被告人自身当公判廷において,その真偽はともあれ,自己に残土搬入を発注した注文主であるCが,ゴルフ場建設のためこの地域へ残土を搬入して盛り土することとなった際,Cにおいてその事業許可を得ていると思ったなどとも弁解したことと明らかに矛盾する児戯じみた強弁である。 そして,このCが許可を得ていると思った旨の弁解も,上記昭和年代の当時はまだゴルフ場のための盛り土の話が出る何年も前のことであるから,それ自体不合理であるうえ,その後この地域でCらによるゴルフ場建設に伴う残土搬入の必要が生じたとしても,残土搬入の事業施行者はその依頼を受けたという被告会社になる筋合いであるから,Cがこれを受けたと思ったなどという弁解は,通らぬところであり,また,Cが本件残土の厖大なこと等を理由としてゴルフ場建設を断念したのちも,本件土地への残土搬入は継続されていることからも,この弁解の不合理なことは明白である。 被告人自身,被告会社に対する残土処分の発注者は,ゼネコン等からの段階的依頼を受けて被告会社に注文してきていたD社が主であったところ,同社倒産の後は,ゼネコンの各下請会社が発注者となったなどとも述べているから,要するに,残土の最終処分を被告会社において業として,つまり,本市川市条例のいうところの「事業施行者」として,行っていたことは紛れもない事実であるので,これにつき許可が不要と考えたなどと言い抜けることは刑責逃れの強弁というにも甚だしいものがある。 しかるところ,被告会社は,前記残土搬入について市川市からこれを搬出するよ れもない事実であるので,これにつき許可が不要と考えたなどと言い抜けることは刑責逃れの強弁というにも甚だしいものがある。 しかるところ,被告会社は,前記残土搬入について市川市からこれを搬出するよう指導されて,その計画書を提出したものの,これを実行せず,さらには,他社(E,F等)が借り受けた隣接土地にまで残土を搬入する等したため,地主から土地明け渡しの民事訴訟をおこされるに至り,昭和62年6月,この訴訟を自己側において残土を撤去するとの内容の和解で終えた。 被告人は,当公判廷において,この和解についても,これは自己側に残土搬入の責任は全くなかったものの,地権者が困っているのを気の毒に思い好意から残土の撤去をしてやることとした旨を述べたが,被告会社が不法搬入している事実は現地における周辺住民の監視供述等により明白であるうえ,自己が正規に賃借している土地に何者かが不法に残土を搬入し,自己が地権者から土地明け渡しを求められる事態になっているというのであれば,自己においてもその不法を敢えてしている者をこそ相手方として責任追及に回るべき筋合いであるのに,被害者ともいうべき自己側がその残土を撤去するばかりか,1500万円もの和解金を支払ったうえ,その土地を明け渡すことを約すなどという内容の和解に至ることなどあり得よう筈もないから,この点の被告人の弁解も笑止というべき言い逃れであり,裁判所を愚弄するにも甚だしいものがある。 しかるに,被告人は,この撤去につき,平成元年,近接する他社(G)借用に係る土地や他人(H,I)所有地に無断で残土を搬入するという方法で,表面を繕う方法をとったうえ,平成2年には,s敷地に再び残土搬入を開始すると共に,前記G・H・Iらの土地への搬入も継続したため,この3者が被告会社に苦情を申し入れたが,被告人はこれに耳を貸すこ で,表面を繕う方法をとったうえ,平成2年には,s敷地に再び残土搬入を開始すると共に,前記G・H・Iらの土地への搬入も継続したため,この3者が被告会社に苦情を申し入れたが,被告人はこれに耳を貸すことなく,かえって,抗議した地権者を脅しつけるなどして搬入を継続した(甲8ないし10)。 しかるところ,昭和年代からg地区にゴルフ場を建設する計画を立てて,同地区の買収を進めていたJ株式会社(以下Jという。)〔及びその関連会社であるK株式会社(以下「K」という。)〕の代表取締役Cが,ゴルフ場建設計画を胸に,平成元年5月ころN,H,Iら地権者をとりまとめて市川市に対し同土砂問題解決の協力方を要請したことから,同市は被告会社及び地権者との会合を開き,被告会社もこれに応じて残土搬入の中止を約した。 にもかかわらず,被告会社はさらに土砂搬入を継続したたことから,同市は,被告会社に対し,平成2年8月7日付書面により原状回復を勧告すると共に土砂撤去計画書を提出するよう求め,また,同年9月11日付書面で同内容の勧告と要求をなし,さらに,同3年8月16日付書面でも同内容の勧告と要求をなしたが,被告人及び被告会社は,ときにこれに沿う計画書を提出するもののこれを履行せず,なおもg地区への土砂搬入を続け(甲11,12,21),この間,平成3年4月ころ,前記Cは,被告人から,K所有の近隣別地に2,3か月間工事用の土を搬入させてくれとの依頼を受けてこれに応じたところ,3か月を過ぎたのちも土砂搬入を続けられ(甲24),前記Lは,被告人から「正規の賃借地を超えて土地使用をしている,残土をすべて撤去して出ていけ」と要求されて,平成3年ころ残土をすべて撤去して撤退し(甲23),また,昭和58年以降この地域数筆を借用してP同様残土や資材の置場としていたM株式会社も被告人から同 ,残土をすべて撤去して出ていけ」と要求されて,平成3年ころ残土をすべて撤去して撤退し(甲23),また,昭和58年以降この地域数筆を借用してP同様残土や資材の置場としていたM株式会社も被告人から同様の嫌がらせを受け平成4年ころまでに同地域から撤退した(甲20)が,被告人及び被告会社は,その後これら両社の撤退した跡地にまで残土を搬入するに至った。 平成4年ころとなり,被告人及び被告会社のたい積した土砂の高さは,ところにより約15メートルにも達したため,同年2月ころには,土砂の崩落による電柱倒壊事故が発生するに至り,同市は,同月13日付で,被告会社に対し,書面で原状回復を要請し,さらに,残土搬出を実効あらしめるべく,被告会社に対しg地区に隣接するh地区の埋立工事を斡旋・紹介し,h地区地権者と被告会社との間で,h地区の埋立地に,g地区の残土の搬入を許す合意が交わされて,被告会社は,同市宛に,同5年3月11日付確約書,同年4月2日付誓約書と確約書,同年7月6日付誓約書及び確約書をそれぞれ提出し,g地区への残土搬入を中止し,たい積された残土をh地区の埋立に使用するため搬出することを誓約した。 しかしながら,平成5年11月からh地区の第2期埋立工事が開始されるや,被告人及び被告会社はg地区の残土を殆ど搬出することをせず,約の趣旨に反し,新たな処分委託を受けた残土を同埋立地に搬入したうえ,g地区にも新たな残土を搬入するに至ったため,同市は,被告会社に対し,h地区及びg地区の残土搬出を指導し,さらに,同7年9月28日付及び同8年3月11日付で,g地区の残土撤去等を勧告したが,被告会社はこれに従わないでいた中,同8年4月16日,g地区にたい積した残土の一部が崩落し,重機が押し流される事故が発生したため,同市は,同月17日付で,被告会社に是正措置を勧告 去等を勧告したが,被告会社はこれに従わないでいた中,同8年4月16日,g地区にたい積した残土の一部が崩落し,重機が押し流される事故が発生したため,同市は,同月17日付で,被告会社に是正措置を勧告したが,被告人及び被告会社は,これにも応じなかった。 そこで,同市は,同年6月3日,被告会社に対し,公訴事実記載の業務停止命令を発し,土砂の搬入を停止し,かつ同11年4月30日を期限として,たい積された土砂を排出し,土砂のたい積された土地を原状回復するよう命じたものである。 被告人及び被告会社は,この命令に従わず,さらに土砂の搬入を継続し,同年7月3日には残土の崩落によりトラック及び重機に土砂がかかる事故を,同月9日には残土の崩落により建設省所轄道路が一時通行止めになる事故を,それぞれ発生させ,同年8月10日付で,同市から,上記業務停止命令に従うよう要請を受けたにもかかわらずこれを無視し,同年9月11日は隣接地に土砂が流れる土砂崩れを,同月22日には道路封鎖を生じる崩落事故を,それぞれ発生させるなどしつつ,同年7月には被告人の甥の中野幸男を社長としてダミー会社であるU株式会社を設立して,同社名義でr地区への土砂の搬入を継続するなどし,ついに業務停止命令で定められた平成11年4月30日の期限を経過して本件犯行に及んだものである。 被告人は,本件業務停止命令違反につき,残土の法面の崩落を防ぐため前記U株式会社に依頼して粘土質の土を搬入させたものである旨弁解するが,被告人が同市からそのような依頼権限を与えられた形跡は全くない。そのうえ,この間の搬入状況を監視した結果の報告書である甲27号証によれば,現に被告会社名入りのトラックが多く残土を搬入している事実が認められるうえ,被告人の主張するような法面固定作業であれば,その搬入箇所やこれを受けて法面 を監視した結果の報告書である甲27号証によれば,現に被告会社名入りのトラックが多く残土を搬入している事実が認められるうえ,被告人の主張するような法面固定作業であれば,その搬入箇所やこれを受けて法面固定にあたる重機の配列等も固定作業に相応したものとなるであろうのに,一か所に集中して多数台のダンプトラックにより残土が搬入され,多数のブルドーザがおよそ固定作業とは似つかわしからざる脈絡のない配置で作業し,また,その搬入箇所たるやかえって崩落の危険を生ずるという状況であったことが認められるから,被告人のこの弁解も到底信用することができない。 被告人及び被告会社が,g地区にたい積させた土砂は,平成11年5月21日の時点で,面積約4万3015平方メートル,容積63万1607メートル,高さ約37.9メートルに及び,一個の小山となり,「e富士」と呼ばれ,周辺住民は,舞い上がる砂埃や悪臭に悩まされているというのである(以上の経過全部につき甲1ないし4,24,25,28の29)から,本件犯行の結果は甚大である。 以上みてきたように,被告人及び被告会社は,長年の間行政を愚弄し,無法な残土たい積を継続して,環境を破壊してきたものであるから,環境保護が強く叫ばれて久しい現今,被告人の刑事責任は重く,あまつさえ,裁判所をも愚弄するかのごとき弁解に終始して自己の刑責を減ずることに汲々としている有様をみれば,そこに反省の情などは微塵も認めることができない。 被告人が従来敬虔なO教信者である旨の立証活動もなされたが,本件の経過と被告人の前記のような弁解内容等をみれば,今や人類の悲願ともいうべき自然や環境を保全して次代を担う子らのためにも地球規模で人類共通の理念と生き方を探ろうとする,信仰を超えた人類全体の理想にも,被告人は全く無理解であるばかりでなく,自己の利欲 人類の悲願ともいうべき自然や環境を保全して次代を担う子らのためにも地球規模で人類共通の理念と生き方を探ろうとする,信仰を超えた人類全体の理想にも,被告人は全く無理解であるばかりでなく,自己の利欲のためにはこれを踏みにじって恥じない態度をとり続けたものであるから,そのいうところの信仰心にも強い疑問が生ずるところであるうえ,被告人が暴力により人の身体等を害するなどして重ねた粗暴前科等13犯もの前科を有する身であり,本件関係者らとの折衝等の場面でも暴力団員等との関係を窺わせたりしていた事実に照らせば,被告人の規範意識の強い鈍麻と法を恐れぬ無法・無頼な人格態度も窺えるから,被告人には再犯の虞も顕著に認められるところである。 したがって,他方,被告人が本件事実自体はこれを争わぬ旨述べ反省の弁も併せ述べたこと,被告人の収入に依存する家族・従業員がいること,被告人の宗教上の師ともいうべき人物が出廷して今後の指導監督を約したこと,被告人の内妻が出廷して被告人の性善良である旨を述べたこと等の事情も認められるが,これら被告人に有利ないし酌むべき事情を十分考慮に入れても,被告人に対し,主文掲記の実刑をもって臨むのはやむを得ないところである。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑被告人に対し懲役1年,被告会社に対し罰金10万円)平成13年12月26日千葉地方裁判所刑事第2部裁判官小池洋吉
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