平成18(ワ)10959 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年4月23日 大阪地方裁判所
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判決文本文49,883 文字)

主文 被告健勝苑及び被告オリコは,原告に対し,各自248万2000円及びこれに対する被告健勝苑については平成18年12月2日から,被告オリコについては平成18年12月5日から各支払済みまでそれぞれ年5分の割合による金員を支払え。 原告の被告オリコに対する別紙1「クレジット支払一覧」番号29ないし31記載の各立替払契約に基づく1万3300円,4万1500円及び8万1200円の各債務が存在しないことを確認する。 原告の被告健勝苑に対するその余の請求並びに同オリコに対するその余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。 原告の被告松葉及び同ニッセンに対する各請求並びに同ニコス,同クオーク,同セントラル及び同ジャックスに対する各主位的請求及び各予備的請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,被告松葉,同ニッセン,同ニコス,同クオーク,同セントラル及び同ジャックスに生じた分はいずれも原告の負担とし,その余はこれを5分し,その4を原告の,その余を被告健勝苑及び同オリコの各負担とする。 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告健勝苑に対する請求被告健勝苑は,原告に対し,1015万4000円及びうち1014万円に対する平成18年12月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を(ただし,919万4000円及びこれに対する平成18年12月5日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める限度で被告オリコと連帯して)支払え。 被告松葉に対する請求 被告松葉は,原告に対し,206万6472円及びこれに対する平成18年11月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を(ただし,38万7700円及びこれに対する平成18年12月5日から支払済みまで年5分の割合によ し,206万6472円及びこれに対する平成18年11月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を(ただし,38万7700円及びこれに対する平成18年12月5日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める限度で被告ニコスと連帯して,16万7200円及びこれに対する平成18年12月5日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める限度で被告クオークと連帯して,51万8672円及びこれに対する平成18年12月5日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める限度で被告オリコと連帯して)支払え。 被告ニッセンに対する請求被告ニッセンは,原告に対し,93万7055円及びこれに対する平成18年12月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を(ただし,78万1715円及びこれに対する平成18年12月2日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める限度で被告セントラルと連帯して,15万5340円及びこれに対する平成18年12月5日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める限度で被告ジャックスと連帯して)支払え。 被告オリコに対する請求(1)主位的請求ア被告オリコは,原告に対し,被告健勝苑と連帯して,919万4000円及びこれに対する平成18年12月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ被告オリコは,原告に対し,被告松葉と連帯して,51万8672円及びこれに対する平成19年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ウ原告の被告オリコに対する別紙1「クレジット支払一覧」の番号29ないし31,36,39,42,44記載の各立替払契約に基づく債務がいずれも存在しないことを確認する。 (2)予備的請求原告と被告オリコとの間において,原告が,前記(1 ト支払一覧」の番号29ないし31,36,39,42,44記載の各立替払契約に基づく債務がいずれも存在しないことを確認する。 (2)予備的請求原告と被告オリコとの間において,原告が,前記(1)ウ記載の各立替払契約に基づく残債務について,同被告からその履行の請求を受けたときはこれを拒絶することができる地位にあることを確認する。 被告ニコスに対する請求(1)主位的請求ア被告ニコスは,原告に対し,被告松葉と連帯して,38万7700円及びこれに対する平成18年12月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ原告の被告ニコスに対する別紙1「クレジット支払一覧」の番号33記載の立替払契約に基づく債務が存在しないことを確認する。 (2)予備的請求原告と被告ニコスとの間において,原告が,前記(1)イ記載の立替払契約に基づく残債務について,同被告からその履行の請求を受けたときはこれを拒絶することができる地位にあることを確認する。 被告クオークに対する請求(1)主位的請求ア被告クオークは,原告に対し,被告松葉と連帯して,16万7200円及びこれに対する平成18年12月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ原告の被告クオークに対する別紙1「クレジット支払一覧」の番号34記載の立替払契約に基づく債務が存在しないことを確認する。 (2)予備的請求原告と被告クオークとの間において,原告が,前記(1)イ記載の立替払契約に基づく残債務について,同被告からその履行の請求を受けたときはこれを拒絶することができる地位にあることを確認する。 被告セントラルに対する請求(1)主位的請求ア被告セントラルは,原告に対し,被告ニッセンと連帯して,78万1715円及びこれに対する平成18年12月2日から支 位にあることを確認する。 被告セントラルに対する請求(1)主位的請求ア被告セントラルは,原告に対し,被告ニッセンと連帯して,78万1715円及びこれに対する平成18年12月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ原告の被告セントラルに対する別紙1「クレジット支払一覧」の番号45,46,48ないし50記載の各立替払契約に基づく債務がいずれも存在しないことを確認する。 (2)予備的請求原告と被告セントラルとの間において,原告が,前記(1)イ記載の各立替払契約に基づく残債務について,同被告からその履行の請求を受けたときはこれを拒絶することができる地位にあることを確認する。 被告ジャックスに対する請求(1)主位的請求ア被告ジャックスは,原告に対し,被告ニッセンと連帯して,15万5340円及びこれに対する平成18年12月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ原告の被告ジャックスに対する別紙1「クレジット支払一覧」の番号47記載の立替払契約に基づく債務が存在しないことを確認する。 (2)予備的請求原告と被告ジャックスとの間において,原告が,前記(1)イ記載の立替払契約に基づく残債務について,同被告からその履行の請求を受けたときはこれを拒絶することができる地位にあることを確認する。 第2事案の概要本件は,呉服販売を業とする被告健勝苑,被告松葉及び被告ニッセン(以下,上記被告らを「被告販売会社」という。)において外交員やパート勤務をして いた原告が,被告販売会社とともに,信販会社である被告オリコ,被告ニコス,被告クオーク,被告セントラル及び被告ジャックス(以下,上記被告らを「被告信販会社」という。)に対し,以下の請求をする事案である。 被告健勝苑に対する請求(それぞれ選択的関係 オリコ,被告ニコス,被告クオーク,被告セントラル及び被告ジャックス(以下,上記被告らを「被告信販会社」という。)に対し,以下の請求をする事案である。 被告健勝苑に対する請求(それぞれ選択的関係にある。)(1)被告健勝苑が,同被告の従業員である原告に対して,原告が左膝関節の機能全廃及び聴覚の障害を負うなどして,判断能力が低下していたことを認識しながら,使用者という優越的地位を利用して,①制服として着物着用を義務付け,②売上協力を強要し,③同被告が販売する商品の効果を顧客に説明させるために,同商品を従業員自ら購入し,使用する必要がある旨述べて,原告の支払能力を超える立替払契約を締結させた上で着物等を購入させたことが公序良俗に反するものであり,上記売買契約が無効であるとして,不当利得返還請求権に基づき,原告が被告健勝苑との間の売買契約に基づいて既に支払った売買代金相当額及び原告が被告オリコとの間の立替払契約に基づいて同被告に対して既に支払った立替金相当額の合計額の返還を求めるもの(附帯請求は,訴状送達の日の翌日からの民法所定年5分の割合による遅延損害金支払請求である。)(2)被告健勝苑が,従業員である原告に対し,前記(1)の事情下での着物等の購入をさせたことが,雇用契約に付随して信義則上認められる職場環境配慮義務に違反するとして,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,前記(1)と同額の支払を求めるもの(3)被告健勝苑が,原告に対し,前記(1)の事情下で着物等を購入させたことが不法行為にあたるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,前記(1)と同額の損害賠償を求めるもの(ただし,かかる購入について立替払契約を締結した被告オリコとは共同不法行為の関係にあるとして,同被告に対して既に支払った立替金相当額の限度で同被告の後記 き,前記(1)と同額の損害賠償を求めるもの(ただし,かかる購入について立替払契約を締結した被告オリコとは共同不法行為の関係にあるとして,同被告に対して既に支払った立替金相当額の限度で同被告の後記4(1)の責任とは不真正連帯の関係にあるとする。) 被告松葉に対する請求(それぞれ選択的関係にある。)(1)被告松葉が,同被告の従業員である原告に対して,原告が左膝関節の機能全廃及び聴覚の障害を負うなどして,判断能力が低下していたことを認識しながら,使用者という優越的地位を利用して,①売上ノルマを設定し,また②制服として着物着用を義務付け,原告の支払能力を超える立替払契約を締結させた上で着物等を購入させたことが公序良俗に反するものであり,上記売買契約が無効であるとして,不当利得返還請求権に基づき,原告が被告松葉との間の売買契約に基づいて既に支払った売買代金相当額及び原告が被告ニコス,同クオーク及び同オリコとの間の立替払契約に基づいて同被告らに既に支払った立替金相当額の合計額の返還を求めるもの(附帯請求は前記1(1)と同じ。)(2)被告松葉が,従業員である原告に対し,前記(1)の事情下で着物等を購入させたことが,雇用契約に付随して信義則上認められる職場環境配慮義務に違反するとして,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,前記(1)と同額の支払を求めるもの(3)被告松葉が,原告に対し,前記(1)の事情下で着物等を購入させたことが不法行為にあたるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,前記(1)と同額の損害賠償を求めるもの(ただし,かかる購入にあたり,立替払契約を締結した被告ニコス,同クオーク及び同オリコとはそれぞれ共同不法行為の関係にあるとして,上記各被告らに対して既に支払った各立替金相当額の限度で同被告らの後記4(1) かかる購入にあたり,立替払契約を締結した被告ニコス,同クオーク及び同オリコとはそれぞれ共同不法行為の関係にあるとして,上記各被告らに対して既に支払った各立替金相当額の限度で同被告らの後記4(1)の責任とは,それぞれ不真正連帯の関係にあるとする。) 被告ニッセンに対する請求(それぞれ選択的関係にある。)(1)被告ニッセンが,同被告の従業員である原告に対して,原告が左膝関節の機能全廃及び聴覚の障害を負うなどして,判断能力が低下していたことを認識しながら,使用者という優越的地位を利用して,①売上に協力するように 強要し,②被告ニッセンが主催するパーティー等に被告ニッセンの商品を着用するように強要して,原告の支払能力を超える立替払契約を締結させた上で着物等を購入させたことが公序良俗に反するものであり,上記売買契約が無効であるとして,不当利得返還請求権に基づき,原告が被告セントラル及び被告ジャックスとの間の立替払契約に基づいて同被告らに既に支払った立替金相当額の返還を求めるもの(附帯請求は前記1(1)と同じ。)(2)被告ニッセンが,従業員である原告に対し,前記(1)の事情下で着物等を購入させたことが,雇用契約に付随して信義則上認められる職場環境配慮義務に違反するとして,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,前記(1)と同額の支払を求めるもの(3)被告ニッセンが,原告に対し,前記(1)の事情下で着物等を購入させたことが,後記4(1)の被告セントラル及び被告ジャックスとの共同不法行為にあたるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,前記被告らと連帯して,前記(1)と同額の支払いを求めるもの 被告信販会社に対する請求(1)被告信販会社が,前記1(1),2(1),3(1)の被告販売会社の販売方法を知りながら,又は,それを知 記被告らと連帯して,前記(1)と同額の支払いを求めるもの 被告信販会社に対する請求(1)被告信販会社が,前記1(1),2(1),3(1)の被告販売会社の販売方法を知りながら,又は,それを知らなかったとしても,立替払契約上の善管注意義務又はそれに付随する信義則上の注意義務の一内容である,不適正な与信を防止し,加盟店を調査する義務及び過剰な与信を防止する義務に反して,原告との間で同契約を締結したことが,前記1(3),2(3),3(3)の被告販売会社とそれぞれ共同不法行為に当たるとして,又は上記立替払契約が公序良俗に違反して無効であるとして,不法行為による損害賠償請求権又は不当利得返還請求権に基づき(不法行為責任については被告販売会社とそれぞれ連帯して)既に支払った立替金相当額の支払いを求めるもの(被告オリコに対する主位的請求ア,イ。その余の被告信販会社に対する各主位的請求ア。附帯請求は前記1(1)と同じ〔ただし,被告オリコに対する主位的請求イの遅延 損害金請求の起算日は請求変更申立書送達の日の翌日である。〕)(2)被告信販会社が,前記(1)記載の事情下において,原告との間で締結した立替払契約が公序良俗に違反して無効であるとして,また,割賦販売法30条の4又は信義則により,原告が被告信販会社から本件立替払契約に基づく残債務の履行を請求されたときは,原告と被告販売会社との間の売買契約が前記1(1),2(1),3(1)のとおり公序良俗に反して無効であることをもって対抗できるとして,被告信販会社に対し,原告との立替払契約に基づく残債務が存在しないことの確認を求めるもの(被告オリコに対する主位的請求ウ。 その余の被告信販会社に対する各主位的請求イ)(3)割賦販売法30条の4又は信義則により,原告が被告信販会社から本件立替払契約に基づ しないことの確認を求めるもの(被告オリコに対する主位的請求ウ。 その余の被告信販会社に対する各主位的請求イ)(3)割賦販売法30条の4又は信義則により,原告が被告信販会社から本件立替払契約に基づく残債務の履行を請求されたときは,原告と被告販売会社との間の売買契約が前記1(1),2(1),3(1)のとおり公序良俗に反して無効であることをもって対抗できるとして,予備的に,原告が被告信販会社に対する立替払契約に基づく残債務の支払を拒絶することができる地位にあることの確認を求めるもの(被告信販会社に対する各予備的請求)第3争いのない事実及び証拠によって容易に認定することのできる事実(以下「争いのない事実等」という。なお,証拠を付さない事実は,当事者間に争いがない。) 当事者(1)原告は,昭和10年生まれの主婦である。原告は,平成9年4月ころから平成17年7月ころまで,被告健勝苑の外交員と呼称されるスタッフとして,被告健勝苑の営業活動等に従事し,平成16年6月ころから,被告松葉のパート従業員として,平成17年3月ころから,被告ニッセンのパート従業員として勤務した。 (2)被告健勝苑は,呉服販売を業とする株式会社であり,全国的な呉服チェーン販売大手の健勝苑グループの一つである。 被告松葉は,呉服の販売等を業とする株式会社であり,呉服販売チェーンのきもの松葉グループの一つである。 被告ニッセンは,通信販売等を業とする全国的な大手企業であり,「優美苑」,「ユービスト」などの呼称で呉服販売を行っている。 被告信販会社は,いずれも,割賦購入あっせん等を業とする株式会社である。 原告と被告らの契約原告は,別紙1「クレジット支払一覧」のとおり,平成9年4月5日から平成18年8月10日まで,被告販売会社から,着物,布団等を購入し(以下,総 等を業とする株式会社である。 原告と被告らの契約原告は,別紙1「クレジット支払一覧」のとおり,平成9年4月5日から平成18年8月10日まで,被告販売会社から,着物,布団等を購入し(以下,総称して「本件売買契約」といい,同一覧記載の番号順に「本件売買1」又は「本件売買契約1」などと表記する。),被告信販会社との間で,本件売買2,6,8,12,13,16,22,32,37,38,40,41,43を除く本件売買契約における売買代金の支払について,被告販売会社との間で立替払契約を締結した(以下「本件立替払契約」といい,本件各売買に対応する立替払契約を「本件立替払契約1」,「本件各立替払契約」などと表記する。ただし,後記第4,2,同4のとおり,本件売買契約35及び本件立替払契約35について,契約当事者について争いがある。)。 第4争点及び当事者の主張 原告の被告健勝苑に対する請求について(1)原告と被告健勝苑との間の本件売買契約は,一連一体として公序良俗に反して無効か(争点1)。 【原告の主張】被告健勝苑は,同被告の従業員である原告に対して,原告が左膝関節の機能全廃,聴覚の障害を負うなど,判断能力が低下していることを認識しながら,使用者という優越的地位を利用して,①制服として着物着用を義務付け,②売上協力を強要し,③同被告が販売する商品の効果を顧客に説明させるた めに,同商品を従業員自ら購入し,使用する必要がある旨述べて,原告の支払能力を超える,着物等31点,支払総額1029万円に及ぶ本件売買契約1ないし31を締結して着物等を購入させたのであり,上記売買契約は,一連一体として公序良俗に反し,無効である。 ア①使用者という優越的地位の利用について(ア)被告健勝苑は,従業員である原告を使用する者であり,優越的地位にある者で せたのであり,上記売買契約は,一連一体として公序良俗に反し,無効である。 ア①使用者という優越的地位の利用について(ア)被告健勝苑は,従業員である原告を使用する者であり,優越的地位にある者である。この点,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条,不公正な取引方法(昭和57年6月18日・公正取引委員会告示第15号)14項2号は,事業者に優越的地位の濫用をして取引の実施において相手方に不利益を与えることを禁じている。また,大阪市消費者保護条例18条1項1号,消費者保護条例に基づく不当な取引行為の指定1(21)も,「消費者と雇用契約等の優越的な立場に乗じて,消費者に対して著しく不利益をもたらすおそれがある契約の締結を勧誘し,又は契約を締結させる行為」を禁じている。したがって,使用者が,その優越的な地位を利用して,従業員との間で契約を締結させることは社会通念上許されない。 (イ)被告健勝苑は,展示会で着物を制服として着用する必要がある,被告健勝苑の売上に貢献する必要がある,顧客に商品を販売するにあたり,その商品を従業員自ら体感する必要があるなどとして,使用者という優越的な地位を利用して,原告に対し,着物等の購入を強要した。 イ②原告の判断能力が低下していることを利用したことについて(ア)適合性の原則(消費者基本法5条1項3号)は,老人その他の者のように,判断能力が不足していることに乗じて商品を販売してはならないことをも要求するものである。ここでいう判断能力の不足とは,意思無能力者や成年被後見人の判断能力の程度に限られず,広く,断る気力の低下,計算能力・生活設計能力の低下,どんな話にも頷く傾向など, 合理的経済人として損得を計算できる判断能力の不足を含むものである。 また,全国の消費生活条例は,消費者基本法の趣旨を具体 る気力の低下,計算能力・生活設計能力の低下,どんな話にも頷く傾向など, 合理的経済人として損得を計算できる判断能力の不足を含むものである。 また,全国の消費生活条例は,消費者基本法の趣旨を具体化するために,判断能力の不足につけ込んだ勧誘を禁止している。大阪府消費生活条例16条1号,同施行規則5条別表1項ルは,「判断能力の不足に乗じる方法又は高齢者等の気力若しくは身体機能の低下等に乗じる方法で契約の締結を勧誘し,又は契約を締結させる行為」を禁じている。大阪市消費者保護条例18条1項1号,消費者保護条例に基づく不当な取引行為の指定1(15)は,消費者の判断能力の不足に乗じて契約の締結を勧誘し,又は契約を締結させることを禁じている。 さらに,社会通念に照らし,判断能力,抵抗能力,断る気力等が低下した高齢者等に対して,そのような状況につけ込んで,次々に商品を購入させるのは,許されない。 (イ)原告は,昭和10年生まれの老女であり,左膝関節機能を喪失していたため,座売で正座を長時間することができず,立ちっぱなしでいざるを得なかった。また,原告は,右耳が高度感音性難聴,左耳は中程度感音性難聴であり,日常会話ですら非常に注意を要し,コミュニケーションに困難を伴うことが多かった。よって,原告は,被告健勝苑の営業活動において,心身とも疲弊し,判断能力が低下していた。被告健勝苑は,かかる原告の状況を認識した上で,着物等の購入を強要した。 ウ③原告の生活を破綻させるほどの不相当に過大な量の商品の購入を強要したことについて(ア)消費者基本法5条1項3号は,「消費者との取引に際して,消費者の知識,経験及び財産の状況等に配慮すること」を事業者の責務であるとしている。大阪府は,大阪府消費者保護条例16条2号,施行規則5条別表二イにおいて,「消費者にと ,「消費者との取引に際して,消費者の知識,経験及び財産の状況等に配慮すること」を事業者の責務であるとしている。大阪府は,大阪府消費者保護条例16条2号,施行規則5条別表二イにおいて,「消費者にとって,不当に過大な量の商品及び役務等又は不当に長期にわたる商品及び役務等の購入を内容とする契約を 締結させる行為」を禁じている。大阪市は,大阪市消費者保護条例18条1項2号,消費者保護条例に基づく不当な取引行為の指定2(3)において,「消費者が当面必要としない,不当に過大と思われる量の商品等を販売する内容の契約」を締結させる行為を禁じているほか,全国各地の地方自治体が消費者保護条例を制定して,過量販売を禁止している。 (イ)原告は,月額14万7858円程度の遺族年金と多いときで月額10万円程度の被告健勝苑から支給される給与だけの収入で,被告健勝苑からの着物等の購入により,毎月10万円以上の支出があったのであり,被告健勝苑は,原告に対し,原告の支払能力以上の着物を購入させていたことは明らかである。 エ以上のとおり,原告と被告健勝苑との間の本件売買契約1ないし31は,一体として公序良俗に違反して無効であるから,被告健勝苑は,原告に対し,原告が既に支払った売買代金及び立替金に相当する金額を返還すべき義務を負う。 【被告健勝苑の主張】本件売買契約は,いずれも公序良俗に反するものではない。 ア①優越的地位の利用したことについて被告健勝苑は,原告との間で,3か月ごとに,顧客への販売促進活動,展示会場の設営及び運営,商品管理,配送などの営業活動の業務を委託するとの業務委託契約を締結した。被告健勝苑は,同契約の受託者である原告に対して,執拗に着物等の購入を強制したことはない。 イ②原告の判断能力が低下していることを利用したことについて原告は,被 託するとの業務委託契約を締結した。被告健勝苑は,同契約の受託者である原告に対して,執拗に着物等の購入を強制したことはない。 イ②原告の判断能力が低下していることを利用したことについて原告は,被告健勝苑の外交員として,営業活動等を意欲的に行っていたのであり,原告において,判断能力や身体能力の不足はなかった。したがって,被告健勝苑は,原告の判断能力が低下したことを利用して,着物等の購入を強制したことはなかった。 ウ③原告の生活を破綻させるほどの不相当に過大な量の商品の購入を強要したことについて原告は,もともと着物が好きであり,外交員して勤務することにより,商品の価値も十分に認識していた。また,被告健勝苑は,原告の支払能力について立ち入って調査することができず,原告に対し,商品購入申請書を提出させるという自己チェックにより防衛策を講じるしかなかった。 したがって,原告と被告健勝苑との間の本件売買契約が公序良俗に反するということはない。 (2)被告健勝苑に職場環境配慮義務違反の債務不履行があるか(争点2)。 【原告の主張】被告健勝苑は,原告に対し,原告との間の雇用契約に付随して,信義則上,労働者が働きやすい職場環境を保つように配慮する義務(職場環境配慮義務)を負っている。しかしながら,被告健勝苑は,従業員に対して,使用者という優越的地位を利用して,制服着用,売上貢献等を強要したのであり,前記の職場環境配慮義務に違反した。原告は,被告健勝苑による前記義務違反により,既に支払った売買代金及び立替金に相当する金額の損害を被った。 したがって,被告健勝苑は,原告に対し,職場環境配慮義務違反の債務不履行責任に基づき,上記損害の賠償義務を負う。 【被告健勝苑の主張】原告の主張は争う。被告健勝苑は,原告に対し,制服着用,売上貢献等により,着物 告健勝苑は,原告に対し,職場環境配慮義務違反の債務不履行責任に基づき,上記損害の賠償義務を負う。 【被告健勝苑の主張】原告の主張は争う。被告健勝苑は,原告に対し,制服着用,売上貢献等により,着物等の購入を強制したことはない。 (3)被告健勝苑が原告との間で本件売買契約を締結したことが不法行為にあたるか(争点3)。 【原告の主張】ア被告健勝苑は,同被告の従業員である原告に対して,使用者という優越的地位を利用して,①制服として着物着用を義務付け,②売上に協力する ことを強要し,③同被告が販売する商品の効果を顧客に説明させるために,同商品を従業員自ら購入し,使用する必要があると述べて,原告が左膝関節の機能全廃,聴覚の障害を負うなど,判断能力が低下していることを認識しながら,着物等31点,支払総額1029万円に及ぶ本件売買契約1ないし31を締結して着物等を購入させたのであり,被告健勝苑が前記各売買契約を締結したことは,一連一体として不法行為にあたる。 原告は,前記被告健勝苑の不法行為により,既に支払った立替金に相当する1015万4000円の損害を被った(このうち,被告オリコとの立替払契約に基づいて既に支払った919万4000円について,後記4(1)の同被告の不法行為に基づく損害賠償債務と不真正連帯の関係にある。)。 イ被告健勝苑は過失相殺を主張するが,これは争う。 【被告健勝苑の主張】ア被告健勝苑は,原告に対し,着物を購入することを強制したことはなく,不法行為責任を負うことはない。 イ原告は,呉服の販売について十分な知識があり,被告健勝苑から購入を強要されたのであれば,外交員の職を辞したり,購入しないことが可能であった。しかしながら,原告は,自己の支払能力などを的確に把握することなく漫然と購入を続けた。したがって,仮に,被告健 苑から購入を強要されたのであれば,外交員の職を辞したり,購入しないことが可能であった。しかしながら,原告は,自己の支払能力などを的確に把握することなく漫然と購入を続けた。したがって,仮に,被告健勝苑が不法行為責任を負う場合でも,過失相殺をするべきであり,原告の過失割合は,50%を下らない。 原告の被告松葉に対する請求について(1)原告と被告松葉との間の本件売買契約は,一連一体として公序良俗に反して無効か(争点4)。 【原告の主張】被告松葉は,同被告の従業員である原告に対して,原告が左膝関節の機能 全廃,聴覚の障害を負うなど,判断能力が低下していることを認識しながら,使用者という優越的地位を利用して,①売上ノルマを設定し,②制服として着物着用を義務付け,原告の支払能力を超える,着物等13点,支払総額297万1312円に及ぶ本件売買契約32ないし44を締結して着物等を購入させたのであり,前記各売買契約は,一連一体として公序良俗に反し,無効である。 ア①使用者という優越的地位の利用について前記1(1)【原告の主張】ア(ア)のとおり,使用者が,その優越的な地位を利用して,従業員との間で契約を締結することは社会通念上許されない。 そして,被告松葉は,店や各従業員の売上ノルマを設定し,各従業員に対して,そのノルマの達成を求めた。また,被告松葉は,かかるノルマ達成のために,従業員の給与を,その従業員が達成した売上に応じて変動するように定めた。さらに,被告松葉は,「きずな会」という顧客を接待するパーティーにおいて,制服として着物を着用するように義務付け,原告に着物の購入を強要した。 イ②原告の判断能力が低下していることを利用したことについて前記1(1)【原告の主張】イ(ア)のとおり,適合性原則(消費者基本法5条1項3号),各種条例 に義務付け,原告に着物の購入を強要した。 イ②原告の判断能力が低下していることを利用したことについて前記1(1)【原告の主張】イ(ア)のとおり,適合性原則(消費者基本法5条1項3号),各種条例,社会通念に照らして,判断能力,抵抗能力,断る気力等が低下した高齢者等に対して,そのような状況につけ込んで,次々に商品を購入させるのは,許されない。 原告は,高齢であったこと,左膝関節機能を喪失していたにもかかわらず,立ちっぱなしで勤務していたこと,右耳が高度感音性難聴,左耳は中程度感音性難聴であり,日常会話ですら非常に注意を要し,コミュニケーションに困難を伴うことが多かったこと等により,被告松葉の営業活動において,心身とも疲弊し,判断能力が低下していた。被告松葉は,かかる原告の状況を認識した上で,着物等の購入を強要した。 ウ③原告の生活を破綻させるほどの不相当に過大な量の商品の購入を強要したことについて前記1(1)【原告の主張】ウ(ア)のとおり,消費者基本法5条1項3号,各種条例により,消費者が当面必要としない,不当に過大と思われる量の商品等を販売する内容の契約を締結してはならない。 原告は,月額14万7858円程度の遺族年金及び月額5万円ないし10万円程度の被告松葉からの給与を得ていたのに対して,被告松葉からの着物等の購入により毎月10万円以上の立替金債務を負っていた。したがって,被告松葉は,原告に対し,原告の支払能力以上の着物を購入させていたことは明らかである。 エ以上のとおり,原告と被告松葉との間の本件売買契約32ないし44は,一体として公序良俗に違反して無効であるから,被告松葉は,原告に対し,原告が既に支払った売買代金及び立替金に相当する金額を返還すべき義務を負う。 【被告松葉の主張】本件売買契約35の買主は,原告ではな として公序良俗に違反して無効であるから,被告松葉は,原告に対し,原告が既に支払った売買代金及び立替金に相当する金額を返還すべき義務を負う。 【被告松葉の主張】本件売買契約35の買主は,原告ではなく,原告の子である訴外Vである。 原告と被告松葉との間の本件売買契約は,いずれも公序良俗に反するものではない。 ア①使用者という優越的地位の利用について原告は,被告松葉との雇用関係を原告の意思に基づいて解消することが可能であった。また,原告は,被告松葉においてグループリーダーという立場にあり,被告松葉の営業にとって不可欠であった。したがって,被告松葉は,原告を使用していたが,原告よりも優越する地位にあったとはいえない。 また,原告は,グループリーダーという立場にあり,退職されると被告松葉の営業活動に支障が生じる可能性が高かった。したがって,被告松葉 は,展示販売会ごとに販売目標を設定したものの,これを達成できない従業員に対し,被告松葉を退職される危険を冒してまで,生活を破綻させるほどの商品を購入させることはしていない。 イ②原告の判断能力が低下していることを利用したことについて原告は,多数の顧客を抱え,班長として班員を取り仕切って,能動的に販売活動を行っていたのであり,十分な判断能力及び身体能力を有していた。したがって,被告松葉は,原告の判断能力が低下していることを利用して,原告に着物等の購入を強要したことはない。 ウ③原告の生活を破綻させるほどの不相当に過大な量の商品の購入を強要したことについて原告は,被告松葉で従事していた間において,合計293万8193円の収入を得ていたのに対し,被告松葉で合計292万2300円の購入をした。したがって,原告の被告松葉からの購入量は,原告の生活を破綻させるほどに不相当に過大であるとはいえない。 計293万8193円の収入を得ていたのに対し,被告松葉で合計292万2300円の購入をした。したがって,原告の被告松葉からの購入量は,原告の生活を破綻させるほどに不相当に過大であるとはいえない。 また,仮に原告が,本件売買により生活が破綻したとしても,それは,他の被告販売会社との間の売買についての立替払債務の支払のためであるところ,被告松葉は,他の被告販売会社での購入に関知しないのであり,これにより,被告松葉と原告との間の本件売買契約が公序良俗に反することはない。 (2)被告松葉に職場環境配慮義務違反の債務不履行があるか(争点5)。 【原告の主張】被告松葉は,原告に対し,原告との間の雇用契約に付随して,信義則上,労働者が働きやすい職場環境を保つように配慮する義務(職場環境配慮義務)を負っている。しかしながら,被告松葉は,従業員に対して,使用者という優越的地位を利用して,売上等のノルマの達成,制服着用を強要したのであり,前記の職場環境配慮義務に違反した。原告は,被告松葉による前記 義務違反により,既に支払った売買代金及び立替金に相当する金額の損害を被った。したがって,被告松葉は,原告に対し,職場環境配慮義務違反の債務不履行責任に基づき,上記損害の賠償義務を負う。 【被告松葉の主張】原告の主張は争う。被告松葉は,原告を含む従業員に対して,売上ノルマの達成等を強要するなどして,被告松葉から着物等を購入することを強制したことはない。 (3)被告松葉が原告との間で本件売買契約を締結したことが不法行為にあたるか(争点6)。 【原告の主張】被告松葉は,同被告の従業員である原告に対して,原告が左膝関節の機能全廃,聴覚の障害を負うなど,判断能力が低下していることを認識しながら,使用者という優越的地位を利用して,①売上ノルマを設定し,②制服と 松葉は,同被告の従業員である原告に対して,原告が左膝関節の機能全廃,聴覚の障害を負うなど,判断能力が低下していることを認識しながら,使用者という優越的地位を利用して,①売上ノルマを設定し,②制服として着物着用を義務付け,着物等13点,支払総額297万1312円に及ぶ本件売買契約32ないし44を締結して着物等を購入させたのであり,被告松葉が前記各売買契約を締結したことは,一連一体として不法行為にあたる。 原告は,被告松葉の前記不法行為により,既に支払った売買代金及び立替金に相当する206万6472円の損害を被った(このうち,被告ニコスとの間の立替払契約に基いて既に支払った38万7700円について,後記4(1)の同被告の不法行為に基づく損害賠償債務と,被告クオークとの間の立替払契約に基づいて既に支払った16万7200円について,後記4(1)の同被告の不法行為に基づく損害賠償債務と,被告オリコとの間の立替払契約に基づいて既に支払った51万8672円について,後記4(1)の同被告の不法行為に基づく損害賠償債務と,それぞれ不真正連帯の関係にある。)。 【被告松葉の主張】原告の主張は争う。被告松葉は,原告に対し,売上等のノルマの達成を強 要するなどして,被告松葉から着物を購入することを強制したことはない。 原告の被告ニッセンに対する請求について(1)原告と被告ニッセンとの間の本件売買契約は,一連一体として公序良俗に反して無効か(争点7)。 【原告の主張】被告ニッセンは,同被告の従業員である原告に対して,原告が左膝関節の機能全廃,聴覚の障害を負うなど,判断能力が低下していることを認識しながら,使用者という優越的地位を利用して,①売上に協力するように強要し,また②被告ニッセンが主催するパーティー等に被告ニッセンの商品を着用するように強要し など,判断能力が低下していることを認識しながら,使用者という優越的地位を利用して,①売上に協力するように強要し,また②被告ニッセンが主催するパーティー等に被告ニッセンの商品を着用するように強要して,着物等6点,支払総額238万3455円に及ぶ本件売買契約45ないし50を締結して着物等を購入させたのであり,上記各売買契約は,一連一体として公序良俗に反し,無効である。 ア①使用者という優越的地位の利用について前記1(1)【原告の主張】ア(ア)のとおり,使用者が,その優越的な地位を利用して,従業員との間で契約を締結することは社会通念上許されない。 そして,被告ニッセンは,店長,班長,他のスタッフ等数人で原告を取り囲んで,原告が購入すると言うまで執拗に購入を勧めたほか,売上が足りないと言ったり,表彰式やパーティーに着用するために着物を購入させた。 イ②原告の判断能力が低下していることを利用したことについて前記1(1)【原告の主張】イ(ア)のとおり,適合性原則(消費者基本法5条1項3号),各種条例,社会通念に照らして,判断能力,抵抗能力,断る気力等が低下した高齢者等に対して,そのような状況につけ込んで,次々に商品を購入させるのは,許されない。 被告ニッセンは,原告が高齢であり,左膝関節機能を喪失し立ちっぱなしであったこと,右耳が高度感音性難聴,左耳は中程度感音性難聴であり, 日常会話ですら非常に注意を要し,コミュニケーションに困難を伴うことが多く,被告ニッセンの営業活動において,心身とも疲弊し,判断能力が低下していたことを認識した上で,着物等の購入を強要した。 ウ③原告の生活を破綻させるほどの不相当に過大な量の商品の購入を強要したことについて前記1(1)【原告の主張】ウ(ア)のとおり,消費者基本法5条1項3号,各種条例により,消費者 購入を強要した。 ウ③原告の生活を破綻させるほどの不相当に過大な量の商品の購入を強要したことについて前記1(1)【原告の主張】ウ(ア)のとおり,消費者基本法5条1項3号,各種条例により,消費者が当面必要としない,不当に過大と思われる量の商品等を販売する内容の契約を締結させてはならない。 原告は,月額14万7858円程度の遺族年金と月額10万円を下回ることがあった被告ニッセンから支給される給与を得ていたのに対して,被告ニッセンからの着物等の購入により,毎月10万円以上の立替金債務を負っていた。したがって,被告ニッセンは,原告に対し,原告の支払能力以上の着物を購入させていたことは明らかである。 エ以上のとおり,原告と被告ニッセンとの間の本件売買契約45ないし50は,一体として公序良俗に違反して無効であるから,被告ニッセンは,原告に対し,原告が既に支払った立替金に相当する金額を返還すべき義務を負う。 【被告ニッセンの主張】本件売買契約は,いずれも公序良俗に反するものではない。 ア①使用者という優越的地位の利用について被告ニッセンは,原告に対し,執拗に商品の購入を強要したり,スタッフ数人で囲い込んで長時間購入の要求をしたことはない。また,被告ニッセンは,原告に対し,着物パーティー等のイベントに従業員が出席するのにかこつけて着物等の購入を強要したことはない。 むしろ,原告は,被告ニッセンが原告に対し着物等の購入を求めるまでもなく,積極的に同被告のパーティーに着用するために着物を購入し,ま た,同被告のスタッフに対して,同被告のパーティーに出席するのであれば同被告の着物を着用しなければならない旨を発言していた。 イ②原告の判断能力が低下していることを利用したことについて原告は,出勤率が高く,被告ニッセンのパート従業員数名で構成される するのであれば同被告の着物を着用しなければならない旨を発言していた。 イ②原告の判断能力が低下していることを利用したことについて原告は,出勤率が高く,被告ニッセンのパート従業員数名で構成される班を指揮する班長として勤務していたこと,展示販売会に,他のパート従業員よりも飛び抜けて多くの客を勧誘していたこと,平成17年において,全国のパート従業員500名弱の中で,上位21位との好成績を収めたことから,被告ニッセンにおいて大変に優秀なパート従業員であった。したがって,原告において,判断不足や抵抗能力の低下などは認められない。 ウ③原告の生活を破綻させるほどの不相当に過大な量の商品の購入を強要したことについて被告ニッセンは,原告が被告健勝苑及び被告松葉から着物等を具体的にどの程度購入したのかは把握していなかった。したがって,仮に原告が生活を破綻させるほどの立替金債務を負っていたとしても,被告ニッセンは,かかる状況を認識していなかった。 (2)被告ニッセンに職場環境配慮義務違反の債務不履行があるか(争点8)。 【原告の主張】被告ニッセンは,原告に対し,原告との間の雇用契約に付随して,信義則上,労働者が働きやすい職場環境を保つように配慮する義務(職場環境配慮義務)を負っている。しかしながら,被告ニッセンは,従業員に対して,使用者という優越的地位を利用して,制服着用,売上貢献等を強要したのであり,前記の職場環境配慮義務に違反した。原告は,被告ニッセンによる前記義務違反により,既に支払った売買代金及び立替金に相当する金額の損害を被った。したがって,被告ニッセンは,原告に対し,職場環境配慮義務違反の債務不履行責任に基づき,上記損害の賠償義務を負う。 【被告ニッセンの主張】 原告の主張は争う。被告ニッセンは,原告に対して,被告ニッセンの着物 告ニッセンは,原告に対し,職場環境配慮義務違反の債務不履行責任に基づき,上記損害の賠償義務を負う。 【被告ニッセンの主張】 原告の主張は争う。被告ニッセンは,原告に対して,被告ニッセンの着物等を購入するように強要したことはない。 (3)被告ニッセンが原告との間で本件売買契約を締結したことが不法行為にあたるか(争点9)。 【原告の主張】被告ニッセンは,同被告の従業員である原告に対して,原告が左膝関節の機能全廃,聴覚の障害を負うなど,判断能力が低下していることを認識しながら,使用者という優越的地位を利用して,①売上に協力するように強要し,また②被告ニッセンが主催するパーティー等に被告ニッセンの商品を着用するように強要して,着物等6点,支払総額238万3455円に及ぶ本件売買契約45ないし50を締結して着物等を購入させたのであり,上記各売買契約は,一連一体として不法行為にあたる。 原告は,被告ニッセンの前記不法行為により,既に支払った立替金に相当する93万7055円の損害を被った(このうち,被告セントラルとの間の立替払契約に基づいて既に支払った78万1715円について,後記4(1)の同被告の不法行為に基づく損害賠償債務と,被告ジャックスとの間の立替払契約に基づいて既に支払った15万5340円について,後記4(1)の同被告の不法行為に基づく損害賠償債務と,それぞれ不真正連帯の関係にある。)。 【被告ニッセンの主張】原告の主張は争う。被告ニッセンは,原告に対し,着物を購入することを強制したことはない。 原告の被告信販会社に対する請求について(1)被告信販会社は不法行為責任を負うか(争点10)。 【原告の主張】被告信販会社は,原告に対し,加盟店である被告販売会社が違法,不当な行為を行わないように,継続的に加盟店が取り扱う商品,販売態 (1)被告信販会社は不法行為責任を負うか(争点10)。 【原告の主張】被告信販会社は,原告に対し,加盟店である被告販売会社が違法,不当な行為を行わないように,継続的に加盟店が取り扱う商品,販売態様,信用状 況等を把握・管理し,不適切な実態がある場合には是正を求め,悪質な加盟店に対しては与信を行わない義務(以下「加盟店管理義務」という。)及び与信の実行にあたり,消費者の支払能力,それまでの与信の総額等を調査し,返済能力を超える与信を行わないようにする義務(以下「過剰与信防止義務」といい,加盟店管理義務と併せて「不適正与信防止義務」という。)を負っていた。 被告信販会社は,被告販売会社が前記1(3),2(3),3(3)のとおりの不適切な販売方法をしていることを認識しながら,または,認識することができる立場にありながら,不適正与信防止義務を怠って与信を行うことにより,被告販売会社の違法行為を援助,助長,促進した。したがって,被告信販会社は,原告に対し,被告販売会社と連帯して,不法行為責任を負う。 ア加盟店管理義務(ア)被告信販会社は,消費者に損害を与えるような被告信販会社と加盟店契約を締結して,加盟店を増やし,自己の利益を増やしている。したがって,被告信販会社は,被告販売会社の違法行為により生じた損失も,受け入れるべきである。この問題意識を受けて,経済産業省(通商産業省)が昭和50年代から数次にわたって不適正与信をしない旨の行政指導を繰り返し,不適正与信について指摘した近時裁判例も存する。かかる状況下において,被告信販会社は,原告に対し,準委任契約(原告が被告信販会社に対し商品の売買代金の立て替えを委任するというもの)である本件各立替払契約における善管注意義務又はそれに信義則上付随して発生する義務の一内容として,加盟店管理義務 ,準委任契約(原告が被告信販会社に対し商品の売買代金の立て替えを委任するというもの)である本件各立替払契約における善管注意義務又はそれに信義則上付随して発生する義務の一内容として,加盟店管理義務を負う。 (イ)そして,被告信販会社は,加盟店との間における加盟店契約締結後において,以下の内容の加盟店管理義務を負っていた。 a被告信販会社は,被告販売会社との間の加盟店契約の締結後において,被告販売会社が取り扱う商品及び役務の内容並びに販売方法等を 十分に調査し,把握しなければならなかった。そして,被告信販会社が被告販売会社に対して行うべき調査の具体的内容は,以下のとおりである。 ①被告販売会社が過量販売などの違法な行為を行っていないか,販売,勧誘マニュアル等を取り寄せて確認すること。 ②購入者等や消費者センターなどから被告販売会社に対する苦情,相談等を受けたときは,その内容等について十分な調査,分析を行い,その結果を被告販売会社の審査,管理に反映させること。 ③被告販売会社に関し,割賦購入あっせんに係る契約件数と比した解約件数や抗弁の申立等が通常よりも高い場合等には,購入者の協力が得られる範囲内で契約締結に至った経緯等を購入者に確認する等,実態調査をすること。 ④被告販売会社による商品,役務の効能,効果に係る説明等について苦情,相談を受けたときは,合理的根拠があるか被告販売会社に確認する等の把握をすること。 ⑤名義貸し等のトラブルを防ぐために購入者等の契約申込意思の確認を徹底するとともに,被告販売会社に対して名義貸し等を行わせないよう徹底すること。 ⑥被告販売会社が交付するクレジット書面について,必要書類が正しく記載されているか指導すること。 ⑦販売されている商品等の代金について,その水準が他の同種の商品等の代金と比 いよう徹底すること。 ⑥被告販売会社が交付するクレジット書面について,必要書類が正しく記載されているか指導すること。 ⑦販売されている商品等の代金について,その水準が他の同種の商品等の代金と比較して,適正な範囲内にあるかを把握すること。 ⑧その他の行政指導により定められた事項を遵守しているか被告販売会社に対する調査を行うこと。 b被告信販会社は,被告販売会社が過量販売等の公序良俗違反ないし不法行為となるような不適切な行為を行っていることを知っていた場 合,原告との間で立替払契約を締結して与信を行うことは許されず,加盟店に対する勧告,加盟店契約の解除等の方策を講じる義務がある。 また,被告信販会社は,被告販売会社の公序良俗違反ないし不法行為になるような不適切な行為を行っていることを知らなかった場合でも,被告販売会社の展示販売会場で被告信販会社の従業員を常駐させていた場合など,被告販売会社の不適切な行為を容易に知ることができた場合は,与信を行って不適切な行為を助長,促進,援助したことについて,重過失があると評価できるから,不適切な行為を知りながら与信が行われた場合と同視できる。 被告信販会社は,被告販売会社の展示販売会場に従業員を派遣していたこと,消費者センターや顧客からの苦情が相次いでいたことから,被告販売会社による過量販売等の公序良俗違反ないし不法行為になるような不適切な行為を行っていることを知っていたのであり,原告との間で立替払契約を締結して与信を行うことは不法行為に当たる。 イ過剰与信防止義務(ア)消費者は,クレジット制度を利用すれば,代金相当額を持ち合わせていなくても,高額な商品を購入することができ,過剰な与信がなされる構造にある。そして,クレジット制度の本質は,企業与信にあるのであるから,過剰与信による損失は, 利用すれば,代金相当額を持ち合わせていなくても,高額な商品を購入することができ,過剰な与信がなされる構造にある。そして,クレジット制度の本質は,企業与信にあるのであるから,過剰与信による損失は,消費者に負わすことは許されない。 これを受けて,割賦販売法38条は,信用情報機関の利用等により得た正確な信用情報等に基づき,購入者の支払能力を超える与信を行わないように努めなければならないとして,審査の方法も具体的に示して,過剰与信の防止を信販会社の義務としている。また,経済産業省の行政指導や各地の消費者保護条例も,過剰与信を禁じている。 そこで,被告信販会社は,原告に対し,立替払契約における善管注意義務及びそれに信義則上付随する義務の一内容として,過剰与信防止義 務を負う。 (イ)被告信販会社は,過剰与信防止義務として,立替払契約の契約書,申込書の記載により,購入者の収入等を把握して信用情報機関である訴外株式会社シー・アイ・シーに必ず照会を行うなどの義務を負うほか,照会によって得られた登録情報と本人から得られた収入に関する情報に基づき,与信を行うことにより支払能力を超えることがないか慎重に検討する義務を負う。そして,過剰与信防止義務として違法となる場合は,民事執行法152条1項2号が原則として給料の4分の3に相当する金額を差し押さえることを禁止していること,貸金業の規制等に関する法律が既存の債務残高と新たな貸付による債務残高が年収の3分の1を超えることになる貸付を禁止していること,日本弁護士連合会が立替金等債務に対する年間支払額が手取り年収額の30%を超える与信を禁止すべき旨指摘していることを参考に,既存債務を含めた支払額が収入の25%ないし30%を超えることになる与信や,総債務が年収の3分の1を超えることになる与信は,過剰与信とし の30%を超える与信を禁止すべき旨指摘していることを参考に,既存債務を含めた支払額が収入の25%ないし30%を超えることになる与信や,総債務が年収の3分の1を超えることになる与信は,過剰与信として許されない。 ウ各被告信販会社の不適正与信防止義務の懈怠について(ア)被告オリコについてa加盟店管理義務違反被告オリコは,被告健勝苑との間で,同被告の展示販売会の入店証となる「健勝苑オリコカード」を作成し,被告健勝苑の展示会場に従業員を派遣するなどして,強い提携関係にあったほか,多くの消費者センターから被告健勝苑の販売方法に対する苦情について通報を受けていた。 また,被告オリコは,被告松葉の展示会場に従業員を派遣していたほか,多くの消費者センターから被告松葉の販売方法についての通報を受けていた。 したがって,被告オリコは,原告のような従業員が,被告健勝苑及び被告松葉から,同被告らの商品を購入させられていたことを知っていたか,仮に知らなかったとしても,容易に知ることができた。それにもかかわらず,被告オリコは,原告との間で,被告健勝苑との本件売買契約について,本件立替払契約1,3ないし5,7,9ないし11,14,15,17ないし21,23ないし31を,被告松葉との本件売買契約について,本件立替払契約36,39,42,44をそれぞれ締結して与信を行い,加盟店管理義務を懈怠したのであり,不法行為責任を負う。 b過剰与信防止義務違反被告オリコは,上記の立替払契約における与信審査において,原告の経済状況について詳細な事情聴取,資料の収集をしなかった。そして,被告オリコは,原告が被告健勝苑から月額2万円から月額10万円超程度の給与を受け取っていたに過ぎなかったところ,月5万円以上の立替払債務を負うような与信をしたのであり,明らかに過 なかった。そして,被告オリコは,原告が被告健勝苑から月額2万円から月額10万円超程度の給与を受け取っていたに過ぎなかったところ,月5万円以上の立替払債務を負うような与信をしたのであり,明らかに過剰である。したがって,被告オリコは,過剰与信防止義務を懈怠し,不法行為責任を負う。 c損害原告は,別紙1「クレジット支払一覧」のとおり,被告オリコに対して,既に919万4000円の立替金を支払っており,被告オリコの不法行為により同額の損害を被った。 (イ)被告ニコス及び被告クオークについてa加盟店管理義務違反被告ニコス及び被告クオークは,被告松葉の展示販売会場に従業員を派遣していたほか,消費者センターから被告松葉の販売方法に対する苦情について通報を受けていたのであり,被告松葉が違法な販売方 法を取っていることを知っていたか,仮に知らなくても容易に知ることができた。 それにもかかわらず,被告ニコスは,本件立替払契約33及び35を,被告クオークは,本件立替払契約34をそれぞれ締結して与信を行い,加盟店管理義務を懈怠したのであり,前記被告らは,原告に対し,不法行為責任を負う。 b過剰与信防止義務違反被告ニコスは,原告との間で立替払契約を締結する際,原告に対し,支払能力について,詳細な聞き取りをしておらず,資料の提出を求めなかった。そして,被告ニコスの与信は,既に原告が被告オリコに対して月額10万3600円の立替金債務を負っていた時点で行われており,収入の25%ないし30%を超えるような支払を要する状態での与信であって過剰与信である。したがって,被告ニコスは,過剰与信防止義務を懈怠したのであり,不法行為責任を負う。 被告クオークは,原告との間で立替払契約を締結する際,原告に対し,支払能力について,詳細な聞き取りをしておらず,資料の がって,被告ニコスは,過剰与信防止義務を懈怠したのであり,不法行為責任を負う。 被告クオークは,原告との間で立替払契約を締結する際,原告に対し,支払能力について,詳細な聞き取りをしておらず,資料の提出を求めなかった。そして,被告クオークの与信は,既に原告が被告オリコに対して月額7万2600円の立替金債務,被告クレディセゾンに対して月額4万0164円の支払債務を負っていた時点で行われており,過剰与信である。したがって,被告クオークは,過剰与信防止義務を懈怠したのであり,不法行為責任を負う。 c損害原告は,別紙1「クレジット支払一覧」のとおり,被告ニコスに対し,既に38万7700円の立替金を支払っており,同被告の不法行為により同額の損害を被った。 また,原告は,別紙1「クレジット支払一覧」のとおり,被告クオ ークに対し,既に16万7200円の立替金を支払っており,同被告の不法行為により同額の損害を被った。 (ウ)被告セントラル及び被告ジャックスについてa加盟店管理義務違反被告セントラル及び被告ジャックスは,被告ニッセンの展示販売会場に従業員を派遣していたほか,消費者センターから被告ニッセンの販売方法に対する苦情について通報を受けていたのであり,被告ニッセンが違法な販売方法を取っていることを知っていたか,仮に知らなくても容易に知ることができた。 それにもかかわらず,被告セントラルは,原告との間で本件立替払契約45,46,48ないし50をそれぞれ締結して与信を行い,被告ジャックスは,本件立替払契約47を締結して与信を行い,加盟店管理義務を懈怠したのであり,原告に対し,不法行為責任を負う。 b過剰与信防止義務違反被告セントラルは,原告との間の立替払契約を締結する際,原告に対し,支払能力について,詳細な聞き取りをしておらず,資料 務を懈怠したのであり,原告に対し,不法行為責任を負う。 b過剰与信防止義務違反被告セントラルは,原告との間の立替払契約を締結する際,原告に対し,支払能力について,詳細な聞き取りをしておらず,資料の提出を求めなかった。そして,被告セントラルの与信は,既に原告が多額の立替金債務を負っていた時点で行われており,過剰与信である。したがって,被告セントラルは,過剰与信防止義務を懈怠したのであり,不法行為責任を負う。 被告ジャックスは,原告との間の立替払契約を締結する際,原告に対し,支払能力について,詳細な聞き取りをしておらず,資料の提出を求めなかった。そして,被告ジャックスの与信は,既に原告が被告オリコに対し9万2296円,訴外クレディセゾンに対し4万3692円,訴外プランネルに対し1万2440円,被告ニコスに対して1万0300円,被告クオークに対し1万6300円,被告セントラル に対し1万3000円の合計18万8028円の支払債務を負っていた時点で行われており,かかる状況下で与信を行うことは過剰与信に当たる。したがって,被告ジャックスは,過剰与信防止義務を懈怠したのであり,不法行為責任を負う。 c損害原告は,別紙1「クレジット支払一覧」のとおり,被告セントラルに対し,既に78万1715円の立替金を支払っており,同被告の不法行為により同額の損害を被った。 原告は,別紙1「クレジット支払一覧」のとおり,被告ジャックスに対し,既に15万5340円の立替金を支払っており,同被告の不法行為により同額の損害を被った。 【被告信販会社の主張】ア加盟店管理義務について本件立替払契約において被告信販会社が行う準委任事務の本旨は,加盟店に対して立替払いをすることに尽き,被告信販会社が同契約に基づいて原告に対して負っている善管注意義務もその範囲に 店管理義務について本件立替払契約において被告信販会社が行う準委任事務の本旨は,加盟店に対して立替払いをすることに尽き,被告信販会社が同契約に基づいて原告に対して負っている善管注意義務もその範囲に限定される。また,信義則も本件立替払契約に基づく立替払いの履行についてのみに及ぶものであり,それを超えて広く契約一般の適否に及ぶものではない。さらに,被告信販会社と加盟店は別個の法主体であるところ,被告信販会社は,加盟店を規律する何らの法的権限を有しない。したがって,被告信販会社は,原告に対し,加盟店管理義務を負わない。 また,被告販売会社は,原告との間の本件売買において,不適切な販売方法を取っていなかった。 イ過剰与信防止義務について本件立替払契約において被告信販会社が行う準委任事務の本旨は,加盟店に対して立替払いをすることに尽き,被告信販会社が顧客に対して負っ ている善管注意義務もその範囲に限定される。また,信義則も本件立替払契約に基づく立替払いの履行についてのみに及ぶものであり,それを超えて広く契約一般の適否に及ぶものではない。したがって,被告信販会社は,原告に対し,過剰与信防止義務を負わない。また,割賦販売法38条や消費生活条例は,罰則の適用がない訓示規定であり,また行政指導も私法上の契約の効力に影響はない。したがって,被告信販会社は,原告に対して,過剰与信防止義務を負わない。 【被告オリコの主張】原告は,被告オリコが加盟店管理義務及び過剰与信防止義務を負うと主張するが,各義務の内容が不明確であり,結果責任を認めるに等しいものである。 被告オリコは,顧客から立替払契約の申し込みがあれば,申込書に記載された顧客の職業,収入,資産状況,従前の被告オリコや他の信販会社との間の立替払契約の締結及び債務の履行状況を確認して与信を行って 。 被告オリコは,顧客から立替払契約の申し込みがあれば,申込書に記載された顧客の職業,収入,資産状況,従前の被告オリコや他の信販会社との間の立替払契約の締結及び債務の履行状況を確認して与信を行っている。原告は,売主の従業員という立場であったため,通常の顧客よりは計画的な返済ができることが想定され,また,返済に関する実績も問題がなかった。被告オリコは,これらの事情を考慮して与信を行った。 したがって,被告オリコに過剰与信防止義務違反はない。 【被告ニコスの主張】被告ニコスは,本件立替払契約35を原告の子である訴外Vと締結したのであり原告に損害は生じていない。 ア加盟店管理義務について被告ニコスの従業員は,被告松葉の展示販売会場に臨場していたが,このときに被告ニコスの窓口に判断能力の乏しいと思われる顧客が来たことはなかった。また,原告は,加盟店の従業員という立場で本件売買契約及び本件立替払契約を締結して契約の内容を熟知していた上,本件立替払契 約締結後における被告ニコスからの契約意思の確認において何らのクレームを述べなかったのであり,被告松葉に強引な販売があったことは知ることができなかった。 したがって,被告ニコスには加盟店管理義務の懈怠はなかった。 イ過剰与信防止義務について被告ニコスは,原告が被告松葉の従業員として申し込みに来たこと,与信額が49万8000円と比較的小さいこと,原告に過去に延滞歴が全くなかったことから,本件立替払契約33を締結したのであり,過剰な与信に当たらないことは明白である。 また,被告ニコスは,本件立替払契約35については,訴外Vについて与信審査を行ったが,与信額が17万6400円と少額であることや,過去に延滞歴がなかったことから,同契約を締結した。 したがって,被告ニコスに過剰与信防止義務の懈怠はなかっ については,訴外Vについて与信審査を行ったが,与信額が17万6400円と少額であることや,過去に延滞歴がなかったことから,同契約を締結した。 したがって,被告ニコスに過剰与信防止義務の懈怠はなかった。 【被告クオークの主張】ア加盟店管理義務について被告クオークは,加盟店契約時に加盟店のパンフレット等加盟店の業種,商品の内容等を示す資料の提示を求めて加盟店の販売状況の把握を行い,加盟店契約後も定期的に取引金額やクレーム内容等の取引状況を調査した上で加盟店取引の継続の可否を判断していた。 したがって,被告クオークに加盟店管理義務の懈怠はない。 イ過剰与信防止義務について被告クオークは,原告の与信審査の際に,訴外株式会社シー・アイ・シーに対する照会を行っており,照会によって得られた情報に基づいて原告の借入の総額,返済状況,資産状況等複数の要素を検討した上で与信判断を行った。 したがって,被告クオークに過剰与信防止義務の懈怠はない。 【被告セントラルの主張】ア加盟店管理義務について被告セントラルは,顧客からのクレームが多い加盟店,商品価格が不適切な加盟店及び構造的に連鎖販売を行っていることが明らかな加盟店について,加盟店,顧客及び消費者センターからのヒアリングを考慮して,適宜加盟店契約を解除するなどして,消費者保護の実現に努力している。 本件では,被告セントラルからの意思確認の際に原告から本件売買契約についてクレームはなかったこと,原告が被告ニッセンの従業員であって十分に本件売買契約,本件立替払契約の内容を熟知していたことからすると,被告セントラルにおいて加盟店管理義務違反はない。 イ過剰与信防止義務について被告セントラルは,①原告の従前の取引状況,②勤務先,③家族関係,収入関係等を総合的に判断して,取引上問題のないものとして 告セントラルにおいて加盟店管理義務違反はない。 イ過剰与信防止義務について被告セントラルは,①原告の従前の取引状況,②勤務先,③家族関係,収入関係等を総合的に判断して,取引上問題のないものとして与信を行った。 したがって,被告セントラルには過剰与信防止義務の懈怠はなかった。 【被告ジャックスの主張】ア加盟店管理義務について被告ジャックスは,顧客からのクレームが多い加盟店について,加盟店,顧客,消費者センターからのヒアリングを考慮して,適宜加盟店契約を解除するなどして,消費者保護の実現に努力している。また,本件で,原告は,被告ジャックスからの契約意思確認の際に,何らのクレームを主張せず,しかも被告ニッセンの従業員の立場で本件売買契約及び本件立替払契約を締結しており,契約内容を十分に熟知して締結していたと考えられる。 したがって,被告ジャックスには加盟店管理義務違反はない。 イ過剰与信防止義務について被告ジャックスは,①原告にこれまで遅滞履歴がないこと,②昭和10 年生まれで一定の貯蓄を有していることが想定できたこと,③被告ニッセンの従業員であり一定の収入があること,④被告ニッセンの従業員であり売買契約に取引上の問題を想定できないことから与信を行った。そして,本件売買における目的物は,着物という嗜好品であることからすると,被告ジャックスの与信判断に何ら不当な点はない。 したがって,被告ジャックスには過剰与信防止義務はない。 (2)本件立替払契約は公序良俗に違反するか(争点11)。 【原告の主張】被告信販会社は,前記(1)のとおり,不適正与信防止義務(加盟店管理義務,過剰与信防止義務)に違反したのであり,原告と被告信販会社との間の本件立替払契約は,公序良俗に違反して,無効である。したがって,被告信販会社は,以下の不当利得返還債務 与信防止義務(加盟店管理義務,過剰与信防止義務)に違反したのであり,原告と被告信販会社との間の本件立替払契約は,公序良俗に違反して,無効である。したがって,被告信販会社は,以下の不当利得返還債務を負い,また原告は被告信販会社に対して以下の債務を負わない。 ア被告オリコは,原告が既に支払った本件立替金971万2672円を返還する義務があり,また,原告と被告オリコとの間の本件立替金契約29ないし31,36,39,42,44に基づく原告の被告オリコに対する残債務は存在しない。 イ被告ニコスは,原告が既に支払った本件立替金38万7700円を返還する義務があり,また,原告と被告ニコスとの間の本件立替金契約33に基づく原告の被告ニコスに対する残債務は存在しない。 ウ被告クオークは,原告が既に支払った本件立替金16万7200円を返還する義務があり,また,原告と被告クオークとの間の本件立替金契約34に基づく残債務は存在しない。 エ被告セントラルは,原告が既に支払った本件立替金78万1715円を返還する義務があり,また,原告と被告セントラルとの間の本件立替金契約45,46,48ないし50に基づく残債務は存在しない。 オ被告ジャックスは,原告が既に支払った本件立替金15万5340円を返還する義務があり,また,原告と被告ジャックスとの間の本件立替金契約47に基づく原告の被告ジャックスに対する残債務は存在しない。 【被告信販会社の主張】被告信販会社は,前記(1)のとおり,不適正与信防止義務(加盟店管理義務,過剰与信防止義務)を負わない。また,被告信販会社は,かかる義務を負っていたとしても,その義務違反はない。 (3)本件売買契約が公序良俗に反して無効であることを被告信販会社に対抗することができるか(争点12)。 【原告の主張】ア原告は,被 社は,かかる義務を負っていたとしても,その義務違反はない。 (3)本件売買契約が公序良俗に反して無効であることを被告信販会社に対抗することができるか(争点12)。 【原告の主張】ア原告は,被告信販会社から本件立替金の支払の請求を受けたときは,被告販売会社との間の本件各売買契約が前記1(1)のとおり公序良俗に違反して無効であることをもって対抗することができる(割賦販売法30条の4)。 本件各売買が,事業者がその従業者に対して行う割賦販売にあたるとしても,被告販売会社が自社の商品を販売する目的でパート従業員を雇用しており,被告信販会社が加盟店管理義務及び過剰与信防止義務を履行しなかったとの本件具体的事情を考慮すると,団体内部の自治を尊重するという適用除外規定(同法30条の6,8条5号)の趣旨に妥当しないから,本件において前記適用除外規定の適用はない。 イまた,本件において,割賦販売法30条の4の適用による抗弁権の接続が認められないとしても,割賦販売あっせん業者において販売業者の不履行に至るべき事情を知り又は知りうべきでありながら立替払いを実行したなどの,不履行の結果を割賦販売あっせん業者に帰せしめることを信義則上相当とする特段の事情があるときは,信義則上の抗弁権の対抗が認められる。 被告信販会社は,展示販売会場に従業員を派遣し,被告販売会社の不当販売,過量販売の実情を知り又は知りうべきでありながら,立替払契約を締結し,加盟店管理義務及び過剰与信防止義務を履行しなかったのであるから,前記特段の事情が存在し,信義則上,抗弁権の接続が認められる。 ウしたがって,原告は,被告オリコとの間の本件立替払契約29ないし31,36,39,42,44,被告ニコスとの間の本件立替払契約33,被告クオークとの間の本件立替払契約34,被告セントラ られる。 ウしたがって,原告は,被告オリコとの間の本件立替払契約29ないし31,36,39,42,44,被告ニコスとの間の本件立替払契約33,被告クオークとの間の本件立替払契約34,被告セントラルとの間の本件立替払契約45,46,48ないし50,被告ジャックスとの間の本件立替払契約47に基づく各債務の履行を同被告らから請求された場合には,原告と被告販売会社との間の本件売買契約が公序良俗に反して無効であることをもって被告信販会社に対抗することができる。 【被告信販会社の主張】本件売買契約には,公序良俗に反するなどの事情はなく,無効であるとはいえない。 また,原告は,被告販売会社の従業員であったのであり,割賦販売法30条の6,同法8条5号により,同法30条の4の適用はない。また,同法は,創設的に抗弁権の接続を規定しており,信義則を持ち出して適用範囲を広げるべきでない。 したがって,原告は,被告信販会社から本件立替払契約に基づく残債務の履行請求を受けたときに,原告と被告販売会社との間の本件売買契約が公序良俗に反して無効であることをもって対抗することはできない。 第5当裁判所の判断 認定事実前記争いのない事実等,証拠(甲1ないし5,27,29,31,33ないし36ないし47〔枝番を含む。以下同じ。〕,55,乙A1ないし17,乙B1ないし23,乙C1ないし10,乙1ないし4,乙E1,2,乙F1,乙 G1ないし5,乙H2,証人P(以下「P」という。),同Q(以下「Q」という。),同R(以下「R」という。),同S,同T(以下「T」という。),同U(以下「U」という。),原告本人〔ただし,乙B21ないし23,証人P,同Q,同Rについてはいずれも措信できない部分を除く。〕)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これを覆すに足りる 同U(以下「U」という。),原告本人〔ただし,乙B21ないし23,証人P,同Q,同Rについてはいずれも措信できない部分を除く。〕)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 (1)ア原告は,昭和10年11月5日生まれであり,25歳ころに結婚後,夫が経営する表具屋の手伝い,昭和62年ころから平成7年当時は,訴外平和生命保険株式会社に勤務しながら,主婦をしていた(甲42,乙D3)。 原告は,平成6年,夫を亡くし,遺族年金を受給しながら,平成9年ころから,子である訴外Vの義父が所有する土地上のアパートに,家賃及び共益費として月額2万1000円を支払って居住していた(甲40,42)。 イ原告は,平成4年,左変形性膝関節症による左膝関節の機能全廃で身体障害者等級表による4級の認定を受け,立つことや椅子に座ることはできたが,正座をすることはできなかった(甲29,42,原告)。 また,原告は,平成13年ころから,難聴による治療を受け,平成18年10月16日には,右高度感音性難聴,左中程度難聴となり,日常会話において非常に注意を要した(甲31)。もっとも,原告は,被告ニッセンに勤務していた平成17年ころには,日常業務における会話では特に支障はなかった(乙C1,証人T,同U)。 (2)ア被告健勝苑は,呉服等の販売を業とする株式会社であり,平成9年から平成12年まで,Qが同被告難波店の店長であり,平成14年9月から平成17年ころまで,Pが同店を統括する地区長であった。 原告は,夫,義父母らの介護を終え,習い事を始めようと思っていたところ,平成9年4月ころ,被告健勝苑のパンフレットが自宅に投函されたことから,同被告の無料着付教室に参加した。同所において,同被告難波 店のQ店長から,同被告の展示会で働くよう勧誘され, いたところ,平成9年4月ころ,被告健勝苑のパンフレットが自宅に投函されたことから,同被告の無料着付教室に参加した。同所において,同被告難波 店のQ店長から,同被告の展示会で働くよう勧誘され,原告は,これに応じ,そのころから,同被告で「外交員」として勤務するようになった(甲42,証人Q)。外交員とは,被告健勝苑から営業活動を委託され,同被告から一定額の基本契約料を受領する者のことをいい,かかる業務委託契約は3か月毎に締結された(乙B19の1ないし9)。 原告は,被告健勝苑において,複数の外交員で構成される班を取り仕切る班長として勤務した(平成16年2月19日付け売上伝票には,「原告名を冠する班名」と記載されている〔乙B18の1,2〕)。 イ被告健勝苑は,月2回,5日間にわたって展示販売会を実施し,店,班,個人の売上目標を設定し,展示販売会における打ち合わせにおいて,原告を含む班長に対し,その販売目標を伝えていた(甲42,証人P,同Q)。 被告健勝苑は,原告を含む外交員に対して,制服として着物の着用を義務付けることはしなかったが,半数程度の外交員などのスタッフが,勤務中において着物を着用していた(証人Q)。原告は,被告健勝苑の展示販売会や日常勤務において着物を着用していた(乙B22,23)。 原告は,別紙2のとおり,1か月2万4000円から10万円程度の基本契約料のほか,売上手数料等を受領しており,この受領額は,原告が営業活動によって上げる売上の多寡により異なった(甲42,乙B19)。 ウ原告は,別紙1「クレジット支払一覧」のとおり,被告健勝苑との間で,本件売買契約1ないし31を締結し,着物等を購入した(甲39,乙B1,18,20の1ないし14)。また,原告は,被告オリコとの間で,後記健勝苑オリコカードを使用して,上記売買契約の内, 苑との間で,本件売買契約1ないし31を締結し,着物等を購入した(甲39,乙B1,18,20の1ないし14)。また,原告は,被告オリコとの間で,後記健勝苑オリコカードを使用して,上記売買契約の内,本件売買契約1,3ないし5,7,9ないし11,14,15,17ないし21,23ないし31において,被告オリコとの間で立替払契約を締結した(乙B3の2,4の2,6の2,7の2,8の2,10の2,12の2,13の2,14の2,15の2,16の2,17の2,18の3)。原告は,本件立替払 契約を締結する際,同契約申込書に自己の生年月日を記入し,また本件立替払契約14及び21の申込書の「おつとめ」欄に遺族年金を受給している旨を記載した(乙B3の2,乙B10の2)。 エ被告健勝苑は,昭和62年8月31日,被告オリコ(当時の商号は株式会社オリエントファイナンス)のみとの間で加盟店契約を締結し,また,オリコは,被告健勝苑の顧客との間で「健勝苑オリコカード」を作成していた(甲27,41,乙D4,5)。また,被告オリコは,平成18年9月まで,被告健勝苑の展示販売会に従業員を派遣していた。 原告は,かかる健勝苑オリコカードを作成し,これを利用して,被告オリコとの間で前記ウの本件立替払契約を締結した。 オ原告は,平成17年4月ころから,出勤の回数が少なくなり,同年7月12日,被告健勝苑を退社した(乙B21,23)。 (3)ア被告松葉は,呉服等の販売を業とする株式会社である。原告は,平成16年6月ころ,以前,被告健勝苑で一緒に仕事をしていた人と会い,その人の誘いを受けて,収入を得るために,被告松葉にパート従業員として入社した。原告は,当初本町第1営業所に勤務したが,その後平成17年4月,上本町店に移った(甲42)。 原告は,被告松葉の同被告本町第2営業所(当 けて,収入を得るために,被告松葉にパート従業員として入社した。原告は,当初本町第1営業所に勤務したが,その後平成17年4月,上本町店に移った(甲42)。 原告は,被告松葉の同被告本町第2営業所(当時)のW所長に対し,被告健勝苑との間の売買契約について立替金債務が残っていることを話したものの,被告健勝苑と被告松葉のパート勤務を掛け持ちしていることや具体的な被告健勝苑との間の本件売買契約についての立替金債務の額を告げなかった。 原告は,被告松葉に入社後,同年8月ころには班長となった(乙A14)。 イ被告松葉は,着物等の展示販売会を月2回開いたほか,年4回「大催事」と呼ばれる展示販売会を7日間連日開催した(甲42)。そのほか, 被告松葉は,「きずな会」という顧客と従業員が参加する着物パーティーを開催していた。被告松葉は,大催事において,各店舗,各従業員ごとに,売上目標及び顧客動員目標を設定していた(甲47)。 被告松葉は,各従業員の3か月間の売上によって,次の3か月間の活動手当金額が定まり,かかる1か月の活動手当金額に当月の売上により定まる率の紹介手当を加算して給与額を算定しており,原告は,別紙2のとおり,被告松葉から給与を受領していた(乙A15)。 ウ原告は,別紙1「クレジット支払一覧」のとおり,被告松葉との間で,本件売買契約32ないし34,36ないし44を締結し,着物等を購入した(乙A1ないし13)。また,原告は,被告松葉との売買について,被告ニコスとの間で本件立替払契約33を,被告クオークとの間で同34を,被告オリコとの間で同36,39,42,44をそれぞれ締結した(乙A2の2,3の2)。 (4)ア被告ニッセンは,通信販売等を業とする株式会社であり,「優美苑」,「ユービスト」等の呼称で呉服等の販売を行っている。原告は,平成1 9,42,44をそれぞれ締結した(乙A2の2,3の2)。 (4)ア被告ニッセンは,通信販売等を業とする株式会社であり,「優美苑」,「ユービスト」等の呼称で呉服等の販売を行っている。原告は,平成17年3月,被告健勝苑及び被告松葉に勤務しながら,被告ニッセンにパート従業員として入社し,優美苑なんば店で勤務した(甲42)。 原告は,被告ニッセンが従業員の他社との兼業を禁止していたことから,被告ニッセンに対して,被告健勝苑及び被告松葉でのパートを掛け持ちしていることは告げなかった。また,原告は,被告ニッセンに対し,被告健勝苑から着物を無理矢理購入させられたことは告げたものの,被告健勝苑との本件売買における具体的な立替金債務の額は告げなかった(証人T)。 イ被告ニッセンは,毎月1回,着物等の展示販売会を開催し,その中で各店舗,各班で売り上げ目標を定め,これを展示会の朝礼で各従業員に告げていた(甲37,乙C1,証人T)。被告ニッセンは,パート従業員に対して,時給1000円のほか,従業員個人の売上金額の3.5%が歩合給 として,顧客を展示会等に招待した場合につき1000円,班長には手当として3000円を支給しており,原告は,別紙2のとおり,給与を得ていた(乙C1)。 原告は,平成17年8月からは班長を務め,展示販売会への顧客の招待数や売上が優美苑なんば店において,トップクラスであった(乙C1,8,証人T)。また,原告は,平成17年度,被告ニッセンにおいて,1162万5429円の売上があり,全国のパート従業員約500名の中で21位であった(乙C1,9)。 ウ原告は,別紙1「クレジット支払一覧」のとおり,被告ニッセンとの間で,本件売買契約45ないし50を締結し,着物等を購入した(乙C3ないし7)。また,原告は,被告ニッセンとの売買について,被 )。 ウ原告は,別紙1「クレジット支払一覧」のとおり,被告ニッセンとの間で,本件売買契約45ないし50を締結し,着物等を購入した(乙C3ないし7)。また,原告は,被告ニッセンとの売買について,被告セントラルと本件立替払契約45,46,48ないし50を,被告ジャックスと47をそれぞれ締結した(乙C3の2,4の2,5の2,3,6の2,7の2)。 エ(ア)原告は,平成17年3月7日,本件売買45において,付下げ訪問着を購入した(乙C3の1)。原告は,この際,直後に開催が予定されていた着物パーティーに着用するために,特別料金を支払って,急ぎの仕立てを注文した(乙C1,2,証人U)。 (イ)原告は,平成17年6月9日及び同月19日,展示販売会の下見の際に,陳列された商品からブローチ及び指輪を気に入り,通常の顧客が購入しないように予約を入れた上で(仮置き),本件売買46においてブローチを,本件売買47において指輪を購入した(乙C1,証人T)。 また,原告は,同年12月15日,従前から帯止めを所持していたものの,代金1万2000円を支払って前記ブローチを帯止め専用に加工した(乙C2,10,原告)。 (ウ)原告は,平成18年1月28日,被告ニッセン優美苑なんば店の店 長代行であったTとともに,被告ニッセンの岡山店の着物展示会場を見学しに行った。原告は,前記展示会場で見学するだけの目的であり,販売の仕事をすることはなかった。原告は,前記展示会場に陳列されていた訪問着を気に入り,本件売買契約50を締結して訪問着を購入した(乙C1,証人T,同U)。 (5)原告は,上記の本件立替契約による債務の支払いが高額に及び,給与収入を上回るような状態が続いた。その結果,生活費に窮するようになり(甲41,42),平成16年から平成18年にかけて,食料品など 5)原告は,上記の本件立替契約による債務の支払いが高額に及び,給与収入を上回るような状態が続いた。その結果,生活費に窮するようになり(甲41,42),平成16年から平成18年にかけて,食料品などの日常品を訴外株式会社クレディセゾンが発行するクレジットカードを使用して買い物を行ったり(甲36),同訴外会社が発行するクレジットカードを使用して,キャッシングを行った(キャッシングについては,平成18年12月28日時点で69万2330円の残債務があった〔甲36〕)。 さらに,原告は,訴外株式会社三菱東京UFJ銀行からも借り入れており,平成18年11月29日の時点において,残債務は29万4168円であった(甲33)。また,原告は,訴外株式会社プランネルから,平成15年1月17日,平成16年2月16日,同年11月17日,平成18年6月23日,各30万円を借り入れた(甲34)。さらに,原告は,平成17年7月2日,訴外株式会社オーエムシーカードから借入を行い,平成18年11月22日の時点において,53万4558円の残債務があった(甲35)。 (6)原告は,平成19年5月10日,大阪府立精神医療センターにおいて,抑うつ状態と診断され,心理検査の結果,物事を組織的,統合的に眺める姿勢が乏しく,状況の持つ意味を客観的な視点で正確に捉えるのが困難であること,また外界からの情緒的刺激に反応しやすく,抑制力,防衛力が乏しい傾向にあり,対人関係を上手に対処することが難しいと示された(甲30)。 (7)原告は,本件売買において購入した着物等を,被告販売会社の展示販売会等の勤務において,それぞれ数回使用したことはあったが,それ以外で使用 したことはなかった(購入後全く使用していない商品もある。原告)。 (8)独立行政法人国民生活センターに対する相談のうち,いわ の勤務において,それぞれ数回使用したことはあったが,それ以外で使用 したことはなかった(購入後全く使用していない商品もある。原告)。 (8)独立行政法人国民生活センターに対する相談のうち,いわゆる次々販売に関するものは,被告健勝苑あるいは健勝苑グループについて平成8年からの11年間で553件(甲28の1,2),被告松葉あるいは松葉グループについて平成11年から平成18年までの8年間で39件(甲32の1,2),被告ニッセンについて平成10年から平成18年(ただし平成12年の記載はない)までの9年間で131件(甲23の1,2)あった。 被告健勝苑に対する請求について(1)原告と被告健勝苑との間の本件売買契約が公序良俗に違反するか(争点1)及び被告健勝苑が原告との間で本件売買契約を締結したことが不法行為にあたるか(争点3)について前記1の認定事実を下に,原告と被告健勝苑との間の本件売買契約の効力及び被告健勝苑の不法行為の成否を検討する。 ア原告は,前記1(2)ウのとおり,被告健勝苑において外交員として勤務する間,平成9年4月5日から平成16年2月19日までの約7年間にわたって,同被告から継続的に大島紬などの着物等31点を,代金総額1029万円で購入したものである。そして,前記1(7)のとおり,原告は,本件売買において,被告健勝苑から購入した着物等を同被告の展示販売会等でそれぞれ数回使用したのみであり(全く使用しない商品もあった。),また,本件売買18,23,24で購入した羽毛布団や,同26で購入した「イオンレムニー」(マイナスイオンが出る絨毯というもの)について,原告側でその商品を使用する必要があったという具体的事情は見あたらない。他方,被告健勝苑では,前記1(2)イのとおり,呉服等の展示販売会において,店,班及び個人の売上 出る絨毯というもの)について,原告側でその商品を使用する必要があったという具体的事情は見あたらない。他方,被告健勝苑では,前記1(2)イのとおり,呉服等の展示販売会において,店,班及び個人の売上目標を設定して,原告を含む班長に対して販売目標を伝えていたのであり,売上手数料を支給するとともに,売上の多寡により給与(時給)が変動する給与体系にしていたものである。 かかる認定事実からすると,原告が,本件売買において,被告健勝苑から着物等を購入したのは,被告健勝苑(難波店)の売上を伸ばす目的や同被告での勤務で着用する目的からであったというべきである。 イ(ア)原告の収入については,前記1(2)イのとおりであり,上記期間における被告健勝苑からの振込給与額(手取り)は,次のとおりである。 平成14年133万円程度(月額平均11万円余り)平成15年125万4420円余り(月額平均10万4000円余り)平成16年97万6612円余り(ただし,被告松葉からの振込給与額約60万円を加算すると,159万円余り〔甲1,3〕)平成17年15万5570円余り(ただし,被告松葉の分168万円余りと被告ニッセンの分93万8000円余りを合算すると277万円余り〔甲1,3,5〕)このような給与収入の状況は,平成9年から平成13年についてもさほどの差異はないと推認できる。 これに,給付を受けていた遺族年金(2か月ごとに29万2000円余り)を合算しても,原告の年収は,以下のとおりであった。 平成14年310万5848円平成15年301万4466円平成16年332万8482円(同年7月以降は被告松葉からの給与収入も含まれる。)平成17年452万5567円(イ)他方,原告は,前記1(2)ウのとおり,31点,1029万円の商品を購入し,そ 16年332万8482円(同年7月以降は被告松葉からの給与収入も含まれる。)平成17年452万5567円(イ)他方,原告は,前記1(2)ウのとおり,31点,1029万円の商品を購入し,その相当数について被告信販会社と立替払契約を締結してお り,年支払額は,以下のとおりである。 平成9年71万1900円平成10年80万4700円平成11年172万5400円平成12年146万3500円平成13年156万2000円平成14年130万8200円平成15年89万7600円平成16年92万9200円(被告健勝苑86万9700円)平成17年213万1866円(被告健勝苑54万5400円)平成18年228万5801円(被告健勝苑35万8500円)平成19年126万3500円(うち被告健勝苑4万3100円)平成20年65万7661円(ウ)以上によれば,原告は,平成14年以降,被告健勝苑から得る給与とほぼ同額か,少なくとも7割以上の額の立替金債務の支払をしていたことになる。このような事態は,生活に余裕がある場合あるいは趣味嗜好が高じている場合を除いては考えにくいというべきところ,前記1(1)ア,(2)イのとおり,原告の収入は,上記給与のほかには年金収入があるのみで,生活に経済的な余裕はなく,原告は,前記アのとおり,被告健勝苑の売上を伸ばす目的や同被告での勤務に着用する目的で本件売買を繰り返したのである。さらに,前記1(2)イのとおり,被告健勝苑において売上の多寡により給与の金額が変動することとなっていたのであるから,原告には,本件売買を繰り返すにあたって,自らの立替金債務を返済するために,被告健勝苑からの給与額を上げるとの動機もあったというべきである。 そうすると,本件売買契約は,原告の年収,あるいは るから,原告には,本件売買を繰り返すにあたって,自らの立替金債務を返済するために,被告健勝苑からの給与額を上げるとの動機もあったというべきである。 そうすると,本件売買契約は,原告の年収,あるいは給与収入に比し て過大であり,これが長年継続し,被告健勝苑の売上を上げる目的や同被告での勤務で着用する目的の他,原告の立替金債務の支払のために給与額を上げるべく本件売買が繰り返された結果,残債務は一層拡大していったということができる。 (エ)この点,原告は,Q店長から展示会には着物を着用しなければならないと言われて着物を購入した,RやPから売上に協力するようにと言われて断り切れずに商品を購入した旨の主張をし,原告はこれに沿う陳述書(甲42)を提出するが,証拠(証人P,同Q,同R)によれば,着物着用が被告健勝苑の展示会における義務であったとまではいえず,また,RやPが原告に対して勧誘を強要したと主張する時期が,前記両名の在籍期間と符合しないことが認められるのであり,この事実に照らして,原告の上記記載部分を直ちに信用することはできない。したがって,同被告が,原告に対し,制服着用や売上目標達成を強要したとまでの事実を認めることはできない。もっとも,同被告においては,展示会等ごとに売上目標を設定していたのであるから,その売上の達成に向けて相当程度,外交員らを指揮,指導していたことは明らかで,このことが外交員であった原告の商品購入の動機付けとなっていたと認められる。 ウ他方,被告健勝苑は,本件売買の売主として,また,原告の雇用者として,原告の購入代金額や本件立替払契約による債務負担額がどの程度であるかについては当然認識していたといえ,かかる自社商品の購入状況が過大であることに気付いていたというべきである(R証人自身も,原告の商品購入が多いこ 額や本件立替払契約による債務負担額がどの程度であるかについては当然認識していたといえ,かかる自社商品の購入状況が過大であることに気付いていたというべきである(R証人自身も,原告の商品購入が多いことは認めている〔11頁〕。)。また,前記1(2)ウのとおり,原告が本件立替払契約14及び21を締結する際に遺族年金を受給している旨を記載したことが認められることから,原告の収入が被告健勝苑からの給与及び遺族年金であったことも認識していたものと推認される。 そうだとすると,被告健勝苑は,同被告の外交員である原告が同被告か ら受け取る給与に比べて過大な商品購入を行い,原告の本件立替金債務の支払が困難な状況に陥っているであろうことも認識しながら,同被告(難波店)の売上に役立つことからこれを放置し,原告との間で継続的に本件売買契約を締結したというべきである。 エこれに対し,被告健勝苑は,原告が本件売買に及んだのは着物が好きであったからである,3か月ごとに雇用期間が更新されるのであるから,原告は,職場になじめなければ退職することが可能であったはずである,班長を務めるなどリーダー格であり,展示販売会への顧客動員数や売上において優秀な成績を収めていた,原告は,商品購入申請書(乙B20の1ないし14)のとおり,本件売買の都度,自ら同被告の許可を得るべく申請をしていた,同被告としては原告が経済的に余裕のある暮らしをしていると認識していたと主張し,証人P及び同Qも,概ねこれに沿う供述をする(また乙B21,22に同旨の記載がある。)。 確かに,原告は,着物好きであることを認めており,また,証拠(甲39の1,原告)によれば,被告健勝苑に勤務する前から相当程度の着物を所持し,被告健勝苑の無料着付教室に参加したことが認められるが,これは,介護等から解放されて今後の とを認めており,また,証拠(甲39の1,原告)によれば,被告健勝苑に勤務する前から相当程度の着物を所持し,被告健勝苑の無料着付教室に参加したことが認められるが,これは,介護等から解放されて今後の生活を設計するに当たって自らの仕事内容を選ぶ理由とはなるが,前記アのとおり,さして必要性のない商品を購入したり,専ら同被告での勤務において着用する目的で着物を購入していたことに照らすと,本件売買契約を繰り返す理由になるとはいい難い。 また,職場になじめなければ退職することが可能であった,班長を務めるなどリーダー格であり,展示販売会への顧客動員数や売上において優秀な成績を収めていた,自ら商品購入申請書(乙B20の1ないし14)を提出していた点についても,売上を伸ばすために本件売買を繰り返したこと,本件立替金債務の支払に追われて収入を維持拡大する必要があったことから本件売買に及んだという経緯と必ずしも矛盾するものではない。 さらに,原告が経済的に余裕のある暮らしをしていると認識していたという点については,客観的な裏付けに基づくものではなく,前記認定事実に照らして,到底措信することができない。 オ以上のとおり,被告健勝苑の外交員である原告は,同被告の売上を伸ばすため,同被告での勤務で着用するために同被告から過大な商品購入を繰り返し,同被告はその状況を知りつつ原告に対し,商品販売を続けて同被告が支払う給与とほぼ同額か,少なくとも7割以上の額の立替金債務の支払をさせる一方,原告のかかる負担により企業としての利益を継続的に得ていたものであるから,本件売買は,商品販売の量,代金額,それによって負担する原告の債務額,さらには上記商品販売の継続期間によっては,著しく社会的相当性を欠くことになるというべきである。 そこで,検討すると,前記イによれば,原告は ,商品販売の量,代金額,それによって負担する原告の債務額,さらには上記商品販売の継続期間によっては,著しく社会的相当性を欠くことになるというべきである。 そこで,検討すると,前記イによれば,原告は,平成9年以降,被告健勝苑から着物等を購入し,平成11年に172万円余りを,平成12年に146万円余りを,平成13年にも156万円余りの立替金債務の支払を続けており,この額は,原告の得た給与の額に匹敵する額であったものと推認できるのであり,このような状態が3年間も続く間,被告健勝苑は,かかる状態を認識しつつこれを放置し,総販売代金額が800万円に近づいた後も同様の対応を続けたのであるから(平成14年及び平成15年も同様に原告の給与収入とほぼ同額あるいはその7割以上の立替金債務の支払を続けている。),平成14年2月26日以降に締結された本件売買契約26ないし31は,著しく社会的相当性を逸脱するもので,公序良俗に反して無効であるというべきである。 カまた,被告健勝苑が原告との間で本件売買契約26ないし31を締結した行為は,著しく社会的相当性を逸脱するものとして,不法行為に該当するものと認められる(なお,原告は,本件売買契約は,一連一体として公序良俗に違反して無効であり,また不法行為に該当すると主張するが,本 件においては,各売買契約は,それぞれ別個に契約締結がなされ,前記のとおり,原告の支払能力を超える量の購入をさせた以降において公序良俗に反し,不法行為に該当すると認めるべきであるから,原告の上記主張は,採用することができない。)。 この点,被告健勝苑は,原告が十分な呉服販売の知識があり,その職を辞すること,購入しないことができたにもかかわらず,自己の支払能力等を的確に把握せずに,漫然と購入を続けたのであるから,責任を負担するのが公平の 健勝苑は,原告が十分な呉服販売の知識があり,その職を辞すること,購入しないことができたにもかかわらず,自己の支払能力等を的確に把握せずに,漫然と購入を続けたのであるから,責任を負担するのが公平の理念に合致するとして,過失相殺を主張する。しかしながら,前記アのとおり,原告は,被告健勝苑の売上を伸ばす目的や同被告での勤務で着用する目的として,購入を余儀なくされたのであり,これらの事情に照らすと,原告に過失ないし落ち度があったと認めることはできない。 よって,この点に関する被告健勝苑の主張は採用することができない。 キ以上からすると,被告健勝苑は,原告が本件売買26ないし31に対応する立替払契約に基づいて支払った248万2000円について,不当利得返還義務及び不法行為に基づく損害賠償義務がある。 (2)被告健勝苑に職場環境配慮義務違反の債務不履行があるか(争点2)について原告は,被告健勝苑が使用者という優越的地位を利用して,制服着用,売上貢献等を強要したことが,原告との間の雇用契約に付随して信義則上生じる職場環境配慮義務に違反するとして,被告健勝苑は債務不履行責任を負う旨主張する。 しかし,前記(1)のとおり,被告健勝苑の行為が社会的相当性を著しく逸脱するとして公序良俗に反し,不法行為にあたるとしたのは,職場の環境形成の側面だけでなく,原告の過大な債務負担の下で被告健勝苑がそのことを知りつつ利益を図ったという本件売買契約の過大性・異常性を考慮したからである。そして,前記(1)イ(エ)のとおり,被告健勝苑において制服着用や売上 貢献等を強要したとまでの事情は認めがたく,また,同被告が自社商品を購入することが当然であるという職場環境を形成したこと自体が,雇用契約上直ちに違法となるわけではない。 したがって,被告健勝苑は,原告に対し,雇用 たとまでの事情は認めがたく,また,同被告が自社商品を購入することが当然であるという職場環境を形成したこと自体が,雇用契約上直ちに違法となるわけではない。 したがって,被告健勝苑は,原告に対し,雇用契約に付随する職場環境配慮義務に違反したことを理由とする債務不履行責任に基づく損害賠償債務を負うとはいえない。 被告松葉に対する請求について(1)原告と被告松葉の本件売買契約が公序良俗に反して無効か(争点4)及び被告松葉が原告との間で本件売買契約を締結したことは不法行為にあたるか(争点6)についてア原告は,前記1(3)ウのとおり,平成16年6月25日から平成18年8月10日までの約2年2か月にわたって,被告松葉との間で,本件売買契約32ないし34,36ないし44をそれぞれ締結し,総額約280万円の着物等を購入したことが認められる。そして,被告松葉は,同イのとおり,大催事において,各店舗,各従業員ごとに,売上目標及び顧客動員目標を設定し,原告のようなパート従業員の給与を売上の多寡により決していたことが認められる。 しかしながら,原告は,すでに,被告健勝苑での勤務により同被告の商品を購入することによって経済的に逼迫していたことを十分認識していたものと思われるから,同業である被告松葉に就職することを選択した以上は,従前と同じ状況に陥ることを避けることは十分に可能であったというべきである。 イところで,被告松葉が原告の従前の被告健勝苑との間の売買についての立替金債務を負っていたことを具体的に認識していた場合には,両者の売買を一体のものとして評価し,その結果,原告と被告松葉との間の本件売買が公序良俗に反し,また被告松葉の原告に対する販売が不法行為を構成 する場合もありうる。 しかしながら,原告は,前記1(3)アのとおり,被告松葉のW所 し,その結果,原告と被告松葉との間の本件売買が公序良俗に反し,また被告松葉の原告に対する販売が不法行為を構成 する場合もありうる。 しかしながら,原告は,前記1(3)アのとおり,被告松葉のW所長に対し,被告健勝苑との間の売買契約についての立替金債務が残っていることを話したものの,具体的な被告健勝苑との間の本件売買契約についての立替金債務の額を告げなかったことが認められ,被告松葉は,原告についての被告健勝苑との売買についての立替金債務など,従前の原告の具体的債務状況を把握していなかったといえる。したがって,被告健勝苑との間の本件売買と被告松葉との間の本件売買を一体のものとして評価することはできない。 ウそして,原告は,前記1(2)イ,(3)イ,(4)イのとおり,平成16年6月に被告松葉に入社して以降,平成18年8月まで被告松葉から給与を,平成17年5月まで被告健勝苑から給与を,平成17年3月から平成18年10月まで被告ニッセンから給与を受け取っており,また2か月に一度28万円の遺族年金を受け取っていたことが認められ,平成16年の年収は332万8482円,平成17年の年収は452万5567円,平成18年の年収は288万4563円であった。また,前記1(3)ウのとおり,原告と被告松葉との間の本件売買についての立替金債務として,最も多額なものとして月額8万2140円(平成18年9月ないし同年12月)を負っていたに過ぎない。したがって,原告が負っていた立替金債務は,原告が受領していた給与,年金でなお支払可能であったというべきである。 エ以上からすると,被告松葉との間の本件売買契約は,公序良俗に反するとまではいえず,また被告松葉が原告との間で本件売買契約を締結したことは不法行為を構成しないのであるから,原告の主張はいずれも採用すること らすると,被告松葉との間の本件売買契約は,公序良俗に反するとまではいえず,また被告松葉が原告との間で本件売買契約を締結したことは不法行為を構成しないのであるから,原告の主張はいずれも採用することができない。 (2)被告松葉に職場環境配慮義務違反の債務不履行があるか(争点5)について 原告は,被告松葉が,使用者という優越的地位を利用して,売上等のノルマの達成,制服着用を強要して,購入するのが当然であるとの職場環境を形成したのであり,前記の職場環境配慮義務に違反したと主張する。 しかしながら,制服着用や売上貢献等を強要したことを認めるに足りる証拠はなく(この点に関する原告の供述は,具体性を欠くもので必ずしも信用することはできない。),また,同被告における職場環境と原告が本件売買契約あるいは本件立替払契約をしたこととの間に相当因果関係があるともいい難い。 したがって,被告松葉は,原告に対し,雇用契約に付随する職場環境配慮義務に違反したことを理由とする債務不履行責任に基づく損害賠償債務を負うとはいえない。 被告ニッセンに対する請求について(1)原告と被告ニッセンとの本件売買契約が公序良俗に反して無効か(争点7)及び被告ニッセンが原告との間で本件売買契約を締結したことが不法行為にあたるか(争点9)についてア原告は,前記1(4)ウのとおり,平成17年3月7日から平成18年1月28日にかけて,着物等6点,総額238万3455円の本件売買契約を締結したことが認められる。そして,被告ニッセンは,前記1(4)イのとおり,毎月1回展示販売会を開催し,その中で各店舗,各班で売り上げ目標を定め,これを展示会の朝礼で各従業員に告げていたほか,従業員個人の売上金額により給与が変動することにしていたことが認められる。 しかしながら,原告は,既に,被 し,その中で各店舗,各班で売り上げ目標を定め,これを展示会の朝礼で各従業員に告げていたほか,従業員個人の売上金額により給与が変動することにしていたことが認められる。 しかしながら,原告は,既に,被告健勝苑及び被告松葉での勤務を通じて勤務先の着物等の商品を購入することがいかに自己の財政を圧迫するものであるかは十分理解していたものということができる。 イまた,原告は,前記1(4)アのとおり,被告ニッセンに対し,被告健勝苑との間の売買契約についての立替金債務が残っていることを話したものの, 具体的な被告健勝苑との間の本件売買契約についての立替金債務の額を告げなかったこと,原告は,被告ニッセンでは兼業が禁止されていたことから,同被告に対して,被告松葉で勤務していることを告げなかったことが認められる。これら事実からすると,被告ニッセンは,被告健勝苑及び被告松葉との間の売買についての立替金債務など,原告の従前の具体的債務状況を把握していなかったといえる。 ウさらに,前記1(4)エのとおり,被告ニッセンとの間の本件売買契約45において付下げ訪問着を購入した際,特別料金を支払って急ぎの仕立てをしたこと,本件売買契約46,47においてブローチ及び指輪を購入した際,通常の顧客が購入しないように予約(仮置き)を入れ,さらに,ブローチについて別途代金を支払って帯止めに加工したこと,本件売買契約50において,従業員個人や自己が所属する店舗の売上目標が設定されていない中で,見学の目的で行った出張先において訪問着を購入したことが認められ,これらの認定事実から,原告は,自ら積極的に着物等を購入していたと認められる。 エそして,原告は,前記1(2)イ,(3)イ,(4)イのとおり,平成17年3月に被告ニッセンに入社して以降,同年5月まで被告健勝苑から給与を,平 は,自ら積極的に着物等を購入していたと認められる。 エそして,原告は,前記1(2)イ,(3)イ,(4)イのとおり,平成17年3月に被告ニッセンに入社して以降,同年5月まで被告健勝苑から給与を,平成18年8月まで被告松葉から給与を,同年10月まで被告ニッセンから給与を受け取り,そのほか,2か月に一度28万円の遺族年金を受領していたのであり,平成17年の年収は452万5567円,平成18年の年収は288万4563円であったことが認められる。また,同(4)ウのとおり,原告と被告ニッセンとの間の本件売買についての立替金債務も最も多額な月で6万2200円であったに過ぎない(平成18年3月)。 オしたがって,原告が負っていた立替金債務は,原告が受領していた給与,年金でなお支払可能であったのであり,社会的相当性を欠くとまではいえない。 以上からすると,被告ニッセンとの間の本件売買契約は,公序良俗に反するとまではいえず,また,被告ニッセンが原告との間で本件売買契約を締結したことが不法行為を構成するともいえないのであり,原告の主張はいずれも採用することができない。 (2)被告ニッセンに職場環境配慮義務違反の債務不履行があるか(争点8)について原告は,被告ニッセンが,使用者という優越的地位を利用して,売上等のノルマの達成,制服着用を強要して,購入するのが当然であるとの職場環境を形成したのであり,前記の職場環境配慮義務に違反したと主張する。 しかし,前記(1)の事実に照らし,同被告が原告に対し制服着用や売上貢献等を強要したと認めることはできないし,職場環境が本件売買契約あるいは本件立替払契約に至った原因であるともいえない。 したがって,被告ニッセンは,原告に対し,雇用契約に付随する職場環境配慮義務に違反したことを理由とする債務不履行責任に基づく 環境が本件売買契約あるいは本件立替払契約に至った原因であるともいえない。 したがって,被告ニッセンは,原告に対し,雇用契約に付随する職場環境配慮義務に違反したことを理由とする債務不履行責任に基づく損害賠償債務を負うとはいえない。 被告信販会社に対する請求について(1)被告信販会社の不法行為責任の有無(争点10)についてア(ア)原告は,立替払契約上の善管注意義務ないしこれに付随して信義則上発生する注意義務の一内容として,被告信販会社には,加盟店である被告販売会社の販売態様等を調査し,不適切な実態がある場合には是正を求め,悪質な加盟店に対しては与信を行わない義務(加盟店管理義務)及び与信の実行にあたり,消費者の支払能力,それまでの与信の総額等を調査し,返済能力を超える与信を行わないようにする義務(過剰与信防止義務)を負うとした上で,被告信販会社は上記各義務に違反したことを理由に不法行為責任を負う旨の主張をする。 (イ)そこで,検討すると,まず,立替払契約は,売買契約において買主 が負う代金支払債務の支払を信販会社に委託するという準委任契約であり,被告信販会社は,売主に対する売買代金の支払という準委任事務の履行において,善良なる管理者の注意をもって処理する義務を負う。しかし,原告が主張する加盟店管理義務や過剰与信防止義務とは,信販会社が一般的に加盟店の販売方法を調査,是正することや信用情報機関への照会等による支払能力の調査をして与信の可否を判断することを内容とするものであり,これは準委任事務の処理の範囲を超えるものである。 したがって,被告信販会社は,準委任契約であるということから導かれる善管注意義務の一内容として不適正与信防止義務(加盟店管理義務及び過剰与信防止義務)を負うとはいえない。 (ウ)また,原告は,信義則上加盟 て,被告信販会社は,準委任契約であるということから導かれる善管注意義務の一内容として不適正与信防止義務(加盟店管理義務及び過剰与信防止義務)を負うとはいえない。 (ウ)また,原告は,信義則上加盟店管理義務が発生する根拠として,被告信販会社が消費者に損害を与える者と加盟店契約を締結して自己の利益を増やしていること,通商産業省(経済産業省)が,昭和50年代から数次にわたって不適正与信の防止を求める行政指導を繰り返していること(甲14ないし16)を指摘する。 しかしながら,行政指導とは,行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定のに一定の作為又は㨯不作為を求める指導,勧告,助言その他の行為であって処分に該当しないものをいうのであって(行政手続法2条6号),直ちに私法上の義務を発生させるものではない。また,割賦販売法30条の4は,売主に対して生じている事由をもって,割賦販売あっせん業者に対抗することができると規定して消費者保護を図っているが,その効果は支払拒絶に止まるものであり,支払拒絶の効果を超えて,割賦販売あっせん業者が購入者に対して加盟店管理義務まで負うことまでは予定していないというべきである。 以上の次第で,被告信販会社は,信義則に基づいて加盟店管理義務を 負うものでもなく,原告の上記主張は立法論の域を出ないものといわざるを得ない。 (エ)さらに,原告は,信義則上の過剰与信防止義務の発生根拠として,割賦販売法38条,各地の条例(甲6ないし8),通商産業省の行政指導(甲19,20)等を指摘する。 しかしながら,割賦販売法38条は,割賦販売あっせん業者は,信用情報機関を利用すること等により得た正確な信用情報に基づき,それにより購入者が支払うこととなる賦払均等が当該購入者の支払能力を超える しかしながら,割賦販売法38条は,割賦販売あっせん業者は,信用情報機関を利用すること等により得た正確な信用情報に基づき,それにより購入者が支払うこととなる賦払均等が当該購入者の支払能力を超えると認められる割賦販売,割賦購入あっせんを行わないよう努めなければならないと規定するものであり,事業者に対し,私法上,直ちに消費者の財産状況等に配慮する義務や購入者の支払能力を超える割賦購入あっせんを行ってはならない義務を負わせるものではない。同様に,各地の条例や行政指導も,私法上の義務ないし法的責任を直ちに導くものではない。 イ(ア)もっとも,被告信販会社が,被告販売会社の社会的に著しく不相当な販売行為を知って与信を行っていた場合には,同被告の不法行為を助長したものとして,個別に不法行為を構成する場合がありうる。 (イ)そこで,以下検討する。原告は,前記1(2)ウのとおり,被告健勝苑との間で締結した本件売買契約1ないし31の内,本件売買1,3ないし5,7,9ないし11,14,15,17ないし21,23ないし31において,被告オリコとの間で立替払契約を締結した。そして,被告オリコは,被告健勝苑の従業員である原告が使用者である同被告から頻繁に,高額な自社商品である着物や羽毛布団等を連続して購入していたことを認識していたのである。また,被告オリコは,前記1(2)ウのとおり,本件立替払契約の申込書の記載をもって,原告が昭和10年生まれの高齢者であること及び原告の収入が遺族年金のほかに,被告健勝苑か ら得ていた給与のみであったことを認識していたといえる。 さらに,被告オリコは,前記1(2)エのとおり,被告健勝苑にとって唯一加盟店契約を締結した信販会社として被告健勝苑の商品販売についての立替払契約において独占的な地位にあったのであり,しかも平成1 。 さらに,被告オリコは,前記1(2)エのとおり,被告健勝苑にとって唯一加盟店契約を締結した信販会社として被告健勝苑の商品販売についての立替払契約において独占的な地位にあったのであり,しかも平成18年9月まで,同被告の展示販売会に従業員を派遣していたことが認められるのであるから,被告健勝苑との間で強い提携関係にあったといえる。 以上の事実からすると,被告オリコは,被告健勝苑との強い提携関係の下で,原告が高齢者であり,被告健勝苑の給与と遺族年金からしか収入がないことを認識しながら,被告健勝苑が,継続的に従業員である原告に対して高額な自社商品である着物等を販売して,原告の過大な債務負担のもとで会社の利益を得ていたことを認識していたというべきである。 したがって,本件立替払契約26から31を締結させた被告オリコの行為は,前記2(1)の被告健勝苑との共同不法行為に当たり,同契約に基づいて原告が被告オリコに対して既に支払った立替金に相当する248万2000円が相当因果関係にある損害であると認められる。 したがって,被告オリコは,原告に対し,被告健勝苑と連帯して,同額の損害賠償をする義務がある。 (ウ)他方,被告松葉及び被告ニッセンについては,前記3(1),4(1)のとおり,不適切な販売方法をとっていたとは認められないのであり,原告と前記被告らとの間の本件売買についての立替払契約の締結について,被告信販会社に不法行為が成立することはない。 (2)本件立替払契約が公序良俗に反するか(争点11)についてア前記(1)のとおり,被告オリコを除く被告信販会社は,不適正与信防止義務(加盟店管理義務及び過剰与信防止義務)を負わない。しかし,被告オリコは,前記(1)イ(イ)のとおり,被告健勝苑が不適切な売買を行っていた ことを知って本件立替払契約26な ,不適正与信防止義務(加盟店管理義務及び過剰与信防止義務)を負わない。しかし,被告オリコは,前記(1)イ(イ)のとおり,被告健勝苑が不適切な売買を行っていた ことを知って本件立替払契約26ないし31を締結したのであり,前記各契約は,公序良俗に反して無効である。 イしたがって,被告オリコが本件立替払契約に基づいて既に受領した立替金248万2000円は法律上の原因がない利得であり,また,原告の被告オリコに対する,未払いである本件立替払契約29に基づく1万3300円,同30に基づく4万1500円及び同31に基づく8万1200円の各支払債務は存在しない(なお,原告の主張によれば,割賦販売法30条の4により,本件売買契約29ないし31が無効であることを被告オリコに対抗することができることになるが,そうだとしても,上記の債務不存在の結論の域を超えるものではないので,判断するには及ばない。)。 結論 以上の次第で,原告の被告健勝苑及び同オリコに対する,共同不法行為による損害賠償請求については,各自248万2000円及びこれに対する被告健勝苑については訴状送達の日の翌日である平成18年12月2日から,被告オリコについては訴状送達の日の翌日である同月5日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があり,その余は理由がない(なお,上記各被告に対する不当利得の返還請求も理由があるが,上記認容額を超えるものではないと認められる。)。 また,原告の被告オリコに対する本件立替払契約の債務不存在の確認を求める請求は,29に基づく残債務1万3300円,同30に基づく残債務4万1500円及び同31に基づく残債務8万1200円について,上記各契約が公序良俗に反して無効であることからいずれも存在しないとする限度で理 ,29に基づく残債務1万3300円,同30に基づく残債務4万1500円及び同31に基づく残債務8万1200円について,上記各契約が公序良俗に反して無効であることからいずれも存在しないとする限度で理由があり,その余の請求は理由がない。 そして,原告のその余の各被告に対する請求はいずれも理由がない。 よって,原告の請求は,主文の限りで理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第22民事部裁判長裁判官小西義博裁判官猪坂剛裁判官岡山忠広は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官小西義博

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