平成16(行ウ)494等 行政処分取消請求事件(第一事件),異議却下決定取消請求事件(第二事件)

裁判年月日・裁判所
平成17年6月15日 東京地方裁判所 その他
ファイル
hanrei-pdf-14832.txt

判決文本文16,303 文字)

主文 一本件訴えのうち、被告が平成15年12月22日付けで金融庁告示第55号によりした処分のうち、株式会社日本格付研究所を平成16年1月1日から平成17年12月31日までの期間、指定格付機関に指定する部分の取消しを求める部分を却下する。 二原告のその余の請求をいずれも棄却する。 三訴訟費用は、原告の負担とする。 事実及び理由 第一請求一第一事件 1 被告が平成15年12月22日付けで金融庁告示第55号によりした処分のうち、株式会社日本格付研究所を平成16年1月1日から平成17年12月31日までの期間、指定格付機関に指定する部分を取り消す。(以下、この請求を「請求1」という。) 2 被告が平成16年11月4日付けでした、原告の平成16年8月25日付け異議申立てを却下する旨の決定を取り消す。(以下、この請求を「請求2」という。)二第二事件被告が平成17年1月13日付けでした、原告の平成16年12月15日付け異議申立てを却下する旨の決定を取り消す。(以下、この請求を「請求3」という。)第二答弁一請求1に対する本案前の答弁主文第一項と同旨二請求2及び請求3に対する本案の答弁原告の請求をいずれも棄却する。 第三事案の概要本件は、原告が、被告が平成15年12月22日付けで金融庁告示第55号によりした処分のうち、株式会社日本格付研究所(以下「日本格付研究所」という。)を平成16年1月1日から平成17年12月31日までの期間、指定格付機関に指定する部分について、恣意的な格付を行い中立性を有しない日本格付研究所は指定格付機関として不適格であるにもかかわらず、被告はこれを知りながら若しくは重大な 7年12月31日までの期間、指定格付機関に指定する部分について、恣意的な格付を行い中立性を有しない日本格付研究所は指定格付機関として不適格であるにもかかわらず、被告はこれを知りながら若しくは重大な過失によりこれを知らずに漫然と指定格付機関に指定したという点において、裁量権の逸脱濫用があり、違法である旨主張して、上記部分の取消しを求める(請求1)とともに、被告が平成16年11月4日付けでした、原告の同年8月25日付け異議申立てを却下する旨の決定(以下「本件決定1」という。)は、原告が異議申立てをする法律上の利益を有しているにもかかわらず、これを有していないとして却下した点において違法である旨主張して、本件決定1の取消しを求め(請求2。請求1と請求2を合わせたものが第一事件である。)、また、被告が平成17年1月13日付けでした、原告の平成16年12月15日付け異議申立てを却下する旨の決定(以下「本件決定2」という。)についても、本件決定1と同様の理由で違法である旨主張して、本件決定2の取消しを求める(請求3。これが第二事件である。)事案である。 一関係法令の定め 1 証券取引法(なお、同法において「内閣府令」とは、後記2の企業内容等の開示に関する内閣府令を指す。)(一) 1条この法律は、(…(略)…)投資者の保護に資するため、有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめ、且つ、有価証券の流通を円滑ならしめることを目的とする。 (二) 4条1項有価証券の募集又は売出し(…(略)…)は、発行者が当該募集又は売出しに関し内閣総理大臣に届出をしているものでなければ、することができない。ただし、次の各号に該当するものについては、この限りではない。 1号から3号ま …)は、発行者が当該募集又は売出しに関し内閣総理大臣に届出をしているものでなければ、することができない。ただし、次の各号に該当するものについては、この限りではない。 1号から3号まで (省略)(三) 5条1項前条第一項又は第二項の規定による届出をしようとする発行者は、その者が会社である場合(…(略)…)においては、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した届出書を内閣総理大臣に提出しなければならない。ただし、当該有価証券の発行価格の決定前に募集をする必要がある場合その他の内閣府令で定める場合には、第一号のうち発行価格その他の内閣府令で定める事項を記載しないで提出することができる。 1号当該募集又は売出しに関する事項2号当該会社の商号、当該会社の属する企業集団(…(略)…)及び当該会社の経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項その他の公益又は投資家保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項2項から3項まで (省略)4項次に掲げるすべての要件を満たす者が前条第一項又は第二項の規定による届出をしようとする場合において、第一項の届出書に、内閣府令で定めるところにより、その者に係る直近の有価証券報告書及びその添付書類並びにその提出以後に提出される半期報告書及び臨時報告書(…(略)…)並びにこれらの訂正報告書(以下「参照書類」という。)を参照すべき旨を記載したときは、第一項第二号に掲げる事項の記載をしたものとみなす。 1号 (省略)2号当該者に係る第一項第二号に掲げる事項に関する情報が既に公衆に広範に提供されているものとして、その者が発行者である有価証券で既に発行 。 1号 (省略)2号当該者に係る第一項第二号に掲げる事項に関する情報が既に公衆に広範に提供されているものとして、その者が発行者である有価証券で既に発行されたものの取引所有価証券市場における取引状等に関し内閣府令で定める基準に該当すること(以下省略) 2 企業内容等の開示に関する内閣府令(昭和48年大蔵省令第5号。以下「内閣府令」という。なお、同府令において「法」とは、証券取引法を指す。)(一) 1条この府令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 1号から13号まで (省略)13号の2 指定格付機関格付機関のうち、金融庁長官(被告)がその格付実績、人的構成、組織、格付の方法及び資本構成その他発行者からの中立性に関する事項等を勘案して有効期間を定めて指定したものをいう。 (以下省略)(二) 9条の4第5項法第5条4項第2号に規定する内閣府令で定める基準は、次の各号のいずれかに掲げる基準とする。 1号有価証券届出書を提出しようとする者が、証券取引所に上場されている株券(以下この項において「上場株券」という。)又は証券業協会に店頭売買有価証券として登録されている株券(以下この項において「店頭登録株券」という。)を発行しており、かつ、次のいずれかの場合に該当すること。 イからニまで  (省略)ホ一の指定格付機関により、当該者が既に発行した社債券のいずれかに金融庁長官(被告)が指定格付機関ごとに指定した格付(以下この項において「特定格付」という。)が付与され、かつ、他の指定格付機関により、当該者が既に発行した社債券又はそ 既に発行した社債券のいずれかに金融庁長官(被告)が指定格付機関ごとに指定した格付(以下この項において「特定格付」という。)が付与され、かつ、他の指定格付機関により、当該者が既に発行した社債券又はその募集若しくは売出しに関し法第4条第1項に規定する届出をしようとする社債券のいずれかに特定格付は付与されていること(これらの格付が公表されている場合に限る。)ヘ (省略)二前提事実本件の前提となる事実は、次のとおりである。なお、証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実並びに当裁判所に顕著な事実は認定根拠を付記しており、その余の事実は当事者間に争いがない。 1 当事者等の地位等(一) 日本格付研究所は、平成12年1月12日、株式会社マイカルが同月28日に発行を予定していた第26回無担保社債(以下「本件社債」という。)の債務履行の確実性につき、格付符号「A-」とする格付をした格付機関である。なお、日本格付研究所は、格付符号を下記のとおり定義し、AAからBまでについては、同一等級内での相対的地位を示すものとして、プラス(+)若しくは(-)の符号による区分も存在するとしている。(甲4、8)記AAA 債務履行の確実性が最も高い。 AA  債務履行の確実性は非常に高い。 A 債務履行の確実性は高い。 BBB 債務履行の確実性は認められるが、上位等級に比べて将来、債務履行の確実性が低下する可能性がある。 BB  債務履行に当面の問題はないが、将来まで確実であるとはいえない。 B  債務履行の確実性は乏しく、懸念される要素がある。 CCC 現在においても不安の要素があり、債 B  債務履行に当面の問題はないが、将来まで確実であるとはいえない。 B  債務履行の確実性は乏しく、懸念される要素がある。 CCC 現在においても不安の要素があり、債務不履行に陥る危険性がある。 CC  債務不履行に陥る危険性が極めて高い。 C 債務不履行に陥っている。 (二) 原告は、平成12年1月26日、本件社債を200万円相当分購入した者である。 株式会社マイカル(以下「マイカル」という。)は、その後経営状態が悪化し、平成13年9月14日、東京地方裁判所に対し、再生手続開始の申立てをし、同裁判所は、同月18日付けで、再生手続の開始決定をした。その後、マイカルは、同裁判所に対し、会社更生手続開始の申立てをし、同裁判所は、会社更生手続の開始決定をし(以下「更生会社マイカル」という。)、関係人集会において更正計画案が可決され、同裁判所は、これを認可した。 原告は、平成15年12月24日、更生会社マイカルから、本件社債につき、更生計画に基づく弁済として、61万2120円の支払を受けた。 (以上につき、甲5、6、17、18及び弁論の全趣旨) 2 被告による日本格付研究所の指定格付機関としての指定被告は、平成15年12月22日、金融庁告示第55号により内閣府令1条13号の2に規定する指定格付機関の指定を行った。この指定には、日本格付研究所を平成16年1月1日から平成17年12月31日までの期間、指定格付機関に指定する旨の内容が含まれていた。 3 本件決定1及び本件決定2の経緯等(一) 原告は、被告に対し、平成16年8月25日、被告がした平成16年2月23日付け金融庁告示第7号による処分のうち、日本 含まれていた。 3 本件決定1及び本件決定2の経緯等(一) 原告は、被告に対し、平成16年8月25日、被告がした平成16年2月23日付け金融庁告示第7号による処分のうち、日本格付研究所を指定格付機関として指定した部分を取り消すか、又は相当期間、上記部分の効力を停止することを求めて、異議申立てをした。(甲1の1)(二) 被告は、平成16年11月4日、上記(一)の異議申立てに係る処分により、原告の権利若しくは法律上の保護された利益が侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあるものでないことは明らかであるなどとして、上記(一)の異議申立てを却下する旨の本件決定1をした。(甲1の2)(三) 原告は、平成16年12月15日、被告がした平成15年12月22日付け金融庁告示第55号による処分のうち、日本格付研究所を指定格付機関として指定した部分を取り消すか、又は相当期間、上記部分の効力を停止することを求めて、異議申立てをした。(甲14)(四) 被告は、平成17年1月13日、上記(三)の異議申立てに係る処分により、原告の権利若しくは法律上の保護された利益が侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあるものでないことは明らかであるなどとして、上記(三)の異議申立てを却下する旨の本件決定2をした。(甲15)三争点 1 請求1(一) 争点1(本案前の争点)原告は、指定格付機関の指定の取消しを求める訴えにおける原告適格を有するか。 (二) 争点2(本案前の争点)被告による指定格付機関の指定は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」として、取消訴訟の対象としての適格性を有するか。 (三) 争点 被告による指定格付機関の指定は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」として、取消訴訟の対象としての適格性を有するか。 (三) 争点3(本案の争点)被告による日本格付研究所の指定格付機関としての指定が、裁量権の逸脱濫用があり違法であるか。 2 請求2争点4(本案の争点)原告が異議申立てをする適格を有しないとした本件決定1は、適法であるか。 3 請求3争点5(本案の争点)原告が異議申立てをする適格を有しないとした本件決定2は、適法であるか。 四争点に対する当事者の主張 1 請求1について(一) 争点1(原告適格の有無)について(1) 原告の主張ア行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含む場合には、かかる利益も上記法律上の保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして、当該行政法規が不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規の趣旨・目的、当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである。 イ証券取引法 して保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規の趣旨・目的、当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである。 イ証券取引法1条は、「投資者の保護に資するため」「有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならし」めることを目的とし、被告は、そのような行政目的を達成する活動の一環として、中立で公正な格付を行うことが期待できる者を指定格付機関に指定する責務を負っている。債券を発行する企業(以下「発行会社」という。)が指定格付機関による格付を取得することは、発行登録制度の利用適格要件であり、また、指定格付機関が「特定格付」を付与し、かつ、その他証券取引法及び内閣府令に規定する一定の要件を満たす場合には、目論見書の記載を簡略化すること(以下「参照方式」という。)ができる。このような発行登録制度(証券取引法23条の3、内閣府令14条の3第11号様式、同法23条の8第1項)と参照方式(同法5条4項1号、2号、内閣府令9条の4第5項1号ホ)を利用することにより、特定格付を取得した発行会社は、市場の情勢に応じて機動的に、有利な時機に債券を発行することができることになる。他方、そのような場合には、社債応募者は、「発行登録追補目録書」に記載された指定格付機関の評価意見である格付に依拠して購入するか否かを判断せざるを得ない仕組みになっている。 このように、指定格付機関は、社債応募者のために有価証券報告書等の企業情報を検討して発行会社の信用力、すなわち、社債リスク評価の意見を発行会社経由で社債応募者に報告する役割を担い、他方、一般投資家は、参照方式・発行登録制度を利用して発行される社債に応募するか否かを検討するに際し、指定格付機関の付与した格付に依拠して応募するか否かを判断せざるを 社債応募者に報告する役割を担い、他方、一般投資家は、参照方式・発行登録制度を利用して発行される社債に応募するか否かを検討するに際し、指定格付機関の付与した格付に依拠して応募するか否かを判断せざるを得ないのであり、公正な格付情報が提供され、もって、一般投資家の保護を図るために、証券取引法は、被告が指定格付機関を指定するという制度を設けているのである。 したがって、証券取引法は、当然に、指定格付機関の指定という制度において、個々の社債応募者・一般投資者の個別的利益をも保護すべきものとする趣旨を含んでいるというべきである。 また、指定格付機関として指定されていても、日本格付研究所のように中立でない不適格者が含まれているということは、現在保有する社債及び将来購入する社債につき、虚偽の格付がされており、又は将来虚偽の格付がされるおそれがあるという恐怖を一般投資家に与えるものであるところ、一般投資家は、このような恐怖から救済されるべき利益を有しているというべきである。 ウ実際、原告は、被告による指定格付機関としての指定を頼りに日本格付研究所の格付を信頼して本件社債を購入したが、その結果、当該格付が虚偽のものであったために多額の損失を被ったのであり、被告による指定格付機関の指定により、原告の法律上保護されるべき利益が侵害されたということができる。 エ以上のとおりであるから、原告は、被告による指定格付機関の指定により法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者として、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するというべきである。 (2) 被告の主張ア被告による指定格付機関の指定は、一定の行政目的のために、市場から幅広く受け入れられてい 訴訟における原告適格を有するというべきである。 (2) 被告の主張ア被告による指定格付機関の指定は、一定の行政目的のために、市場から幅広く受け入れられている格付を利用する際に、金融庁が利用する民間の格付機関を明らかにする行為にすぎず、他方、原告を含む一般投資家は、上記指定とは全く関係なく、自己責任の判断において、債券投資を行う者である。 したがって、被告による指定行為によって、原告を含む一般投資家が自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあるということはできない。 イよって、原告には、指定格付機関の指定の取消しを求める訴えにおける原告適格がない。 (二) 争点2(取消訴訟の対象としての適格性の有無)について(1) 原告の主張ア行政事件訴訟法3条2項によれば、取消訴訟の対象は、「行政庁の処分」だけでなく、「公権力の行使に当たる行為」すべてである。 イ発行会社が指定格付機関による格付を取得することは、発行登録制度の利用適格要件であり、指定格付機関が特定格付を付与し、かつ、その他所定の要件を満たす場合には、参照方式を利用することができることは、前記(一)(1)イのとおりである。そうすると、指定格付機関による特定格付を取得した発行会社は、市場の情勢に応じて機動的に、有利な時機に債券を発行することができることになる。 このように、多額の債券の発行会社が指定格付機関による格付を取得することは、有利な債券の発行をする資格を付与されることに等しく、格付機関が被告から指定格付機関として指定されるということは、被告から発行会社に対し上記のような資格を付与する権限を授与されるという 得することは、有利な債券の発行をする資格を付与されることに等しく、格付機関が被告から指定格付機関として指定されるということは、被告から発行会社に対し上記のような資格を付与する権限を授与されるということにほかならない。 したがって、被告による指定格付機関の指定は、「公権力の行使」に該当するということができる。 ウよって、被告による指定格付機関の指定は、行政処分に当たらないとしても、証券取引法に基づく「公権力の行使に当たる行為」として、取消訴訟の対象としての適格性を有する。 (2) 被告の主張ア請求1に係る訴えは、行政事件訴訟法3条1項所定の抗告訴訟の一種である取消訴訟であるから、その対象は、行政処分性を有する行為、すなわち、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものでなければならない(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。 イ被告による指定格付機関の指定とは、格付機関のうち、被告がその格付実績、人的構成、組織、格付の方法及び資本構成その他発行者からの中立性に関する事項等を勘案して有効期間を定めて指定したものをいい(内閣府令1条13の2)、金融庁が、一定の行政目的のために市場から幅広く受け入れられている格付を利用する際に、格付の一利用者として、そこで用いる格付及びその格付をする格付機関を具体的に明らかにするものであって、既存の民間格付機関のうち、金融庁が利用する機関を被告において指定して明らかにするものにすぎず、指定の対象となる格付機関に対して特別の地位を付与するものではない。 ものであって、既存の民間格付機関のうち、金融庁が利用する機関を被告において指定して明らかにするものにすぎず、指定の対象となる格付機関に対して特別の地位を付与するものではない。 したがって、被告による指定格付機関の指定は、既存の格付機関の法律上の地位に直接具体的な影響を及ぼさない行為であるから、行政処分ではなく、取消訴訟の対象としての適格性を欠く。 ウよって、請求1に係る訴えは、行政処分性を欠き、不適法というべきである。 (三) 争点3(裁量権の逸脱濫用の有無)について原告の主張(1) 被告は、既存の格付機関を指定格付機関として指定するに当たり、当該格付機関が公正な格付をすることができる中立な機関であるかどうかを審査しなければならず、①市場関係者による利用状況、②格付業務遂行体制の整備状況、③中立性、④格付方法を勘案するほか、証券取引法1条の目的に即して、必要な事項を勘案しなければならない。また、被告は、投資者の保護を貫徹することができなかった過去の事例の有無等を調査して再発の防止に努め、投資者等の保護を図るために、指定格付機関の指定という制度の運用を改善する役割を担い、上記のような調査の結果を踏まえて判断し、指定格付機関の指定を行うべき義務を負っている。 (2) 日本格付研究所は、株式会社マイカルが本件社債を発行するに先立ち、本件社債を「Aー」と格付した。他方において、発行登録追補目論見書には記載されない格付事由では、株式会社マイカルの信用力評価、すなわち、本件社債のリスク評価として「債務償還能力は、当面低水準で推移するものと考えざるを得ない」と判定していた。しかし、債務償還能力が当面低水準で推移するのならば、格付は「A」(債務履行の 力評価、すなわち、本件社債のリスク評価として「債務償還能力は、当面低水準で推移するものと考えざるを得ない」と判定していた。しかし、債務償還能力が当面低水準で推移するのならば、格付は「A」(債務履行の確実性は高い)ではなく、「B」(債務履行の確実性に乏しく、懸念される要素がある)とすべきであった(甲2号証の1ないし3,甲8の5頁1から5行目まで参照)。それにもかかわらず、日本格付研究所が本件社債を「A」と格付したのは、日本格付研究所が株式会社マイカルと癒着しており、本件社債の発行に便宜を図るために、故意に不公正な虚偽の格付符号を付与したものにほかならない。 このように、日本格付研究所は、本件社債の格付作業において意図的に故意に虚偽の格付を行ったものであり、中立性を有しないから、指定格付機関としての適格性を欠き、指定される資格はない。 (3) 日本格付研究所は、前記(2)のとおり、株式会社マイカルの大規模な社債不履行事件にかかわっていた格付機関であったのであるから、被告は、平成15年12月22日付け金融庁告示第55号に係る指定格付機関としての指定を行うに際し、日本格付研究所による株式会社マイカルへの格付が適正であったか否か、発行会社と癒着することのない中立な格付機関であるか否かを調査し、その判断に反映させるべき義務を負っていた。 それにもかかわらず、被告は、日本格付研究所を指定格付機関として指定するに当たり、日本格付研究所が前記(2)のとおり中立性を有しないことを承知の上で、ないしは少なくとも上記のような義務を怠り、重大な過失によって中立性を有しないことを見落としたまま、漫然と指定格付機関に指定した。 したがって、被告が金融庁告示第55号により日本格付研究 くとも上記のような義務を怠り、重大な過失によって中立性を有しないことを見落としたまま、漫然と指定格付機関に指定した。 したがって、被告が金融庁告示第55号により日本格付研究所を指定格付機関として指定した部分は、被告の裁量権の逸脱濫用によるものとして、違法であるというべきである。 2 請求2の争点4(本件決定1の適法性)について(一) 被告の主張(1) 被告がした指定格付機関の指定には、前記1(二)(2)のとおり処分性がない以上、上記の指定によって、原告の法律上の保護された利益が侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあるとはいえないから、原告は、上記の指定に対する異議申立てをする適格を有しない。 (2) 被告は、上記(1)のとおり判断の上、原告の異議申立てを不適法であるとして却下したのであるから、本件決定1は適法である。 (二) 原告の主張(1) 本件決定1は、原告の権利若しくは法律上の保護された利益が侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあるものではないとしたものである。しかし、原告は、行政不服審査法に基づき異議を申立てたのであり、行政不服審査法には、行政事件訴訟法9条のような規定はないのであるから、法律上の利益を論ずること自体誤りである。 しかも、行政不服審査法1条1項は、「処分」のみならず、「公権力の行使に当たる行為」すべてを対象にし、同法2条1項は、公権力の行使に当たる「事実上の行為」まで含めているところ、原告は、「行政の適正な運営」により実現される公益(「国民経済の適切な運営」)からの恩恵の享受という個別具体的な利益が侵害されていて、その救済を求めているのであるから、原告には、行政不服審査法上の申立権がある。 政の適正な運営」により実現される公益(「国民経済の適切な運営」)からの恩恵の享受という個別具体的な利益が侵害されていて、その救済を求めているのであるから、原告には、行政不服審査法上の申立権がある。 (2) それにもかかわらず、被告は、原告の異議申立てをする適格を否定して、本件決定1をしたものであるから、本件決定1は違法である。 3 請求3の争点5(本件決定2の適法性)について(一) 被告の主張(1) 前記2(一)(1)に同じ。 (2) よって、本件決定2は、適法である。 (二) 原告の主張(1) 前記2(二)(1)に同じ。 (2) よって、本件決定2は、違法である。 第四当裁判所の判断一請求1について 1 争点1(原告適格の有無)について(一) 処分の取消訴訟の原告適格については、行政事件訴訟法9条1項が規定しているところ、同項にいう「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益も上記法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である(最高裁昭和57年(行ツ)第46号平成元年2月17日第二小法廷判決・民集43巻2号56頁、最高裁平成元年(行ツ)第130号同4年9月2 該処分の取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である(最高裁昭和57年(行ツ)第46号平成元年2月17日第二小法廷判決・民集43巻2号56頁、最高裁平成元年(行ツ)第130号同4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁参照)。 さらに、行政事件訴訟法9条2項は、「裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。」と定め、処分等の相手方以外の第三者の原告適格を基礎づける「法律上の利益」の有無を判断する際の考慮事項を規定している。 そこで、個々の事件において、原告適格の有無を検討するに当たっては、行政事件訴訟法9条2項に掲げられた各事項をも参酌、勘案して、原告の法律上保護された利益の存否を判断すべきことになる。 (二) 以上を前提に、被告による指定格付機関の指定の取消訴訟につき、当該指定を受けた者ではなく、指定格付機関が付与した格付を参考にするなどして債権投資を行う一般投資家が原告適格を有するか否かについて検討する。 (1) 内閣府令1条13の2によれば、指定格付機関とは、格付機関のうち、被告がその格付実績、人的構成、組織、 して債権投資を行う一般投資家が原告適格を有するか否かについて検討する。 (1) 内閣府令1条13の2によれば、指定格付機関とは、格付機関のうち、被告がその格付実績、人的構成、組織、格付の方法及び資本構成その他発行者からの中立性に関する事項等を勘案して有効期間を定めて指定したものをいうとされている。被告によるこの格付機関の指定は、既存の格付機関の申請により行われる被告の裁量に属する行為と解することができる。そして、この格付機関の指定は、金融庁が格付の一利用者として、発行登録制度の利用適格要件に用いるなど一定の行政目的のために市場から幅広く受け入れられている格付を利用する際に、金融庁が利用する民間格付機関を明らかにするものにすぎないのであるから、元々、公権力の行使として指定格付機関に対して特別の地位を付与するという性質のものではないというべきである。 もっとも、発行会社が指定格付機関による格付を取得することは、発行登録制度の利用適格要件であり(内閣府令9条の4第5項1号ホ参照)、この限りでは、指定格付機関に指定されることは、一定の法的意味を有するといえないことはない。しかし、発行登録制度の利用適格要件に格付基準が導入されたのは、格付が投資家に一層利用され、定着することを企図してのことであり、格付が定着することは、我が国資本市場が一連の市場改革を通じ、「投資家の自己責任原則を基盤として、マーケットメカニズムが十分に機能する、自由で開かれた効率的な市場」として発展していく上で、その定着が重要な前提となると考えられたからにほかならないのであって、個々の一般投資家の権利、利益を保護するためのものではないと解すべきである。しかも、そもそも、債券の格付は、格付機関が、発行会社の事業内容や財務状況の分析を通じて、発行会社の信 ならないのであって、個々の一般投資家の権利、利益を保護するためのものではないと解すべきである。しかも、そもそも、債券の格付は、格付機関が、発行会社の事業内容や財務状況の分析を通じて、発行会社の信用リスクを分析・評価し、ある時点におけるその結果をアルファベットと数字を組み合わせた符号により表現するものにすぎず、格付を付与しても、特別の保証や法的効果が付与されるものではない。また、格付の結果を示す格付符号の定義自体、格付機関によって異なり、その意味も抽象的なものであり、また、同じ債券についても複数の格付機関により格付が異なることがあり得るのであって、相対的な評価にとどまるものであることは公知の事実である。これは指定格付機関にあっても変わらないのであって、指定格付機関ごとの格付の評価が違うことを前提として、内閣府令9条の4第5項1号ホにおいては、特定格付は、被告が指定格付機関ごとに指定する格付とするとしているのである。そうすると、債券の格付は、債権の元本及び利息が当初の契約どおり投資家に支払われる確実性に関する格付機関の過去の一時点における意見にすぎず、その評価自体絶対的なものではない上、何らかの保証や法的効果が付与されるという性質のものではなく、これは、指定格付機関による格付であっても異なるところはないということができる。 また、債権投資の性質上、一般投資家においては、あくまでも自己責任原則の下、刻々と変化する投資先の動向について自ら情報収集を行うなどし、その一環として、格付がそのような性質のものであることを前提として他の格付機関の格付とも比較するなどして投資判断をすることが予定されていると考えるべきである。 そうすると、内閣府令1条13の2や9条の4第5項1号ホ等が、指定格付機関による格付に関し、この格付を参考にしながら債券 付とも比較するなどして投資判断をすることが予定されていると考えるべきである。 そうすると、内閣府令1条13の2や9条の4第5項1号ホ等が、指定格付機関による格付に関し、この格付を参考にしながら債券投資を行う個々の一般投資家の権利、利益を保護すべきものとする趣旨を含むと解すべき根拠はないというべきである。そのほか、指定格付機関の指定が、一般投資家の権利、利益を保護すべきものとする趣旨を含むと解すべき指定格付機関の指定の関係法条、あるいはこれと目的を同じくする関係法令は存在しない。証券取引法が、指定格付機関の指定によって、一般投資家の権利、利益を具体的に保護していると解することもできない。 (3) したがって、行政事件訴訟法9条2項を参酌、勘案しても、個々の一般投資家が、内閣府令1条13の2に規定する指定格付機関の指定の取消訴訟につき、原告適格を有するということはできない。 (三) 以上のとおりであり、原告は、一般投資家として請求1(被告による指定格機関の指定の取消請求)に係る訴えを提起する者であるから、請求1に係る訴えの原告適格を有しない。 2 よって、その余の点について判断するまでもなく、請求1に係る訴えは、不適法である。 二請求2について 1 前記一のとおり、原告の被告による日本格付研究所の指定格付機関としての指定の取消しを求める訴えは、原告適格のない者による不適法な訴えである。そして、本件決定1は、上記の指定によって、原告の法律上の保護された利益が侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあるとはいえないから、原告は上記の指定に対する異議申立てをする適格を有しないとして、不適法な異議申立てであると判断して、これを却下したものであるから、その判断は適法であるというべきである。 なお、証拠(甲 、原告は上記の指定に対する異議申立てをする適格を有しないとして、不適法な異議申立てであると判断して、これを却下したものであるから、その判断は適法であるというべきである。 なお、証拠(甲1の2)によれば、被告は、原告の異議申立てにつき、金融庁が指定格付機関として不適格な日本格付研究所に対して適切な措置を講じていないことを理由とする行政不服審査法7条所定の「行政庁の不作為」に対する異議申立てであると解する余地があるとして、なお検討を進め、行政不服審査法7条の規定する行政庁の不作為に対する異議申立ては、「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をすべきにかかわらず、これをしないこと」(行政不服審査法2条2項)についてすることができるものであるところ、本件においては不作為に先立つ法令に基づく申請行為がそもそも存在しないとして、行政不服審査法50条1項の「不適法であるとき」に該当すると判断し、不適法として却下せざるを得ないと判断したことが認められるが、この判断についても、違法性を論ずべき点は何ら認められない。 2 したがって、請求2(本件決定1の取消請求)は、理由がない。 三請求3について 1 前記二1で判断したとおりであり、本件決定1と同様の理由で原告の異議申立てを却下した本件決定2も適法であるというべきである。 なお、証拠(甲15)によれば、被告は、本件決定2においても、原告の異議申立てにつき、金融庁が指定格付機関として不適格な日本格付研究所に対して適切な措置を講じていないことを理由とする行政不服審査法7条所定の「行政庁の不作為」に対する異議申立てであると解する余地があるとして、なお検討を進め、やはり、同様の理由で不適法として却下せざるを得ないと判断したことが認め いことを理由とする行政不服審査法7条所定の「行政庁の不作為」に対する異議申立てであると解する余地があるとして、なお検討を進め、やはり、同様の理由で不適法として却下せざるを得ないと判断したことが認められるが、この判断についても、本件決定2につき、違法性を論ずべき点は何ら認められない。 2 したがって、請求3(本件決定2の取消請求)は、理由がない。 四文書提出命令について 1 原告は、①株式会社マイカルが破綻した平成13年9月以降に、同会社の破綻及び同会社の発行社債に関して、被告が作成又は受領した一切の報告書及び②平成13年12月21日付け金融庁告示第93号により平成14年1月1日から平成15年12月31日までの間、日本格付研究所を指定格付機関に指定した決定及びけ平成15年12月22日付け金融庁告示第55号により平成16年1月1日から平成17年12月31日までの間、日本格付研究所を指定格付機関に指定した決定に関する決裁書、稟議書、会議資料、会議議事録等、名称のいかんを問わず、上記各決定の理由とその裏付け事実を記載した書類すべてについて文書提出命令を申し立てている。 2 しかし、原告は、上記1①及び②の書類を請求1の本案判断の書証として提出しようとしているところ、請求1に係る訴えは、前記一のとおり不適法なものであるから、これらの書証は、結論に特段の影響を及ぼすものではない。 3 したがって、原告の前記申立ては、その余の点について判断を進めるまでもなく、必要性を欠くものとして却下を免れない。 五結論以上によれば、本件訴えのうち、被告による指定格付機関の指定の取消しを求める訴えは不適法であるから、これを却下することとし、本件決定1及び本件決定2の各取消しを求める各請求は、いずれも理由がないから、これら れば、本件訴えのうち、被告による指定格付機関の指定の取消しを求める訴えは不適法であるから、これを却下することとし、本件決定1及び本件決定2の各取消しを求める各請求は、いずれも理由がないから、これらを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官菅野博之裁判官鈴木正紀裁判官小田靖子

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る