主文 1 一審原告の控訴を却下する。 2 一審被告の控訴を棄却する。 3 控訴費用は一審原告の控訴に係る部分は一審原告の、一審被告の控訴に係る部分は一審被告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 一審原告の控訴(1) 一審原告① 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 ② 一審被告が一審原告に対し平成9年2月7日付けでした審査決定における原判決別紙目録記載1及び2の各1記載の土地に対する平成6年度固定資産税台帳の登録価格をいずれも全額取り消す。 ③ 訴訟費用は、第一、二審とも、一審被告の負担とする。 (2) 一審被告一審原告の控訴を棄却する。 2 一審被告の控訴(1) 一審被告① 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 ② 一審原告の請求を棄却する。 ③ 訴訟費用は、第一、二審とも、一審原告の負担とする。 (2) 一審原告一審被告の控訴を棄却する。 第2 事案の概要本件の事案の概要は、次のとおり付け加えるほか、原判決「事実及び理由」中の「第二事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決書9頁6行目の「という」の次に「内容を加える」を加える。)。 なお、本件決定の違法事由として一審原告が当審で主張するところは、原判決「事実及び理由」中の「第二事案の概要」の四「(原告の主張)」1に記載されているところとほぼ同様である。 1 一審原告の当審における主張(1) 一審原告は台帳に登録された価格のうち適正な時価を超える部分の取消しを求めるものであり、原判決のように一審被告の決定を全部取り消すことは一審原告の申し立てていない事項について判断したものであって違法である。したがって、一審原告には控訴の利益がある。なお、一審被告の決定を全部取り消す判決に対して納税者の控訴を許さないとす 消すことは一審原告の申し立てていない事項について判断したものであって違法である。したがって、一審原告には控訴の利益がある。なお、一審被告の決定を全部取り消す判決に対して納税者の控訴を許さないとすれば納税者が裁判所の認定額に不服があったとしても一審被告の再審理が終了するまで不服の申立てを遷延させることとなり裁判を受ける権利の制約となる。 (2) 原判決は、一審被告の決定のうち登録価格が適正な時価を超える違法がある場合もこれを全部取り消す判決しか許されないとする。しかし、そのような解釈を採ると、納税者の請求が認容された場合は一審被告が再度審理をやり直すこととなり、その再審理の判断に不服があれば納税者は再び取消訴訟を提起することとなる。結局、納税者に不服がある限り永遠に訴訟が繰り返されることとなるが、このような事態は訴訟経済上非効率であることはもちろん、どれだけ訴訟を続けても司法審査によって適正な時価が判断されることはないこととなる。 他方、本件で一審被告の決定に違法事由が存するのは登録価格のうち適正な時価を超えた部分だけであり、その違法部分のみを取り消すのは当然のことである。また、一部取消判決をした場合その拘束力によって市町村長は審査決定と同様の措置を執ることが義務付けられるのであるから、改めて一審被告の審査決定を介在させる必要はなく、介在させないことによって特に不都合が生ずるとは考えられない。 登録価格が適正な時価を超える場合は、裁判所が適正な時価を判断して登録価格のうちこれを超える部分を取り消せば足りるのであって、これを全部取り消した原判決は違法である。 2 一審被告の当審における主張(1) 登録価格が「適正な時価」を上回る場合に控訴人の決定を違法としてその一部ではなく全部を取り消すべきだとすると、事件が裁判所と一審被告との間を往 は違法である。 2 一審被告の当審における主張(1) 登録価格が「適正な時価」を上回る場合に控訴人の決定を違法としてその一部ではなく全部を取り消すべきだとすると、事件が裁判所と一審被告との間を往復することになりその最終的な解決が遅れるばかりか、場合によっては紛争の抜本的な解決を図ることができなくなる事態も生じ得る。また、一部取消判決は一審被告ばかりではなく市町村長も含めた関係行政庁に対して拘束力を及ぼし、同一処分を禁止しその判断内容を尊重した処分を行うことが求められることになるのであるから、裁判所が適正な時価を認定した場合にも再度一審被告の審理を経なければならないとする理由はない。 (2) 地方税法(以下「法」という。)349条1項は、「課税標準」を賦課期日における価格(「適正な時価」)と規定しているにすぎず、「登録価格」を賦課期日における価格と規定しているわけではない。すなわち、本件の賦課期日である平成6年1月1日の不動産の適正な時価と一致しなければならないのは課税標準であって、登録価格が賦課期日における価格と一致しなければならないわけではない。そして、同条項は、課税標準を「基準年度に係る賦課期日における価格で『土地課税台帳に登録されたもの』」と規定しているのであるから、固定資産税の課税標準は、賦課期日における価格そのものではなく、賦課期日に「土地課税台帳に登録された」価格、すなわち、法の要求する種々の手続を履践したうえで賦課期日に課税台帳に登録することができる価格とする趣旨と解され、「適正な時価」の算定基準日は、賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点に求めれば足りる。地方税法は、市町村長に固定資産の価格を2月末日までに決定しなければならないとしているが(法410条)、価格の決定のためには①標準宅地の鑑定評価を行い る一定期間を遡った過去の時点に求めれば足りる。地方税法は、市町村長に固定資産の価格を2月末日までに決定しなければならないとしているが(法410条)、価格の決定のためには①標準宅地の鑑定評価を行い、②これに基づいて当該標準宅地に沿接する主要な街路に路線価を付設し、③さらに、これに比準して主要な街路以外の路線価を付設したうえで、④画地計算法を適用して各筆の評点数を算出し価格を決定しなければならないことになるのに加え、⑤基準宅地の適正な時価を調整する手続を経ることにもなり、この作業を2か月間以内に行うことは実務上到底不可能である。このことを考えても、法は、登録価格の算定基準日を賦課期日ではなく、賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点に求めることを許容しているというべきである。 そして、本件では、平成4年7月1日を評価時点として平成5年1月1日までの時点修正を合わせて登録価格を決定しているが、この登録価格は評価事務に要する期間を考慮した時点でのものであるから、法349条1項が定める「賦課期日における価格」に該当し、適法である。 (3) 個別鑑定による時価立証は許されないこと固定資産税の価格の決定は、その対象となる大量の固定資産を対象にして限りある人的、物的資源を活用して適正な時価の評価を行うという極めて困難な作業を通じて行われるが、法は、自治大臣の定めた評価基準という定型的、統一的な基準に従ってその評価を行わせることとし、これによって、大量に存在する固定資産の評価を一定の期間内に適正に行い、各市町村相互間、各市町村内の各固定資産の間の評価の均衡を確保し、評価に関与する者の個人差に基づき評価の不均衡が生じることを防止しようとしているのである。こうした立法趣旨からすれば、評価基準自体が違法であるというような特段の事情がない限 間の評価の均衡を確保し、評価に関与する者の個人差に基づき評価の不均衡が生じることを防止しようとしているのである。こうした立法趣旨からすれば、評価基準自体が違法であるというような特段の事情がない限り、固定資産の価格の評価が評価基準に従って適正に行われている以上、その価格は、固定資産税の課税標準として適正な価格とみるべきである。したがって、当該土地の固定資産税評価額が「適正な時価」といえるか否かは、市街化宅地評価法に基づき、評価基準等のあてはめが適正にされているか、評価基準自体が適正か、時点修正率が適正かという観点から検討されるべきであり、個別鑑定によって時価を立証することは許されるべきではない。 (4) 標準宅地の容積率による減価補正についてA鑑定は、本件各土地の容積率が道路から20m以内は商業地域に属し、道路から20m以遠は第2種住居地域に属していることから、商業地域部分の面積と第2種住居地域部分の面積を区分し、それぞれの部分の建築可能延床面積を算出して、基準容積率を477.58%と算定し、他方、標準的画地の間口距離を18.0m、奥行距離を24.0mとし、標準的画地の一部が第2種住居地域に属するため、基準容積率を483.72%と認定したが、この基準容積率の差は6.14%に過ぎないのでこの程度の格差は減価補正の対象とはならないとしたものであり(地価公示価格の算定において容積率が100%劣るとマイナス5ないし10ポイントの格差が認められるとされている。)、この評価は適正である。 第3 証拠関係証拠関係は本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。 第4 当裁判所の判断 1 一審原告の控訴の利益について原判決は、本件決定は本件各土地に係る登録価格が客観的な時価を超えていると認められるから違法であるとした上、本件 あるから、これを引用する。 第4 当裁判所の判断 1 一審原告の控訴の利益について原判決は、本件決定は本件各土地に係る登録価格が客観的な時価を超えていると認められるから違法であるとした上、本件決定は全体として一個不可分なものであり、そのうち価格に関する部分の一部のみを取り消すことは許されないとして本件決定の全部を取り消す旨の判決をした。そして、原判決では適正な時価は全く認定されていないから、原判決の効果は、一審原告との関係でいえば一審被告に対して本件各土地の平成6年度の登録価格に関して審査申出をした状態に戻すだけであり、一審原告に対して法律的な不利益を課するものではない。もっとも、後述のとおり適正な時価が認定できる場合に審査決定のうち登録価格が適正な時価を超える部分だけを取り消す一部取消判決をすることができる場合もあると解されるが(なお、一審原告は適正な時価をゼロとして全部取消の判決を求めている。)、このような一部取消判決が原判決と比較して一般的に一審原告に利益なものとはいえないから、本件決定のうちの一部を取り消すことを求めて控訴する利益も認めることはできない。したがって、一審原告の控訴はその利益を欠く不適法なものというべきである。 2 本件決定の違法について当裁判所も、本件決定のうち本件各土地の登録価格は適正な時価を超えているものと推認され、本件決定は違法なものと考える。その理由は、次のとおり付け加えるほか、原判決「事実及び理由」中の「第三当裁判所の判断」一ないし五に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決書78頁8行目冒頭から12行目末尾までを削る。)。 (1) 固定資産評価における適正な時価一審被告は、法349条1項は、「課税標準」を賦課期日における価格と規定しているにすぎず、「登録価格」を賦課期日における 冒頭から12行目末尾までを削る。)。 (1) 固定資産評価における適正な時価一審被告は、法349条1項は、「課税標準」を賦課期日における価格と規定しているにすぎず、「登録価格」を賦課期日における価格と規定しているわけではなく、課税標準を「基準年度に係る賦課期日における価格で『土地課税台帳に登録されたもの』」と規定しているから、固定資産税の課税標準は、賦課期日における価格そのものではなく、賦課期日に「土地課税台帳に登録された」価格、すなわち、法の要求する種々の手続を履践したうえで賦課期日に課税台帳に登録することができる価格とする趣旨と解され、「適正な時価」の算定基準日は、賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点に求めれば足りると主張する。 しかし、同条項は課税標準を基準年度における賦課期日における価格(適正な時価・法341条1項5号)とし、登録価格も同じ時点の適正な時価とすべきことを定めていることは、その規定だけからでも明らかというべきである。もともと、固定資産税は、土地の所有という事実に着目して課される財産税であり、正常な条件のもとに成立する当該土地の取引価格を課税標準とするものであると解されるが、賦課期日以外の時点の価格を登録価格とし、課税標準とすることはこのような固定資産税の性質にはそぐわない。しかも、同法が固定資産税台帳の登録事項として当該不動産の「基準年度の価格」(土地又は家屋の基準年度に係る価格・同法349条1項かっこ書)を掲げていること(同法381条1、3項)、固定資産評価員の評価の直接の対象を「当該土地又は家屋の基準年度の価格」としていること(同法409条1項)からみても、法は、課税標準及び登録価格のいずれについてもこれを賦課期日における適正な時価としていることは明らかというべきである。なお、一審被告は 基準年度の価格」としていること(同法409条1項)からみても、法は、課税標準及び登録価格のいずれについてもこれを賦課期日における適正な時価としていることは明らかというべきである。なお、一審被告は、平成6年度から平成8年度の負担調整措置を定める法附則17条の2及び18条は、価格調査基準日の価格を基礎として上記各年度の課税標準を決定するものとしているから、価格決定の算定基準日を価格調査基準日としていることは明らかであると主張するが、上記附則の条項は上記各年度の課税標準となるべき価格の平成5年度課税標準ないし前年度課税標準等からの上昇率に応じた負担調整措置を規定するだけであって、価格調査基準日の価格を基礎とした負担調整措置を規定したものと解することはできず、一審被告の主張はその前提において失当である。 ② もっとも、市町村長は、毎年2月末日までに固定資産の価格等の決定をしなければならないものとされているところ(法410条)、多数存在する固定資産の評価を限られた人員と予算によって行わなければならないことに鑑みると、第一次的には賦課期日から評価に必要な期間を遡った期日を基準に固定資産の価格を評価することが許されないと解すべき根拠はなく、そのような時点における固定資産の評価をしたこと自体が違法といえないことも明らかである。 そして、また、評価基準等による評価は、固定資産の評価方法として十分な合理性をもっているとはいえ評価の対象となる固定資産の個別事情を十分に評価しきれず、個別的な評価に比して誤差の生ずる可能性は大きい。そして、この評価によって住民に対して負担を課するものであることを考えると、評価価格そのものではなく法の許容する範囲でその一定割合を固定資産の価格とすることも許されるべきであり、7割評価通達の趣旨がいずれにあるにせよ上記のような趣旨 て負担を課するものであることを考えると、評価価格そのものではなく法の許容する範囲でその一定割合を固定資産の価格とすることも許されるべきであり、7割評価通達の趣旨がいずれにあるにせよ上記のような趣旨で同通達の合理性を肯定することができる。 (2) 奥行価格補正率について一審原告は、一審被告の用いた奥行価格補正率(乙6)は、オフィスビルの賃料や保証金が大規模なビルほど高い現在の状態に一致せず、このことは普通商業地区にも当てはまり、この補正率では大規模ビルの所有者あるいは間口距離や奥行距離割合の高い土地所有者を不当に優遇することとなって平等原則に違反するとする陳述書(甲25)を提出している。 証拠(甲19の②、25、乙6)によると、本件に適用された東京都固定資産(土地)評価事務取扱要領の付表1「奥行価格補正率」(乙6)は昭和38年に評価基準が定められたころに制定されたものであるが、財団法人資産評価システム研究センターの「土地評価に関する調査研究」(甲19の②添付資料8)では、同表等につき建設技術等の進歩による高層、大規模ビルの出現等社会経済情勢の著しい変化に対応しきれず、その結果最近の土地利用、土地取引の実情との間に相当のかい離を生じるに至っており、平成3年及び平成4年の地価公示データを分析した結果によると特に高度商業地区、繁華街において標準値の平均奥行距離における現行の画地補正率では奥行逓減がかかってしまうケースが見られ現行の奥行価格逓減率が一部実情に合っていないとして、その見直しを検討すべきであるとの提言をしていること、相続税評価に関する財産基本通達における奥行補正率表は平成3年12月に実情に沿うように改正され、東京都においても平成4年11月発出された自治省の通達(平成9年度評価替えからの適用を前提に奥行価格逓減率の見直しの検討を 財産基本通達における奥行補正率表は平成3年12月に実情に沿うように改正され、東京都においても平成4年11月発出された自治省の通達(平成9年度評価替えからの適用を前提に奥行価格逓減率の見直しの検討を行う旨の内容)に従い新たな補正率表(甲25付属資料2)が実施されるに至っていること、新たに制定された補正率表では、本件に適用された補正率表に比較して奥行の大きな土地の補正率は小さなものとなっていることが認められる。このような事実からすると、少なくとも高度商業地区・繁華街、普通商業地区においては、本件の賦課期日(平成6年1月1日)時点において奥行の大きな土地は実勢に比較して大きな奥行価格補正がされていたのではないかと推認することができる。しかし、大量の土地を評価するための評価基準等の見直しは、その不合理や正当な数値が一見して明らかであるというような場合は別として、土地取引や賃貸の実情を調査した上、その基準や採用されている数値が不合理なものかどうか、実情に沿う基準あるいは数値がどのようになるのかを検討しなければならず、さらには納税者などの意見も見極めながら行われる必要があるのであって、評価基準等が実情に合致しない事態が一般的に生じた時点と、これをその実情に合致させるための見直しの時点との間にある程度の時間的ずれの生ずることはやむを得ない側面がある。また、大量の土地の評価を一挙に行うための評価基準等による評価は、個別評価のような正確性を期し難いことは前述のとおりであるから、このことは基準の適用によって一部実情に比して税負担の面からは一見他の固定資産に比して有利な評価を受ける固定資産が出てくる可能性も否定しきれないことを示している。したがって、このような評価基準等の見直しの即応性の限界や評価基準による評価そのものの限界から、単に一部に実情に比して税 有利な評価を受ける固定資産が出てくる可能性も否定しきれないことを示している。したがって、このような評価基準等の見直しの即応性の限界や評価基準による評価そのものの限界から、単に一部に実情に比して税負担の面から有利な固定資産があるという一事だけで評価基準などを適用した評価全体が平等原則に違反する違法なものになると解することはできない。そして、前記認定のような見直し作業の状況及び本件に適用された奥行価格補正率表と新たな補正率表との差で最大の格差は奥行100mを超える高度商業地域・繁華街で1. 33倍(旧補正率0.6、新補正率0.8)にとどまるものであることも考えれば、平成6年度の固定資産評価に際して旧補正率を適用したことは平等原則に違反しないというべきである。 (3) 本件各土地の評価について① 本件各土地の登録価格は、平成4年7月1日時点を基準時点とするA鑑定(乙8、15)に基づき、これに平成5年1月1日時点までの時点修正(マイナス14.3%。乙8)を加えた額に7割評価通達を適用し、更に奥行価格補正をして決定されたものである。 ② A鑑定は、標準宅地とされた本件土地1の平成4年7月1日時点の更地としての正常価格を鑑定評価するもので、取引事例比較法、収益還元法(直接法)に基づく試算価格を算出した上で、さらに、東京都基準地千代田5-6の基準価格に時点修正、個別的要因の標準化補正、地域格差の補正をして導いた比準価格を考慮して、その調整を行って標準価格を評価したものである。それぞれの鑑定手法及び内容は前記認定(原判決「事実及び理由」中の「第三当裁判所の判断」四の1)のとおりであり、標準的画地の標準価格の評価としては適正なものと評価でき、また、平成5年1月1日までの時点修正も適正なものということができる。 ③ 他方、証拠(甲19、乙15、16の① 判断」四の1)のとおりであり、標準的画地の標準価格の評価としては適正なものと評価でき、また、平成5年1月1日までの時点修正も適正なものということができる。 ③ 他方、証拠(甲19、乙15、16の①、②、17の①ないし③、18ないし20)によると、平成9年度の固定資産税の評価に当たって本件各土地は標準宅地として評価の対象となったが、その際規準価格算定の基礎とされた地価公示地千代田5-15の平成5年1月1日から平成6年1月1日までの公示価格の下落率は31.3%であり、また、A鑑定の際に規準価格算定の基礎とされた東京都基準地千代田5-6の平成4年7月1日から平成5年7月1日までの下落率は28.3%、同日から平成6年7月1日までの下落率は27.9%であるから、同土地の平成5年1月1日から平成6年1月1日までの価格の下落率も30%近いものであったことが認められる。そうすると、本件各土地の評価基準日である平成5年1月1日から賦課期日である平成6年1月1日までの地価の下落率も30パーセントを超える可能性のあることは否定できず、このことはまた、本件土地ついてA鑑定の結果の約7割をもって決定された登録価格が賦課期日における適正な時価を超えていることを推認させるものである。 ④ また、証拠(甲16、19、乙14、15)によると、本件各土地は、幅員11mの道路に接する土地であり、道路から20m以内については商業地域に属し、容積率は500%であるのに対し、道路から20m以遠は第二種住居地域に属しているから、容積率は400%であるところ、A鑑定は、この点を理由とする減価修正はしていない。しかし、C鑑定は、本件各土地の容積率を477%とした上で、標準的画地に対する格差修正率を3%とし、また、平成9年度における固定資産登録価格の決定に際し本件各土地の評価を行った 価修正はしていない。しかし、C鑑定は、本件各土地の容積率を477%とした上で、標準的画地に対する格差修正率を3%とし、また、平成9年度における固定資産登録価格の決定に際し本件各土地の評価を行った不動産鑑定士Bは、本件各土地の容積率は約480%であるとした上で、4%の減価修正をしていることが認められる。 ところで、一審被告は、A鑑定においては標準的画地の間口距離を18.0m、奥行距離を24.0mとしているため、標準的画地の基準容積率は483.72%となり、本件各土地と標準的画地の基準容積率の差は6.14%にしかならず、A鑑定において格差率を0と認定したことは適正であると主張し、これに沿うA作成の「標準宅地の容積率による減価補正について」と題する書面(乙50)を提出している。C鑑定及びB鑑定とA鑑定との間に容積率を理由とする減価補正の要否について差異が生じたのは、比較の対象となる標準的画地の間口距離及び奥行距離の差異によるもの、すなわちC鑑定及びB鑑定はこれをいずれも20.0mとしていることによるものである。そして、本件で提出されている資料で標準画地の間口距離及び奥行距離をA鑑定のように想定することが適正なものであることを確定できず、むしろ二人の不動産鑑定士が一致してこれをいずれも20mと想定していることはこの点に関するA鑑定の判断に問題のあることを示唆するものである。したがって、平成4年7月1日の本件各土地に関してA鑑定の結果から更に少なくとも3%程度の減価修正をする必要性があったというべきである。そして、A鑑定が規準価格算定の基礎とした東京都基準地千代田5-6の平成5年1月1日から平成6年1月1日までの地価の下落率が少なくとも30%近いものであったことは前述のとおりであり、A鑑定の本件各土地の評価に更に3%程度の容積率を理由とする 京都基準地千代田5-6の平成5年1月1日から平成6年1月1日までの地価の下落率が少なくとも30%近いものであったことは前述のとおりであり、A鑑定の本件各土地の評価に更に3%程度の容積率を理由とする減価補正をしなければならないとすると、A鑑定における評価の3割程度として決定された本件各土地の登録価格は、賦課期日である平成6年1月1日の本件各土地の時価を超えている疑いは更に濃いこととなる。 (4) 以上のとおり、本件各土地の平成5年1月1日から平成6年1月1日までの地価の下落率が30%を超えている疑いがある上、A鑑定による評価に更に3%程度の減価補正をする必要もあると認められるから、その登録価格が適正な時価の範囲内にあることを認めることはできない。したがって、本件決定は違法というべきである。 3 ところで、登録価格を不服とする審査申出を棄却した固定資産評価審査委員会の審査決定の取消訴訟において、取消事由として主張された違法があるとして審査決定を取り消すべき場合、その判決は、一般の行政処分の取消判決の場合と同様、審査決定の全部を取り消すのが原則である。その結果、同委員会は判決の趣旨に従い改めて審査申出に対する決定をし(行政事件訴訟法33条2項)、これにより原処分は是正されることになる(法432条12項、435条の適用を受ける場合である。)。 もっとも、この訴訟についてはいわゆる裁決主義が採られており(法432条1項、434条)、原告は審査決定固有の瑕疵だけでなく原処分である登録価格の決定自体の違法をも主張することができるから、登録価格が適正な価格を超えていることを理由に登録価格の決定が違法とされこれを相当とした審査決定が取り消されることがある。この場合裁判所が適正な価格として具体的金額を認定し登録価格がこれを超えることを理由にその決定を違 超えていることを理由に登録価格の決定が違法とされこれを相当とした審査決定が取り消されることがある。この場合裁判所が適正な価格として具体的金額を認定し登録価格がこれを超えることを理由にその決定を違法とするときは、その超える部分についてのみ審査決定を取り消すいわゆる一部取消判決をするのが相当であると考えられる。一般の行政処分の多くが数量的に可分な一部を特定して違法と観念する余地がないのに対し、登録価格の決定については、適正な価格を超える部分についてのみ違法と評価することが可能であり、取消しの範囲は一義的に明白である上、決定を全部取り消すべきものとすると、同委員会としては改めて審査することになるが、判決の趣旨に従わなければならないことからして判決において適正な価格として認定された金額をもって登録価格とするしかなく、改めて審査申出について審査させる実益がなく、しかも取消訴訟の原告である納税者に重ねて同じ手続に服することを強いるとともに紛争の司法的解決を遅らせることになって相当でないと考えられるからである。そしてこのような一部取消判決も、その拘束力は関係行政庁である市町村長に及ぶのであるから(行政事件訴訟法33条1項)、法が432条、434条とは別に一部取消判決があった場合の手続に関する規定を置いていないことをもって上記判断を左右するものとはいえない。 なお、登録価格の決定が違法とされる場合でも、客観的に適正とされる価格を認定し判断するためには訴訟手続内の資料では足りずそのため裁判所として具体的な金額を認定判断することができないときは、同委員会に改めて判決の趣旨に従いこれについての審理をさせるのが相当であると考えられる。このことは、裁判所と同委員会の機能の差異からする要請でもあるといえる。この場合には原則どおり同委員会の決定を全体として取 めて判決の趣旨に従いこれについての審理をさせるのが相当であると考えられる。このことは、裁判所と同委員会の機能の差異からする要請でもあるといえる。この場合には原則どおり同委員会の決定を全体として取り消すことになる。 本件では登録価格が客観的時価を超えていることは認定できても、提出された証拠だけでは適正な時価がいくらであるかを確定することはできない。このような事案においては適正な時価について上記趣旨に従い改めて審査させるのが相当であるから、一審被告の決定を全部取り消すべきである。 第5 結論以上のとおり、一審原告の控訴は不適法であるからこれを却下することとし、一審被告の控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担にっき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法67条1項本文、61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第17民事部裁判長裁判官新村正人裁判官笠井勝彦裁判官田川直之
▼ クリックして全文を表示