主文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 控訴人は,被控訴人に対し,金1123万2105円及びこれに対する平成15年11月13日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。 2 控訴人の被控訴人に対する申立てを棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,その1を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 被控訴人は,控訴人に対し,2894万4505円及びこれに対する平成16年12月27日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え(民事訴訟法260条2項の規定に基づく申立て)。 第2 事案の概要 1 本件の概要(1) 本件は,自己所有の土地を売却し,その売買代金等を資金にして,自宅を建築した被控訴人が,その取引の相手方であり土地建物の売買・建築工事の設計施工を業とする株式会社である控訴人に対し,①売買契約の債務不履行に基づく約定損害金請求(後記3の(1)),②不法行為に基づく損害賠償,不当利得に基づく利得の返還又は契約に基づく過払代金相当額返還の請求(後記3の(2)),③土地売買契約に基づく残代金請求(後記3の(3)),④建築請負契約の付随的債務の債務不履行に基づく損害賠償請求(後記3の(4)),⑤不法行為に基づく損害賠償請求(後記3の(5)),及び,⑥土地売買契約に基づく残代金請求(後記3の(6))をする事案の控訴審である。 (2) 原審は,上記①ないし⑥を認めた上で,控訴人の主張する消滅時効の抗弁を一部認めたが,弁済の抗弁については故意又は重大な過失による時機に後れた防御方法の提出に当たるとしてその主張及び立証を認めなかった。 (3) 控訴人は,原判決を不服と 訴人の主張する消滅時効の抗弁を一部認めたが,弁済の抗弁については故意又は重大な過失による時機に後れた防御方法の提出に当たるとしてその主張及び立証を認めなかった。 (3) 控訴人は,原判決を不服として控訴して,原審で提出を認められなかった主張及び立証を控訴審において再度提出した。 (4) また,控訴人は,民事訴訟法260条2項により,給付物の返還及び損害賠償を求める申立てをする。 2 証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(1) 被控訴人は,平成8年6月28日,控訴人に対し,被控訴人所有の別紙物件目録1記載の土地(以下「本件土地1」という。)を,次の約定で売り渡す契約をした(以下「契約1」という。甲1)。 ア売買代金(代金額については争いがある。)の支払時期(ア) 契約締結時 500万円(イ) 平成10年4月末日まで残額イ所有権移転登記手続,土地引渡し所有権移転登記手続は売買代金全額と引換えにし,土地引渡しは所有権移転の時期までにする。 ウ契約違反による解除(ア) 売主(被控訴人)又は買主(控訴人)において本契約に違反したときは,その相手方は,催告の上,本件契約を解除することができる。 (イ) 前項の契約解除に伴う賠償額は,売買代金の20パーセント相当額とする。 (2) 控訴人は,平成8年9月30日,被控訴人との間で,被控訴人の自宅建物の建物建築工事を,代金2900万円(消費税抜き),代金支払時期を契約時に300万円,完成時に残額とする約定で,請け負う契約をした(以下「契約2」という。甲2)。 (3) 控訴人は,平成9年2月18日,被控訴人に対し,別紙物件目録2,3記載の各土地(以下,「本件土地2」,「本件土地3」という。)を,売買代金は坪当たり20万円として計算された611万円(本件土地2につき388万80 9年2月18日,被控訴人に対し,別紙物件目録2,3記載の各土地(以下,「本件土地2」,「本件土地3」という。)を,売買代金は坪当たり20万円として計算された611万円(本件土地2につき388万8000円,本件土地3につき222万2000円)とし,代金支払時期を平成9年11月末日とする約定で売り渡す契約をした(以下「契約3」という。甲3)。 (4) 控訴人は,平成11年3月1日,被控訴人との間で,被控訴人の自宅敷地の土地造成工事を代金798万円(消費税込み),代金支払時期を完成後とする約定で,請け負う契約をした(以下「契約4」という。甲4)。 (5) 被控訴人は,平成11年11月30日,控訴人に対し,被控訴人所有の別紙物件目録4,5記載の各土地(以下,「本件土地4」,「本件土地5」という。)を売買代金(代金額については争いがある。)の支払時期を契約時に586万5000円,移転登記完了までに残額とする約定で売り渡す契約をした(以下「契約5」という。甲5)。 (6) 控訴人は,平成11年ころ,本件土地2を被控訴人から代金388万8000円,支払時期を移転登記完了時までとする約定で買い戻す契約をした(以下「契約6」という。甲6)。 3 争点及びこれに対する当事者の主張(1) 約定損害金請求権の存否(被控訴人の主張)ア本件土地1に関する契約1の売買代金額は坪当たり12万円で計算された4817万8181円(契約書(甲1)に代金として3974万7000円とあるのは誤記である。)であり,控訴人は,代金の全額を支払わない限り土地の引渡しがされず,また所有権移転登記手続ができないにもかかわらず,代金未払のうちに本件土地1を分筆して,被控訴人からA,B及び控訴人名義にそれぞれ所有権移転登記手続を完了させ,占有も移転させた。 イ控訴人が契約1の代金 権移転登記手続ができないにもかかわらず,代金未払のうちに本件土地1を分筆して,被控訴人からA,B及び控訴人名義にそれぞれ所有権移転登記手続を完了させ,占有も移転させた。 イ控訴人が契約1の代金未払のうちに引渡し及び所有権移転登記手続をしたことは債務不履行に当たる。すなわち,契約1は,引渡し及び所有権移転登記を代金全額の支払と引き換えとしていること(甲1の6条,7条)の反面解釈及び信義則上,買主は代金全額支払までは対象となる不動産の引渡しも所有権移転登記手続もしてはならないという義務が発生しているから,控訴人が代金未払のうちに引渡し及び所有権移転登記手続をしたことは債務不履行となる。 よって,被控訴人は,控訴人に対し,上記の契約1の約定に基づき,売買代金(だたし,契約書上の金額の範囲とする。)の20パーセントに該当する約定損害金794万9400円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成15年11月13日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 ウ控訴人は,下記のとおり,契約1を解除せずに約定損害金の請求をすることは主張自体失当であると主張するが,上記2の(1)ウ(イ)の条項は文言上は解除に伴う損害賠償の予定額を規定しているものの,同(ア)の条項は民法に定められた債務不履行の場合の催告解除を規定した当然の規定であることから,同(イ)の条項の意味は,実際の損害額の算定を巡る争いを避けるために,現に生じた損害の証明をしなくとも一定の損害賠償金額を請求できるように,債務不履行の損害賠償の予定額を合意したところにある。そして,債務不履行の場合には,解除して損害賠償請求することも,解除せず損害賠償請求することもできるのであり,解除をしなければ損害賠償請求ができないわけではないから,被控訴人は解除をす ころにある。そして,債務不履行の場合には,解除して損害賠償請求することも,解除せず損害賠償請求することもできるのであり,解除をしなければ損害賠償請求ができないわけではないから,被控訴人は解除をすることなく上記2の(1)ウ(イ)の条項に基づく損害賠償をすることができる(最高裁判決昭和63年11月25日判例時報1301号95頁参照)。なお,本件においては,解除しても既に契約目的の不動産は第三者に売買されて被控訴人に戻ることはないから,解除してもしなくても損害賠償請求の金額に差異はない。 (控訴人の主張)ア契約1の売買代金額は坪当たり9万9000円で計算された3974万7000円であり,契約書(甲1)に記載されたとおりである。また,土地の売買契約において,買主側が代金を支払わないうちに占有移転及び所有権移転登記手続をしたことは,買主の債務不履行とはならない。占有移転及び所有権移転登記手続は売主の債務であり,買主の債務ではない。 仮に買主が勝手にそのような行為をしたとしても,それは不法行為の問題であって債務不履行ではない。したがって,被控訴人の上記の主張はそれ自体失当である。 イ上記2の(1)ウ(イ)の条項に基づく約定損害賠償請求は,契約の解除を前提とするものであるが,被控訴人は契約1を解除していないから,その前提を欠いており,主張自体失当である。 被控訴人が引用する最高裁判決は,本件とは事案を異にし,ただちには妥当しない。仮にその論理によるとしても,損害発生事実の主張・立証は必要となるはずであるがそれはなされていない。被控訴人は,契約目的の不動産が第三者に売買されて被控訴人に戻ることはないというが,そのことが直ちに控訴人に債務不履行責任としての損害発生事実の主張をしたことにはならない。 ウ本件土地1の分筆登記をしたのは被控訴人自身 不動産が第三者に売買されて被控訴人に戻ることはないというが,そのことが直ちに控訴人に債務不履行責任としての損害発生事実の主張をしたことにはならない。 ウ本件土地1の分筆登記をしたのは被控訴人自身である。 (2) 不法行為等に基づく損害賠償金請求権の存否(1)(被控訴人の主張)ア控訴人は,本件土地1に関する契約1を締結する際,本件土地2,3を通路部分として被控訴人が控訴人のために取得する義務があり,かつ,被控訴人が建築を予定する自宅の出入りにも必要であるかのように被控訴人を欺罔して,被控訴人に対し,通路にしかならず本来ならば最高価格でも契約1の土地代金額と同じ坪当たり12万円が相当である本件土地2,3(本件土地3につき133万5200円)を坪当たり20万円で計算された611万円(本件土地2につき388万8000円,本件土地3につき222万2000円。)で買い受けさせる契約3を締結した。 イ控訴人は,契約3について不正があったことを認め,本件土地2を被控訴人から契約3と同価格(388万8000円)で買い戻すために契約6を締結した。 ウ本件土地3も本来なら最高価格でも契約1の土地代金と同じ坪当たり12万円(133万5200円)が相当であるから,それを坪当たり20万円(222万2000円)という不当な高額で契約させたことにより,被控訴人は89万円を下らない損害を受けた。 エよって,被控訴人は,控訴人に対して,不法行為に基づき損害賠償金89万円及びこれに対する不法行為の後である平成15年11月13日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 オまた,上記89万円は控訴人の不当利得であるから,被控訴人は,不当利得に基づく返還請求権としても主張する。さらに,契約3の契約内容は最高額でも坪当たり12万円で計 る遅延損害金の支払を求める。 オまた,上記89万円は控訴人の不当利得であるから,被控訴人は,不当利得に基づく返還請求権としても主張する。さらに,契約3の契約内容は最高額でも坪当たり12万円で計算した133万5200円が本来であり,それを坪当たり20万円で計算した222万2000円で契約書を作成させられたことにより過払金89万円が生じたものであるから,契約3に基づく過払金返還請求権としても主張する。 (控訴人の主張)ア被控訴人に契約3に基づく代金支払の事実がなければ,被控訴人の損害の発生はないことになるところ,被控訴人は代金支払の事実を主張しておらず,主張自体失当である。 イ坪当たり20万円とする代金額で売買契約が成立しているから,法律上の原因に欠けるところはなく,また,控訴人に差額を返還する義務もない。 (3) 未払代金請求権の存否(1)(被控訴人の主張)ア控訴人は,本件土地1に関する契約1について,本来坪当たり12万円の売買であるべきところ,契約書(甲1)では坪当たり9万9000円で計算されているという坪単価の違いを認め,その差額を支払う修正をするため,本件土地4,5に関する契約5を締結した。なお,契約1の締結当時は道路部分となる本件土地4,5は無償提供という約束だったが,価格修正のために同各土地につき被控訴人から控訴人に対する売買の形式を取ることになったものである。 イ契約1は本来売買代金が4817万8181円であるべきところが契約書に843万1181円少ない3974万7000円と記載されていたものであって,その差額843万1181円を修正するために契約5が締結されたものであるから,契約5の売買代金は843万1181円である(なお,契約書(甲5)には誤って724万8940円と記載された。)。 ウよって,被控訴人は 万1181円を修正するために契約5が締結されたものであるから,契約5の売買代金は843万1181円である(なお,契約書(甲5)には誤って724万8940円と記載された。)。 ウよって,被控訴人は,控訴人に対して,契約5の代金のうちその代金額843万1181円から契約書上の代金額724万8940円を差し引いた118万2241円及びこれに対する弁済期の後である平成15年11月13日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める(なお,上記除かれた契約書上の代金額724万8940円については後記(6)の契約5において請求する。)。 (控訴人の主張)被控訴人の主張自体不分明である。 (4) 債務不履行による損害賠償請求権の存否(被控訴人の主張)ア控訴人は,被控訴人の自宅建物に関する契約2に基づき,その建物の配管,配線に関する図面を被控訴人に交付していない。 イ被控訴人は,控訴人にこれらの図面の交付を再三にわたり求めたが,控訴人はこれに応じない。 ウよって,被控訴人は,控訴人に対して,契約2の付随的債務の債務不履行に基づく損害賠償金として50万円(新たに建物や敷地の配線・配管を調査して図面を作成することを別業者に依頼した場合に,最低限度必要と思われる額。)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成15年11月13日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (控訴人の主張)被控訴人の主張を争う。被控訴人は図面の引渡しを求めていない。 (5) 不法行為に基づく損害賠償請求権の存否(2)(被控訴人の主張)被控訴人は,上記の各契約を含む別紙不法行為の一覧(但し,「原告」とあるのを「被控訴人」と,「被告」とあるのを「控訴人」と,それぞれ読みかえる。)に記載の一連の不正,及び,宅地 (被控訴人の主張)被控訴人は,上記の各契約を含む別紙不法行為の一覧(但し,「原告」とあるのを「被控訴人」と,「被告」とあるのを「控訴人」と,それぞれ読みかえる。)に記載の一連の不正,及び,宅地建物取引業者でもある控訴人が,被控訴人に対して,これまで上記の契約関係についての清算内容を説明しようとしない不誠実な対応(調停及び本件訴訟における対応を含む。)により精神的苦痛を受けたので,その慰謝料として300万円及びこれに対する不法行為の後である平成15年11月13日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (控訴人の主張)被控訴人の主張を争う。 (6) 未払代金等請求権の存否(2)(被控訴人の主張)ア本件土地1に関する契約1(なお,請求する売買代金額は契約書上の3974万7000円の範囲とする。),本件土地4,5に関する契約5(なお,請求する売買代金額は契約書上の724万8940円の範囲とする。)及び本件土地2に関する契約6(売買代金額は388万8000円である。)に基づく控訴人の被控訴人に対する未払代金の合計は5088万3940円である。控訴人は,このうち,平成8年9月11日に500万円,平成10年4月11日に731万円及び平成10年7月から平成11年2月にかけて合計218万1100円(以上合計1449万1100円)を支払ったから,控訴人の未払代金額は3639万2840円となる。 イ被控訴人の自宅建物に関する契約2(請負代金額は消費税込みで2987万円である。),本件土地2,3に関する契約3(売買代金額は611万円である。)及び被控訴人の自宅敷地の土地造成工事に関する契約4(請負代金額は消費税込みで798万円である。)に基づく被控訴人の未払代金の合計は4396万円である。被控訴人は,このうち, は611万円である。)及び被控訴人の自宅敷地の土地造成工事に関する契約4(請負代金額は消費税込みで798万円である。)に基づく被控訴人の未払代金の合計は4396万円である。被控訴人は,このうち,平成8年9月30日に300万円,平成11年7月1日に999万9265円及び平成11年10月22日に580万円(以上合計1879万9265円)を支払ったから,被控訴人の未払代金額は2516万0735円となる。 ウ被控訴人は,平成16年6月1日到達の本件訴えの変更の申立書をもって上記アとイの各未払代金を対当額で相殺する旨の意思表示をした。 エよって,被控訴人は,控訴人に対して,上記アの被控訴人の控訴人に対する未払代金債権3639万2840円から,上記イの控訴人の被控訴人に対する未払代金債権2516万0735円を控除した1123万2105円及びこれに対する弁済期の後である平成15年11月13日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (控訴人の主張)ア被控訴人がいかなる法的根拠に基づいて請求するのか不明である。 イ控訴人が,平成8年9月11日,被控訴人に500万円を払ったこと,及び,被控訴人が,平成8年9月30日,控訴人に300万円を支払ったことを認める。 (7) 請求原因のまとめ(被控訴人の主張)したがって,被控訴人は,控訴人に対して,上記(1)ないし(6)の合計2475万3746円及びこれに対する平成15年11月13日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 (控訴人の主張)被控訴人の主張を争う。 (8) 消滅時効の抗弁の成否(控訴人の主張)ア仮に被控訴人の主張する上記(5)の不法行為の事実があったとしても,それに基づく損害賠償請求権は遅くとも平成15 主張)被控訴人の主張を争う。 (8) 消滅時効の抗弁の成否(控訴人の主張)ア仮に被控訴人の主張する上記(5)の不法行為の事実があったとしても,それに基づく損害賠償請求権は遅くとも平成15年1月末日には消滅時効が完成している。その他,被控訴人の主張のうち上記(2)の不法行為による損害賠償請求に関するものについても,同様に,消滅時効が完成している。 イ控訴人は,平成16年5月20日到達の準備書面をもって上記の各消滅時効の援用の意思表示をした。 (被控訴人の主張)ア消滅時効の完成を争う。控訴人は宅地建物取引業者であって誠実に不動産売買契約を遂行すべき立場にあり,被控訴人は不動産取引に疎い老人であることからしても,不法行為をして,何度修正を求めても応じようとしなかった控訴人が時効の援用をすることは信義則上許されず,また,権利の濫用である。 イ被控訴人が契約1ないし6の不正による損害及び加害者を知ったのは,被控訴人代理人弁護士が,平成15年4月10日に不動産登記簿謄本を取り寄せた結果,契約1の土地が代金未払のうちに分筆されて他人に売却されていること,控訴人が宅地建物取引業者でありながら違法に契約3の他人物売買をしていることを被控訴人に指摘し,また,平成10年の被控訴人の確定申告が虚偽の内容でなされていることを指摘したときである。 (9) 控訴人の新たな防御方法提出の可否(控訴人の主張)ア控訴人が原審において平成16年9月7日以降に提出した主張及び立証(弁済の抗弁)は,時機に後れた防御方法ではない。控訴人に故意又は重大な過失はなく,訴訟を遅延させるものでもない。したがって,これらを却下した原判決は法令の解釈適用を誤った違法がある。 イ被控訴人の主張は,請求の原因自体が特定しておらず,その意味で主張自体失当であった。そ なく,訴訟を遅延させるものでもない。したがって,これらを却下した原判決は法令の解釈適用を誤った違法がある。 イ被控訴人の主張は,請求の原因自体が特定しておらず,その意味で主張自体失当であった。そのため,控訴人は,被控訴人の主張上の問題点を整理して示し,被控訴人に是正を求めると共に,原審裁判所に対してしかるべき訴訟指揮を求めた。しかし,原審裁判所は何らの主張整理を促すことなく,一方的に控訴人に対し,無意味かつ不当な釈明を求め,これを釈明命令という形式で強制した。 控訴人としては,被控訴人の請求は金銭請求であることしか理解できなかった。被控訴人は6件の契約関係を主張するものの,それらの相互の法律関係及び請求の趣旨との法律関係は不明なままであった。しかも,債務不履行責任を求めるのか,不法行為責任を求めるのかもあいまいな部分があった。 控訴人の提出した乙号証のうち,特に乙3ないし6,乙11,乙12号証の2は控訴人が被控訴人に対し金銭の支払をしたことに対する被控訴人作成の領収証である。これらの提出については,被控訴人の主張,請求原因が定まらなければ,立証趣旨が定まらず,安易に提出できるものではない。もし,被控訴人の請求が個別的契約関係についての債務不履行の主張であるとすれば,それぞれの特定された契約についての弁済の抗弁の証拠として提出することになる。しかし,そもそもそれ以前に主張自体が失当とされればあえて提出する必要性すらない。また,契約の無効,取消若しくは解除が問題となれば,これを争った上で,仮定的に支払済代金の返還を求めることになるが,これが原状回復の請求となるのか,予備的相殺の抗弁の問題となるのかは,被控訴人の主張・立証の構成,内容いかんによって変わってくることがらである。 したがって,被控訴人の法的主張が整理されない以上,反 これが原状回復の請求となるのか,予備的相殺の抗弁の問題となるのかは,被控訴人の主張・立証の構成,内容いかんによって変わってくることがらである。 したがって,被控訴人の法的主張が整理されない以上,反論としての主張をする余地はなく,そのような状況下で漫然と証拠を提出することは考えられなかった。 それにもかかわらず,控訴人が平成16年10月1日以降に主張,立証をしたのは,原審裁判所にあるべき訴訟指揮を求めることを止め,将来の控訴審の審理に備え,できるだけ早期に裁判所の目に触れる機会を提示しておくべきと判断したからである。 原審裁判所は,被控訴人の主張に対してしかるべき釈明権を行使すべきであったのであり,釈明権不行使の違法がある。自らその違法を犯しながら,控訴人が防御のための主張・証拠を提出しなかったことを時機に後れたとするのは論理的に矛盾している。主張・証拠を提出させなかったのは原審裁判所自身と評価できる。 ウ民事訴訟法157条が適用されるためには,これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認められることが必要である。しかし,控訴人が提出した上記の書証は即時取調可能である上,控訴人代表者本人の尋問も出頭は確実であるし,陳述書も提出しており,尋問事項も明示しているのであるから,何ら訴訟を遅延させるものではない。控訴人は,重要な証拠調である人証調の期日(平成16年10月21日)の前に相当な期間をおいて主張,立証を提出している。また,申請証拠を全部却下すべきではない。それぞれの主張ないし証拠の内容に照らし判断すべきである。 (被控訴人の主張)ア控訴人は,被控訴人の再三にわたる求釈明(控訴人と被控訴人との間の各取引に伴う代金支払の清算等に関する事項を内容とするもの)にも応じず,裁判所の平成16年4月28日付け及び同年7月28日付けの各釈 控訴人は,被控訴人の再三にわたる求釈明(控訴人と被控訴人との間の各取引に伴う代金支払の清算等に関する事項を内容とするもの)にも応じず,裁判所の平成16年4月28日付け及び同年7月28日付けの各釈明命令にも応じないものであるので,以後,控訴人による不当な訴訟を遅延させないために,控訴人からの新たな主張,立証は一切許されるべきではない。 イ控訴人は,被控訴人の主張が不明確であるので釈明に応じる必要がなかった旨を主張するが,訴状の請求の原因において,未払代金の支払請求,債務不履行による損害賠償請求及び不法行為に基づく損害賠償請求であることは明記されており,控訴人が釈明命令に応じる必要もないほど不明確な主張ではない。また,被控訴人は,平成16年5月31日付け準備書面,同日付け訴え変更の申立書等により主張を補充して,より明確に法的主張をしてきた。そして,平成16年6月8日付け準備書面では,原審裁判所に対し,被控訴人の主張に不明確な点があれば求釈明されたい旨を申し出たが,原審裁判所は被控訴人の主張に不明確な点がないと判断して求釈明をしなかった。したがって,被控訴人の主張が不明確なため求釈明に応じる必要がないとの控訴人の主張は認められない。 ウ控訴人が新たに主張,立証しようとする事項は,これまでに容易に主張し証拠の提出ができたものばかりである上,被控訴人が控訴人に対して控訴人・被控訴人間の契約書及びこれに関する領収書等の文書送付嘱託を申し立てた際には,控訴人は必要性なしとしてその送付を拒絶したものであり,後日都合のいい証拠のみを提出することは信義則上許されない。さらに,その提出しようとする領収書類は,裏付けとなる金員の交付関係を明らかにする書類が何ら提出されておらず,被控訴人としてはこれらの証拠が採用された場合にはその存在及び裏付けについ 上許されない。さらに,その提出しようとする領収書類は,裏付けとなる金員の交付関係を明らかにする書類が何ら提出されておらず,被控訴人としてはこれらの証拠が採用された場合にはその存在及び裏付けについて争うこととなり,争点整理を始めからやり直すこととなって,訴訟の完結を明らかに著しく遅延させることになる。 (10) 違法不当な訴訟手続(控訴人の主張)ア原審裁判所は,裁判官が代わったにもかかわらず,平成16年10月21日の第4回口頭弁論期日において弁論更新手続を行わず(民事訴訟法249条違反),また,弁論準備手続に付しておきながらその目的たる争点及び証拠の整理を全く行わず(同法168条違反),かつ,弁論準備手続の結果陳述手続を行わなかった(同法173条違反)。そうであるのに,これらをしたことにして不実の口頭弁論調書を作成したものであって重大な違法がある。 イ原審裁判所は,被控訴人の主張事実につき不分明の点が多数あるにもかかわらず,全く釈明権を行使しないまま判決において根拠もなく事案の概要及び被控訴人の主張を整理したものであって,その違法性は甚だしい。 (11) 原状回復等の給付申立て(控訴人の主張)ア給付物の返還請求(ア) 被控訴人は,平成16年12月20日,仮執行宣言付きの原判決に基づき,控訴人の業務請負先2者(岐阜県及び中津川市)及び取引先金融機関1社(C銀行中津川支店)を第三債務者とする債権差押命令の申立てをし,同月21日ころ,第三債務者らに同命令が送達された。 (イ) 控訴人は,同月22日,被控訴人に対し,原判決主文第1項記載の債務全額に相当する金額(同月27日までの遅延損害金を含む2394万4505円)を同月27日をもって仮に支払う旨の通知をしたが,被控訴人は,和解をしないのであれば仮の支払は受領しないとして受領を の債務全額に相当する金額(同月27日までの遅延損害金を含む2394万4505円)を同月27日をもって仮に支払う旨の通知をしたが,被控訴人は,和解をしないのであれば仮の支払は受領しないとして受領を拒否した。 (ウ) そこで,控訴人は,同月27日,同額を弁済供託した。 (エ) よって,民事訴訟法260条2項に基づき,被控訴人に対して,上記の金額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。 イ損害賠償請求(ア) 被控訴人は,自ら債権差押命令を申し立てておきながら,控訴人の任意の支払については受領を拒んだ。これは,被控訴人の債権差押命令の申立てが,控訴人に対する嫌がらせのためのみの目的でなされたことを示している。控訴人は,この債権差押命令申立てにより,自己の業務請負先及び取引先金融機関に対し支払能力について不安を与えたばかりでなく,銀行取引約定に基づく期限の利益喪失事由に該当する事実を発生させられ,経済的信用失墜を受けた。 (イ) 上記による控訴人の損害(債権者ないし取引先に対する経済的信用の失墜による損害及び会社としての将来の経営上の不安による損害)は低く見積もっても500万円を下らない。 (ウ) よって,民事訴訟法260条2項に基づき,損害の賠償を求める。 (被控訴人の主張)ア給付物の返還請求供託は,民事訴訟法260条2項にいう給付に含まれない。同項は,判決の変更の場合,給付を受けたものを返還することを定めているが,被控訴人は供託により給付を受けておらず,返還する給付物がない。また,被控訴人には,判決確定までは,原判決により認められた金額を受領する義務はないから,受領を拒絶したことにより利息を含めて返還義務が発生するとするならば不当な結果となる。 イ損害賠償請求勝訴者が敗訴者から全く任意弁済の提案がない場合に,仮執行宣言 額を受領する義務はないから,受領を拒絶したことにより利息を含めて返還義務が発生するとするならば不当な結果となる。 イ損害賠償請求勝訴者が敗訴者から全く任意弁済の提案がない場合に,仮執行宣言付き判決をもって債権執行をすることは当然の権利行使であり,敗訴者も覚悟すべきことであって,債権差押は違法ではない。控訴人は,被控訴人が嫌がらせとして債権執行をしたと主張するが,そもそも被控訴人が債権執行するまで一度も控訴人から任意弁済の提案はなく,被控訴人はやむなく権利確保のために債権執行をした。 しかも,控訴人による供託の事実を確認後,被控訴人は直ちに債権差押を取り下げている。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)約定損害金請求権の存否について(1) 被控訴人は,本件土地1に関わる契約1について,売買代金全額の支払と土地の引渡し及び所有権移転登記手続とが同時履行となっているにもかかわらず,引渡し及び所有権移転登記手続が先に行われたことをもって,買主である控訴人に売買契約上,または,信義則上の義務違反による債務不履行があるから,上記の特約に基づき損害賠償を請求すると主張する。 しかし,双務契約における同時履行の抗弁とは,当事者間の公平の原則から,当事者の一方が,相手方がその債務の履行を提供するまでは自己の債務の履行を拒むことができるというに留まるのであり(民法533条),一方当事者が同時履行の抗弁を行使することなく自己の債務を先履行した場合に,履行の提供をしていない当事者に反対債務の受領を禁じるものではないから,買主である控訴人が代金未払のうちに引渡し及び移転登記を受けたというそのことのみをもって信義則違反ということはできない。そして,控訴人と被控訴人間の契約1において,引渡し及び所有権移転登記手続の時期を代金全額の支払と引換としたこ に引渡し及び移転登記を受けたというそのことのみをもって信義則違反ということはできない。そして,控訴人と被控訴人間の契約1において,引渡し及び所有権移転登記手続の時期を代金全額の支払と引換としたことが,それ自体から,当事者双方に上記の双務契約における同時履行の抗弁を与える以上に,当事者双方に,同時履行でなければ反対債務の受領をしてはならないとの義務を定めた趣旨であるとは解することができず,他にこれを認めるべき的確な事情はない。 (2) したがって,被控訴人が主張する債務不履行は認めることができず,その余について判断するまでもなく,被控訴人が主張する約定損害金請求は理由がない。 2 争点(2)不法行為等に基づく損害賠償金請求権の存否(1)について(1) 被控訴人は,本件土地2,3に関わる契約3の代金額について,最高価格でも坪当たり12万円が相当と主張し,被控訴人の陳述書(甲26)には,「私が売った土地1が坪12万円(契約書では坪9万9000円)に対し,通路としての価値しかない土地2,3が坪20万円となるのは,あまりに不当」と述べる部分がある。しかし,証拠(甲7,14の①,②,26)によれば,本件土地1は地目が田であるのに対して,本件土地2,3は地目が宅地であり,本件土地2,3は,契約3の締結時に現に公衆用道路として使用されていたものではなく,契約3により被控訴人が取得した後に控訴人に提供して道路用地とする目的で契約したというのであるから,本件土地2,3が本件土地1と同程度あるいはそれ以下の価格で取り引きされることが相当であるとは認めることができず,他に,本件土地2,3について契約3で定められた価格が不相当であることを認めるに足る証拠はない。 (2) したがって,その余について判断するまでもなく,契約3についての被控訴人の過払金返還請求 きず,他に,本件土地2,3について契約3で定められた価格が不相当であることを認めるに足る証拠はない。 (2) したがって,その余について判断するまでもなく,契約3についての被控訴人の過払金返還請求は理由がない。 3 争点(3)未払代金請求権の存否(1)について(1) 被控訴人は,本件土地4,5に関わる契約5の売買代金は843万1181円が正しい,すなわち,契約1は本来坪当たり12万円で計算された4817万8181円の売買であったところ,契約書(甲1)には坪当たり9万9000円で計算された3974万7000円が記載されるという誤りがあったことから,当初無償で提供するはずだった本件土地4,5を契約1の差額である843万1181円で売却することとなったと主張する。そして,被控訴人の陳述書(甲26)には,控訴人の担当者との間で本件土地1は坪当たり12万円で合意していた,控訴人の代表者も,平成11年8月ころ,本件土地1は坪当たり12万円で契約したものであることを認めてくれたが,既に本件土地1は第三者に売却されており会社の決算も済んでいるので契約締結をやり直すことはできないとして,その調整として,被控訴人が無償で提供することとなっていた道路用地をその差額分で購入するという形で調整するから許して欲しいと言ったので,被控訴人はこれに応じたとの記載がある。そして,証拠(甲1,5)によれば,被控訴人と控訴人との間で平成8年6月18日に締結された契約1の契約書(甲1)では,同契約の特約で,売主(被控訴人)が買主(控訴人)に道路用地を提供するとなっていたものが,平成11年11月30日に締結された契約5の契約書(甲5)では,特記事項として,本件土地4,5について,「上記土地は道路として提供する。」との記載があることから,道路用地を控訴人が被控訴人から有償 平成11年11月30日に締結された契約5の契約書(甲5)では,特記事項として,本件土地4,5について,「上記土地は道路として提供する。」との記載があることから,道路用地を控訴人が被控訴人から有償で取得したものと認めることができる。 (2) しかし,被控訴人の上記の陳述書によれば,道路用地が契約5で有償で取引された経過について,被控訴人自身は契約1の締結時に道路部分の土地の無償提供を了解した記憶がなく,契約書(甲1)の当該特約部分は自分が署名押印した当時は書いてなかった記憶であるとして不満を述べていることが認められるのであるから,同人が無償で提供する義務のあった本件土地4,5を契約1の差額相当分で売買する形にするとの控訴人代表者の説明に応じたとの説明は直ちに信用することはできない。また,証人Dの供述によれば,契約1の差額相当分で本件土地4,5の売買を意図したとする契約5の締結を控訴人と交渉したのは同人であるところ,当初の契約1で合意額と契約書記載額とに相違があったことを発端として新たに契約5を締結させたとの経緯でありながら,契約5の合意金額と契約書記載額の相違を確認していないというのであって不自然であり,その説明する経緯も直ちに信用することができない。そして,他に契約1が契約書の記載と異なり本来坪当たり12万円で契約されたものであり,これを修正するために契約5の売買代金が843万1181円と合意されたという被控訴人の供述を裏付けるに足る的確な証拠はない。 (3) したがって,契約5の未払代金として118万2241円及びその遅延損害金の支払を求める被控訴人の請求は理由がない。 4 争点(4)債務不履行による損害賠償請求権の存否について(1) 被控訴人は,被控訴人の自宅建物の建築請負契約である契約2の付随的債務として,控訴人に,建物の配 求める被控訴人の請求は理由がない。 4 争点(4)債務不履行による損害賠償請求権の存否について(1) 被控訴人は,被控訴人の自宅建物の建築請負契約である契約2の付随的債務として,控訴人に,建物の配管,配線に関する図面を被控訴人に交付する義務があると主張する。そして,証拠(甲21)によれば,控訴人は,被控訴人に対して,契約2に基づき,案内図・配置図,面積表,1階平面図,2階平面図,立面図,かなばかり図の合計6枚の図面を交付していることが認められるところ,これ以外に建物の配管,配線に関する図面を交付する義務が建築請負契約から当然に生ずるものとは認められず,他に,控訴人に被控訴人が指摘する図面を交付する義務があったことを認めるに足る証拠はない。 (2) したがって,図面交付による債務不履行に基づく損害賠償を求める被控訴人の請求は理由がない。 5 争点(5)不法行為に基づく損害賠償請求権の存否(2)について(1) 被控訴人は,控訴人には一連の契約等に不正があったと主張し,被控訴人の上記の陳述書及び同人の供述,証人Dの供述には,これに沿う部分があることが認められる。しかし,上記3の(2)のとおり,被控訴人が主張する控訴人の一連の不正の発端である契約1の代金額についてはこれを認めるに足る証拠がないのであり,その余の点についても,被控訴人らの供述を裏付けるに足る的確な証拠はない。 (2) したがって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の一連の不法行為に基づく損害賠償を求める被控訴人の請求は理由がない。 6 争点(6)未払代金等請求権の存否(2)について(1) 証拠(甲1,5,6,12,13,14の①)によれば,契約1(売買代金3974万7000円),契約5(売買代金724万8940円)及び契約6(売買代金388万8000円)により控訴人 ついて(1) 証拠(甲1,5,6,12,13,14の①)によれば,契約1(売買代金3974万7000円),契約5(売買代金724万8940円)及び契約6(売買代金388万8000円)により控訴人が被控訴人に支払うべき売買代金合計が5088万3940円となること,本件土地4,5及び2について被控訴人から控訴人へ所有権移転登記が終了していることを認めることができる。そして,上記第2の2(1),(5)及び(6)のとおり契約1,契約5及び契約6の売買代金支払時期は遅くとも所有権移転登記時とされていることからすると,上記の売買代金はいずれも履行期が到来していることが明らかである。 (2) 被控訴人は,このうち1449万1100円の支払を受けたことを自認し,また,このうち2516万0735円については自己の控訴人に対する債務と相殺したとして消滅したことを自認するから,控訴人の未払残代金は1123万2105円となる。 7 争点(9)控訴人の新たな防御方法提出の可否ついて(1) 弁論の全趣旨により認められる本件訴訟前の当事者間の交渉の経緯及び原審の審理経過は,以下のとおりである。 ア被控訴人は,本件訴えの提起前である平成15年4月18日ころ,控訴人に,両者間の取引に伴う清算関係について尋ねる文書を送付した。これに対して,控訴人は,同年4月28日ころ,代金関係などの清算はすべて完了していると回答した。これに納得しなかった被控訴人は,控訴人を相手方として民事調停を申し立てたが,控訴人は,全て解決,終了済みと理解しており,調停に応ずる意思はないとの答弁書を提出して期日に出席しなかったために調停手続は終了した。そこで,被控訴人は,本件訴えを提起し,原審の審理当初から,控訴人に対して,お互いの金銭授受関係がすべて清算済みというのであれば,その内容を明確にせ て期日に出席しなかったために調停手続は終了した。そこで,被控訴人は,本件訴えを提起し,原審の審理当初から,控訴人に対して,お互いの金銭授受関係がすべて清算済みというのであれば,その内容を明確にせよとの求釈明を繰り返した(被控訴人の平成16年1月21日付け準備書面,同年2月24日付け準備書面,同年3月23日付け準備書面他)。しかし,控訴人は,これに応じなかった。 イ原審裁判所は,弁論準備手続中である平成16年4月28日,控訴人に対して,期限を同年5月28日として以下の釈明を命じた。 ① 被控訴人主張の各契約についてその存否及び内容に関する控訴人の主張を明らかにし,存在を認めるものについては,締結の時期,関係者,内容について具体的主張をなすこと。 ② 控訴人主張の清算関係についてⅠ 主張の清算関係の内容を明確にし,その時期,当事者,具体的内容を特定すること。 Ⅱ 特に双方及び関係者間で授受された金員があればその額,授受の時期,趣旨を明確にすること。 ③ 上記①,②に関し,契約及び清算関係の存在,内容に関する書証があれば全て提出すること。但し,既に甲号証として提出済みのもの及び手元にないものを除く。 ④ 各契約ないし契約書及び清算関係についてその関連性の有無に関する控訴人の主張を明らかにし,関連があると主張する範囲でその内容を明示すること。 ウ控訴人は,同年5月7日,原審裁判所に対して,釈明権の行使は,あくまでも,事案の真相究明や迅速かつ適正な紛争解決を図るために,必要な範囲で公平になされるべきであって,当事者や裁判所による証拠漁りに亘ってはならないから,釈明権を行使する場合には必要性と相当性とを備えていなければならず,その対象となる事項(求釈明事項)は,個別具体的でなければならないとした上で,上記求釈明①について,必要と認める限度 ならないから,釈明権を行使する場合には必要性と相当性とを備えていなければならず,その対象となる事項(求釈明事項)は,個別具体的でなければならないとした上で,上記求釈明①について,必要と認める限度において既に主張している,裁判所は,被控訴人主張のどのような要件事実に対する控訴人のいかなる主張が不明瞭,不完全,矛盾しているというのかを明らかにされたいと回答し,同②及び③について,そもそも控訴人は清算関係の主張は全くしていないと回答し,同④について,被控訴人主張のどの要件事実ないし立証若しくは控訴人主張のどのことがらに関するものをいうのか理解できないと回答した。 エ原審裁判所は,同年5月11日に,再度,控訴人に対して,上記の釈明命令に応じるよう促し,同時に,代金関係等の清算については,控訴人訴訟代理人自身が,平成15年4月28日付けで清算はすべて完了している旨の書面を被控訴人訴訟代理人に送付した上,同書面を平成16年1月19日付け準備書面に添付して主張を行っていること,被控訴人訴訟代理人からの,控訴人がすべて清算済みというのであれば早急にその清算関係とそれを裏付ける資料を提出されたい旨の主張に対して控訴人が積極的な反論をしていないことを指摘した。 これに対して,控訴人は,上記釈明命令は弁論主義に反し,立証責任の分配の原則に違背し,訴訟の複雑化,遅延を招く不適法にして不当なものであるとして異議を申立て,また,上記釈明命令の取り消しを求め,釈明には応じなかった。原審裁判所は,平成16年6月8日の第2回弁論準備手続においても,控訴人に対して上記釈明命令への応答を求めたが,控訴人は,請求原因との関連性が分からない,必要性について理解できないとして釈明をしなかった。 被控訴人は,同年5月31日に,控訴人に対して,被控訴人が控訴人宛てに作 明命令への応答を求めたが,控訴人は,請求原因との関連性が分からない,必要性について理解できないとして釈明をしなかった。 被控訴人は,同年5月31日に,控訴人に対して,被控訴人が控訴人宛てに作成した領収書等の提出を求める文書送付嘱託を申立て,原審裁判所が同年6月15日にこれを採用したが,控訴人は,同年7月2日に,応じる理由も必要もないと思料するとして,送付しない旨の回答をした。 被控訴人は,控訴人が送付嘱託に応じないのであれば,今後文書送付嘱託で提出を求められた書面を自分に有利な証拠として提出することは信義則上許されず,また,時機に後れた防御方法となると主張した上で,今後争点整理を続行することは困難であるので,早急に人証調をされたいと主張した。 オ控訴人は,同年6月7日,上記釈明命令の取消を求めて名古屋高等裁判所に抗告を申し立てたが,同年7月20日に抗告は却下された。(なお,控訴人は,同月23日,特別抗告及び許可抗告の申立てをしたが,許可抗告については,同年9月8日に名古屋高等裁判所が許可しない旨の決定をした。特別抗告については,同年10月20日に最高裁判所が棄却した。)カ原審裁判所は,同年7月28日,控訴人に対して,上記釈明命令と同一内容の釈明を,期限を同年8月31日として再度命じた。これに対して,控訴人は,裁判所において,まず被控訴人主張にかかる事実及び法的根拠につき争点整理されたいと意見を述べ,釈明を行わなかった。 同年9月7日に行われた第4回弁論準備手続期日において,控訴人は,人証の採用は本件の争点が明確になっていないために異議があると述べたが,原審裁判所は,同日,弁論準備手続を終結して,人証(被控訴人本人及び証人1名)を採用し,次回期日(同年10月21日)にこれを取り調べることとした。 キ控訴人は,弁論準備手 に異議があると述べたが,原審裁判所は,同日,弁論準備手続を終結して,人証(被控訴人本人及び証人1名)を採用し,次回期日(同年10月21日)にこれを取り調べることとした。 キ控訴人は,弁論準備手続終結後である同年10月1日から18日までの間に,弁済の抗弁を主張する準備書面を裁判所に提出し,書証として乙1号証ないし14号証を提出し,控訴人代表者本人尋問の申請書を提出したが,被控訴人は,上記の準備書面及び証拠の提出は時機に後れた防御方法の提出であり,これらを採用することは訴訟の完結を遅延させるとして却下を求めた。 ク被控訴人は,同年5月11日までに,訴状,準備書面(同年1月21日付け,2月4日付け,2月24日付け,3月23日付け)を提出し,更に同年7月28日までの間に,準備書面(同年5月17日付け,5月31日付け,6月8日付け,6月9日付け,7月8日付け)のほか,同年5月31日付けの訴えの変更の申立書を提出している。これらの準備書面及び訴えの変更申立書により被控訴人が主張する内容は,上記第2の3(1)ないし(7)の各争点の被控訴人の主張欄に記載のとおりである。 被控訴人は,その後,原審で,同年9月18日付け及び10月15日付け準備書面を提出しているが,同年9月18日付け準備書面は,同年5月31日付け準備書面の控訴人の消滅時効援用の抗弁に対して,「慰謝料300万円以外は不法行為に基づく請求ではない」と記載したものを,「慰謝料300万円及び契約3以外は不法行為に基づく請求ではない」と訂正したに過ぎず,新たな主張をしたものではない。また,同年10月15日付け準備書面は,控訴人が同年10月1日以降に提出した新たな主張,立証について,時機に後れた防御方法であって却下すべきであるとの意見を記載したものである。 ケ原審裁判所は,同年10月21日 日付け準備書面は,控訴人が同年10月1日以降に提出した新たな主張,立証について,時機に後れた防御方法であって却下すべきであるとの意見を記載したものである。 ケ原審裁判所は,同年10月21日の第4回口頭弁論期日において,控訴人が同年10月1日以降に提出した新たな主張,立証をすべて制限して,弁論準備手続終結時に予定された人証(被控訴人本人及び証人D)のみを取り調べて,同日弁論を終結した。 (2) 以上の経過に照らすと,控訴人は,被控訴人から,主として被控訴人との間の取引の清算関係についての反論の主張及び立証を求められ,原審裁判所からも清算関係についての主張立証をせよと2回に亘って釈明命令を受け,更に,被控訴人から領収書等の文書送付嘱託の申立てがなされたのに対しても応答しなかったにもかかわらず,2回目の釈明命令の期限である同年8月31日を1か月以上経過した弁論準備手続終結後に,新たに弁済の主張及び立証を提出しようとしたものであり,かつ,その提出しようとする内容は,弁済の抗弁及びこれを裏付ける領収書であって,上記の本件訴訟前の対応からすると,控訴人がその主張及び立証の提出を早期に行うことが不可能あるいは著しく困難であるとは考えられないものであるから,時機に後れた主張及び立証ということができる。 控訴人は,時機に後れた主張,立証とはいえない理由として,被控訴人の請求が特定しておらず,控訴人には理解できないにもかかわらず原審裁判所が主張整理をしなかった,あるいは,弁済の立証は,請求原因が定まらなければ安易に提出できるものではない,主張自体失当であれば敢えて提出する必要すらなかった,相殺の抗弁ではなく支払済代金の返還請求となる可能性もあった等と指摘するが,上記のとおり,被控訴人の請求は複数に亘るものの,個々の請求の訴訟物は特定している であれば敢えて提出する必要すらなかった,相殺の抗弁ではなく支払済代金の返還請求となる可能性もあった等と指摘するが,上記のとおり,被控訴人の請求は複数に亘るものの,個々の請求の訴訟物は特定しているといえるものであり,代理人弁護士に委任している控訴人がこの請求に対して弁済の抗弁を出すことができないほど複雑かつ不明確な主張が放置されたものとは認められない。控訴人としては,被控訴人の主張するところが主張自体失当と理解し,あるいは,後日法律構成が変更となる可能性があったとしても,遅くとも,原審裁判所の再度の釈明命令の期間満了時までには,予備的にせよ弁済の抗弁を提出することに何ら支障があったものとは認めることができず,控訴人の上記の指摘はいずれも採用できない。 (3) そして,上記の本件訴訟前の交渉経過,及び,控訴人が原審裁判所の第1回目の釈明命令の釈明事項②及び③に対して,そもそも控訴人は清算関係の主張は全くしていないと回答し,被控訴人の文書送付嘱託について必要性なしとの回答をしていることに照らすと,時機に後れたことにつき,控訴人に故意又は重大な過失があるものと見るのが相当である。 (4) 更に,時機に後れた防御方法として却下するためには,新たな主張及び立証の提出が,訴訟の完結を遅延させるものであることを要するところ,被控訴人は,控訴人が提出する弁済の抗弁が採用された場合,これを争い,控訴人が提出しようとする書証の成立もすべて否認して,金員の移動状況を明らかにする取引台帳,銀行取引明細書等の裏付け資料の提出を求める予定であると主張しているものであり,被控訴人は,控訴人担当者から何度もいろいろな書類に押印をさせられたと述べていること(甲26),控訴人が主張しようとする弁済の抗弁の内容は,控訴人が被控訴人に代わって被控訴人の税務申告をした際の譲 被控訴人は,控訴人担当者から何度もいろいろな書類に押印をさせられたと述べていること(甲26),控訴人が主張しようとする弁済の抗弁の内容は,控訴人が被控訴人に代わって被控訴人の税務申告をした際の譲渡代金の受領状況欄の記載(甲20)とも一致しないことが窺えることに照らすと,控訴人の弁済の抗弁及びこれに関する書証の提出を認めた場合には,これにつき,なお,主張及び立証を双方の当事者に尽くさせる必要があることが認められるのであり,したがって,これらは訴訟の完結を遅延させるものと認められる。 (5) 以上によれば,控訴人の新たな主張及び立証を制限した原審裁判所の訴訟指揮を違法ということはできない。 (6) 控訴人は,申請証拠を全部却下すべきではなく,それぞれの主張ないし証拠の内容に照らし判断すべきであるとも主張するが,上記の経緯に照らすと,控訴人が平成16年10月1日以降に提出した証拠は一律に時機に後れた防御方法と見るべきであるから,控訴人の上記の主張を採用することはできない。 (7) なお,控訴人は,控訴審において,原審で却下された新たな主張及び立証を再度提出したものであるが,上記の経緯に照らし,控訴審においても時機に後れた防御方法と見るべきであるから,その主張及び立証を認めなかったものである。 8 争点(10)原審裁判所の違法不当な訴訟手続について(1) 控訴人は,原審裁判所が弁論更新手続を行わず,弁論準備手続において争点及び証拠の整理を行わず,弁論準備手続終了後の弁論において結果陳述手続を行わなかったにもかかわらず,これらを行った旨の口頭弁論調書を作成したと主張するが,これらを認めるに足る証拠はない。 (2) また,控訴人は,原審裁判所に釈明権不行使のまま判決をした違法があると主張するが,上記のとおり被控訴人の請求は特定しているものである を作成したと主張するが,これらを認めるに足る証拠はない。 (2) また,控訴人は,原審裁判所に釈明権不行使のまま判決をした違法があると主張するが,上記のとおり被控訴人の請求は特定しているものであるから,原審裁判所に,これに対する釈明義務があったものとは認められない。 9 争点(11)原状回復等の給付申立てについて(1) 給付物の返還請求民事訴訟法260条2項は,本案判決を変更する場合に,その判決の仮執行宣言に基づき被告が給付したものの返還を原告に命じることができるとするところ,同条にいう給付とは,返還を命じる当然の前提として,原告が現実に受領したことを要すると解すべきである。これを本件について見るに,証拠(甲31ないし44,45の①ないし③,46の①,②,乙16,17ないし23)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,仮執行宣言付きの原判決に基づき,平成16年12月20日に債権差押命令の申立てをして,同日,岐阜地方裁判所多治見支部により債権差押命令が出されたことから,控訴人が,同月27日,同日までの遅延損害金を含む2394万4505円を弁済供託したものであることが認められるが,被控訴人がこれを現実に受領したことを認めるに足る証拠はない。したがって,本判決が原判決を変更するとしても,被控訴人に給付物の返還義務があるものとは認められない。 (2) 損害賠償請求上記のとおり,被控訴人は,仮執行宣言付きの原判決に基づき債権差押命令を行ったものであるから,原判決が変更され,債権差押命令がその根拠を失った場合には,被控訴人は債権差押命令により控訴人に生じた損害について賠償をすべき責任があり,このことは,後日,被控訴人が債権差押命令を取り下げたとしても遡って消滅するものではない。 しかし,被控訴人の請求は,上記のとおり,未払残代金1123万2 生じた損害について賠償をすべき責任があり,このことは,後日,被控訴人が債権差押命令を取り下げたとしても遡って消滅するものではない。 しかし,被控訴人の請求は,上記のとおり,未払残代金1123万2105円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度でなお理由があり,この限度では,なお仮執行宣言付きの原判決は維持されることとなるのであるから,上記の債権差押命令自体が根拠を失うものではなく,したがって,控訴人が主張するとおり上記の債権差押命令により控訴人に経済的な信用の失墜があったとしても,なお,被控訴人が控訴人に賠償すべき損害があるものとは認められない。 第4 結論よって,被控訴人の請求は,控訴人に対して,契約1,5及び6に基づき,未払残代金1123万2105円及びこれに対する弁済期の後である平成15年11月13日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余は棄却すべきであるから,これと異なる原判決を変更することとし,控訴人の民事訴訟法260条2項の規定に基づく申立ては理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第2部裁判長裁判官熊田士朗裁判官多見谷寿郎裁判官堀内照美(別紙物件目録及び不法行為の一覧省略)
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