平成13(わ)665 道路交通法違反

裁判年月日・裁判所
平成13年11月15日 神戸地方裁判所
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判決文本文4,148 文字)

判決平成13年11月15日神戸地方裁判所平成13年(わ)第665号道路交通法違反被告事件 主文 被告人を罰金5万円に処する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成12年8月22日午前零時9分ころ,道路標識によりその最高速度が50キロメートル毎時と指定されている神戸市A区Ba丁目県道高速C線上りbキロポスト付近道路において,その最高速度を62キロメートル超える112キロメートル毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行したものである。 なお,被告人は,後記のとおり,過剰避難として,上記の行為をしたものである。 (証拠の標目)‐かっこ内は検察官請求証拠甲乙の番号省略(被告人の主張に対する判断) 1 被告人は,本件日時場所において,112キロメートル毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行したことは間違いないけれども,それは大型トラックが後方から何度も急接近してきたため,同トラックから追突されて,自己や同乗者の生命身体が害される危険を避けるためにしたものであるから,刑法37条1項の緊急避難に該当する旨主張するので,当裁判所の判断を示すこととする。 2 後続車は,先行車が急に停止した場合においてもこれに追突するのを避けるため,必要な車間距離を先行車との間で保たなければならない(道路交通法26条)のであるが,高速度で走行中,後続車が必要な車間距離を保たないばかりか,先行車に異常に接近してきて,しかも後続車の車体が先行車の車体と同程度ないしそれより大きい場合には,先行車が何らかの理由で急停止や減速すれば,後続車が先 中,後続車が必要な車間距離を保たないばかりか,先行車に異常に接近してきて,しかも後続車の車体が先行車の車体と同程度ないしそれより大きい場合には,先行車が何らかの理由で急停止や減速すれば,後続車が先行車に追突して先行車の運転者や同乗者の生命身体を害する危険性が高いと考えられるから,先行車が後続車との間に必要な車間距離を保つために加速し,そのため制限最高速度を超えたとしても,刑法37条1項の緊急避難として,それを罰しない場合のありうることは否定できない。 そこで,本件がそのような場合に当たるかどうかについて検討をする。 3 被告人の当公判廷における供述及び被告人の検察官調書(乙2)によれば,被告人は,本件当時,知人の女性を同乗させた普通乗用自動車(以下「被告人車両」という。)を運転して,D道路F料金所を通過し,同道路及び県道高速C線を大阪方面に向け走行中,実況見分調書謄本(甲6)添付の速度違反自動監視装置「F機」付近略図中の⑥から⑦の辺りにおいて,70ないし80キロメートル毎時の速度で走行車線を走行中の被告人車両の後方約1メートルにまで,大型トラックが接近してきたため,車間距離をとって追突の危険を避けようと90キロメートル毎時くらいまで加速したが,同トラックもまた加速して車間距離を詰めてき,被告人車両が更に加速するというようなことを4,5回繰り返していると,被告人車両が前方を走行中の別の大型トラックの後方約5メートルまで接近してしまい,前後を大型トラックに挟まれる状態になったことから,被告人は危険を感じて,同略図⑪と⑫の間辺りで追越車線に車線変更し,前方の大型トラックを追い抜いたところ,どの大型トラックか分からないが,再び大型トラックが被告人車両の後方約1メートル付近にまで接近してきたため,被告人は再び危険を感じて被告人車両を110キ 変更し,前方の大型トラックを追い抜いたところ,どの大型トラックか分からないが,再び大型トラックが被告人車両の後方約1メートル付近にまで接近してきたため,被告人は再び危険を感じて被告人車両を110キロメートル毎時くらいまで加速したが,同トラックもまた加速して車間距離を詰めてき,被告人車両が更に加速するというようなことを同略図⑮から⑯辺りまでの間に2回くらい繰り返して,同トラックとの間に約100メートルの車間距離をとった辺りで,同略図⑳付近にある速度違反自動監視装置により撮影されるに至り,それが本件速度違反であるというのである。 被告人の上記供述については,特に,そのいうような大型トラックの存在や走行状況を裏付ける証拠はないし,被告人が同乗者の氏名こそ述べているものの,住所その他特定に必要な事項についての供述を拒んでいるため,本件当時の状況についての同乗者の供述を得られてはいないけれども,被告人が,警察官から最初に取調べを受けた平成12年12月18日に,既に,「後方からトラックが接近してきたので危険を避けるため加速した。」旨供述していることや,被告人の前記検察官調書と当公判廷における供述の内容が大部分一致していることからすると,被告人の上記供述は概ね信用でき,ほぼそのいうような状況の下で本件速度違反が犯されたと認めるべきである。しかし,被告人の上記供述のうち,大型トラックが走行車線や追越車線を走行中の被告人車両の後方に何度も接近してきた距離を約1メートルという点については,被告人も自動車内のミラーで確認したものに過ぎず,正確とはいえないものであることが明らかであるし,車間距離が約1メートルしかなければ,大型トラックの速度が被告人車両の速度よりわずかばかり上回るだけで追突しかねず,同トラックがそこまで危険な運転をする必要性があったとは であることが明らかであるし,車間距離が約1メートルしかなければ,大型トラックの速度が被告人車両の速度よりわずかばかり上回るだけで追突しかねず,同トラックがそこまで危険な運転をする必要性があったとは考え難いから,それをそのまま信じるわけにはいかない。車間距離は数メートル程度はあったと認めるのが相当である。また,被告人車両が速度違反自動監視装置により撮影されたころには,大型トラックとの間に約100メートルの車間距離をとっていたというのも,同様にその数字をそのまま信用するわけにはいかないが,既に十分な車間距離をとっていたことは間違いがないと考えられることからすると,同トラックが加速して被告人車両との間の車間距離を詰めてきたのが同略図⑮から⑯辺りまでというのも疑わしく,その地点はもう少し手前までであったとみるのが合理的である。 4 上記認定の事実によれば,被告人車両が70ないし80キロメートル毎時の速度で走行車線を走行中,大型トラックが後方に接近してきたために90キロメートル毎時くらいまで加速したが,同トラックもまた加速して車間距離を詰めてき,被告人車両が更に加速するというようなことを4,5回繰り返し,前後に大型トラックに挟まれる状態になって,追越車線に車線変更し,前方のトラックを追い抜いたことについては,大型トラックの危険な運転(車間距離が約1メートルではなく,数メートル程度あったとしても,その行為の危険性がなくなるものではない。)によって,被告人車両に乗っていた被告人や同乗者の生命身体に対する危険が現在のものとなっており,それを避けるために他に適切な方法がありうるとは考え難いから,やむを得ずにした行為というべきであるし,もちろん,それによって生じた害が避けようとした害の程度を超えていないことも明らかである。しかし,被告人車両が追越車線に 切な方法がありうるとは考え難いから,やむを得ずにした行為というべきであるし,もちろん,それによって生じた害が避けようとした害の程度を超えていないことも明らかである。しかし,被告人車両が追越車線に車線変更し,前方のトラックを追い抜いた後,再び大型トラックが被告人車両の後方に接近してきたことについて,被告人はその大型トラックがどのトラックか分からないというのであるが,それまでの経緯からすれば,被告人車両に後続していた大型トラックが追越車線に車線変更し,前方の大型トラックを追い抜いた後,被告人車両の後方に再度接近してきたものと考えるのが相当であり,当時の道路状況が車線変更をしようと思えばいつでもできる状況であったことからすれば,被告人車両が再度走行車線に車線変更し,この大型トラックをやり過ごすという方法を取ることも十分可能であったと認められ,その場合に同トラックがまた走行車線に車線変更して被告人車両の後方に再度接近してくるとまでは考え難いから,被告人車両が同トラックとの間に相当の車間距離をとるため更に加速し本件速度違反をしたことについては,これをやむを得ずにした行為というわけにはいかない。 5 してみると,被告人の本件速度違反に至るまでの一連の行為は,追越車線に車線変更し,前方のトラックを追い抜いたときまでは緊急避難に該当するというべきである(もっとも,被告人が当初20ないし30キロメートル毎時の速度違反をしていたことの可罰性までなくなるわけではない。)が,その後再び大型トラックが被告人車両の後方に接近してきたのに対し,同トラックとの間に相当の車間距離をとるため更に加速し本件速度違反をしたことについては,緊急避難としてなしうる行為を逸脱したものといわざるを得ないから,過剰避難に該当すると認めるのが相当である。 被告人の前記主張はその 距離をとるため更に加速し本件速度違反をしたことについては,緊急避難としてなしうる行為を逸脱したものといわざるを得ないから,過剰避難に該当すると認めるのが相当である。 被告人の前記主張はその限度で理由がある。 (法令の適用)被告人の判示所為は道路交通法118条1項2号,22条1項に該当するところ,所定刑中罰金刑を選択し,その所定金額の範囲内で,被告人を罰金5万円に処し,その罰金を完納することができないときは,刑法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。 (検察官の科刑意見罰金9万円)よって,主文のとおり判決する。 平成13年11月15日神戸地方裁判所第12刑事係甲裁判官森岡安廣

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