- 1 -判決主文 1 被告は,原告に対し,5578万8060円及びこれに対する平成30年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを5分し,その2を被告の,その余を原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 被告は,原告に対し,1億4320万6907円及びこれに対する平成30年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告から船舶の係留施設等を設置するための許可等(以下「本件各原処分」という。)を受けて観光船事業を開始したところ,後に被告か ら本件各原処分を取消し又は是正する旨の各処分(以下「本件各取消処分」という。)を受けたことにつき,そもそも本件各原処分は許可等がされるべきではない違法なものであり,これにより原告は損害を被ったと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金1億4320万6907円及びこれに対する平成30年4月27日(本件各原処分の後である本件各取消処分の日)か ら支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である(なお,原告は,当初は本件各取消処分の取消しを求めていたが,後に上記のように訴えを変更した。)。 被告は,本件各原処分の国家賠償法上の違法性を争わず,原告の損害の有無及 びその額のみを争っている。 - 2 - 1 関係法令の定め(1) 港湾法(昭和25年法律第218号)港湾法40条1項は,臨港地区内に指定された分区の区域内においては,各分区の目的を著しく阻害する建築物その他の構築物(以下,建築物その他の 令の定め(1) 港湾法(昭和25年法律第218号)港湾法40条1項は,臨港地区内に指定された分区の区域内においては,各分区の目的を著しく阻害する建築物その他の構築物(以下,建築物その他の構築物を単に「構築物」という。)であって,港湾管理者としての地方公 共団体の条例で定めるものを建設してはならない旨定める。 そして,同法40条の2第1項は,港湾管理者は,上記規定に違反して建設された構築物の所有者又は占有者に対し,当該構築物の撤去,移転若しくは改築又は用途の変更をすべきことを命ずることができる旨定める。 (2) 小樽港の臨港地区内の分区における構築物の規制に関する条例(平成8年 小樽市条例第46号〔令和3年小樽市条例第18号による改正前のもの〕。 以下「分区条例」という。)分区条例は,港湾法40条1項の規定に基づいて定められた条例である(分区条例1条)。 分区条例3条1項本文は,港湾法40条1項所定の「条例で定める構築物」 とは,漁港区として指定された分区においては「別表第3」に掲げる構築物以外のものとする旨定める。なお,「別表第3」の内容は,本判決の別紙「分区条例別表第3」記載のとおりであり,「漁船のための係留施設」(2号),「〔漁業関連の〕施設に従事する者及びその利用者のための飲食店又は物販店」(12号)などが含まれる。 (3) 小樽市港湾施設管理使用条例(昭和30年小樽市条例第15号。以下「管理使用条例」という。)管理使用条例3条1項は,港湾施設を使用しようとする者は,市長の許可を受けなければならない旨定め,同条4項は,1月を超える期間継続して使用しようとする者は,同条1項の許可に代えて使用の登録を受けなければな らない旨定める。 - 3 -また,管理使用条例4条は,上記規定 らない旨定め,同条4項は,1月を超える期間継続して使用しようとする者は,同条1項の許可に代えて使用の登録を受けなければな らない旨定める。 - 3 -また,管理使用条例4条は,上記規定による使用許可を受けた者が許可を受けた使用の場所に工作物その他の設備をしようとするときは,あらかじめ市長の許可を受けなければならない旨定める。 (4) 建築基準法(昭和25年法律第201号)建築基準法6条1項は,同項所定の建築物を建築しようとする建築主は, その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて,確認済証の交付を受けなければならない旨定める。 なお,この建築基準関係規定には,港湾法40条1項の規定及びこれに基づく条例の規定が含まれる(建築基準法施行令〔昭和25年政令第338号〕9条3号)。 2 前提事実(証拠等を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,遊漁船・遊覧船の運航業務等を業とする株式会社である。 イ被告は,地方公共団体である。 (2) 漁港区の指定 小樽市ac丁目の土地の一部は,臨港地区内における分区として,漁港区に指定されている(乙13,14。以下,この漁港区を「a漁港区」という。)。 (3) 本件各原処分及び本件各取消処分ア本件各原処分 被告は,a漁港区内で観光船事業を行おうとしていた原告に対し,原告が事業に伴い設置しようとする係留施設及び建物が,いずれも漁港区内の構築物として許容される分区条例別表第3所定の構築物に該当するものと判断して,管理使用条例3条4項,4条に基づき,①平成28年6月1日付け運河護岸・物揚場護岸登録(乙1),②同年12月1日付け工作物等 施工許可(乙2),③平成29年1月31日付け工作物等施工許可 して,管理使用条例3条4項,4条に基づき,①平成28年6月1日付け運河護岸・物揚場護岸登録(乙1),②同年12月1日付け工作物等 施工許可(乙2),③平成29年1月31日付け工作物等施工許可に係る- 4 -施工期間の変更承認(乙4),④平成28年6月1日付け港湾施設占用許可(乙5),⑤同日付け港内行事等許可(乙6)を行い,さらに,⑥上記建物についての同年7月22日付け確認済証(乙24)を原告に交付した(本件各原処分。以下,上記各番号に従い,「本件原処分①」などという。)。 イ原告による事業の開始原告は,a漁港区内に観光船の係留施設を設置し,またa漁港区内の土地(以下「本件土地」という。)に観光船事業用の建物4棟(以下「本件各建物」という。)を建設するなどして,平成28年8月,観光船事業を開始した。 ウ本件各取消処分被告は,平成30年4月27日,本件各原処分において原告が設置・建築するものとされていた係留施設及び建物はいずれも同別表第3所定の構築物に該当しないとして,本件原処分①ないし⑤についてはこれらを取り消し,本件原処分⑥については港湾法40条の2第1項に基づいて本件各 建物の用途変更又は撤去をするよう是正命令を行った上(本件各取消処分),同月28日,原告にその旨の通知をした(甲1,弁論の全趣旨)。 (4) 本件訴訟の経緯原告は,平成31年2月13日,本件各取消処分の取消しを求める旨の訴えを提起した。 これに対して被告は,本件各原処分は法令に違反する不適法な処分であり,それゆえ本件各取消処分は適法である旨主張して,これを争った。 そこで,原告は,令和元年12月3日,被告の上記主張を前提とすると,本件各原処分は国家賠償法1条1項の適用上も違法となると主張して,同項 ゆえ本件各取消処分は適法である旨主張して,これを争った。 そこで,原告は,令和元年12月3日,被告の上記主張を前提とすると,本件各原処分は国家賠償法1条1項の適用上も違法となると主張して,同項に基づく損害賠償請求に係る訴えに交換的に変更する旨を申し立て,当裁判 所は,令和2年1月16日,行政事件訴訟法21条1項に基づいてこれを許- 5 -可する旨の決定をした(当裁判所に顕著な事実)。 3 争点及びこれに対する当事者の主張本件の争点は,本件各原処分による原告の損害の有無及び額であり,これに対する当事者の主張は以下のとおりである。 (原告の主張) 被告の違法な本件各原処分によって原告に生じた損害及びその内訳は,別紙「損害額算定表」の「項目別請求額小計」欄及び同欄右の「内訳」欄記載のとおりであり,その項目ごとの具体的な主張は以下のとおりである。 (1) 土地整備費(A) 1746万3842円本件土地周辺には雑多なごみが放置されていたところ,原告は,平成28 年4月21日以降,ごみ処理,土地の整備,隣地との境界の外溝工事,擁壁枠舗装工事等の本件土地の整備・清掃のための費用として上記額を支出したものであり,同額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (2) 建物建築費(B) 984万8333円原告は,本件各原処分を踏まえ,上記額を支出して本件各建物を建築し, これに伴う設備を設置したものであり,同額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (3) 設備費(C) 762万9764円原告は,本件土地及び本件各建物において観光船事業を実施するため,別紙「損害額算定表」の「設備費」欄記載の項目につき上記額を支出したもの であり,同額につき本件各原処分と相当因果関係のあ 原告は,本件土地及び本件各建物において観光船事業を実施するため,別紙「損害額算定表」の「設備費」欄記載の項目につき上記額を支出したもの であり,同額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (4) 設計費(D) 30万3220円原告は,建築物の建築に伴い,その設計費として上記額を支出したものであり,同額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (5) 許認可費用(E) 188万5693円 原告は,観光船事業を行うために,別紙「損害額算定表」の「許認可費用」- 6 -欄記載の各種許認可等を取得し,上記額を支出したものであり,同額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (6) 船舶関連費(F) 3429万3955円原告は,観光船事業の用に供する船舶を取得するため,上記額を支出したものであり,同額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (7) 車両費(G) 370万9800円原告は,船舶の運航開始時・終了時に船舶をトレーラーに載せて陸揚げ等をするのに必要なタイヤショベルを購入するため,上記額を支出したものであり,同額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (8) 船舶係留費(H) 477万2574円 原告は,観光船事業の用に供する船舶を係留し,又は陸上で保管するために要する費用として上記額を支出したものであり,同額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (9) 備品費(I) 139万2401円原告は,観光船事業の用に供するため,別紙「損害額算定表」の「備品費」 欄記載の各種備品を上記額により購入したものであり,同額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (10) 旅費交通費(J) 631万 供するため,別紙「損害額算定表」の「備品費」 欄記載の各種備品を上記額により購入したものであり,同額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (10) 旅費交通費(J) 631万7986円原告は,観光船事業を実施するに当たり,快適な海上遊覧ができる観光船を新しく発注・製作することを考えていたところ,ベトナムで製造される船 舶が適しているとの情報を得てベトナムを訪問し,船舶を購入するなどし,ベトナムへの旅費交通費として上記額を要したものであって,同額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (11) 宣伝広告費(K) 536万4360円原告は,テレビコマーシャルやホームページの動画,雑誌等の宣伝広告費 として上記額を支出したものであって,同額につき本件各原処分と相当因果- 7 -関係のある損害となる。 (12) 撤去費(L) 294万4530円本件各建物の撤去費用として上記額を要したものであり,同額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (13) その他(M) 604万3556円 原告は,別紙「損害額算定表」の「その他」欄の内訳のとおり支出をしたものであり,その合計額である上記額につき本件各原処分と相当因果関係のある損害となる。 (14) 固定資産税(N) 23万0501円原告は本件各建物に係る固定資産税額を支出しており,これについても本 件各原処分と相当因果関係のある損害というべきである。 (15) 無形損害(O) 2000万円原告は,被告の本件各原処分によって,後に本件各取消処分を受けることとなり,これに伴う社会的評価や信用の低下による損害が発生したものであって,これを填補するのに要する額は,2000万円を下回るものではない 件各原処分によって,後に本件各取消処分を受けることとなり,これに伴う社会的評価や信用の低下による損害が発生したものであって,これを填補するのに要する額は,2000万円を下回るものではない というべきである。 (16) 上記(1)ないし(15)の合計 1億2220万0515円(17) 弁護士費用(P) 1100万円本件訴訟に係る弁護士費用としては,上記額が相当である。 (18) 上記(16)及び(17)の合計 1億3320万0515円 なお,原告は,当初は損害額の合計として1億4320万6907円を主張し,後に上記の額に主張を変更したものであるが,請求の減縮まではしていない(第13回弁論準備手続調書参照)。 (被告の主張)(1) 土地整備費(A)について 否認ないし争う。原告が本件土地の整備を行ったことにより,土地の形状- 8 -や環境は良好な状態に変化しており,本件土地の利用価値や付加価値は増大しているのであって,原告はこうした利益を現に享受し,今後とも享受し得るのであるから,土地整備に関する費用は損害には当たらない。また,原告の主張する工事の一部は本件各原処分より前に行われたものであり,これらについては,本件各原処分とは何ら因果関係はない。さらに,原告の主張す る土地整備費のうち,清掃・海浜維持費については,元来,原告代表者や原告社員の通常の給与であって,土地整備に係る費用ではないし,株式会社甲(以下「甲」という。)が負担した費用については,原告の損害となるものではない。 (2) 建物建築費(B)について 否認ないし争う。運河乗り場看板製作費については,本件各取消処分後に発注されたものであるところ,原告は,本件各取消処分により,その事業の継続が困難となることは十分に認識し (B)について 否認ないし争う。運河乗り場看板製作費については,本件各取消処分後に発注されたものであるところ,原告は,本件各取消処分により,その事業の継続が困難となることは十分に認識し得たものというべきであり,その後の新たな支出は原告が自ら損害を拡大させたものに他ならず,本件各原処分との間の因果関係に欠ける。 (3) 設備費(C)について争う。原告の主張する各設備が現在も設置されているのか不明であり,仮にこれらが今後も利用できる状態であるとすれば,資産として保有しているものであるから損害とはならない。NTT引込線工事費については,NTT東日本に対する損害賠償金であって工事費用ではなく,浮桟橋工事取消料に ついては,原告が当該工事を中止したのは本件各原処分とは何の関係もなく原告の判断によるものである上に,本件各原処分の前に発注されたと考えられる。ゲート・乗降設備のうち一部については本件各原処分より前に支出されたものである。これらは,本件各原処分と相当因果関係のある損害ではない。 (4) 設計費(D)について- 9 -否認ないし争う。測量費については,本件土地とは別の不動産の滅失に係る調査業務の費用であって,本件土地とは関係のない費用である。 (5) 許認可費用(E)について争う。水道加入金については,本件各原処分以前に原告が加入した水道に関するものであり,本件各原処分との因果関係に欠け,船舶免許取得受講料 のうち一部(甲77の3,77の4)については原告とは別の会社(甲)に関するものであり,他にも本件各原処分の前に支出したもの(甲78の1)が含まれているものであって,これらは原告の損害とはならない。その他にも,船舶免許取得受講料や特定資格受講料については,その一部に本件各原 であり,他にも本件各原処分の前に支出したもの(甲78の1)が含まれているものであって,これらは原告の損害とはならない。その他にも,船舶免許取得受講料や特定資格受講料については,その一部に本件各原処分より前の支出に係るものが含まれるほか,これらの資格が原告の事業に 必要不可欠なものか,また今後これらの資格を喪失するものか明らかでなく,本件各原処分と相当因果関係のある損害となるものではない。 (6) 船舶関連費(F)について争う。原告が購入した船舶は,本件各原処分の前に発注するなどしていたものであり,本件各原処分との相当因果関係を欠くし,これらを資産として 保有しているものであるから,損害となるものでもない。また,一部の修理費については,波風によって船体が破損したことによる修理費であり,気象条件と原告の管理不備の問題であって,本件各原処分とは関係のない損害である。 (7) 車両費(G)について 争う。原告が購入した車両は,現在も原告が資産として保有しており,何らの損害も発生していない。 (8) 船舶係留費(H)について争う。原告が観光船事業を行っている間に支払った船舶係留費は,事業遂行のために必要な経費であるところ,原告はこれにより収益を得ていたもの であって,本件各原処分と相当因果関係のある損害となるものではない。事- 10 -業終結後の船舶係留費は不知。 (9) 備品費(I)について争う。原告の主張する備品については,現在どのように利用・処分されているのか不明であるほか,その一部(椅子,厨房用品等)に本件各原処分以前に取得されたものが含まれており,また,本件各取消処分より後に発注 されたもの(防寒ズボン,厨房用品・清掃用具等の一部)も含まれているのであって,これらは本件各原 厨房用品等)に本件各原処分以前に取得されたものが含まれており,また,本件各取消処分より後に発注 されたもの(防寒ズボン,厨房用品・清掃用具等の一部)も含まれているのであって,これらは本件各原処分との間の相当因果関係を欠く。また,冷蔵庫,洗濯機,フリーザー及びテレビについては,購入者や購入時期,購入金額が全く不明であって,何ら根拠のないものである。 (10) 旅費交通費(J)について 争う。上記(6)のとおり,船舶は本件各原処分の前に発注されていたものであり,これに伴う旅費交通費も,本件各原処分との間の相当因果関係を欠く。また,旅費交通費の中には,原告が会社として成立する以前のものや,原告の役員や社員でなかった者に関するものがあり,原告の損害といえるものではない上,ベトナムを7回も訪問したというのであって,その必要性も 認められない。 (11) 宣伝広告費(K)について争う。営業のための宣伝広告費は,事業活動に伴って発生する会社の必要経費であり,会社の事業収支の中で処理されているものであって,本件各原処分と相当因果関係のある損害となるものではない。 (12) 撤去費(L)について争う。 (13) その他(M)について不知ないし争う。人件費に関する項目は,原告が支払うべき通常の人件費であって,本件各原処分と相当因果関係のある損害ではない。 (14) 固定資産税(N)について- 11 -争う。固定資産税等は,固定資産の所有者に対して等しく賦課されるものであり,原告が対象となる不動産を所有している以上,固定資産税等の納税義務を負うのは当然であって,これを被告が賠償すべき理由はない。 (15) 無形損害(O)について争う。本件に係る一連の処分によって,原告の社会的評価や信 を所有している以上,固定資産税等の納税義務を負うのは当然であって,これを被告が賠償すべき理由はない。 (15) 無形損害(O)について争う。本件に係る一連の処分によって,原告の社会的評価や信用が毀損さ れるものではない。 (16) 弁護士費用(P)争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 原告の設立原告は,平成28年4月19日に設立された(弁論の全趣旨)。 (2) 観光船事業に向けた協議 原告の関係者は,平成28年5月9日,被告の産業港湾部港湾室を訪れ,原告が観光船事業を計画していることを報告し,以後,被告の担当職員との間で協議を進めた(乙15)。 (3) 本件各原処分ア係船環に関するもの 原告は,平成28年5月27日,被告に対し,a漁港区の護岸に観光船を係留する旨の「運河護岸・物揚場護岸登録申請書」(乙1)を提出した。 被告は,上記係留は係船環(船舶を係留するために桟橋等に設ける,ワイヤーやロープを結びつけるための環状の係留施設)が設置されることを前提とするところ,このような係船環は漁港区内の構築物として許容され る分区条例別表第3所定の構築物に該当するものと判断し,同年6月1日,- 12 -上記申請を許可した(本件原処分①)。 そして,原告は,同年11月16日,被告に対し,実際に係船環を設置するための「工作物等施工許可申請書」(乙2)を提出し,被告は同年12月1日に上記申請を許可した(本件原処分②)。また,原告は,平成29年1月30日,被告に対し,上記工事についての「施工期間の変更届出 書」(乙4)を提出し,被告は同月31日にこれを承認した(本件原処分 上記申請を許可した(本件原処分②)。また,原告は,平成29年1月30日,被告に対し,上記工事についての「施工期間の変更届出 書」(乙4)を提出し,被告は同月31日にこれを承認した(本件原処分③)(前提事実(3)ア,弁論の全趣旨)。 イ浮桟橋に関するもの原告は,平成28年5月,被告に対し,観光船の係留用の浮桟橋を設置するための「港湾施設占用許可申請書」(乙5。同月25日付け)及び 「行事等許可申請書」(乙6。同月27日付け)を提出した。 被告は,このような浮桟橋は,漁港区内の構築物として許容される分区条例別表第3所定の構築物に該当するものと判断し,同年6月1日,上記申請をいずれも許可した(本件原処分④及び⑤)(前提事実(3)ア,弁論の全趣旨)。 ウ本件各建物に関するもの原告は,平成28年6月28日,被告に対し,観光船事業に使用する建物をa漁港区内に建築するための「確認申請書(建築物)」(甲16,乙21)を提出した。 被告は,上記建物は,漁港区内の構築物として許容される分区条例別表 第3所定の構築物に該当するものと判断し,同年7月22日,原告に対して確認済証を交付した(本件原処分⑥)(前提事実(3)ア,弁論の全趣旨)。 (4) 観光船事業の開始原告は,a漁港区内の本件土地に観光船事業に使用する本件各建物(計4棟)を建設したほか,その周辺設備を設置するなどして,平成28年8月, 観光船事業を開始した(前提事実(3)イ,弁論の全趣旨)。 - 13 -(5) 小樽市議会での質疑小樽市議会の平成28年第3回定例会(平成28年9月6日から10月4日まで)においては,市議会議員らから,原告の観光船事業に対する許可等(本件原処分①,④,⑤及び⑥)の適法性等につき質問が繰り返された。これに 平成28年第3回定例会(平成28年9月6日から10月4日まで)においては,市議会議員らから,原告の観光船事業に対する許可等(本件原処分①,④,⑤及び⑥)の適法性等につき質問が繰り返された。これに対し,当時の市長であった乙市長(以下「乙市長」という。)は,原告 の建築する建物は分区条例別表第3第12号に該当するなどと答弁したが,市議会議員らからは,同号に該当する構築物というのは漁業関係者等の利用する飲食店などに限られるのではないかとの質問がされるなどし,議会は紛糾した。 結局,小樽市議会では,同年10月4日,原告に対する許可等を理由とし て,乙市長に対する問責決議案を可決した。 小樽市議会におけるこれらのやり取りは新聞,テレビ等を通じて報道され,原告の観光船事業では利用客からのキャンセルが相次いだ(甲25〔2,3頁〕,29〔2頁〕,159の1~3,弁論の全趣旨)。 (6) 本件各取消処分 被告は,平成30年4月27日,本件各原処分において原告が設置するものとされていた係留施設(係船環及び浮桟橋)は,漁港区内の構築物として許容される分区条例別表第3第2号の「漁船のための係留施設」には該当せず,また原告が建築するものとされていた建物(本件各建物)は,同別表第3第12号の「〔漁業関連の〕施設に従事する者及びその利用者のための飲 食店又は物販店」には該当しないなどとして,本件原処分①ないし⑤についてはこれらを取り消し,本件原処分⑥については港湾法40条の2第1項に基づいて本件各建物の用途変更又は撤去をするよう是正命令を行った上(本件各取消処分),同月28日,原告にその旨の通知をした(前提事実(3)ウ)。 (7) 観光船事業の廃業 原告は,令和元年11月30日,観光船事業を廃業することとし,その後,- った上(本件各取消処分),同月28日,原告にその旨の通知をした(前提事実(3)ウ)。 (7) 観光船事業の廃業 原告は,令和元年11月30日,観光船事業を廃業することとし,その後,- 14 -本件係留設備,本件各建物及びこれらの周辺施設を撤去した(甲134~138,弁論の全趣旨)。 2 本件各原処分による原告の損害本件において被告は,本件各原処分の国家賠償法上の違法性を争わないから,国家賠償法1条1項に基づき,本件各原処分により原告に生じた損害について 賠償すべき責任を負う。 そこで,以下,本件各原処分による原告の損害について検討する。 (1) 損害とみる支出行為の基準時についてア上記のとおり,本件各原処分は違法な公権力の行使であり,本来は本件各原処分をすべきでなかったものであるところ,本件各原処分がされた最 初の日である平成28年6月1日(認定事実(3)ア,イ)以降に原告が契約を締結したり,発注したりしたものについては,本件各原処分の全部又は一部がされたために原告が対価の支払義務を負い,支出したというべきであるから,本件各原処分と相当因果関係のある損害ということができる。 他方,同日より前に原告が契約を締結したり,発注したりしていたもの については,本件各原処分がされた時点では既に契約が成立し,原告が支払義務を負っていたのであって,本件各原処分がされたために支出したものではない。すなわち,このような契約等に基づく支出は,単に,本件各原処分がされるかもしれないとの期待の下で支出に至ったものにすぎないのであって,本件各原処分と相当因果関係のある損害と断ずることはでき ないというべきである。 したがって,原告の支出行為のうち,平成28年6月1日以降に契約等が締結されたもの(原告におい いのであって,本件各原処分と相当因果関係のある損害と断ずることはでき ないというべきである。 したがって,原告の支出行為のうち,平成28年6月1日以降に契約等が締結されたもの(原告において支払義務が発生したもの)については本件各原処分と相当因果関係のある損害であり,本件各原処分より前のものについては本件各原処分との相当因果関係を欠くというべきである。 イこの点につき原告は,①平成28年1月以降,本件各原処分の取得に向- 15 -けて,被告の港湾室の指導・助言に従い,様々な書類の作成・提出手続を行ってきた,②被告の担当者も許可等(本件各原処分)をすることを前提にした様々な指導・助言を行っていたとして,本件各原処分より前の支出行為についても本件各原処分と相当因果関係がある旨主張する。 しかし,原告が平成28年1月の時点で被告の指導・助言を受けていた ことを認めるに足りる証拠はないし,被告側の資料(乙15)によれば,被告が原告の観光船事業の計画を知ったのは同年5月9日のことというのである(認定事実(2)参照)。そして,被告において,本件各原処分よりも前の時点で,許可等(本件各原処分)を行う方向での指導・助言を行ったことを端的に示す証拠も見当たらず,許可等を行うことを事前に示唆する ような言動をしたとも認めるに足りない。原告の上記主張は,実質的には同年6月1日より前の指導・助言そのものの違法をいうものとも解されるが,本件全証拠によっても,被告の指導・助言自体に違法があったということはできない。 したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 (2) 営業上の経費についてところで,被告は,原告の営業開始前ないし営業期間中に支出した通常の営業上の経費については,原告が営業を行った 上記主張はいずれも採用することができない。 (2) 営業上の経費についてところで,被告は,原告の営業開始前ないし営業期間中に支出した通常の営業上の経費については,原告が営業を行った結果,必然的に発生する経費であり,これにより原告は事業収益を得ていたものであって,損害には当たらない旨主張する。 しかし,営業上の経費についても,被告が本件各原処分の全部又は一部を行ったからこそ原告が支出したものであって,本件各原処分による損害というべきである。そして,これにより原告が事業収益を得ていたとしても,原告が経常利益を計上していたというのであればともかく,原告の決算報告書(乙34ないし37)によれば,原告はいずれの年度においても大幅な経常 損失となっていたものであるし,原告においても,営業上の経費の全てを本- 16 -訴において損害として主張しているものではないことがうかがわれるところであって,本訴において主張している経費についてのみ事業収益との間で損益相殺するのは相当ではないというべきであるから,被告の上記主張は採用することができない。 したがって,通常の営業上の経費とみられるものであっても,これのみを 理由として直ちに損害から除外するのは相当でない。 (3) 小括以上によれば,原告の損害の認定判断に当たっては,①原告の支出行為のうち,平成28年6月1日以降に契約等が締結されたもの(原告において支払義務が発生したもの)については本件各原処分と相当因果関係のある損害 とし,本件各原処分より前のものについては本件各原処分と相当因果関係のある損害とはしない,②他方で,通常の営業上の経費とみられるものであっても,これのみを理由として直ちに損害から除外するということはしないものとするのが相当である ついては本件各原処分と相当因果関係のある損害とはしない,②他方で,通常の営業上の経費とみられるものであっても,これのみを理由として直ちに損害から除外するということはしないものとするのが相当である。 3 原告に生じた損害額 以上を前提に,原告に生じた損害額につき,項目ごとに検討する(なお,認定した項目ごとの認容額及びその内訳は,別紙「損害額算定表」の「認容額」欄及び同欄右の「内訳」欄記載のとおりである。)。 (1) 土地整備費(A) 151万9516円ア外構工事費 0円 証拠(甲38)によれば,本件各原処分の前に行われた工事の費用であって,本件各原処分と相当因果関係がない。 イ舗装工事費 150万0000円証拠(甲38)によれば,本件各原処分の最初の日である平成28年6月1日以降に行われた工事の費用と認められ,損害として認めるのが相当 である。 - 17 -この点につき被告は,工事により土地の利用価値・付加価値が増大し,原告はその利益を現に享受しているから,損害には当たらない旨主張する。 しかし,上記舗装工事は飽くまでも観光船事業のために行われたものであり,観光船事業ができなくなったとしてもなお土地の利用価値・付加価値が増大したといえるのか,関係各証拠に照らしても明らかとはいえないの であって,被告の上記主張は採用することができない。 ウ囲いレール設置費 0円証拠(甲38)によれば,本件各原処分の前に行われた工事の費用であって,本件各原処分と相当因果関係がない。 エ仮設・重機レンタル料 1万9516円 平成28年5月25日付け請求書(甲43の1)に係る部分は本件各原処分の前に行われた工事であって,本件各原処分と相当因果関係がないから,その余の部分(甲43の2 ンタル料 1万9516円 平成28年5月25日付け請求書(甲43の1)に係る部分は本件各原処分の前に行われた工事であって,本件各原処分と相当因果関係がないから,その余の部分(甲43の2)についてのみ認める。 オ清掃・海浜維持費 0円清掃・海浜維持費のうち従業員分(80万4400円)は,単なる従業 員に対する人件費にすぎず(甲47の2ないし4),これがいかなる意味で本件各原処分と相当因果関係のある損害となるのか,原告の主張に照らしても明らかとはいえない。 また,清掃・海浜維持費のうち代表者分については,そもそも原告ではなく甲が支払ったようにもうかがわれるのであって(甲46の1ないし 3),原告の損害とは認められない。 (2) 建物建築費(B) 984万8333円原告は,本件各原処分に基づいて本件各建物を建築し,その周辺設備を設置するなどしたものであり(認定事実(4)),これらは後に本件各取消処分を受けて撤去せざるを得なくなったのであるから(認定事実(7)参照),本件各 建物及びその周辺設備の建築・設置に要した費用については,本件各原処分- 18 -と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 そして,証拠(甲48~58〔枝番号含む〕)によれば,その費用として別紙「損害額算定表」の「建物建築費」欄記載のとおりの額を要したものと認められるから,その合計額である上記額が損害となる。 この点につき被告は,本件各取消処分後の令和元年8月に支出した項目 (運河乗り場看板製作費。甲57の1)については,本件原処分が取り消された後のものであるから,事業の継続が困難となることを十分認識することができたのであり,原告が自ら損害を拡大させたものであって,本件各原処分との相当因果関係に欠ける旨を主 ては,本件原処分が取り消された後のものであるから,事業の継続が困難となることを十分認識することができたのであり,原告が自ら損害を拡大させたものであって,本件各原処分との相当因果関係に欠ける旨を主張する。しかし,原告は当時,本件各取消処分の取消しを求めて本件訴えを提起し,その適法性を争っていたもので あって(前提事実(4)),本件各取消処分の効力は確定していたものではなく,ましてや原告において事業の継続が困難になることを十分認識し得たとまでいうことはできない。被告の上記主張はその前提を欠き,採用することができない。 (3) 設備費(C) 688万2341円 原告主張の各費用のうち,NTT引込線工事費(5万4441円)については,破損した物件についてのNTTに対する損害賠償金であって(甲63の1ないし3),本件各原処分と相当因果関係のある損害とはいい難い。 また,ゲート・乗降設備費のうち31万4982円(甲67の1。消費税込)については,本件各原処分の前に行われた工事であって,上記2(1)ア のとおり,本件各原処分との相当因果関係に欠けるものというべきである。 さらに,浮桟橋工事取消料(37万8000円)については,当該費用は平成28年6月30日付けで請求されており(甲69),浮桟橋工事のための許可申請は同年5月にされていたこと(認定事実(3)イ)にも照らすと,浮桟橋工事の発注自体は同年6月1日より前に行われていた可能性も否定し 難いのであって,他に発注が同日以降にされたと認めるに足りる証拠もない- 19 -ことからすれば,当該費用については,本件各原処分との相当因果関係に欠けるものといわざるを得ない。 その余の各費用については,既に本件各建物自体が撤去されていること(認定事実(7))にも照らし,損 ことからすれば,当該費用については,本件各原処分との相当因果関係に欠けるものといわざるを得ない。 その余の各費用については,既に本件各建物自体が撤去されていること(認定事実(7))にも照らし,損害と認めるのが相当であり,その合計額は上記のとおりとなる。 (4) 設計費(D) 27万9000円測量費(2万4220円)は小樽市bd丁目の建物の滅失に関する調査業務であって(甲73の1・2),観光船事業との関連性が不明であるといわざるを得ず,本件各原処分との相当因果関係を認めることはできない。その余の設計料・移設申請料については,上記(2)の建物建築費と同様,損害と 認めるのが相当であり,証拠(甲70~72〔枝番号含む〕)によれば,その合計額は上記のとおりとなる。 (5) 許認可費用(E) 104万0733円水道加入金(14万3500円)並びに船舶免許取得受講料のうち平成28年5月12日付け領収証(甲77の1)に係る部分(38万1900円) 及び同年5月20日付け領収証(甲78の1)に係る部分(6万7560円)については本件各原処分より前の支出であり,また同受講料のうち平成30年4月16日付け領収証(甲77の3)及び同年5月20日付け領収証(甲77の4)に係る部分(計25万2000円)については甲の支出であって,いずれも本件各原処分による原告の損害と認めることはできない(なお,原 告は甲の支出につき立替払を主張するが,これを認めるに足りる証拠がない。)。 その余の支出については,本件各原処分の最初の日である平成28年6月1日以降のものであって,本件各原処分による原告の損害と認めるのが相当であり,その合計額は,証拠(甲74~80〔枝番号含む〕)によれば上記 のとおりとなる。 - 20 -(6 28年6月1日以降のものであって,本件各原処分による原告の損害と認めるのが相当であり,その合計額は,証拠(甲74~80〔枝番号含む〕)によれば上記 のとおりとなる。 - 20 -(6) 船舶関連費(F) 1415万7474円①SF-51の整備・法定備品代(15万3766円。甲86の1・2,甲94の2),②ベトナム艇の船舶費のうち諸費用部分(101万9891円。甲88の5・6),エンジン代(670万8171円。甲89,94の1),検査費用・法定備品代(441万1252円。甲90,94の2)及 び船台(80万0000円。甲91の1・2),③SF-51の船舶修理費(106万4394円。甲93)はいずれも本件各原処分の最初の日である平成28年6月1日以降の支出行為であって,本件各原処分による損害と認めるのが相当である。 これに対し,SF-51に関するその余の支出及び救助艇に係る支出(4 5万3967円。甲92,94の1)は,いずれも本件各原処分より前の支出行為であって,本件各原処分による損害と認めるのは相当でない。また,ベトナム艇の船舶費(諸費用を除く部分)についても,売買契約自体は本件各原処分の前に締結されているようにうかがわれるのであって(本件各原処分より前の時点で1回目の代金支払がされている。甲88の1・2),本件 各原処分による損害と認めることはできない。 なお,被告は,船舶修理費(上記③)は波風により破損したものであって本件各原処分とは無関係である旨を主張するが,本件各原処分がされたことにより事業を開始・継続することとなり,これによって上記修理費を支出したものというべきであるし,本件証拠上,原告に特段の管理不備があったよ うにもうかがわれないから,本件各原処分との間の相当因果関係を否定す 始・継続することとなり,これによって上記修理費を支出したものというべきであるし,本件証拠上,原告に特段の管理不備があったよ うにもうかがわれないから,本件各原処分との間の相当因果関係を否定することはできない。 そして,上記の損害項目について,証拠(甲81~93〔枝番号含む〕)によれば,その合計額は上記のとおりとなる。 (7) 車両費(G) 163万5714円 原告が購入した車両は現在も原告が保有しているのであって,その購入費- 21 -全額を直ちに損害とみることはできないというべきである。そして,一般に,中古自動車については取引市場が一応存在していることなどにも照らすと,その現存価値(時価)を控除して損害を算出すべきであるところ,当該車両の時価自体は本件証拠上不明であることに鑑み,原告が車両を購入してから観光船事業を廃業した時点(令和元年11月30日。認定事実(7))までの 40か月間の減価償却分をもって損害と認める。 以上を前提に原告の車両費に係る損害額を計算すると,その額は上記のとおりとなる(購入金額:343万5000円,償却期間:84か月)。 (計算式)3,435,000×40/84≒1,635,714(8) 船舶係留費(H) 424万5619円 原告は,本件各原処分を受けて観光船事業を実施することとし(認定事実(2)ないし(4)),これにより船舶の係留に要する費用を支出することになったのであるから,当該費用については本件各原処分との間の相当因果関係が認められる。 もっとも,原告が観光船事業を廃業した後については,船舶係留費用につ き事業に伴って要する支出ということはできないから,廃業後の費用は損害から除外すべきものである(令和元年度については,年度途中で区切って算定し得るも を廃業した後については,船舶係留費用につ き事業に伴って要する支出ということはできないから,廃業後の費用は損害から除外すべきものである(令和元年度については,年度途中で区切って算定し得るものと断定できないから,同年度に要した費用全額につき損害と認める。)。 したがって,令和2年4月1日から同年9月30日までの船舶係留費は除 外し,その余は本件各原処分による損害と認めることとなり,証拠(甲146~153〔枝番号含む〕)によれば,その合計額は上記のとおりとなる。 (9) 備品費(I) 106万5275円椅子の一部(1598円。甲110)及び厨房用品等の一部(1万8073円。甲114〔枝番号含む〕)については,本件各原処分の前に購入され たものであり,本件各原処分による損害と認めるのは相当でない。その余の- 22 -備品については,本件各原処分の最初の日である平成28年6月1日以降に購入されたものと認められ,現在も原告が保有しているものの,中古自動車とは異なり,現存価値があるとは断定できないのであって,その購入費の全額につき損害と認める。 そして,証拠(甲102~116〔枝番号含む〕)によれば,上記項目の 合計額は上記のとおりとなる(「白物家電(冷蔵庫・洗濯機等)」については,その写真が提出されているにとどまり〔甲112の1~4〕,その額を裏付ける証拠がないから,具体的な損害額を認定することはできない。)。 この点につき被告は,防寒ズボン(甲105。平成31年3月購入)及び厨房用品・清掃用具等の一部(甲114の5・6,116の2。平成30年 5月から9月の間に購入)については本件各取消処分(平成30年4月27日)より後に購入されたものであるから損害から除外すべきである旨主張する。しかし,上記(2 5・6,116の2。平成30年 5月から9月の間に購入)については本件各取消処分(平成30年4月27日)より後に購入されたものであるから損害から除外すべきである旨主張する。しかし,上記(2)において指摘したところと同様に,原告が,これらの購入時点において,事業の継続が困難になることを十分認識し得たとまではいえないから,被告の上記主張は採用することができない。 (10) 旅費交通費(J) 0円原告の主張する旅費交通費については,これらは本件各原処分より前の支出であって,本件各原処分との相当因果関係のある損害とは認められない上,そもそも出張者は出張当時には原告の役員でも従業員でもなく,その旅費交通費を原告が現実に支出したか否かも明らかではないのであるから,いずれ にせよ原告の損害と認めるに足りない。 (11) 宣伝広告費(K) 536万4360円原告の宣伝広告費につき,被告は必要経費にすぎないと主張するが,上記2(2)に説示したところに照らせば,その全額につき本件各原処分との間で相当因果関係があるというべきであって,その合計額は,証拠(甲128~ 133〔枝番号含む〕)によれば上記のとおりとなる。 - 23 -(12) 撤去費(L) 294万4530円原告は,本件各原処分の後,本件各取消処分を受け,本件各建物及びその周辺施設を撤去したものであるから(認定事実(7)),その費用につき本件各原処分と相当因果関係のある損害と認められる。 そして,見積書(甲135ないし138)記載の金額は上記のとおりであ り,現実の支出額はこれを超過しているが(甲167参照),そもそも原告の請求額は見積書記載の金額にとどまっていることからすれば,上記の金額につき損害と認めるのが相当である。 (13) その他 り,現実の支出額はこれを超過しているが(甲167参照),そもそも原告の請求額は見積書記載の金額にとどまっていることからすれば,上記の金額につき損害と認めるのが相当である。 (13) その他(M) 107万4664円人件費は丙に対する役員報酬ないし給与であり(甲145),本件各原処 分との因果関係が明らかではないといわざるを得ない。その余については,本件各原処分の最初の日である平成28年6月1日以降に支出されたものであって,本件各原処分との間の相当因果関係を認めることができ,証拠(甲143,144,155~158〔枝番号含む〕)によれば,その合計額は上記のとおりとなる。 (14) 固定資産税(N) 23万0501円原告は本件各原処分によって本件各建物を所有することとなったものであって,本件各原処分がなければこれらを所有し続けることはなく,その固定資産税の納付義務も生じなかったというべきであるから,全額につき損害と認めるのが相当である。そして,証拠(甲162~165)によれば,その 合計は上記額となる。 (15) 無形損害(O) 50万円原告は,本来は許可等がされるべきではない違法な許可等を受け(本件各原処分),その結果,その適法性に疑義があるとして小樽市議会で取り上げられ,新聞,テレビ等を通じて報道されて,利用客からのキャンセルも相次 いだというのである(認定事実(5))。そして,結局のところ,本件各原処分- 24 -はいずれも取消し又は是正されたのであって,このような経緯に加え,証拠(甲24~29)及び弁論の全趣旨によれば,本件各原処分に端を発した一連の過程によって,原告の社会的評価ないし信用が一定程度低下したものと認められるのであり,その填補のためには50万円をもって相当と認め 24~29)及び弁論の全趣旨によれば,本件各原処分に端を発した一連の過程によって,原告の社会的評価ないし信用が一定程度低下したものと認められるのであり,その填補のためには50万円をもって相当と認める。 (16) 上記(1)ないし(15)の合計 5078万8060円 (17) 弁護士費用(P) 500万円原告は,本件各原処分により,原告訴訟代理人弁護士に委任して本訴の提起を余儀なくされたと認められるところ,本件訴訟の経緯及び上記(16)の認容額等に鑑みれば,その費用のうち本件各原処分と相当因果関係の範囲内にあるものとして,上記額を認めるのが相当である。 (18) 上記(16)及び(17)の合計額 5578万8060円 4 結論よって,原告の請求は5578万8060円及びこれに対する平成30年4月27日(本件各原処分の後である本件各取消処分の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから その限度で認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,仮執行宣言については相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第5部 裁判長裁判官瀬 孝 裁判官宇野直紀 - 25 - 裁判官佐藤克郎 - 26 -(別紙)分区条例別表第3 別表第3(第3条関係)(漁港区)(1) 法〔判決注:港湾法〕第2条第5項第2号,第4号,第5号及び第9号から第 10号の2までに掲げる港湾施設(2) 漁船のための係留施設,燃料補給施設,給水施設及び給氷施設(3) 漁船の修理施設,造船施設及びこれらの附帯施設(4) 水産物卸売市場 第9号から第 10号の2までに掲げる港湾施設(2) 漁船のための係留施設,燃料補給施設,給水施設及び給氷施設(3) 漁船の修理施設,造船施設及びこれらの附帯施設(4) 水産物卸売市場その他水産物の荷さばきに必要な施設(5) 漁舎,魚干場その他水産物の処理に必要な施設 (6) 冷蔵倉庫,冷凍倉庫その他水産物の保管のための施設(7) 製氷工場,冷凍工場その他水産物の加工工場及びこれらの附帯施設(8) 網干場,網倉庫その他漁具の補修及び保管に必要な施設(9) 漁船乗組員及び漁業関係者の休憩所,宿泊所及び診療所(10) 漁業会社,漁業組合その他の水産物関連事業を営む事務所及び工場並びにこ れらの附帯施設(11) 別表第1第7号に定めるもの(12) 前各号の施設に従事する者及びその利用者のための飲食店又は物販店でその床面積が1,000平方メートル以下のもの並びにこれらの附帯施設。ただし,風営法第2条の規定に該当するものを除く。 備考別表第1備考(後段を除く。)の規定は,第12号の場合について準用する。 この場合において,同表備考中「200平方メートル(指定区域にあっては,1万平方メートル)」とあるのは,「1,000平方メートル」と読み替えるものとする。
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