平成13(行ウ)3 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年6月26日 岡山地方裁判所
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判決文本文8,217 文字)

主文 被告は,a町に対し,金29万8400円及びこれに対する平成12年4月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求 主文第1,2項と同旨。 仮執行宣言第2事案の概要本件は,a町長である被告が,b地区住民が設置したb地区焼却場対策委員会(以下「本件対策委員会」という)の委員に対し,b地区立会賃金名下に。 違法に公金を支出したことにより,a町に対して損害を与えたとして,a町住民である原告らが,被告に対し,その損害29万8400円の賠償(付帯請求は,不法行為の日である平成12年4月6日から支払済みまで,民法所定年5分の遅延損害金である)を請求した事案である。 。 争いのない事実(1)原告らは,いずれもa町の住民であり,被告は,平成12年4月6日当,,。 時a町の町長の職にありa町の予算執行の権限を有していた者である(2)平成11年8月8日,b地区の住民は,地区内で委員17名を選出し,同月15日,本件対策委員会を設置した。 (3)a町は,平成12年4月6日,本件対策委員会の委員17名及び旧委員1名(途中1名の交代があった)に対し,総額42万0800円をb地。 区立会賃金として支払った(以下「本件賃金」という。 。)しかし,上記18名のうち5名は,a町に対し,支払いを受けた各賃金(合計12万2400円)を返還したが,その余(29万8400円)については支出されたままで返還されていない(以下,この支出を「本件公金支出」という。 。)(4)原告らは,平成12年12月19日,被告の本件公金支出につき,a町監査委員に対し,被告に上記損害の補填をさせることなどを求める住民監査請求をしたが,同請求は,平成13年2月23日付けで棄却された。 らは,平成12年12月19日,被告の本件公金支出につき,a町監査委員に対し,被告に上記損害の補填をさせることなどを求める住民監査請求をしたが,同請求は,平成13年2月23日付けで棄却された。 主たる争点本件公金支出は違法か。 (1)原告の主張ア(ア)本件賃金は,予算科目上の「賃金」の内容である「常傭賃金」にも「一般賃金」にも該当せず,本件公金支出は,法令上の根拠に基づかない違法なものである。 (イ)また,本件対策委員会は,b地区の自治組織の重要な意思決定機関であって,その構成員である委員に対し,賃金ないし報償費名目で報酬を支払うことは,地方自治の本旨に反し,違法である。 すなわち,地方自治法155条1項等は,町内会等が市町村長の下部組織として組み込まれることを禁止しているのであり,本件公金支出を適法と認めれば,b地区ないし本件対策委員会を客観的に行政組織の一部に組み込んだといえるし,主観的にも組み込んだと思わせてしまう。 本件対策委員会は,c地区とb地区の一般廃棄物処理施設をb地区のd清掃センターに統合するというa町の計画(以下「本件統合計画」という)に反対するべく設置されたもので,本件対策委員会の開催。 日,審議内容,町職員の出席の有無等については,本件対策委員会が独自判断で行っており,また,本件対策委員会で決定された事項は,b地区の意思とされていたのであるから,本件対策委員会の実態は,b地区の自治組織の重要な意思決定機関であった。 イ被告は,a町の町長として,本件賃金の支出が法令上の根拠のないことを知って,または,過失により知らずに,本件公金支出を行い,a町に対し,29万8400円の損害を被らせた。 (2)被告の主張本件公金支出は適法である。 ア本件賃金は,本件対策委員会が,a町の実施する各種事業(ダイオキシン 知らずに,本件公金支出を行い,a町に対し,29万8400円の損害を被らせた。 (2)被告の主張本件公金支出は適法である。 ア本件賃金は,本件対策委員会が,a町の実施する各種事業(ダイオキシンの測定,採水,土壌採取等)に立会い,会議に出席したことについて,各委員の労働の対価ないし謝礼として、各委員の稼働時間に応じて1時間あたり800円で計算した金額をa町が支払ったもので,平成11年度一般会計当初予算に計上し,議会の議決を経た上,支出されており,適法な支出である。 このうち,a町の実施する各種事業への立会は,a町の事業に対する役務の提供に対する謝礼であり,また,本件対策委員会は実質的に町が設置した任意機関であるから,会議への出席に対する謝金は,町事業への役務の提供に対する謝礼である。したがって,これらは報償費としての性格を有する。この点,a町が支出した科目(節)は賃金であり,適切ではないが,節区分の相異が支出の違法性を左右するとはいえないから,本件支出は報償費の支出として適法な支出である。 (イ)本件対策委員会は,a町がその設置を要請し,これに基づき,設置された任意機関である。 すなわち,本件対策委員会は,a町が,本件統合計画を遂行するにあたり,地元の同意を取りつける目的で設置されたものであって,形式的には,b地区が自主的に結成した体裁がとられているが,実質的には,a町の本件統合計画を遂行するための組織であり,町が事実上支配する機関であった。 従来,a町には,一般廃棄物処理施設が町内のb地区及びc地区の2か所にあったところ,a町は,当初,c地区の一般廃棄物処理施設であるa町清掃センターに新施設を建設して,b地区の一般廃棄物処理施設であるd清掃センターをそれに統合し,その建設期間中一時的に,a町の廃棄物をd清掃センターで焼却する計 c地区の一般廃棄物処理施設であるa町清掃センターに新施設を建設して,b地区の一般廃棄物処理施設であるd清掃センターをそれに統合し,その建設期間中一時的に,a町の廃棄物をd清掃センターで焼却する計画であった。そこで,この計画に対し,当時のb地区の区長は,区長経験者を参集し「検討委員会」を,任意に組織していた。ところが,a町は,c地区への新施設建設を中止して,a町清掃センターの施設を廃止するとともに,d清掃センターの施設を改善して,a町の一般廃棄物処理施設をそれに統合する方針を決定したため,地元住民の同意を取りつける必要性が生じ,a町が本件対策委員会の設置要請をしたのである。 このように,本件対策委員会の「対策」との名称は,d清掃センターへの統合に対する反対の意味を込めて名称変更が行われたのではなく,a町が地元住民の意見を聴取する組織として,従来の「検討委員会」とは別に,新たに設置させたことから,別名称となったのである。 本件対策委員会の活動内容は,本件統合計画に対するb地区の要望の把握,a町からb地区住民に対する諸説明,ダイオキシン類の調査等の事業立会及びゴミに関する諸問題の検討,解決など,本件統合計画の実現に向けての諸活動の一環となるものであり,具体的には町からの諸説明及び意見交換のための会議開催と上記立会である。 しかし,本件対策委員会は,平成12年度ころから,徐々に地元住民が自主的に活動する組織へと変容を遂げていき,かつ,平成12年度中に本件支出についての監査請求がなされて支出の適法性が問題視されたこ,,,とから本件対策委員会の委員への報酬は平成11年度分のみ支払い平成12年度分からの支出は行っていない。 本件は,町内会や区などという自治的な組織の構成員に対して報酬を支払った事案ではなく,a町が,既にある本件統合計画を円 委員への報酬は平成11年度分のみ支払い平成12年度分からの支出は行っていない。 本件は,町内会や区などという自治的な組織の構成員に対して報酬を支払った事案ではなく,a町が,既にある本件統合計画を円滑に遂行するという特定の目的のために,従来の自治的組織とは別に組織させたものであるから,原告らのいう町内会等住民組織が市町村長の下部組織に組み込まれるとの批判はあたらない。 第3争点に対する判断 本件公金支出の違法性の有無について,,(,,,,,,(1)前記第21の争いのない事実 証拠 甲3 乙1ないし4〔枝番を含む,証人A,原告C本人)及び弁論の全趣旨に。〕よれば,以下の事実が認められる。 ア従来,a町には,一般廃棄物処理施設が町内のb地区及びc地区の2か所にあった。そして,a町は,当初,c地区の一般廃棄物処理施設であるa町清掃センターに新施設を建設して,b地区の一般廃棄物処理施設であるd清掃センターをそれに統合し,その建設期間中一時的に,d清掃センターで焼却する計画であった。なお,この計画に対して,当時のb地区長は,区長経験者を参集し「検討委員会」を任意に組織した。 ,イしかし,平成10年ころ,国の施設整備に対する方針転換により,平成14年12月からはダイオキシン排出規制のために小型の焼却場の建設は,,,許可されないこととなったためa町はc地区への新施設建設を断念しa町清掃センターの施設を廃止するとともに,d清掃センターの施設を改善して,同施設へ統合する方針を決定した。具体的には,将来平成14年度からeブロック広域化施設が稼働するまでの間,d清掃センターでa町町内のゴミ処理を行うというものであった。 ウそこで,平成11年5月8日,町長である被告や助役らが出席してb地区説明 来平成14年度からeブロック広域化施設が稼働するまでの間,d清掃センターでa町町内のゴミ処理を行うというものであった。 ウそこで,平成11年5月8日,町長である被告や助役らが出席してb地区説明会が開かれ,a町が,b地区住民に対し,a町の清掃センターについて,上記方針の転換等,現状説明を行った。このとき,住民の「個人的には役員会を作ってbの区民に模様を知らせなければならないと思う。幹部に知らせてはどうか」との発言を受けて,a町側が「是非,委員会。 ,を作っていただきたい」と発言した。 。 エ同年6月26日,再びb地区説明会が開かれ,a町が,上記検討委員会,。 ,等に対して本件統合計画についてb地区住民の同意を求めたこのとき住民の「町の意図はよくわかるが,検討委員会との名前があるが立場は何か,お願いしますと言われても困る。町から依頼があって委員が決められたので,総集会で決められたものではない。区民の意見を決定する権限がない」との発言に対し,a町側は「cは総会で決めてもらっている。 。 ,区の意志決定をする方法を決めてほしい。長尾は,区で委員を決めている」と発言した。 。 オ同年8月1日,b地区臨時総会が開かれ,本件統合計画について協議が行われた。このとき,a町助役は,住民に対し「毎回総会を開く訳には,いかないので,総会で対策委員会を認め,正式な対策委員会を作って頂きたい」と発言した。 。 ,,,,カそこで同月8日ころb地区の住民は地区内で委員17名を選出し同月15日,本件対策委員会を設置し,a町に対し,質問書を提出した。 キ同月27日には第1回目の本件対策委員会が開かれ,数名の委員は,本件統合計画に反対の立場を表明した。そして,同年9月12日にも本件対策委員会が開かれた後,同年10月6日から同年11月8日ま た。 キ同月27日には第1回目の本件対策委員会が開かれ,数名の委員は,本件統合計画に反対の立場を表明した。そして,同年9月12日にも本件対策委員会が開かれた後,同年10月6日から同年11月8日までに6回にわたり,本件対策委員会の委員及びその配偶者等が出席して,a町主催の採水立会,排ガスダイオキシン測定立会,ボーリングB2検尺立会などが行われた。そして,同年11月23日及び同年12月4日に,本件対策委員会が開かれ,この2回の会議にはa町職員が立会い,a町側が本件対策委員会が提出した前記カの質問書に対する回答をした。 クその後,同年12月18日及び平成12年1月15日に本件対策委員会が開かれたが,a町職員がバグフィルター等についての説明のため本件対策委員会への出席を求めたのに対し,委員の間で意見の相違があり,その是非につき議論がなされ,結局,本件統合計画とは切り離してバグフィルター等についてのa町側の説明を聞き,その設計が了承された。また,本件対策委員会の議事内容をa町に報告するようになった。 ケ平成12年1月7日,土壌の採取が行われ,同月29日及び同年2月3日,本件対策委員会が開かれ,同年2月1日にはb新池浚渫工事がなされた。土壌の採取や前記工事には,本件対策委員会の委員が立会った。 コ同月5日,本件対策委員会が開かれ,本件対策委員会の運営方法について意見の相違があったため,本件対策委員会の解散も話題となったが,委員長に新しくDを選任し,その上で本件対策委員会の方針について話し合われた。 サその後,同月14日,同年3月10日,同月25日にも本件対策委員会が開かれ,同年4月6日,a町は,本件対策委員会の旧委員を含む委員に対し,1時間につき800円の計算で算出した本件賃金を支払った。 シしかし,本件対策委員会はその後も継続されたが にも本件対策委員会が開かれ,同年4月6日,a町は,本件対策委員会の旧委員を含む委員に対し,1時間につき800円の計算で算出した本件賃金を支払った。 シしかし,本件対策委員会はその後も継続されたが,平成12年度には住民監査請求があったり,区長が交代して本件統合計画について前向きに検討するなど本件対策委員会の性格が変容したとして,本件対策委員会の委員に対して賃金の支払いは留保されている。 スところで,本件対策委員会の委員の中には,当初から本件統合計画を進んで受け入れようというものはおらず,E委員長(区長)をはじめ絶対反対の委員も少なくなく,他はa町の意見も聞いて条件付で賛成もやむを得ないとの立場であった。 (2)ア以上(1)アないしカのような本件対策委員会の設置の経緯からすれば,本件対策委員会の設置の目的は,本件統合計画について,a町がb地区住民の同意を取りつけたり,計画についての住民の意見をまとめるために,b地区住民の総会の議決によるのでは,多人数が何度も集まることになって機動性が欠けるため,より機動性がある少人数の住民の代表により組織されたのが本件対策委員会であったと認めるのが相当である。 よって,本件対策委員会は,b地区住民の総会に代わるもので,本件統合計画についてのb地区住民の代表者機関であると認められる。 イまた,本件対策委員会が設置されて以降の活動状況からすれば,本件賃金の支払いがなされる以前は,b地区住民間で本件統合計画そのものに同意するか否かで意思統一がなされていたわけではなく,むしろこれについて争いがあった時期であって,本件対策委員会は,d清掃センターの改修という,いわゆる迷惑施設の設置場所の当事者の代表者機関として,a町と独立し,対立する立場にあったと認めるのが相当である。 確かに,本件対策委員会の委員には,本件 件対策委員会は,d清掃センターの改修という,いわゆる迷惑施設の設置場所の当事者の代表者機関として,a町と独立し,対立する立場にあったと認めるのが相当である。 確かに,本件対策委員会の委員には,本件統合計画についてやむを得ないとの意見の者が多数いたと認めることができるけれども,反対する意見の者も委員に少なからずおり,平成12年2月5日に委員長が新しく選任されるまでは,委員長自身が反対の意見を有していたのであって,本件対策委員会が,b地区住民から独立して,b地区住民に対して,a町のために本件統合計画の同意を説得すべき機関であったと評価することはできない。 また,本件対策委員会は,その会議の議事内容をa町に報告していたことが認められるが,その議事内容からは,本件統合計画に対して,積極的に協力するということはうかがわれず,大筋の意見がやむを得ないというものであり,また,明確に反対する意見も強く,そのために,a町の職員が本件対策委員会の会議に説明のため出席することさえ反対されたり,委員長(区長)が替わるなど,議論が紛糾していたことが認められるのであるから,議事内容の送付という形式のみをもって,a町が事実上支配していたと認めることはできない。 したがって,a町が,本件対策委員会を支配していたとみることはできず,また,本件対策委員会がa町のために設置された諮問機関ということもできない。 ウ以上からすれば,b地区住民の代表者機関である本件対策委員会の委員に支給する本件賃金は,準職員に支給する本給及び諸手当である常傭賃金にも,授産場や共同作業所などの施設で作業に従事する労務者などに支給する労賃及び手当である一般賃金(甲2)にもあたらない。 被告は,本件賃金は,実質的には報償金であって,a町が賃金として支出したことは適切ではないが,支出の科目(節)の 作業に従事する労務者などに支給する労賃及び手当である一般賃金(甲2)にもあたらない。 被告は,本件賃金は,実質的には報償金であって,a町が賃金として支出したことは適切ではないが,支出の科目(節)の区分の相異にすぎず,直ちに違法とはならないと主張する。 しかし,被告提出の「会計事務必携(抜粋」によれば,報償金とは,)①講演会・講習会・研修会等の講師謝礼金,②任意設置機関の構成員に対する出席謝金,③人命救助者に対する報償金,④その他,弁護士報酬,弁理士報酬,展覧会等の審査員謝礼,原稿執筆謝礼,通訳又は翻訳謝礼,モニターに対する回答謝礼,研修会・講習会の類の内部講師に対する弁償金等であると定められている(乙5。 )そして,本件対策委員会の会議は,委員が独自に日時を決め,議事録も委員が作成したもので,まさに本件対策委員会の活動であるから,会議出席に対する支払は,出席時間に応じた金額が支払われていることからしても,本件対策委員会の活動自体に対しての支払いであって,報償金にはあたらない。また,a町が主催した各種事業への立会は,当事者たるb地区の住民の代表者として,本件対策委員会の委員が行ったものであるから,b地区から,本件対策委員会に対して,その立会に対する謝礼として支出されるならば格別,a町が支給することには理由がなく,その意味でも報償金にあたらない。 したがって,本件公金支出は,法律上の根拠がない違法なものである。 被告の過失の有無について普通地方公共団体の長は,地方自治法138条の2により,当該地方公共団体の予算等の事務を自らの判断と責任において誠実に管理し,執行する義務を負い,同法176条,177条,211条,218条,221条により,予算についてその調整権,議会提出権,付再議権,原案執行権及び執行状況調査権等広範な権限を有する おいて誠実に管理し,執行する義務を負い,同法176条,177条,211条,218条,221条により,予算についてその調整権,議会提出権,付再議権,原案執行権及び執行状況調査権等広範な権限を有するものであるから,それに伴う高度の注意義務を負うものというべきある。 したがって,本件公金支出につき議会の議決があったからといって,町長である被告が,上記注意義務を尽くしたと認めることはできず,本件公金の支出は,地方公共団体の長としての職責に伴う高度な注意義務に違反してなされた違法な行為として,過失による不法行為を構成するものというべきである。 a町の損害について上記のように,本件賃金の支出は違法であり,これによって,a町は,本件賃金のうち,返還のない29万8400円の損害を被ったものと認められる。 よって,原告らの請求は理由があるから認容することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用し,なお,仮執行宣言の申立については,相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 岡山地方裁判所第2民事部裁判長裁判官小野木等裁判官政岡克俊裁判官永野公規

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